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アブレシブウォータジェットによる高温鋼材の切断特性

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Academic year: 2021

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(1)630. 論. 砥粒加工学会誌. 文. アブレシブウォータジェットによる高温鋼材の切断特性 山下浩二*1,舘野純一*1,石野和成*2 Characteristics of cutting hot steel with an abrasive water jet Koji YAMASHITA, Junichi TATENO and Kazushige ISHINO 高温鋼材は常温鋼材よりも容易に切断できることが知られているが,1000℃以上の高温鋼材に対するアブレシ ブウォータージェット(AWJ)による切断結果は報告されていない.そこで AWJ の基礎実験として,高温鋼材の試験 片を使用して常温鋼材と切断現象を比較した.その結果,高温鋼材における切断厚さと切断速度の関係は常温鋼 材と同等であった.熱電対測定によると鋼材中心温度は 800℃以上に保たれていたが,伝熱解析から推測した鋼 材表面温度は 300℃以下に低下していた.このことから AWJ で高温鋼材を切断するとき,研磨材が作用できる切断 面の極表層は常温鋼材の機械的性質になっていることが 1 つの要因として考えられる. Key words : abrasive water jet, hot steel, surface temperature, cutting thickness, cutting speed, cut surface. 図 1 に,本研究で使用した AWJ 切断実験装置の概要を示. 1.緒 言 超高圧水によるウォータジェット技術が 1960 年代より開発. す.スギノマシン製 AJP-E25300 は,ディーゼルエンジン. が進み,多様な材料に対応する切断技術が実用化 1)されてき. 200kW で駆動されるウォータポンプ(増圧機ブースター)によ. た.ウォータジェット切断の中でも,特に高圧水噴流に研磨材. り常用 250MPa の高圧水をノズルへ送る.ノズルには高圧水. を添加して切断能力を高めるアブレシブウォータジェット. の噴射方向と垂直にアブレシブ(研磨材)の吸入口が付いて. (AWJ)を用いた切断への関心が高い.. おり,アブレシブタンクの正圧と噴流に伴う負圧により研磨材. AWJ 切断では,コンクリートや岩石など脆性材料の切断の. がノズルに吸引される.切断ノズルはモータより被切断材の試. みならず,アルミや鋼材などの延性・金属材料においても能. 験片上を送り速度(切断速度)1~200mm/s で直線移動する.. 力を発揮する.. 高温実験の場合,試験片となる鋼材は台車式加熱炉で最高. 製鉄所の製鋼分野では,出鋼されたスラブを幅方向に切. 温度 1340℃まで加熱される.加熱炉からの搬送と試験片固. 断する手段としてガス切断(溶断)が用いられているが,入熱. 定のため切断開始時までに鋼材温度は低下するが,1辺. 量が多いと切断面が歪んで割れが発生したり,溶けた鉄が切. 100mm の立方体試験片の場合,鋼材温度 1100℃で切断可. 断面に付着する問題などが生じたりする.. 能である.. そこで AWJ の高圧ジェットとアブレシブの比率で適正にス ラブを幅方向へ切断する方法. 2). や,連続鋳造中のスラブを長. 3). 手方向に切断する方法 などが考案されている.AWJ の切断 部には波打ち変形や反りがなく,圧延に適した切断面にする ことが可能とされている. しかし,連続鋳造中の鋼材温度と AWJ による切断速度の 関係など,高温鋼材の切断特性に関する結果は報告されて おらず,そのメカニズムは未だ解明されていない. そこで本研究では,基礎実験と数値計算により推定した AWJ による高温鋼材の切断特性について報告する. 図1 AWJ切断実験装置. 2.実験方法. 2.2 アブレシブノズルの構造. 2.1 AWJ 切断実験装置. 図 2 に AWJ ノ ズ ル の 断 面 構 造 を 示 す . 高 圧 水 は 内 径 *1 JFEスチール㈱:〒210-0855 神奈川県川崎市川崎区南渡田町 1-1 JFE Steel Corporation *2 JFEテクノリサーチ㈱:〒210-0855 神奈川県川崎市川崎区南渡 田町1-1 JFE Techno-Research Corporation 〈学会受付日:2019年12月24日〉 〈採録決定日:2020年7月11日〉. 30. 0.75mmのウォータノズルからミキサ室へ噴射され,粒径0.1~ 2.0mm程度の研磨材と混合されて,内径1.0~4.0mmのアブ レシブノズルから大気中に噴射される.図2には併せて今回 使用した研磨材であるガーネットの拡大写真を示した.. Journal of the Japan Society for Abrasive Technology Vol.64 No.12 2020 DEC. 630-634.

(2) 砥粒加工学会誌. 実測した研磨材の平均粒径が0.8mmの場合でも,粒径分 布は0.7~1.0mmの幅を持つため,アブレシブノズル径が小さ いと研磨材が詰まり,水がアブレシブタンクへ逆流することが ある.従って,アブレシブノズルの内径は,研磨材の最大粒 径を考慮して選定した.. 631. 実験条件(設定値) 0.75mm. ウォータノズル内径 ウォータノズル長さ. 26mm. アブレシブノズル長さ. 70mm. 高圧水(実験時). 220MPa. 高圧水流量. 30L/min. スタンドオフ距離 (アブレシブノズルと試験片間). 5mm. 図2 AWJノズルの断面構造 2.3 実験材料(高温時の被切断特性) AWJ切断は1980年代に実用化1)されたものの,研磨材およ び被切断材の種類によって切断条件を選択する必要がある ため,現在でも多様な事例について実験検証されている. 本研究の対象とする高温鋼材は,一般的に数百℃に加熱 されると機械特性としての強度が低下するため,切断性が向. 図3 試験片厚さ100mm材での切断位置と温度測定位置. 上すると考えられる. 各種鋼材における温度0~1000℃の縦弾性係数4)から,例. 行った.その際,切断開始時の切断速度(送り速度)1mm/sか. えばS45Cでは鋼材温度1000℃近辺において約90GPaの縦. ら,切断終了時7mm/sまで徐々に切断速度を上げていき,切. 弾性係数となっており,常温時210GPaの半分以下である.. 断深さとの関係を求めた.結果として,AWJだけでは完全に. 5). ここで,WJによる壊食性と材料の縦弾性係数の関係 では, 60MPaの高水圧を10s噴射した際の壊食量が示されており,. は鋼材が分断されなかったため,残存部を鋸切断することで AWJの切断面が確認できるようにした.. 金属材料の縦弾性係数が小さいものほど指数関数的に壊食. 図4に切断後の試験片断面を示す.切断速度を上げていく. 量が増加することが知られている.高温鋼材の場合,先述の. に従い,切断深さが浅くなる傾向が確認できたが,予想に反. 1000℃近辺における縦弾性係数から,常温に比べ3倍以上. して高温鋼材での切断深さが常温鋼材とほとんど変わらない. の被切断特性になると考えた.. 結果となった.. 以上,高温鋼材の縦弾性係数と壊食量の関係から, 1000℃近い高温鋼材に対するAWJ切断では,常温鋼材の3 ~4倍の切断能力が得られると推定した. 2.4 実験条件 主目的である高温鋼材と常温鋼材の温度条件をはじめ, 研磨材の粒径や切断速度などを変化させた.試験片とした. 実験条件 研磨材種類 ガーネット #30-60 0.5mm 研磨材平均粒径 3mm アブレシブノズル直径 試験片鋼材温度 20℃, 1100℃ 切断速度(送り速度). 1, 2, 3, 5, 7mm/s. SS400材は板幅100mm,奥行150mm,厚さ25mm材と100mm 材を用いた.表に一定の設定値とした実験条件を示す. 2.5 高温切断中の鋼材内部温度の測定 高温切断実験(板厚100mm材)において,鋼材の内部温 度を熱電対により測定した.図3のように,材料中央の切断ラ インより30mmオフセンタした位置で,切断開始側と終了側の 計2箇所におけるAWJ切断時の時間履歴を測定した. 3.実験結果 3.1 試験片厚さ25mm材での比較(研磨材粒径0.5mm) 研 磨 材 ガ ー ネ ッ ト #30-60 ( 平 均 粒 径 0.5mm ) , ノ ズ ル 径. 図4. 鋼材温度の違いによる切断面の比較. (試験片厚さ25mm,研磨材平均粒径0.5mm). Φ3mmを用いてAWJ切断を行い,常温と高温の比較実験を. Journal of the Japan Society for Abrasive Technology Vol.64 No.12 2020 DEC. 630-634. 31.

(3) 632. 砥粒加工学会誌. 3.2 試験片厚さ100mm材での比較(研磨材粒径0.8mm) 研磨材の粒径を前節より1.5倍大きくして熱容量を大きくし,. 動開始・終了に合わせて入力したONOFF信号であり,試験 片から前後約10mm離れた位置を基準とした.. 切断中の切断速度を一定速度にして常温と高温の比較を行. ここで図7中に,各熱電対をノズルが通過する概算時刻の. った.このとき切断速度が低速1mm/sでも切断深さが確認で. 鋼材温度を丸印で示した.WJノズルの通過を折れ点として,. きるよう,試験片の厚さはt100mmに変更した.. 鋼材温度が降下していく様子がわかる.ただし通過時の切断. 同じノズル径Φ3mmを用いて,研磨材ガーネット#20~40. 近傍温度は800℃以上であり,高温状態であることを確認した.. (平均粒径0.8mm)でAWJ切断を行った結果を図5に示す.. ノズル通過による切断終了後は,熱電対の指示温度が500℃. 紙面手前から奥へ向かって切断したもので,切断開始端面の. 程度まで復熱していることを確認した.. 写真を示した.この場合においても,高温切断が常温切断を 上回ることなく,切断深さの違いはみられなかった. 実験条件 研磨材種類 ガーネット #20-40 0.8mm 研磨材平均粒径 3mm アブレシブノズル直径 試験片鋼材温度 20℃, 1100℃ 切断速度(送り速度). 1, 3, 5, 7mm/s. 図7 AWJ切断中における鋼材内部の温度実測 3.4 切断速度と切断深さの実験結果まとめ AWJによる鋼材切断のこれまでの基礎実験結果を従来の 図5 高温切断と常温切断による切断深さの比較. 文献データ6)と比較すると図8のようになる.図中の▲プロット. (試験片厚さ100mm,研磨材平均粒径0.8mm). が常温切断,◇プロットが高温切断の結果である.〇プロット. 前記の結果を切断速度と切断深さの関係でグラフ化したも. は,鋼材SS400を切断した文献値 6) であるが,本研究の実験 結果も従来の切断能力とほぼ一致した.. のを図6に示す.切断速度の増加に伴い,切断深さが対数的. 以上のことから,高温鋼材のAWJ切断において,切断深さ. に減少する傾向がわかる.以上までの結果から,高温鋼材の. における能力向上には至らないことがわかった.本実験結果. 切断深さは常温鋼材のものと同等で差のない結果となった.. か ら 板 厚 30mm を AWJ 切 断 す る 場 合 , 切 断 速 度 3mm/s (180mm/min)以下の低速にする必要がある.. 図6 高温鋼材と常温鋼材における 切断速度と切断深さの関係. 図8 高温切断による切断速度と切断深さの関係 (従来の文献値を含めた常温切断に対する比較). 3.3 AWJ切断時の鋼材内部温度 高温切断実験(試験片厚さ100mm)において,切断中の鋼 材内部温度を熱電対により測定した結果を図7に示す.図中 の曲線のうち下側の破線が切断開始側の熱電対,上側の実 線が終了側の熱電対である.また点線の垂直線はノズルの移. 32. 4.考察 4.1 AWJの切断機構における材料強度の影響 HashishによるAWJの切断機構では,切断深さを式(1)とし て,第1項の切削摩耗と第2項の変形摩耗7)で示されている.. Journal of the Japan Society for Abrasive Technology Vol.64 No.12 2020 DEC. 630-634.

(4) 砥粒加工学会誌. V:粒子速度,ma:研磨材供給量,u:送り速度(切断速度), dj:アブレシブ噴流直径,C,c:定数,σ:応力(硬さ),e:靭性. maV 2 2ma (1  c)V 2 hC  8  u  u edj. (1). 633. 伝熱解析条件 鋼材の熱伝導率. 54 W/mK. 鋼材の比熱. 47 J/kgK. 空気の対流熱伝達率. 20 W/m2K. ウォータジェットの沸騰熱伝達率. 10 kW/m2K. ここで,材料強度に関するパラメータが,硬さ(σ)と靭性(e) で,今回の常温鋼材と高温鋼材では,温度による影響で材料 強度に2倍以上の差異がある. 上記の材料強度(σ,e)と,切断の送り速度(u)をパラメータ として変化させて,切断深さ(h)を求めた実験結果が前記図4 である. 送り速度(u)が速くなると,切断深さ(h)が浅くなる傾向が,常 温鋼材と高温鋼材で同等であったことから,材料強度(σ,e) に差がなかった可能性が考えられる. 4.2 AWJ高温切断時の挙動推定 アブレシブウォータジェット(AWJ)による高温切断の実験 結果から,図9のような切断現象であると推定した. ・ウォータジェットが鋼材と接触する切断溝の送り方向最前面 は,極表層(研磨材粒径以下の深さ)が冷却され,常温鋼 材と同等な機械的性質になっている. ・研磨材が高圧水の圧力を受けて鋼材に押し込まれ,切断能 力を発揮するのは粒径の半分以下であるため,切断溝表 層の冷却された鋼材である. ・研磨材の粒径1mm前後では,結果として常温鋼材を切断し たのと同じ現象であり,切断速度と切断深さの関係は,鋼材 中心温度の影響を受けない.. 図10 鋼材内部の深さと温度履歴の計算結果 部の温度計算結果を示す.実測温度(図中太線)と,計算結 果の時間履歴勾配が一致するように同定した.この推定によ ると,切断面(表層からの距離ゼロ)の細い実線は,数秒で急 速に温度が300℃程度まで降下した.その後の切断面表層は, ウォータジェットの冷却と高温鋼材内部からの加熱で200℃付 近に均衡した. 上記の数値計算における開始から5s後の切断面からの温 度分布を図11に示す.横軸はWJが接触する切断面からの距 離であり,切断面の表層1mmは300~400℃である.距離 15mm以上離れれば,800℃以上の高温に保たれている. このことから,高温鋼材の切断挙動が常温鋼材と同等にな る多様な要因のうち,温度低下が1つの可能性として考えられ, 研磨材が作用できる切断面の極表層は,常温鋼材と同等の 抗張力や降伏点となる温度300℃以下9)になったと推定した.. 図9 高温鋼材のAWJ切断における加工現象の推定モデル 4.3 鋼材温度の実測値による切断面温度の推定 前節の推定を検証するため,実測した鋼材内部温度により, AWJの接する切断面温度の推定を試みた.計算は非定常伝 熱の数値解法8)で簡易に求めたものである. 伝熱モデルは,矩形の一辺だけ100℃の沸騰水に接触し た沸騰熱伝達で,残りの三辺は50℃の大気との対流熱伝達. 図11 切断開始から5s後の鋼材内部温度の計算結果. とした.ウォータジェットと切断面との沸騰熱伝達率は未知で あるため,3.3節で実測した鋼材内部温度と伝熱計算が一致 するように同定して熱伝達率を求めた. 図10に切断面から距離40㎜の実測温度で同定した鋼材内. 5.結 言 本研究では,1100℃に加熱した高温鋼材をアブレシブウォ ータジェット(AWJ)により切断し,常温鋼材の切断特性と比較. Journal of the Japan Society for Abrasive Technology Vol.64 No.12 2020 DEC. 630-634. 33.

(5) 634. 砥粒加工学会誌. して,次のような結果を得た. (1) 高温鋼材の縦弾性係数およびせん断抵抗の関係から, 1100℃の高温鋼材に対するAWJ切断では,常温鋼材の 3~4倍の切断能力であると推定したが,高温鋼材での 切断深さは常温鋼材と同等であった. (2) 研磨材ガーネットによるAWJの高温鋼材切断は,SS400 材 の 切 断 速 度1mm/sで切断 深さ 100mm, 切 断 速度3 mm/sで切断深さ30mmという常温鋼材の文献値とほぼ一 致した. (3) 高温鋼材の内部温度実測値と水冷の数値計算を比較し た結果,内部温度1100℃の高温AWJ切断でも,研磨材 が作用できる切断面の極表層は300℃以下になるという のが簡易的な数値計算の結果である.常温鋼材と同等 の機械的性質になると推定されたことから,高温鋼材の 切断挙動が常温鋼材と変わらなかったのは,WJによる 温度低下が1つの要因として考えられる. 6.参考文献 1) 2) 3) 4) 5) 6) 7) 8) 9). 幾世橋広:ウォータージェット技術の進展と将来展望,設計工学,34,9 (2002) 277. 下笠知治:日本国特許,特開平 7-32106 (1995). 下笠知治:日本国特許,特開平 9-108800 (1997). 原隆啓:鋼種による熱応力亀裂の発生度合を比較するための高温弾性 率および熱膨張率の測定,鉄と鋼,49,13 (1963) 1885. 横田章,山門憲雄:高速連続水噴流による固体のかい食と水噴流の構造 について,日本機械学会論文集,33,249 (1967) 723. 松井繁朋:川崎重工技報,108 (1991) 51. 清重正典:研磨材を含むウォータージェットの切断能力について,ターボ 機械,17,11 (1989) 700. 甲藤好郎:伝熱概論,養賢堂 (1974) 405. 中山一雄:高温切削の基礎的研究,精密機械,21,9 (1974) 353.. 34. Journal of the Japan Society for Abrasive Technology Vol.64 No.12 2020 DEC. 630-634.

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図 1 AWJ 切断実験装置

参照

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