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薬剤師部会としての教育を振り返る

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Academic year: 2021

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(1). 日本静脈経腸栄養学会雑誌 34(5):305-310:2019. 特集 日本の栄養療法を考える. 薬剤師部会としての教育を振り返る. Looking back on a nutrition education for pharmacists in the JSPEN pharmacist section. 東海林 徹 Tohru Shoji. 一般社団法人 日本静脈経腸栄養学会 名誉会員 /日新薬品株式会社 顧問 Honorary Member of Japanese Society for Parenteral and Enteral Nutrition, Advisor of Nissin Pharmaceutical Co, Ltd. 要旨:日本の栄養療法を薬剤師の栄養教育の観点から考察した。薬剤師は栄養に関することを薬学教育で学んでいる ものの、臨床においてそれを十分に活用できないでいた。必要がなかったのかも知れない。しかし、栄養サポートチーム (nutrition support team;以下、NSTと略)の一員として活動するためには、栄養学の知識が必要になった。そこで、 日本静脈経腸栄養学会(Japanese Society for Parenteral and Enteral Nutrition;以下、JSPENと略)薬剤師部 会では、臨床に役立つ栄養学を会員薬剤師に教育することを考えた。その教育では薬剤師に特化したことも合わせて考え た。たとえば、製剤、無菌調製、薬と食物(栄養食) との相互作用などである。これらを薬剤師部会の活動指針としてまとめた。 会員薬剤師教育は、この活動指針に基づいて、基礎知識、臨床への応用そして最新の話題の三部構成からなる。基礎知識 は学術集会前日の「薬剤師部会セミナー」、臨床への応用は「スキルアップセミナー」における多職種との症例検討、最新 の話題は「パネルディスカッション」で行った。今後も教育は重要である。薬剤師に特化した教育は、本学会先人薬剤師の 努力と活躍を理解することから始まると思う。さらには薬学に臨床栄養に関わる教育を望む。 索引用語:活動指針、薬剤師部会セミナー、スキルアップセミナー. はじめに. 提供することも重要になる。たとえば、経腸栄養剤の浸透圧は タンパク質あるいはアミノ酸が大きなファクターであり、半消化. 2003年から2期JSPENの理事、併せて薬剤師部会長を拝. 態、消化態、成分栄養剤の順に高くなり下痢を誘発しやすく. 命した。当時はNSTの言葉が新鮮で、またNST専門療法士. なる。食物繊維は薬剤の吸収を妨げる可能性がある。またワ. 資格が始まった時でもあった。日本におけるNST黎明期、薬. ルファリンとビタミンKは互いに拮抗する。多くの入院患者は薬. 剤師の栄養療法に係わる知識の習得には、薬剤師部会が担. 剤を服用しているので、このような相互作用のチェックがNST. うという意気込みがあった。当然ながら部会長としての大きな. 薬剤師に求められてくる。静脈栄養剤の場合には、製剤の特. 責務は、薬剤師の栄養関連教育であり、そのためには栄養療. 徴の把握に加えて、輸液に添加されている酸や亜硫酸塩など. 法に造詣の深い薬剤師を結集させる必要があると考えた。薬. の添加剤についても目を向けるべきである。さらにNST薬剤. 剤師部会としては、その先生方を中心にJSPEN学術集会中. 師には、静脈栄養輸液を投与するラインの管理、カテーテル. のパネルディスカッション、前日の薬剤師セミナー、そしてスキル. 関連血流感染の防止あるいは注射剤の配合変化を未然に防. アップセミナーの方向性と運営企画が早急の課題であった。. ぐことが課せられている。その上で経腸栄養、中心静脈栄養 (total parenteral nutrition;以下、TPNと略) 、末梢静脈. JSPEN における薬剤師の役割を考える 1)NST 専門薬剤師とは. 栄養(peripheral parenteral nutrition;以下、PPNと略)処 方設計に関する医師へのアドバイスをすることが重要である。. JSPEN薬剤師部会では、NST専門薬剤師の育成と各病院. 2)NST における薬剤師の活動指針. でのNST設立に向けての薬剤師教育が課題であった。NST. 2006年当時のJSPEN薬剤師部会によるNSTにおける薬. 専門薬剤師は、栄養の知識を十分に有した上で、NSTの一員. 剤師の活動指針を表1に示した。当時、 病棟担当薬剤師が一. として薬剤師の専門分野を発揮することはいうまでもない。他. 定時間病棟に常駐するようになり始めた時期である。その業. 職種からは薬と栄養との関わり、静脈栄養の無菌調整および. 務を薬剤管理指導業務と呼んでおり、入院時および退院時に. 適正な管理などが得意分野として期待されている。 さらに静脈. 病棟の患者さんのベッドサイドで服薬指導をしていた。その病. 栄養剤あるいは経腸栄養剤のそれぞれの特徴をNSTに情報. 棟担当者に栄養療法の教育と、各病院でのNST立ち上げへ. 日本静脈経腸栄養学会雑誌 Vol.34 No.5 2019 (305).

(2) の準備教育も考える必要があった。TPN無菌調製は感染防. 栄養療法に関する適正使用では、感染対策を第一として、カ. 止のため、できるだけ薬剤部内で実施し、やむを得ずナース. テーテル関連血流感染対策、経腸栄養剤調製時の消毒や. ステーションで調製する場合には環境整備の指導を行うことと. 保管方法を掲げた。 また、 リスク回避として経腸栄養剤の静脈. した。また、病態に応じた栄養剤の選択を含めた静脈・経腸. ラインへの誤接続対策や経腸栄養剤と薬剤との相互作用を. 栄養療法における処方支援を指針として掲げた。静脈・経腸. 掲げた。薬剤師部会では、 この活動指針を基に薬剤師に対す る栄養療法教育を構築した。. 表 1 薬剤師部会による NST 薬剤師の活動指針. 1. 静脈・経腸栄養療法における処方支援 処方設計支援 病態に応じた栄養剤の選択 無菌調製の実施および指導 2. 静脈・経腸栄養療法に関する適正使用 栄養療法に用いる器材の適正使用 カテーテル関連血流感染対策 経腸栄養剤の衛生管理とその指導 薬剤の経管投与に関する情報提供とリスクの回避 経腸栄養・健康食品と薬剤との相互作用の回避 リスク (誤投与など) および副作用の防止と対策 3. 薬剤管理指導業務における栄養療法への取り組み 薬剤および静脈・経腸栄養剤に関する患者・家族への情報提供 退院時および在宅での栄養療法に関する患者指導と支援 表 2 薬剤師部会セミナーの経緯. 第1回 (日時:2007年2月7日 (水) 場所:愛媛県県民文化会館) 参加人数 251名 テーマ. 「薬剤師が関わる栄養の基礎知識」. 内容. 輸液管理. 注射剤配合変化. TPN無菌調製. 経腸栄養. 第2回(日時:2008年2月20日 (水) 場所:国立京都国際会館) 参加人数 387名 テーマ. 「静脈栄養と経腸栄養の基礎知識」. 内容. 沖縄におけるNST活動. NST活動と地域医療への関わり. 薬剤師部会セミナー 栄養療法に関わる薬剤師の必要な基礎 知識習得を目指すセミナーとして、2007年に 薬剤師部会セミナーをJSPEN薬剤師部会と 味の素ファルマ株式会社とで企画した。味の 素ファルマ株式会社との共催としたのは、前 年度までは味の素ファルマ株式会社主催の 薬剤師向けセミナーとして開催されていたこ とによる。部会長をしていた当時、味の素ファ ルマ株式会社側からの申し出により、理事会 の承認を得て、学会前日の夜に共催で開催 することになった。その目的は、薬剤師として 栄養療法に必要な基礎知識・輸液処方設計 等の実例をもとに、実践に必要な知識を習得 することで、基本的な教育、 いわゆる初級コー スである。 薬剤師部会セミナーの経緯を表2に示す。 第1回開催は2007年に第22回日本静脈経腸 栄養学会が愛媛県で開催された前日であっ た。テーマは、JSPEN薬剤師部会による活 動指針に基づいて、 「薬剤師が関わる栄養 の基礎知識」 とし、内容は輸液の処方設計、 注射剤の配合変化、TPN無菌調製、経腸 栄養剤の特徴と薬剤との相互作用について と基礎的なものであった。学会前日の夜にも 係わらず、251名の参加があり、ディスカッショ ンが活発で予定の時間を1時間もオーバーす ることになったが、セミナーの方向性は間違 いないと確信するところであった。そのことは. 知っていて欲しいNSTにおける経腸栄養の基礎知識. アンケート調査からも伺うことができる。内容. 知っていて欲しいNSTにおける静脈栄養の基礎知識. についてのアンケートでは、輸液処方設計に. 第3回 (日時:2009年1月28日 (水) 場所:ホテルウェルビューかごしま) 参加人数 407名 テーマ. 「栄 養療法実践講座 -NST薬剤師の役割を学ぶー」. 内容. 院内NST活動の現状. 輸液処方設計の基礎知識. 輸液調製の留意点. 薬剤と栄養素の相互作用. (306). 薬剤師部会としての教育を振り返る. ついてもっと時間が欲しかったことと、実践で の応用を求める声が多く、また演題数を少な くして集中して学びたいとの声もあった。次 回のテーマとして、NSTのチーム医療として 薬剤師の役割だけでなく、感染制御チーム (infection control team;ICT) 、緩和医 療チーム、褥瘡チームとの関わりについての 要望があった。第2回は2008年に第23回日本.

(3) 静脈経腸栄養学会が京都府で開催された前 日の開催であった。テーマは、 「静脈栄養と経 腸栄養の基礎知識」で、内容はNST活動に ついて、実践されている施設での活動の紹介 であった。加えて、NST活動実践での静脈栄 養・経腸栄養の基礎知識を提供した。参加者 は前年より多く、387名であった。第3回は2009 年に第24回日本静脈経腸栄養学会が鹿児島 市で開催された前日の開催で、 参加者は407名 となった。2009年のJSPENの薬剤師会員数が. 表 3 薬剤師部会パネルディスカッション. 日時:平成18年1月25日14:00−16:00 場所:ルネッサンス岐阜ホテル 「輝(かがやき) 」   特別講演 「栄養療法にかかわる薬剤師に期待するもの」 社団法人 日本病院薬剤師会 副会長 藤上雅子 先生   シンポジウムテーマ 「薬剤師の役割を考える」. 約1,650名であったので、約1/4の薬剤師が参.  . 加したことになる。このように年々参加者が多く. 座長. なったことは、テーマの内容だけではなく薬剤. 都志見病院薬剤部長 大浜 修 先生 . 師の学ぶ熱意が重なった結果であったと思う。. 箕面市立病院薬剤部長 佐藤健太郎 先生. JSPEN 学術集会 パネルディスカッション NST活動実践編と位置づけし、最近の話 題を加えた静脈栄養、経腸栄養剤の情報提 供、薬剤師による無菌調製とリスクマネジメント の情報提供を考えた。2006年岐阜県における 第21回日本静脈経腸栄養学会(会長 森脇 久隆教授) での開催が薬剤部会長としての最 初であった (表3)。特別講演には日本病院薬 剤師会副会長藤上雅子先生を招いて「栄養 療法にかかわる薬剤師に期待するもの」 と題し. 「抗悪性腫瘍剤の調製と安全管理」 名古屋大学医学部附属病院 医療経営管理部 杉浦伸一 先生 「無菌調製-特に脂肪乳剤を中心として-」 北里大学病院薬剤部 松原 肇 先生 「簡易懸濁法について」 昭和大学藤が丘リハビリテーション病院薬局長 倉田なおみ 先生 「薬剤管理指導業務とNST」 箕面市立病院薬剤部 仲下知佐子 先生 「栄養と薬剤の相互作用のチェック」 医薬情報研究所エス・アイ・シー 堀 美智子 先生. て講演をいただいた。当時、NSTが広がりつ つあり、JSPENと日本病院薬剤師会をつなぐことを考えていた. ホテル大阪) であったと思う。当時の私が薬剤師部会に上げ. ので、チーム医療に造詣が深い先生を招いた。シンポジウム. た報告には、 「足立香代子理事より、栄養士の資質向上のた. のテーマは「薬剤師の役割を考える」 とした。薬剤師部会セミ. め、セミナーを考えて欲しいとの意見が出された。これに対し. ナーと関連づけた内容を考え、少しレベルアップを図った内容. て大柳理事長は栄養士だけでなくコ・メディカルとして考える. である。シンポジストと演題は、杉浦伸一先生「抗悪性腫瘍剤. 必要があるので、栄養士部会、看護師部会および薬剤師部. の調製と安全管理」、松原 肇先生「無菌調製-特に脂肪. 会の三者で話し合ってから、理事会に提案して欲しい旨の意. 乳剤を中心として-」、仲下知佐子先生「薬剤管理指導業務. 見が出された。本件に関しては、三者が話し合うことで了承さ. とNST」、堀 美智子先生「栄養と薬剤の相互作用のチェッ. れ、近々東京で会議がもたれることになった。」 とある。その後、. ク」であった。特に倉田なおみ先生の「簡易懸濁法について」. 9月に味の素ファルマ株式会社会議室において、栄養士部会. は、薬剤師部会での要望もあり、倉田なおみ先生が部会のメ. から中村丁次先生、足立香代子先生、看護師部会から山田. ンバーになっていただくきっかけになった。その後シンポジウム. 繁代先生、薬剤師部会から私が出席して話し合いが持たれ、. は、栄養士部会、看護師部会にも講師を依頼して、他職種か. 表4の案を教育委員会に報告した。. らの薬剤師に期待する内容の講演をしていただいた。 [提出案]. スキルアップセミナー 1)スキルアップセミナー開催までの経緯と熱意. 目的: 「NSTクオリティー維持のためのコ・メディカルの再教育 と標準化をめざす」 対象:NST専門療法士認定資格者. 私の記録によるとスキルアップセミナー開催のきっかけは、平. 内容:午前中は最近のトピックスの講義、午後からは実際の症. 成17年度第2回JSPEN理事会(2005年7月7日リーガロイヤル. 例検討、従来からの座学中心のコ・メディカルセミナーをsmall. 日本静脈経腸栄養学会雑誌 Vol.34 No.5 2019 (307).

(4) 2)症例検討の 1 例. group discussion(以下、 SGDと略) を中心にした症例検討セ ミナーにする. 表5に鹿児島県における第24回日本静脈経腸栄養学会で. 組織:教育委員会(竹山廣光委員長) の下部に置き、委員は. 開催したスキルアップセミナーで検討した1症例を示した。74. 各部会からの推薦. 歳の女性、body mass index(以下、BMIと略)14.6kg/m2と. 開催:学会開催地で開催期間前後の1日とした。. 低栄養状態である。2型糖尿病性腎症から透析に至った患者. 以上の件を教育委員会竹山廣光委員長より、 理事会に図っ. で、呼吸困難と発熱で救急搬送された。意識が低下している. ていただき了承された。そして、第1回を2007年2月、松山市. ので、TPNにて栄養管理されている。入院中にNSTの介入. における第22回日本静脈経腸栄養学会(会長 小林展章教. が求められ、NSTでは経腸栄養管理に移したいと考えている。. 授) のコ・メディカルセミナー開催時に合わせることにした。その. SGDの結果、表6の報告書が提示され、問題点として次のこ. 開催にあたり、各部会委員が名古屋大学医学部附属病院に. とが挙げられた。. 集まり、 症例それぞれを検討して教育の標準化を図った。各委. 1. BMI14.6kg/m2および検査値から低栄養状態であると考え. 員とも、各部会のコ・メディカル会員の再教育は、我々に任せ. られる。. て欲しいという熱意で会議、症例検討会は熱気に溢れていた。. 2. β-Dグルカン600pg/mLからカンジダ感染症が疑われ、 カテー テル関連血流感染も否定できない。. 表 4 第 1 回コ・メディカル再教育部会議報告. 目的 NSTクオリティー維持のためのコ・メディカルの再教 育と標準化をめざす。現場で問題意識を持ち、自ら考 えるNST専門療法士を育てる。 対象 原則として、NST専門療法士認定資格者70人程度 講義形式 午前中はトピックスの講義 講 師として第一候補は名古屋大学救急・集中治療医 学 福岡敏雄先生。演題はEBM関連をお願いする。 午後は症例検討 症例は2症例呈示する。7人程度を10グループに分け る (管理栄養士3人、薬剤師2人、看護師2人、その他1 人) 。さらに5グループごとにAとBに分けそれぞれ1症 例を検討する。最後にグループ毎に発表。各委員は各 グループのアドバイザーとしてまとめ役になるが、各 部会長にも手伝いをお願いする。 テキストの作成 検討症例を部会ごとに9月末まで東海林まで送る。その 際、患者背景のわかるアセスメントシートを添付する。 テキストはこの委員会で症例の作成と共に作成する。 各部会委員の症例に対する標準化 11月中に委員が集まり、各委員による症例に対する標 準化のため名古屋大学医学部附属病院においてワーク ショップを開催する。 第1回開催日時 (案) 2007年2月10日 (土)愛媛での22回学会のコ・メデ イカルセミナー開催時に合わせる。 参加者募集 学会ホームページで募集する。 今後の検討課題 NST専門療法士認定の再申請時の条件とする。. (308). 薬剤師部会としての教育を振り返る. 3. 基礎疾患として糖尿病があるので、褥瘡になると、創 傷治癒遅延となることも想定される。 目標は静脈栄養か ら経腸栄養への移行である。プランとしては、いったん TPNカテーテルを抜去してカテーテル先端の培養を行 う。バイタイルサインは安定していると思われるので、早 期に糖尿病を考慮した経腸栄養への移行を考える。 胃 瘻造設も考慮する。経腸栄養開始時は、腹部症状・ 排便状況に注意し、 血糖値の測定も忘れずに。経腸か らの投与エネルギー量の増加に伴い、TPNをPPNに 変更し、経腸栄養が目標エネルギー量に達した時点で PPNも中止する。カリウム保持作用のあるニューロタン 錠50mgを考察する。 この班では、 カンジダ感染をカテー テル関連血流感染として捉え、カテーテル先端の培養 を第一に掲げている。また、興味深いこととして、ニュー ロタン (ロサルタンカリウム) による高カリウム血症を問題 にしている。ニューロタンはアンジオテンシン変換酵素を 阻害して血圧を下げるが、レニン・アンジオテンシン・ア ルドステロン (RAA)系を抑制する結果としてカリウムを 保持する作用を有する。したがって、透析患者の血清 カリウム値を上げることが懸念され、主治医にはその旨 を提言するとまとめている。このようなディスカッションが 4グループで実施された風景を写真に示す(写真1、2)。 SGDでは各班2~3名スタッフがアドバイスのために付く が、 参加者の自由な討議に任せる。参加者は自己紹介 の後、司会と書記と発表者を決め、あらかじめ配布され た症例を読み、ディスカッションを始める。司会には、ス タッフから全員の意見を聴くように指示を与える。60分 間のディスカッションの後に各班の発表に移り、それぞ れ参加者からの質問に答える。答えに窮する場合には、 その班の誰かに答えてもらう。このSGDでは完全な問 題解決というよりも、それぞれの立場で意見を交わすこ ととプレゼンテーションの方法を学習することに主眼を 置いた。NSTにおいて意見を述べる訓練である。.

(5) 表 5 検討症例. 表 6 症例報告書. 性 別:女性. 問題点. 年 齢:74歳 身 長:148cm . ・BMI14.6kg/m2および検査値から低栄養状態であると. 体 重:32kg. BMI:14.6kg/m. 考えられる。 2. ・β  -Dグルカン600pg/mLからカンジダ感染症が疑われる。. 主病名:糖尿病、慢性腎不全 (透析中). ・カテーテル関連血流感染も考慮する。. 主 訴:呼吸困難、発熱. ・DMがあることより創傷治癒遅延となることも想定される。. 現病歴:3 年前より2型糖尿病性腎症になり、現 在週3回の血液透析を施行中である。意 識レベル低下を認めるが原因は不明 (主 治医は低酸素脳症を考えている) 。今月、 呼吸困難、発熱を認め、誤嚥性肺炎が疑 われた。抗生物質投与および呼吸理学 療法による肺炎治療を行い、経過を見て いる。経口からの食物摂取が困難で、現 在栄養管理はTPNで行っている。 体温 37.0~38.0℃台の発熱あり、脈 拍 80回/分、血圧 140/90mmHg。1 日尿量は400〜500mLである。 身体所見と身体症状: 腸管運動は良好と思われる。下腿浮腫 軽度あり、腹水や褥瘡は認めていない。 血中β-Dグルカン600pg/mL。 投薬状況:イ ンスリン、ニ ュー ロ タン 錠50mg (ARB降 圧 剤 ) 1錠、ラ シ ッ ク ス 錠 20mg、エリスロポエチン製剤(透析 時) 1,500単位. 目標 栄養管理を実施し、感染症の原因確認と治療、糖尿病 のコントロールを行い、静脈栄養から経腸栄養へと移 行できるよう図る。 必要カロリー 総カロリー 1,156kcal(活動係数1.0 ストレス係数1.3) プラン ・いったんTPNカテーテル抜去してカテーテル先端の培 養を行う。 ・バイタイルサインは安定していると思われるので、早期に 糖尿病を考慮した経腸栄養への移行を考える。 ・経 腸栄養開始時は、腹部症状・排便状況に注意し、血糖 値の測定も忘れずに。 ・経 腸からの 投与エネル ギ ー量 の 増 加に伴 い、TPNを PPNに変更し、経腸栄養が目標エネルギー量に達した 時点でPPNも中止する。 ・胃瘻造設を考慮する。 ・カリウム保持作用のあるニューロタン錠50mgを考察 する。. 参加者64人にアンケート調査を実施したところ、63人(98%). たと感じた参加者が半数いたことになる。今回のような形式の. が適切な症例と感じた。症例の難易度については、33人. セミナーについて聞いたところ、49人(77%) の参加者がとても. (52%)が適切と回答したものの、29人(45%) は難しかったと. 役に立った、15人(23%) は役に立ったとほぼ全員が満足した. 回答している。 おおかた症例が適切と回答したものの難しかっ. 結果になった (図1)。. 写真 1 スキルアップセミナー SGD. 写真 2 スキルアップセミナー発表. 日本静脈経腸栄養学会雑誌 Vol.34 No.5 2019 (309).

(6) 簡易懸濁法を実習に取り入れている大学も多い。病院実習で. 参加者の症例に対する意識 看護師. 適切. 不適切. は、TPN無菌調製の体験に加えて処方設計を学習すること. 14. 1. になる。NST回診あるいはカンファレンスに薬剤師と同行する. 薬剤師. 19. 0. 管理栄養士. 28. 0. 2. 0. 63. 1. 難しかった. 適切. やさし すぎた. その他. 看護師. 8. 7. 0. 0. 薬剤師. 8. 9. 0. 2. 12. 16. 0. 0. 1. 1. 0. 0. 29. 33. 0. 2. 臨床検査技師 全体合計. こともある。時には患者のベッドサイドに赴くこともある。病院実 習では単なる見学ではなく、実際に体験することが主眼になる。. これからの薬剤師の栄養に関する教育への思い. 症例の難易度. 管理栄養士 臨床検査技師 全体合計. 今回のセミナーについて とても役に どちらとも 役に立たな 役に立った 立った いえない かった 看護師. 薬剤師の製剤技術および感染防止に対する考え方は先人 の先生方によって確立された。2013年10月に「微量元素製剤 開発の経緯と医療連携の重要性」 をテーマに笠原伸元先生 と対談する機会があった。笠原先生は、大阪大学医学部附 属病院(以下、 阪大病院と略)薬剤部に在籍していた当時、 高 カロリー輸液調製に最初に取り組んだ方である。先生と阪大 病院第一外科の岡田 正先生(大阪大学名誉教授、故人) との出会いがTPN基本液の完成につながったエピソードを 笠原先生との対談でのお話から引用する。 「1971年、阪大病 院第一外科の岡田 正先生からIVH療法に本格的に取り組. 12. 3. 0. 0. 薬剤師. 13. 6. 0. 0. 管理栄養士. 23. 5. 0. 0. 1. 1. 0. 0. TPNの処方を持ち帰られたのです。我々は早速、 処方の検討. 49. 15. 0. 0. に入りました。開発の途中で、 ブドウ糖濃度が非常に高いため. 臨床検査技師 全体合計. 図 1 アンケート調査結果. みたいと相談を受けました。岡田先生がアメリカ留学後に各 病院でTPNを見学され、さらに、米国外科学会で発表された. 加熱による分解、着色などの問題がありました。また、クロライ ドの量を減らし、酸塩基平衡の検討など様々な問題点を一つ. 薬学教育の中での栄養学教育. 一つ解決しながら、基本液を完成することができました。この. 2006年度に薬学6年制がスタートした。それ以前の薬学教. り商品化されたのです。」. 育は、医薬品の創製、開発、製造等に従事する研究者・技. 阪大病院における高カロリー輸液療法が開始してから3年. 術者等の人材養成が主であり、加えて薬剤師の養成であっ. 後に亜鉛欠乏症が発症し、笠原先生らによって微量元素製. 基本液こそが、パレメンタールA、Bとなり1979年、製薬会社よ. た。薬学教育が6年制となった背景には、文部科学大臣宛に. 剤の開発につながった。その後、TPN療法は全国的に広が. 中央教育審議会の「薬学教育の改善・充実について」の答. り、島田慈彦先生(元北里大学病院薬剤部長) によって薬剤. 申がされたことによる。ここで明確に薬剤師の養成が主目的に. 部における無菌調製設備および無菌操作手順の整備がなさ. なった。したがって従来の教育カリキュラムに少なかった臨床. れた。これからの薬剤師教育には、 このような先人の努力と先. 関連の教科が大幅に増えることになった。また、5年次に大学. 見の明を受け継ぐことが大切ではなかろうか。一方、薬学系. における事前学習と病院および薬局においての実務実習が. 大学では、医療の現場を知っていてもNSTに参加経験のある. 課せられた。その事前学習で力を入れているのが「TPN液無. 教員は極めて少ない。学生は栄養に関して基礎知識を深く学. 菌操作の訓練」である。実習では全て市販製剤を使用して、. 習するものの、栄養療法の実践に関する知識は深まらないと. 学生はクリーンベンチ内でガウン、マスク、帽子、手袋を装置. 感じる。栄養療法に特化した薬剤師の養成は、 まず薬学教育. して調製する。また、代表的な輸液製剤と経腸栄養剤の特徴. からであると思う。. を学生に示している。大学によっては、輸液製剤中の微粒子 の測定、経腸栄養剤の粘度についても実習させている。また、. (310). 薬剤師部会としての教育を振り返る. 本論文に関する利益相反なし.

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