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の項目を検討する段階で, 佐渡市および対馬市の野生復 帰現場の関係者への聞き取り調査も行っている ( 高橋 2015) 両調査実施後に事例間の比較が可能となるよう, アン ケート調査票質問項目および回答の仕方が共通の形式となるよう留意した アンケート調査項目群は多数であるが, 本研究ではそれらの中か

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Academic year: 2021

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「実習で得た知識や経験を将来や社会において役立て たいか」では,「機会があれば役立てたい」が54%,「積 極的に役立てたい」が29.9%,「どちらとも言えない」が 15.2%であった(図8)。自由記述では「就職や将来の仕 事に結び付けたい」といった回答が全72 回答中 25 回答 (34.7%),「今後の授業・実習・研究で活用したい」と いった回答が22 回答(30.6%),「ボランティア活動に活 かしたい」が8 回答(11.1%)と続いた。 3.考 察 本研究の結果から,初学者の学生に対して,農村環境 の整備,自然環境の保全や共生についての実習を実施す ることにより,これらについて十分な興味を抱かせるこ とができた。松本ら(2009)は,自然体験後の大学生は, 環境問題に対して行動・意識面で変化があり,それはあ る程度持続的な変容であるとしている。本研究において も,実習体験が各人の意識変化をもたらし,今後の学習 や将来に繋げる事端となり得ることが推察される。 設定した実習プログラムは「農村環境の保全整備」, 「自然環境の基礎的な知識と調査技術」に大別されるが, 樹木の間伐,動植物の観察,土壌・水質調査などと多岐 に亘り,農村環境の整備,動植物の調査,自然環境の測 定を実施する上で,基礎的でありながらも一定の専門性 を内包する内容であった。それにも関わらず意識調査の 結果から,プログラムの難易度は「ちょうど良い」の回 答が多くなり,初学者の学生に適応した内容であったこ とが確認された。特に,野外での実習は疲労を伴うもの であり,学生の集中力を考慮すると1 時限 3 時間という 集中した時間設定が適切であったこと,また普段から学 生に接している専任の教職員が各プログラムを担当した ことが効果的であったと推察される。「改善を希望するプ ログラムの有無」から,休憩時間の増加等に関する意見 も若干認められたものの,多くは今後の学習への期待を 窺わせる回答となった。初学者に対して適度な疲労を感 じさせつつ,より専門的な内容へ興味を抱かせることが できる講師の力量が,野外実習を効果的に実施する上で 不可欠と考えられる。 各プログラムでは,「農村」で花卉栽培や除草,「自然」 で昆虫・哺乳類調査が理解力に適応したものとなった。 これは実際の花卉を取扱うことや,景観の変化が伴う除 草,視覚・触覚を使った動物調査など,五感を用いるも のや成果が目に見えやすい内容,自然環境の代表的な構 成要素である野生動物を対象としたプログラムが初学者 には受入れ易いものであった可能性がある。今後,各プ ログラムの具体的内容と理解力の関係について詳細な分 析を行う必要がある。 一方で,ある程度の体力を要し,チェーンソーの扱い などで危険を伴う樹木の間伐,特殊な工具や資材を使用 するコンクリート製造施工,種の同定力を必要とする植 物調査,一般的には普段目にすることの無い地表下の土 壌調査などが難しいと感じる傾向となった。しかし,「特 に印象深い技術・知識・体験の有無」では,樹木の間伐 やコンクリートの製造施工を印象深い技術等と挙げる内 容が多くなり,「特に興味を持った事柄の有無」でも,水 質・土壌調査の手法に興味を持った回答が多く認められ た。これらのプログラムについて,参加学生は初学者で あることから若干の難しさは感じている一方で,他のプ ログラムより印象深く興味を抱いていることが明らかと なった。すなわち野外実習におけるプログラム構成を計 画する際に,適度な難しさや特殊・専門性を伴うプログ ラムを設置することは,参加者に強い実体験と今後の学 習意欲を抱かせる上で効果的と推察される。ただし,体 力・思考力の疲労も伴うため,前後のプログラム内容も 考慮した効果的な配置について,疲労度の測定や集中力 の持続性といった詳細な分析を行う必要が考えられる。 「改善を希望するプログラムの有無」では顕著な希望 が見られず,「今回のプログラム以外に学びたい事柄の 有無」でも特に強い学習意欲が認められなかった。各プ ログラムの難易は概ね適切であり,印象深さや興味度合 い,将来への活用等でも高評価や意欲が認められている ことを考慮すると,今回実施したプログラムを踏まえつ つ,さらに学習意欲を抱かせる実習・教育方法の工夫が 必要と考えられる。具体的には,関連したプログラム間 の連携,実習期間中での復習,実習後に関連した学習の 機会を設けるなど,今回の実習プログラムを踏まえつつ, 継続的な実習・教育方法の検討が必要と考えられる。 今後,一定期間をおいた後の意識変化や学習状況等の 追跡調査を実施することで,より効果的な実習プログラ ムの構築を検討していくことも課題である。 謝 辞 実習プログラムの実施に際しては日本大学生物資源科学部の教職員 各位にご協力をいただいた。アンケート調査の解析は日本大学地域環境 保全学研究室の諸氏にご協力をいただいた。記して感謝申し上げます。 引用文献 中川昌子(2009)幼少期の自然体験が大学生の農業意識に与える影響-大学農学部における農業実習活動を通じて-.環境教育,18(3),3~14. 松本晶子・釜本健司・早石周平(2009)大学生の環境教育における自然 体験活動の意義.沖縄大学人文学部紀要,11,43~52. 島田正文・八色宏昌(2012)神奈川県藤沢市におけるビオトープの保全・ 再生・創出のための人材育成方策に関する事例研究.環境情報科学学 術研究論文集,26,399~404.

野生復帰事業と環境教育に対する地域住民の意識と期待について

Local People’s Concerns and Hopes towards Wildlife Reintroduction Project and

Environmental Education

高橋 正弘

・本田 裕子



Masahiro TAKAHASHI and Yuko HONDA

要旨: 年と  年に佐渡市および対馬市の住民に対して行った,野生復帰事業に関するアンケー ト調査を分析した。それぞれの自治体で行われている野生復帰事業をめぐる住民意識と環境教育・意識啓 発への志向性を比較した結果,野生復帰事業の進展状況や野生復帰の対象種の違いは,住民の意識にほと んど違いをもたらさなかった。住民の環境教育・意識啓発については,対象・内容・方法において,ほぼ 同じ傾向であることが明らかになった。しかし野生復帰事業そのものに対して判断を留保している住民は, 環境教育・意識啓発に比較的ネガティブな考えを持つことが明らかになった。 キーワード:野生復帰,アンケート調査,環境教育,意識啓発,住民意識

Abstract: Questioner surveys for local people have been conducted at Sado City and Tsushima City in 2014 and 2015 regarding reintroduction projects of wildlife. Comparative analysis of local people’s concerns and/or hopes on environmental education and awareness enlightenment activities in line with reintroduction projects in each community. As a result of the analysis, it was clarified that there was little differences of awareness between these communities and target species. Expected purpose, contents, methodologies for environmental education and awareness enlightenment activities showed similar tendencies as well. Local people who have reserved his/her opinions for reintroduction project showed comparatively negative sense for the necessities on environmental education and awareness enlightenment activities.

Key Words : reintroduction, questionnaire survey, environmental education, awareness enlightenment, people’s concerns

はじめに 野生復帰は単に野生下絶滅種や絶滅危惧種を地域に放 すだけではなく,その対象生物が地域の中で共生してい くために,地域住民の理解と協力を得るための環境教育 や意識啓発にも取り組む必要がある。このことについて 例えば国際自然保護連合(IUCN)は,野生復帰(再導 入)を図る学際的なチームには,「さまざなな集団と,計 画についての公表や学校教育に役立たせるべき準備を調 整する責任を果たす」ことが求められると指摘している (IUCN1998)。つまり野生復帰の事業そのものと並ん で,環境教育や啓発活動を行うことが責任の一端とされ ている。ここでいう環境教育・啓発活動は,「環境に関す る関心,知識,態度,技能などを伝達し,獲得するプロ セスを通じて,最終的に環境保全活動への参加を目指す ことを目的とした教育活動」(高橋2013)であることを 前提とすれば,環境教育・啓発活動の対象者は,野生復 帰が行われている,もしくは今後行われる予定の地域住 民となる。そこで,野生復帰事業が行われている地域の 住民の意識や環境教育・啓発活動への期待を比較するこ とを通じて,経験と教訓を明らかにすることを本研究の 目的とする。具体的にはトキの野生復帰がすでに展開さ れている佐渡市と,これからツシマヤマネコの野生復帰 が行われることが予想される対馬市とで,地域住民の環 境教育や意識啓発への期待や意向,そして地域の違いに よる差異と特徴について考察する。 1.研究の方法   上述の目的にアプローチするために,2014 年に佐渡市 で実施した住民へのアンケート調査1)および2015 年に 対馬市で実施した同様のアンケート調査2)のデータを取 り上げる。これらのアンケート調査は,佐渡市ではトキ の野生復帰から6年経過した時点での調査であり,対馬 市では今後計画されているツシマヤマネコの野生復帰前 の段階での調査となる。両事例とも野生復帰は住民の生 活圏で実施・計画されるものであるため,住民からの協 力や事業への支援を当然必要とする。ほぼ同時期に行っ たこれらの調査結果を比較することにより,事業進展の ステージや対象種の違いを超えて,何らかの傾向を見い 出すことができると考えた。それぞれの調査結果は,単 純集計という形式で,本田(2015)および,本田・高橋 (2015)として報告されている3)。なお,アンケート票 大正大学人間学部人間環境学科 環境情報科学 学術研究論文集 29(2015) 257

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の項目を検討する段階で,佐渡市および対馬市の野生復 帰現場の関係者への聞き取り調査も行っている(高橋 2015)。 両調査実施後に事例間の比較が可能となるよう,アン ケート調査票質問項目および回答の仕方が共通の形式と なるよう留意した。アンケート調査項目群は多数である が,本研究ではそれらの中から,野生復帰事業の対象種 についての住民意識の在り方を把握できる項目,および その保護保全のための環境教育・意識啓発に関する項目 を取り上げ,「対象種と住民自身との関係性」および「対 象種を保護する立場の地域住民としての環境教育に対す る考え・期待」について,佐渡市と対馬市の住民の意識 や期待の現況を比較し,検討と考察を行う4) 2.結果 21対象種と住民自身との関係性 野生復帰の対象種を住民がどのように受け取っている かを明らかにするために,暮らしの中での対象種の意識 の程度,対象種を目撃した際の感想,住民自身にとって の対象種の位置づけ,地域を象徴するものは何か,につ いて,佐渡市と対馬市の双方の調査で得られたデータを 比較した。比較の結果は,以下のとおりである。 暮らしの中で,野生復帰の対象種それ自体を意識する かどうかについては,佐渡市と対馬市の両方で,全く同 様の傾向が見られた(表1)。最も多かった回答が,「と 表  暮らしの中での意識  表  放鳥されたトキ目撃の感想【複数回答】 きどき意識することがある」であり,その次に「あまり 意識しない」が続く結果となった。常に意識するでもな く,全く意識したことがないということでもない,いわ ゆる中間的な部分に位置する意識を持った住民が,それ ぞれの地域で約8割程度を構成しており,圧倒的多数と して存在するということが明らかになった。 野生復帰の対象種を目撃した際に住民が抱いた感想を 尋ねた質問については以下のとおりである。まず佐渡市 において,放鳥されたトキを目撃者した回答者数は366 人となり,回答者の 78.2%が目撃していたことになる。 そしてトキを目撃した感想については,「嬉しかった」 「美しい/きれいと思った」「驚いた」「希少/貴重だと 思った」などが多く選ばれた(表2)。一方,ツシマヤマ ネコを野生の状態で目撃したことのある住民は,トキの 目撃者の割合に比べれば少なく,回答者数は84 人で, 回答者の20.3%のみの目撃であった。そしてツシマヤマ ネコを目撃した際に抱いた感想については,「驚いた」 「嬉しかった」「かわいいと思った」「希少/貴重だと思 った」「大きいと思った」などが多く選ばれる結果となっ た(表3)。そもそも野生復帰がまだ実施されておらず, ツシマヤマネコがあまり姿を見せない希少な哺乳動物で あることから,目撃の割合はトキの事例に比べて非常に 少なかったが,感想の傾向としては,佐渡市と対馬市ど ちらにおいてもおおむね同様のものが選択された。 住民にとっての対象種の位置づけについてたずねた質 問では,佐渡市のトキに関しては,「佐渡市の誇り/象徴 /シンボル」が最も多く選択され,続いて「一度絶滅し た鳥」「貴重な鳥」「佐渡氏の活性化の起爆剤/きっか け」「豊かな自然環境の象徴やバロメータ」などが選択さ れた(表4)。一方対馬市のツシマヤマネコに対する住民 の位置づけに関しては,「対馬だけに生息する生き物」が 最も多く選ばれ,続いて「対馬市の誇り/象徴/シンボ ル」「絶滅の危機にある生き物」などが選択された(表5)。 表  野生のツシマヤマネコ目撃の感想【複数回答】            人数 割合(%) 驚いた 㻟㻥 㻠㻢㻚㻠 嬉しかった 㻟㻜 㻟㻡㻚㻣 かわいいと思った 㻞㻠 㻞㻤㻚㻢 希少/貴重だと思った 㻞㻝 㻞㻡㻚㻜 大きいと思った 㻞㻜 㻞㻟㻚㻤 かわいそうだと思った 㻝㻞 㻝㻠㻚㻟 普通の猫(イエネコ)だと思った 㻝㻜 㻝㻝㻚㻥 戸惑った/気を遣うと思った 㻡 㻢㻚㻜 こわいと思った 㻠 㻠㻚㻤 何も思わなかった 㻞 㻞㻚㻠 追い払いたいと思った 㻜 㻜㻚㻜 憎らしいと思った 㻜 㻜㻚㻜 その他 㻝㻡 㻝㻣㻚㻥 回答者数 㻤㻠 - 人数 割合(%) 嬉しかった 㻞㻝㻠 㻡㻤㻚㻡 美しい/きれいと思った 㻞㻝㻝 㻡㻣㻚㻣 驚いた 㻝㻜㻠 㻞㻤㻚㻠 希少/貴重だと思った 㻣㻢 㻞㻜㻚㻤 大きいと思った 㻠㻝 㻝㻝㻚㻞 周囲の景色に溶け込んでいると思った 㻟㻤 㻝㻜㻚㻠 めでたいと思った 㻟㻟 㻥㻚㻜 懐かしいと思った 㻝㻣 㻠㻚㻢 何も思わなかった 㻝㻝 㻟㻚㻜 戸惑った/気を遣うと思った 㻤 㻞㻚㻞 追い払いたいと思った 㻜 㻜㻚㻜 憎らしいと思った 㻜 㻜㻚㻜 その他 㻝㻜 㻞㻚㻣 回答者数 㻟㻢㻢 - 人数 割合(%) 人数 割合(%) 常に意識している 㻡㻢 㻝㻞㻚㻝 㻠㻤 㻝㻝㻚㻡 ときどき意識することがある 㻞㻟㻠 㻡㻜㻚㻠 㻞㻝㻤 㻡㻞㻚㻠 あまり意識しない 㻝㻟㻤 㻞㻥㻚㻣 㻝㻝㻠 㻞㻣㻚㻠 意識したことがない 㻟㻢 㻣㻚㻤 㻟㻢 㻤㻚㻣 回答者数 㻠㻢㻠 㻝㻜㻜 㻠㻝㻢 㻝㻜㻜 トキ ツシマヤマネコ 表  回答者にとっての「トキ」 表  回答者にとっての「ツシマヤマネコ」 つまり佐渡市と対馬市どちらにおいても,絶滅の危機に ある希少性があるゆえのシンボル性を対象種が把持して いる,という傾向が存在することを理解できる。 回答者にとって地域を象徴するものは何かについてた ずねた質問では,まず「佐渡を象徴するもの」について は,「トキ」とした回答が約3割と最も多く,それに続い て「金山」「島」などが続いた(表6)。つまりトキは, 佐渡を象徴するものであると多くの住民に理解されてい ることが明らかになった。一方の「対馬を象徴するもの」 については,「国境」とした回答が約3割と最も多く,そ れに「島」「海」が続き,「ツシマヤマネコ」は約15%の 4番目であった(表7)。地理的な象徴性についての回答 が多く,ツシマヤマネコを象徴とする割合は佐渡に比べ て半数程度であった。 以上の結果から,回答者にとっての地域の象徴につい てたずねた質問の結果のみが,佐渡市と対馬市とで大き く異なっているということが明らかとなった。佐渡市の トキについては,野生復帰事業の経過に伴って地域の象 徴的な役割がトキに備わってきているが,一方で対馬市 のツシマヤマネコは「対馬市にだけ生息する」という固 表  佐渡を象徴するもの   表  対馬を象徴するもの 有性については認識されているが,対馬市全体を象徴す る野生動物としては依然として捉えられていない,と理 解することができる。 2.2環境教育に対する考え・期待 野生復帰事業の対象種がいる地域の地域住民が,果た して環境教育・意識啓発にどのような考えや期待を把持 しているかについての結果を見ることとする。住民が環 境教育・意識啓発をどのように捉えているかを明らかに するため,対象,内容,方法およびそれらの必要性につ いて,佐渡市と対馬市それぞれでたずねた。結果を整理 すると以下のとおりとなる。 環境教育・意識啓発の対象については,1 番目と 2 番 目の対象をそれぞれ回答してもらう形式を採用した。佐 渡市の結果では,1番目として最も多かったのが,「佐渡 市全域の住民」で約5割であった。次が「国民全体」「佐 渡市全域の子ども」が続いた。2番目についても,「佐渡 市全域の住民」が最も多く選ばれ,「佐渡市全域の子ども」 「国民全体」が続いた(表8)。一方対馬市の結果では, 1番目として最も多かったのが,「対馬市全域の住民」の 約5割であった。そして「生息地周辺の住民」「対馬市全 域の子ども」が続いた。2番目についても,「対馬市全域 の住民」「対馬市全域の子ども」が多く選択された(表9)。 どちらの結果からも,当該自治体全域の住民,全域の子 どもが環境教育・意識啓発の対象者として想定されてい るという傾向がみられたが,特に対馬市においては,ツ シマヤマネコの生息地周辺の住民や対馬の住民を対象と すべきとする考えが,佐渡市に比べて強く現れている, という結果となった。 住民が求める環境教育・意識啓発の内容としては,「当 該自治体の自然環境」,「国・県・自治体による対象種の 保護政策」,「対象種の生態・特徴」という情報を求めて いるという傾向については,佐渡市と対馬市とはほぼ共 通している(表10・11)。 環境教育・意識啓発の推進の方法(表12・13)につい ては,上位のものは全く同じ方法が選択されており,傾 人数 割合(%) 佐渡市の誇り・象徴・シンボル 㻝㻣㻡 㻟㻤㻚㻠 一度絶滅した鳥 㻢㻡 㻝㻠㻚㻟 貴重な鳥 㻡㻤 㻝㻞㻚㻣 佐渡市の活性化の起爆剤 㻡㻝 㻝㻝㻚㻞 豊かな環境の象徴やバロメータ 㻠㻥 㻝㻜㻚㻣 他の生きものと一緒 㻝㻥 㻠㻚㻞 別に何も思わない 㻝㻢 㻟㻚㻡 経済効果を生み出すもの 㻤 㻝㻚㻤 農作物を販売するうえでの付加価値 㻟 㻜㻚㻣 苗を踏み倒す害鳥 㻟 㻜㻚㻣 世話のかかるもの・面倒なもの 㻟 㻜㻚㻣 その他 㻢 㻝㻚㻟 回答者数 㻠㻡㻢 - 人数 割合(%) 対馬にだけ生息する生き物 㻝㻠㻣 㻟㻢㻚㻟 対馬市の誇り/象徴/シンボル 㻤㻟 㻞㻜㻚㻡 絶滅の危機にある生き物 㻤㻜 㻝㻥㻚㻤 豊かな環境の象徴やバロメータ 㻟㻣 㻥㻚㻝 別に何も思わない 㻝㻢 㻠㻚㻜 対馬市の活性化の起爆剤/きっかけ 㻝㻠 㻟㻚㻡 ただの猫 㻥 㻞㻚㻞 身近ではない、遠い存在の生き物 㻢 㻝㻚㻡 他の生き物と一緒 㻠 㻝㻚㻜 農作物を販売する上での付加価値 㻝 㻜㻚㻞 経済効果を生み出すもの 㻝 㻜㻚㻞 ニワトリを襲う害獣 㻝 㻜㻚㻞 面倒な生き物 㻝 㻜㻚㻞 その他 㻡 㻝㻚㻞 回答者数 㻠㻜㻡 - 人数 割合(%) 人数 割合(%) トキ 㻝㻠㻟 㻟㻜㻚㻢 国境 㻝㻝㻤 㻞㻤㻚㻢 金山 㻝㻝㻟 㻞㻠㻚㻝 島 㻣㻞 㻝㻣㻚㻠 島 㻥㻝 㻝㻥㻚㻠 海 㻢㻥 㻝㻢㻚㻣 佐渡おけさ 㻟㻝 㻢㻚㻢 ツシマヤマネコ 㻢㻟 㻝㻡㻚㻟 海 㻞㻣 㻡㻚㻤 漁業・魚 㻠㻢 㻝㻝㻚㻝 歴史芸能文化 㻞㻝 㻠㻚㻡 歴史 㻝㻣 㻠㻚㻝 鬼太鼓 㻝㻣 㻟㻚㻢 山 㻝㻞 㻞㻚㻥 米 㻤 㻝㻚㻣 しいたけ 㻝㻜 㻞㻚㻠 おけさ柿 㻤 㻝㻚㻣 その他 㻢 㻝㻚㻡 山 㻞 㻜㻚㻠 回答者数 㻠㻢㻤 - 食 㻝 㻜㻚㻞 観光 㻝 㻜㻚㻞 その他 㻡 㻝㻚㻝 回答者数 㻠㻢㻤 -

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の項目を検討する段階で,佐渡市および対馬市の野生復 帰現場の関係者への聞き取り調査も行っている(高橋 2015)。 両調査実施後に事例間の比較が可能となるよう,アン ケート調査票質問項目および回答の仕方が共通の形式と なるよう留意した。アンケート調査項目群は多数である が,本研究ではそれらの中から,野生復帰事業の対象種 についての住民意識の在り方を把握できる項目,および その保護保全のための環境教育・意識啓発に関する項目 を取り上げ,「対象種と住民自身との関係性」および「対 象種を保護する立場の地域住民としての環境教育に対す る考え・期待」について,佐渡市と対馬市の住民の意識 や期待の現況を比較し,検討と考察を行う4) 2.結果 21対象種と住民自身との関係性 野生復帰の対象種を住民がどのように受け取っている かを明らかにするために,暮らしの中での対象種の意識 の程度,対象種を目撃した際の感想,住民自身にとって の対象種の位置づけ,地域を象徴するものは何か,につ いて,佐渡市と対馬市の双方の調査で得られたデータを 比較した。比較の結果は,以下のとおりである。 暮らしの中で,野生復帰の対象種それ自体を意識する かどうかについては,佐渡市と対馬市の両方で,全く同 様の傾向が見られた(表1)。最も多かった回答が,「と 表  暮らしの中での意識  表  放鳥されたトキ目撃の感想【複数回答】 きどき意識することがある」であり,その次に「あまり 意識しない」が続く結果となった。常に意識するでもな く,全く意識したことがないということでもない,いわ ゆる中間的な部分に位置する意識を持った住民が,それ ぞれの地域で約8割程度を構成しており,圧倒的多数と して存在するということが明らかになった。 野生復帰の対象種を目撃した際に住民が抱いた感想を 尋ねた質問については以下のとおりである。まず佐渡市 において,放鳥されたトキを目撃者した回答者数は366 人となり,回答者の 78.2%が目撃していたことになる。 そしてトキを目撃した感想については,「嬉しかった」 「美しい/きれいと思った」「驚いた」「希少/貴重だと 思った」などが多く選ばれた(表2)。一方,ツシマヤマ ネコを野生の状態で目撃したことのある住民は,トキの 目撃者の割合に比べれば少なく,回答者数は84 人で, 回答者の20.3%のみの目撃であった。そしてツシマヤマ ネコを目撃した際に抱いた感想については,「驚いた」 「嬉しかった」「かわいいと思った」「希少/貴重だと思 った」「大きいと思った」などが多く選ばれる結果となっ た(表3)。そもそも野生復帰がまだ実施されておらず, ツシマヤマネコがあまり姿を見せない希少な哺乳動物で あることから,目撃の割合はトキの事例に比べて非常に 少なかったが,感想の傾向としては,佐渡市と対馬市ど ちらにおいてもおおむね同様のものが選択された。 住民にとっての対象種の位置づけについてたずねた質 問では,佐渡市のトキに関しては,「佐渡市の誇り/象徴 /シンボル」が最も多く選択され,続いて「一度絶滅し た鳥」「貴重な鳥」「佐渡氏の活性化の起爆剤/きっか け」「豊かな自然環境の象徴やバロメータ」などが選択さ れた(表4)。一方対馬市のツシマヤマネコに対する住民 の位置づけに関しては,「対馬だけに生息する生き物」が 最も多く選ばれ,続いて「対馬市の誇り/象徴/シンボ ル」「絶滅の危機にある生き物」などが選択された(表5)。 表  野生のツシマヤマネコ目撃の感想【複数回答】            人数 割合(%) 驚いた 㻟㻥 㻠㻢㻚㻠 嬉しかった 㻟㻜 㻟㻡㻚㻣 かわいいと思った 㻞㻠 㻞㻤㻚㻢 希少/貴重だと思った 㻞㻝 㻞㻡㻚㻜 大きいと思った 㻞㻜 㻞㻟㻚㻤 かわいそうだと思った 㻝㻞 㻝㻠㻚㻟 普通の猫(イエネコ)だと思った 㻝㻜 㻝㻝㻚㻥 戸惑った/気を遣うと思った 㻡 㻢㻚㻜 こわいと思った 㻠 㻠㻚㻤 何も思わなかった 㻞 㻞㻚㻠 追い払いたいと思った 㻜 㻜㻚㻜 憎らしいと思った 㻜 㻜㻚㻜 その他 㻝㻡 㻝㻣㻚㻥 回答者数 㻤㻠 - 人数 割合(%) 嬉しかった 㻞㻝㻠 㻡㻤㻚㻡 美しい/きれいと思った 㻞㻝㻝 㻡㻣㻚㻣 驚いた 㻝㻜㻠 㻞㻤㻚㻠 希少/貴重だと思った 㻣㻢 㻞㻜㻚㻤 大きいと思った 㻠㻝 㻝㻝㻚㻞 周囲の景色に溶け込んでいると思った 㻟㻤 㻝㻜㻚㻠 めでたいと思った 㻟㻟 㻥㻚㻜 懐かしいと思った 㻝㻣 㻠㻚㻢 何も思わなかった 㻝㻝 㻟㻚㻜 戸惑った/気を遣うと思った 㻤 㻞㻚㻞 追い払いたいと思った 㻜 㻜㻚㻜 憎らしいと思った 㻜 㻜㻚㻜 その他 㻝㻜 㻞㻚㻣 回答者数 㻟㻢㻢 - 人数 割合(%) 人数 割合(%) 常に意識している 㻡㻢 㻝㻞㻚㻝 㻠㻤 㻝㻝㻚㻡 ときどき意識することがある 㻞㻟㻠 㻡㻜㻚㻠 㻞㻝㻤 㻡㻞㻚㻠 あまり意識しない 㻝㻟㻤 㻞㻥㻚㻣 㻝㻝㻠 㻞㻣㻚㻠 意識したことがない 㻟㻢 㻣㻚㻤 㻟㻢 㻤㻚㻣 回答者数 㻠㻢㻠 㻝㻜㻜 㻠㻝㻢 㻝㻜㻜 トキ ツシマヤマネコ 表  回答者にとっての「トキ」 表  回答者にとっての「ツシマヤマネコ」 つまり佐渡市と対馬市どちらにおいても,絶滅の危機に ある希少性があるゆえのシンボル性を対象種が把持して いる,という傾向が存在することを理解できる。 回答者にとって地域を象徴するものは何かについてた ずねた質問では,まず「佐渡を象徴するもの」について は,「トキ」とした回答が約3割と最も多く,それに続い て「金山」「島」などが続いた(表6)。つまりトキは, 佐渡を象徴するものであると多くの住民に理解されてい ることが明らかになった。一方の「対馬を象徴するもの」 については,「国境」とした回答が約3割と最も多く,そ れに「島」「海」が続き,「ツシマヤマネコ」は約15%の 4番目であった(表7)。地理的な象徴性についての回答 が多く,ツシマヤマネコを象徴とする割合は佐渡に比べ て半数程度であった。 以上の結果から,回答者にとっての地域の象徴につい てたずねた質問の結果のみが,佐渡市と対馬市とで大き く異なっているということが明らかとなった。佐渡市の トキについては,野生復帰事業の経過に伴って地域の象 徴的な役割がトキに備わってきているが,一方で対馬市 のツシマヤマネコは「対馬市にだけ生息する」という固 表  佐渡を象徴するもの   表  対馬を象徴するもの 有性については認識されているが,対馬市全体を象徴す る野生動物としては依然として捉えられていない,と理 解することができる。 2.2環境教育に対する考え・期待 野生復帰事業の対象種がいる地域の地域住民が,果た して環境教育・意識啓発にどのような考えや期待を把持 しているかについての結果を見ることとする。住民が環 境教育・意識啓発をどのように捉えているかを明らかに するため,対象,内容,方法およびそれらの必要性につ いて,佐渡市と対馬市それぞれでたずねた。結果を整理 すると以下のとおりとなる。 環境教育・意識啓発の対象については,1 番目と 2 番 目の対象をそれぞれ回答してもらう形式を採用した。佐 渡市の結果では,1番目として最も多かったのが,「佐渡 市全域の住民」で約5割であった。次が「国民全体」「佐 渡市全域の子ども」が続いた。2番目についても,「佐渡 市全域の住民」が最も多く選ばれ,「佐渡市全域の子ども」 「国民全体」が続いた(表8)。一方対馬市の結果では, 1番目として最も多かったのが,「対馬市全域の住民」の 約5割であった。そして「生息地周辺の住民」「対馬市全 域の子ども」が続いた。2番目についても,「対馬市全域 の住民」「対馬市全域の子ども」が多く選択された(表9)。 どちらの結果からも,当該自治体全域の住民,全域の子 どもが環境教育・意識啓発の対象者として想定されてい るという傾向がみられたが,特に対馬市においては,ツ シマヤマネコの生息地周辺の住民や対馬の住民を対象と すべきとする考えが,佐渡市に比べて強く現れている, という結果となった。 住民が求める環境教育・意識啓発の内容としては,「当 該自治体の自然環境」,「国・県・自治体による対象種の 保護政策」,「対象種の生態・特徴」という情報を求めて いるという傾向については,佐渡市と対馬市とはほぼ共 通している(表10・11)。 環境教育・意識啓発の推進の方法(表12・13)につい ては,上位のものは全く同じ方法が選択されており,傾 人数 割合(%) 佐渡市の誇り・象徴・シンボル 㻝㻣㻡 㻟㻤㻚㻠 一度絶滅した鳥 㻢㻡 㻝㻠㻚㻟 貴重な鳥 㻡㻤 㻝㻞㻚㻣 佐渡市の活性化の起爆剤 㻡㻝 㻝㻝㻚㻞 豊かな環境の象徴やバロメータ 㻠㻥 㻝㻜㻚㻣 他の生きものと一緒 㻝㻥 㻠㻚㻞 別に何も思わない 㻝㻢 㻟㻚㻡 経済効果を生み出すもの 㻤 㻝㻚㻤 農作物を販売するうえでの付加価値 㻟 㻜㻚㻣 苗を踏み倒す害鳥 㻟 㻜㻚㻣 世話のかかるもの・面倒なもの 㻟 㻜㻚㻣 その他 㻢 㻝㻚㻟 回答者数 㻠㻡㻢 - 人数 割合(%) 対馬にだけ生息する生き物 㻝㻠㻣 㻟㻢㻚㻟 対馬市の誇り/象徴/シンボル 㻤㻟 㻞㻜㻚㻡 絶滅の危機にある生き物 㻤㻜 㻝㻥㻚㻤 豊かな環境の象徴やバロメータ 㻟㻣 㻥㻚㻝 別に何も思わない 㻝㻢 㻠㻚㻜 対馬市の活性化の起爆剤/きっかけ 㻝㻠 㻟㻚㻡 ただの猫 㻥 㻞㻚㻞 身近ではない、遠い存在の生き物 㻢 㻝㻚㻡 他の生き物と一緒 㻠 㻝㻚㻜 農作物を販売する上での付加価値 㻝 㻜㻚㻞 経済効果を生み出すもの 㻝 㻜㻚㻞 ニワトリを襲う害獣 㻝 㻜㻚㻞 面倒な生き物 㻝 㻜㻚㻞 その他 㻡 㻝㻚㻞 回答者数 㻠㻜㻡 - 人数 割合(%) 人数 割合(%) トキ 㻝㻠㻟 㻟㻜㻚㻢 国境 㻝㻝㻤 㻞㻤㻚㻢 金山 㻝㻝㻟 㻞㻠㻚㻝 島 㻣㻞 㻝㻣㻚㻠 島 㻥㻝 㻝㻥㻚㻠 海 㻢㻥 㻝㻢㻚㻣 佐渡おけさ 㻟㻝 㻢㻚㻢 ツシマヤマネコ 㻢㻟 㻝㻡㻚㻟 海 㻞㻣 㻡㻚㻤 漁業・魚 㻠㻢 㻝㻝㻚㻝 歴史芸能文化 㻞㻝 㻠㻚㻡 歴史 㻝㻣 㻠㻚㻝 鬼太鼓 㻝㻣 㻟㻚㻢 山 㻝㻞 㻞㻚㻥 米 㻤 㻝㻚㻣 しいたけ 㻝㻜 㻞㻚㻠 おけさ柿 㻤 㻝㻚㻣 その他 㻢 㻝㻚㻡 山 㻞 㻜㻚㻠 回答者数 㻠㻢㻤 - 食 㻝 㻜㻚㻞 観光 㻝 㻜㻚㻞 その他 㻡 㻝㻚㻝 回答者数 㻠㻢㻤 -

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向は同様であることがわかる。いずれの自治体でも,住 民はさまざまな内容をテーマとした多様な環境教育・意 識啓発が提供されることを期待していることが明らかに なった。 そして,対象種の保護保全のために果たして環境教 育・意識啓発が必要なのか否かについてたずねたところ, 表14 という結果となった。どちらでも住民の 4 分の 3 程度は必要であると回答している。ところで環境教育・ 意識啓発の必要性について,「わからない」という回答を 選択した割合については,佐渡市では20.3%,対馬市に 表  佐渡市における環境教育・啓発活動の対象  表  対馬市における環境教育・啓発活動の対象 表  佐渡市における環境教育・啓発活動の内容 表  対馬市における環境教育・啓発活動の内容 表  佐渡市における環境教育・啓発活動の方法 表  対馬市における環境教育・啓発活動の方法  表  対象種保護のための環境教育・啓発活動が必要か 至っては25.5%に達していた。したがって通常であれば 好意的に受け取られる環境教育であるが,これらの地域 の一部住民にとっては,その存在意義が充分認識されて いない段階にある,という結果が得られた。 3.考察 以上,「対象種と住民自身の関係」と「対象種を保護す る立場の地域住民としての環境教育に対する考え・期待」 についてのアンケート結果のデータを比較してきた。 住民自身にとっての対象種との関係や,対象種に対し て持つ意識の現状については,どちらの地域においても ほぼ同様であった。つまりどちらの地域住民も,ある程 度生活の中で対象種を意識しており,目撃すれば「嬉し かった」り「驚いた」りもするし,対象種は絶滅の危機 にある希少な生き物で,当該地域のシンボルにもなり得 る貴重な存在である,などと理解していた。佐渡市では トキの野生復帰が現実に行われていてある程度それが進 展しており,一方の対馬市ではツシマヤマネコの野生復 帰が計画されている段階であることから,それぞれの地 域の間には野生復帰の事業展開のステージに違いがある ものの,そのようなステージの違いというものが,住民 の意識のあり方には明確な差をもたらしていない,とい うことが明らかになった。ただし,どの程度対象種が地 人数 割合(%) 人数 割合(%) はい 㻟㻠㻤 㻣㻢㻚㻣 㻞㻥㻝 㻣㻞㻚㻤 いいえ 㻝㻠 㻟㻚㻝 㻣 㻝㻚㻤 わからない 㻥㻞 㻞㻜㻚㻟 㻝㻜㻞 㻞㻡㻚㻡 回答者数 㻠㻡㻠 㻝㻜㻜 㻠㻜㻜 㻝㻜㻜 トキ ツシマヤマネコ 人数 割合(%) 人数 割合(%) 佐渡市全域の住民 㻞㻠㻤 㻡㻡㻚㻠 㻤㻣 㻞㻞㻚㻢 国民全体 㻡㻝 㻝㻝㻚㻠 㻡㻥 㻝㻡㻚㻟 佐渡市全域の子ども 㻠㻣 㻝㻜㻚㻡 㻢㻤 㻝㻣㻚㻣 生息地周辺の住民 㻠㻢 㻝㻜㻚㻟 㻝㻥 㻠㻚㻥 行政職員 㻞㻠 㻡㻚㻠 㻞㻣 㻣㻚㻜 佐渡市内の農業従事者 㻝㻤 㻠㻚㻜 㻡㻣 㻝㻠㻚㻤 観光ガイド・観光業者 㻣 㻝㻚㻢 㻝㻣 㻠㻚㻠 観光客 㻢 㻝㻚㻟 㻠㻥 㻝㻞㻚㻣 その他 㻝 㻜㻚㻞 㻞 㻜㻚㻡 回答者数 㻠㻠㻤 - 㻟㻤㻡 - 1番目 2番目 人数 割合(%) 人数 割合(%) 対馬市全域の住民 㻝㻥㻞 㻡㻜㻚㻣 㻣㻣 㻞㻟㻚㻝 生息地周辺の住民 㻢㻞 㻝㻢㻚㻠 㻠㻠 㻝㻟㻚㻞 対馬市全域の子ども 㻟㻥 㻝㻜㻚㻟 㻢㻞 㻝㻤㻚㻢 行政職員 㻟㻢 㻥㻚㻡 㻠㻠 㻝㻟㻚㻞 国民全体 㻟㻞 㻤㻚㻠 㻠㻥 㻝㻠㻚㻣 観光ガイド・観光業者 㻢 㻝㻚㻢 㻝㻞 㻟㻚㻢 観光客 㻣 㻝㻚㻤 㻟㻞 㻥㻚㻢 対馬市内の農業従事者 㻟 㻜㻚㻤 㻝㻝 㻟㻚㻟 その他 㻞 㻜㻚㻡 㻞 㻜㻚㻢 回答者数 㻟㻣㻥 - 㻟㻟㻟 - 1番目 2番目 人数 割合(%) トキを含む佐渡の自然環境 㻝㻠㻠 㻟㻞㻚㻠 環境省、新潟県、佐渡市によるトキ保護政策 㻡㻢 㻝㻞㻚㻢 トキが生息している場所の情報 㻠㻢 㻝㻜㻚㻟 トキの天敵や生息を脅かす外来種 㻠㻠 㻥㻚㻥 トキを活かした地域活性化の取り組み 㻟㻤 㻤㻚㻡 トキの生態・特徴 㻟㻜 㻢㻚㻣 トキの飼育数および野生下での生息数 㻞㻥 㻢㻚㻡 今後のトキの野生復帰計画の展望 㻞㻥 㻢㻚㻡 水田やビオトープに生息する生きもの 㻤 㻝㻚㻤 市民団体によるトキの保護活動 㻤 㻝㻚㻤 トキと他の鳥との違いや見分け方 㻠 㻜㻚㻥 その他 㻥 㻞㻚㻜 回答者数 㻠㻠㻡 - 人数 割合(%) ツシマヤマネコを含む対馬の自然環境 㻤㻜 㻞㻝㻚㻜 環境省、長崎県、対馬市によるツシマヤマネコの保護政策 㻢㻜 㻝㻡㻚㻣 ツシマヤマネコの生態・特徴 㻠㻞 㻝㻝㻚㻜 ツシマヤマネコが生息している場所の情報 㻟㻢 㻥㻚㻠 ツシマヤマネコを活かした地域活性化の取り組み 㻞㻥 㻣㻚㻢 ツシマヤマネコとイエネコとの違いや見分け方 㻞㻠 㻢㻚㻟 今後のツシマヤマネコの野生復帰計画の展望 㻞㻟 㻢㻚㻜 ツシマヤマネコの生息を脅かす外来種 㻞㻜 㻡㻚㻞 ツシマヤマネコの飼育数および野生下での生息数 㻝㻤 㻠㻚㻣 「対馬市ネコ適正飼養条例」に基づくネコの適切な飼い方 㻝㻡 㻟㻚㻥 ツシマヤマネコの交通事故防止策および事故時の対応策 㻝㻟 㻟㻚㻠 市民団体によるツシマヤマネコの保護活動 㻢 㻝㻚㻢 水田や森林に生息する生きもの 㻟 㻜㻚㻤 その他 㻝㻞 㻟㻚㻝 回答者数 㻟㻤㻝 - 人数 割合(%) 学校の授業の中での学習・体験活動 㻥㻡 㻞㻝㻚㻞 紙媒体の広報誌を通じた定期的な情報の発信 㻤㻢 㻝㻥㻚㻞 ポスターやチラシ、ステッカーなどを活用した広報活動 㻣㻤 㻝㻣㻚㻠 トキに関するイベント・研修会・講習会の実施 㻢㻡 㻝㻠㻚㻡 生息地整備などのボランティア活動 㻡㻢 㻝㻞㻚㻡 インターネットのサイトを通じた定期的な情報の発信 㻠㻞 㻥㻚㻠 トキの見学や観察 㻝㻤 㻠㻚㻜 その他 㻤 㻝㻚㻤 回答者数 㻠㻠㻤 - 人数 割合(%) 学校の授業の中での学習・体験活動 㻤㻟 㻞㻝㻚㻥 ツシマヤマネコに関するイベント・研修会・講習会の実施 㻣㻟 㻝㻥㻚㻟 ポスターやチラシ、ステッカーなどを活用した広報活動 㻣㻜 㻝㻤㻚㻡 紙媒体の広報誌を通じた定期的な情報の発信 㻡㻟 㻝㻠㻚㻜 生息地整備などのボランティア活動 㻟㻤 㻝㻜㻚㻜 インターネットのサイトを通じた定期的な情報の発信 㻞㻣 㻣㻚㻝 ツシマヤマネコの見学や観察 㻞㻡 㻢㻚㻢 その他 㻝㻜 㻞㻚㻢 回答者数 㻟㻣㻥 - 域を象徴する存在かについては,佐渡市ではトキが1番 目であったが,対馬市では4番目の選択であったという 点に,大きな差異が生じていた。このことについては, どちらの対象種も地域の全域には生息していない,とい う特色では共通しているものの,里山などに生息する鳥 であるトキと,森林に生息する哺乳類であるツシマヤマ ネコという,対象種の生態上の違いによる住民との心理 的距離感が影響している,と考えることができる。ただ し,相対的に象徴するものが多い地域では順位が下がり, 象徴するものが少ない地域では順位が上がると考えられ るため,単純な比較は一定の留保が必要である。いずれ にしても,野生復帰の事業が実施された後であっても, 実際に野生復帰が行われていない段階であっても,住民 にとっては対象種への関心は高く,保護保全の必要性を 重要視しているという点で佐渡市と対馬市とが共通して いることが明らかになった。 環境教育・啓発活動の捉え方については,その対象, 内容,方法についてほぼ同様の期待があるということが 明らかになった。生息地周辺住民ではなく,佐渡市・対 馬市全域住民を環境教育の対象と考え,トキやツシマヤ マネコそのもののみに限らず,地域の自然環境について の情報を求めている。このように野生復帰における環境 教育・啓発活動には,生息地周辺や対象種に限らず,幅 広く包括的にさまざま展開していくことが求められてい ることがわかった。 しかし,住民による環境教育・啓発活動の必要性に留 保をしている割合が一定程度存在することついて,これ らの集計だけではその理由にアプローチできないため, 環境教育・啓発活動の必要性と野生復帰事業そのものの 賛否についての考えの回答をクロス集計を行った。その 結果,表15 および表 16 を得ることができた。 これらから,環境教育・啓発活動の必要性を「わから ない」と留保した回答者による,野生復帰事業そのもの に対する賛否の程度は,必要性を認識している回答者の 賛否の程度に比較して低くなる傾向が明らかになった。 そして対象種をめぐる環境教育・啓発活動の必要性の程 度と,野生復帰事業そのものに対する支持の度合いに関 係していること,野生復帰事業を推進するためには,環 境教育・啓発活動が必要である,ということの示唆を得 ることができた。したがって,野生復帰を事業として展 開していく上で,環境教育・啓発活動の必要性に対し「わ からない」と回答を留保した住民等に対しては,野生復 帰の対象種に限らず,地域の自然などについて幅広く情 報を提供・普及していくことが求められることになる。 以上,野生復帰が行われる地域間の比較から,住民の 野生復帰対象種に対する意識や,野生復帰をめぐる住民 の環境教育・啓発活動への期待について,相似と相違の 両方の側面が存在するということが明らかになった。 おわりに 本研究を通じて,野生復帰事業を展開していく上で, 環境教育・啓発活動の重要性を改めて指摘でき,さらに その方向性を提示することができた。しかし環境教育・ 啓発活動が行われる際には,住民と対象種とのかかわり を分断しないような注意と配慮が必要となろう。なぜな ら,野生復帰の実施によって,住民の生活の中に対象種 が生息することになり,さまざまなかかわりが発生する おおいに賛成 どちらかといえば賛成 どちらともいえない どちらかといえば反対 おおいに反対 合計 はい 㻝㻤㻟 㻡㻞㻚㻜㻑 㻝㻞㻢 㻟㻢㻚㻠㻑 㻟㻠 㻥㻚㻤㻑 㻞 㻜㻚㻢㻑 㻝 㻜㻚㻟㻑 㻟㻠㻢 㻝㻜㻜㻑 いいえ 㻞 㻝㻠㻚㻟㻑 㻡 㻟㻡㻚㻣㻑 㻢 㻠㻞㻚㻜㻑 㻜 㻜㻚㻜㻑 㻝 㻣㻚㻝㻑 㻝㻠 㻝㻜㻜㻑 わからない 㻝㻠 㻝㻡㻚㻠㻑 㻟㻣 㻠㻜㻚㻣㻑 㻟㻢 㻟㻥㻚㻢㻑 㻠 㻠㻚㻠㻑 㻜 㻜㻚㻜㻑 㻥㻝 㻝㻜㻜㻑 㻝㻥㻥 㻝㻢㻤 㻣㻢 㻢 㻞 㻠㻡㻝 㻠㻠㻚㻝㻑 㻟㻣㻚㻟㻑 㻝㻢㻚㻥㻑 㻝㻚㻟㻑 㻜㻚㻠㻑 㻝㻜㻜㻑 おおいに賛成 どちらかといえば賛成 どちらともいえない どちらかといえば反対 おおいに反対 合計 はい 㻝㻞㻢 㻠㻟㻚㻠㻑 㻝㻜㻠 㻟㻢㻚㻝㻑 㻡㻤 㻞㻜㻚㻝㻑 㻜 㻜㻚㻜㻑 㻝 㻜㻚㻟㻑 㻞㻤㻤 㻝㻜㻜㻑 いいえ 㻝 㻝㻠㻚㻟㻑 㻝 㻝㻠㻚㻟㻑 㻡 㻣㻝㻚㻠㻑 㻜 㻜㻚㻜㻑 㻜 㻜㻚㻜㻑 㻣 㻝㻜㻜㻑 わからない 㻠 㻟㻚㻥㻑 㻞㻠 㻞㻟㻚㻡㻑 㻢㻢 㻢㻠㻚㻣㻑 㻟 㻞㻚㻥㻑 㻡 㻠㻚㻜㻑 㻝㻜㻞 㻝㻜㻜㻑 㻝㻟㻝 㻝㻞㻥 㻝㻞㻥 㻟 㻢 㻟㻥㻣 㻟㻟㻚㻜㻑 㻟㻞㻚㻡㻑 㻟㻞㻚㻡㻑 㻜㻚㻤㻑 㻝㻚㻡㻑 㻝㻜㻜㻑 全体 表15 佐渡市住民による環境教育・意識啓発の必要性と野生復帰事業への賛否 野生復帰事業への賛否の程度 (上段:人数/下段:割合) トキ保護のための 環境教育は必要か? 野生復帰事業への賛否の程度 (上段:人数/下段:割合) ツシマヤマネコ保護のための 環境教育は必要か? 表16 対馬市住民による環境教育・意識啓発の必要性と野生復帰事業への賛否 全体

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向は同様であることがわかる。いずれの自治体でも,住 民はさまざまな内容をテーマとした多様な環境教育・意 識啓発が提供されることを期待していることが明らかに なった。 そして,対象種の保護保全のために果たして環境教 育・意識啓発が必要なのか否かについてたずねたところ, 表14 という結果となった。どちらでも住民の 4 分の 3 程度は必要であると回答している。ところで環境教育・ 意識啓発の必要性について,「わからない」という回答を 選択した割合については,佐渡市では20.3%,対馬市に 表  佐渡市における環境教育・啓発活動の対象  表  対馬市における環境教育・啓発活動の対象 表  佐渡市における環境教育・啓発活動の内容 表  対馬市における環境教育・啓発活動の内容 表  佐渡市における環境教育・啓発活動の方法 表  対馬市における環境教育・啓発活動の方法  表  対象種保護のための環境教育・啓発活動が必要か 至っては25.5%に達していた。したがって通常であれば 好意的に受け取られる環境教育であるが,これらの地域 の一部住民にとっては,その存在意義が充分認識されて いない段階にある,という結果が得られた。 3.考察 以上,「対象種と住民自身の関係」と「対象種を保護す る立場の地域住民としての環境教育に対する考え・期待」 についてのアンケート結果のデータを比較してきた。 住民自身にとっての対象種との関係や,対象種に対し て持つ意識の現状については,どちらの地域においても ほぼ同様であった。つまりどちらの地域住民も,ある程 度生活の中で対象種を意識しており,目撃すれば「嬉し かった」り「驚いた」りもするし,対象種は絶滅の危機 にある希少な生き物で,当該地域のシンボルにもなり得 る貴重な存在である,などと理解していた。佐渡市では トキの野生復帰が現実に行われていてある程度それが進 展しており,一方の対馬市ではツシマヤマネコの野生復 帰が計画されている段階であることから,それぞれの地 域の間には野生復帰の事業展開のステージに違いがある ものの,そのようなステージの違いというものが,住民 の意識のあり方には明確な差をもたらしていない,とい うことが明らかになった。ただし,どの程度対象種が地 人数 割合(%) 人数 割合(%) はい 㻟㻠㻤 㻣㻢㻚㻣 㻞㻥㻝 㻣㻞㻚㻤 いいえ 㻝㻠 㻟㻚㻝 㻣 㻝㻚㻤 わからない 㻥㻞 㻞㻜㻚㻟 㻝㻜㻞 㻞㻡㻚㻡 回答者数 㻠㻡㻠 㻝㻜㻜 㻠㻜㻜 㻝㻜㻜 トキ ツシマヤマネコ 人数 割合(%) 人数 割合(%) 佐渡市全域の住民 㻞㻠㻤 㻡㻡㻚㻠 㻤㻣 㻞㻞㻚㻢 国民全体 㻡㻝 㻝㻝㻚㻠 㻡㻥 㻝㻡㻚㻟 佐渡市全域の子ども 㻠㻣 㻝㻜㻚㻡 㻢㻤 㻝㻣㻚㻣 生息地周辺の住民 㻠㻢 㻝㻜㻚㻟 㻝㻥 㻠㻚㻥 行政職員 㻞㻠 㻡㻚㻠 㻞㻣 㻣㻚㻜 佐渡市内の農業従事者 㻝㻤 㻠㻚㻜 㻡㻣 㻝㻠㻚㻤 観光ガイド・観光業者 㻣 㻝㻚㻢 㻝㻣 㻠㻚㻠 観光客 㻢 㻝㻚㻟 㻠㻥 㻝㻞㻚㻣 その他 㻝 㻜㻚㻞 㻞 㻜㻚㻡 回答者数 㻠㻠㻤 - 㻟㻤㻡 - 1番目 2番目 人数 割合(%) 人数 割合(%) 対馬市全域の住民 㻝㻥㻞 㻡㻜㻚㻣 㻣㻣 㻞㻟㻚㻝 生息地周辺の住民 㻢㻞 㻝㻢㻚㻠 㻠㻠 㻝㻟㻚㻞 対馬市全域の子ども 㻟㻥 㻝㻜㻚㻟 㻢㻞 㻝㻤㻚㻢 行政職員 㻟㻢 㻥㻚㻡 㻠㻠 㻝㻟㻚㻞 国民全体 㻟㻞 㻤㻚㻠 㻠㻥 㻝㻠㻚㻣 観光ガイド・観光業者 㻢 㻝㻚㻢 㻝㻞 㻟㻚㻢 観光客 㻣 㻝㻚㻤 㻟㻞 㻥㻚㻢 対馬市内の農業従事者 㻟 㻜㻚㻤 㻝㻝 㻟㻚㻟 その他 㻞 㻜㻚㻡 㻞 㻜㻚㻢 回答者数 㻟㻣㻥 - 㻟㻟㻟 - 1番目 2番目 人数 割合(%) トキを含む佐渡の自然環境 㻝㻠㻠 㻟㻞㻚㻠 環境省、新潟県、佐渡市によるトキ保護政策 㻡㻢 㻝㻞㻚㻢 トキが生息している場所の情報 㻠㻢 㻝㻜㻚㻟 トキの天敵や生息を脅かす外来種 㻠㻠 㻥㻚㻥 トキを活かした地域活性化の取り組み 㻟㻤 㻤㻚㻡 トキの生態・特徴 㻟㻜 㻢㻚㻣 トキの飼育数および野生下での生息数 㻞㻥 㻢㻚㻡 今後のトキの野生復帰計画の展望 㻞㻥 㻢㻚㻡 水田やビオトープに生息する生きもの 㻤 㻝㻚㻤 市民団体によるトキの保護活動 㻤 㻝㻚㻤 トキと他の鳥との違いや見分け方 㻠 㻜㻚㻥 その他 㻥 㻞㻚㻜 回答者数 㻠㻠㻡 - 人数 割合(%) ツシマヤマネコを含む対馬の自然環境 㻤㻜 㻞㻝㻚㻜 環境省、長崎県、対馬市によるツシマヤマネコの保護政策 㻢㻜 㻝㻡㻚㻣 ツシマヤマネコの生態・特徴 㻠㻞 㻝㻝㻚㻜 ツシマヤマネコが生息している場所の情報 㻟㻢 㻥㻚㻠 ツシマヤマネコを活かした地域活性化の取り組み 㻞㻥 㻣㻚㻢 ツシマヤマネコとイエネコとの違いや見分け方 㻞㻠 㻢㻚㻟 今後のツシマヤマネコの野生復帰計画の展望 㻞㻟 㻢㻚㻜 ツシマヤマネコの生息を脅かす外来種 㻞㻜 㻡㻚㻞 ツシマヤマネコの飼育数および野生下での生息数 㻝㻤 㻠㻚㻣 「対馬市ネコ適正飼養条例」に基づくネコの適切な飼い方 㻝㻡 㻟㻚㻥 ツシマヤマネコの交通事故防止策および事故時の対応策 㻝㻟 㻟㻚㻠 市民団体によるツシマヤマネコの保護活動 㻢 㻝㻚㻢 水田や森林に生息する生きもの 㻟 㻜㻚㻤 その他 㻝㻞 㻟㻚㻝 回答者数 㻟㻤㻝 - 人数 割合(%) 学校の授業の中での学習・体験活動 㻥㻡 㻞㻝㻚㻞 紙媒体の広報誌を通じた定期的な情報の発信 㻤㻢 㻝㻥㻚㻞 ポスターやチラシ、ステッカーなどを活用した広報活動 㻣㻤 㻝㻣㻚㻠 トキに関するイベント・研修会・講習会の実施 㻢㻡 㻝㻠㻚㻡 生息地整備などのボランティア活動 㻡㻢 㻝㻞㻚㻡 インターネットのサイトを通じた定期的な情報の発信 㻠㻞 㻥㻚㻠 トキの見学や観察 㻝㻤 㻠㻚㻜 その他 㻤 㻝㻚㻤 回答者数 㻠㻠㻤 - 人数 割合(%) 学校の授業の中での学習・体験活動 㻤㻟 㻞㻝㻚㻥 ツシマヤマネコに関するイベント・研修会・講習会の実施 㻣㻟 㻝㻥㻚㻟 ポスターやチラシ、ステッカーなどを活用した広報活動 㻣㻜 㻝㻤㻚㻡 紙媒体の広報誌を通じた定期的な情報の発信 㻡㻟 㻝㻠㻚㻜 生息地整備などのボランティア活動 㻟㻤 㻝㻜㻚㻜 インターネットのサイトを通じた定期的な情報の発信 㻞㻣 㻣㻚㻝 ツシマヤマネコの見学や観察 㻞㻡 㻢㻚㻢 その他 㻝㻜 㻞㻚㻢 回答者数 㻟㻣㻥 - 域を象徴する存在かについては,佐渡市ではトキが1番 目であったが,対馬市では4番目の選択であったという 点に,大きな差異が生じていた。このことについては, どちらの対象種も地域の全域には生息していない,とい う特色では共通しているものの,里山などに生息する鳥 であるトキと,森林に生息する哺乳類であるツシマヤマ ネコという,対象種の生態上の違いによる住民との心理 的距離感が影響している,と考えることができる。ただ し,相対的に象徴するものが多い地域では順位が下がり, 象徴するものが少ない地域では順位が上がると考えられ るため,単純な比較は一定の留保が必要である。いずれ にしても,野生復帰の事業が実施された後であっても, 実際に野生復帰が行われていない段階であっても,住民 にとっては対象種への関心は高く,保護保全の必要性を 重要視しているという点で佐渡市と対馬市とが共通して いることが明らかになった。 環境教育・啓発活動の捉え方については,その対象, 内容,方法についてほぼ同様の期待があるということが 明らかになった。生息地周辺住民ではなく,佐渡市・対 馬市全域住民を環境教育の対象と考え,トキやツシマヤ マネコそのもののみに限らず,地域の自然環境について の情報を求めている。このように野生復帰における環境 教育・啓発活動には,生息地周辺や対象種に限らず,幅 広く包括的にさまざま展開していくことが求められてい ることがわかった。 しかし,住民による環境教育・啓発活動の必要性に留 保をしている割合が一定程度存在することついて,これ らの集計だけではその理由にアプローチできないため, 環境教育・啓発活動の必要性と野生復帰事業そのものの 賛否についての考えの回答をクロス集計を行った。その 結果,表15 および表 16 を得ることができた。 これらから,環境教育・啓発活動の必要性を「わから ない」と留保した回答者による,野生復帰事業そのもの に対する賛否の程度は,必要性を認識している回答者の 賛否の程度に比較して低くなる傾向が明らかになった。 そして対象種をめぐる環境教育・啓発活動の必要性の程 度と,野生復帰事業そのものに対する支持の度合いに関 係していること,野生復帰事業を推進するためには,環 境教育・啓発活動が必要である,ということの示唆を得 ることができた。したがって,野生復帰を事業として展 開していく上で,環境教育・啓発活動の必要性に対し「わ からない」と回答を留保した住民等に対しては,野生復 帰の対象種に限らず,地域の自然などについて幅広く情 報を提供・普及していくことが求められることになる。 以上,野生復帰が行われる地域間の比較から,住民の 野生復帰対象種に対する意識や,野生復帰をめぐる住民 の環境教育・啓発活動への期待について,相似と相違の 両方の側面が存在するということが明らかになった。 おわりに 本研究を通じて,野生復帰事業を展開していく上で, 環境教育・啓発活動の重要性を改めて指摘でき,さらに その方向性を提示することができた。しかし環境教育・ 啓発活動が行われる際には,住民と対象種とのかかわり を分断しないような注意と配慮が必要となろう。なぜな ら,野生復帰の実施によって,住民の生活の中に対象種 が生息することになり,さまざまなかかわりが発生する おおいに賛成 どちらかといえば賛成 どちらともいえない どちらかといえば反対 おおいに反対 合計 はい 㻝㻤㻟 㻡㻞㻚㻜㻑 㻝㻞㻢 㻟㻢㻚㻠㻑 㻟㻠 㻥㻚㻤㻑 㻞 㻜㻚㻢㻑 㻝 㻜㻚㻟㻑 㻟㻠㻢 㻝㻜㻜㻑 いいえ 㻞 㻝㻠㻚㻟㻑 㻡 㻟㻡㻚㻣㻑 㻢 㻠㻞㻚㻜㻑 㻜 㻜㻚㻜㻑 㻝 㻣㻚㻝㻑 㻝㻠 㻝㻜㻜㻑 わからない 㻝㻠 㻝㻡㻚㻠㻑 㻟㻣 㻠㻜㻚㻣㻑 㻟㻢 㻟㻥㻚㻢㻑 㻠 㻠㻚㻠㻑 㻜 㻜㻚㻜㻑 㻥㻝 㻝㻜㻜㻑 㻝㻥㻥 㻝㻢㻤 㻣㻢 㻢 㻞 㻠㻡㻝 㻠㻠㻚㻝㻑 㻟㻣㻚㻟㻑 㻝㻢㻚㻥㻑 㻝㻚㻟㻑 㻜㻚㻠㻑 㻝㻜㻜㻑 おおいに賛成 どちらかといえば賛成 どちらともいえない どちらかといえば反対 おおいに反対 合計 はい 㻝㻞㻢 㻠㻟㻚㻠㻑 㻝㻜㻠 㻟㻢㻚㻝㻑 㻡㻤 㻞㻜㻚㻝㻑 㻜 㻜㻚㻜㻑 㻝 㻜㻚㻟㻑 㻞㻤㻤 㻝㻜㻜㻑 いいえ 㻝 㻝㻠㻚㻟㻑 㻝 㻝㻠㻚㻟㻑 㻡 㻣㻝㻚㻠㻑 㻜 㻜㻚㻜㻑 㻜 㻜㻚㻜㻑 㻣 㻝㻜㻜㻑 わからない 㻠 㻟㻚㻥㻑 㻞㻠 㻞㻟㻚㻡㻑 㻢㻢 㻢㻠㻚㻣㻑 㻟 㻞㻚㻥㻑 㻡 㻠㻚㻜㻑 㻝㻜㻞 㻝㻜㻜㻑 㻝㻟㻝 㻝㻞㻥 㻝㻞㻥 㻟 㻢 㻟㻥㻣 㻟㻟㻚㻜㻑 㻟㻞㻚㻡㻑 㻟㻞㻚㻡㻑 㻜㻚㻤㻑 㻝㻚㻡㻑 㻝㻜㻜㻑 全体 表15 佐渡市住民による環境教育・意識啓発の必要性と野生復帰事業への賛否 野生復帰事業への賛否の程度 (上段:人数/下段:割合) トキ保護のための 環境教育は必要か? 野生復帰事業への賛否の程度 (上段:人数/下段:割合) ツシマヤマネコ保護のための 環境教育は必要か? 表16 対馬市住民による環境教育・意識啓発の必要性と野生復帰事業への賛否 全体

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ようになるからである。野生復帰の実施者が,新たに発 生するかかわりを無視し,環境教育の扱う内容や範囲を 一方的に決定し,住民はその単なる受け手となってしま えば,住民と対象種はもちろんのこと,実施者と住民と の間の有機的なつながりが構築できなくなってしまう。 仮に,実施者側のみの意志で一方的に環境教育・啓発活 動の活動が進められるのであれば,それは真の共生関係 に向かうのではなく,むしろ強いられた共生関係(本田 2008)を形成してしまうことになる。その観点から,野 生復帰事業そのものについての住民の共感や支持が得ら れるようなアプローチが必要である。つまり野生生物の 保全を企図した環境教育・啓発活動を推進するには,受 け手となる地域住民が期待するものとなるように,一定 の配慮がなされるべきである。そして地域住民が期待す る環境教育・啓発活動の提供を尊重することと並んで, 国や都道府県,自治体などといった野生復帰事業の主体 者としての積極的な環境教育・啓発活動の展開を住民等 に対して行うということも,野生復帰事業を成功させる という政策企図を達成させるためには重要となる。した がって提供側と受け手側双方からのフィードバックが担 保されるような環境教育・啓発活動の仕組みを構築する ことが求められるのである。 ところで対馬市で見られたように,ツシマヤマネコが 地域を象徴する存在であると認識した住民が一部にとど まっている,という現状が見られる限りにおいては,当 該地域における環境教育を企図する際に,ツシマヤマネ コの保護保全のみを扱うということについては限界があ る。なぜならもしそれだけをテーマとして掲げるもので あれば,そこで実施される環境教育や啓発活動の主題は 多くの住民にとって関係がないものと認識されてしまい, 環境教育や啓発活動が効果をもたらさなくなってしまう 可能性が生じるからである。そのことから,野生復帰事 業に関与していないような環境教育や啓発活動の実施主 体をも取り込んだ,地域の中でのさまざまな環境課題を 取り上げた,いわゆる総花的で庸俗な環境教育も,一方 においては構想し推進される必要もある。 以上のとおり,野生復帰の実施と推進には,環境教育・ 啓発活動が重要であり,佐渡市民全体や対馬市民全体, といったいわゆる地域全体で展開していくことが必要で ある。その点からも,改めて環境教育・啓発活動の目標 を確認し,住民の意識とかい離しない継続的な実施計画 と実践を企画することが課題となる。そして,環境教育 それ自体の多様な展開を政策誘導していくこと,環境教 育の実施主体を育成強化していく作業を継続すること, また地域の住民は世代的にも移動の結果としても次第に 入れ替わっていくので,単発や一回のみの環境教育・啓 発活動ではなく,繰り返しや重複することを意図的に重 視した展開を図っていくことが求められるのである。さ らに,近年特に注目されるようになってきている持続可 能な開発のための教育(ESD)の発想(阿部 2010)な ども取り入れて,総合的な体制の構築を図っていくこと を地域で企画することも今後必要となってくるであろう。 佐渡市や対馬市において展開されるべき環境教育・啓発 活動の在り方を具体的に提案していくための枠組の検討 およびそのためのさらなる分析を行うことは,今後の課 題とする。 付記 本研究の一部に,科学研究費補助金基盤研究(C)(研究課題番号: 2635024「環境課題が庸俗なアジアの自治体におけるコミュニティ支援 型環境教育の研究」)を利用した。 補注 1)佐渡市住民基本台帳より無作為に抽出した20 歳から79 歳の1000 人 を対象に2014 年11 月1 日に郵送した。最終的な回収数は468通で, 宛先不明分を差し引くと,回収率は46.9%,回答者の平均年齢は 57 歳,男女比は49:51 であった。 2)対馬市住民基本台帳より無作為に抽出した20 歳から79 歳の1000 人 を対象に2015年1月17 日に郵送した。最終的な回収数は413 通で, 宛先不明分を差し引くと,回収率は41.9%,回答者の平均年齢は 56 歳,男女比は48:52 であった。 3)佐渡および対馬のどちらの回答者の分布において,20 代および60 代 で,住民基本台帳の分布と違いがあった。 4)分析には質問項目ごとに回答があったものをその項目の回答数とし, それぞれ100%として算出した。 引用文献 阿部治(2010)ESD(持続可能な開発のための教育)とは何か,ESD をつくる.pp.1~27,ミネルヴァ書房,京都. 本田裕子(2008)野生復帰されるコウノトリとの共生を考える.原人舎 本田裕子(2015)放鳥6年経過後のトキの野生復帰事業に関する住民意 識について-佐渡市全域のアンケート調査から.大正大学研究紀要, 100,259~290. 本田裕子・高橋正弘(2015)ツシマヤマネコとその保護活動をめぐる住 民の認識に関する研究-対馬市民へのアンケート調査から.地域政 策研究, 18-1, 79~98.

IUCN, 1998, Guidelines for re-introductions. IUCN/SSC Re-introduction Specialist Group. Gland, Switzerland & Cambridge, UK: IUCN.

高橋正弘(2013)環境教育政策の制度化研究.風間書房,東京,178pp. 高橋正弘(2015)コミュニティで取り組まれている環境教育の分析枠組

の検討.大正大学研究紀要,100,291~31

ラオス中部中山間地域における薪消費量と資源量の推定

Estimation of Amount of Firewood Consumption and Forest Resource in Hilly and

Mountainous Areas in Central Laos

木村 健一郎 *・米田 令仁**

Kenichiro KIMURA and Reiji YONEDA 要旨:ラオスの農山村の一般的な燃料は薪炭であり,森林から採取して利用している。持続的な森林利 用を計画するため,地域住民の森林利用実態を明らかにし,日常的に利用される薪消費量と薪消費量から 推定される森林資源量を明らかにした。その結果,対象村ではCratoxylum sp.と Peltophorum dasyrachis の2 種類の樹木が利用全体の6 割を占めていた。平均すると各世帯は約 2 千 kg の薪を年間消費しており,村全 体では271 千 kg の薪消費量であった。これは,村の休閑林の約 16ha に相当する森林資源量に相当した。

キーワード:利用実態,薪消費量,休閑林,森林資源

Abstract: The common fuel in rural communities in Laos is firewood, and it is harvested from forests. In order to plan for sustainable forest use and to clarify the use of forests by local residents, we clarified the daily consumption of firewood and the amount of forest resources used as estimated from firewood consumption. The results show that two types of tree, Cratoxylum sp. and Peltophorum dasyrachis account for 60% of total use. On average each household consumes about 2,000kg per year, and the consumption of an entire village was 271,000 kg. This corresponded to forest resources equivalent to 16 ha of the village's fallow forest.

Key Words: actual usage, firewood consumption, fallow forest, forest resource

はじめに 発展途上国では薪炭は現在でも主要な燃料の一つとし て利用されている。特に農山村では調理など日常の燃料 として利用されている。 国民の8 割が農業に従事しているラオス(名村 2008) では,農山村の家庭で用いられる燃料は現在でも薪炭利 用が主流であり,住居に多量の薪がストックされている 光景が現在でも一般的に見られる。 ラオスのエネルギー需要の51%が家庭部門であり,全 エネルギー消費量の内訳をみると,薪56%,石油 17%, 電力12%,木炭 12%及び石炭 3%(Lao PDR2011)と, 木質系燃料だけで,68%を占めている。 ラオスの農山村の地域住民は稲作を生業とし,低地で は水稲作,山地では焼畑陸稲作を行っている。また,森 林から非木材林産物を採取するなど自給的な暮らしを伝 統的に営んでいる。1996 年に森林法が制定され,同年適 正な土地利用を目的とした土地森林分配事業が実施され た。1999 年には焼畑禁止の農林省令(鈴木ほか 2002) が発布され,焼畑移動耕作は禁止されたが,農業区域内 で行われる回転式焼畑は現在でも実施されている。 このように農山村の生活は森林と密接に関わっており, 森林からの地域住民の薪採取量は無視できないと考えら れる。 先行研究では芝原(2004)が,隣接するタイ東北部の ロイエット県の平地天水稲作を生業とする農村で薪炭と 建築用材から必要な森林資源量を推定している。ラオス では古家ら(2008)は薪採取箇所について報告しているが, 使用量については言及されていない。薪の消費量,採取 箇所を明らかにする事は,ラオスの持続的な森林の利用 を計画する上で重要である。 そこで本研究ではラオス中部の農山村で利用されてい る薪利用の実態について,記録簿調査により薪消費量, インタビュー調査及びGPS 調査から採取位置を明らか にするとともに,薪消費量から相当する森林資源量を推 定した。 1.研究の方法 1.1調査地の概要 調査地はラオス中部ビエンチャン県ファン郡N 村 *国際農林水産業研究センター 農村開発領域 **国際農林水産業研究センター 林業領域 環境情報科学 学術研究論文集 29(2015) 262

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