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小児耳 31(3): , 2010 第 5 回 日本小児耳鼻咽喉科学会 シンポジウム Ⅰ 睡眠時無呼吸症候群 よりよい診療のために 診断と定義 これだけは知っておきたい診断のポイント 中田誠一 ( 藤田保健衛生大学坂文種報徳會病院耳鼻咽喉科 ) 成人と小児の睡眠時無呼吸症候群はいくつか

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― 1 ― (199) 藤田保健衛生大学坂文種報徳會病院耳鼻咽喉科(〒4548509 名古屋市中川区尾頭橋3610) ― 1 ― (199)

第 5 回

日本小児耳鼻咽喉科学会

シンポジウムⅠ

睡眠時無呼吸症候群―よりよい診療のために―

診断と定義

―これだけは知っておきたい診断のポイント―

(藤田保健衛生大学坂文種報徳會病院耳鼻咽喉科) 成人と小児の睡眠時無呼吸症候群はいくつかの相違点があり,注意が必要である。通常, 無呼吸低呼吸指数は成人のそれに比べて低くでても臨床症状がでやすい。また閉塞性無呼吸 に伴う覚醒反応は成人に比べて起こりにくく,昼間の過度の眠気という臨床症状はでにく い。小児の閉塞性睡眠時無呼吸症候群の診断基準は現在のところ無呼吸低呼吸指数が 1 以上 でかつ臨床症状を伴うということが基本であるが,今後,無呼吸の重症度指標である無呼吸 低呼吸指数が 2 以上という数値に変わる可能性がある。簡易スクリーニング検査においては 寝ている状態を観察しているビデオ記録やいびき音録音が比較的、感度・特異度がよく,パ ルスオキシメーターは使い方に注意が必要である。 キーワード小児,睡眠時無呼吸症候群,無呼吸低呼吸指数,簡易スクリーニング検査,パ ルスオキシメーター は じ め に 小児の睡眠時無呼吸症候群は成人とは診断基 準や,症状などがかなり違い,成人を小さくし たものと考えると大きく誤ってしまう。今回は 小児の閉塞性の睡眠時無呼吸症候群について概 要を述べるとともに,現在の診断基準について の up date なところや簡易スクリーニング検査 についてどのような検査が有用なのかというこ とについて述べることとする。 小児の閉塞性睡眠時無呼吸症候群の概要 小児の閉塞性睡眠時無呼吸症候群(Obstruc-tive Sleep Apnea Syndrome: OSAS)は小児の

間で大体 23であり,好発年齢は 26 歳で男 女差は無いとされる。これらはちょうど口蓋扁 桃,咽頭扁桃(アデノイド)が生理的に肥大す る 時 期 と 一 致 す る 。 小 児 の OSAS は 成 人 の OSAS とくらべていくつかの相違点が見られ る。一つは小児の上気道は狭いが虚脱しにくい ことである1)。小児の上気道の虚脱しにくさは 上気道の筋緊張が保たれているためと推測され る。このことは小児で OSAS が REM(rapid eye movement)睡眠期に起こることが非常に 多 い と い う こ と と 関 係 し て く る2)。 つ ま り REM 睡眠期では筋緊張が生理的に消失するの で,上気道の狭さがそのときにより顕著な形で 出てくる。また二つめには閉塞性無呼吸に伴う

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― 2 ― (200) 表 PSG からみた健常人の睡眠パラメーター 筆頭著者 年 調査数 年齢幅 AI AHI LowestSPO2 Marcus et al 1992 50 1.117.4 0.1±0.5 96.0±2.0 Uliel et al. 2004 70 1.015 0.53±0.35 94.6±2.2 Wong et al. 2004 11 3.08.0 0.0±0.0 0.0±0.1 95.0±3.0 Traeger et al. 2005 66 2.59.4 92.0±3.0 MontgomeryDowns et al. 2006 153 3.25.9 0.86±0.75 0.9±0.78 92.7±4.5 388 6.08.6 0.5±0.52 0.68±0.75 92.6±3.6 AI(Apnea Index 無呼吸指数) AHI(Apnea Hypopnea Index 無呼吸低呼吸指数)

LowestSPO2(最低酸素血中飽和度)

MontgomeryDowns HE et al. Pediatrics 117; 74153, 20067)から改変

― 2 ― (200) 覚醒反応が成人に比べて起こりにくい1)。よっ て覚醒反応に伴う睡眠の分断化は起こりにく く,かつ睡眠構築も保たれやすい。このこと は,成人のように日中の過度の眠気は起こしに くくなる。そのかわり多動や攻撃性または逆に 病的なはにかみや引っ込み思案などといった異 常行動として現れやすい。また三つめは,成人 に比べてより軽度で臨床症状が出現する1)。小 児は機能的残気量が少ないので,比較的短い無 呼吸で酸素飽和度の低下を招きやすく,成人に くらべ 比較的低い無呼吸低呼吸指数( apnea hypopnea index: AHI)でも OSAS で臨床症状 が出現する。臨床症状としては先ほどにあげた 日中の異常行動があり,夜間はいびき,呼吸困 難を伴う。しかし,うめき,荒い鼻息,あえ ぎ,咳などいった症状で表されることもあり成 人より多彩な状態で現れる。気道確保のため頻 回に体位を換え,寝相が著しく悪くなる。仰向 けで眠ることはあまりなく,うつぶせ寝や側臥 位を好むことが多い。生理的所見としては成人 同様,低酸素血症とともに成人より,高炭酸ガ ス血症を招きやすい。合併症は,先ほどにあげ たように日中の異常行動であり最近は注意欠 陥・多動性障害(Attention Deˆcit/Hyperac-tivity Disorder: AD/HD)の関係も示唆されて いる3)。また学習困難もよく報告されており, 睡眠時の血液ガスの異常が学校の成績に関係し ているとの報告もある4)。また成長障害は深刻 な合併症である。成長ホルモン分泌は夜間の徐 波睡眠出現と深く関係することから小児の睡眠 障害で正常な睡眠構築が崩されると,成長ホル モンが分泌されにくいという推論がたつ5)。た だしこの説も確定したわけではなく口蓋扁桃肥 大の物理的な摂食障害など様々な要因がからん でいる。 現在の小児睡眠時無呼吸の診断基準 2005年のアメリカ睡眠学会の睡眠障害国際 分類(International Classiˆcation of Sleep Dis-orders: ICSD2)の OSAS の診断基準6)によれ

ば,いろいろな記載が網羅されてはいるが,ポ イントとしては小児を世話する両親などからみ て何らかの OSAS による臨床症状(発汗や吸 気中の胸郭の陥没など)があり,AHI が 1 時 間に 1 回以上あるということである。これらは 過去に数人の正常な OSAS のない小児の Poly-somnography(PSG)検査を行った結果を総合 し て 決 定 し た 数 値 で あ っ た ( 表 1 )。 し か し 2006年になり Goazl らのグループによる大規 模研究が行われるに至り,欧米人における小児 の睡眠呼吸障害の PSG における基準がはっき りとした7)(表 1)。彼らは 6 歳未満と 6 歳以上 9 歳未満の睡眠呼吸障害を否定した正常な小児 541人の PSG 検査を行い(6 歳未満153人 6 歳以上 9 歳未満388人),6 歳未満では AHI が 0.9±0.78回/hr であり 6 歳以上 9 歳未満では AHI が 0.68 ± 0.75 回 / hr と い う 結 果 に な っ た7)。これらの数値から標準偏差の 2 倍までの 数値を正常範囲とした場合,6 歳未満の小児の PSG における正常値は0.111.61回/hr となり,

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― 3 ― (201) 表 Audio/ビデオ,パルスオキシメーターの簡易スクリーニングモニターとしての信頼性

著 者 年 PSG による OSAS の基準 数 感度 特異度 1. Audio/Vidotaping Sivan 1996 AHI≧1 94 68

Goldstein. 1994 AHI≧15 30 92 29 Lamn l. 1999 AHI≧5 71 80 2. Pulse Oximetry Brouilltte 2000 AHI≧1 349 43 98 Technical report: diagnosis and management of childhood obstructive sleep apnea syndrome

Schechter MS; Section on Pediatric Pulmonology, Subcommittee on Obstructive Sleep Apnea Syndrome. Pediatrics. 2002 Apr; 109(4): e69. Review.12)から改変

表 Videotape での無呼吸判定の信頼性 Association of polysomnography (PSG) results with overall investigator assessment of the video test in 58 children Polysomnography Total Abnormal Normal Video test Abnormal 34 7 41 Normal 2 15 17 Total 36 22 58 感度 94 特異度 68 x2乗検定の結果 P 検定値は 1未満 p<0.001, Fisher's exact test.

Sivan Y, et al. Screening obstructive sleep apnoea syn-drome by home videotape Recording children. Eur Respir J 9; 21272131, 19969) ― 3 ― (201) AHI≧1 が小児 OSAS とする根拠が根底から覆 されることとなった。これらの結果から Goazl らのグループは,PSG における小児 OSAS の 定義を AHI≧2 とし,ほかの症状と組み合わせ て小児 OSAS の診断基準として用いることを 提唱している8)。今後,PSG において AHI≧2 が小児 OSAS としての定義になることはもう 少し時間を待たねばならないが,少なくとも AHI≧1 を小児 OSAS としての定義として用い るのは,今後かなり無理があるかもしれない。 さらに,アジア系つまりモンゴロイドの小児 OSAS と定義づける PSG data は全くない。モ ンゴロイドにおいてもこの PSG における小児 OSAS の基準値をつくることは重要な課題であ る。 簡易スクリーニング検査の信頼性 簡易スクリーニング検査が小児 OSAS の判 定として有用かどうかは,通常の PSG 検査と 共に各種の睡眠呼吸障害の簡易スクリーニング 検査を同時に行い簡易スクリーニング検査の信 頼度を判定しなければならない。表 2 は PSG を gold standard とした場合,小児 OSAS の有 無に関して,ビデオ記録やいびき音録音,パル スオキシメーターの信頼性に関する感度や特異 度を表す。この表から知り得ることは,パルス オキシメーターの感度の低さと,ビデオ記録や いびき音録音の感度,特異度の高さである。ビ デオ記録の判定の開始はいびきが起きたときの 30分間のビデオ記録である9)。そのビデオ記録 の中で,寝ているときに体動があるかどうか や吸気時にある種の音を発生していないか(あ る種のいびき音ともいえる)や陥没呼吸をし ていないかなど計 7 個の判定項目に及ぶ。こ れら 7 個において独自の点数化を行い,ある点 数以上を小児 OSAS と判定した。それらの結 果から感度98特異度68と簡易スクリーニ ング検査としては良好な数値に至った(表 3)。 またいびき音録音による判定は,方法としてさ らに簡便になっている10)。小児が寝ていると判 定した時期に15分間,いびきを含めた寝息を 録音しただけである。その15分の中で鼻息を ならした呼吸音か,かすかにでも聞こえる吸気 時発生の音が 3 回以上発生したか,5 秒以上の 呼吸停止を認めた場合,睡眠時無呼吸と定義し た。感度は71であり特異度は80でありこ れも簡易スクリーニング検査としては十分に耐 えうる感度・特異度を示した(表 4)。一方,

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― 4 ― (202)

表 Audiotapes の音による判定での無呼吸判定の信 頼性

Sensitivity and Speciˆcity of a Home Audiotape as a Predictor for OSAS

Sensitivity1 Speciˆcity1 Audiotape (struggle sound) 71 (4386) 80 (6780) Audiotape (respiratory pauses) 43 (2957) 80 (7387) Audiotape (struggle sound+pauses) 43 (2950) 80 (7387) もがくようないびき音があれば感度 71・特異度 80となる。

1 Median and range for the seven observers. Lamm C, et al. Evaluation of Home Audiotapes as Ab-breviated Test for Obstructive Sleep Apnea Syndrome in Children. Pediatr Pulmonl 27; 267272, 199910)

表 パルスオキシメトリーでの無呼吸判定の信頼性

Test Properties of Pulse Oximetry for OSA. Posttest Probabilities Assume a Pretest Probability of 60

Oximetry Result

OSA by PSG

Likelihood

Ratio ProbabilityPosttest Yes n=210 No n=139

Number Proportion Number Proportion

Positive 90 90/210(.428) 3 3/139(.022) 19.4(.428/.022) 97 Inconclusive or negative 120 120/210(.571) 136 136/139(.978) .58(.571/.978) 47

感度 43(0.428) 特異度 98(0.978)

Brouillette RT, et al. Nocturnal Pulse Oximetry as an Abbreviated Testing Modality for Pediatric Obstructive Sleep Apnea. Pediatrics 105; 405412, 200011) ― 4 ― (202) パルスオキシメトリーによる小児 OSAS への 簡易スクリーニングの有用性はどうであろう か パルスオキシメーターはかなり普及して おり,小児においても簡易スクリーニング検査 として使われている人がいるかもしれない。こ れについては,349人の小児について上記と同 様 に PSG 同 時 記 録 に て 調 べ た 結 果 , 感 度 43 ,特異度98という結果になった11)(表 5)。 つまりパルスオキシメーターで睡眠時無呼吸を 否定された場合は,ほとんどそれは真である が,肯定された場合,半分以上の確率でそれは 偽となる。よってパルスオキシメトリーは,簡 易スクリーニング検査としては意外に難しいの かもしれない。今回,この論文でのパルスオキ シメーターの OSAS の判定基準は最低酸素飽 和度90未満であった。このことから言える 大事な事は,パルスオキシメーターにて最低酸 素飽和度が90以上あれば,ほぼ小児 OSAS でないと否定できるが,最低酸素飽和度が87, 88, 89あたりの値であった場合,小児 OSAS であるかどうか微妙であるということを示唆し ている。このことをしっかり認識して使うなら ばパルスオキシメーターも有用であるかもしれ ない。また質問だけによる簡易スクリーニング の有用性については,質問紙法の小児 OSAS に対しての有用性を調べた,質の高い 3 論文の 感度,特異度の平均値はそれぞれ59.5,51.9 であった12)。よって質問だけで無呼吸の有無 をスクリーニングするのはかなり難しいと考え るのが妥当である。 今まで述べたことより言えることは,小児 OSAS の有無をスクリーニングするとき,ビデ オ記録やいびき音録音の方法が他の方法より優 れていることが明らかとなった。このことは、 小児 OSAS の有無かつ重症度を見る際,寝て いるときの呼吸状態をしっかり観察しなさいと いうことを意味している。 ま と め 1. PSG による小児無呼吸による AHI の定義 は少なくとも 2 以上に変わってゆく可能性 が高い。 2. 簡易スクリーニング検査においては,寝て いるときの症状観察を基本とするビデオ記 録や,いびき音録音などが PSG 記録診断

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― 5 ― (203) ― 5 ― (203) との一致性が高く信頼度が高い。 3. パルスオキシメーターでの簡易スクリーニ ング検査は,最低酸素飽和度が90以上あ れば,ほぼ小児 OSAS でないと否定でき るが,最低酸素飽和度が8789あたりの 値であった場合,小児 OSAS であるかど うかは微妙であり,さらなる検討が必要で ある。 文 献 1) 長谷川 毅小児の閉塞性睡眠時呼吸障害.睡眠 時呼吸障害Update 2006.第 1 版. 井上雄一,山城義弘編,日本評論社,東京2006: 107 116頁

2) Goh DYT, Marcus CL. Changes in obstructive sleep apnea characteristics in children through the night (abstr). Am J Respir Crit Care Med 1998; 157: A1533

3) Goraya JS, Cruz M, Valencia I, et al.: Sleep study abnormalities in children with attention deˆcit hyper-activity disorder. Pediatr Neurol. 2009; 40: 4246. 4) Gozal D: Sleep-disordered breathing and school

performance in children. Pediatrics 1998; 102: 616 620

5) 千葉伸太郎SAS の身体発育への関与の詳細と特 徴.MB ENT 2005; 52: 1318

6) American Academy of Sleep Medicine: The Inter-national classiˆcation of sleep disorders. Diagnosis and coding manual. 2nd ed. Academy of sleep

medi-cine, Westchester New York; 2005

7) Montgomery-Downs HE, O'Brien LM, Gulliver TE, et al.: Polysomnographic characteristics in nor-mal preschool and early school-aged children. Pediatrics 2006; 117: 741753

8) Kheirandish-Gozal L and Gozal D: The multiple challenges of obstructive sleep apnea syndrome in children: diagnosis. Curr Opin Pediatr 2008; 20: 650 653

9) Sivan Y, Kornecki A, Schonfeld T: Screening ob-structive sleep apnoea syndrome by home videotape recording in children. Eur Respir J 1996; 9: 2127 2131

10) Lamm C, Mandeli J, Kattan M: Evaluation of home audiotapes as an abbreviated test for obstructive sleep apnea syndrome (OSAS) in children. Pediatric Pulmonol 1999; 27: 267272

11) Brouillette RT, Morielli A, Leimanis A: Nocturnal pulse oximetry as an abbreviated testing modality for pediatric obstructive sleep apnea. Pediatrics 2000; 105: 405412

12) Schechter MS and the Section on Pediatric Pul-monology: Subcommittee on Obstructive Sleep Ap-nea Syndrome: Technical report: diagnosis and management of childhood obstructive sleep apnea syndrome. Pediatrics 2002; 109: e69: 120

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〒4548509 名古屋市中川区尾頭橋 3610 藤田保健衛生大学坂文種報徳會病院耳鼻咽喉科 中田誠一

Management of sleep apnea syndrome for better clinical practice

Pediatric sleep apnea syndrome―diagnosis and deˆnition―

Seiichi Nakata

Department of Otorhinolaryngology, Second Hospital, Fujita Health University School of Medicine

Key words: infant, pediatric sleep apnea syndrome, apnea-hypopnea index, portable sleep studies, home oximetry

参照

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