あの『焼肉ドラゴン』に続く、鄭義信渾身の書き下ろし!
2008年の初演、11年の再演ともに、日韓両国で上演され大好評を博した『焼肉ドラゴン』。その
前史ともいえるのが、今回、鄭義信が書き下ろし演出する『パーマ屋スミレ』です。
1960年代半ばの九州の炭鉱町に店を構える“高山厚生理容所”を舞台に、日本の陰の現代史
ともいうべき、在日コリアンの炭鉱労働者とその家族、そして彼らを取り巻く人々に光を当てます。
まさしく、鄭が目指すところの「記録する演劇」です。
物語の軸となるのは、いつか “パーマ屋スミレ”を開店させたいと願う在日コリアンの元美容師・
高山須美(南果歩)と、その夫で炭鉱事故が原因の一酸化炭素中毒の後遺症に苦しむ張本成勲
(松重豊)。逆境にめげず力強く生き抜く様を、笑いあり涙ありの庶民の喜怒哀楽の中に描きます。
有明海を望む峠の理容所に集う、けなげで、ちょっとダメで、いとおしい人たちが息づき、舞台
上をオート三輪が走るリアルな空気感は、鄭義信ならでは。『焼肉ドラゴン』を観た人はもちろん、
観ていない人も必見の、おかしくも切ない物語にご期待ください!
【12月17日(土)チケット前売り開始 ☎新国立劇場ボックスオフィス 03-5352-9999】
写真・資料のご請求、取材のお問い合わせ
◎新国立劇場 制作部演劇 広報担当 田中雅司
◎新国立劇場 制作部演劇 制作担当 伊澤雅子、太田 衛
TEL: 03-5352-5738 / FAX: 03-5352-5709
新国立劇場 2011/2012 シーズン演劇公演
作・演出◎鄭 義信
2012 年 3 月 5 日(月)~25 日(日)
新国立劇場 小劇場
◎作品について
2008年に、日韓合同公演『焼肉ドラゴン』の作・演出を担当し、その年の話題をさらい、数多く
の演劇賞を受賞した鄭義信。朝鮮戦争が始まった1950年代を描いた『たとえば野に咲く花のよう
に』、万博が開催され、高度経済成長に踊る1970年前後のある在日コリアンの家族を描いた『焼
肉ドラゴン』に引き続き、新作『パーマ屋スミレ』を書き下ろし、演出します。
本作品は、前二作のちょうど真ん中、1960年代半ば、九州のある炭鉱町で、在日コリアンの元
美容師と、彼女と再婚した炭坑夫の夫婦を中心に、炭鉱事故に巻き込まれた人々の悲喜こもごも
を描く物語です。
『焼肉ドラゴン』の中で、伊丹空港建設の為に、閉山した九州の炭鉱からたくさんの人が職を求
めて流れてきたという会話が出てきます。鄭義信が執筆の為の取材時に聞いたエピソードと、以前、
九州の炭鉱で取材した話がつながり、『焼肉ドラゴン』の前史ともいえる60年代を描くことになりま
した。それが今回の『パーマ屋スミレ』。名もなき人たちの陰の歴史の記録です。
エネルギー転換期の狭間で犠牲になった人々の姿は、原子力エネルギー問題を抱える現在と
も二重写しに見え、繰り返す人間の愚行を考えさせられます。
タイトルロールの須美役は、映像、舞台と精力的に活躍する南果歩。CO患者(一酸化炭素中毒
患者)の夫を抱えつつ、いつかパーマ屋をやることを夢見ながら、悲惨な状況の中でも明るく、家
族や友人を支える芯の強い九州女を演じます。
須美の夫で、CO患者になってしまう炭坑夫・成勲(ソンフン)役に、同じく映像、舞台と活躍する
松重豊。ヤマ(鉱山)しか知らない裸一貫で働いてきた男が、炭鉱事故の後遺症に苦しみ、引き裂
かれていく姿を演じます。
これまで出演した鄭義信脚本作品は、南が映画『お父さんのバックドロップ』(李闘士男監督、中
島らも原作)、松重が映画『血と骨』(崔洋一監督、梁石日原作)ですが、鄭義信の作・演出作品に
出演するのは二人とも初めて。どんな夫婦を築きあげていくかが楽しみです。
そして、二人が住む理容所には、鄭言うところの「やかまし村の住人」が今回もたくさん集まりま
す。須美の姉・初美役に根岸季衣、妹・春美役に星野園美、パワフルな三人姉妹に期待が高まり
ます。さらには、青山達三、久保酎吉、森下能幸、酒向芳、石橋徹郎など、個性的な舞台俳優達が
集結。『焼肉ドラゴン』に続き朴勝哲もアコーディオンで参加し、パワフルなアンサンブルを見せて
くれることでしょう。また、『焼肉ドラゴン』で強く印象に残る音楽を作曲した久米大作が、今回も参
加。60年代の洋楽、歌謡曲、労働歌とともに、久米の情緒あふれる音楽もお楽しみください。
◎あらすじ
1965年、九州。「アリラン峠」と呼ばれた小さな町があった。そこからは有明海を一望することが
できた。アリラン峠のはずれにある「高山厚生理容所」には、元美容師の須美とその家族たちが住
んでいる。須美の夫の成勲は炭鉱での爆発事故に巻きこまれ、CO患者(一酸化炭素中毒患者)と
なってしまう。
須美の妹・春美の夫もまたCO患者となり、須美たちは自分たちの生活を守るために必死の戦
いを始めた。しかし、石炭産業は衰退の一途をたどり…。
◎マンスリー・プロジェクトについて
一人でも多くの方に気軽に劇場に足を運んでもらいたいと、“開かれた劇場”を目指す芸術監督
の宮田慶子。その一環として、2010/2011 シーズンより「マンスリー・プロジェクト」が始動しました。
リーディングあり、講座あり、トークショーありの、多彩な無料プログラムを用意し、その月々に関連
した演劇公演に多角的にアプローチしています。
『パーマ屋スミレ』が上演される2012年3月は、「鄭義信 三作品をふりかえる」と題し、新国立劇
場で鄭義信が手がけた三つの作品について、本人がその作品世界を語ります。
スペシャルトーク 「鄭義信 三作品をふりかえる」
―『たとえば野に咲く花のように』『焼肉ドラゴン』『パーマ屋スミレ』をめぐって―
出席者: 鄭 義信 (劇作家・演出家)
聞き手: 内田洋一 (日本経済新聞文化部編集委員)
日時: 2012年3月17日(土)17:30
会場: 新国立劇場 小劇場
2012年2月14日(火)~3月5日(月)の応募期間内に、新国立劇場ホームページの所定のフォ
ーマットもしくは往復ハガキでのお申し込みが必要です。詳しくは、新国立劇場ホームページ
(http://www.nntt.jac.go.jp/play/)か、情報センター(03-5351-3011(代))でご確認ください。
◎作・演出からのメッセージ
鄭 義信
『焼肉ドラゴン』の取材の時、伊丹空港のそばに住んでいらした在日韓国人の方からこんな話を聞いた。
「万博のための、伊丹空港の新滑走路建設にですね、九州の炭鉱から、閉山になってあぶれた労働者たちが
流れてきたんですわ…。そうです、そうです、こっちにおる親戚やら友人頼って、韓国人やら…日本人もようけ来
ました…。とにかく、どっと押し寄せてきて、急に、賑やかになってね…」
僕は何気ないその言葉に衝撃を受けた。九州の炭鉱と、関西の空港が結びつくことなど想像もつかなかった。
教科書に載っていない歴史の一端を突きつけられた気がした。
(名もない韓国人、日本人労働者たちが、繁栄の陰に常に、常に、存在してたんや…。常に、常に、日本の歴
史の底辺を支え続けてきたんや…)
『パーマ屋スミレ』の舞台は炭鉱の隅にあるちいさな理容所である。そして、そこで暮らすささやかな家族の物
語である。しかし、そのささやかな物語の中で、かつて日本経済の大きな柱であった炭鉱を描きたいと考えている。
そして、60年代から70年代、高度成長時の日本の姿を、あの高度成長とはなんであったのかを、それが今の僕
たちになにをもたらしたのか…。それらもろもろを、ちいさな理容所につめこむことができれば…と願っている。
◎プロフィール
作・演出◎
鄭 義信
(ちょん・うぃしん)
1993 年に『ザ・寺山』で第 38 回岸田國士戯曲賞を受賞。その一方、映画に進出して、
同年『月はどっちに出ている』の脚本で、毎日映画コンクール脚本賞、キネマ旬報脚
本賞などを受賞。98 年には、『愛を乞うひと』でキネマ旬報脚本賞、日本アカデミー賞
最優秀脚本賞、第一回菊島隆三賞、アジア太平洋映画祭最優秀脚本賞など数々の
賞を受賞した。さらに平成 13 年度芸術祭賞大賞受賞を受賞した『僕はあした十八に
なる』(2001/NHK)などテレビ・ラジオのシナリオでも活躍する一方、エッセイ集『アン
ドレアスの帽子』なども出版。現在も、文学座、こんにゃく座ほかに戯曲を提供する傍
ら、自身も作・演出を努めるユニット<海のサーカス>に参加している。
新国立劇場では『たとえば野に咲く花のように―アンドロマケ―』の脚本、『焼肉ドラゴ
ン』の脚本・演出を手がける。初演の『焼肉ドラゴン』で、第 16 回読売演劇大賞 優秀
演出家賞、第 12 回鶴屋南北戯曲賞、第 43 回紀伊國屋演劇賞、第 59 回芸術選奨文
部科学大臣賞を受賞した。
高山須美◇
南 果歩
(みなみ・かほ)
1984 年、映画『伽耶子のために』でデビュー。テレビや映画、舞台で幅広く活躍。第3
35 回エランドール新人賞、第 32 回ブルーリボン賞助演女優賞、第19回高崎映画祭
最優秀助演女優賞受賞。主な作品に、映画『海炭市叙景』『阪急電車』『家族X』など。
テレビドラマは『梅ちゃん先生』(2012 年NHK朝の連続テレビ小説)など。舞台は『ロ
ミオとジュリエット』『幻の光』『ガラスの動物園』『メアリー・スチュアート』などのほか、新
国立劇場には『母たちの国へ』『涙の谷、銀河の丘』『混じり合うこと、消えること』に出
演している。著作に『眠るまえに、お話ふたつ』『瞬間幸福』。
張本成勲◇
松重 豊
(まつしげ・ゆたか)
福岡県生まれ。東京サンシャインボーイズ、蜷川幸雄主演の蜷川スタジオを経て、舞
台、テレビ、映画とさまざまな作品で活躍。主な映画出演作は『地獄の警備員』『刑務
所の中』『血と骨』『しゃべれどもしゃべれども』『ディア・ドクター』『探偵はBARにいる』
『麒麟の翼』など。またテレビドラマは『ちりとてちん』『ブラック・マンデイ』『ありふれた
奇跡』『ラストマネー愛の値段』『深夜食堂』などがある。新国立劇場には『昔の女』に
出演している。
◎公演概要
【タイトル】
「パーマ屋スミレ」
【スタッフ】 作・演出 鄭 義信
美術 伊藤雅子
照明 小笠原 純
音楽 久米大作
音響 福澤裕之
衣裳 前田文子
演出助手 城田美樹
舞台監督 北条 孝
芸術監督 宮田慶子
主催 新国立劇場
【キャスト】 南 果歩、根岸季衣、久保酎吉、酒向 芳、星野園美、森田甘路、
長本批呂士、朴 勝哲、石橋徹郎、森下能幸、青山達三、松重 豊
【会場】 新国立劇場 小劇場 (京王新線 新宿駅より1駅、「初台駅」中央口直結)
【公演日程】 2012 年 3 月 5 日(月)~25 日(日)
2012年 3/5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25
月 火 水 木 金 土 日 月 火 水 木 金 土 日 月 祝 水 木 金 土 日
13:00 ★ ◎ ◎ ◎ ◎ ● ◎
14:00 ◎ ● ● ● ◎ ●
18:30 ● ● ● ● ● ◎ ●
休
演
休
演
◎=託児室あり(要予約) / ★=終演後、シアタートーク / 3/17=17:30 マンスリー・プロジェクト
【前売開始】 2011 年 12 月 17 日(土)10:00~
【料金】 A席 5,250 円 B席 3,150 円
チケット申し込み・問い合わせ
新国立劇場ボックスオフィス TEL:03-5352-9999
新国立劇場Webボックスオフィス http://pia.jp/nntt/
その他チケット取り扱い
チケットぴあ、イープラス、ローソンチケット、CNプレイガイド ほか
* Z席 1,500 円 公演当日10時よりボックスオフィス窓口で販売。1人1枚。電話予約不可。* 当日学生割引 公演当日残席がある場合、
Z席を除く全ての席種について50%割引にて販売。要学生証。電話予約不可。*新国立劇場では、高齢者割引(65歳以上5%)、障害者割引
(20%)、学生割引(5%)、ジュニア割引(中学生以下20%)など各種の割引サービスをご用意しています。