●締結国 今現在国連加盟国のうち193カ国が批准している︒条約に署名したが︑批准していない国は2カ国︵アメリカ︑ソマリア︶
●世界の子どもの状況
批准後︑
ユニセフによると︑世界では一億人以上の
70
カ国が国内の法律を変えた︒子どもが働いており︑
5
億からどもが暴力︵特に戦争で︶を受けている︒
10
億の子教育を受けられない先住民と都市部の子どもとの大きな格差︑子どもの路上生活︑
1日 おかれている子どもたちがいる︒
10
時間の金鉱労働等︑過酷な状況に●日本の子どもの状況 毎日
1.7人の子どもが自ら命を絶ち︑3
人に一人の
学生の不登校率は至上最高を記録し︑小学
15
歳児が孤独を訴えている︒中校・中学校・高校での校内暴力事件は2007年には5万件を超え︑至上最多となっ
た︒また︑親の経済的な困難・雇用不安や長期労働等が︑これまでになかった子ども
の貧困を生んでいる︒ ●日本では
1994年に批准後︑これまでに
・ 日本政府報告書を国連子どもの権利委員
3
回︑会に提出した︒第1回の報告に対し﹁教育制度の過度に競争的な性格によって︑子ど
もがストレスにさらされ︑発達の歪みをきたしている﹂と懸念・ 勧告をされた︒第2
回目も同じ内容の勧告を受け︑第
︵2008年
3
回報告4
月︶は︑第2
回の報告よりも後退し︑条約実施の誠実な検証がされているとはいえない︒第3回の報告に対し
ての委員会からの所見は今年4月の予定︒
1998年兵庫県川西市で設置された︑日本で初めての公的な﹁川西市子どものオ
ンブズパーソン条例﹂がある︒子どもの権利救済の公的な第三者機関であって︑子ど
もの権利条約が具体的に実施される社会をめざしている︒その後︑川西市をモデル
に︑子どもの権利に関する条例が
られ︑また多くの自治体が条例作りの検討
20
市で作をすすめている︒
理 想 は ど こ ま で 実 現 し た か ・ 何 が 実 現 し た か
●千葉県では ﹁千葉県次世代育成支援行動計画推進作業部会﹂のもとに設置された﹁子どもの権利・参画のための研究会﹂は︑﹁千葉県子どもの実態・ 意識調査﹂を行い﹁子ども
が大切にされる千葉県をつくるための指針﹂として2009年9月︑千葉県に報告
した︒この指針は残念ながら︑具体的な県の施策に結びつく正式な指針になること
には至らなかった︒本文は県の
されている︒ HPで公開
●条約の実施を阻んでいる要因 ①条約に対する政府の消極姿勢︒この条 約は発展途上国向けの条約であるとし
て︑子どもの立法︑行政︑司法に生かそうとしない︒また︑教育関係について特
に法令等の改正の必要性はないという︑認識でスタートしている︒ ②子どもに規範意識を植えつけるとか︑上からの健全育成意識が根強くあり︑子
どもの意見尊重を限定的にしている︒
●子どもの自己肯定感を励ます支援を 子どもの自己肯定感の急激な落ち込みがあり︑若者の問題行動︑少年犯罪を見て
も﹁我がまま暴力﹂から﹁我がないまま暴力﹂や︑いきなりキレル子現象への変化が
みられ︑それらに対して子どもへの厳罰化や大人社会の不寛容がある︒改めて子ども
の自己肯定感を励ます子ども・若者支援が求められている︒そして︑大人の支援力は︑
﹁待つ力﹂﹁聴く力﹂であり︑子どもに寄り添う第三者的な﹁意味ある他者﹂になる
ことである︒ ︵文責・中村︶
参考文献:子どもの権利研究第
15 号 特定非営利活動法人 子ども劇場千葉県センター ・・・千葉県子どもの文化情報紙・・・
〒260-0031千葉県千葉市中央区新千葉2−17−6 サンコート新千葉102号
TEL:043-301-7262 FAX:043-301-7263
発行責任者:特定非営利活動法人 子ども劇場千葉県センターー
2010 年 1 月 10 日発行 第55 号 1部 100 円 E-mail:kidchiba@lily.ocn.ne.jp
1
子どもの権利条約が国連で採択されて
20
年︑日本が批准して15
年が経過した︒この間︑子どもと子どもの権利をめぐる状況は︑自治体における子どもの権利に関する条例の制定︑次世代育成行動計画等︑子ども計画の策定︑子どもの参画や相談︑救済等のとりく
み︑NPOによる子どもの権利保障など︑条約の理念の実施というところで︑積み重ねがあり実態改善につながっている︒しかし︑これらはまだ少数であり︑日本政府や社会
全体での消極姿勢もあって︑子どもの置かれている現状に対応するには不十分である︒
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シリーズ1
のか
子どもの現場に関わって感じる のは﹁子どもの自己肯定感の 極端な低さ﹂
最近︑マスコミ等で﹁今の子どもは何を考えているんだかわからない﹂とか︑﹁家庭の教育力が落ちてる﹂とか︑﹁躾がなされてない﹂とか︑子どもを否定するようなコメントが非常に多く出されています︒子どもの現場で関わっている者から言うと︑決してそういう事が本当の問題の原因ではなく︑原因は︑一言でいうと﹁今の子ども達の自己肯定感︵自己評価︑自尊感情︑セルフエスティーム︶の極端な低さ﹂です︒自己肯定感とは︑﹁自分は生きてる価値があるとか︑大切な存在だとか︑生きていていいんだ﹂という感覚のことです︒そういう感覚が持てなくなってる子どもが多く︑特に極端に自己評価が低くなってしまった子どもに︑いろんな心配な症状や行動が出てきます︒国民性の違いや文化の違いもありますが︑それにしてもこの調査データでも明らかなように︑自己肯定感の低さというのは︑どの調査を見ても突出しています︒ 先日講演の後で︑質問が出ました︒﹁今の子どもたちに自信がないと言うけど︑私はそうは思えない︒むしろ今の子どもたちは大事にされすぎて︑甘やかされすぎて︑ちやほやされて︑オレ様状態になってるんじゃないか︒﹂・・・と︒私は︑むしろ︑日本においては︑子どもに対する大人社会の眼差しが否定的な見方が多いと感じています︒﹁わがままだとか︑甘えてるとか︑贅沢だ﹂とか否定的な言葉を繰り返してきた結果ではないかとお応えしました︒
自己肯定感の土台は︑乳幼児期 に十分甘えさせてあげることか ら順々に築かれる
﹁自分は必要な存在だ︑大切な人間だ﹂﹁私は私でいいんだ﹂と感じる気持ちが築かれる
のは0歳から3歳︒抱っこしてよしよししてもらったり︑おっぱいをもらったりして︑そういう気持ちを育んでもらうわけです︒それを土台にして︑朝起きて夜寝る︑トイレに行く︑服を着替える︑自分と他人の物の区別がつく︑順番が守れるなどのしつけ・生活習慣が可能になります︒この時期がだいたい3歳から6歳︒そして子どもは6歳・7歳くらいになるといろんなことに対する好奇心が出てきます︒そういう時に勉強を教えてもらうととても身につきます︒しかし︑今までの教育や子育てでは︑あまりこの土台の自己評価︑自己肯定感ということは問題にしませんでした︒こういうものは出来て当然︑あるのは当たり前という前提の上でなされたわけです︒ 今までの教育とか子育ては︑子どもにどう躾を身につけさせるか︑どう生活習慣を身につけさせるか︑どう勉強に取り組ませるか︑そういうことばかりを問題にしてきました︒
土台が低くなっている子は もう一度土台から育て直す
表面上は勉強をやるが気ない︑ルールを守らない子のように見えるけれども︑実はこの土台が低くなってしまっているのです︒表面的なところばっかりガンガン叱られると余計に自己評価が下がる︒言えばいうほど逆効果になっていく子を見た場合には︑﹁この子はもしかしたら土台が低くなってしまってるんではないかな﹂と気づいてやって︑もう一度この土台から育て直すことです︒﹁どうせ僕なんて﹂﹁どうせ私なんて﹂﹁どうせ無理﹂︑子どもの口からこの﹁どうせ﹂という言葉が出てきたら︑そういう子はこの自己評価が低くなりつつあるサインだということで注意していただきたいと思います︒ 子どもの話を引き出す聴き 方でしっかり聴く
子どもは︑話をしっかり聴いてもらえると自分が大事にされていると思えます︒自分には大事にされる価値があるからなんだ︑と自己評価が育ちます︒子どもが﹁こういうことで悔しかった﹂って言ってきたら︑﹁そうか︑悔しかったんだね﹂︒こういう事で腹が立ったんだって言ってきたら︑﹁そうか腹が立ったんだね﹂と同じ言葉で返していく︒同じ言葉でも相手から返ってくると﹁わかってもらえた﹂という気持ちになるんですね︒
﹁いじめられるあんたは悪く ない﹂ということが意外に 子どもに伝わっていない
いじめは︑最初は容姿や能力に対する悪口から始まります︒いじめは︑いじめる子が人工的に作り出して﹁お前はこうだからいじめられる︑お前が悪いんだよ︑何か文句があるのかよ﹂と︑相手に思こませていくプロセスです︒子どもがいじめられると︑親はショックを受け︑同時に︑いじめられている我が子が情けないという気持ちになってしまうことがありま︒﹁もっと強くなりなさい︒言い返したらどうなの﹂﹁お前もなんか悪いところがあるんじゃないか﹂と言ってしまう︒ところがそういうふうに出来るくらいだったら子どもは相談してこない︒耐えかねてようやく大人に相談してくるんです︒ですから︑まず大人は︑﹁いじめられてるあんたはちっとも悪くないんだよ︒﹂ということを言ってあげてほしい︒この当然のことが案外子どもに伝わっていないのです︒
自己評価・自己肯定感の調査
(平成20年日本青少年研究所調査より)
「自分はだめな人間だと思う」中学生 アメリカ 中国 日本 14.2% 11.1% 56.0%
「自分はだめな人間だと思う」高校生 アメリカ 中国 日本 21.6% 12.7% 65.8%
チャイルドライン全国フォーラム 2009in 千葉 11/21(土)千葉OVTA
明橋大二さん記念講演より
唯一にして最大の課題がこの自己肯定感の問題
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