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臨床経験│ 生体内吸収性ポリ ‑L 一 乳酸 (PLLA) 骨接合 ミニプレートによる下顎骨骨折の治療経験
布 袋屋智朗
1)鎌 田 伸 之
2)林 英司
2)桃田 幸弘
2)長山 勝
2)久 米 景 子
2)1)小松島赤十字病院 歯科口腔外科
2
)徳島大学歯学部 口腔外科学第一講座要 旨
下 1 引雪'骨折に対 して、吸収性骨片接合材ミ ニプレー ト ・ スク
リューシステム(フィクソーブーMX ⑬ 、タキロン社) を用いて観血的整復固定術を行 っ た 6
{~IJ について報告する。このシス テムの材料は、 生体内吸収性高分子 であるポリ ー L一 乳酸 (Po l y ‑ L‑Lactica c i d )を機械加工し 、骨皮質と
同程度の強度を有している。 生体内では 3~5 か月でほぼ強度を失い、自然吸収には 2~3 年を要するという特性があ
り、除去や [ . I の必要がない。現在 まで、 全症例において局所の炎症や骨片の偏位 も 認めら れず、術後の骨癒合は良好で、
下顎骨骨折 における 骨接合材と しては有用 であると 思わ れた。
キーワード:下顎骨骨折、 生体内吸収性骨片接合材 、 PLLA( P o l y ‑ L ‑L a c t i c ac i d )
はじめに
下顎骨骨折の観血的整復固定術における骨片固定に は、チタニウムなどの生体親和性に富んだ材料が使用 されている 。 しかしなが ら、基本的には金属という異 物を生体内に埋め込むため、感染の危険性、金属元素 の溶出、機械的刺激の持続などの問題点が指摘されて いる 。 ) ] 近年、生体内吸収性高分子であり、高強度を 有 す る ポ リ‑L一乳 酸 ( Poly ‑ L ‑ Lacticac i d 、以下 PLLA と 記 す ) 製 の 骨 接 合 ミ ニ プ レ
ート
・スクリューシステム ( フィクソープー MX @ 、タキロン社) が開発され、その有用性が報告 されている
2)‑ 4)。寸回、下顎骨骨折に対して、このフィクソ ーブ
ーMX ⑬ を用いて観血的整復固定術を行った症例を経験したの で、その術式ならびに概要について紹介するとともに 文献的考察を加えて報告する 。
術式について
フィクソ
ーブー MX ⑬ の PLLA ミニプレ
ー卜には、
区 1 1 のごとく 4 穴 、 6 穴のそれぞれショ
ー卜( 4S 、
1 2 6
生 体内吸収性ポリ ーL
一乳酸 (PLLA
)骨接合ミニプレ ートに よる下顎骨骨折の治療経験
図
PLLAミニプレート (
フィクソーブーMX@ 、タ
キロンネ土)
6 S ) とロング ( 4L 、 6L ) および 8 穴 ミニプレー ト の 5 種類のサイズがある
。手術は骨折部を明示し整復さ せた後、適切なサイズの PLLAミニプレ
ー卜を 選択し、それに合ったテンプレ
ートを、まず骨面に適 合さ せる ( 図 2 ) 。 この PLLA ミ
ニプレ
ートは 熱可 塑性を有するため、約 8 0
0C に加温した滅菌生理食塩 水に浸ける ことによりテン プレ
ー卜の 形 態 を ミ ニ プ レートに付与させる
。次に、テンプレー卜の形態を付 与 した ミ ニプレ
ー卜を骨面に適合させ、 専用のドリル
}く
o m a t u s him a Red C r o s s H o s p i t a l M e d i c a l Journ a l
図
2 テンプレートの 適合 ( 症例 3 ) テン プレート ( 矢印 )を骨 面に 適合させ、こ れに 合わ せて
PLL A ミニ プレートを調整 してい く
。にて皮質骨を穿孔さ せ 、 タップ形成し た後 、 ドライパー にて長さ 8 . 0 m m のスク リューをねじ込み骨 片を固定す る(図 3 。 )
症 i 9
IJ平成 1 0 年 1 1 月から平成 1 1 年 6 月 まで に当科を初診し た下顎骨骨折患者の うち、 P LL A ミ ニ プレ ート を用 いて観血的整復固定術を 6 例 に施行した
(表1)
。症 例は、 1
8~50歳で、
男性5
名、
女性1
名で、
骨折の原因は殴打や転倒などで あっ た。既往歴としては、症例
5 に糖尿病が認められたが 、それ以外の症例には特記
事項は認められなかった。なお 、術前に
患者およびそ の家族に PLL A ミ ニ プレ ー ト の特性につ いて卜分説 明 し 、 承諾を得た上 で使用 し た。
骨折部へのアプロー チ法は 、症例 3 の左下顎枝部の 固定以外 は 、 全 て 口腔内アプ ローチ によ り行った。症
表
1
症 例症 例 1 2 3 4 5
図
3 下顎骨体部の固定 ( 症例 3 ) 矢印 : P LL A ミニ プレート
( 上 部 4
Lミニ プレ ート 、下部 4 S ミニ プレート
)例 4 、 5 および 6 のように下顎角部や関節突起部の骨 折の場合、 煩部に約 5m m の皮切 を行 い、卜ロ ッカー
(ラ イビンガ 一社) を挿入 し て PLL A ミニ プレ ー ト固定 を行った
(図4
)。骨片 固 定 に 使 用 し たP LL A ミニ プレ ー ト は症例 1 、 2 、 3 、 6 における下顎骨体部の 固定は、 4S および 4L ミ ニ プ レー ト の 2 枚に て 固 定した。症例 4 、 5 での下顎角部は、外斜線部に 4S
または 4L ミ ニ プレ ー ト 1 枚に て 固定した。また、
症例 3 、 6 のよ うに下顎枝部お よび関節突 起 部 は、
4 S ミ ニ プレ ート l 枚 に て 固 定 した
。術後の顎間固定期間は、すべ て症例において 7 日間行った
。術後の X 線所見では、 P LL A ミ ニ プレ ー ト 自体は 確認できず、スク リューをね じ 込んだ骨孔のみが認め られた(図 5 )。
現在ま
で術後 3 か月~1
年経過して いるが、全症例 と も
局所の炎症症状や創部の治癒遅延もなく 、骨片の偏位および関口制限や校合不正などの
機能障害 を生 じた症例も認められていない。
6
年齢/性別
4 3 /
女5 0 /男 1 8 /男 児/男 2 1 /男 23/
男考 察 骨折の原因 殴 打 転 落 野 球 練習
I:t殴打 殴 打
海水浴事故既 往 歴
(‑)
(‑) (‑) (‑) 糖尿病 (‑)骨折部位および 羽 部 医 了 部 医 了 部 ぽ 一 部 日 部 目 下昔 l I
使用プレ
ー ト
(種類×枚 数)術後の 顎間固定
VOL . 5 NO . l
4Sx 1 4 S x1 4S x 1 4S X1 4Sx 1 4Sx 1 4Lx 1 4L x1 4Lx 1
左下顎枝
4 S x 1
7日 7
日7日 7
日7
日4 S : 4 穴ショ ー卜 の PLLA ミ ニ
プレー 卜 4 L : 4 穴ロングの PLLA ミニプレ ー ト
MARC
I‑I2 0 0 0
4 L x 1
左関節突起4 S x 1 7
日近年、 生体内│吸収性で ある医用材料 として は 、 ポ リグ リコー ル酸 ( PG A) の縫合糸町 が開発さ れて以来 、急速に進歩 しており 、骨接合材 と し て軟質 であるポ リジオ キサノン ( P D 旬 、比較 的分解速度が速 い繊維強化 型のポ リグル コール 酸 (SR ‑ P G A ) 、 分 解 が よ り 緩 徐 で あ る
P LL A および SR‑PGA と P LL A の重合体な どの材
質が開発され臨床応用されている
九今
生体内吸収性ポリ
‑ L
一乳酸 (PLLA
)骨接合1 2 7
ミニプレ ー トによる
下顎骨骨折の治療経験図
4
ト ロ ッ カ ー の 使 用 (症 例6 )
頬部に約
5
mmの皮切を行い、卜ロッカー (矢印)を装着するoトッカーを通して、ドリリングやタップ形成を行う。
表
2
強度の比較(
敷波2)、 1 9 9 2 )
材
質
抗張力曲げ強度 曲げ弾性率 (MPa) (MPa) (MPa) チタン 5 6 0 ‑ 6 2 0 1 1 6 0 1 1 0 PLLA 1 2 0 ‑ 2 0 0 2 0 0 ‑ 2 6 0 6 ‑9 ヒト皮質骨 8 0 ‑ 1 2 0 1 0 0 ‑ 2 0 0 1 0 ‑ 1 7
回、用いた P L LA ミ
ニプレートは、生体内吸収性高 分子である P LL A (分子量約4 0 万)を溶融成形した 後 、
‑*由方向に延伸して得られたロッドを種々の形状 に機械加工したものである
。抗張力、曲げ強度、曲げ弾性率を比べてみると、金属のチタ
ニウムよりは強度は劣るものの
、ヒト皮質骨とほぼ同等の強度を有して いる ( 表 2 )
。また、 生体内では、水と 炭酸ガスに分 解されていき、 3 か月で40% 、 5 か月でほぼ完全に強
度を失い、
2~
3 年で完全吸収するとされている九PLLA ミ
ニプレートの欠点
としては、高強度を有 するとはいえ
、金属製材料と比較すると強度的に弱し
1点やミ
ニプレートの固定の操作がやや煩雑な点であ る
。実際、スクリュ
ーのねじ込み時にタップ形成の方向とスクリュ
ーの挿入方向がずれてしまい、ちょっとした力加減でねじ山を破折させる 症例を経験 した。特 に、口腔内アプロ
ーチでトロッカーを使用する場合な どは、術野が狭くなっ てドリルやタ ップ形成の方向が わかりにくくなりやすく、力加減や操作にいささかの 注意や経験を要すると思われた
。また、骨片の偏位が大きく固定時に大きな力が必要な症例には、強度的に も PLLA ミ
ニプレー卜は適さないと思われた。 しか しながら、白験症例において術後 7 日間の顎問固定を
128生体内吸収性ポリ
L
乳首長( PLLA
)骨接合 ミニプレートによる下顎'南'局析の治療経験図
5 PLLA
ミ ニ プ レ ー ト の パ ノ ラ マ × 線写 真(症 例3 )
A .術前、 B 術後
PLLA
は×線透過性であるためプレート自体は写っていない が、スクリューの骨孔だけが×線上では認められる (矢印)。施行したが、骨片の明らかな偏位や I 皮合不正などの障
害もなく術後の経過は良好であった。適応に注意すれ ば金属製のプレ
ートと同程度に使用でき、しかも除去 術の必要もない
ことから、PLLAミ
ニプ レ
ー卜は下 額骨骨折の骨接合材と しては有用である と 思われた。
術後の X線所見において、 PLLA ミニプ
レートは X 線透過性であるため X 線写真 に写らず、術後のミ ニプレ
ートの位置や固定状態が把握しにくい面があ る
。X 線不透過性をもたせるためには材質自体の改
善が余儀なくされるが、術後の経過をみていく上では早期の改善が必要であろう
。今回