MARC
を使った熱、応力問題の解析事例
工学部材料工学科香川明男
1.はじめに
一般に、金属材料は素材の溶解と鋳型内での凝固を通して製造され、材料の性質はその内部組織 に大きく依存する。そのような材料の組織は凝固過程において形成されるが、内部で起こる種々の 凝固現象は非常に複雑で、また目に見えないので、計算機シミュレーションの応用が重要になる 。 以下においては、凝固に関連した熱、応力問題の解析例を紹介する。
2.
レーザ表面硬化処理における割れ発生の解析
金属とセラミックスとの接合、複合やコーティングにおいては両者の熱膨張係数の違し、から生ず る熱応力により割れや界面剥離などの欠陥が発生し、界面強度低下の一因となっている 。図
1は鉄 基桓上に原料粉末を塗布し、表層を溶解することにより基板表面上に
M7CS型クロム炭化物単体を 形成させた試料の断面組織を示したもので、炭化物層中にレーザ走査方向に平行で基板に対して垂 直な縦割れが発生している。このようなレーザ表面硬化処理における応力解析を
MARCを用いて 行った。図
2は 、
20mmx 20mm x 5mmの鉄
基板上に厚さ
lmmのクロム炭化物を形成させ た試料の表面の中央をレーザビームが奥から 手前に向かつてクロム炭化物を溶解しながら 移動する様子を示している。このような表面入 熱の移動問題は境界条件の入力において以下 に示す
usersubroutine 仏政fを用いて行った 。
subroutine flux(f
,
temflu,
mibody,
time) implicit real女8(a‑h,o・z)dimension mibody(l)
,
temflu(l)c************台**含** *合合** * *安
c user subroutユneあrnon‑uniform flux input. c
c f flux value
c temflu(l) estimated temperature c temflu(2) previous volumetric flux c temflu(3) temperature at beginning
of increment
c temflu(4,5,6) integration point coordinates c mibody(l) element number
c mibody(2) flux type
c mib ody (3) integration point number c time tl1lle
c
c**************安安**********
L一一」 1∞μm 国1 レーザ表面硬化処理院料の断面組織
園2 MARCによるレーザ処理時の温度解折結果
‑18‑
7開刷、;) 2000 15個 11却
@剖 240
‑200
clist=time/ A
氾nin=clist‑B xmax=clist+ B
if(temf1u(4).le.xmax.and.temf1u(4). ge.xmin) f=4000.
return end
ここで、
A:10mm移動に要する時間
(sec) B:移動方向の
Meshサイズ
f:入熱量
図
3はレーザビームが試料表面の中央に来た ときのレーザ定査方向に垂直な断面における応 力分布を示したものである 。これより、レーザ処 理によって生じた液相部の両脇に引張応力が発
主 E
N b b 3h
的 制舗網. 』
TO"可5(・} σ 'Z 370 210 2岨~ 80 30. ....
‑130 .ー180
ゆ 曲 .‑310 400
200
o
.200
4∞
‑600 .10
ー‑StS4E / 「↑1 ¥
│弐 1¥ ¥l乙
¥11 11
,!j
o D胸、叫y).附 判
.) Stress Uy 、‑、1fWIa,・.be創 明
生していることが知られた。図 l のレーザ処理ク i 注 竺
ロム炭化物コーティングにおいてみられた縦ク
1‑.4101 ̲
己 防 山 内10
ラックは液相部の両脇に発生した図のような引 図
3レーザ表面硬化処理鼠料の中央縦断面における 張応力により生じたものと推察される 。
応力分布3.
傾斜機能化処理による応力分散効果の解析 上述のように鉄基材表面にク ロム炭化物を直 接レーザコーテインクや した場合には、界面に対し て垂直なクラックが発生し、このようなクラック はレーザ処理のような局所溶解においては避け
られないことが知られた。そこで、工具鋼の表面 に耐摩耗性に優れた炭化物を形成させると同時 に内部に向かつてなだらかに減少する炭化物分 布を持つ傾斜組成を材料表面近傍に形成させる 表面処理法(複合拡散法)の適用について検討し、
傾斜機能化処理のクラック抑制効果について検 討した。
厚さ
150μmの鉄箔の片面に
90μmのク ロ ムメッキを施した試料に、あらかじめ
1273Kで
3.6ksのクロム拡散処理を施した(第
l段拡散処 理)。次に第
1段拡散処理後の純鉄箔のクロムメッ
キを施していない表面を厚さ約
4mmの工具鋼 の円板に重ね、
1273Kで
3.6ks保持して拡散接合 したのち炉冷した(第
2段拡散処理)。また、
2段 拡散処理試料と比較するために、ク ロムメッキし た純鉄箔の裏面を厚さ約
4mmの工具鋼の円板
lron inten
・
v・
rD
ご立」
図
4 i) 2段鉱散処理.
ii)同時鉱散処理及び
i
i
i)直雛鉱散処理鼠料の断面組織
に重ね、
1273Kで
7.2ks保持してクロムと基材中 の炭素を同時に拡散させた試料(同時拡散処理試 料)と、厚さ
4mmの工具鋼に直接クロムメッキを 施し、
1273Kで
7.2ksの拡散処理を施した試料(直 接拡散処理試料)を作製した。これら
3種類の試料 の断面組織を図
4に示した。
2段拡散処理試料に は表層のクロム炭化物(B)と基材側の鉄中間層(D) の聞に約
50μm厚さの傾斜組成層
(C: FG layer)が形成されている。同時拡散処理試料では傾斜組 成層の厚さは約
15μm、直接拡散処理試料では 傾斜組成層は形成されず、クロム炭化物但)と基材 の工具鋼の:この場合は鉄中間層は使っていない が同一記号を用いた)は凹凸を持った明瞭な界面 で接合されている。
3種類の試料を
1273Kに
0.6ks間保持後、氷水中に落下させて急冷するこ
とによって熱衝撃試験を行った。図
5に直接拡散 処理試料の熱衝撃試験後の炭化物表面組織を示 した。直接拡散処理試料には多数の同心円状のク ラックと放射状のクラックがみられた。他方、傾 斜組成層をもっ
2段拡散処理試料と同時拡散処理 試料には、クラックはほとんど認められず、その ようなクラック発生の抑制効果は、表層から内部 に向かつて炭化物分布がなだらかに減少する幅 広い遷移層を有する
2段拡散処理試料においてよ り顕著に見られた。図
6に熱衝撃試験後の直接拡 散処理試料の炭化物層表面
(挿入図のハッチング 円)における円周部の応力の経時変化を示した。
これより、厚さ方向の引張応力
σzは、半径方向、
および円周方向の応力、それぞれ
ar、
σ8に比べ て小さく、図 5にみられたクラックの発生は後 2 者の応力によると推察される。すなわち、同心円 状のクラックは半径方向の応力
σrによって生じ たものであり、放射状のクラックは円周方向の応 力
σ8によって生じたものと考えられる
。図
7に
2段拡散処理試料と直接拡散処理試料の厚さ方向 の応力分布の計算結果を示した。ここでの応力計 算は弾性変形を仮定しており、基材の工具鋼の塑 性変形は考慮されていないので応力値は過大に
200
》EE 1∞
."
b b N
ι b 0
4司 位里堅
問、
ー1∞
観察軍
・・切 勿 必姐・重獲量主散
t ‑ ‑ ・ 園 田 園 ‑ ‑)処理鼠料
図5終衝撃鼠儀後の直後鉱散処理鉱料 における炭化物表面組織
。
2 時間(sec)3
図6!)t化物層表面におけるヨ│張応力Ur・uz・0"0の 経 時変化
評価されていると考えられるが、傾斜組成を有する
2段拡散処理試料と傾斜組成層の無い直接拡散 処理試料で炭化物中の引張応力に大きな差が見られないことから、直接拡散処理試料は、
2段拡散 処理試料、同時拡散処理試料と比べて、炭化物/工具鋼
(SK3)の界面が明確で凸凹を持っており、
応力集中が起こりやすいためにクラックの発生が助長されたものと考えられる
。‑ 20
4.
溶融堆積法により作製した丸棒試料の凝固解析
ca巾idelayer通常の鋳物は溶湯を鋳型に鋳込むことにより製 丘出丘
FGlay.r. ‑ SK3造されるが、薄肉の鋳物におし、ては肉厚方向に藤田
幽 FG陥yer I! I … ー ー
SK3I I
組織が配向するため、それに垂直な方向の強度が低 いという異方性を示す。他方、溶融堆積法
(FSD [fused spinning deposition]法)は鋳型を用いな いで溶湯を基板上に積層させながら鋳造する方法 で、薄い液層の凝固と再溶解の繰り返しにより組織 が形成されるので、巣やガス欠陥の無い微細な等軸 組織を有する 。そのため、高強度でニアネ ットシエ ープの鋳物が得られるとともに鋳造汗程の簡略化、
。w
》
E制トー
し
¥性
省力化が期待できる 。
FSD
試料の表面は積層数に対応した凹凸をもつも のと当初予想されたが、得られた試料は非常に平滑 な表面をもっていた。このような平滑な表面のひと つの応用として、
FSD法により丸棒試料の外殻を形 成させ、その内部を充填することにより表面無欠陥 の棒状試料を連続的に作製する鋳造プロセス
(FSDb"
。
̲ 1 M
e∞
戸 二
F》‑E E 制
'"
b
的b 的E2∞
。
1∞
。
凶t十
rli
i¥
L司
¥
wit
トU
九 ヒ
、A、ー、with FG lay, ,r .n, ¥IlaYE h
50D,stance{μm)1 EK
‑
‑ ド
ithFG layrl¥
' ‑ i ¥
out ¥
aYE¥r ¥
5 1∞
o Dist8nce (μm)
トー トー
一
15
150
CC
プロセス)が考えられる。
FSD丸棒試料の作製条 件を検討するために、
FSD円筒試料と内部充填試料 の界面における溶着状態を
MARCを使った凝固シミ ュレーションにより検討した。また、図
8に示した 実験装置を用いて、温度を
850‑10500Cの範囲で変 化させた溶湯を円筒試料の内部に種々の充填速度 で注湯し、シミュレーション結果との比較検討を行 った。
FSD円筒試料の内部にアルミニウム合金溶湯 を充填し、界面での漆着を図るためには充填溶湯か らの熱により円筒試料の内面の温度を液層を生じ る共品温度以上に上昇させる必要がある。 一方、円 筒試料の外面は溶断を起こさせないために共晶温 度以下のできるだけ低い温度に保つ必要がある 。こ のような条件を検討するために、
Fig.9に示す要素 分割を用いて
200Cの
Al‑12出Cu合金円筒試料 ( 肉厚
5 rnrn
、内径
50問、高さ
100rnrn)に種々の温度の
Al4児Cu
合金溶湯を短時間の内に注湯したときの界面 での溶着条件を解析した。 解析においては内部充填 溶湯の深さは時々刻々連続的に変化するが、本解析 においては溶湯の深さは充填速度に対応して間歌 的に増加するとして解析した。
Fig.9において、
溶湯充填速度が
6rnrn/sの場合は、まず
lrnrn厚さの 溶湯要素の 1 /
6秒間での温度変化を計算する 。 次い で、その時の全要素の温度をファイルに書き出し、
図7 2段拡散処理及び直篠鉱散処理院料における 厚さ方向の応力
)>and •
国8FSD‑CCプロセスにおける溶湯 充填実験装置
新たな
1mm厚さの溶湯要素を付け加えた後、新たな 要素以外の要素の接点に先に書き出した温度デー タを読み込み、次の計算の初期条件として与える必 要がある 。このようなデータファイルの入出力は以 下に示す
usersubroutine impd. fを用いて行った。
<impd. f>
subroutine impd(n,dd, td,xord, f, v,a, ndeg,ncrd) implici t real本8(a‑h,o‑z)
dimension dd(1), td(1),xord(1), f(1), v(1),a(1) write(85, 600) dd(1)
write(85
,
610) nreturn 令15尚 一25阻
l圃.1
一 争l Ts
•
位由K)c聞 は 1 1.5 ..11100
600 format(1pe10. 3) 610 format(i5)
end
図9 FSD一ccプロセスにおける溶湯先場実厳の 凝固解析に用いた要素分割(右半分)
まず、
Mentatでメッシュ生成、境界条件、初期条件、材料定数などの入力を終えた後、ジョブを 実行すると以下に示すような 〈 材料一
jobl.dat>が生成される 。(i)最 初の
1層目の溶湯要素をもっ モデルでは
116秒 後 の 温 度 の 計 算 結 果 を フ ァ イ ル
<fort.85>に書き出す 。 この操作は く 材料
̲jobl.dat>ファイルの
noprintの次行に岨盟
Eと
viなど 、 のエディタで書き込むだけでよ い 。
(ii)2層目の計算では、 〈 料林一
jobl.dat>ファイル作成時に、初期条件として く
fort.85>のデ ータを読み込ませる節点には初期条件は入力しない。次 に初期条件として く
fort.85>のデータを 読み込ませるために下記の く 料料一
jobl.dat>ファイルの
initial tempの次行に」主と書き込む。
ただし、
1回目の計算で作成された
<fort.85>には節点温度データが複数セット書き込まれてい るので、読み込み用の く
fort.85>には最後の節点温度データのみを残す必要がある 。このような 処理は本研究のように
50‑100ケの要素モデルを用いる必要がある場合は非常に煩雑になる 。一 連の操作をパッチファイル形式でできることが望ましい。
〈 料料一
jobl.dat > ファイ
jレ title job1$. . . . MARC input file prαluced by Mentat 3. 3. Or2 sizing 1000000 252 326 326
elements 40 initial temp
→(ii) .85.
initial temp 9. 50000 +2
‑22‑
no print
→
(
i) udumpcontinue
$. . . . end of loadcase lcasel
7
蹴 I ! 同 問 │同
01就 │… │ … I ! 同
19蹴 │
図10 FSD
一
ccプロセスにおける溶渇充繍跨の縦断面温度分布の解析結果 (円筒鼠料予勲温度200"C.溶湯温度950"C.充犠速度h=6mm/sl6伺℃
594 528 462 396 330 264 198 132 66
。
Fig. 10