〈論 説 〉
「テ ロ との 戦 争 」 と核 兵 器 の 使 用
核兵器使用 の合法性 に関す る
国際司法裁判所勧 告的意見 の意義 と人道主義
中 山 雅 司
目 次
は じ め に
1.核 兵 器 を め ぐ る 最 近 の 動 き と国 際 社 会 の 対 応 (1)核 拡 散 と核 軍 縮 の 現 状
(2)各 国 お よ び 国 際 社 会 の 対 応 2.核 兵 器 の 規 制 と 国 際 法
(1)jus勿belloと 核 兵 器
(2)jusadbellurnに お け る核 兵 器 使 用 と原 爆 判 決 3.ICJの 勧 告 的 意 見 と法 の 欠 鉄 問 題
(D意 見 公 表 ま で の 経 緯 と核 兵 器 使 用 を 禁 止 す る 国 際 法 の 存 否 (2)国 際 人 道 法 の 観 点 か らの 検 討 と最 終 結 論
4.核 兵 器 の 使 用 を め ぐ る法 と政 治 の 交 錯 (1)国 際 人 道 法 との 両 立 性
(2)核 兵 器 使 用 と 自 衛 権 (3)抑 止 政 策 と核 兵 器
5.「 テ ロ との 戦 争 」 に お け る勧 告 的 意 見 の 意 義 と課 題 (1)限 定 的 核 使 用 と先 制 的 自 衛
(2)核 保 有 国 の 責 任 (3)NGOの 役 割 お わ り に
は じめ に
2001年9月 、 米 国 で 発 生 した い わ ゆ る 「9.11」 同 時 多 発 テ ロ事 件 以 降 、 安 全 保 障 を め ぐ る国 際 環 境 は大 き く変 化 した 。 これ を 受 け て 、9月20日 、 ブ ッシ ュ 米 国 大 統 領 は 、 連 邦 議 会 とア メ リ カ 国 民 に 向 け た 演 説 に お い て 「テ ロ との 戦 争 」
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1)
を 宣 言 した 。 翌 月10月 、 米 国 お よび 英 国 は 、 タ リバ ン政 権 に よ っ て 支 援 さ れ た ア ル カ イ ダ が 、 テ ロ リス トを か く ま う温 床 に な っ て い る との 理 由 で ア フガ ニ ス タ ン を攻 撃 した 。翌 年2002年1月 に は、ブ ッシ ュ大 統 領 が0般 教 書 に お い て 「悪
の枢 軸」発言 を行 う とともた洞 年9月 の 「米 国の国家安全保 職 蕗」お よび
4)
12月 の 「大 量破 壊 兵 器 に 対抗 す るた めの 国 家戦 略」 に お い て、 い わ ゆ る 「な ら ず者 国 家」 や テ ロ組 織 の 攻 撃 に 対 して は 、先 制 行 動 や体 制 変 革 の た め の軍 事 力 の行 使 も辞 さな い とす る 「ブ ッシ ュ ・ドク トリン」 を発 表 した 。 そ して 、2003 年3月 には、 対 イ ラ ク戦 争 が起 きた。 開戦 の主 た る理 由 は、1991年 の湾 岸 戦 争 以 降 、 大 量 破 壊 兵 器 を廃 棄 し国連 の 査 察 に応 じ る こ とを義 務 づ けた安 保 理 決 議
5)
の イ ラク に よ る不 遵 守 で あ っ た。 イ ラ クが大 量 破壊 兵 器 の開 発 を秘 密 裏 に進 め て い る との 疑 い を払 拭 で きな い 以 上 、大 量 破 壊 兵 器 が テ ロ リス トの手 に渡 る前
6)
に攻 撃 を仕 掛 け よ う と して 開 始 され た のが イ ラ ク戦 争 で あ っ た。 後 に この 「大
の
義 名 分 」 は崩 れ る こ とに な っ たが 、 テ ロ の頻 発 とい う脅 威 とあわ せ て 、 大 量 破 壊 兵 器 、 と くに核 兵 器 が 「な らず 者 国 家 」 や テ ロ リス トに拡 散 す る可 能 性 と危 険性 は、 近 年 、 現 実 の もの とな りつ っ あ る。 もっ とも、 国 際社 会 にお いて 、 国 際 デ ロの恐怖 も核 兵 器 の脅 威 も決 して今 に始 ま った もの で は な い。 しか し、 冷 戦 の崩 壊 とい う構 造 変化 の 中で 、 「9.11」事 件 を きっか け にテ ロ と核 兵 器 が結 び っ く事 態 が生 じよ う として い る。 現在 、核 兵 器 不 拡 散 条 約(以 下 、NPT条 約) 体 制 の も とで少 な くと も法 的 に は限 られ た 国 に核 兵 器 の保 有 が 認 め られ て い る が 、 それ らの 国家 に よ る管 理 す ら及 ば な くな る とい う意 味 にお い て 、 状 況 は深 刻 な もの とな りつ つ あ る。
しか し、 よ り一・層 問題 な の は、 これ らの脅 威 に対抗 す るた め との理 由 で 、 限 定 的 な核 兵 器 の使 用 の 可 能 性 が 現 実 的 な政 策 課 題 と して 語 られ て い る とい う事 実 で あ る。 も はや核 兵器 は 「使 え な い兵 器 」 か ら 「使 え る兵 器 」 に変 わ ろ う と
して い る。 とこ ろで 、 これ まで核 保 有 国 の核 戦 略 の基 礎 に あ って その 正 当化 の 根 拠 とな って きた のが いわ ゆ る抑 止政 策 で あ る。 その結 果 、核 保 有 国 はNPT条 約 に よ って核 保 有 国 として の地 位 を確 保 す る一 方 で 、核 兵 器 の使 用 に つ いて は 条 約 等 に よっ て 明 示 的 な禁 止 規 定 を お くこ とを避 けて き た ので あ る。 この よ う な核 兵 器 の使 用 をめ ぐる国 際 法 の欠 訣 とい う状 況 の な か で 、核 兵 器 の 威 嚇 また は使 用 の合法 性 につ い て真 正 面 か ら取 り組 ん だ のが 、 い わ ゆ る1996年7月8日
の国 際 司法裁 判所(以 下、ICJ)の 勧 告 的 意見 で あ った。ICJは 、核 兵 器 の威 嚇 、 使 用 につ いて 、 国 際法 諸 規 則 に照 ら して そ の非 人道 性 を明 らか にす る と ともに、
「武 力 紛 争 に適 用 され る国 際 法 の諸 規 則 、 そ して と りわ け人道 法 の原 則 お よび規
ラ
則 に0般 的 に違 反 す るで あ ろ う」 との結論 を下 した。 その 一方 で、 「国家 の存 亡 そ の ものが 危 険 に さ らされ て い る 自衛 の極 端 な状 況 にお い て 、核 兵 器 の威 嚇 ま た は使 用 が合 法 で あ るか 違 法 で あ るか に つ い て確 定 的 に結 論 を下 す こ とはで き
9)
ない 」 とも述 べ た 。後 者 の判 断 は、 各 国 に様 々 な解 釈 の余 地 を生 み 出 す こ と と な っ たが 、 それ は ま さ に核 兵器 の使 用 を め ぐって 国際 社 会 が い まだ に合 意 を形 成 で きな いで い る状 況 を如 実 に反 映 す る もの で あ っ た 。 しか し、勧 告 的 意 見 の 公 表 は 、権 威 あ る国 際 裁 判 所 が核 兵 器 の使 用 につ い て0般 的 に違 法 で あ る との 判 断 を初 め て 明確 に示 した とい う点 にお い て画 期 的 な こ とで あ っ た。
本 稿 は、 「テ ロ との戦 争 」 にお い て核 兵 器使 用 へ の敷 居 が低 くな りつ つ あ る昨 今 の 状 況 の も とで 、 国際 法 と くに国 際 人 道 法 に流 れ る人 道 主 義 が 核 兵 器 の保 有 お よび使 用 に象 徴 され る国 家 主権 の論 理 を乗 り越 え るひ とつ の指 標 とな りう る ので は な い か との 問題 意 識 に基 づ いて 、 勧 告 的意 見 を主 た る素 材 に そ の意 義 と 課 題 を あ らた めて 明 らか に す る こ とを 目的 とす る。 そ のた め に、 まず 、 最 近 の 核 拡 散 の 現 状 とそれ に対 す る国際 社 会 の 対応 を述 べ た うえで 、核 兵 器 使 用 の規 制 に関 す る国際 法 の諸規 則 につ い て概 括 す る。次 に、ICJの 勧 告 的意 見 の 内容 お よび そ こ にみ られ る法 と政 治 の交 錯 につ いて考 察 す る。 その うえで 、 「テ ロ との 戦 争 」 に お け る核 兵 器 の使 用 を め ぐる新 た な課 題 につ い て検 討 し、 問 題 解 決 の
方途 を探 る こ とにす る。
10)
1.核 兵 器 を め ぐる最 近 の動 き と国 際 社 会 の 対 応
(1)核 拡 散 と核 軍 縮 の 現状
考 察 にあ た って 、 まず 、 核 兵 器 を め ぐる最 近 の 状況 につ い て 、核 拡 散 と軍 縮 の 問題 を中心 に簡 単 に整 理 して お きた い。 現在 、 世 界 には約2万7000発 もの核 弾 頭 が あ る とされ る。保 有 国 は、NPT条 約 に よって保 有 を認 め られ た米 国 、 「ロ
シ ア、英 国、 フ ランス、 中 国 の5力 国 に加 え、 「事 実 上 の核 兵 器 国 」 とされ るイ
11}
ン ド、 パ キ ス タ ン、 イ ス ラ エ ル の3力 国 を 加 え た8力 国 と され 、 こ の う ち 米 国
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の核保 有数 は約1万 発 、 ロ シ アは1万6千 発 を保 有 して い る とされ る。 しか し、12)
冷 戦期 の ピー ク時 の1986年 には米 ソ英仏 中5力 国 で7万 発 を保 有 して いた こと に比 べ る と、 冷 戦 の終 結 が核 拡 散 問題 を好 転 に 向か わせ た こ とは確 か で あ る。
た とえ ば・ 南 ア フ リカ は 南部 ア フ リカ地 域 にお け る安 全 保 障環 境 の変 化 を理 由 に核 兵 器 の全 面廃 棄 に踏 み切 り、NPT条 約 に加 入 した。NPT条 約 の締 約 国 数 も 1990年 当時 の138力 国か ら2007年2月1日 現在 で190力 国 に増大 した。また 、 1995年 のNPT再 検 討 ・延 長 会 議 で は、条 約 の 無期 限 延 長 が 決 定 した。 そ の背 景 に は、核 兵 器 国 に よ る核 攻 撃 よ りも、 自国 周 辺 に新 た に核 兵 器 を取 得 す る国 が 出現 す る こ とを懸 念 した非核 兵 器 国が 、 自国 の安 全保 障 上 の観 点 か らNPT体 制 の維 持 を選 択 した とい う判 断 が あ った こ とが あ げ られ る。13)
しか し、 その0方 で 冷 戦 の終 結 は、 核 不 拡 散 体 制 に大 き な動 揺 と不 安 定 要 素 を もた ら した。 その ひ とっ は、 ソ連 崩 壊 に伴 う政 治 的 、経 済 的 情 勢 の 悪 化 や 管 理 体 制 の不 備 に起 因 す る、 ロ シ ア を は じめ とす る旧 ソ連 諸 国 に よ る核 兵 器 お よ び核 分 裂 性 物 質 の流 出 の 問題 で あ る。 また 、 事 実 上 の核 保 有 国 で あ るパ キス タ ンで核 開発 に関 わ った カー ン博 士 と研究 所 のス タ ッフが1980年 代後 半 か ら1990 年 代 初 め にか けて 、 核 開 発 技 術 を 国外 に流 出 させ た とす る 「核 の闇 市 場 」 の 問 題 が 明 るみ に出 た 。 その核 取 引 の相 手 国 とされ た の が 、 北 朝 鮮 や イ ラ ン、 リビ
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ア とい った 「な らず 者 国 家」 で あ っ た。 北朝 鮮 につ いて は、1974年 国際 原 子 力 機 関(IAEA)の 加 盟 お よび85年 のNPTへ の加盟 後 も秘 密 裏 に核 開発 を進 めて いた こ とが発 覚 、1993年 のNPT脱 退 宣 言 に よ る第1次 核 危機iを 「米朝 枠 組 み 合 意 」 で 回避 した もの の、2002年 、 凍結 を約 束 した核 開発 の疑 惑 が 発 覚 す る と 2003年 にNPT脱 退 を再 び宣 言 し、現 在 に続 く第2次 核 危機 を招 いた 。2005年 に は核 保 有 を宣 言 し、 昨年(2006年)10月 に核 実 験 を行 った こ とは記憶 に新 し
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い。 イ ラ ンにつ いて も、2002年8月 、 同 国 の反体 制組 織 が 政 府 の核 開発 計 画 を 暴 露 した こ とで 問題 が表 面 化 し、 その後 の 調 査 で 開 発 の事 実 が 明 らか にな った 後 も・ あ くまで 平 和 利 用 に よ る もの で あ る との 主 張 を崩 して い な い。 これ ら旧
ソ連 諸 国か らの核 の流 出 や 「な らず者 国家 」に よ る核 開 発 の問題 に加 えて、 「9.11」
以 降 、 ク ロー ズ ア ップ され て い るの が、 大 量 破 壊 兵 器 とテ ロ リス トの結 びっ き の問 題 で あ る。
(2)各 国 お よ び国 際 社 会 の対 応
この よ うな核 拡 散 お よび核 テ ロの 問題 に対 して 、 敏 感 な反 応 を示 した のが 米 国で あ った。米 国 は、 「9.11」の直後 に発 表 され た 「4年 ご との国 防見 直 し(QDR)」
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にお いて 、 テ ロ組 織 な ど非 国 家主 体 へ の大 量破 壊 兵 器 の拡散 の脅 威 を強 調 した・
さ らに、2002年1月 に提 出 され た 「核 態 勢見 直 し(NPR)」 の報 告書 に お いて 、 ロ シ ア は もはや 脅 威 で は な く、 な らず者 国家 とテ ロ リス トが 新 た な脅 威 で あ る
17)
こ とを述 べ 、地 下 貫通 型 の小 型 核 兵 器 の研 究、 開 発 の必要 性 につ いて 言及 した・
また 、先 に述 べ た よ うに、2002年9月 の 「米 国 の国 家 安 全保 障 戦 略 」、 お よび 12月 の 「大 量破 壊兵 ・器 に対抗 す るた めの 国家戦 略 」にお いて は、 「な らず者 国 家 」 や テ ロ組 織 の攻 撃 に対 す る先 制 攻 撃 を認 め る 「ブ ッシ ュ ・ドク ト リン」 を発 表
した 。 こ こで の先 制 攻 撃 に あた って は、 核 兵 器 の 使 用 も排 除 され て い ない 。先 制 攻 撃 をめ ぐって は、 国 際 法 上 の 自衛 権 の発 動 要 件 との 関係 で も大 き な問題 が
生 じ るが 、 これ につ いて は後 に述 べ る こ とに す る。
さ らに、 米 議 会 は、 冷 戦 終 結 を 受 けて 、新 た な核 兵 器 開 発 は不 要 との立 場 か ら小 型 核 につ いて の研究 ・開発 を93年 か ら禁 止 して きたが 、2003年11月 、 国 防予 算 を編 成 す る際 の 禁 止条 項 が10年 ぶ りに撤 廃 され 、2004年 度 か ら小 型核
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兵器 の研 究 に乗 り出す こ と とな っ た。 この よ うな 動 き を意 識 す るか の よ うに、
ロシ アは、2000年4月 に発 表 され た軍 事 ドク トリンに お いて、 通 常 兵 器 に よ る 侵 略 に対 して も核 兵 器 で反 撃 す る権 利 を うた う と とも に、2003年10月 に は先
19}
制 武 力使 用 を念 頭 にお く新 軍 事 ドク トリンを発 表 した 。米 国 に限 らず 安 全保 障 の基 幹 を核 兵 器 に求 め よ う とす る核 保 有 国 の政 策 は、 依然 と して 根 強 い とい わ ざ るを え な い。
この よ うな なか 、2005年5月 に開催 され たNPT再 検 討 会議 は、 現在 の核 不 拡 散 体 制 の 弱体 化 を露 呈 す る と ともに、 核 保 有 国 と非 核 保 有 国 間 の 対 立 を浮 き
̀LO)
彫 りにす る もの とな っ た。 す な わ ち、 核 拡散 へ の 危惧 か ら核 不 拡 散 の強 化 と原 子 力 の平 和 利 用 の制 限 こ そが優 先 課 題 で あ る とす る核 保 有 国、 と りわ け米 国 に 対 し、核 軍 縮 こそが 先 決 と主張 す る非核 保 有 国 との間 で 合 意 が え られ ず 、 結局 、 会 議iは決 裂 に終 わ っ た。NPT条 約 は、 米 「ロ英 仏 中 の5力 国 を核 保 有 国 と して認
めた うえで 、 非 核 兵 器 国 に よ る核 兵 器 の 受領 ・製 造 ・取 得 を禁 止 す る と とも に (第2条)、 原子 力 の平 和利 用 を奪 い得 な い権 利 と して 認 めて い る(第4条)。 そ
!28
の一 方 で ・条 約 は核 保 有 国 に対 して 、全 面 的 か つ完 全 な軍 縮 へ 向 けて 誠 実 に交 渉 を行 うこ とを義 務 づ けて い る(第6条)。 さ らに、2000年 の再 検 討 会 議 で 採 択 され た最 終 文 書 で は、 「核 兵 器 国 に よ る核 兵 器 の全 面廃 絶 に関 す る明確 な約 束 」
21}
が 明 記 され た 。 しか し、 一 向 に進 まな い核 保 有 国 に よ る軍 縮 交 渉 へ の不 満 が核 保 有 国 と非核 保 有 国 間 の亀 裂 を深 刻 な もの と し、NPT体 制 そ の もの を大 き く揺
22)
るが せ て い る。
一 方、 国 連 は、 核 拡 散 を め ぐる最近 の 状 況 に対 して、 強 い 関心 と懸 念 を表 明 して い る・ イ ラク戦争 開戦 を め ぐる国連 安 保 理 の機 能 不 全 とい う事態 を受 けて、
2003年11月 ・ 国 際 安全 保 障 上 の脅威 につ いて 議 論 す るた め に ア ナ ン事 務 総 長 に よっ て設 置 され た 国連 ハ イ レベ ル ・パ ネ ル 委 員会 は、2004年12月 に報 告 書
23)
を提 出 した。 報 告 書 は、 安 全 保 障 上 の脅 威 の多様 化 とい う状 況 を ふ ま え、 脅 威 を6つ の カ テ ゴ リー に分 類 して い るが 、 テ ・ロ リズ ム(と くに核 の使 用 を伴 う) の グロ ーバ ル 化 お よび大 量 破 壊 兵 器 の 拡 散 につ いて、21世 紀 の国 際社 会 に対 す る新 た な脅 威 で あ る とし、 その 対応 策 につ い て提 言 を行 って い る。 この提 言 は、
2005年3月 に提 出 され た い わ ゆ るアナ ン報 告 書 で も基 本 的 に支 持 され た が24) 、 先 に述 べ たNPT再 検 討会 議 の決裂 を反 映 して、 同年9月 に発 表 され た 国連 サ ミッ
ら
トの成 果 文 書 で は全 面 削 除 され た。 この こ とは、 国益 が激 し く対 立 す る現 在 の
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国際 社 会 の現 実 を如実 に反 映 す る もので あ る。
27)
2.核 兵器 の 規 制 と 国際 法
(1)bus加,be/%と 核 兵 器
と ころで ・ 国 際 法 は核 兵 器 の 問題 につ い て、 これ まで どの よ うに法 的規 制 を 及 ぼ して きた の か 、 あ るい は及 ぼ して こな か った の で あ ろ うか。 もっ と も、核 兵 器 に関 す る国 際 法 の諸 規 則 は、 前述 のNPT条 約 に代 表 され る核 兵 器 の 製造 や 取 得 、 委 譲 に 関 す る規 制 か ら、核 実験 の禁 止 、 非 核 地 帯 の 設定 や 南極 、 天 体 、 宇 宙 空 間 等 の非 軍 事 化 の 問題 等 、 多 岐 にわ た る。 しか し、 これ ら核 軍 縮 や 軍備 管理 の 問題 につ い て は本 稿 で は基 本 的 に触 れ な い。 こ こで は、 核 兵 器 の使 用 の 国際 法 上 の合 法 性 の 問題 に絞 っ て検 討 す る こ とにす る。 この問題 につ い て は、
1996年 のICJの 勧 告 的意 見 が現 時 点 で の重 要 な法 的判 断 を示 す もの で あ るが、
その検 討 に あ た っ て まず核 兵 器 の使 用 規 制 の法 的 枠 組 み とそ れ に関連 す る争 点 につ い て述 べ る。
とこ ろで 、核 兵 器 使用 の違 法 性 が と くに問題 とされ る理 由 は、 核 兵 器 が 有 す る兵 器 と して の特 殊 性 に あ る。 この 特 殊性 は 、 核 兵 器 の定 義 そ の もの の な か に 見 出す こ とが で き る。もっ とも、NPT条 約 や部分 的核 実験 禁止 条約(以 下 、CTBT) に は核 兵 器 の定 義 が な い が 、 その なか で 、 ラテ ンア メ リカ にお け る核 兵器 の 禁 止 に関 す る条 約(ト ラテ ロル コ条 約)は 第5条 で 、 「核 兵 器 とは、 原 子 力 を制 御 され な い 方 法 で 放 出す る こ とが で き る装 置で あ っ て 、戦 争 目的 に使 用 す る こ と
28)
に適 当 な一 群 の性 質 を有 す る もの を い う」 と定 義 す る。 す な わ ち、ICJが 勧 告 的 意 見 で 述 べ て い る よ うに、 膨 大 な 熱 とエ ネ ル ギー だ けで な く、 強 力 で長 期 にわ た る放 射 線 を も放 出 し、他 の兵 器 に よ る損 害 よ りもは るか に強 力 で放 射線 の現 象 は特 有 で あ る こ とか ら、核 兵 器 は潜 在 的 に破 滅 的 な もの で あ る点 に特徴 が あ
̀L9}
る。 この 点 につ い て は共 通 の認 識 が あ る とい っ て よい 。 この核 兵 器 の もつ 非 人 道 的性 格 ゆ え に その 違 法 性 が 争 わ れ る こ とにな る。 しか し、核 兵 器 使 用 の 国際 法 上 の 合 法性 を考 え る上 で難 しい 問題 は、 少 な く とも国 際 法 上 、 核 兵 器 の使 用 を明確 に禁 止 、 も し くは認 めた条 約 等 が 見 当 た らな い とい う点 で あ る。
さて 、 国 際法 上 、 武 力 行使 の規 制 にっ いて は、 戦 争 な い し武 力 に訴 え る こ と を禁 止 す る法 規(jusadbe〃um)と 害 敵 手段 の制 限 な ど戦 闘行 為 に関 す る法 規
(jusinBello)の2つ の体 系 が あ る。核 兵 器 の使 用 規 制 も この2つ の準 拠 枠 組 の も とで 検 討 す る必 要 が あ る。 た だ し、 国 際 法 に お け る戦 争 観 の変 遷 が この2 つ の 枠 組 み に も大 きな変 化 を もた ら した こ とか ら、核 兵 器 使 用 の 問題 もその変 化 の なか で と らえ る必 要 が あ る。
か つ て戦 争 に訴 え る こ とは国 家 の権 利 な い しは 自由 で あ る とされ た無 差 別 戦 争 観 の 時代 にお い て は、 戦 争 に訴 え る権i利につ い て は国 際 法 上 規 制 が及 ば な い とされ た。 そ して 、 当時 、jusznhelloは 戦 争 法 と して 発展 した。 ところが、20 世紀 に入 り戦 争 が 違 法 化 され た こ とに伴 って伝 統 的 な戦 時 国際 法 は存在 理 由 を 失 う こ とに な っ た。 しか し、 その 一 方 で 、 戦 争 が 違 法 化 され て も今 日に いた る まで 国家 間 の 武 力紛 争 は絶 え る こ とが な い。 そ こ にお い て 、戦 争 の 惨禍 の防 止 とい う人 道 的 要請 に主 として こた え る法 規 範 と して 、 以 前 の 交 戦 法 規 を継 承 し つ つ発 展 して きた の が今 日の 武 力 紛 争 法 で あ る。 武 力 紛 争 法 は、 第1次 、 第2
13D
次 ハ ー グ平 和 会 議 にお い て 明 文 化 され た諸 条 約 な どを 内容 とす る戦 闘行 為 を規 律 す るハ ー グ法 規 と、1949年 の ジ ュネ ー ヴ4条 約 お よび1977年 の2つ の追 加 議 定 書 を柱 と し、 戦 争犠 牲 者 の保 護 を定 め るジ ュネ ー ヴ法 規 か らな る。30)
武 力 紛 争法 にお け る特 徴 は、 「軍事 的必 要 」 と 「人 道 的考慮 」 とい う2つ の原 則 の バ ラ ンスで あ り、 核 兵 器 使 用 の 問題 も この2つ の原 則 に照 ら して 判 断 され る こ とにな る。 その 意 味 は、1868年 のセ ン ト ・ペ テ ル ス ブル ク宣言 前 文 が 述 べ る よ うに・ 「戦 時 に お いて諸 国 が達 成 し よ う と努 め る唯 一 の正 当 な 目的 は、 敵 国 の軍 隊 の弱体 化 で あ る こ と」 か ら、 「す で に戦 闘能 力 を奪 わ れ た者 の苦痛 を無 益 に増 大 させ 、 また は その 死 を避 け難 い もの に す る兵 器 の使 用 は、 この 目的 の範 囲 を超 え」、 「この よ うな兵 器 の使 用 は、人 道 の法 に反 す る」 とい うこ とで あ る。
た だ し、 軍 事 的考 慮 が大 きな 比 重 を 占め た 戦 時 国 際 法 に対 し、戦 争 が 違 法 化 さ れ た今 日の 武 力 紛 争 法 に お い て は、 人道 的 考 慮 が優 位 を 占め な けれ ば な らな い
と解 され る。
そ れ で は 、 具体 的 に核 兵 器 の使 用 に関 し、 い か な る規 則 を見 出 し う るで あ ろ うか ・ 上記 の通 り、核 兵器 につ い て は、 その使 用 を直 接 に禁 止 した条 約 は な い。
そ こで、一一般 的 な規制 を行 ったハ ー グ陸戦 規則 第23条 が 重 要 な参考 規 則 とな る。
そ こで は、 「不 必 要 の苦痛 を与 うべ き兵 器 、 投射 物 其 の他 の物 質」 が禁 止 され て
31)
お り、核 兵 器 が これ に該 当 す る可能 性 が あ る。 ジ ュネ ー ヴ条 約 第 一 追 加 議 定 書 も 「不 必 要 の 苦痛 を生 ぜ しめ る性 質 の兵 器 、 投 射 物 及 び物 質 並 び に そ の よ うな 戦 争 方 法 を用 い る こ とは禁 止 す る」(第35条2項)と して この こ とを再 確 認 し て い る。 また、 ハ ー グ陸戦 法規 慣例 条 約 の前 文 に謳 わ れ るい わ ゆ るマ ル テ ンス 条項 は・ 「一層 完 備 した る戦 争法 規 に関 す る法典 の制 定 せ ら るる に至 る迄 は、 締 約 国 は、 其 の 採用 した る条 規 に含 まれ ざ る場 合 に於 い て も、 人 民及 交 戦 者 が 文 明 国 の 問 に存 立 す る慣 習 、 人 道 の法 則 及 公 共 良 心 の 要 求 よ り生 ず る国際 法 の原 則 の保 護 及 支 配 の 下 に立 っ こ とを確 認 す る」 と規 定 す る。 この こ とは、 明示 的 に制 限 され て い な くと も戦 争 に お け る各 国 の行 動 は人 道 法 の 諸原 則 の も とに お か れ る こ とを述 べ た もの で 、将 来 登場 す る可 能 性 の あ る兵 器 の規 制 につ い て も 妥 当 す る一般 原 則 を示 して い る点 で注 目で き る。
また 、戦 闘 方 法 の規 制 と して一・般 住 民や 非軍 事 的施 設 等 の保 護 の た め に無 差 別 の攻 撃 を禁 止 す る軍事 目標 主 義 の観 点 か ら、 その破 壊 力 の大 きさ に お い て軍
事 目標 と非 軍 事 目標 を 区別 で きな い よ うな兵 器 と して核 兵 器 を とらえ る こ とも 可 能 で あ る。 第 一 追 加 議 定 書 も 「特 定 の 軍 事 目標 の み を対 象 とす る こ との で き な い戦 闘 の方 法及 び手 段 を用 い る攻 撃 」 を禁止 して い る(第51条4項(b))。 し か し、 「戦 争 の必 要 」 と 「人道 の 要 求 」 の バ ラ ンス を どこに お くか に つ い て は 、 難 しい 問題 が横 たわ る。 なぜ な ら、 前者 が 国家 とい う歴 史 的 政 治 的制 度 を前 提 に発 展 して き た実 定 法 的 な論 理 で あ るの に対 して 、 後 者 は国 家 を超 えて存 在 す る普 遍 人 類 を基 礎 に お く自然 法 的 な 考 えで あ り、 両 者 の依 っ て立 つ基 盤 な い し
32)
前 提 が 異 な るか らで あ る。
(2)bus∂d,be/lumに お ける核 兵 器 使 用 と原 爆 判 決
20世 紀 以 降 の戦 争 の 違法 化 の流 れ は、 第2次 世 界 大戦 を経 て、 武 力 に よる威 嚇 お よび武 力 行使 の 違法 化 として 国連 憲 章 に結 実 した(第2条4項)。 この こ と
は、jusadbelluynの 側面 にお い て、核 兵 器 も含 む武 力 に よる威 嚇 お よび行 使 が 0般 的 に禁 止 され た こ とを意味 す る。 同時 に憲 章 は、2条4項 の違反 に対 す る対 抗措 置 と して 、 第7章 の 集 団安 全 保 障 体 制 の も とで の強 制 措 置 の発 動 と個 別 国 家 に よ る 自衛 権 の 行 使 を認 めて い る(第51条)。 この こ とが核 兵 器使 用 の規 制 に お い て、 ひ とつ の変 化 を もた らす こ とに な る。 す な わ ち 、核 兵 器 の 登 場 は、
ち ょう ど国連 憲 章 に よ って 武 力 行 使 が 違 法 化 され た 時期 と重 な るが 、 戦 後 、核 兵 器 が 一部 の核 保 有 国 に とっ て、 国 際政 治 上 、 軍 事 戦 略 上 の重 要 な手 段 と して 位 置 づ け られ る よ うに な る。 そ の流 れ の 中で 、核 兵 器 使 用 の国 際 法 上 の議 論 が 核 兵 器 そ の もの の違 法 性 か ら、使 用 形 態 の合 法 性 へ と変 化 をみせ る よ うにな っ た。 もっ とも、広 島、 長 崎 へ の原 爆 投 下 か ら一 定 期 間 は核 兵 器 それ 自体 の 内在 的違 法性 を証 明 しよ う とす る傾 向が 強 か った が 、1960年 代 半 ばか ら核 兵 器 の使 用 形 態 の 合 法 性 の 問題 へ と争 点 の比 重 が移 っ て い った 。 す なわ ち、 武 力 紛 争 法 にお け る武 力 行 使 の規 制 、 つ ま り戦 闘 手段 の規 制 お よび戦 闘 方 法 の規 制 に違 反 しな い限 り、 核 兵 器 の使 用 が認 め られ る余地 が あ る とす る解 釈 で あ る。 この よ うな解 釈 に法 的根 拠 を与 え る こ ととな った のが 憲章51条 の 自衛権 規 定 で あ った。
自衛 権 に も とつ く核 兵 器 の使用 が 国際 人 道 法 と両 立 す る限 りで 許 容 され る との
33)
解 釈 が と くに核 保 有 国 か ら主 張 され る よ うに な った の で あ る。
ち ょ う ど この よ うな時 期 、核 兵 器 の使 用 をめ ぐ る国 際 法 上 の合 法 性 につ い て
132
裁 判所 が示 した判 断 が1963(昭 和38)年12月7日 、 東 京地 裁 が 下 した い わ ゆ
34)
る原 爆 判 決 で あ る。 この事件 は、1955年3月 、広 島 と長 崎 の5人 の原 爆 被 爆 者 が 日本 国 を相 手 どっ て被 爆 に よ る損害 の賠 償 を求 めた もの で、 国 内判 例 で はあ るが 核 兵 器 使 用 の 国 際 法 上 の合 法 性 を正 面 か ら扱 った初 の 裁 判 例 と して注 目 さ れ た・ 被 爆 者 で あ る原 告 の 主 張 は、 次 の よ うな もの で あ った 。 す な わ ち、 原 爆 投 下 は国 際法 お よび 国内法 に違反 す る。 国際 法違 反 の行 為 につ いて は、 国家(日 本 国)だ けで な く個 人 も国際 法 上 の権 利 主 体 と して 損 害賠 償 請 求権 を有 す るが、
日本 国 は対 日平 和 条 約19条(a)に よ り米 国 に対 す る国際 法 上 、 国 内法 上 の請 求 権 を放 棄 した た め、 原 告 は米 国 に対 す る損 害 賠 償 請 求権 を法 律 上 喪 失 した。 し たが っ て、 日本 政 府 が 国 家賠 償 法 上 の損 害 賠 償 責 任 を負 う と して 、被 告 で あ る 国 に対 して 損 害 賠 償 を求 め る とい う もの で あ っ た。 これ に先 立 ち、原 告 は米 国 の 裁 判 所 に訴 え よ う と した が実 現 で きな か った た め、 日本 の 裁判 所 に提 訴 した の で あ った 。 これ に対 して被 告 は、 当 時、 原 爆 使用 を国 際 法 上 違 法 とす る条 約 や 国 際 慣習 法 は存在 せ ず 、 仮 に違 法 と して も その こ とか ら被 害 者 で あ る原 告 に 損 害 賠 償 請 求権 が 発 生 す る もので は な い と主 張 した。 判 決 に おい て 裁 判 所 は、
被 害 者 個 人 が加 害 国 に国 際 法 上 の 損 害賠 償 請 求 権 を有 す るか ど うか は、 個 人 が 国 際 法 上 の 主 体 性 を有 す るか ど うか に よ る もの で あ る と して、 個 人 が 国 際 手続 き に よ り権 利 を主 張 し義 務 を追 求 され る可 能性 が な けれ ば 国際 法 上 の権 利 義務 は生 じな い とす る 当時 の通 説 に従 った 判 断 を示 した。 そ して、 対 日平 和 条 約19 条(a)で 放棄 され た 「日本 国民 の請 求権 」 とは、 日本 国 民 の連 合 国 お よび連 合 国 民 に対 す る、 日本 国 お よび連 合 国 に お け る国 内法 上 の請 求 権 で あ るが 、 この権 利 の 実 現 の 可 能 性 は な く、 原 告 は喪 失 す べ き権 利 を もた な い と して原 告 の 請 求 につ い て は これ を棄 却 した。
しか し、 原 爆 の 国 際 法 上 の評 価 に つ い て は、違 法 性 を認 め る画 期 的 な判 断 を 示 した 。 まず、 新 兵 器 に対 す る国際 法 の 適用 につ いて 判 決 は、 「国 際法 が 禁止 し て い ない 限 り、 新 兵器 の使 用 が 合 法 で あ る こ とは 当然 で あ る」 と しつ つ 、 「しか
しなが ら、 そ こに い う禁 止 とは 、 直接 禁 止 す る旨の 明 文 の あ る場 合 だ け を指 す もの で はな く、 既 存 の国 際 法 規(慣 習 国 際 法 と条 約)の 解 釈 及 び類 推 適 用 か ら して、 当然 に禁 止 され て い る とみ られ る場 合 を含 む と考 え られ 」、 「文 明 国 の慣 例 に反 し・ 国際 法 の諸 原 則 に反 す る もの は、 た とえ法 規 に明 文 が な くて も、 禁
3:i)
止 され るべ き こ とは 当然 」 で あ る と述 べ た。 この こ とは、 国 際 法 上 明 示 的 に禁 止 され て い な い もの はす べ て許 され る と して核 兵 器 使 用 の合 法 性 を主 張 す る考 え に対 して 、 明 確 な判 断 を示 す もの で あ る。 次 に、 防守 都 市 お よび無 防守 都 市 と軍 事 目標 主 義 に触 れ て 、判 決 は次 の よ うに述 べ る。 「国際 法 上戦 闘行 為 につ い て一 般 に承 認 され て い る慣 習 法 に よれ ば、 … … 防守 都 市 ・防 守地 域 に対 して は 無 差 別 砲 撃 が許 され て い るが 、 無 防守 都 市 ・無 防守 地 域 にお いて は戦 闘 員 及 び
軍事施 設(軍 事 目標)に 対 して の み砲 撃 が 許 され 、非 戦 闘 員及 び非 軍 事施 設(非 軍事 目標)に 対 す る砲 撃 は許 され ず 、 これ に反 す れ ば 当然 違 法 な戦 闘 行為 とな
36)
る」。 「広 島市 及 び長 崎 市 が 当時地 上 兵 力 に よ る占領 の企 図 に対 して 抵 抗 して い た都 市 で な い こ とは公 知 の 事 実 で あ る」。 「従 っ て 、原 子 爆 弾 に よ る爆 撃 が 仮 に 軍 事 目標 の み を その攻 撃 の 目的 と した と して も、 原 子爆 弾 の 巨大 な破 壊 力 か ら 盲 目爆 撃 と同 様 な結 果 を生 ず る もの で あ る以 上 、 広 島、 長 崎 両 市 に対 す る原 子 爆弾 に よ る爆 撃 は、 無 防守 都 市 に対 す る無差 別 爆 撃 と して、 当 時 の 国 際 法 か ら
37)
みて 、 違 法 な戦 闘 行 為 で あ る と解 す るのが 相 当で あ る」。
さ らに、核 兵 器 の兵 器 その もの と して の非 人道 性 に も言 及 し、 「広 島 、長 崎 両 市 に対 す る原 子爆 弾 の投 下 は、 戦 争 に際 して不 必 要 な苦痛 を与 え る もの非 人 道 的 な もの は、 害 敵 手 段 として禁 止 され る、 とい う国 際 法 上 の原 則 に も違 反 す る
38)
と考 え られ 」、 「原 了 爆 弾 の もた らす 苦痛 は、 毒 、 毒 ガ ス 以上 の もの とい って も 過 言 で は な く、 この よ うな残 虐 な 爆 弾 を投 下 した行 為 は、不 必 要 な苦 痛 を与 え
39)}
て は な らな い とい う戦 争 法 の基 本 原 則 に違 反 して い る とい う こ とが で き よ つ」
と述 べ た。
判 決 を み る と、核 兵 器 そ の もの の性 質(内 在 的側 面)と 兵 器 の使 用 基 準(外 在 的側 面)と の両 側 面 の議 論 が並 存 して い る こ とが 読 み取 れ るが 、 それ は核 兵 器 の 使 用 規 制 の争 点が 前 者 か ら後 者 へ と変 化 しつ っ あ った 時期 に下 され た 判 決
40)
で あ っ た こ とに よ る もの と考 え られ る。 同時 に この判 決 は全 体 と して核 兵 器 の 問題 を純 粋 に人 道 法 の観 点 か ら とらえ る こ とが で きた 時代 の議 論 を代 表 す る も の とい え、 他 方 、 国 連 憲 章 にお け る 自衛 権 の 意 味 、 それ との関 連 で次 第 に表 面 化 して くる核 抑 止 論 の意 味 につ い て は まだ 表 面化 して い な い とい う こ とが で き
41)
る 。
X34
42'
3.ICJの 勧 告 的 意 見 と法 の 欠 鉄 問 題
(D意 見公 表 まで の経 緯 と核 兵 器使 用 を 禁 止 す る国 際 法 の存 否
1996年 、ICJに よって 公 表 され た 「核 兵 器 の威 嚇 また は使 用 の合 法性 に関 す る国 際 司法 裁 判 所 の勧 告 的 意 見 」 は、核 兵 器 使 用 の合 法 性 を め ぐっ て 国 際裁 判 所 が 下 した初 の 司法 判 断 と して注 目を あび た。 「核 兵 器 の威 嚇 また は使 用 は、 い か な る場 合 に お い て も、 国 際 法 に違 反 す るか 」 との意 見 要 請 に対 して 、 核 兵 器 の威 嚇 また は使 用 が 「一 般 的 に」 国 際 法 に違 反 す る と した この勧 告 的 意 見 は、
概 して 国 際社 会 か らの高 い評 価 を えた。 その 一 方 で 、核 兵 器 を め ぐっ て核 保 有 国 と非 核保 有 国 が鋭 く対 立 す る今 日の状 況 を その ま ま反 映 す る もの と もな っ た。
勧 告的 意 見 は、 国際 機 関 か らの意 見 要 請 を受 け たICJが 法 律 問題 につ い て 下 す 意 見 の こ とで 、 国家 間 の 具 体 的 な争 訟 事 件 に関 して 下 す 「判 決 」 と並 ん でICJ
の担 う重要 な法 的判 断 の ひ とつ で あ る(憲 章 第96条)。 「判 決 」 が 裁判 の 当 事者 間 にお いて 法 的 拘 束 力 を有 す るの に対 して 、 勧 告 的 意 見 自体 は法 的拘 束 力 を も た ない が ・権 威 あ る法 的意 見 と して の重 み を もつ 。核 兵 器 使 用 の合 法性 に関 す
る勧 告 的意 見 の要 請 は、1994年 の第49回 国連 総 会 で の決 議iの採 択 を経 て 国 連
4;3)
総 会 か らICJに 対 して な され た。要 請 を受 けたICJは 各 国 に対 して2度 に わ たっ て本 問題 につ い て の 陳述 書 の提 出 を求 め、 さ ら に各 国政 府 に よる 口頭 陳 述 が行 われ た 。 陳述 書 を提 出 した 国 は28力 国 、 口頭 陳述 を行 っ た政 府 は22力 国 に達 し、 日本政 府 も陳 述 書 の提 出 お よび 口頭 陳 述 を行 っ た。 また 、広 島 と長 崎 の両
44)
市 長 も見 解 を 表 明 す る機i会 を与 え られ た 。 そ して 、1996年7月8日 、ICJに よ
45}
る意 見 の公 表 が 行 われ た。
核 兵 器 使 用 の合 法 性 を審 理 す るに あ た っ てICJが 最 も悩 ん だ 問題 は、 核 兵 器 使用 を禁 止 す る国 際 法 の 欠鉄 の 問 題 で あ っ た。 先 に も述 べ た よ うに、核 兵 器 使 用 につ いて 明確 に述 べ た条 約 が ない こ とか ら、ICJは 、 まず核 兵 器使 用 を禁lhす
る条 約 ・慣 習 法 の存否 につ い て の検 討 を行 っ た。 勧 告 的 意見 は、 「まず、 国際 法 に は核 兵 器 そ の もの の使 用 の合 法 性 また は違 法性 を規 定 して い る特 定 の規 則 が
as>
あ るか ど うか の 問題 を検 討 す る」 と述 べ 、 「裁 判所 は まず 、慣 習 国際 法 お よび条 約 国際 法 が、 一 般 的 に また は一 定 の状 況 下 、 と りわ け正 当 な 自衛 の状 況 に お い て ・核 兵 器 また は そ の他 の 兵 器 の威 嚇 また は使 用 を許 可 す る特 定 の規 定 を含 ま
な い こ とに留意 す る」 とす る0方 で、 「国家 実 行 に よる と、0定 の兵 器 の使 用 の 違法性 は、 使用 を承認 す る規則 が ない か らで は な く、 禁 止条 項 が あ る こ とに よっ
の
て 生 じ る」 とす る。 そ の上 で、 現 行 の 国 際 法 の 規 則 お よび慣 習 法 に つ い て検 討 す る。 まず 、 毒 素 兵 器 や化 学 ・生 物 兵 器 に関 す る原 則 が核 兵 器 に も適 用 され る べ き とす る見解 に対 して は、 「一 部 の大 量破 壊 兵 器 の 使用 を明 文 で 禁 止 す る諸 条 約 の 中 に、核 兵 器 の使 用 につ いて特 定 の禁 止 を見 出 して い な い」 と して斥 け た・
その 上 で 、 トラテ ロル コ条 約 、 ラ ロ トンガ 条約 、NPT条 約 な ど核 兵 器 を規 制 す る諸 条 約 が 、 核 兵 器 使 用 を禁 止 す る規 則 の 出現 を証 明 す る もの で あ る との 主 張 に対 し、 「これ らの諸 条 約 はか か る兵器 の将 来 に お け る一般 的禁 止 を予 測 す る も の と見 る こ とが で き よ うが 、 それ 自体 で そ の よ うな禁 止 を形 成 して い る とは考 え られ な い」 とす る。
次 に慣 習法 の検 討 に移 る。1945年 以来 、核 兵 器 が使 用 され て い な い事 実 を め ぐって、 国家 に よる核 兵 器 不使用 の1貫行 と保 有 国 の側 の この慣 行 につ いて の 「法 的確 信 」 の 存 在 を違 法 性 の根 拠 と して主 張 す る国 と、 これ まで核 兵 器 が使 用 さ れ な か っ たの は、 それ を禁 止 す る慣 習 法 が 生 まれ た た めで は な く、 核 兵 器 使 用
を正 当化 す る よ うな状 況 が 生 じ なか った た めで あ る とす る核 保 有 国 の 主 張 を あ げた うえで 、ICJは 、 「抑 止政 策 」 の慣 行 に判 断 を下 すつ も りは な いが、 これ を 多 くの 国 が支 持 して い る事 実 が あ る こ とに留意 す る と述 べ 、 「過 去50年 に わ た る核 兵 器 の 不 使用 が 法 的確 信 の表 明 に あた るか ど うか につ いて は、 国際 社 会 に 深 刻 な対 立 が あ り、 か か る状況 の も とに おい て 、 裁 判 所 は、 か か る法 的確 信 の
48)
存 在 を見 出 す こ とが で き な い」 と した 。
また、1961年 以 来 の核 兵 器 使 用 の 違 法性 を確 認 す る一連 の重 要 な総会 決 議 に つ い て 、総 会 決議 が 拘 束 力 は な く と も規 範 的価 値 を もつ と評価 しなが ら も、 採 択 の 際 にか な りの数 の反 対 と棄 権 が あ った こ とな どか ら、 決 議 が核 兵 器 の 問題 に関 して深 い 関心 が あ る こ とを明確 に示 す もの で は あ るが、 核 兵 器 の使用 の違
99)
法 性 に 関 して 法 的確 信 の存 在 を確 立 す る まで に は至 って い な い と述 べ て い る・
(2)国 際 人 道 法 の 観 点 か らの検 討 と最 終 結論
核 兵 器 使 用 を特 定 的 に禁 止 す る条 約 も慣 習 法 も十 分 には確 立 して いな い とい う以 上 の よ うな状 況 をふ まえて 、ICJは 、 国際 人 道 法 の 見地 か らの検 討 を行 い ・
!36
国 際 人 道 法 の原 則 と して2つ を あ げ る。 第一 の原 則 は 、一一般 住 民及 び 民用 物 の 保 護 を 目的 と し、 戦 闘 員 と非 戦 闘 員 の 区別 を確 立 す る こ とで あ り、 民 間 の 目標
と軍 事 目標 を 区別 で きな い兵 器 は使 用 して は な らな い とい う原 則 で あ る。 第2 の原 則 は、 戦 闘 員 に不必 要 な苦 痛 を与 え る兵 器 の使 用 を禁 止 され る とい う原 則 で あ り、 この原 則 に従 え ば 、 国 家 は兵 器 に関 し手 段 の選 択 の 自由 を無 制 限 に有
す る もので は な い とす る。 そ して 、武 力紛 争 に適用 され る これ ら人 道 法 は、 人 間 の尊 重 と 「人 道 の 基 本 的配 慮 」 に 関 し、 きわ め て基 本 的 な もの で あ り、 これ を含 む条 約 の批 准 の 有無 にか か わ らず 、 す べ て の 国 に よ って 遵 守 され るべ き も
5!)
ので あ る とす る。 さ らに、ICJは 、 禁止 条項 が な い場 合 に も諸 国 は人 道 法 の諸 原 則 に従 うべ きだ とす る1907年 の ハ ー グ陸戦 条約 前文 の マル テ ンス条項 につ いて、
「軍 事 技術 の急 速 な発 達 に対応 す る効果 的 な 手段 で あ る52)
」 と し、人 道 法 の原 則 と
53)
規 則 が核 兵 器 に も適用 され る こ とを確 認 す る と して い る。 また 、 人 道 法 原 則 が 核 兵 器 が発 明 され る前 に発 達 した もので 、 核 兵 器 に は適 用 され な い との 一 部 の 国 の主 張 に対 して は、 大 多 数 の 国 家 お よ び学 者 の見 解 に よれ ば、人 道 法 を核 兵 器 に適用 で きる こ とは疑 い え な い と し、裁 判 所 も この見 解 を とる と して い54)。
な お、 これ ら人 道 法 の原 則 と規 則 が 「条 約 法 に関 す る ウ ィー ン条約 」 第53条 に 規 定 され る強行 規範uscogens)で あ るか ど うか につ いて は、判 断 を避 けて い
翼 。
以 上 の よ う な 検 討 を ふ ま え 、ICJは 、 勧 告 的 意 見 の 最 終 項 で あ る105項 で 、
56)
結 論 と して 次 の よ う に 述 べ る。
「裁 判 所 は
、
57)
(1)13対1の 票 決 に よ り、 勧 告 的 意 見 の要 請 に答 え る こ とを決 定 す る。
(2)総 会 に よっ て提 出 され た 問題 に対 して次 の よ うに 回答 す る。
A.全 員 一 致 に よ り、
慣 習 国 際 法 に も条 約 国際 法 に も、核 兵 器 の威 嚇 また は使 用 につ い て の いか な る特 定 の許 可 も存在 しな い。
58)
B.11票 対3票 に よ り、
慣 習 国 際 法 に も条 約 国 際法 に も、核 兵 器 そ の もの の威 嚇 また は使 用 につ い て の い か な る包 括 的 か つ 普 遍 的 な禁 止 も存 在 しな い。
C.全 員 一 致 に よ り、
国 際連 合 憲 章 第2条4項 に違反 し、 か つ、 その 第51条 の すべ て の要 件 を満 た さな い、 核 兵 器 を用 いて の 武 力 に よ る威 嚇 また は 武力 の行 使 は、違 法 で あ
る。
D.全 員 一 致 に よ り、
核 兵 器 の威 嚇 また は使 用 は、 武 力 紛 争 に適用 され る国 際 法 と りわ け国際 人 道 法 の原 則 お よび規 則 の要 件 、 な らび に、核 兵 器 を明 示 的 に扱 っ て い る条 約
そ の他 の約 束 に基 づ く特定 の 義 務 と、 両 立 す る もので な けれ ば な らない ・
E.7票 対7票 、 所 長 の決 定 投 票 に よ り、
以 上 に述 べ た 要 件 か ら、 核 兵 器 の威 嚇 また は使 用 は、 武 力 紛 争 に適 用 され る国 際 法 の 規 則 、 そ して と りわ け人 道 法 の原 則 お よび規 則 に0般 的 に違 反 す るで あ ろ う。
しか しな が ら、裁 判 所 は、 国 際 法 の現 状 お よび裁 判 所 が利 用 し うる事 実 の 諸 要 素 か ら考 え る と、 国 家 の存 亡 そ の ものが 危 険 に さ らされ て い る自衛 の極 端 な状 況 に お いて 、 核 兵 器 の威 嚇 また は使 用 が 合 法 で あ るか 違 法 で あ るか に つ いて 確 定 的 に結 論 を下 す こ とはで き ない 。
F.全 員 一致 に よ り、
厳 重 か つ効 果 的 な国 際 管 理 の下 に お い て 、 あ らゆ る点 で の核 軍 縮 に導 く交 渉 を誠 実 に遂行 し、 か つ 完 結 させ る義務 が存 在 す る。」
4.核 兵器 の使 用 をめ ぐる法 と政 治 の交 錯
(1)国 際 人 道 法 との 両 立 性
と こ ろで 、 勧 告 的 意 見 の全 体 お よび 結 論部 分 に あた る105項 をみ る と、 そ こ に は純 粋 に法 に基 づ い て核 兵 器 使用 の合 法 性(違 法 性)に つ い て の検 討 を行 い 結 論 を導 こ う とす る姿 勢 が 伺 え る0方 で 、 判 断 に曖 昧性 を残 す 内容 に もな って い る こ とが わ か る。 そ の こ とが 勧 告 的意 見 の 内容 を複 雑 で わか りに くい もの に して い る ともい え る。 しか し、 その原 因 は、核 兵 器 の使用 に関 す る国際 法 規 の 不 存 在 とい う法 の 欠訣 の 問題 だ け に求 め られ るべ きで は な い。 そ こに は、核 兵 器 使 用 を め ぐる国 際法 の 解 釈 、 適 用 につ いて の裁 判 官 の法 的 、 思想 的 対 立 とと
もに、核 兵 器 の 違 法性 を主 張 す る国々 と核 兵 器 の政 治 的 ・戦 略 的価 値 を認 め、
138
利 用 しよ う とす る核 保 有 国 の間 の 対立 が そ の ま ま反 映 して い る とい っ て よい。
す な わ ち、 核 兵 器 の使 用 を め ぐ る法 と政 治 の交 錯 が そ こ にみ られ る。
この こ とに関 連 して、 まず 、核 兵 器 の使 用 と国際 人 道 法 との両 立 性 の 問題 が あ げ られ る。 先 に述 べ た よ うに、ICJは 、人 道 法 の原則 が核 兵器 に適用 され る こ とにつ いて は議 論 の 余 地 が な い と した。 しか し、 そ の0方 で 、 いか な る状 況 に お いて も核 兵 器 の使用 が 人道 法 に照 らして違 法 で あ るか否 か にっ い て は、ICJは 躊 躇 を見せ て い る。ICJは 、一 方 で 「ひ とつ の見 解 に よれ ば、核 兵 器 の使 用 が 武 力 紛 争 法 に服 し、 そ れ に よっ て規 制 され る とい う事 実 は、 必 ず しも この よ うな 使 用 その ものが 禁 止 され る こ とを意 味 しな い」 と して 、 「核 兵 器 の使 用 の 合 法性
は、他 の戦 争 の 方 法 お よび手 段 の場 合 と同様 、 武力 の行 使 お よび敵 対 行 為 に関 す る適 用 可 能 な 国 際 法 の諸 原 則 に照 ら して 評 価 しな くて は な らな い」 とい っ た60)
核 保 有 国 の見 解 を紹 介 して い る。 他 方 で 、 「核 兵 器 の使 用 は、 人 道法 の原 則 お よ び規 則 と両 立 しう る こ とは決 して な く、 した が って 、 禁 止 され て い る。使 用 さ れ れ ば、核 兵 器 は い か な る状 況 にお い て も、 一 般住 民 と戦 闘 員 との 区別 、 また は民用 物 と軍 事 目標 との 区別 は い さ さか もで きず、 その効 果 は、 多 くは抑 制 の きか ぬ もの で あ って 、 時 間 的 に も空 間 的 に も、 合 法 的 な軍 事 目標 に限 定 す る こ
61)
とが で きな いで あ ろ う」 との 見解 に も言及 す る。
そ して 、 「裁判 所 は、低 威 力 で よ り小 さい戦術 核 兵 器 の 『ク リー ンな』 使用 も 含 めて ・ 一 定 の 状 況 に お い て核 兵 器 の使 用 が 合 法 で あ る と主 張 す る国 の 中 で 、
も しか か る限 定 的 使用 が 実 行 可 能 で あ る とす れ ば、 か か る使用 を正 当化 せ しめ る正 確 な状 況 は何 か とい う こ とを、 また、 か か る限定 的使 用 が 、 高 威 力 の核 兵 器 の全 面 的使 用 に拡 大 しが ちで は な いか 否 か とい う こ とを 示 す 国 が なか っ た こ
とを認 め る もので あ る。 した が って 、 裁判 所 は、 この見 解 の妥 当性 を判 断 す る
G2)
に足 る十分 な根 拠 が あ る とは考 えな い 。」 と述 べ る。 しか し、 「前 述 した核 兵 器 の独 自の特 性 を考 えれ ば、 か か る兵 器 の使 用 はか か る要件 の充 足 とは、 実 際、
ほ とん ど両 立 で きな い よ うに思 わ れ る」 と しつ っ も、 「裁 判 所 は、核 兵 器 の使 用 が、 武 力紛 争 に適 用 され る法 の原 則 お よび規 則 に、 必 ず い か な る状況 に お い て も矛 盾 す る こ とに な る とい う結 論 に確 実 に至 るに は、 十 分 な要 素 を持 ち合 わせ
63)
て い な い と考 え る」 と結 論 づ け て い る。 この よ うな判 断 、 す な わ ち、 核 兵 器 の 使 用 を包 括 的 かつ 普 遍 的 に違 法 とは しなか った帰 結 が 、E項 前段 のL般 的 に」
違法 との 表 現 として 表 れ て い る とい え る。
(2)核 兵 器 使 用 と 自衛 権
核 兵 器 使用 がL般 的 に」 違法 とす るな ら、 「例 外 的 に」 違 法 で は ない場 合 が あ るのか 否 か 。 この 点 につ いて 、勧 告 的意 見 の な か で も と くに議 論 が あ るのが ・ E項 後 段 の 「国家 の存 亡 そ の もの が危 険 に さ らされ て い る 自衛 の極 端 な状 況 に お い て、 核 兵 器 の威 嚇 また は使 用 が 合 法 で あ るか 違 法 で あ るか につ いて確 定 的 に結論 を下 す こ とはで きない。」 との0文 で あ る。 自衛 権 は、 先 に述 べ た よ うに、
国連 憲 章 にお いて 禁 止 され た武 力 に よ る威 嚇 また は行 使 の例 外 と して個 別 国家 に認 め られ た権 利 で あ る。 しか し、原 爆 判決 の 時 点 で は そ の法 的推 論 に 自衛 権
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の意 味 につ い て は まだ表面 化 して い なか った の に対 し、ICJの 勧 告 的意 見で 言 及 され た こ とは、冷 戦 期 を通 じた核 兵 器 の もつ 戦 略 的意 味 の増 大 を受 けて 、 国 連 憲 章 に規 定 されたbusadbellumと して の 自衛 権 がjusinBello、 す なわ ち国際 人道 法 と ともに核 兵 器使 用 の合 法性 の審 査 にお いて重 要 な意 味 を もつ よ うに な っ た こ とを示 してい る。ICJも 「それ ぞれ の 国家 の 生存 とい う基本 的 な権 利 を度 外 視 す る こ とは で きな い の で あ って 、 したが って 、 国家 の存 亡 が危 険 に さ らされ て い る場 合 、憲 章 第51条 に従 って 、 自衛 に訴 え る権 利 を度 外 視 す る こ とはで き
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ない 」 との認 識 を示 して い る。
問題 は、 戦 争 違 法 化 の も とで 、違 法 な 武 力行 使 を行 う国 に対 して 、 国連 憲 章 の認 めた個 別 的 また は集 団 的 自衛 権 を行 使 す る国 は、 特 定 兵 器 な い し害 敵 手段 の使 用 を禁 止 す る国 際 人道 法原 則 お よび 規 則 に拘 束 され な い また は違反 す る こ
とが 許 され るか 、 い いか えれ ば、Jusadbelumの 違反 がjusZnBelloの 適用 に
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影 響 を与 え るか で あ る。ICJは 、 自衛 権 行 使 の要 件 と して 第51条 に規 定 され た 要祥 、お よび必難 と均鮒 とい う慣 習国際法上の要件 をあげた う認 「均衡 性 の 原 則 は、 それ 自体 と して は、 あ らゆ る状 況 に お い て 自衛 にお け る核 兵器 の 使 用 を排 除 す る こ とはで きな い」 と しっ つ 、 「同時 に 自衛 の た めの 法 の下 に お い て均 衡 性 の あ る武 力 の行 使 が 合 法 で あ るた め に は、 と りわ け人 道 法 の原 則 と規 則 か らな る武 力 紛 争 に適 用 され る法 の要 件 に合 致 しな けれ ば な らな い」 とも述
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べ て い る。 しか し、核 兵 器 の性 質 その もの の ゆ え に、 そ して 核 攻 撃 の応 酬 が拡 大 す る高 度 の可 能 性 の ゆ え に、破 壊 的 状 況 が 起 こ る危 険性 が きわ めて大 き く、
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均衡 性 の要 件 が 遵 守 され る可能 性 が 否定 され る との一 部 の 国 の見 解 に対 して は、
裁判 所 は、 そ の よ うな危 険 性 を定 量 化 す る必 要 も、 また 、 これ らの危 険性 を制 限 す る に足 りる ほ どに精確 な戦 術 核 兵 器 が存 在 す るか 否 か とい う問 題 を検 討 す る必 要 もな く、 それ は均衡 性 の 要 件 に従 っ て核 兵 器 に よ る対 抗 を 自衛 の場 合 に で き る と信 じ る国 が想 起 す べ き考 慮 事 項 に あ た る こ とに 留 意 す れ ば足 りる とし
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て ・ 判 断 を避 け て い る。 また 、復 仇 行 為 にお け る核 兵 器 の使 用 が合 法 で あ る と す る主 張 に対 して も、 自衛 の場 合 と同 じ く均衡 性 の原 則 に支 配 され る と述 べ る
に と どめ て い る。そ して 、伽 ∫adbellumと 核 兵 器 の 使 用 との 関 係 に つ い て 、 「国 際 連 合 憲 章 第2条4項 に 違 反 し、 か つ 、 そ の 第51条 の す べ て の 要 件 を 満 た さ な い、核 兵 器 を用 い ての 武 力 に よ る威 嚇 また は 武力 の行使 は、 違法 で あ る。」 と結72)
論 づ け て い る。
それ で は・ 果 た して第51条 の要 件 を満 たせ ば 自衛 の た め に核 兵器 の使 用 が 認
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め られ るの で あ ろ うか 。 これ が 認 め られ る とす る考 え方 は、 勧 告 的 意 見 で 引用 され た、 「あ る国 家 に よ る核 兵 器 の使 用 が 自衛 の要件 を満 た す と仮定 す れ ば 、次 に、 それ が 敵 対 行 為 を規 制 す る、 武 力 紛 争 法 の基 本 的 な原 則 に合 致 す るか ど う か を検 討 しな くて は な らな い」 との核 保 有 国 の見 解 に代 表 され る。 しか し、ICJ
は・ 「す で に それ 自体 違 法 で あ る兵 器 は、憲 章 の も とで、正 当 な 目的 の た め に使 わ れ た か ら とい って、 合 法 に な るわ けで は な い。」 と も述 べ て い る。 そ うで あ る な らば、 「一一般 的 に」 違法 とされ た核 兵 器 が た とえ 自衛権 とい う正 当 な 目的 の た め に使 わ れ よ う と合 法 に は な らな い はず で あ る。 これ を認 め る こ とは、jusad
belluynに お け る違 法 性 阻 却 事 由 がjusinbelloに お け る違 法性 阻却 事 由 に もな りか ねず 、jusadbe〃umとjusinbe〃oの 二 つ を別 個 の法 体 系 とみ な し、二 つ の領 域 に お け る要 件 を み た さな けれ ば合 法性 は証 明 され な い とい う国 際法 上 の
の
原 則 を逸 脱 す る こ とに な るか らで あ る。 この こ とか ら、 た とえbusadbellum の レベ ル で相 手 国 の 先 制 攻 撃 に よ る違 法 性 ・侵 略性 が 明 らか で 、 それ に対 す る 自衛 権 行 使 の場 合 で も、bus勿Belloの レベ ル で、核 兵器 の使用 に関 す る国 際人 道 法 規 は、 自衛 権 行 使 国 に よ って も等 し く遵 守 され な けれ ば な らない はず で あ
の
る との批 判 が 提 起 され る。 そ の理 由 は、 核 兵 器 の使用 に適 用 され るべ き人 道 法 規 則 が 、 敵 国 よ りもむ しろ住 民 個 人 を保 護 法 益 とす る最 小 限 の人 道 的性 質 を有
す る原 則 で あ る こ とに よ る 。 しか し、 結 論 に お い て は 、 「国 家 の 存 亡 そ の も の が