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単独者の意識と抒情 : 家持における「独」につい て

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(1)

単独者の意識と抒情 : 家持における「独」につい

著者名(日) 川上 富吉

雑誌名 大妻国文

巻 3

ページ 2‑23

発行年 1972

URL http://id.nii.ac.jp/1114/00001716/

Creative Commons : 表示 ‑ 非営利 ‑ 改変禁止

http://creativecommons.org/licenses/by‑nc‑nd/3.0/deed.ja

(2)

/ 卜

単 独 者 の 意 識 と 抒 情

︱ ︱ 家 持 に お け る

﹁ 独

﹂ に つ い て l l

⁚ ノ

士 ロ

一 詩 歌 と い う も の が

﹁ 心 の 思

﹂ い を 述 べ る も の ︱

︱ つ ま り

︑ 抒 情 詩

︱ ︱ で あ る こ と は ︑ 今 さ ら こ と 新 し く 言 う ま で も な い こ と で あ る が

︑ 万 葉 集 の 末 期 歌 人 で あ る 大 伴 家 持 に あ て っ も

︑ そ れ は 同 様 で あ て っ

︑ そ れ は 家 持 作 の 絶 唱 と 世 評 の 高 い 次 の 三 首 春 の 野 に 霞 た な び き う ら が な し こ の 夕 か げ に う ぐ ひ す 鳴 く も 19 ︵

四 二 九

︶ わ が 屋 戸 の い さ さ 群 竹 ふ く 風 の 音 の か そ け き こ の 夕 か も

19 ︵ 四 二 九 一 ︶ う ら う ら に 照 れ る 春 日 に 雲 雀 あ が り 情 悲 し も 獨 し お も へ ば 19 ︵

四 二 九 二 ︶ と そ の 左 注 の 春 日 遅 遅 と し て ︑

認 麟 正 に 哺 く

︒ 憮 性 め る 康

ち 歌 に あ ら ず は ︑

驚 ひ 難 し ︒ よ り て こ の 歌 を 作 り

︑ 式も ち

■ 縣 町 を 展 べ た

‑2‑

(3)

と い う 言 辞 に よ て っ も 明 ら か あ で る ︒ こ の 点 に 関 し て は か て っ 言 及 し た こ と が あ る が

︑ 西 下 経 一 氏 の 言 を 援 用 す れ ば

︑ 家 持 の 歌 は 心 中 の い ぶ せ き 鬱 結 を 排 て っ

︑ 心 を 遣 ら ん が 篤 で あ る ︒ A 中 略 V か か る 心 情 の 根 本 に 横 た は る 情 念 は い ﹁ の

﹂ ち で あ る ︒

∧ 中 略 ∨ と か く

い ﹁ の ち

﹂ の 情 念 に 張 く 格 り 動 か さ れ

︑ 現 身 の 人 な る 我 r

﹂ と し て 思 索 的 な 抒 情 を 起 し て

註 2

ゐ る ︒ と ご 指 摘 し て お ら れ る ︒ 同 じ く

︑ 岡 部 政 裕 氏 も ま た ︑

﹁ わ れ

﹂ と い う 用 語 に 着 目 し て そ の 使 用 例 を 検 討 し た 末 に ︑ 大 勢 か 見 ら て ︑ 記 紀 万 ・ 葉 の 時 代

︵ 上 代

︶ は

﹁ わ れ の 文 学

﹂ と し て 特 徴 づ け る こ と が で き る の で は あ る ま い か ︒ そ し て ︑ わ れ の 自 覚 に も か わ ら ず

︑ あ る い は ︑ わ れ の 自 覚 の た め に ︑ わ れ の 要 求 や 欲 望 が 阻 害 さ れ て

︑ ひ と り の 意 識 が 強 く

註 3

現 わ れ た の で あ る ︒ と 結 論 づ け ら れ ︑ 個 我 の 自 覚 が ひ ﹁ と り

﹂ の 意 識 を も た せ た こ と を 確 認 し て お ら れ る ︒ と こ ろ で ︑ ひ ﹁ と り

﹂ と い う こ と ば は ︑ 集 中 ︑ 仮 表 名 記 例 で ま

︑ 比 等 利     比 登 利     比 等 理     比 登 里 と あ り ︑ 漢 字 表 記 例 で は

︑ 一     人 一     孤     獨 な ど と 表 記 さ れ て お り ︑ こ れ は 計 ﹁ 数 的 に は 一 人 だ が 感 ︑ 情 的 に は 独 な の で あ

﹂ る こ と と ︑ 独 ﹁ の 歌 が 多 い こ と は ︑ 独 の 境

註 5

地 あ ︑ る い は 独 の 心 情 か ら が 歌 生 ま れ る 場 合 が よ り 多 い ︑ と い う こ と を 示 す も の で あ る ﹂ こ と を 語 て っ い よ う ︒ さ て ︑ 本 稿 は 家 持 に お け る 単 独 者 の 意 識 と 抒 情 に つ い て ︑ そ 用 の 語 ひ ﹁ と り

﹂ を 手 が か り に し て 少 し く 検 討 し み て よ う と す る も の で あ る ︒

‑3‑

(4)

一  四 四 〇 八

四 三 三 一

四 一 七 七 ・ 四 一 七 八 ・ 四 二 〇 八 ・ 四 二 九 二 三 九 〇 〇 ・ 三 九 一 六

二 九 二 ハ

一 六

〇 二

・ I 釜 三

・ 一 六 三 五

︒ 一 六 三 六

四 六 二

七 三 三 ・ 七 六 九

四 〇 八 九

< ︱ 二

家 持 に お け る ひ ﹁ と り

﹂ 用 の 例 は ︑ 万 葉 集 二 十 巷 の 順 序 に し た が て っ み れ ば ︑ 次 の ご と く あ で る ︒ 右

の 歌 語 12 語 の う ち ︑ 19 ﹁ 四 一 七

﹂ 八 の 訓 に 問 題 が あ り ︑ 岡 部 政 氏 裕 は ワ ﹁ ノ レ

﹂ ミ と 訓 ん で 除 外 さ れ て い る が ︑ 私 は ︑ 類 衆 本

・ 細 川 本

・ 京 都 大 学 本

・ 校 本 な ど に し た が て っ ヒ ﹁ リ ト ノ

﹂ ミ 訓 と ん 数 で に 入 れ て あ る ︒ 題 詞 に 3 語 歌 ︑ 語 12 に 語

︑ 左 注 に 2 語 計 で 17 語

と い う こ と に な る ︒ 次 に ︑ そ れ ら を 家 持 作 の 歌 生 涯 の 上 に そ の 製 作 年 代 順 に 配 列 な し お し て み る こ と に し よ う

三 家 持 の 生 涯 は ︑ 尾 山 篤 二 郎 氏 の 霊 亀 二 年 7 ︵ ︲ 6

︶ 誕 生 説 に よ れ ば

︑ 歿 年 の 延 暦 四 年 7 ︵ 8 5

︶ ま で 七 十 年 の 長 き に 亘 て っ い る こ

‑4‑

3

20 4

巻 別 一   題           詞

義 中

2

左   注

2 4 1 2 4 2 1 計

(5)

と な に る ︒ そ の 長 き 一 生 を ︑ 便 宜 上 ︑ そ の 作 品 の 製 作 年 分 代 明 の も の を 基 に し て 区 分 し て み る と ︑ 第 一 期   圭 目 少 年 時 代            

︵ 天 平 三 年 73︲ ︵

・6 才

〜 天 平 十 八 年 746 ︵

︶ 月 七 3

. 才

︶ 第 二 期   壮 年 前 期

・ 越 中 守 時 代  

︵ 天 平 十 八 年 月 八

〜 天 平 勝 宝 三 年 75︲ ︵

︶ 月 七 36 才

︶ 第 三 期   壮 年 後 期 少 ・ 納 言 時 代  

︵ 天 平 勝 宝 三 年 月 八

〜 天 平 宝 字 三 年 759 ︵

︶ 月 正 44 才

︶ と い う こ と に な る が

︑ い ま こ の 時 期 区 分 に し た が て っ 時 ︑ 代 を 追 て っ 家 ︑ 持 用 の 語 ひ ﹁ と

﹂ り を 含 む 作 品 を 配 列 し た 表 を 作 て っ み る と 次 の ご と く で あ る ︒

③ ② ① 番整

天     平

1 5

・ 8 天     平 H ・ 6 天     平 1 0

・ 7

製 作 年 月 日

一年 令

又 大 伴 宿 爾 家 持 和 歌 三 首 繊 け が 叶   響 履 悌 驚   読 着 難   姐 肝 鴎 寄 十 島 難 十 か ︵4 七 三 三 ︶ 笙 雌 ピ   伴 ビ ぞ 琳 役   碓 鮮 肘 ぽ   典 離 穐 ぽ 耐   誅 枇 胤 律 ︵4 七 三 四 ︶

諦 ぉ舘   好 歴 耐 聡 イ が   整 r 警 密   嬢 我 娘 〃   事 一 聴 枇 響 ︵4 七 三 五 ︶ 大 伴 宿 頑 家 持 鹿 鳴 歌 二 首 雌 ″ 肝 〃   総 彗 星 が   郵 縣 鮮   ぽ ぼ 雌 ど 鮮   雛 耽 篤 警 ︵8 一 六 〇 二 ︶

魔 親 ピ   韓 貯 離 隣 群   贈 貯 村 ぽ   雌 平 従 螢   ″ 慇 肝 ぽ ぼ 貯 ︵8 一 六 〇 三 ︶ 右 二 首 天 平 十 五 年 癸 未 八 月 十 六 日 作 十 一 年 己 卯 夏 六 月 大 伴 宿 爾 家 持 悲

二 傷 亡 妾

・ 作 一 首 歌 篠 縞 が   腱 熙 さ殺   騰 嚇 鮮   姑 慨 ひ 瑞   辟 従

乎 を ︵3 四 六 二 ︶ 孵 律 年 月 夜 獨 十 七 七 日 之 仰 二 天 漢 一 柳 述

′ 懐

一 首

歩 熟 澱

多 た 之 し

  朧 剰

須 す 良 ら 之 し   廠 蘇 錮  

吉 き 欲 ょ 伎 き 肢 夜 ェ 罫 ヽ毬 私 離  

多 た 流 る

︵ ・ 7

三 九 〇 〇 ︶

口 田

― ‑ 5 ‑―

(6)

大 伴 宿 爾 家 持 報 二賠 紀 女 郎 一歌 一 首 久 堅 之   雨 之 落 日 乎   直 獨   山 邊 爾 居 者   欝 有 末

︵ 4 七 六 九

大 伴 宿 爾 家 持 賠

二 安 倍 女 郎

一 歌

一 首

牛 っ逢   だ 麟 仔 熊 離   機 饗 〃   薄 離 ひ鶏 微 か 畿 曇 ︵8 工 釜 ︶

28‑26

天     平

1 6

・ 4 尼 作

二 頭 句 一 丼 伴 所 大 宿 爾 宿 持

レ 誂 レ 尼 績 二 末 句 一 等

和 歌 一 首

ぼ 傭 鴻 ″   羅 鶏 築 爵 膠   屁 オ け 平 尼 作   瑚 貯 鷺 鴎 着   靴 鐸 警 俸 辟 家 持 績 ︵8 王 全 一一五 ︶ 港 黎 〃   麟 酔 驚 襲 養 賛 平   素 梶 蘇 絆  

一 ひ . と配 酔 肝 徹 ︵8 三 全 釜 し

十 六 年 四 年 五 日 獨 居

二 平 城 故 宅

一 作

歌 六 首

啜 耽   鮮 傭 漿 滞 な P 酔   僻 瞥 等 葬 舜  

奈 な 外 欲 ょ ル 醒 鮮  

宇 ぅ 都 っ 路 ろ 比 ひ 奴 ぬ 良 ら 礼

︵︲ 7 三 九 一 六 ︶

躍 瞥 肇 ぎ 舞   ダ 鷲 禁 辞 r 辟   安 煮 篠 ぎ   樹 が ダ 耳 筆 で   r 瀞 ガ F 禁 r 學

  離 槃 腱 貯 甕 鮮   艤 争 瞥 彗 容   熙 宇 貯 瞥 静 輿   安 寿 俸 羅 ぼ扇 ︵・ 7 三 九 一 七 ︶ 散 さ 廠 之 し 乎 を 斜 貯 酔 在 静 な P 争 等 艤 静 哉 肝 オ   架 寿 か   如 敵 夕   ︵・ 7 三 九 一 ︶ 八 等 と 彗 須 す   薇 ぽ

安 ぁ 良 ら 奈 な 久 く

︵1 7 三 九 一 九 ︶ 報 ら囃   朴 滞 オ ど 貯 筆 澱   が 學 弊 彦 貯   む 総 ﹁鶏 酢 簾 弊 許 ル 康 貯 ︵7. 三 九 二 〇 ︶ 震 ぎ 額 が グ   鳩 離 察 聖 甜 知   耐 舜 財 慇 ル   腱 俸 肝 獅 舜

流 る   励 都 俸 藤

家 け 勢 月 右 六 首 歌 者 天 平 十 六 年 四 五 日 獨 居 ︵1 7 三 九 二 一 ︶ 二 於 平 城 故 郷 奮 宅

一 大 伴 宿 爾 家 持 作

獨 居

二 帽 裏

・ 邊 聞 二 雹 公 鳥 喧 一 作 歌 一 首 丼 短 歌 離 御 魔   費 耐 酔 P 縫 瞥   舜 酔 辟 ぽ 炒   ψ 着 酔

美 み 許 こ 登 と 静   俸

己 こ 之 し 乎 を 須 す た 廠   離 ぽ ぱ ぽ ぽ 雌 平 オ ぞ ぽ が 針 が 孵 煮 筆   醜 諸 ぱ   だ P r 荼 た 計 ぽ   利 が ぼ ダ   ぽ ぎ げ ず 槃 オ サ   伊 ず 胚 平 r   稽 櫻 r オ 禦 ∬ 鯖   宇 詣 樅 ″   げ た 藤 グ 野 ダ   ポ 甜 貯 オ た   ば ぱ 肇 び ど グ   グ グ デ オ ぼ   囃 震 た 耐 燿 耐   ぽ

‑6‑

⑤ 101③ l②

l

15〜 13

(7)

第 期

天     平

1 7

・ 9

天 平 勝 宝 2 ・ 4 が で 貯 オ   密 紺 グ オ ぽ ガ ぽ   ぽ だ 奸 筆 献   計 ぴ 計 櫂 野 絆 野   字 鯖 架 ガ ぽ   費 ぱ 慮 ぱ び 型 等   伊 澱

奸 壁 標 槃 辟

灯 絆 菊 だ   費 型 柑 グ 滞 壁 で   槃 学 瞥 彗 舞   熟 枠 秒 ぽ か 反   歌 ︵・ 8 四 九 ︶ 〇 八

多 た μ 猟   P 外 な 辟 舞 海 争

︵︲ 8 四 〇 九 〇 ︶ 宇 紹 樅 ″   販 鮮 オ 槃 籍 響   僻 宇 律 彗 笙   伊 葎 粋 酔 好 か 手  

名 な 静 勢 奈 な 久 く 無 倍 べ

︵1 8 九 四 〇 一 ︶ 傭 壁 争 彗 舞   伊 壁 耐 グ 愛 い か   肇 協   器 架 浄 滞 争 き 酢   俸

奈 な 静 余 ょ 登 と 牟 む 流 る 右 四 首 十 日 大 伴 宿 爾 家 持 作 之 ︵︲ 8 四 〇 九 二 ︶ 四 月 三 日 賠

二 越 前 判 官 大 伴 宿 爾 池 主

一 霞 公 鳥 歌 不

レ 勝 二 感

奮 之 意

一 述 レ 懐 一 首 丼 短 歌 紺 〃 夢 紆 宇   毒 選 η り 耐   嚇 為 都   携 梯 岬 馨 ぶ ボ 猫 脚 ガ ″ ピ 鑓 慄 貯 荼 ガ オ 雌 鮮 だ 翠 鴫 研 澱   欝 舞 禁 孵 ぽ   雛 ぼ 耐 源   が な 絆 樅 嚇   記 島 批   栽 オ 避 都   審 鮮 馬 伊 ぽ ´ 僣 嘩 婢 ひ統 の摯 離 饗 聴 常 警   税 好 乱 墜 帳 駆 滞   秤 拠 画 亀 避 菱 耐   県 ゴ 春   彬 ´ 俸 璧 酔   撃 釜 ぎ   ば に麻 ひ耐 欝 め稲   贅 熙 肺 が 鮮   嘩 宇 斜 粋   舞 厭 碑 が 存   乳 平

奈 な 夜 ゃ

廠 勢

︵1 7 四 一 七 七 ︶ 離 耽 み 離 夢 べ 伊 学   審 冬 ぽ   肝 壼 ピ 雌 ど 離   伊 理 熙 酔 ひ

︵・ 7 四 一 七 八 ︶ 審 冬 席   を 喫 平 籍 能   舞 世 庁 平   舞 容 が 舒 貯   ぽ 綻 憶 梯

︵・ 7 四 一 七 九 ︶

二 十 二 日 贈

二 判 官 久 米 朝 臣 廣 組 露 公 鳥 怨 恨 歌 一 首 丼 短 歌

雌 肝 鮮 な 野   舒 〃 ぽ 離 鵬 庁   紺 押 饗 静 押   麟 甜 ぽ 雛 鮮   安 籍 碁 瀞 饗  

・ 殉 ´ 狩 秘 酢  

・ 肇 碁 祀 弊

藤 ″ 鶴 難 献   謗 麗 鮮   熙 贄 亀 計   蔀 ピ 戸 ぽ 喝 え ば耐   総 鮮 鯖 貯   購 平 耐 グ オ 煮   ぽ 禁 だ 槃 た ず 計 が 村 鮮   オ ず 慮 ド ぜ   往 r グ 扉 ぽ 野   家 朧 が   群 ど 離 甜 甜   ピ ガ 射 で ひ 宇 オ

︵・ 9 四 二 〇 七 ︶ 贄 鶴 詳   P 争 勢 離 粁 む   殆 争 程 下

母 も

︵1 9 八 ︶ 四 二 〇 吾禁 幾こ 許だ 航ま 氏て反 騰ど歌 末き一 不奈首

E島

天 平 勝 宝 2 ・ 4

‑7‑

(8)

天 平 勝 宝 6 ・ 7 天 平 勝 宝 5 ・ 2 第

ー ノ

二 十 五 日 作 歌 一 首

鷹 滞 利 P 離   貯 野 聖 舞 押 理   性 あ秘 執 ぽ ダ r 計 だ 駿 ぼ ダ

日 遅 々 正 喘 悽 憫 之 意 非 春 鶴 薦 ︒ ︵・ 9 四 二 九 二 ︶

′ 歌 難

′ 撥 耳 働 作 ︒

二 此 歌 一 式 展 二 締 緒 一 ︒ 七 夕 歌 八 首 ば 甜 縫 熙   容 ガ オ 僣 酔 柑 幣   学 な 砕 争 黎   貯 争 海 一 舜 肺

之 し 駆   伊 酢

安 ぁ 灘 多 た 牟 む

︵2 ︒ 四 三 〇 六 ︶ 縫 筆 伊 貯 夢   計 ぴ 計 g 伊 グ ぼ   宇 夢 一 変 酔   盤 酔 熟 酢 僣 肇   ル 耐

久 く 無 里 り ぁ 聞 も

︵2 〇 四 三 〇 七 ︶ 潔 柿 平 夢 禁   が 響 鮮 貯 學 壁 オ   貯 肺 〃 7 澱   静 射 聖 鮮 夢 財 を   牝 紹 評 押 外

︵2 〇 四 三 〇 九 ︶ 腱 雌 離   禁 げ た ず 澱 伊 伊   鮮 瞥 野 僣 詣   鮮 計 鮮 r 離 オ い   か 警 孵 ぽ 滞 智 母

︵2 〇 四 三 〇 九 ︶ 貯 ぎ ぽ 彦 イ   ギ ゴ グ が 村 グ が   貯 耐 ぽ 潔 澱   伊 オ 雑 貯 が r ダ   甜 彗 野 貯 響 r 駿

︵2 〇 四 三 一 〇 ︶

縫 爬 離   げ 耐 智 げ 廠 r 筆   ぽ ひ 響 ぽ 蟹   宇 貯 肺 炒 警 が 鮮   鵬 P グ 寿 体 奸

た が ひ   購 平 オ 耐 グ 響 腱 斑 鮮   が オ ぽ 柿 ぽ ぽ   安 r ヴ ぽ ガ   学 ″ 貯 〃 警 ︵2 〇 四 三 一 一 ︶

︵ 鮮 ぽ 慮 計 村 〃 帯 貯 槃 〃 鮮   が 従 な 籍 架 辞 P 一 平 菊 煮 鮮   r 貯 孵 J   野 耐   r オ ︵2 〇 四 三 一 二 ︶ 右 大 伴 宿 爾 家 持 獨 仰 2 〇 四 三 一 三 ︶ 二 天 漢

¨ 作 之 陳 二 防

人 悲

′ 別 之 情 一 歌 一 首 丼 短 歌 輝 二 〃   耐 籍 〃 臓 離 肺 離   藤 嚇 離   紺 だ グ 鯖 だ 慮 ど   が だ 離 野 ぱ   ピ ピ ″ ギ 計 肇 ば ギ 駿 〃 郷 鮮 額 ギ 費 籍 ず ぼ 憂 ど ︑好 殖 ぽ だ が 好 殖 ぽ ギ 讃 肇 ピ グ を F ♂ ぽ   オ ぽ ぽ ガ 〃 デ 僣 ぽ   禁 ガ ガ グ 絆 禁 籍 騰 ル 歩 弊 外   ψ

胡 こ 自 じ 母 も 乃 の   多 た 知 比 ひ 等 と 邸 之 し 験  

安 ぁ 佐 さ 刀 と ん   覗 熟 L

之 し 健 乱 刊   貯 貯 グ 耐 〃   筆 オ ぽ ア 槃 プ だ   オ ぽ 煮 ガ だ   が ギ オ だ オ 滞 ぼ オ   イ 貯 ガ ば ひ   計 筆 庸 ぽ 夢 譜 宇   平 岩 ギ 柿 柿   r 響 オ ぽ 伊 耐 ビ   淋 軽 ″   甜 肺 ひ ざ 麟 サ ぞ   平 鯖 計 鯖 離   が 澱 離 r だ 歎 鮮   税 鮎 〃   ぴ 計 〃 ぽ 貯 密 ぽ オ 貯 グ 僣 ″   鮮 ど 架 ぽ 孵 隊 オ   グ r ゲ r y   紺 r 敵 r r 離 筆   貯 ゲ 等 麟 ポ   オ グ 貯 オ → 詣 平   鷲

‑8‑

(9)

天 平 勝 宝 7 ・ 2 四

こ こ に は 前 表 の ご と き ひ ﹁ と

﹂ り の 用 例 を 一 一 点 検 し て み る こ と に し よ う

︒ 0   第 一 期   青 少 年 時 代 こ の 時 期 は ︑ 相 聞 往 来 の さ ん か な 時 代 あ で り ︑ 尾 篤 山 二 郎 氏 よ に れ ば

﹁ 相 往 聞 来 歌 時 代

﹂ な ど と 命 名 さ れ て い る ほ ど あ で る ︒ こ の 時 期 の ひ ﹁ と り ﹂ に は

① ②

④ ⑤ が あ る ︒

︱︱

︱ あ ま のが は                           もお ひ

① の ひ ﹁ と

﹂ り は ︑ 題 詞 中 に ︑ 十 ﹁ 年 月 七 七 日 の 夜

︑ ひ と り 天 漢 仰 を ぎ て い さ さ 懐 か を 述 ぶ る 一 首

﹂ と あ り ︑ そ の 一

馨 〃   寿 許 争 P か 静 寿   歩 肺 艤 訃 ル   寿 知 酢 眠 驚 黎 P ル 僣 俸   伊 ケ 令 滞 丼 等 酔   卿 貯 薩 ケ 貯 r 弊 聟 貯 オ 甜 ピ   澱 計 が 辞 献   紺 r ピ を で 敵 野   が 警 布 鮮 貯   ぽ 舞 だ が 安 貯 ガ   計 村 が 鮮 貯   変 滞 オ ぽ で 〃 平   ギ 橋 世 デ 〃   財 ぱ ぽ 筆 梨 敵 饗   グ 耐 r F 貯   伊 ぱ 鯖 が 2 ぽ ガ   漱 尉 〃   r 2 # ぽ 難 鯖 平   オ 廠 ゴ グ ″   伊 ぴ 彗 紺 グ 絆 r   費 r ポ 野 村   紺 が た が 耐 が 鮮   グ ぽ 貯 籍 た   が ダ 澱 伊 耐 ぼ 耐   甜 甜 ガ 禁 π   柿 耐 潔 耐 グ 世 宇   舞 煮 〃 貯 詣   安 響 察 酔 T 着 研   孵 ぼ 耐 甜 絆   伊 ぽ 型 耐 デ オ r 架 離 澱 ″ 献   鵬 平 デ オ ダ ぽ   ダ 鮮 だ 好 ぼ   r f 蟹 び ぽ 伊 r   費 ぽ 孵 貯 ぽ   紺 澱 ぴ 彗 ど 婢 筆   伊 射 鮮 柿 ガ ぴ 鮮

反   歌 ︵2 〇 四 四 〇 八 ︶ 伊 漿 ″ 争 〃   伊 ぱ 僣 献 ず オ ぽ 響 グ ぽ ぽ 霜 好   材 禁 ど 澱 オ 鯉 筆   が な 献 耐 宇 僣 耐

︵2 〇 四 四 九 〇 ︶ ギ 鮮 貯 ぽ だ  

々 く ひ ひ F r ぽ 争   ぽ 学 澱 伊 僣 竿   伊 野 扉 升 ダ 貯 譜 ゴ ぽ 駿   グ オ 貯 ガ

︵2 〇 四 四 一 〇 ︶ 伊 射 甜 オ 鮮   r 貯 g 貯 r 野 が   滞 耐 禁 煮 澱   伊 ピ オ た オ た ゴ   グ P π 虻 察 彦 貯

︵2 〇 四 四 一 一 ︶ オ 肺 ず で 耐   紺 ガ 材 耐 静 野 野   柿 デ ビ 貯 響   柿 r ぽ 平 菊 蒙 ピ   計 ギ 甜 龍 ぽ 震 響

二 月 三 二 十 日 兵 部 少 輔 大 伴 宿 頑 家 持 ︵2 〇 四 四 一 二 ︶

‑9‑

(10)

首 は ︑ 織 女 し 船 乗 り す ら し ま そ 鏡 き よ き 月 夜 に 雲 立 ち 渡 る ︵

1 7 三 九 〇 〇 ︶ と あ る ︒ 天 平 十 年 ︵

7 3 8

︶ 二 十 三 才 の 七 夕 の 夜 の 作 で あ る ︒ 土 屋 文 明 ﹃萬 葉 集 私 注 ﹄ に ︑ 此 の 十 年 七 月 七 日 に は ︑ 天 皇 は 西 池 官 で ︑ 下 道 真 備 以 下 三 十 人 の 文 人 に 詔 し て 賦 を 徴 し て 居 る が ︑ 家 持 は 未 だ さ う し た 席 に 招 か れ る こ と も な く ︑ 獨 り 家 居 し た の で あ ら う ︒ ﹁獨 居 ﹂ の 語 は 下 の ︵三 九 二 一 ︶ の 左 注 に も 見 え る が ︑ こ こ に

﹁ 獨 ﹂ と し た 心 持 は 右 の 事 情 を こ め て 見 て よ い か も 知 れ ぬ ︒ と あ る が ︑ ﹃ 績 日 本 紀 ﹄ に よ れ ば ︑ 同 年 月 条 に ︑ 秋 七 月 癸 酉 ︒ 天 皇 御

二 大

蔵 省

・ ︒ 覧 二 相

・ ︒ 二 晩 頭 韓 御 西 池 官

・ ︒ 因 指

二 殿 前 梅 樹

・ ︒ 勅 右 衛 士 督 下 道 朝 臣 真 備 及 諸 才 子 一日 ︒ 人 皆 有 ■

心 ︒

′ 好 不 ′ 同

︒ 朕 去 春 欲 ン ︻ モ 醜

一 而 未 此 樹 ン ト

′ 及 翫 一賞

・ ︒ 葉 遠 甚 意 惜 焉 宜 .花 .落 ︒  チけ

下 各

二 春 意

・ 詠

此 梅 樹 ち 文 人 舟 人 奉

′ 詔

レ 之 因 賜 ︒

二 五 六 六 位 巳 上 絶 廿 疋 位 己 下 各 疋 ︒

・ ︒ と あ っ て ︑ 文 人 三 十 人 の 梅 樹 春 意 の 応 詔 の 詩 賦 の あ っ た こ と が わ か る が ︑ 歌 を 求 め ら れ た か は 不 明 で あ る し ︑ 題 が 七 夕 で あ っ た か も 不 明 で あ る し ︑ こ の 席 に 列 し た ﹁諸 才 子 ﹂ ﹁文 人 井 人 ﹂ の 中 に 家 持 が 居 た か も 不 明 で あ る ︒ 家 持 の 応 詔 歌 の 初 出 は ︑ 天 平 十 八 年 ︵

7 4 6

︶ 正 月 の 中 官 西 院 に お け る 雪 宴 の 歌 一 首 ︵

1 7 三 九 二 六 ︶ あ る こ と か ら す る と こ の 十 年 七 夕 の 賜 宴 に で ︑ 招 待 さ れ ず 独 り 家 居 し て 天 の 川 を 仰 ぎ 見 て 感 懐 に ひ た っ て 詠 ん だ 歌 と い う 文 明 説 に 今 は し た が っ て お く こ と に し よ う ︒ 七 夕 と い う 文 学 的 饗 宴 に 参 加 し な い と こ ろ の ﹁ ひ と り ﹂ で あ る が ︑ そ の 一 首 は ﹁織 女 が 彦 星 に 逢 お う と 天 の 河 を 船 で 漕 ぎ 渡 っ て い る ら し い ︒ ま そ 鏡 の よ う に 清 い 月 夜 に ︑ 櫂 に よ っ て 立 つ 河 霧 が 雲 と な っ て 立 ち つ づ い て い る ﹂ と い う 意 で ︑ ﹁天 上 の 二 星 の 恋 を 純 客 観 的 に ︑ 清 ら か に 美 し く 想 像 し た 歌 で あ る ﹂ と い わ れ て い る が ︑ そ の 発 想 や 抒 情 に は 現 実 生 活 に お け る 作 者 み ず か ら の 相 聞 往 来 の 恋 の 世 界 に お け る ﹁ ひ と り ﹂ が 踏 ま え ら れ て い る こ と が わ か る ︒

② の ﹁ ひ と り ﹂ は ︑ 天 平 十 一 年 ︵

7 3 9

︶ 六 月 ︑ 二 十 四 才 の 折 の 作 で あ る ︒

―‑ 10 ‑―

(11)

十 一 年 己 卯 夏 月 六

︑ 大 伴 宿 爾 家 持 ︑ 亡 に し 妾 を 悲 傷 み て 作 れ る 歌 一 首 今 よ り は 秋 寒 風 く 吹 き な む を い か に か ひ と り 長 夜 き を 宿 む 3 四 六 二

︶ は ︑ 題 詞 に よ て っ

︑ 亡 く な た っ 妻 を か な し ん で 作 た っ こ と が わ か る ︒ 今 ﹁︐

か ら は 秋 風 も 寒 く 吹 く で あ ろ う に

︑ ど の よ う に し て ひ と り で 長 い 秋 の 夜 を ね よ う

﹂ か と ︑ 妻 を 喪 た っ 現 在

︑ こ れ か ら

︑ や て っ く る で あ う ろ 秋 の 長 夜 の ひ と り 寝 の か な し み を 歌 て っ い る の で あ が る

︑ 事 大 な こ と は ︑ 将 ﹁ 来 の こ と と し

﹂ て 歌 て っ い る こ と で あ る ︒ つ ま り ︑ こ こ の

﹁ ひ と

﹂ り は

﹁ 独

﹂ 寝 る こ と の 悲 み し 男 ︑ 女 の 恋 の 場 に お け る ひ ﹁ と

﹂ り あ で る が 妻 ︑ の 死 そ の も の を 悼 ん だ り ︑ 今 は 亡 妻 き を 慕 う と い う か な し み を 歌 う の で は な く

︑ の ﹁ こ さ れ て ひ と り あ

﹂ る こ と の か な み し や こ れ か ら 独 寝 な し け れ ば な ら な い だ う ろ と い う こ と の か な み し の 情 が 歌 わ れ て い る こ と に 注 目 し て お き た い ︒

③ は ︑ 天 平 十 五 年 八 月 十 六 日

︑ 二 十 八 才 の 時 の 作 あ で る 鹿 ﹁ 鳴 の 歌 二 首

﹂ の 中 の は じ め の 一 首 に ︑ 山 び こ の 相 響 む ま で 妻 懸 に 鹿 鳴 く 山 邊 に ひ と り の み し て

︵ 8 一 六

〇 二 ︶ と あ る ︒ 左 註 に 右 ﹁ の 二 首 は ︑ 天 平 十 五 年 癸 未 八 月 十 六 日 に 作 れ り ︒

﹂ あ と る か ら   ︑ 山 城 国 久 仁 へ の 都 遷 が 天 平 十 三 年 の こ と で あ る か ら ︑ 久 仁 京 で の 作 で あ る と 考 え ら れ る ︒ そ の 恭 仁 京 に は

︑ 家 持 は 妻 妾 を 伴 わ ず に 単 身 赴 任 た し こ と で あ ろ う か ら ︑ 鹿 ﹁ 鳴 く 山 邊 に ひ と り の み し

﹂ て は 実 状 あ で る と し た い ︒ 歌 意 は 山 ﹁ 彦 が 反 響 す る ほ ど に 高 く 妻 ︑ 恋 い を て し 鹿 牡 の 鳴 く 山 辺 に ︑ た だ 一 人 の み で 居 る こ と だ ︒

﹂ と い う こ と に な り ︑   妻 と 逢 い 難 い 地 に 離 れ 住 ん で い て さ み し い 秋 の 頃 に 鹿 の 妻 恋 い に 高 鳴 き を す る 声 妻 に 恋 し い 情 を 刺 激 さ れ て 嘆 の き を 歌 た っ も の で あ る ︒ 情 主 は 妻 ﹁

︵ = 恋 人 ︶ と 離 れ て ︑ ひ と り あ る こ と ﹂ に あ る ︒ つ ま り ︑ 別 居 の

﹁ ひ と

﹂ り と い う こ と あ で る ︒

④ の ① か ら

⑤ ま で の ひ ﹁ と

﹂ り は ︑ 天 平 十 三 年 春 か ら 十 五 年 秋 ま で の 間 に 作 ら れ た も の で あ る と 推 定 さ れ て い る

① 巻 は 四 相 聞 の 部 に あ て っ 家 ︑ 持 が 大 伴 上 坂 大 嬢 か ら 贈 ら れ た 三 首 の 歌

︵ 七 二 九

〜 七 三 一 ︶ に 和 ﹁ ふ る 歌 三 首

︵ 七 三 二

〜 七 三 四

︶ 中 の 首 一 で ︑

‑11‑

(12)

う つ せ み の 世 や も 二 行 く 何 す と か 妹 に あ は ず て わ が 引 d 列 宿 ね む

︵ 8 七 三 三 ︶ と あ る ︒ 歌 意 は ︑ 現 ﹁ 身 と し て 生 き て い る こ の 世 が 三 度 立 と ち 帰 運 り 行 す る も の で あ ろ う か ︑ あ り は し な い ︒ だ た 度 一 の こ の 世 を ︑ 何 と し て ︑ 妹 に 会 ず は に ︑ 吾 が 一 人 で 寝 る こ と を し う ょ か ︒

﹂ と い う こ と で ︑ う ﹁ つ せ み

︵ 現 身

・ 空 蝉 ︶ 代 の や も 二 行

﹂ く と い う 認 識 に は 仏 ︑ 教 の 無 常 観 が 反 映 し て お り ︑ こ の 意 識 を ︑ 男 女 間 の こ と に 限 定 し ︑ そ れ に よ て っ 却 て っ

︑ ふ た り の 会 う こ と の 切 実 な 気 分 を 肯 定 し う ょ と す る の で あ る ︒ こ こ の

﹁ ひ と り

﹂ は ︑ 男 女 別 居 婚 の 場 に お け る 相 ﹁ 会

﹂ ︱

︱ と ひ つ に な る こ と へ の 強 い 布 求

︱ が あ り ︑ 離 れ て あ る ひ と り ︱

︱ 独 寝 ︱

︱ を 嘆 く こ と に あ る こ と が わ か る

② も ま た 巻 四 相 間 中 の 一 首 で ︑ 紀 ﹁ 女 郎 に 報 へ 贈 れ る 歌 一 首

﹂ で ︑ さ ひ か た の 雨 の 降 日 る を た だ ひ と り 山 邊 に を れ ば い ぶ せ か り け り

︵ 4 七 六 九

︶ と あ る ︒ 歌 意 は ︑ 雨 ﹁ の 降 る 日 を ︑ た だ 一 人 山 で 辺 の 宅 に い る の で

︑ 心 が 愁 い に 結 ば れ て い る こ と あ で る よ ︒

﹂ と い う こ と あ で る か ら 紀 ︑ 女 郎 は お そ ら く 奈 良 居 に た も の と 思 わ れ る ︒ 窪 田 空 穂 萬 ﹃ 葉 集 評

﹄ 澤 の 評 に ︑ 報 ﹁

﹂ へ と い う の で

︑ 返 し で あ る ︒ 贈 歌 は ︑ 家 持 消 の を 息 う 問 と い う 範 囲 の も の で あ た っ と み え る ︒ 眼 前 の 状 態 だ け を 捉 え ︑ 着 落 い た 心 を も て っ 言 て っ い る も の で 要 ︑ を 得 た ︑ 品 の あ る も の と な て っ い る

︒ と あ る の に た し が い た い ︒ こ こ の ひ ﹁ と

﹂ り も ︑ 妻 あ る い は 恋 人 と 離 れ て ひ と り あ る こ と を 嘆 い て い る こ と が 知 れ る ︒

③ は 巻 八 秋 相 聞 の 中 の 一 首 で ︑ 安 ﹁ 倍 女 郎 に 贈 れ る 歌 一 首

﹂ で ︑ 今 造 る 久 迩 京 の に 秋 の 夜 の 長 き に 引 日 列 宿 が る 苦 し さ

︵ 8 六 一 三

︶ 一 と あ り ︑ 安 倍 女 郎 は 伝 未 詳 で あ る が

︑ た ぶ ん 安 倍 虫 麻 呂 の 娘 で あ た っ ろ う か ︒

﹁ 今 造

﹂ る は ︑ 新 し く 造 る こ と で ︑ 都 と し て の 造 営 あ で り ︑ 迩 久 京 の 造 営 に 当 り ︑ 天 平 十 二 年 十 月 二 か ら 十 五 年 十 二 月 ま で の 間 に あ た る ︒ 歌 意 は ︑ 新 ﹁ く し 造 営 し て い る 久 適 京 に ︑ 秋 の 夜 の 長 い の に 独 ︑ り で 寝 て い る こ と の 苦 し さ よ ︒

﹂ と い う こ と で ︑   安 倍 女 郎 と は か て っ 夫 婦 関 係 あ に た っ と み え る ︒ そ れ が 奈 ︑ 良 と 恭 仁 と に 離 れ て い て

︑ ひ ﹁ と り 寝

﹂ を な し け れ ば な ら な い 苦 さ し を 歌 て っ い る の で あ る ︒

― ‑ 12 ‑―

(13)

④ も ま た 巻 八 秋 相 間 中 の 一 首 で ︑ 或 ﹁ 者 尼 ︑ に 贈 れ る 歌

﹂ と 題 す る 二 首

︵ 一 六 三 二 ︑   三 ハ 三 四 ︶ に 対 す る 返 歌 で ︑ 佐 保 河 の 水 を 塞 き 上ぁ げ て 植 ゑ し 田 を 慣 の 刈 れ る 撃

餌 は 明 日 刻 な る べ し 継 錨

︵ 8 一 六 三 五

︶ あ と る ︒ こ れ は 題 詞 に

﹁ 尼

︑ 配 観 を 作 り ︑ 井 大 伴 宿 蒲 家 持 尼 ︑ に 誂 へ ら え て 末 句 を 績 ぎ て 和 ふ る

﹂ 歌 と あ て っ 連 ︑ 歌 形 式 の も と っ も 古 い も の と し て 連 歌 史 の 上 か ら 重 視 さ れ る 作 品 で あ る が

︑ こ こ の ひ ﹁ と り な る べ

﹂ し に は 注 釈 上 の 問 題 が あ る ︒ 井 上 通 泰

﹃ 萬 集 葉 新 考

・ 鴻 巣 盛 広 萬 ﹃ 葉 集 全 繹

﹄ 澤 ・ 潟 久 孝

﹃ 萬 葉 集 注 澤

﹄ は ︑

﹁ ひ と り な る べ

﹂ し と し て ︑ ひ ﹁ と り

註 9

の き ま た っ 人 あ で る だ ろ う

﹂ ︒

・ 定 ﹁ タ ッ 一 人 デ ア ラ ウ ︒ ア ナ タ ハ 自 分 デ 骨 ヲ 折 テ ッ 幼 ︑ 女 フ 育 テ タ 仰 ト ル ガ   ︑ 育 タ テ モ ノ

註 1 0                                                                   な

ガ 自 分 ノ モ ノ ニ ス ル ト 云 ワ フ ケ ニ ハ 行 キ マ ス イ マ

﹂ ︒ と し て い る が 折 ︑ 口 信 夫 口 ﹃ 諄 萬 葉 集

﹄ は

﹁ ひ と り 業 る べ

﹂ し と し て ︑

﹁ 独 り で 自 分 の 産 業 の 収 入 と し て 食 べ る の が 常 あ で り ま し う ょ

﹂ ︒ と し て い る   ︒ 今 は 前 者 に 従 い ︑   ヨ 夫 一 婦 の 男 女 一 組

﹂ の う ち の つ ま

︵ 一 人 ︶ と み て お き た い ︒

③ は 巻 八 冬 相 聞 中 の 一 首 で ︑ 沫 雪 の 庭 に ふ り き し 寒 き 夜 を 手 ま く ら ま か ず 一 人 か も 宿 む

︵ 8 一 六 六 三

︶ と あ り ︑ 歌 意 は 沫 ﹁ 雪 が 庭 い ば っ い に 降 り 敷 い て 寒 い 夜 に ︑ 愛 す る 人 の 手 を 枕 と な し い で   ︑ 一 人 で 寝 る こ と あ で ろ う か ︒

﹂ と い う こ と で ︑ こ の 一 首 は ︑ 古 ﹃ 今 六 帖

﹄ に

﹁ ひ と ね り

﹁ た ま く

﹂ ら と て し と ら れ て い る こ と か ら み て も 主 ︑ 情 妻 が と 共 寝 を 出 ず 来 に ひ と り で 寝 る こ と を 嘆 い て い る こ と あ に る こ と が わ か る

︒ 以 上 の ご と く

① ②

③ ⑤ の ひ ﹁ と り ﹂ は ︑ 独 ﹁ 寝

﹂ と い う 男 ︑ 女 の 世 界 に お け る ひ ﹁ と り

﹂ ︱

︱ 恋 愛 の 場 か ら の 離 れ て あ る こ と の ひ と り

︱ ︱ で あ り ︑

④ も 一 夫 一 婦 婚 を 前 提 と す る 男 女 間 の 片 割 れ の ひ ﹁ と

﹂ り と と る こ と が で き る か ら

④ ︑ の ひ ﹁ と

﹂ り の 歌 す は べ て

︑ 独 ﹁

﹂ 寝 と い う 境 涯 に お け る た ﹁ だ ひ と り あ る ﹂ こ と の 単 独 者 の 意 識 か ら く る

﹁ か な し み ﹂ の 抒 情 と い う こ と が き で る ︒

⑤ の ひ ﹁ と り ﹂ は ︑ 巻 十 七 の 三 九 一 六 番 か ら 三 九 二 一 番 ま で の 六 首 に 題 さ れ た ︑ 十 ﹁ 六 年 月 四 五 日 ︑ ひ と 平 り 城 の 故 き 宅 に

―‑ 13 ‑―

(14)

居 て 作 れ る 歌 六 首

﹂ と い う 詞 書 の 中 見 に え る も の で

︑ 独 ﹁ 居

﹂ の

﹁ ひ と り

﹂ で あ る ︒ 天 平 十 六 年 7︲︲ ︵

︶ 四 月 五 日 は ︑ 太 陽 暦 な に す お と 五 月 二 十 五 日 に あ た る が

︑ 家 持 が 奈 良 の 故 宅 に 一 人 居 て 詠 ん だ 作 で あ る こ と が わ か る が ︑

﹁ 平 城 故 宅 ﹂ と い う の は 巻 六 九 の 九 七 番 歌 見 に え る 西 宅 か ︑ そ れ と も 佐 保 の 邸 で あ ろ う が

︑ 故 ﹁ 宅

﹂ と い う の は

︑ 天 平 十 三 年

︵ =

︶ 月 正 に 恭 仁 京 遷 都

︑ 十 五 年 743 ︵

︶ 十 月 二 に 紫 香 楽 官 に 遷 り ︑ 十 六 年 744 ︵

︶ 月 二 に 離 波 官 を 皇 都 と 定 め ︑ そ の 遷 都 の 準 備 に 当 て っ い た の で あ る か ら ︑ 平 ﹁ 城 故 宅 ﹂ と い た っ の で あ ろ う

︒ こ の 時 天 皇 諸 は 王 臣 と 共 に 近 江 紫 香 楽 官 行 に 幸 し て い た の で あ る か ら ︑ 内 舎 人 の 家 持 が そ れ 加 に わ ら ず に 平 城 旧 都 に い た の は ど う い う 事 情 が あ た っ の だ ろ う か ︒ 月 二 二 十 四 日 に 安 積 皇 子 の 挽 歌 19 ︵

四 一 七 八 〜 四 一 八

︶ を 作 り ︑ 月 四 三 日 ま で 恭 仁 に い た こ と た は し か で あ る か ら ︑ お そ く ら 急 ︑ 死 し た 安 積 皇 子 の 葬 儀 に 関 連 た し 事 情 を 推 測 す る こ と が で き る が 詳 ︑ し く 後 は 考 譲 に り た い ︒ そ の 詠 作 六 首 は ︑ た ち ば な の は に へ る 香 か も ほ と と ぎ す 鳴 く 夜 の 雨 に う つ ろ ひ ぬ ら む 17 ︵ 三 九 六 一

︶ ほ と と ぎ す 夜 音 な つ か 網 し さ さ ば 花 は 過 ぐ と も 離 れ ず か 鳴 か む 17 ︵

三 九 一 七

︶ た ち ば な の に は へ る 苑 に は と と ぎ す 鳴 く と 人 告 網 ぐ さ さ ま を し 17 ︵

三 九 一 八

︶ あ を に よ 奈 し 良 の 都 は 古 り ぬ れ ど も と は と と ぎ す 鳴 か ず あ ら く に 17 ︵

二 九 一 九

︶ う づ ら 鳴 き 古 し と 人 は 思 へ れ ど 花 た ち ば な の に は ふ こ の 宿 17 ︵ 三 九 二 〇

︶ か き つ ば た な に 摺 す り つ け 対 対 の き そ ひ 獅 す 月 る 来 は に け り 17 ︵

三 九 二 一 ︶ と あ て っ 第 ︑ 一 首 目 で は 橘 ︑ の 花 が 香 り ほ と と ぎ す が 鳴 く よ き 時 候 に 故 郷 の 旧 宅 に 独 居 し て ︑ お り か ら の 夜 雨 に 橘 の 花 が 散 り 失 せ て し ま う 未 来 を 推 量 像 想 し て ︑ う ﹁ つ ろ ぬ ひ ら む ﹂ そ と の 衰 頼 へ の か な し み が

︑ し み じ み と 歌 わ れ て い る ︒ こ こ で は ︑ 独 ﹁

﹂ 居 と 無 常 感 の う ﹁ つ ろ

﹂ ひ と の 関 係 に 注 目 し て お き た い と 思 う ︒ 以 上 の ご と く

︑ 第 期 一 の 青 少 年 時 代 に お け る ひ ﹁ と

﹂ り は ︑ 男 女 の 相 聞 往 来 の 世 界 お に け る

﹁ ひ と

﹂ り

︱ ひ と り 居

・ ひ と

― ‑ 14 ‑―

(15)

り 寝

︱ が 大 勢 を 占 め て い る こ と を 知 り 得 る の で あ る ︒ た だ こ の 期 最 後 の ⑤ の ひ と り に ︑ よ う や く 恋 愛 の 世 界 に お け る ひ と り か ら 政 ︑ 治 社 会 に お け る 孤 児 意 識 の 自 覚 認 識 の 雨 芽 見 を と る こ と が で き る よ う で あ る ︒

②   第 期 二   壮 年 前 期

︱ 越 中 守 時 代 ︱ こ の 時 代 は ︑ 越 中 国 守 と し て 赴 任 中 の 時 期 に 当 る ︒ 家 持 の 越 中 赴 任 は 天 平 十 八 年 746 ︵

︶ 月 六 廿 一 日 以 後 で ︑ 天 平 勝 宝 三 年 75︲ ︵

︶ 月 七 少 任 納 言 と な て っ 八 月 に 帰 京 す る ま で の 五 年 間 あ で る ︒ 持 家 三 は 十 一 才 の 若 さ 華 で や か な 相 往 聞 来 の サ ロ ン を 後 に し て 雪 深 い 越 の 国 へ 単 身 赴 任 し た の で あ る か ら ︑ 境 涯 的 に は 全 く の ひ と り あ で た っ に も か か わ ず ら

︑ の こ 時 期 用 の 語 ひ ﹁ と

﹂ り 四 は 語 あ で る ︒

⑥ は ︑ 平 天 感 宝 元 年 硼 ︵

︶ 月 五 十 日 ︑ 三 十 四 才 の 時 の 獨 ﹁   ぼ が 難 に ゐ て ︑ 逢 に 雹 公 鳥 の 鳴 く を 聞 き て 作 れ る 歌 一 首 丼 に 短 歌

﹂ 18 ︵

四 〇 八 九

〜 四 〇 九

︶ 二 と う い 題 詞 中 み に え る

﹁ ひ と

﹂ り あ で る が

︑ の こ ひ と り は ︑ 前 日 の 九 日 に 少 目 の 秦 忌 寸 石 竹 の 館 に 集 宴 作 歌 18 ︵

四 〇 八 六 〜 四 〇 八 八

︶ の こ と が あ た っ の で そ ︑ の 歌 宴 の 後 夜 ひ と り 静 か に 詩 境 浸 に て っ い る と こ ろ の ひ と り で あ る ︒

⑦ は ︑ 天 平 勝 宝 二 年 750 ︵

︶ ︑ 三 十 五 才 の 年 の こ と あ で り ︑ 四 ﹁ 月 三 日 ︑ 越 前 判 官 大 伴 宿 耐 池 主 に 贈 れ る 雹 公 鳥 の 歌   ︑ 奮 り に し を 感 づ る 意 に 勝 へ ず し て 懐 を 述 ぶ る 一 首 井 に 短 歌

﹂ と 題 す る 作 品 に ︑ わ が 背 子 と   手 携 は り て   あ け 末 れ ば   出 立 で ち 向   ひ 暮 さ れ ば   ふ り さ け 見 つ つ   思 ひ 暢 べ   見 和 ぎ 山 し に   八 峯 に は   霞 た な び き   谷 べ に は   椿 花 さ き   う ら が な し   春 過 し ぐ れ ば   ほ と と ぎ す   い や 頻 き 鳴 き ぬ   ひ と り の み   聞 け ば   不 怜 も し   君 と 吾   隔 て て 懸 ふ る   碩 波 山   飛 び 越 え 行 き て   明 け 立 た ば   松 さ の 枝 に   暮 さ ら ば   月 に 向 ひ て あ や め ぐ さ   玉 貫 く ま で に 鳴 き 響 め   安 来 寝 じ ず め   君 を 悩 ま せ 19 ︵

四 一 七 七 ︶ 反   歌 吾 の み 聞 け ば 不 怜 も し ほ と と ぎ す 丹 生 の 山 べ に い 行 き 鳴 く に も 19 ︵

四 一 七 八 ︶

‑ 15 ‑―

(16)

ヽ ノ ほ と と ぎ す 夜 鳴 を し つ つ 吾 背 子 を 安 来 な 寝 し め ゆ め 情 あ れ ︵

1 9 四 一 七 九 ︶ と あ る ︒ 長 歌

︵ 四 一 七 七 ︶ 中 の

﹁ ひ と り の み   聞 け ば 不 怜 も し

﹂ は ︑ か て っ の 下 僚 も で あ り 同 族 の 文 学 的 友 人 あ で る 池 主 と 離 れ て い て 自 ︑ 分 ひ と り だ け で 聞 い て い て は 楽 く し な い ︑ と い う こ と を 歌 て っ い る の で あ る ︒ 文 学 的 な 心 の 友 あ で る 池 主 と 離 れ て あ る こ と は ︑ つ ま り ︑ 心 を 慰 め る 歌 を 共 に 理 解 あ し え る 心 の 友 か ら 離 れ て あ る こ と の ひ ﹁ と り

﹂ が 嘆 か れ て い る の で あ る ︒ こ こ に は 第 ︑ 一 期 の ① に 見 た の と 同 様 の 文 学 的 サ ロ ン か ら の 孤 絶 と で も い う ひ ﹁ と り

﹂ を み る こ と が で き る の で あ る ︒ 反 歌 の 一 首 目

︵ 四 一 七 八 ︶ の 里 口 耳

﹂ の 訓 は ヒ ﹁ ト

﹂ リ か

﹁ ワ

﹂ レ か と 異 説 あ が る ︒ 古 典 系 大 本 澤 ︑ 潟 久 孝 萬 ﹃ 葉 集 注

﹄ 澤 に フ ﹁ ノ レ ミ シ

﹂ と あ る が 賀 ︑ 茂 真 淵 萬 ﹃ 葉 考

﹄ に は フ ﹁ ノ レ ミ ﹂ と し て ︑ 四 言 に よ む こ と を し ら で 今 本 に 吾 を ひ と り と よ め る は あ ま り な る 僻 事 ぞ ︑ 義 訓 も 事 に こ そ よ れ

︑ て を に も は た が へ り

︑ や す ら か に 吾 の み と よ め ば 意 と は れ り と あ り ︑ 鹿 持 雅 澄 萬 ﹃ 葉 集 古

﹄ 義 に は

︑ ア レ ス ミ シ と よ む べ し ︑ ヒ ト リ ノ ミ と よ め る は あ ︑ ま り し き こ と な り と あ る ︒ し か し 長 ︑ 歌 中 に

﹁ 獨 耳   聞 姿 不 怜 毛

﹂ と あ る の を 踏 ま え て ︑ そ の リ フ ー レ ン だ と す れ ば 吾 ﹁

﹂ 耳 を 義 訓 と し て ヒ ﹁ ト リ ノ ミ ﹂ と 訓 ん だ と も 考 え ら れ る の で 元 ︑ 暦 本

︑ 類 衆 古 集 本 ︑ 細 川 本 な ど に ワ ﹁ ン ヒ︲ H

﹂ あ る い は

﹁ ﹁ 州 叫 ノ ヽ ヽ こ と あ て っ

﹃ ︑ 校 本 萬 葉 集 ﹄ に ひ ﹁ と り の み

﹂ と あ り ︑ 佐 木 佐 信 綱

﹃ 新 訓 萬 葉

﹄ 集 に も ひ ﹁ と り の み

﹂ と あ る の に し た が て っ

︑ ひ ﹁ と り の な

﹂ と 訓 ん で お く こ と に す る ︒ 意 は ︑ 萬 ﹃ 葉 集 古

﹄ 義 の ご と く ワ ﹁ レ ヒ ト リ ノ ミ

﹂ で あ り ︑ 長 歌 の

﹁ ひ と

﹂ り と 同 様 の ひ と り あ で る ︒

③ は ︑ 天 平 勝 宝 二 年 750 ︵

︶ 月 四 二 十 二 日 ︑ 三 十 五 才 の 時 の 作 品 あ で る 判 ﹁ 官 久 米 朝 臣 広 縄 に 贈 れ る 雹 公 鳥 の 怨 恨 の 歌 一 首 丼 に 短 歌 ﹂ 19 ︵

四 二 〇 七 ︑ 四 二 〇 八 ︶ 題 と す る 作 品 こ こ に し て   向 背 見 に ゆ   る 吾 背 子 が   垣 内 の 谷 に   明 け さ れ ば   榛 の さ 枝 に   夕 れ さ ば   藤 の 繁 み に   ろ は ば ろ に

―‑ 16 ‑―

(17)

鳴 く は と と ぎ す 就

き て   家 居 せ る   君 が 聞 き つ つ   告 げ な く も 憂 し 19 ︵ 四

〇 二 七 ︶ 反 歌 一 首 わ が こ こ だ 待 て ど 来 鳴 か ぬ ほ と と ぎ す 獨 聞 き つ 告 つ げ ぬ 君 か も 19 ︵ 四 二 〇 八 ︶ の 反 歌 一 首 中 用 に い ら れ て い る

︒ こ の 作 品 は ︑ ほ と と ぎ す を 溺 愛 て し い る 家 持 が ︑ 自 分 の 居 館 あ の た り で は ま だ 鳴 か な い が ︑ 山 際 の 谷 に 近 い 広 縄 の と こ ろ で は ほ と と ぎ す が 鳴 く で あ う ろ に ︑ そ れ を 自 分 に 告 げ 知 ら せ ず に 黙 て っ い る が の 心 憂 い と い う 恨 み を 歌 て っ い る の で あ る ︒ そ の 反 歌 は ︑

﹁ 私 が た い そ う 待 て っ い る が 来 ︑ て 鳴 か な い ほ と と ぎ す を ︑ ひ と り 聞 き な が ら 告 げ な い あ な た あ で る こ と よ ︒

﹂ と い う 意 あ で る   ︒ こ こ の 獨 ﹁ 聞 き つ

﹂ つ の 獨 ﹁

﹂ は 広 縄 の こ と を 指 し て い る の だ が

︑ 心 情 的 に は 家 持 自 身 に 広 縄 か ら つ き 離 さ れ た お の れ ひ と り を 意 識 さ せ た こ と に な る は ず の も の で あ る ︒ ほ と と ぎ す を め で る み や び ご こ ろ を 共 有 え し な い 孤 絶 の ひ と り が こ こ に 歌 は わ れ て い る こ と に な る ︒ 文 学 的 サ ロ ン に お け る ひ と り で あ る ︒ な お ︑ こ の 時 期 に お け る 作 品 の う ち ︑ 万 葉 集 を 論 ず る も の の 多 く が

︑ 巻 十 九 の 四 一 三 九 か ら 四 一 六 八 ま で を 家 ︑ 持 ひ と り の 境 涯 で の 作 と み て い る よ う で あ る が 果 ︑ し て そ う で あ ろ う か 疑 間 あ で る ︒ た え と ば 岡 ︑ 部 政 裕 氏 は ︑ 春 の 苑 く れ な ゐ に は ふ 桃 の 花 し た 照 る 道 に 出 で た を つ と め 19 ︵

四 一 三 九 ︶ わ が 園 の 季 の 花 か 庭 に 落 り し だ は れ の い ま だ 残 り た る か も 19 ︵

四 一 四

〇 ︶ 春 ま け て 物 が な き し に さ 夜 ふ け て 羽 ぶ き 鳴 く 鴫 誰 が 田 に か 住 む 19 ︵

四 一 四 一 ︶ も の の ふ の 八 十 を と め ら が く み ま が ふ 寺 井 の 上 の か た か ご の 花 19 ︵

四 一 四 三 ︶ 夜 ぐ た ち に 寝 覚 め て を れ ば 川 瀬 尋 め 情 も し の に 鳴 く 千 鳥 か も 19 ︵

四 一 四 六 ︶ あ し ひ き の 八 峯 の 雉 な き 響 む 朝 明 の 霞 見 れ ば か な し も 19 ︵

四 一 四 九 ︶ 朝 床 に 聞 け ば 邊 け 射 し 水 川 朝 こ ぎ し つ つ う た ふ 船 人 19 ︵ 四 一 五

わ が 屋 戸 の   植 木 た ち ば な   花 に 散 る   時 を ま だ し み   来 鳴 か な く   其 は 怨 み ず

;│

し か れ ど も   谷 片

‑ 17 ‑―

(18)

な ど の 歌 を 示 し て

︑ 歌 に

﹁ ひ と り

﹂ と い う こ と ば を 使 う こ と は ま れ に な て っ い た が 境 ︑ 涯 と し て は

﹁ ひ と り

﹂ に 追 い こ ま れ て い た

︒ そ れ が 彼 の 歌 に 独 自 性 を 獲 得 さ せ る 一 因 に な た っ こ と 否 は 定 で き な い で あ ろ う ︒ 右 に あ げ た 数 首 の 中 に も 明 ︑ ら か に ひ ﹁ と

﹂ り あ る 家 持 を 思 わ せ る も の が あ る ︒ 夜 が ふ け て ︑ 羽 を ふ る わ せ て 鳴 く 鴫 の 声 を 聞 き 寝 ︑ 覚 め の 床 に 千 鳥 の 声 を 聞 い て い る 家 持 は ︑ ひ と だ り た っ に ち が い な い ︒ 朝 の 床 に 船 人 の 歌 を 聞 い て い る 家 持 も ひ と り だ た っ ろ う

︒ ま た 桃 ︑ の 花 の 下 照 道 る に 立 お つ と め や

︑ か た か ご の 花 の 風 情 に も 似 た 水 く む お と め た ち を

註 n

い と お む し 家 持 も ︑ や は り ひ と り た た ず ん で い た の で あ は る ま い か

︒ と 推 論 し て お ら れ る が

︑ こ の 天 平 勝 宝 二 年 春 に は 愛 妻 坂 上 大 嬢 が 来 越 て し い る の で 境 ︑ 涯 と し て は ひ と り で は な く な て っ い る は ず な の で あ る ︒ 心 情 と し て ひ ﹁ と り

﹂ を 痛 感 た し こ と を 示 し て い る の で あ て っ

︑ こ の 時 点 に は

︑ 妻 が 来 越 し お て り ︑ 妻

︵ そ れ は 都 イ と コ ー ル で あ る が

︶ を 身 近 か に 置 く こ と に よ て っ

︑ か え て っ 都 ︑ と の 距 離 感 を 強 く し た 心 情 も を 示 し て い る と 理 解 し た ほ う が よ り よ い よ う に 思 わ れ る の で あ る ︒ こ こ で 重 要 な こ と は ︑ 人 生 の 伴 侶 で あ る 妻

︑ そ れ も 長 年 の 恋 妻 で あ た っ 大 嬢 を 身 近 か に 置 く こ と が き で た に も か か わ ず ら 家 ︑ 持 の 心 は か え て っ

﹁ ひ と り

﹂ に 沈 潜 し て い く 心 情 的 境 涯 を 読 み と る こ が と で き る こ と あ で る ︒ 上 以 の ご と く 第 ︑ 二 期 の 壮 年 前 期 時 代 に お け る ひ ﹁ と り

﹂ は ︑ 文 雅 風 流 の 世 界 に お け 孤 る 独 な 存 感 在 と し て の

﹁ ひ と

﹂ り を ふ く め て

︑ 素 朴 な ︑ 間 人 の 存 在 感 の 面 で の 所 詮 人 は 単 独 者 な の だ と い う ひ ﹁ と り

﹂ が 意 識 さ れ ︑ ひ ﹁ と り

﹂ の 語 用 を い る こ と な く ひ ﹁ と り

﹂ の 抒 情 を 歌 い あ げ て い る い く つ か の 作 品 が あ る こ と に 注 目 し て お く べ き あ で る と い え よ う

③   第 期 三   壮 年 後 期

︱ 少 納 言 時 代 ︱ 天 平 勝 宝 三 年 75︲ ︵

︶ 月 七 に 任 少 納 言 と な り ︑ 月 八 に 帰 京 し た ︒ そ の 帰 京 後 の

﹁ ひ と

﹂ り

⑨ は

① の 三 語 あ で る ︒ 家 持 に お け る

﹁ ひ と り

﹂ 17 用

語 例 の う ち ︑ こ の

⑨ の ひ ﹁ と

﹂ り は ひ ﹁ と り し 思 へ ば

﹂ あ と て っ 特 異 な 一 首 あ で る ︒ こ の 歌

― ‑ 18 ‑―

(19)

は 天 平 宝 勝 五 年 753 ︵

︶ 二 月 二 十 五 日 ︑ 三 十 八 才 の 時 の 作 で ︑ う ら う ら に 照 れ る 春 日 に 雲 雀 あ が り 心 悲 し も

﹁ 川 し 思 へ ば 19 ︵ 四 二 九 二 ︶ で ︑ 歌 意 は う ﹁ ら ら か に 照 て っ い る 春 の 日 に ︑ ひ ば り が 空 に 舞 い あ が り ︑ 心 が か な し い こ と だ

︒ ひ と り も の 思 い を し て い る と ︒

﹂ と い う こ と に な る ︒

﹁ 春 日 遅 遅 と て し 鶴 ︑ 鵡 正 に 喘 く 悽 ︒ 憫 め る 意 歌 ︑ に あ ら ず は ︑ 撥 い 難 し ︒ よ り て こ の 歌 を 作 り ︑ 式 ち て 締 緒 を 展 べ た り

﹂ ︒ と う い 左 注 よ に れ ば

︑ 春 ﹁ の 日 が 遅 々 と て し 暮 れ な づ み ︑ ひ ば が り 丁 度 鳴 て い い る   ︒ も の 悲 く し 打 ち を し れ た 心 持 は ︑ 歌 で な け れ ば 取 り 除 け な い ︒ そ こ で こ の 歌 を 作 て っ 結 ︑ ぼ は れ た 心 持 を は ぐ す の で あ る ︒

﹂ と い う 創 作 の 秘 密 が 語 ら れ て い る の で あ て っ

︑ こ こ に 個 人 的 抒 情 詩 誕 の 生 が 告 げ ら れ て い る こ と が わ か る

⑩ の ひ ﹁ と り

﹂ は 天 平 勝 宝 六 年 754 ︵

︶ 月 七 七 日 の 作 で あ る ︒

① の 七 夕 歌 が わ ず か に 一 首 の み で あ た っ の に く ら べ て ︑ こ こ で は 八 首 2〇 ︵ 四 三

〇 六 〜 四 三 三 一

︶ が ひ ﹁ と り 天 漢 を 仰 ぎ て 作

﹂ ら れ て い る の で あ る ︒ 七 夕 の 伝 説 儀 と 礼

︑ と く に 七 夕 の 賜 宴 は 文 人 た ち の 詩 宴 あ で た っ が

︑ そ う た し 文 雅 の 宴 か ら 離 れ た と こ ろ で ︑ ひ と り 和 歌 を 詠 む と い う 姿 勢 に ① と 同 様 に 文 壇 的 孤 独 さ を 読 み と る こ と が で き る う よ で あ る ︒

① の

﹁ ひ と

﹂ り は 天 平 勝 宝 七 年 755 ︵

︶ 月 二 二 十 三 日 の 作 あ で る 防 ﹁ 人 の 別 を 悲 む し 情 を 陳 ぶ る 歌 一 首 井 に 短 歌

﹂ 2〇 ︵

四 四

〇 八 〜 四 四 一 二

︶ の ︑ 大 君   の 任 の ま に ま に   島 守 に   わ が 立 ち 末 れ ば   は は そ 葉 の   母 の 命   は み 裳 裾 の   み つ 畢 げ 掻 き な で   ち ち の 賓 の 父 の 命 は   た く 綱 の   白 家 上 の ゆ   涙 垂 り   歎 き 宣 ば く   鹿 兄 じ も の   た だ 獨 し て   朝 戸 出 の   か な し き 吾 子   あ ら た ま の   年 の 緒 長 く   あ 見 ひ ず は   懸 し く あ る べ し   今 日 だ に も   一 言 間 せ む と   惜 し み つ つ   悲 び し 坐 せ   若 草 の   妻 も 子 ど も も   彼 此 に   多 に 園 み ゐ   春 鳥 の   馨 の 吟 ひ   自 た へ の   袖 泣 き ぬ ら   し 携 は り   別 れ か て に と   引 き 止 め   慕 ひ し も を の   大 君   の 命 か し み こ   玉 は こ の   道 に 出 立 で ち   丘 の 岬   い 廻 む る ご と に   高 度   顧 み し つ つ   は ろ ば ろ に   別 れ 末 し れ ば   思 ふ そ ら   安 く も あ ら ず   懸 ふ る そ ら   苦 し き も を の   う つ せ み の   世 の 人 な れ ば   た ま き は る

‑19‑

(20)

命 も 知 ら ず   海 原 の   か し こ き 道 を   島 停 ひ   い ご き 渡 り て   あ り 廻 り   わ が 末 る ま で に   平 ら け く   親 は い ま さ ね つ つ み な   く 妻 待 は た せ と   住 吉 の   吾 が 皇 耐 に   弊 奉 り   所 り 申 し て   難 波 津 に   船 を 浮 け す ゑ   八 十 構 貫 き   水 手 整 へ て   朝 び ら き   吾 は こ ぎ 出 ぬ と   家 に 告 げ こ そ 2〇 ︵

四 四

〇 八 ︶ 反   歌 家 人 の 齋 へ に か あ ら む 李 ら け く 船 出 は し ぬ と 親 に 申 さ ね 2〇 ︵ 四 四

〇 九 ︶ み 空 行 く 雲 も 使 と 人 は い へ ど 家 づ と 遭 ら む た づ き 知 ら ず も 2〇 ︵ 四 四 一 〇

︶ づ 家 と 貝 に ぞ 拾 へ る 濱 波 は や い く し く し に 高 く 寄 す れ ど 2〇 ︵ 四 四 一 一 ︶ 島 か げ に わ が 舶 泊 て て 告 げ や ら む 使 を 無 み や 懸 ひ つ つ 行 か む

︵ 四 四 一 二

︶ と 歌 わ れ て い る が

︑ こ の 長 歌 中 の 鹿 ﹁ 児 じ も の   た だ 独 し て   戸 朝 出 の   か な し き 吾

﹂ 子 と あ る

﹁ ひ と

﹂ り は 防 人 の ひ と り ひ と り で あ る の だ が

︑ こ こ に は 家 持 自 身 の 大 伴 一 族 や 政 界 に お け る 孤 立 意 識 の よ う な も の が 反 映 て し い る か の よ う に 思 え て な ら な い の で あ る ︒ 以 上 の ご く と 第 ︑ 三 期 の 壮 年 後 期 時 代 に お け る ひ ﹁ と

﹂ り は ︑ 人 間 の 実 存 や 社 会 的 存 在 と し て の ひ ﹁ と

﹂ り で あ る こ と に 注 目 す る こ と が で き る よ う で あ る ︒ く と に ︑

⑨ に お け る

﹁ 独

﹂ 思 と う い 識 意 と 抒 情 重 は 要 で あ る ︒ そ こ で

︑ 持 家 の み な ら ず

︑ 集 中 一 回 の み の 語 法 あ で る

﹁ 独 し 思 へ ば

﹂ を 含 む こ の 歌 を ま い 一 度 分 析 し て み れ ば

︑ う ﹁ ら う ら

﹂ ひ ﹁ ば

﹂ り と い う 語 も 集 中 ︑ 家 持 の み の 用 語 あ で る こ と が わ か る ︒

﹁ 情 悲

﹂ し 用 の 例 は ︑ 集 中

︑ の こ 他 に 一 語

︵ 3 四 五

〇 旅 ︑ 人 作

︶ あ り ︑ こ の

⑨ に お け る 情 ﹁ 悲

﹂ し は ︑

﹁ 春 の 野 に 霞 た な び き う ら が な し こ の 夕 か げ に う ぐ ひ す 鳴 く も 19 ︵ 四 二 九 〇 ご と 同 質 の か ﹁ な し

﹂ み で あ る こ と に 気 付 く の で あ る ︒

﹁ 独 し お も へ ば

﹂ に つ い て は 川 ︑ 日 常 孝 氏 の ︑ 普 通 に は 家 持 の 孤 独 感 だ と い う ふ う 説 に 明 れ さ

︑ そ れ は そ れ 正 で し い が

︑ そ の 場 合 ︑ わ た た し ち は ︑ 孤 独 感 は ひ と を も 殺 す も の だ と い う こ と を 忘 る べ き で な い ︒ 寝 ﹁

﹂ ︑ 去 ﹁

﹂ ︑ 飲 ﹁

﹂ 等 々 は

︑ 二 人 で こ れ を す る こ と が で き る ︒   二 人 寝 は 望

―‑ 20 ‑―

(21)

ま れ よ う し ︑ 二 人 去 で く こ と も ︑ 二 人 飲 で む こ と も き で る ︒ だ が

︑ 二 人 で 思 ﹁

﹂ ふ こ と は で き な い の で あ る ︒

﹁ 相 思

﹂ ふ こ と は で き よ う が ︑ 二 人 で 一 つ の 思 を い 思 う こ と は で き な い の あ で る ︒ こ こ に ひ ﹁ と り 思

﹂ ふ 世 界 の 徹 底 的 な 孤 絶 の 深 淵 が あ る ︒ 家 持 は そ の 深 淵 が 手 招 き す る も の を 歌 ︑ に よ て っ 発 う こ と に よ て っ

︑ か ら く も 拒 ん だ の で あ る ︒ そ こ に 現 実 希 釈 の も く し は 現 実 離 脱 の 心 的 態 度 が 見 て と れ る ︒ た ま 歌 ︑ に そ の よ う な 効 用 を 認 め た こ と に お い て 精 ︑ 神 の 危 機 の 理

・ 3

念 化

︱ ︱ 表 現 に よ る 自 己 救 済

︱ ︱ と い う 古 代 和 歌 の 一 つ の 到 達 点 が 指 摘 で き る ︒ と い う ご 指 摘 は 説 得 力 が あ り   ︑ コ 一 人 で 思 ﹃

﹄ ふ こ と は で き な い の あ で る ︒ 相 ﹃ 思

﹄ ふ こ と は き で よ う が

︑ 二 人 二 で つ の 思 い を 思 う こ と は で き な い の で あ

﹂ る と う い こ の

﹁ ひ と り 思

﹂ ふ 世 界 の 徹 底 的 な 孤 絶 の 深 淵 を 自 覚 た し き か っ け は ︑ や は り 天 平 勝 宝 二 年 春 月 三 最 ︑ 愛 の 妻 を 身 近 か に 置 い た 時 点 か ら で あ る と す る 推 定 は 妥 当 だ と 言 え よ う

︒ 五 さ て ︑ 既 述 の ご と く

︑ 第 一 期 お に け る ひ ﹁ と り

﹂ は 離 れ て あ 恋 る 妻 と 同 宿 共 寝 の で き な い 独 ﹁ 寝

・ 独

﹂ 居 の か な し み を 歌 い あ げ た も の で あ た っ

︒ 第 二 期 に お け る ひ ﹁ と り

﹂ は 最 愛 の 妻 を 身 近 か に 置 き 同 宿 共 寝 が 日 常 と な た っ 時 点 で ︑ 独 ﹁ 居 独 ・

﹂ 寝 の 意 識 抒 情 が 消 失 し ︑ 文 学 的 趣 味 を 共 有 す る 風 雅 の 友 と 離 れ て あ る こ と の 孤 ﹁ 独 ﹂ や 人 間 存 在 感 と し て の 単 ﹁ 独 者 ﹂ と い う 意 味 合 い の

﹁ ひ と り

﹂ が 識 意 さ れ 歌 わ れ る よ う に な た っ 第 ︒ 三 期 に お け る

﹁ ひ と り

﹂ は ︑ 独 ﹁

﹂ 寝 で も な く ︑ た ん な る 独 ﹁

﹂ 居 で も く な

⑨ ︑ に み た ご と く 他 者 か ら 孤 絶 し た と こ ろ 単 の 独 者 の 思 い で あ る 独 ﹁ 思

﹂ の ひ ﹁ と

﹂ り な の で あ る ︒ こ こ 真 に 個 に 人 的 感 懐 や 抒 情 を 歌 い あ げ る 創 作 主 体 作 と 品 が 誕 生 し た こ と に な る と 言 え る よ う で あ る ︒ 以 上 の ① か ら

⑪ ま の で 作 品 に よ て っ 家 ︑ 持 に と て っ ひ と り の 境 涯 あ ︑ る い は

︑ ひ と り の 心 情 か ら 歌 が 生 ま れ る 場 合 が 多 い と い う こ と を 知 る こ と が で き た が

︑ ま た さ ら に ︑ こ う し た ひ ﹁ と

﹂ り の 意 識 か ら 情 ﹁ 悲

﹂ し 以 外 に ︑

⑦ み に た ご く と

︑ 吾 み の け 聞 ば 怜 不 も し ほ と と ぎ す 丹 生 の 山 べ に い 行 き 鳴 く に も 19 ︵

四 一 七 八 ︶

― ‑ 21 ‑―

(22)

を は じ め と て し さ ﹁ ぶ

﹂ し が 他 ︑ に 4 例 17 ︹

三 九 六 二 18 ・

四 一 〇 六 19 ・

四 一 七 七 19 ・

四 二 一 四

︺ ほ ど 歌 い 出 さ れ て い る の で あ る ︒ ま た 家 持 の 生 涯 に つ き ま と う ひ ﹁ と り

﹂ と い う 孤 独 感 は 自 然 を は じ め 世 間 や 人 事 を も

④ ︑ に み た ご と く

︑ た ち ば な の に は へ る 香 か も ほ と と ぎ す 鳴 く 夜 の 雨 に う つ ろ ひ ぬ ら む 17 ︵ 二 九 一 六

︶ を は じ め と て し

﹁ う つ ろ

﹂ い の 無 常 感 が 約 88 首 ほ ど 歌 い 出 さ れ て 鴫 神 の で あ る ︒ そ こ か ら 漠 と し た

﹁ も の お も い ︵ 思 念 と の 慢 情 に と わ ら れ ︑ う つ せ み の 常 な き 見 れ ば 世 の 中 に 情 つ け ず て 思 日 ふ ぞ 多 き 日一 な

グ 諜 く 19 ︵ 四 六 一 二 ︶ と い う 詠 嘆 が 生 れ て き た の で あ ろ う

︒ な お ︑ こ の う ち ︑ 第 三 期 の 唯 一 の ひ ﹁ と

﹂ り の 例 と も い え る ⑨ を め ぐ て っ

︑ 岡 部 政 裕 氏 は ︑ ひ ﹁ と り

﹂ の 意 識 は ︑ 社 会 か ら 孤 立 た し と こ ろ で 始 ま た っ に ち が い な い が

︑ 自 分 か ら 始 ま た っ と も 言 え よ う

︒ ど こ か ら

・ 5

来 た か も さ だ か で な く

︑ ど こ へ 向 け て よ い か も わ か ら な い 憂 悶 と 悲 愁

︒ ひ ﹁ と

﹂ り は こ こ に き わ ま つ た と 言 え よ う ︒ 語 と て っ お ら れ る が

︑ い ま 少 私 し な り の 観 点 か ら 言 い 換 え れ ば

︑ ひ ﹁ と り

﹂ の 意 識 は ︑ 恋 の 世 界 か ら 孤 立 し た と こ ろ で 始 ま た っ に ち が い な い が

︑ 自 分 自 身 の 存 在 か ら 始 ま た っ と も 言 え よ う ︒ ど こ か ら 来 た か も さ だ か で な く

︑ ど こ へ 向 け て よ い か も わ か ら な い 漠 然 と し た か な し み と 思 念

︒ 単 独 者 で あ る ひ ﹁ と

﹂ り は こ こ に き わ ま た っ と 言 え よ う ︒ と い う こ と に な る ︒ さ ら に ︑ 岡 部 政 裕 氏 の 恋 の 歌 に お け る ひ ﹁ と り

﹂ は

︑ 積 極 的 に 指 向 す る 方 向 を 持 た っ ひ と り あ で る ︒

∧ 中 略 ∨ 家 持 の   ︑

こ と に 最 後 の 歌 の ひ ﹁ と

﹂ り は ︑ 指 向 す る 方 向 を 失 た っ ひ と り で ︑ 回 路 の な い ひ と り で あ る ︒ 家 持 は 回 路 の な い ひ と り に 追 い つ め ら れ る こ と

註 1 6

に よ て っ

︑ 自 ら の 芸 術 の 頂 点 を 見 い だ し た

︒ と い う 結 論 は 正 し い こ と に な り ︑ 恋 の 場 を 失 た っ 天 平 勝 宝 二 年 三 月 以 後 に は 境 涯 的 に は ひ 一︲

﹂ り で は な く な た っ が

︑ そ れ

―‑ 22 ‑―

参照