曲線と曲面の幾何学・講義ノート
第 13 回
(2021
年1
月13
日(
水)
配信分)
§ 4. 曲面上の曲線 ( 続き )
区分的に C2 級のときは、各角における方向転換の角度も加え ればよいのは、平面曲線のときと同様である。
単位球面上の測地(線で囲まれた)三角形について適用してみ
ると、 K ≡ 1 より Gauss 曲率の積分は面積、外角の和は π × 3 −
内角の和より、 「内角の和 = π+ 面積」となる。従って単位球面 上の測地三角形の内角の和は、常に π より大きく、 5π より小さ
い。例えば三直角三角形の囲む領域は球面の8分の1であるか ら、その面積は 4π/8 = π/2, よって上の公式の両辺は共に 3π/2
となり、確かに一致する。
問 4.2 他の具体例で確かめよ。
問 4.6 単位球面上の凸な正五角形について、次の各問に答えよ。
(1) その内角の和が取り得る値の範囲を、理由を付けて答えよ。
(2) 一つの内角が 2
3 π となるときの面積を求めよ。
問 4.8 単位球面を互いに面積の等しい m 個の球面 n 角形に切
り分けることを考える。次の各問に答えよ。
(1) 各球面 n 角形の外角の和を求めよ。
(2) 各球面 n 角形の内角の和を求めよ。
(3) (2) で求めた内角の和の m → + ∞ のときの極限値を求
めよ。
§ 3 の最後に紹介した K ≡ − 1 の擬球面、またはこれを切り開 いて延ばせるだけ延ばした双曲平面上の測地(線で囲まれた)三 角形について適用してみると、 K ≡ − 1 より Gauss 曲率の積分は
面積の − 1 倍となり、一方、外角の和は π × 3 − 内角の和となる
のは同様で、結局「内角の和 = π − 面積」となる。従って擬球面 または双曲平面上の測地三角形の内角の和は、常に π より小さ
い。さらに内角の和も正でなければならないことから、測地三角
形の面積は常に π より小さいと言う、平面上では考えられないよ
うなことが成り立つ。
さて、 M は境界を持たない C2 級の閉曲面とする。これを区分 的 C2 級な境界を持つ、単連結な曲面に切り分けると、各部分で は、上の公式( Gauss 曲率の面積分+測地曲率の線積分+外角の 和= 2π )が成り立つ。
級な境界を持つ、単連結な曲面に切り分けると、各部分で は、上の公式( Gauss 曲率の面積分+測地曲率の線積分+外角の 和= 2π )が成り立つ。
ここで、切り分けて出来た各曲面の内部を面、その境界の内、
C
2級でない角を頂点、隣り合う角を結ぶ C2 級な曲線を辺と、そ
れぞれ見なすことにする。折れていない辺の途中に頂点はないよ うにしておく。一般に頂点と辺は、複数の面に共有されているが、
これを重複せずに数えることにして、切り分けたときの頂点、辺、
面の数をそれぞれ v, e, f と表すことにする。
全ての部分について、上の公式を足し合わせると、測地曲率の 積分は各辺の両側で逆向きに行うので、結局全て相殺してしまう。
一方、外角は π − 内角であるから、外角の総和は
∑
外角 = ∑(π − 内角 ) = π × 2e − 2π × v = 2π(e − v)
外角は辺の数だけあるが、各辺は隣り合う面で共有されているの で、結局 2e 個数えることになる。一方、内角は各頂点毎に集め て足し合わせるとわかりやすい。
さらに、回転数の和は f より、
2π × f =
∑(2π × 各面の外周の回転数 )
=
∑ (∫各面 Kdv + ∫各面の外周 θ′dt + 各面の外角の和
dt + 各面の外角の和
)
=
∫M
Kdv + 0 + 2π(e − v)
より、結局
∫
M
Kdv = 2π(v − e + f )
を得る。
従って左辺の積分は 2π の整数倍の値しかとらないことになる。
この値は、先の議論同様、同相な曲面どうしの連続変形では変わ らない。このことから、逆に v − e + f は分割の仕方によらない ことがわかる。この値を曲面 M の Euler 標数と言い、普通 χ(M )
と表す。これを用いて表した
∫
M
Kdv = 2πχ(M )
を Gauss-Bonnet の定理と呼ぶ。
例えば、原点中心の単位球面を、三つの座標平面で切り分ける と、 v = 6, e = 12, f = 8 (正八面体を丸めた状態)となるので、
χ(S
2) = 6 − 12 + 8 = 2
となる。
一方、中心 (R, 0, 0), 半径 r (0 < r < R ) の xz 平面上の円周
を、 z 軸を軸として回転させてできる、ドーナツの表面のような 回転面をトーラスと呼び、 T 2 で表すが、この曲面を、三つの座標 平面で切り分けると、 v = 8, e = 16, f = 8 となるので、
χ(T
2) = 8 − 16 + 8 = 0
となる。
χ(S2) = 2 より、球面と同相などんな閉曲面についても、 Gauss
曲率の積分は 4π (単位球面の表面積)であり、また χ(T 2) = 0
より、トーラスと同相などんな閉曲面についても、 Gauss 曲率の
積分は 0 である。
一般に穴が g 個の浮き輪型の閉曲面の Euler 標数は 2 − 2g であ
ることが知られている。 g を曲面の種数と呼ぶ。上の事実は、穴 が 2 個以上ある浮き輪は、全体で非負の Gauss 曲率を持つ状態に
は変形できないことを示している。詳細は来年度以降の位相幾何
学、微分幾何学等の講義で学ぶ(はずである) 。
問 4.16 D1, D
2 は共に単位球面 S2 上の小円で囲まれた面積 ϵ
上の小円で囲まれた面積 ϵ
の領域で、 D1 ∩ D
2 = ∅ とする。次の各問に答えよ。
(1) M
1, M
1′は共に S2 \ D
1 と合同 ( =等長 ) な曲面とする。円柱 S1 × [0, 1] と同相な曲面 N
1 を適当に選び、 M1, M
1′ の境界をなす 2 個の小円を N1 で滑らかにつないでできる閉曲面の Gauss 曲率を K1 とするとき、面積分
∫
× [0, 1] と同相な曲面 N
1を適当に選び、 M1, M
1′ の境界をなす 2 個の小円を N1 で滑らかにつないでできる閉曲面の Gauss 曲率を K1 とするとき、面積分
∫
で滑らかにつないでできる閉曲面の Gauss 曲率を K1 とするとき、面積分
∫
N1
K
1dS の値を求めよ。
(2) M
2は S2 \ (D
1 ∪ D
2) と合同 ( =等長 ) な曲面とする。円柱 S
1 × [0, 1] と同相な曲面 N
2 を適当に選び、 M2 の境界をなす 2 個
の境界をなす 2 個
の小円を N2 で滑らかにつないでできる閉曲面の Gauss 曲率を K2
とするとき、面積分
∫N2