• 検索結果がありません。

第 4 章 シミュレーション解析と感度解析

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "第 4 章 シミュレーション解析と感度解析"

Copied!
67
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

大断面横架材を有する伝統木造軸組の 嵌合型接合部のモデル化と非線形解析

首都大学東京大学院 都市環境科学研究科 建築学域 15886402 井立直人

指導教員 多幾山法子

(2)
(3)

目次

1章 序論 ... 1

1.1 研究の背景と目的... 3

1.2 論文構成 ... 4

2章 静的水平加力実験... 5

2.1 はじめに ... 7

2.2 試験体概要 ... 7

2.3 加力・計測システム... 11

2.4 実験結果 ... 13

2.4.1 破壊性状 ... 14

2.4.2 復元力特性 ... 16

2.4.3 曲げモーメント... 18

2.4.4 2スパン架構に生じる現象 ... 20

2.4.5 限界耐力計算に基づき単純加算されたせん断力と実験値の比較 ... 22

3章 解析モデル構築... 25

3.1 はじめに ... 27

3.2 接合部モデル ... 27

3.2.1 モデル構成要素... 27

3.2.2 接合部のモデル化... 28

3.3 接合部抵抗力 ... 31

3.3.1 めり込み剛性KPとめり込み摩擦剛性KF ... 31

3.3.2 めり込みの仮定... 33

3.3.3 込栓せん断剛性KS ... 34

3.3.4 三角変位めり込み降伏耐力Peyと摩擦降伏耐力PFy ... 35

3.3.5 込栓せん断降伏耐力Psy ... 36

3.3.6 抵抗バネの復元力モデル例 ... 37

4章 シミュレーション解析と感度解析 ... 39

4.1 はじめに ... 41

4.2 MATLABを用いたシミュレーションと感度解析 ... 42

4.2.1 静的水平加力実験のシミュレーション ... 42

4.2.2 感度解析概要... 44

4.2.3 差鴨居配置高さによる架構の復元力の変化(感度解析) ... 45

(4)

ii

4.3 SNAPを用いたシミュレーション ... 46

4.3.1 解析条件 ... 46

4.3.2 解析結果 ... 46

4.4 初期剛性に対する2次剛性の比αの影響 ... 46

5章 結論 ... 49

5.1 本論文の総括 ... 51

5.2 今後の課題 ... 52

参考文献 ... 54

謝辞 ... 56

APPENDIX ... 57

A.1 材料試験概要 ... 59

A.1.1 試験片概要 ... 59

A.1.2 加力・計測システム ... 60

A.1.3 縦圧縮強度σpと縦圧縮弾性係数Epの算出方法 ... 60

A.1.4 曲げ強度σbと曲げ弾性係数Ebの算出方法... 60

A.1.5 試験結果 ... 62

(5)

1.1 研究の背景と目的

1.2 論文構成

(6)
(7)

1.1 研究の背景と目的

我国では20171月現在,全国110地区が重要伝統的建造物群保存地区(以降は重伝建 地区と呼ぶ)に指定され,約26,400 件の伝統的建造物および環境物件が保護の対象となっ ている1)。また,重伝建地区には伝統木造建物群が多く,歴史や文化を象徴し,地域独特の 様相を呈した伝統木造建物や景観が保全されている。しかし,1995年兵庫県南部地震や2007 年の能登半島地震と新潟県中越地震,さらに2011年東北地方太平洋沖地震など,近年頻繁 する地震により木造建物の被害が多く報告されている 2-5)。一方で,幾度もの震災を経ても なお健全に残る伝統木造建物も多いことは非常に興味深い6)。また,我国では今後巨大地震 の発生が予測されていることから,伝統木造建物の耐震性を評価することは地震時に建物 の損壊を抑え,安全性を確保するために非常に有意義であると考えられる。

伝統木造建物の耐震性評価手法の一つとして,2000 年の建築基準法・同施行令の改定に よって導入された限界耐力計算に基づいた手法がある。限界耐力計算では,構造要素のせん 断力から各階の層せん断力を算出し,等価な1質点系に置き換え,地震動の加速度応答スペ クトルとの関係から応答を求める 7,8)。この手法では,個々の耐震要素が有するせん断力を 単純加算することで各階の復元力を評価し,耐震要素の配置に依存しない仮定に基づいて いる。しかし,既往研究では架構のせん断力は耐震要素の配置や通し柱の存在に依存するこ とが実証されている9)。また,現在扱われている手法は,接合部仕様など,建物固有の特徴 が反映されておらず,建物の耐震性を過大評価している可能性が指摘されている9)

伝統木造建物の架構では部材同士が嵌合接合されており,部材の断面欠損がある仕口付 近で損傷が生じる場合が多い。また,架構の曲げモーメント分布は大断面横架材の存在に大 きく影響される 10)。そのため,伝統木造建物の耐震性能を精度良く評価するためには,大 断面横架材と接合部の復元力特性の評価やモデル化が適切に行われることが重要である。

既往研究では,1820mm × 2730mmの単位軸組架構を対象とした検討事例が多く,耐震要 素配置が架構全体の復元力特性や破壊性状へ及ぼす影響を多スパン架構で検証した事例は

少ない10-14)。解析モデルの構築に関しても,大断面横架材を有する伝統木造軸組に着目した

研究は少ない。

以上を踏まえ,本論文では,耐震要素のうち,大断面横架材の差鴨居に着目し,差鴨居を 有する伝統木造軸組の地震時の非線形挙動を精度良く解析するためのモデル化手法を提案 することを目的とする。まず,梁要素を用いて大断面横架材を有する架構の解析モデルを構 築する。そして,先行研究15,16)において実施した静的水平加力実験のシミュレーションを通 じて解析モデルの精度検証を実施し,実験結果と比較してその有用性を確認する。さらに,

他の解析コードで前述の解析モデルを解く際の課題を明確化するために結果を比較する。

(8)

- 4 -

1.2 論文構成

本論文は,第1章から第5章で構成される。各章の概要は以下に示す。

1章「序章」

本論文の序論として,背景と目的,論文構成について述べた。我国における伝統木造建物 の耐震性評価手法の一つである限界耐力計算の特徴と課題を纏めることにより,本論文の 意義を示した。

2章「静的水平加力実験」

大断面横架材である差鴨居を有する伝統木造軸組の解析モデルを構築し,静的水平加力 実験のシミュレーションを実施するにあたり,先行研究 15,16)において実施した静的水平加 力実験の試験体概要,加力方法,計測方法,結果について略述する。

3章「解析モデル構築」

大断面横架材を有する架構の嵌合型接合部の挙動を再現可能な解析モデルの構築を行い,

バイリニア型の復元力を持つ各抵抗バネの設定方法について詳述する。

4章「シミュレーション解析と感度解析」

3 章で構築した解析モデルに基づき,静的水平加力実験のシミュレーションとして非 線形変位増分解析を行い,解析結果を第2章「静的水平加力実験」の結果と比較し,解析の 精度について述べる。また,実際の伝統木造建物を想定して大断面横架材である差鴨居の配 置高さによる架構全体への影響を把握するために感度解析を実施し,差鴨居の影響や限界 耐力計算マニュアルとの対応について述べる。さらに,他の解析コードで前述の解析モデル を解く際の課題を明確化するため,異なるソフトウェアを用いて非線形変位増分解析を行 い,結果を比較する。最後に,込栓のせん断抵抗力に着目し,抵抗バネの初期剛性に対する 2次剛性の比が,架構の復元力へ与える影響を考察する。

5章「結論」

結論として,2章から第4章で得られた研究成果の総括と今後の課題について述べる。

(9)

2.1 はじめに 2.2 試験体概要

2.3 加力・計測システム

2.4 実験結果

2.4.1 破壊性状

2.4.2 復元力特性

2.4.3 曲げモーメント

2.4.4 2スパン架構に生じる現象

2.4.5 限界耐力計算に基づき単純加算されたせん断力と実験値の比較

(10)
(11)

2.1 はじめに

本章では,大断面横架材の差鴨居を有する伝統木造軸組の解析モデルを構築し,静的水平 加力実験のシミュレーションを実施するにあたり,先行研究 15,16)において実施した静的水 平加力実験の試験体概要,加力方法,計測方法,実験結果について略述している。

2.2節では「試験体概要」と題して,試験体の概要と接合部詳細について説明を行う。

2.3節では「加力・計測システム」と題して,加力方法と計測方法についての説明を行う。

2.4節では「実験結果」と題して,各試験体の静的水平加力実験結果について説明を行う。

2.2 試験体概要

各部材の諸元を表2‐1,実験時の部材含水率を表2‐2,試験体の詳細を図2‐1に示す。

試験体は,1820 mm × 2730 mmを基本寸法とし,1スパンの軸組試験体(F)と差鴨居試験 体(S1)に加え,2スパンで差鴨居の配置高さが同じ試験体(S22スパンで差鴨居の配置 高さが極端に異なる段違い試験体(S3)の計4体とする。試験体は,柱(スギ,120 mm角) 桁(ベイマツ,120 × 240 mm,土台(ベイマツ,120 mm角),差鴨居(ベイマツ,120 × 270 mm,込栓(ベイマツ,15 mm角)から構成される。また,柱頭,柱脚,柱差鴨居接合部の ほぞは込栓留めとする。本論文では以降,紙面左側の柱を前柱,右側の柱を後柱,2スパン 試験体の中央柱を中柱,紙面左側の差鴨居を左差鴨居,右側の差鴨居を右差鴨居と呼ぶ。

また,加力終了後に柱部材から切り出して試験片を作成し,JIS Z 2101に基づく曲げ試験 と縦圧縮試験を実施した(表 2‐3)。なお,柱以外の部材では材料試験を実施しておらず,

ベイマツを使用する部材の縦圧縮弾性係数は文献17)に基づき,10.8kN/mm2とする。材料試 験の概要については,APPENDIXA.1材料試験概要を参照されたい。

各試験体は,差鴨居の配置高さや接合部形状の非対称性が架構全体の復元力特性や破壊 性状へ与える影響を把握するために設計しており,F試験体とS1試験体より,差鴨居有無 による違い,S1試験体とS2試験体より,1スパンと2スパンでの違い,S2試験体とS3 験体より,差鴨居の配置高さから生じる違いを比較する。

(12)

- 8 -

2‐1 部材緒元

部材 材種 機械等級 木取り 断面寸法

スギ E90 芯持ち 120mm

ベイマツ E110 芯去り 120mm×240mm 土台 ベイマツ E110 芯去り 120mm 差鴨居 ベイマツ E110 芯去り 120mm×270mm

込栓 ベイマツ E110 芯去り 15mm

2‐2 実験時の部材含水率一覧

試験体 含水率(%

前柱 中柱 後柱 土台 左差鴨居 右差鴨居

F 14.1 11.8 10.3 11.6

S1 13.3 10.6 7.84 13.1 15.6

S2 11.5 8.0 8.34 6.67 12.3 14.5 14.1

S3 8.17 12.5 8.34 7.67 8.0 12.5 15.6

23 柱の材料強度一覧 試験体 曲げ強度

(N/mm2)

圧縮強度 (N/mm2)

曲げ弾性係数 (kN/mm2)

縦圧縮弾性係数 (kN/mm2)

F 71.00 56.75 12.90 10.16

74.68 55.96 13.85 11.34

S1 54.37 38.92 8.82 8.37

52.90 41.12 8.80 7.45

S2

66.44 45.44 11.20 9.44

67.91 51.20 12.29 11.95

52.90 41.64 10.00 9.46

S3

48.34 42.28 8.93 8.19

56.95 50.37 10.37 8.51

42.23 38.68 6.50 7.10

(13)

3640

左差鴨居 120×270

2730 5802701760

桁120×240

柱120×120 土台120×120

右差鴨居 120×270

柱120×120 柱120×120

2730 2610

桁120×240

柱120×120

土台120×120

5802701760

3640

1760270580

左差鴨居 120×270 桁120×240

柱120×120 土台120×120

右差鴨居 120×270

柱120×120 柱120×120

5802701760

2730 差鴨居120×270

桁120×240

柱120×120 土台120×120

2‐1 試験体詳細図

(d) 2スパン段違い試験体(S3)

(c) 2スパン差鴨居試験体(S2)

(a) 軸組試験体(F) (b) 差鴨居試験体(S1)

3640

左差鴨居 120×270

2730 5802701760

桁120×240

柱120×120 土台120×120

右差鴨居 120×270

柱120×120 柱120×120

2730

1820

2610

桁120×240

柱120×120

土台120×120

5802701760

3640

1760270580

左差鴨居 120×270 桁120×240

柱120×120 土台120×120

右差鴨居 120×270

柱120×120 柱120×120

1820

5802701760

2730 差鴨居120×270

桁120×240

柱120×120 土台120×120

3640

左差鴨居 120×270

2730 5802701760

桁120×240

柱120×120 土台120×120

右差鴨居 120×270

柱120×120 柱120×120

2730

1820

2610

桁120×240

柱120×120

土台120×120

5802701760

3640

1760270580

左差鴨居 120×270 桁120×240

柱120×120 土台120×120

右差鴨居 120×270

柱120×120 柱120×120

1820

5802701760

2730 差鴨居120×270

桁120×240

柱120×120 土台120×120

(14)

2章 静的水平加力実験

- 10 -

2730

柱120~120

土台120~120

2610 582701760

土台120~120 柱120~120

差鴨居1 120~270

2730 582701760

土台120~120 柱120~120

柱120~120 柱120~120 差鴨居2

120~270

差鴨居3 120~270

前柱 中柱 後柱

1t 1t 1t

150

80 30

15 50

120 120

120 120

100 15 40

270120 15

15 230

15

150120

3030 30

30 30 255 65

15

15

15

270120 3030 30150120

270

30 90

120 151515

15 15

30252

開き 開き

開き

開き

270

90 30

120

151515

15 15

30252

126126

75 15 15

15

90 30 30

15 30

15 30

120 120

150

80 30

15 50

120 120

120 120

100 15 40 270

12015 15 230

15

15012030

30

3030

30 255 65

15

15

15

270120 3030 30150120 150120

15 30

30 30

15 15

15 60

15 15

120 120

2‐2 接合部詳細図

(a) 柱頭(上)/ 柱脚(下) (b) 柱差鴨居接合部

(c) 中柱差鴨居接合部(S2)

270

12015 15 230

15

15012030

30

3030

30 255 65

15

15

15

270120 3030 30150120 150120

15 30

30 30

15 15

15 60

15 15

120 120

270

90 30

120

151515

15 15

30252

126126

75 15 15

15

90 30 30

15 30

15 30

120 120

150

80 30

15 50

120 120

120 120

100 15 40

(15)

2.3 加力・計測システム

加力装置を図2‐2,写真2‐1に示す。試験体土台は,アンカーボルトで鉄骨架台に固定 する。柱1本あたりの上載荷重が比較的大きい地域の建物を参考に18),上載荷重は柱1 あたり1000 kgとする。試験体頂部に設置した治具を介し,正負交番漸増繰返し加力を行う。

加力方向は,紙面左方向を正とし,右方向を負とする。なお,定義した加力方向より,正側 の柱は前柱,負側の柱は後柱,2スパン試験体の中央柱は中柱となる。

試験体頂部の加力位置にロードセルを設置し,試験体の水平抵抗力を計測する。試験体頂 部の絶対変位uはワイヤー変位計を用いて計測する。絶対変位uを柱の内法高さHで除し た値を試験体の層間変形角Rと定義する。加力はRの振幅が1/1201/1001/751/501/30

1/20,1/15,1/10,1/8,1/6,1/5radの順に2回ずつ繰り返し,最大変形角±1/5rad,もしくは

水平抵抗力を喪失するまで加力する。また,柱頭柱脚と差鴨居上下面から200 mm離した柱 側面にひずみゲージを貼付し,モーメント推移や柱の軸力変動を追跡する。さらに,接合部 では部材の両端に設置した接触式変位計で,直交部材軸までの相対変位を計測し,接合部回 転角を求める。

実験に使用した変位計やひずみゲージ,ロードセルのイニシャル計測をするタイミング について述べる。ひずみゲージは,試験体を加力装置に自立させた状態で,錘を吊るす前に イニシャル計測を実施した。また,変位計とロードセルは,試験体に錘を吊るした後,実験 開始直前にイニシャル計測を実施した。

アクチュエータ

前柱 中柱 後柱

加力方向

1000kg 1000kg 1000kg

反力床 右差鴨居

左差鴨居

2‐3 加力装置

(16)

- 12 -

写真21 加力装置と計測機器

(a) 加力装置全体 (b) 試験体設置

(c) 加力部/ロードセル (d) 接合部/接触式変位計

(17)

2.4 実験結果

この節では,先行研究 15,16)において実施した静的水平加力実験の結果について,破壊性 状,復元力特性,曲げモーメント,2スパン架構に生じる現象,限界耐力計算に基づき単純 加算されたせん断力と実験値の比較,以上の項目に分けて説明をする。

各試験体の水平抵抗力が喪失した加力サイクル時の様子を写真2‐2に示す。

写真2‐2 実験時の様子

(a) F試験体(正側1/10) (b) F試験体(負側1/10)

(c) S1試験体(正側1/6) (d) S1試験体(負側1/6)

(e) S2試験体(正側1/8) (f) S2試験体(負側1/8)

(g) S3試験体(正側1/6) (h) S3試験体(負側1/6)

(18)

- 14 - 2.4.1 破壊性状

代表的な損傷を写真23に示す。

F試験体では,加力中に目視で損傷が確認できなかった。しかし,解体後には柱頭と柱脚 のほぞの折損が確認できた。また,込栓は破断せず,くの字に曲がっていた。

S1試験体では,正側1/20radで差鴨居の後柱側ほぞに曲げひび割れが生じた。負側1/15rad

から正側1/10radにかけて後柱の柱脚ほぞ,前柱の柱頭と柱脚のほぞが折損した。負側1/6rad

では,後柱の柱頭と後柱の差鴨居接合部の込栓穴から繊維方向に割裂が生じた。また,解体 後に全柱差鴨居接合部の込栓の破断を確認した。

S2試験体では,負側1/15radで中柱の差鴨居接合部下端から繊維直交方向にひび割れが生 じ,加力が進むにつれて割れが進展した。正側1/10radでは,左差鴨居の前柱側ほぞの曲げ ひび割れが生じ,負側1/10radで全柱脚ほぞの折損,後柱の柱頭の繊維方向への割裂,ほぞ の折損が生じた。負側 1/8rad では,前柱柱頭でのひび割れと後柱の差鴨居接合部の込栓穴 から繊維方向への割裂が生じはじめ,正側 1/6rad で後柱の柱頭が負側に滑動し,初期位置 に戻らなくなった。負側1/6radでは,後柱で柱頭と差鴨居接合部の込栓穴の割裂が繋がり,

中柱で右差鴨居が端抜けした。また,解体後に全柱差鴨居接合部の込栓の破断を確認した。

S3 試験体では正側 1/20rad から正側 1/10rad にかけて全柱の柱脚ほぞが折損した。正側

1/10rad では,中柱右差鴨居接合部の込栓穴から繊維方向に割裂し,中柱の左差鴨居ほぞに

ひび割れが生じた。負側1/10radでは,後柱差鴨居接合部の込栓穴から繊維方向に割裂が生 じた。正側1/6radでは,後柱が差鴨居接合部上端から折損し,中柱の右差鴨居ほぞが端抜け した。また,解体後に全柱差鴨居接合部の込栓の破断を確認した。

(19)

写真23 代表的な損傷

(a) 柱頭割裂(S1:負側1/5 rad) (b) 柱頭割裂(S2:負側1/6 rad) (c) 柱頭割裂拡大(S2)

(d) 柱割裂(S2:負側1/6 rad) (e) 端抜け(S3:正側1/6 rad) (f) 接合部側面(S3) (g) 後柱折損(S3)

(h) 端抜け(S2:負側1/6 rad) (i) 後柱折損部裏面(S3) (j) 後柱折損部側面(S3)

(k) 差鴨居ほぞ(S2) (l) 差鴨居ほぞ(S3)(m) 込栓破断 (n) 柱脚折損(S3)

(20)

- 16 - 2.4.2 復元力特性

23に復元力特性と効果を除去した層せん断力19)を示す。

F試験体の水平抵抗力は,1/30radで最大1.03kNを示して以降,緩やかに低下し,1/10rad で喪失した。正側加力時と負側加力時の骨格曲線を比較すると,復元力はほぼ同様の形とな

った(図23 (a))。

S1 試験体の水平抵抗力は,1/30radで最大 1.83kNを示して以降,緩やかに低下した。そ の後,負側 1/6rad で後柱の差鴨居接合部での割裂と柱頭ほぞの折損に伴い,水平抵抗力が 大きく低下し,直後に喪失した。正側加力時と負側加力時の骨格曲線を比較すると,復元力 はほぼ同様の形となったが,負側復元力が正側より多少大きくなった(図2‐3 (b))。

S2試験体の水平抵抗力は,1/20radで最大4.16kNを示した。その後,負側1/10radで後柱 柱頭の割裂とほぞの折損,負側 1/8rad での後柱の差鴨居接合部での割裂により,水平抵抗 力は大きく低下して喪失した。正側加力時と負側加力時の骨格曲線を比較すると,正側加力 時の復元力が負側加力時より大きな値を示した。特に,1/8rad 付近において違いが見られ,

正側加力時には水平抵抗力が増加しているが,負側加力時には減少しており,終局時には 1kN以上の差が生じた(図2‐3 (c))。

S3 試験体の水平抵抗力は,1/20radで最大 4.66kNを示して以降,緩やかに低下し,正側

1/6radにおいて,後柱の折損に伴い試験体が倒壊した際に喪失した。正側加力時と負側加力

時の骨格曲線を比較すると,1/10rad時点で負側加力時の復元力が正側加力時より1kN以上 大きくなった(図23 (d))。

(21)

2‐4 復元力特性

(a) F試験体 (b) S1試験体

(c) S2試験体 (d) S1試験体

(22)

- 18 - 2.4.3 曲げモーメント

全試験体の1/120から1/6radまでに生じた曲げモーメントと損傷の進展を図24に示す。

なお,●は目標変形角で生じた新しい損傷,○は損傷歴を表す。

F試験体のモーメントは,層間変形角が進むにつれて規則的に大きくなったが,1/10rad 低下した。

S1 試験体のモーメントは,層間変形角が進むにつれて加力方向側の柱差鴨居接合部で差 鴨居の影響を受けて大きくなっていくが,加力方向逆側の柱差鴨居接合部では影響を受け ず,あまり大きくならなかった。これは込栓がせん断破壊することによって,差鴨居ほぞ引 抜け時に引張力がかかりづらくなったためだと考えられる。

S2 試験体のモーメントは,加力方向側の柱から逆側の柱にかけて小さくなった。負側

1/10rad では柱頭ほぞが完全に折損することによりずれ,後柱差鴨居接合部で引張力が働い

たため,図2‐4の負側 1/10rad のモーメント図ようになり,以降は後柱差鴨居接合部で端 抜けが生じたため負側1/8rad,1/6radのモーメント図ようになったと考えられる。

S3 試験体のモーメントは,正側加力時には前柱と後柱の差鴨居接合部で大きくなってお り,負側加力時には中柱差鴨居接合部で大きくなっていた。正側1/6radでは,後柱の折損に よって右差鴨居の端抜けが生じ,中柱差鴨居接合部で引張力がかかり,モーメントが大きく なっていた。

(23)

2‐5 曲げモーメントと損傷の進展

1/151/101/81/6

1/20

d

a

1/6

S1試験体 S2試験体 S3試験体

損傷内容 a:ほぞ折損 b:柱割裂 c:ほぞ端抜け d:差鴨居ほぞ割れ

新しい損傷 損傷履歴 1 kN・m

e:柱折損

a

b

c d

a, b

a a a a

a

a a

a a

d b

b

b

e b

1/301/501/751/1001/120

F試験体

1/301/501/751/1001/1201/201/151/101/8

(24)

- 20 - 2.4.4 2スパン架構に生じる現象

(1) 柱の折損

S2 試験体の中柱は,負側 1/15rad に生じた曲げモーメントが後柱より小さいにも関わら ず,柱のほぞ穴下端から折損した。しかし,柱の断面欠損を考慮しても縁応力度は材料強度

(表 23)を下回り,折損した根拠は得られない。木材は部分圧縮を受けると繊維が分断 するが,中柱では両差鴨居から突張力を受け,そのめり込み(部分圧縮)による繊維分断箇 所からひび割れが派生したことが推察される。仮に柱のせいを約 80%に低減して縁応力度 を求めた場合,縁応力度より柱は折損すると推定される。ただし,部分圧縮を受ける部材の 断面係数の低減率に関しては今後検討する必要がある。

S3試験体の後柱の曲げモーメントは,正側1/8radより正側1/6radの方が低かったにも関 わらず,柱の差鴨居ほぞ穴上端から折損した。これは,S2 試験体の中柱と同様,柱差鴨居 接合部のめり込み箇所から繊維が分断し,断面係数が低減したことが原因であると考えら れる。込栓穴からの割裂によって,柱断面の強軸方向長さが半分に低減されると仮定する と,縁応力度が材料強度(表23)に達する。

(2) 差鴨居の突張力による柱の曲げ変形

差鴨居のような大断面横架材を持つ架構は,試験体層間変形角が増大するにつれて横架 材に突張力が生じるため,架構に生じるせん断力に影響を及ぼすことが幾何学的に論じら れている(図2‐5)12, 13)

同様に,S2試験体では図7のように加力方向先頭の柱に最も大きなモーメントが生じる と考えられ,図 2.4.2では損傷が生じる1/20rad までは,加力方向へ向かって順に柱の曲げ モーメントが大きくなっている。また,図2‐6 (a)のように,2スパン架構の側柱(前後柱)

の変形量は 1 スパン架構より大きくなると推測でき,加力方向先頭の柱頭の負担が大きく なることで写真23 (c)の損傷が生じたと考えられる。

S3試験体の正側加力時には,図2‐7のように側柱において,ほぞの曲げと差鴨居の突張 力による曲げモーメントが足し合わされるため,側柱差鴨居接合部の曲げモーメントが最 も大きくなる。一方,図28のように,負側加力時には,側柱において,ほぞの曲げと差 鴨居の突張力による曲げモーメントが互いに低減する方向へ働くため,中柱差鴨居接合部 が最も大きくなる。実験においても,図24のように,柱の曲げモーメントは加力方向に よって異なり,正側加力時には両側柱の曲げモーメントが大きく,負側加力時には中柱で最 も大きい。さらに,正側加力時には,図27 (a)のように側柱の変形量が大きくなると推測 でき,前柱柱頭と後柱柱脚の負担が大きくなることで,写真23 (g)のような損傷が生じた と考えられる。負側加力時の中柱に着目すると,両差鴨居から突張力を受ける力点間距離が 正側加力時より短くなるため,差鴨居間の負担せん断力が増加すると考えられる。

(25)

(c1) 左差鴨居の突張力 (c1) 右差鴨居の突張力 (d) 接合部の曲げ

2‐7 S2正側加力の場合のせん断力発生メカニズム(概念図)

(c1) 左差鴨居の突張力 (c1) 右差鴨居の突張力 (d) 接合部の曲げ

2‐8 S3正側加力の場合のせん断力発生メカニズム(概念図)

(c1) 左差鴨居の突張力 (c1) 右差鴨居の突張力 (d) 接合部の曲げ

29 S3負側加力の場合のせん断力発生メカニズム(概念図)

(a) 変形 (b)柱頭・柱脚ほぞの曲げ (c)差鴨居の突張力 (d)接合部の曲げ

26 S1正側加力の場合のせん断力発生メカニズム(概念図)

T1

T1

T2

T2

T3

T3

T4

T4

T5

T5

T6

T6

(a) 変形 (b) 柱頭・柱脚ほぞの曲げ

(a) 変形 (b) 柱頭・柱脚ほぞの曲げ

(a) 変形 (b) 柱頭・柱脚ほぞの曲げ

(26)

- 22 -

2.4.5 限界耐力計算に基づき単純加算されたせん断力と実験値の比較

効果を除去した層せん断力19)とマニュアル7, 8)で示される従来の水平抵抗力(設計値)

を図2‐9に示す。F試験体とS1試験体では設計値と比較的近い値が再現された。しかし,

S2 試験体の実験値は,正側では設計値と比較的近いが,負側では設計値より低めのせん断 力で剛性低下した。主な原因として,(a) 左差鴨居の両ほぞ形状が異なることや右差鴨居の 中柱側にほぞが無いことで,加力方向で抵抗力が異なること9),(b) 前述のとおり,前後柱 の変形量が増加するとともに差鴨居に生じる軸力が1スパン架構より増大すること(図2‐

5 (a),図26 (a))が考えられる。

S3 試験体の正側加力時は実験値と概ね近いが,負側では実験値より大きく下回った。前 述のとおり,差鴨居が段違いに配置されたことに伴い,加力方向によって,両差鴨居の突張 力が加わる力点間距離が全ての柱で変化し,特に中柱に生じるせん断力が大きく変化する ことに起因すると考えられる。

また,全試験体を比較すると,F試験体とS1試験体では,差鴨居を有することにより,

1.5倍程度の復元力が増加し,S1試験体とS2試験体では,2間フレームになることにより,

2倍程度の復元力が増加し,S2試験体とS3試験体では,差鴨居配置による復元力の差が大 きいことが分かった。

(27)

2‐10 層せん断力と設計値の比較 (a) 1スパン架構

(b) 2スパン架構

(28)
(29)

3.1 はじめに 3.2 接合部モデル

3.2.1 モデル構成要素

3.2.2 接合部のモデル化

3.3 接合部抵抗力

3.3.1 めり込み剛性KPとめり込み摩擦剛性KF

3.3.2 めり込みの仮定

3.3.3 込栓せん断剛性KS

3.3.4 三角変位めり込み降伏耐力Peyと摩擦降伏耐力PFy

3.3.5 込栓せん断降伏耐力Psy

3.3.6 抵抗バネの復元力モデル例

(30)
(31)

3.1 はじめに

本章では,大断面横架材を有する伝統木造軸組の嵌合型接合部の挙動を再現可能な解析 モデルの構築を行い,モデルの構成要素の一つであるバイリニア型の復元力を持つ各抵抗 バネの設定方法について詳述する。なお,解析においては,材料非線形と幾何学的非線形の 双方を考慮する。

3.2節では「接合部モデル」と題して,各接合部のモデル化について説明を行う。

3.3節では「接合部抵抗力」と題して,接合部に生じる抵抗力について説明を行う。

3.2 接合部モデル

3.2.1 モデル構成要素

モデルを構成する要素を図31に示す。モデルは,材端に配置する節点,部材を線材と して材軸線上に置換した梁要素,抵抗力を表現する抵抗バネ,変形を考慮しない剛な要素の リジッドリンクから構成される20)。抵抗バネは,めり込み抵抗,摩擦抵抗,込栓のせん断抵 抗を表す。

31 モデル構成要素

(c) 梁要素(横架材) (d) 梁要素(柱)

(e) 抵抗バネ (f) リジッドリンク (a) 節点(柱) (b) 節点(横架材)

(32)

- 28 -

3.2.2 接合部のモデル化

3.2.1 モデル構成要素で示した要素を用いて接合部のモデル化を行う。モデル化にあたり

以下の仮定を設けた20 - 22)

a) 大変形領域を考慮し,変形は材端に集中する。また,折損や端抜けなどの損傷の発生は,

後に応力を確認して判断する。

b) 抵抗要素は,部材のめり込みと摩擦,込栓のせん断抵抗とする。

c) めり込みは繊維直交方向に生じ,繊維方向は剛体とする。

d) ほぞのめり込みは,三角変位めり込み22)とし,めり込み長さは,ほぞ長さの半分とする。

e) 摩擦抵抗は,動摩擦力のみを考慮する。また,摩擦はくいこみ摩擦とすべり摩擦とする。

f) 込栓には対称な2面せん断22)が働く。

g) めり込みと摩擦の抵抗バネは圧縮のみ作用し,バネ特性は文献22)より算出する。

h) 各材は材軸線上に線材置換する。

i) 初期剛性に対する2次剛性の比α1/10 22)とする。

桁,柱,差鴨居,土台に節点を設ける。土台節点は完全固定とし,他節点には 3 自由度

(水平・上下・回転)を与える。柱と横架材は材料特性と断面情報を有する梁要素で置換し,

リジッドリンク(変形を考慮しない剛な要素)と抵抗バネで節点間を結ぶ。柱の材料特性値 は表23に基づき,柱以外の部材は機械等級に応じて設定する17)。要素剛性は,材料特性 値より決定する剛性に幾何剛性を加算して求める。

以下に,正側加力時に前柱差鴨居接合部の差鴨居ほぞで生じるめり込み抵抗力のモデル 化手順を例示する(図32。また,モデル化した接合部を図33に示す。

[1]柱と差鴨居に節点を設け,梁要素で結ぶ(図32 (a))

[2]柱と差鴨居ほぞ上端の接触面の柱節点から,柱の外縁に向けてリジッドリンクを設ける

(図32 (b)

[3]リジッドリンクと差鴨居ほぞのめり込みが生じる箇所の節点をめり込み抵抗バネで連結 する(図32 (c)

[4]接合部が変形するとバネに圧縮力が働く(図32 (d)

3‐2 モデル化手順

(a) (b) (c) (d)

加力方向

(33)

(a) 柱頭ほぞめり込み (b) 柱頭ほぞ摩擦 (c) 桁めり込み (d) 桁摩擦 (e) 桁込栓せん断

(f) 柱脚ほぞめり込み (g) 柱脚ほぞ摩擦 (h) 土台めり込み (i) 土台摩擦 (j)土台込栓せん断

(k) 差鴨居ほぞめり込み (l) 柱側面めり込み

(m) 差鴨居ほぞ摩擦 (n) 柱側面摩擦

(o) 差鴨居込栓せん断

3‐3 正側加力時の接合部モデル一覧

込栓拡大

込栓拡大

込栓拡大 込栓拡大

(34)

- 30 -

3‐3 正側加力時の接合部モデル一覧(続き)

(p) 中柱差鴨居ほぞめり込み(S2) (q) 中柱側面めり込み(S2)

(r) 中柱差鴨居ほぞ摩擦(S2) (s) 中柱側面摩擦(S2)

(t) 差鴨居込栓せん断(S2)

込栓拡大

(35)

3.3 接合部抵抗力

3.3.1 めり込み剛性KPとめり込み摩擦剛性KF

部材に生じるめり込み力は,文献22) に基づく三角変位めり込みの考え方より算出した。

三角変位めり込みが生じる際に重心に生じる負担過重P0は,式(3‐1)で表される。全面 横圧縮ヤング係数は式(3‐2)に示すように繊維方向ヤング係数の1/50倍とする。また,

これに関する変数は図34に示す。

𝑃0= ∑ 𝑁 =𝑥𝑝2𝑦𝑝𝐶𝑦𝐸90 𝑧0 [1

2+2𝑧0

3𝑥𝑝{1 − exp (−3𝑥1

2𝑧0)}] 𝜃 (3‐1)

𝐸90=𝐸0

50 (3‐2)

n: 繊維方向に対する繊維直交方向の置換係数

スギ : n= 5,ベイマツ: n= 7

x1,x2,xp,y1,y2,yp: 3.3.1に示す諸寸法(mm)

x1 xp

Z0

x1 xp

y1y2yp 断面

3‐4 三角変位めり込み めり込み面

断面

図 A ‐ 2   加力・計測システム(a)  縦圧縮試験(b)  曲げ試験荷重P 写真 A‐1  試験後の試験片(a)  縦圧縮試験                  (b)  曲げ試験       荷重Pεαεβεαεβひずみゲージ反力盤ロードセル加力盤 反力盤加力盤350120ひずみゲージロードセルLi = Lj = ひずみゲージ反力盤ロードセル加力盤反力盤加力盤350120ひずみゲージロードセルLi = Lj =

参照

関連したドキュメント

1 月13日の試料に見られた,高い ΣDP の濃度及び低い f anti 値に対 し LRAT が関与しているのかどうかは不明である。北米と中国で生 産される DP の

一部の電子基準点で 2013 年から解析結果に上下方 向の周期的な変動が検出され始めた.調査の結果,日 本全国で 2012 年頃から展開されている LTE サービ スのうち, GNSS

2813 論文の潜在意味解析とトピック分析により、 8 つの異なったトピックスが得られ

<警告> •

年度まで,第 2 期は, 「日本語教育の振興」の枠組みから外れ, 「相互理解を進 める国際交流」に位置付けられた 2001 年度から 2003

方針 3-1:エネルギーを通じた他都市との新たな交流の促進  方針 1-1:区民が楽しみながら続けられる省エネ対策の推進  テーマ 1 .

※ CMB 解析や PMF 解析で分類されなかった濃度はその他とした。 CMB

 もうひとつは、釣りに出港したプレ ジャーボートが船尾排水口からの浸水 が増大して転覆。これを陸側から目撃 した釣り人が