奈良教育大学学術リポジトリNEAR
青年用アサーション尺度の作成と信頼性および妥当 性の検討
著者 玉瀬 耕治, 越智 敏洋, 才能 千景, 石川 昌代
雑誌名 奈良教育大学紀要. 人文・社会科学
巻 50
号 1
ページ 221‑232
発行年 2001‑10‑15
その他のタイトル Development of an Assertion Scale for
Adolescents and its Reliability and Validity
URL http://hdl.handle.net/10105/1387
奈良教育大学紀要 第50巻 第1号(人文・社会)平成13年
BLill. Nara Uiliv. Educ. Vol. 50. No. 1 (Cult. & Soc), 2001
青年用アサーション尺度の作成と信頼性および妥当性の検討
玉 瀬 耕 治・越 智 敏 洋*・才 能 千 景**・石 川 昌 代***
奈良教育大学学校教育講座(発達心埋学) (平成13年4月27日受理) キーワ‑ド:青年用アサーション尺度,関係形成I廿予,説得交渉因子
1.問題と目的
社会的場面において人と人とが互いに適切な距離を保 ちつつ,好ましい人間関係を形成し維持していくことは 極めて重要である.社会の変化とともにそのような社会 的スキル(相川バ射す. 1995;菊池・堀も1998)を自然 な人間問係の中で形成することが徐々に困難になりつつ ある.何らかの形で意識的,意図的に好ましい人間関係 を形成し維持していく必要が生じてきているといえる.
人との良好な関係を維持しつつ適切に自己を表現するこ とに関連して.主張性(assertiveness上 主張的行動 (assertive behavior).自己主張(assertion)などの用 語が用いられている(′柴橋, 1998上 ここでアサーショ
ン(assertion)の訳語として自己主張という言葉を用 いた場合,対人関係で互いに対等の権利を尊重するとい
う意味合いが滞れ.どちらかといえば自己の立場からの 一万的な主張を意味するものとなりがちである.平木 (1993, 2000)は,攻撃的な自己表現とアサ‑デイブな 自己表現を対比して示し, 「自分の気持ち.考え,信念 などを正直に,率直にその場にふさわしい方法で表現し, 相手も同じように発言することを奨励しようとする態 度」 (1993.p‑24)をアサーデイブなあり方としている.
このような観点に立つならば,アサーションとは自分 の感情や考えを主張すべきときに,相手の立場を尊重し つつ.その場にふさわしい方法で率直にそれを表現する ことであるといえよう.日本人の人間関係においては, ややもすると相手との関係に配慮する余り,必要な自己 表現が抑制されてしまいがちである.それは日本人と欧 米人の人間関係のあり方や自己表現の仕方の根本的な違 いに由来しているものと考えられる(浜「1,1988;木村.
1972;北 宮本. 2000 : MarkLis. & Kitayama. 1991).
* 現在 山形県鶴岡市立朝喝第四小学校講師
** 現在 高知県高知市立横浜新町小学校教諭
***現在 愛知学院大学大学院文学研究科在学
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酢手の立場に配慮するという点では,日本人は優れてい るとしても.結果的にそれが対人関係におけるあいまい さにつながっていくことになる.また,必要な場合であ っても自己表現しないですませることにもなりかねない 月;一木. 2000上 カウンセリングや悩みの相談事例のなか でも人間関係の乱裸の問題が圧倒的に多いのは,このよ うな臼*における人間関係のあり方に由来するI一一両があ ると推測される(例えば∴木村, 1972:三木. 1995上 カ ウンセラー養成のための訓練プログラムを開発する上で ち.日本における人間関係のありプ月二関する基礎的知識 と理解を深め,実証的研究に基づくデータベースを蓄積 していくことは必要不可欠であると考えられる.
アサーションに関する尺度については,欧米ではすで に多数の尺度が作成されており(Deluty. 1979;
Gambrill, & Richev, 1975; Galassi. Delo, Galassi, Bastien, 1974: Lorr, & More, 1980; McCormick. 1985:
Michelson, Sugai, Wood, & Kazdin, 1983; Rathus, 1973, Wolpe&Lazarus, 1966), 本でもいくつかのものが作 成されている(古市・乗金・原臥1991;藩主11994;土 肥・矢嶋・坂野, 1994;菅沼,1989).柴橋(1998)はこれ らのうちのいくつかを紹介しつつ文化との関連性を論じ た興味掩い文献展望を試みている.しかし、国内でのカ ウンセリング領域の多様な適用を考えた場合.必ずしも いまだ日本における「分な尺度があるとはいえない.
本研究では,青年期に焦点を合わせて,カウンセリン グ領域における訓練や研修などでも利用しやすいような 青年用アサーション尺度を作成することを主な目的とし ている.従来のものは翻訳によるものがほとんどで.忠 定されている因子などについても,必ずしも十分納得し うるものではない.本研究では,従来の項目を参考には するが,実際の利用可能性を考慮して、著者らの間で討
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玉 瀬 排 治・越 智 敏 洋・才 能 千 畳・石 川 昌 代 講を重ね.独自の尺度を作成することにした.2.研究1 :青年用アサーション尺度の作成
研究1では.既存のいくつかのアサーションに関する 尺度を参考にしつつ,大学生,短期大学生,専門学校生, 高校生などの青年期の被験者を主な対象とする青年用ア サーション尺度を作成することを主たる目的とする.ま た,試作された尺度についていくつかの関連する尺度と の関係を検討する.そのうちの1つとして, Gresham&
Elliott (1990)のSocial Skills Rating System (SSRS) のアサーション項目との関係を調べる. SSRSは社会的 スキル尺度として米国では広く使用されているものであ り,高校生については日米比較も試みられている(Van Horn, Tamase, & Hagiwara, 2001).さらに,試作 された尺度とYIG性格検査の社会的適応に関わる3つの 特性(攻撃性.協調性,主観性)との関係,セルフ・コ
ントロール(Redressive‑Reformative Self‑Control
Scale:杉若, 1995)に関わる改良型セルフ・コントロー
ル.調整型セルフ・コントロールとの関係についても検 討する.これらの比較を行うことによって試作きれた尺 度の特徴を明らかにする.
2.1.方 法 2.1.1.被験者
大学生86名(男子47名,女子39名工 短期大学生11名 (男子3名.女子8名),専門学校生37名(男子15名,女子 22名)の合計134名(男子65名,女子69名)を対象とし た.
大学生の平均年齢は, 20.72歳(18歳4ケ月〜24歳3ナ 月上 短期大学生の平均年齢は, 20.72歳(18歳8ケ月‑
21歳8ケ目上 専門学校生の平均年齢は, 20.66歳(18歳8 ケ月〜22歳1ケFJJ であった.
2. 1.2.アサーション尺度の作成
アサーション尺度を作成するために集めた既存の項目 は,菅沼(1989)のアサーテイブ・チェックリスト30項 H, Galassi et al. (1974)のCollege Self‑Expression Scale (OSES:日本版50項目,およびLorr&More (1980)のPersonal Relations Inventory (PRI)日本語 表1アサーション尺度の予備項目(研究1)
1.並んで待っているあなたの前に割り込もうとする人がいたら,後ろに並んでもらうように頼む.
2.恋人ともう交際を続けたくないと思ったら,相手にその事を伝える.
3.買ってしまったあとで欠陥があるとわかった商品は,交換してもらう.
4.親が認めてくれそうもない方向に進路を変えたいときでも,親にその事を言う.
5.勉強をしている時,隣で友達が大きな音を立てたらやめてくれと頼む.
6.人に素直にお祝いを言ったり,誉めたりする.
7.親に腹が立ったら,そのことについて親と話し合う,
8.分担した仕事をしようとしない友達には,仕事をしてくれるように抗議する.
9.前にお金をかしていた友達が.その事を忘れてしまっているとき催促する.
10.他人の気持ちを傷つけないように考えながら,意見する.
ll.友達に頼みごとをしたいときには.素直に言う.
12.レストランで注文していないものが出されたら,係りの人に交換してくれるように頼む.
13.あまり気に入らないものをセールスマンがしつこくすすめたら. 「いらない」と言う.
14.勉強しようと思っているところへ友達が遊びにきたら.出直してくれるように頼む.
15.好きな人には素直に愛情や好意を示す.
16.小人数のゼミで,先生が誤りと思われる発言をしたら質問する.
17.尊敬している人があなたと全く異なる意見を言ったとき,思い切って自分の考え方を述べる.
18.先生から腹の立つようなことをいわれたら,それについて抗議をする.
19.すでに予定があるのに,親に用事を触まれたとき,予定がある事をはっきり言う.
20.不当にからかわれたら,異性に対してでも怒りやいらだちの感情を現わす.
21.友達が用事をしてくれたら,感謝の気持ちを伝える.
22.図々しく.不正な人がいたら,その人に注意する.
23,信頼している友達に裏切られた時,その友達に衷情や言葉で怒りやいらだちを現わす.
24.大事な話の途中で人がUをはさんできたら,その人に話が終わるまで待ってくれるように頼む.
25.小人数のディスカッションの場で,自分から進んで意見を述べる.
26.コンパのとき,魅力的な異性に自分から進んで話し掛ける.
27.友達から誤解されたときは,その理由を尋ねる.
青年用アサーション尺度の作成と信頼性および妥当性の検討 版32項目の合計112項目であった. CSESとPRIは古市ら
1991)のものを参照した.
質問項Uの選択の手順は次のとおりであった a)アサ ーデイブ・チェ、ソクリスト, CSES,およびPRIの3つ の尺度の中から,類似した項目を選択してまとめる.
才CSESとPRIは米国で作成された尺度であり,訳語で は理解しにくいものがあるので.より理解しやすい日本 語に改める. 1甘1‑2の操作を行うにあたり、質問項目が よりアサーテfブな表現になるように.またはアサーテ イブな表現を損なわないように注意する.亘.】質問項L]に 具体性がありすぎたり,具体性があまり無いと考えられ る項目は削除する.せ1‑4までの操作を行った後.さら に本研究で意図しているアサーションとはあまり関係が ないと考えられる項目は削除する.
以上の操作は第1著者と第2著者の合議によって進め, 互いに合意した27項目をアサーション尺度の予備項目と
した(表1上 これらの27項Uについて, 「できない」 (0 良). 「あまりできない」(1点上「いくらかできる」(2点上
「できる」 (3点)の4段階で評定させる尺度を作成した.
2.1.3.手続き
被験者の空き時間を利用し. 2‑6人程度の小集団で調 査を実施した.調査者が被験者に質問紙を配布した後に 用紙の枚数を確認し.学校名と学部,専攻名と性別.午 齢を記入するように求めた.記入が終わった時点で以下 の教示を与えた. 「この調査は,各質問がどのくらいあ なたにあてはまるかを調べるものです.これから行う質 問は.大きく分けて4種類あります.それらの前には, どのように質問に答えたらよいかが書いてありますの で,それをしっかり読んでそれぞれの質問に答えていっ てください.また.すべての質問に必ず答えてください.」
この教示の後で個人データの秘密を厳守することを約束 してから回答させた.調査は1999年の7月から9月の間に 実施した.
用いた質問紙は次の4種類であった.
亘'斬たに作成したアサーション尺度27項目.
eYIG性格検査の社会適応性に関する30項I.1.この社会 適応性の項Hは攻撃性.協調性.主観性の3つの下位 尺度からなっており.それぞれ10項目ずつである.こ れらの尺度はアサーションと社会適応性との関係を検 討するために用いた.
卓唱resham & Elliott (1990)のSocial Skills Rating System (SSRS)のアサーション項目10項目.この10 項目は筆者らが翻訳したものである(上海・バンホー ン. 1998上 この尺度はアサーション尺度の併存的妥 当性を検討するために用いた.本来ならば日本におけ る標準化が完了した尺度を用いるべきであるが.本研 究ではいくつかの質問紙を同時に実施するので,あま
り項目数の多いものは不都合であり,その意味で適当
・vrS
な尺度が他に見あたらなかったので,上記のものを使 用することにした.
(4)杉若(1995)のRedressive‑Reformative Self‑Control Scale (RRS)の改良型セルフ・コントロールに関す る8項目と調整型セルフ・コントロールに関する5項 目.この尺度はアサーションとセルフ・コントロール との関係を検討するために用いた.
2.2.結果と考察
2.2. 1.アサーション尺度の分析
アサーション尺度の各項目とその噴口を除く全項目の 総点とのピアソン相関係数を調べた.また.主因子法バ リマックス回転による因子分析を行った結果,固有値が 1以上の因子は3因子であったが,第1因子‑の負荷量が 高く. 1因子構造であることが示唆された.ただし.寄 与率は17%であり「分なものとはいえなかった.ここで 因子負荷量が.30以卜となる項目は6項目あった.前述 した総点との相関が低い項目と因子負荷量の低い項Uが 一致したためにそれらの6項E]を削除して21項昌を残し.
再度,因子分析を行った.その結果,寄与率は20%とな った.ここでクロン′トソクのa係数を求めたところ
〟 .82であった.さらに13項目まで項目数をしぼった 場育や. 21項目で因子数を2個および3個に同定した場合 についても検討したが,まとまりのよい結果は得られな かった.したがって,研究1では1閃子21項Elで尺度を 構成することとした.なお.この尺度の総点について正 規性の検定を行った結果.正規分布であることが確認さ
れた(平均値‑39.47,標準偏差‑9.85,得点可能範囲‑
0‑63上
2. 2. 2.アサーション尺度と関連する諸尺度との関係 アサーション尺度と, Y‑G性格検査の攻撃性,協調性, 主観性,および社会適応性の総点, SSRSのアサーショ ン尺度, RRSの改良型セルフ・コントロール,調整型セ ルフ・コントロールとのピアソン相関係数を調べた.そ の結果,アサーション尺度とYIG性格検査の攻撃性とは r‑.51という有意な中程度の相関が見られた(p<.001).
協調性とは =.19の有意な低い相関があり p<m主 主 観性とはr‑.05で有意な相関は見られなかった.また.
社会適応性30項目の総点との相関はr‑.31であった (p<001).これらの結果から.アサーション尺度は社会 適応性とip:の相関があり,とりわけ攻撃性と関係が深い ことをが分かる. Y‑Gの攻撃性は社会適応性の一一部とみ なされているものであり.過度にこの特性を有している ことは好ましいとされている.アサーションと攻撃性は.
行動レベルでの表現の違いを問題にすべきものであり.
それらの元になる感情については共通するものがあるこ とを考慮する必要があろう.アサーションと攻撃性は深 い関係にあり.尺度項目として攻撃的表現を避けること は必要であるが.ある程度の相関があることはむしろ是
221
土 瓶 耕 治・越 智 敏 洋・才 能 千 景・石 川 昌 代 認すべきことと考えられる.アサーション尺度とSSRSのアサーション項目との相 関はr‑.65であった(jX.OOl). SSRSのアサーション項 目は日本の教師による高校生の評定に適用した場合は対 人的積極性の 一部となることが示唆されている(Van Horn, Tarllase, & Hagiwara, 2001).このSSRSと相問が 認められたので,研究1のアサーション尺度は併存的妥 当性があるといえる,アサーション尺度とRRS {杉若.
1995 の改良型セル7 1コントロールとはr‑.39 (p<.001),調整型セルフ・コントロールとはr‑.33 (p<‑ooi:という適度な相関が見られた.セルフ・コン トロールとは必ずしも対人的状況に限定される尺度では ないので直接的な関係とはみなされないが,困難な状況 への対処方略という意味では共通性があり,ある程度の 相関はあってよいと考えられ,本研究の結果は妥当なも のと理解される.
3.研究2 :尺度の改訂と信頼性および妥当性の 検討
研究1で一応のアサーション尺度を作ることはできた が,カウンセリングの実習やアサーション訓練などを想 定して.使用に耐え得る尺度とするにはなお改良の余地 が残されていると考えられた.研究1では.既存のアサ ーション尺度を集めてそれらを修正して項目を構成し た.従来のアサーションに関連する尺度には多くの共通 する要田が含まれている.渡口(1994)は,これらの要 因を,甘権利の防衛.堰)要求の拒絶, <^J異なる意見の表明,
・耳個人的限界の表明. (封也者に対する援助の表明, (′和也 者に対する肯定的な感情と思考の表明,としてまとめて いる.平木(1993)によれば,対人関係における自己表 現行動には,非主張的行動.攻撃的行動,およびアサー
ション行動の3つがある.非主張的行動とは,自分の要 求を相手に伝えられず,自分を殺して相手に合わせる行 動.つまり相手を尊重しているが,自分をおろそかにし た行動である.また,攻撃的行動とは.自分を尊重し自 己主張するが.自分のことを優先させ相手‑の配慮に欠 けている行動である.アサーション行動とは,相手の立 場を尊重し,自分の言い分を明確に表現する行動である.
これは,双方を尊重する上体的な人間関係の結び方であ るといえる.
次に,研究2でアサーションとの関係について新たに 検討したい尺度が2つある.一つはシャイネスに関する 尺度であり,もうひとつは公的自意識に関する尺度であ る.まず,シャイネスとの関係について述べることにす る.アサーションが自己を主張する行動であるのに対し て,シャイネスは自己の中でそのような行動を阻む何ら かの働きをするものと考えられる.シャイネスについて
は対人不安の下位概念であると考えられており,社会恐 怖や対人恐怖に比べてより軽度な不安であるとみなされ ている(松尾・新井, 1998上 R本譜では, 「恥ずかしが FHや「内気」, 「引っ込み思案」などと表現されている ものである(桜井・桜井, 1991上 Zimbardo (1977)の 実証的な研究に端を発して,シャイネスに関するさまざ まな研究が行われてきている(岸本, 1988:栗林・相川.
1995;関H・長江・伊藤・宮田・根建, 1999:高柳・田 上.藤生, 1998).シャイネスの一般的な尺度としては 相川(1991)のものがあるが,鈴木・山「卜根建(1997)
は,シャイネスを認知,感情.および行動という3つの 側面に分けてとらえ,認知行動療法に関わる訓練による 変容をとらえようとしている.シャイネスの認知的側面
というのは,自分の言動に自信がなく,他者からの評価, 批判を恐れるなどの全体的な認知の歪みをさす.感情的 側面とは,対人的な場面で緊張したり,拙かなことに過 敏になったりするといった情緒的覚醒と,動惇・発汗・
赤面などの身体・生理的徴候である.行動的側面とは, 対人場面において有効な社会的スキルの欠如と,そうい った場面に置かれることを恐れ.遠ざける回避的行動を さす.本研究では鈴木らの尺度を用いて,アサーション とシャイネスの各側面との関係について検討する.
アサーションとの関係で,もうひとつ問題としたい尺 度は公的自意識(菅原, 1984: 1988)に関するものであ る.自己の周囲の状況を気にする傾向は日本人一般の特 徴とみなされているが,アサーテイブになれない要因は このような自意識(自己意識)のあり方とどの程度関係 があるのであろうか.従来,公的自意識とアサーション との関係はまだあまり検討されていない.公的自意識は 世間を気にする傾向と関係があるので,文化に関連する 問題として,アサーションと公的自意識との関係を調べ ることは意義あることと思われる.公的自意識とは,個 人が.自らの外的な側面,すなわち容姿やしぐさに注意 を向けやすい性格特性であり.他者から見られていると きや大勢の人の前で話をするとき,鏡に映った自分の姿 を見るときなどに喚起されるものである.公的自意識の 高い人は,他者からの評価的態度に敏感であり,他者の
日を意識して自己表現の仕方をコントロールする傾向が 強いのが特徴である(Fenigstein, 1979; Fenigstein, Scheien, & Buss, 1975; Scheier, 1980).アサーションと の関係では.公的自意識が高い人はアサーテイブになる のが難しいのではないだろうか.少なくとも,アサーシ ョンと公的自意識の間にはある程度の相関関係があるも のと推測される.
3.1.方 法
3.1.1.アサ‑ション尺度の改訂
研究1のアサーション尺度を修正して新たに改言了アサ ーション尺度を作成した.研究1では,アサ‑テfブ・
青年用アサーション尺度の作成と信頼性および妥当性の検討 チェックリスト(菅沼, 1989上 PRI (Personal
Relation Inventory上 CSES (College Self‑
Expression Scale)の, 3つの評定尺度の間鳳互を考慮 して作成されている.まず,研究1で当初に作成した27 項目について,文章の表硯を修正した.文章の表現を変 更する際の留意点としては,互、〕その表現が普段使われて いて.被験者になじみやすいものにすること, ②攻撃的 でなく,よりアサーテイブな表現にすること,ョ表現が 特定の場面に限定されず一般化しやすいものにするこ と言む1文の長さが極端に長くならないようにすること の4点であった.これらの改良された項目について心理 学専攻生27名に頻度. ‑ ・般性,具体性を「ある」から
「ない」までの4段階で評定させた.その結果,全体と してII‑般性 M‑2.i と具体性 M‑2.9)に関しては,
「ある」とみされたが頻度に関しては評定値がやや低か った(M‑2.4).頻度については表現された状況が限定
225
されすぎていたのでいくつかの項目の表現を修正した.
一般性についてはほぼ満足できるものとみなされた.具 体性についてはやや具体的すぎる項目があったのでさら に表現を修正した.
このようにして研究1の項目をそのまま用いたもの2 項臥 表現をより理解しやすく変更したもの19項臼.そ れらの項目とは別に新たに追加した項目4項目を含めて 合計25項目で研究2のアサーション尺度を構成した.新 たに加えた項目は, 「友達の都合を一方的に押しつけら れた時は.嫌だと断る」, 「友達のいいところを見つけた ら平面に誉める」. 「自分に分からないことがあれば,読 明を求める」, 「自分にできそうもないことを頼まれても 仕方なく引き受ける」 (逆転項目)の4項目である.
3.1.2.材 料
①改訂されたアサーション尺度25項目.
^Social Skills Rating System (SSRS ; Gresham 表2 改訂されたアサーション尺度における評定の平均とsD (研究2)
項 目
平均(SD)1.並んでいる時,前に割り込んでくる人がいたら注意する.
2.恋人と別れたいと思ったら相手にそう伝える.
3.買った商品に欠陥があったら交換してもらう.
4.親に反対されそうなことでも必要なら親に言う.
5.勉強をしている時に隣で騒いでいる人がいても何も言わない. (R) 6.親に腹が立ったら,そのことについて親と話し合う.
7.割り当てられた仕事をしない友達には、きちんとするように注意する.
8.貸していたお金を友達が返してくれない時は催促する.
9.友達に頼み事をしたい時には率直に言う.
10.飲食店で注文していないものが出されたら,交換してくれるように言う.
ll.友達の都合を一方的に押しつけられた時は断わる.
12.勉強しているところ‑友達が遊びに来たら,理由を言って断わる.
13.好きな人には率し∈五二愛情や好意を示す.
14.少人数のクラスで,先年が誤りと思われる発言をしたら質問する.
15.あなたと違う意見を持つ人が多い時でも,必要なら自分の意見を述べる.
16.先生から腹の立つようなことを言われても黙っている. (R) 17.図々しく不正な人がいたら.その人に注意する.
18.友達のいいところを見つけたら率直に誉める.
19.信頼している人に裏切られたら,率直に怒りや苛立ちの気持ちを表す.
20.大事な話の途中で口をはさまれたら,話が終わるまで待ってくれるように言う.
21.少人数の話し合いの場で進んで意見を述べる.
22.好意を持った相手には自分から話し掛ける.
23.他人から誤解されたら,誤解が解けるように話をする.
24.日分に分からないことがあれば,説明を求める.
25.日分にできそうもないことを頼まれても仕方なく引き受ける. (R) 25項目全体
2.12 (0.89) 3.67 (1.06) 3.70 (1.05) 3.91 (1.10) 2.63 (0.94、) 3.46 (1.23) 3.21 (0.96) 3.32 (1.12) 3.67 (0.97) 4.05 1.10) 3.46 (1.03) 2.68 (0.96) 3.32 1.15) 3.26 (0.92) 3.30 (0.93) 2.92 (0.96) 2.71 (0.78) 4.00 (0.80) 3.55 (1.12) 2.83 (1.07) 3」.9 (1.06) 3.38 (1.04) 3.69 (1.02) 3.81 (0.82) 3.15 (0.95) 82.98 (ll.81)
注: 「必ずそうする: 5点」 「たいていそうする:4点」 「時と場合によりそうする:3点」
「あまりそうしない:2点」 「全くそうしない:1点」の5作法で回答する.
(R)は反転項目.
226
玉 瀬 耕 冶・越 智 敏 洋・才 能 千 貨・石 川 昌 代& Elliot, 1990)のアサーション項目10項目.
(享〕Y‑G性格検査の攻撃性項目10項目.
(i)シャイネス尺度(wss;鈴木・日田・根建, 1997) 25項目
⑤公的自意識尺度 憎=原. 1984) 11項目.
ここで(豆,は並存的妥当性を調べるためのもの‑llであり, (10は攻撃性との閏乱 せと這lほ文化に関連づけてこの尺
度の特徴を明確にするために用いたものである.
3.1.3.被験者
研究2では,教員養成系大学生121名(男子39名,女 子82名)を対象とした.平均年齢は19.5歳であった.ア サーション尺度の再検査信頼性を調べるために上記の被 験者のうち, 83名に1ケ月後に再検査を有った.
3.1.4.手続き
第1著者の講義時間の一部を使って,集団調香を実施 した.調査者(第3,第4著者)が被験者に質問紙を配 布し.課程,学籍番号,性別,年齢を記入するように求 めた.記入が終わった時点で,アサーション尺度のそれ ぞれの質問項目について.その実行渡を「まったくそう
しない工「あまりそうしない」 「時と場合によりそうす る」 「たいていそうそる」 「必ずそうする」の5段階で評 定するよう敦示した.研究1では評定尺度は「できる」
「できない」という表現であったが,研究2では可能性 よりも実行度をより直接的に測定するために, 「する」
「しない」という表現に改めた.この尺度に関連する諸 特徴を調べるために, SSRSのアサーション項目(10項 目上 YI G性格検査の攻撃性項目(10項目),シャイネ ス尺度(WSS, 25項目上 公的自意識尺度(11項目)を 実施した.本調査は2000年6月に行い,信頼性を確認す
るための再調査は2000年7月に行った.
3.2.結果と考察
各項目の評定に1点(まったくそうしない)から5点 (必ずそうする)までの得点(逆転項目は,点数を反転 させて)を与え,以下の分析を行った.表2は,アサー ション尺度(25項目)の平均とSDを示したものである.
3. 2. 1.因子分析による尺度の構成と信頼性の検討 25項目のアサーション尺度について,主因子法バリマ ックス回転による因子分析を行い,因子負荷量が.40以 トであった5項目 1,2,10,12,14)を削除すると. 20項 目で2因子が抽出された(説明率28.39%主 これらの20 項目で因子分析し,さらに因子負荷量が低かった各因子 2項目(第1因千から項目15と19,第2因子から項目6と7) を削除した.再度16項目で因子分析を行った結果. 2因 子が抽出された(説明率32.69%上 表3は最終的な分析 の結果を示したものである.第1因子と第2因子の相関係 数はr‑.35であった.この値は高い相関とはいえないの で, 2つの国子はある程度独立した因了であるとみなす ことができよう.第1因子.第2国子,および総点につ
いてそれぞれ分布の正規性の検定を行ったところ,いず れも正規分布していることが確認された.性差について 調べるため,男女別の平均値をもとに1検定を行った結 栄,両因子ともに男女差は認められなかった(関係形成 因子t‑1.09,説得交渉因子f‑1.39.ともにdf‑U9).
ここで抽出された第1因子は「13.好きな人には率直 に愛情や好意を示す」 「23他人から誤解されたら,誤解 が解けるように話をする」などの8項目であり.人との よい関係を形成することに関わるものであるので「関係 形成因子」と命名した.第2因子は「3.買った商品に欠 陥があったら交換してもらう」 「11.友達の都合を ん方的 に押しつけられた時は断る」などの8項目であり.何ら かの葛藤的な場面において相手に対して説得や交渉を行 うことに関わるものであるので「説得交渉閃子」と命名 サa
クロンバックのα係数を求めて内的整合性を確かめた ところ.関係形成国子ではα‑.80,説得交渉閃子では α‑.71となり,両因子とも.70以上であった.また,令 体ではa‑.80であったので.改訂されたアサーション 尺度には内的整合性があるといえる. 83名の同一被験者 に対して,アサーション尺度を1ケ一月の期間をおいて再 度実施し相関を求めた.その結果、両テスト間のピアソ ン相関係数は16項目全体ではr‑.79,関係形成田子で はr‑.81,説得交渉因子ではr‑.70であF主 有意な高 い相関があったといえる.したがって.研究2のアサー ション尺度には尺度としての安定性があるといえる.こ れらの結果から,研究2のアサーション尺度には信頼性 があると判断できる.
3. 2. 2.併存的妥当性の検討
アサーション尺度とSSRS (アサーション項目のみ) のピアソン相関係数を調べた.その結果,関係形成因子 ではr‑.62,説得交渉因子ではr‑.51, 16項目全体で はr‑.69.であった.これらの値は有意で,適度に高 く(すべてpく.001),研究1の結果と類似しており,安 定した結果であるとみなされる.関係形成国子の方が.
説得交渉因子よりもSSRSとの相関係数が高くなったの は, SSRS アサーション項目)が内容的に対人的積極 性についての項目である(Van Horn, Tamase, Hagiwara,2001)ことからも納得できる.ただし,本研 究で用いた尺度はいまだ標準化されていないものであ F主 併存的妥当性を検証する尺度としては十分なものと はいえない.この点は今後の研究でさらに資料を追加し て確認する必要があるといえる.
3.2.3.項目一全体相関 ‑T相関)による分析 研究2のアサーション尺度の各項目とその項目を除く全 項目の総点とのピアソン相関係数を調べた.その結果は表 2に示されている.相関値はr‑.32‑/‑.59の範囲に分布 しており, I ‑T相関によって削除すべき項削まない.
227
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228
王 瀬 耕 治・越 智 敏 洋・才 能 千 景・石 川 昌 代 表4 アサーションとシャイネス(wss)の相関アサトション全体 関係形成因子 説得交渉因子 WS S全体
行動<積極性>
感情<リラックス>
感情<過敏さ>
認知<自信のなさ>
認知<不合理な信念>
‑0.59*
‑0.56***
‑0.38"*
‑0.27*
‑0.39軸*
‑0.29**
*p<05, **p<. 01, ***p<.001
3. 2. 4.上位群と下位群間での平均の差の検定(G‑
p分析)
アサーション尺度の総点において上位25%と下位25%
の範囲に含まれる各30名を選出しG‑P分析を行った.
その結果,全項目において有意な差が認められたので.
研究2のアサーション尺度は.アサーションの実行度を 測定する尺度として弁別力を備えたものであるといえ
る.
3.2.5.攻撃性との関係
研究2のアサーション尺度とY‑G攻撃性項目との相 関を調べたところ,関係形成因子ではr‑.34,説得交 渉因子ではr‑.38で, 16項目全体ではr‑.44のいずれ も有意な相関がみられた(p<.001).研究1に比べると 相関の値はやや低くなっており,筆者らの意図した方向 での結果が得られたといえる.
関係形成因子得点の高低と説得交渉国子得点の高低に より,被験者を4つのタイプに分けることができる.令 被験者をアサーション2国子それぞれのT一均値(関係形 成因子の平均値は27.89,説得交渉岡千の平均値は25.80) を基準に高群と低群に分け,関係形成高・説得交渉高群, 関係形成高・説得交渉低群,関係形成低・説得交渉高群, 関係形成低・説得交渉低群の4群を構成した.各群の人 数の内訳は高高群が48名,高低群が27名,低高群が17名, 低低群が29名であった.これら4群のY‑Gの攻撃性得 点について2 (関係形成高と低) ×2 (説得交渉高と低) の分散分析を行った.その結果.説得交渉因子の主効果 は5%水準で有意であったが(F‑27.88, d仁1′′′117㌦
関係形成因子については有意にはならなかった.これは 関係形成因子の高低に関わらず.説得交渉高群の方が説 得交渉低群よりも攻撃性得点が高いことを示している.
上記の相関係数では2つの因子の間ではあまり違いがな かったが,攻撃性は説得交渉因子とより関係が深いとい
える.
3.2.6.アサーションとシャイネスの関係
表4は研究2のアサーション尺度とシャイネス尺度の 相関を示したものである.アサーション尺度の関係形成 因子とシャイネス尺度の相関はr‑‑0.57,説得交渉国 (‑とシャイネス尺度の相関はr‑‑0.39であり,全体と
‑0.57*** ‑0.39*
‑0.60* ‑0.30*
‑0.37' ‑0.29**
‑0.27* ‑0.16JL&
‑0.40榊 ‑0.22♯
‑0. 18* ‑0.29*
シャイネス尺度との相関は, r‑‑0.59であった.全被 験者をアサーションの2因子の得点によって4群に分 汁,シャイネス尺度の得点について2 (関係形成高と 低) ×2 (説得交渉高と低)の分散分析を行った.その 結果,関係形成因子の主効果のみがO.r 水準で有意で あった(F‑4.91, di^l/117主 このことは説得交渉閃子 の高低に関わらず,関係形成高群の方が関係形成低群よ りもシャイネス得点が低かったことを示している.これ らの結果は,アサーションとシャイネスは相関があり, とりわけ関係形成因子との関係が深いことを示唆してい る.したがって,関係形成を主とするアサーション訓練 を行うことはシャイネスを減少させるのに役立つ可能性 がある.また,シャイネス訓練を行うことによって,関 係形成に関わるアサーションのスキルを促進することも できると考えられる.
3.2. 7.アサーションと公的自意識の関係
公的自意識との関係については,関係形成因子と公的 自意識との間ではr‑ となり有意ではなく,説得交 渉因子との間ではr‑‑.18となり5%水準で有意であっ
た.アサーション総点と公的自意識との間の相関はrニ i.15で5%水準で有意であった.これらの結果は,有 意とはいえ期待したよりも低い欄間であった.また,ど ちらかといえば公的自意識は説得交渉因子とわずかに関 係があるとみなされる.
4.総合的考察
研究2で作成した青年用アサーション尺度は高い信頼 性と妥当性を備えているといえる.研究1と研究2を比 較すると,研究1の尺度は1因子構造21項E]であったが, 研究2では関係形成因子8項目と説得交渉因子8項Llの
2国子16項目となった.研究1の尺度でも目的によって は使用に耐え得るが,研究2の尺度の方がより完成度が 高く,比較的独立な2因子から構成されているので,ア サーション訓練を行う場合などには多様な使い方ができ ると考えられる.長年にわたってアサーション訓練を行 っている平木(1993)のアサーション度チェックリスト (p.13‑14)は, 「自分から働きかける言動」と「人に対
青年用アサーション尺度の作成と信頼性および妥当性の検討 応する言動」からなる各10項目で構成されている.この
分類が研究2の因子分析によって得られた結果とほぼ対 応している点が興味深い.すなわち,関係形成因子は
「働きかける」ことに関係するものであり.説得交渉因 子は「対応する」ことに関係するものと考えることがで きるからである.ただし.これら2種確のアサーション を横並びのものと考えるべきか,縦並びもしくは段階的 なのものと考えるべきかについては実証を深めつつ議論 する必要があろう.一般論としては.関係形成がl弓}で きるようになった後に説得交渉ができる能力が習得され るのではないかと考えられる.この点に関連して,幼児 期からどのようにしてアサーションに関わる能力を形成 するかの国際比較を行った佐藤(2001)の研究は示唆に 富んでいる.
研究1の尺度では各項目について「できる」かどうか を問うているが,研究2では「する」かどうかを問うて いる.どちらの問い方もありうるが,後者の方が実際に そうしているかどうか,すなわち実行度をm走している
ことになる.アサーションの構造をどのように考えるか は研究者によって多様である.例えば,菅沼(1985)の アサーチイブ・チェックリストでは6因子(正当な権利 主張,自己信頼,自己開示.受容性,断わる力,対決)
になっている.
またLorr & More (1980)のPRIでは, 4因子(指導 性,対人的主張,自己権利擁護,独立性)である.当然 のことながら,これらの因子は構成されている項目によ
って異なるものであり,アサーションの定義とも関連す る.従来のものは.アサーション訓練などへの適用を考 えた場合,必ずしも適切な国子構成にはなっていないよ
うに思われる.研究2で作成した尺度は,筆者らが議論 し含意に達したところでは言責PI (1994)が従来の文献 を整理して導いたアサーションに関する6つの要因に閲 し.権利の防衛については他のものよりも多いが,その 他についてはバランスよく含んでいるとみなすことがで きる.すなわち,権利の防衛(項目番号1,3,4,8.9, ll.
14),要求の拒絶(6,16),異なる意見の表明(2,12,14), 個人的限界の表明15. 16上 他者に対する援助の要請
(5. 15上 他者に対する肯定的な感情と思考の表明(7.
10.13)である.
研究1では21項目全体とY‑G攻撃性項目との相関が r‑51であったのに対し.研究2では16項目全体と攻撃 性との相聞がr‑.44,関係形成国子項1‑日二の相関はr
‑.34,説得交渉国If項目との相関はr‑.38となった.こ のことから,本研究では.より攻撃性を含んでいないア サーション尺度に改良できたといえる.アサーションと 攻撃性との関係については,表現もしくは行動のレベル での違いであって,共通する葛藤的状況によって引き起 こされるものと考えられる.したがって,単に項目を作
229
成する上で攻撃性を除外するという発想をとる必要はな いのではなかろうか.たとえばY‑Gの攻撃性における
「正しいと思うことは人にかまわず実行する」 「甘Lの人 とも遠慮なく議論することがある」などアサーションの 動機としては必要なものである.研究2ではアサーショ
ン尺度2因子それぞれの平均値を基準にして高群と低群 に分け.それらの組み合わせで4群を構成し, Y‑Gの攻 撃性の得点について分散分析した結果,説得交渉の主効
果のみが有意であった.すなわち説得交渉の得点が高い 者ほど攻撃性が高いといえる.相手に対して自己の権利 を主張すべき場面や抗議すべき場面では.攻撃性が高い 者のほうがアサーションしやすいといえる.平木(1993) は,社会的スキルの発達段階にある青年期では,攻撃的 な表現を抑えるのではなく,発展段階として柔軟に対処 すべきであると述べている.このようなことも考慮すれ ば.ある程度の攻撃性は対人場面においてアサーション 行動を促進するものみなされる.
次に,アサーションとシャイネスの関係について考え る.研究2で用いたシャイネス尺度は,認知,感情,行 動の3つの側面を含むものであり,認知行動療法の枠組 みの中で訓練効果を査定するために周いられている(良 江・根珪・閲「十1999).シャイネスとアサーションと の相関は,関係形成国子との間でr‑‑.57,説得交渉因 子との間でJ・‑‑.39であった.先述したようにシャイネ スは社会不安の下位概念としてとらえられている.この ようなシャイネスは,関係形成得点の高低によって差が あり,対人的な関係の形成とより深い関係があるといえ る.アサーション尺度2国子の高低を組み合わせた4群の シャイネス得点について分散分析を行った結果,関係形 成の主効果が有意であった.すなわち関係形成得点が高 い群の方が.低い群よりもシャイネス得点が有意に低か った.つまり関係形成行動がよくできる人ほどシャイで はないということができる.逆にいうと,シャイな人ほ ど対人場面において.他者との関係を作っていくための アサーション行動ができにくいえる.研究2における2 因子の考え方については,アサーションにおける関係形 成と説得交渉を段階的なもの(縦並び)と考えるとシャ イな人は第1段階としての関係形成のレベルでアサーシ ョンができないのではなかろうか.アサーション訓練に よってシャイネスを減少させる試みや,逆にシャイネス 訓練によってアサーションを促進させる試みがなされて もよいといえる.また.本研究では.シャイネスにおけ る行動,感情.認知の各次元ごとにアサーションとの関 係を調べているが,行動(積極性)との相関が高く 行
‑‑.56),とりわけ関係形成因子においてその傾向が顕 著である r‑‑.60).訓練との関係でいえば.行動的 側面において訓練するのは,認知や感情に比べて取り糾 みやすい.シャイネスの行動尺度は「自分から進んで友
230
玉 瀬 耕 治・越 智 敏 洋・才 能 千 景・石 川 昌 代 達を作ることが多い」 「初めての場面でもすぐうちとけられる」などの項目であり,これらに関連する対人関係 訓練などがアサーションの能力を高めるのに有効である と考えられる.
最後に.アサーションと公的自意識との関係について 考察する.予想したほどアサーションと公的自意識との 間には強い相関関係は見られなかった,関係形成国子と の相関は有意ではなく,説得交渉田子との間でわずかに 有意な相関(r‑‑18)が認められたにすぎなかった.
公的自意識は他者を気にする傾向であり,日本人の 欄貨 的特徴であるが,これは母集団そのものの傾向であって.
本研究の結果は.個人差のレベルではあまf)[lllj者の問に 相関関係が見られないことを示すものと解釈される.
5.要 約
青年用アサーション尺度を作成するために,既存のア サーション尺度に含まれている112項目の中から27項目 を選んで予備尺度を作成し,大学生,短大生,専門学校 生.合計134名に実施した.同時にYIG性格検査の社会 適応性(攻撃性,協調性,主観性, SSRSのアサーショ ン尺度,およびセルフ・コントロール尺度を実施し,こ れらの尺度との関係を調べた.得られたデータをもとに, 不適切な項目を除外しながら因了分析を繰り返し, 1国 子21項目のアサーション尺度を構成した.この尺度はα 係数が.82であり, Y‑Gの攻撃性とはr‑.51, SSRSのア サーション尺度とはr‑65.改良型セルフ.コントロ二 ルとはr‑.39の相関があった(研究1).さらにこの尺 度を改良するため.いくつかの観点から項目を修正・補 充し.大学生121名に25項目からなる改訂尺度を実施し た.同時にYIG性格検査の攻撃性, SSRSのアサーショ ン尺度, wwsシャイネス尺圧,公的自意識尺度を実施 し.これらの尺度との関係を調べた.アサーション尺度 の不適切な項目を除外しながら.因子分析を繰り返し.
最終的に2国子16項目の尺度を構成した(研究2上 各 因子は8項目からなっており.それぞれを関係形成園子.
説得交渉因子と命名した.研究1に比べて田子の寄与率 はより高くなっている.また,各閃子のa係数は.7を上 回っており,再テスト法による相関係数はいずれもI・
‑.7に達していたので,信頼性があるといえる.このア サーション尺度とSSRSの相関はr‑.69であり,併存的 妥当性もあるといえる.また,アサーション尺度とシャ イネス尺度との相関はr‑‑.59であり.関連のある尺 度としては適度な相関である.アサーション尺度と公的 自意識尺度との相関はr‑‑.15であり.有意ではある が(5%水準)低かった.これらの結果から,本研究の 青年用アサーション尺度は信頼性と妥当性を有する尺度 であるといえる.また,関係形成因子と説得交渉因子と
いう2つの園子から構成されておi主 それぞれの因子に 即した訓練を行う際の訓練効果の測定などに利用しうる 尺度である.
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