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新自己像不満尺度の作成と信頼性・妥当性の検討

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Academic year: 2021

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日本認知・行動療法学会 第44回大会 一般演題 P2-70 436

-新自己像不満尺度の作成と信頼性・妥当性の検討

○富川 真衣1)、武部 匡也2)、栗林 千聡3)、佐藤 寛3) 1 )株式会社メディサイエンスプラニング、 2 )立正大学、 3 )関西学院大学 問題 摂食障害の予防において重要な概念の 1 つに自己像 不満がある。自己像不満は自らの体型に関する否定的 な評価のことであり,摂食障害のリスク要因である (Stice, 2001)。自己像不満は男性にも存在し,痩せ や筋肉に対する不満も多いという点で女性と異なる (Strother et al., 2012)。しかし近年,男性の理想 体型が女性と類似する痩身になりつつあるとの指摘も ある (浦上ら, 2015)。男性の自己像不満に焦点を当 てた研究は未だ少なく,その実態や摂食障害との関連 について検討する必要がある。 自 己 像 不 満 を 評 価 す る 指 標 と し て は E a t i n g Disorder Inventory (Garner et al., 1983) やBody Shape Questionnaire (Cooper et al., 1987) が代表 的である。松本ら(1999)はこれらを参考として自己 像不満尺度を作成している。しかし,いずれの尺度も 女性を対象に開発され,男性への有用性は明らかでな い。そこで本研究では,男女ともに使用可能な新自己 像不満尺度を作成し,その信頼性と妥当性を検討する ことを目的とする。 方法 予備調査 大学生79名を調査対象とした。自分の体 型で気になる部位を自由記述で,各部位が気になる理 由を 5 つの選択肢から回答するよう求めた。回答の多 かった 5 つの部位と,各部位で回答割合が20%を超え た理由を選定した。選定された部位と理由を含めた項 目案を作成し,専門家 3 名により内容的妥当性の確認 を行った。 調査対象者 大学生298名に回答を求め,欠損のな かった273名 (男性77名,女性196名,平均年齢20.02 歳, 標準偏差1.17歳) を分析対象とした。そのうち93 名 (男性22名,女性71名,平均年齢20.13歳, 標準偏 差1.00歳) に再検査を実施した。 調査手続き 2017年10月から11月にかけて実施し た。再検査は 1 回目の調査から 2 週間後に実施した。 調査材料 ( 1 )新自己像不満尺度暫定版 予備調査で作成した 9 項目と自己像不満尺度 (松本ら,1999) の体型全 体に関する 6 項目を暫定版として使用した。 ( 2 ) 日 本 語 版 B o d y I m a g e C o n c e r n I n v e n t o r y ( J -BICI:田中ら, 2011) 醜形恐怖症の症状であ る身体醜形懸念を測定する尺度である。本研究で は「容姿への否定的評価」の 6 項目を使用した。 ( 3 )Sociocultural Attitudes Towards Appearance

Questionnaire-4 (SATAQ-4)日本語版 (Yamamiya et al., 2016) 摂食障害に影響を及ぼす社会文化 的要因を測定する尺度である。本研究では「内面 化(痩身/体脂肪率の低さ)」の 5 項目を使用した。 ( 4 )Eating Disorder Diagnostic Inventory (EDDS) 日本語版 (Kuribayashi et al., 2018) 摂食障害 の診断及び症状の程度を測定する尺度であり,23 項目で構成されている。 倫理的配慮 調査実施にあたり,個人情報の保護と 匿名性の保証,回答は任意であることを口頭及び文書 で説明し,質問紙への回答をもって調査参加への同意 と見なした。 結果 因子構造 探索的因子分析 (最尤法,プロマックス回転) を 行ったところ,「身体全体および太さへの不満」「筋肉 の 少 な さ へ の 不 満 」 の 2 因 子15項 目 が 抽 出 さ れ た (Table 1)。確認的因子分析を行ったところ,モデル 適合度は十分な値が得られた (GFI = .909,AGFI = .854,CFI = .953,RMSEA = .083)。次に,男女によ る多母集団同時分析を行ったところ,モデル適合度は GFI = .867,AGFI = .787,CFI = .923,RMSEA = .069であった。十分な値ではないものの,男女ともに 使用できるという尺度の利点を考慮すると許容範囲の 値が得られた。因子間相関は男性でr = .13,女性でr = .63であった。 信頼性 各 因 子 と 尺 度 全 体 に お け る α 係 数 を 算 出 し た (Table 2)。第 1 因子と尺度全体,及び第 2 因子の男 性は十分な値であったが,第 2 因子の女性は.70に満 たなかった。次に,調査間におけるPearsonの積率相 関係数を算出した (Table 2)。第 1 因子と尺度全体, 及び第 2 因子の男性では強い正の相関が見られた。第 2 因子の女性はr = .63であった。 妥当性 新自己像不満尺度と各尺度との間で相関係数を算出 した (Table 2)。 J -BICI,EDDSとの間では中程度の 正の相関が見られた。SATAQ-4との間では男性で弱い 正の相関,女性で中程度の正の相関が見られた。

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日本認知・行動療法学会 第44回大会 一般演題 P2-70 437 -考察 本研究の目的は,男女ともに使用可能な新自己像不 満尺度を作成し,その信頼性と妥当性を検討すること であった。因子分析の結果,本尺度は 2 因子構造であ り,男女ともに同じ構造を持つ可能性が示唆された。 本研究で作成した項目は,摂食障害に関する研究業 績を持つ専門家により,内容的妥当性を有することが 確認された。 J -BICIは身体不満足感との間に中程度 の相関があることが示されている(田中, 2012)。本 尺度の結果はこれと一致し,併存的妥当性を有してい ると言える。SATAQ-4及びEDDSとの間では中程度の正 の相関が示された。痩身理想の内面化と摂食障害症状 は,身体像不満足感と正の相関を持つことが指摘され ている (Stice, 2001; 浦上ら, 2015)。本尺度の結果 はこれらと一致するものであり,構成概念妥当性を有 していると言える。 本研究により,自己像不満には筋肉に関する不満も 存在すること,男女ともに同じ測定指標を用いること が可能であることが示された。新自己像不満尺度は自 己像不満を従来よりも幅広く捉えることができ,男性 の自己像不満や性差の検討も可能とした点で意義があ る。本研究の限界としては,男性の調査対象者数が十 分でないこと,モデル適合度や第 2 因子の信頼性が十 分でないことが挙げられる。今後は第 2 因子の項目追 加や表現の修正を行い,より大きなサンプルでの検討 が必要であろう。 引用文献

Kuribayashi, C., Takebe, M., Ueda, S., Stice, E., & Sato, H. (2018). Development of Japanese version of Eating Disorder Diagnostic Scale - DSM-5 version and prevalence estimation of eating disorders in Japan based on DSM-5. The 52th Association for Behavioral and Cognitive Therapies.

松本 聴子・熊野 宏昭・坂野 雄二(1999). 女子学生 における摂食障害傾向とダイエット行動に対する社会 的影響の検討 行動療法研究, 25, 11-23.

Stice, E. (2001). A prospective test of the dual pathway model of bulimic pathology: Mediating effects of dieting and negative affect. Journal of Abnormal Psychology, 110, 124-135.

Strother, E., Lemberg, R., Stanford, S. C., & Turberville, D. (2012). Eating disorders in men: Underdiagnosed, undertreated and misunderstood. Eating Disorders: Journal of Treatment and Prevention, 20, 346-355.

田中 勝則 (2012). 大学生における身体不満足感と身 体醜形懸念 弘前大学教育学部紀要, 108, 131-139. 田中 勝則・有村 達之・田山 淳 (2011). 日本語版 Body Image Concern Inventoryの作成 心身医学, 51, 162-169.

浦上 涼子・小島 弥生・沢宮 容子 (2015). メディア の利用と痩身理想の内在化との関係 教育心理学研 究, 63, 309-322.

参照

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