金利リスクが金融機関に及ぼす影響について(資金利益の変動と金融機関経営)
安田嘉明
要 旨
1.資金運用収益と資金調達費用の差である資金利益は金融機関の利益の主要な部分 を占める。金利自由化は資金利益に大きな影響を与えており・金融機関の経営管理 上重要な問題となっている。
2.金利リスクの顕現化として
(1)資金運用・資金調達の金利変動のミスマッチによる利鞘の変動
(2)資金調達における市場性資金の増加による利鞘の縮小
(3)不確実性の増大
① 利鞘の変動予測に関する不確実性の増大
② 金利リスク軽減に関する不確実性の増大
があげられ各々についてリスク軽減のための対応が図られた。
3.規制金利時代には,金利リスクが「暗黙の契約」により借り手と貸し手の間で分 担されていたとすれば,現在行われている金利リスクへの対応は,明確な形でのリ
スク分担を目指すものである。
4.不確実性の軽減はプライムレートの変更水準,実施時期・プライムレートを目安 とした個別貸出の金利水準の決定という行動を通じて借り手と貸し手のリスクの適 正な配分を図るために重要な意味を持つ。
5.具体的な金利リスク軽減策として,金融機関では,組織体制,管理手法の改善,
プライムレート制度の見直し,連動型長期貸出金の増加が図られミスマッチ縮小,
利鞘の維持向上,利鞘の変動予測に関する不確実性の軽減に効果的であった0
しかしながらこれらが導入され定着するまでに(3)の②の不確実性が増加した0
6.金利リスクと信用リスクを考えた場合,実際に利鞘変動の拡大や利鞘縮小など金
利リスクが顕現化しなくても,それにかかわる不確実性の増大により過剰なリスク テークが行われる可能性があり,現在の信用リスク拡大のー要因と考えることがで
きる。
7.
今後のリスク管理においては,リスクの直接原因に対する対応に加えて,それに 付随する管理面,制度面での不確実性を可能な限り除去することが重要であり,安 定した金融システムを維持する上からも不可欠と思われる。
1
. は じ め に
金利自由化も
1993年(平成
5年)の定期預金金利の完全自由化,
1994年(平 成
6年)の流動性預金金利自由化によって最終局面を迎えようとしている。
金利自由化が進展するなかで,市中金利の変動が金融機関の利益,特に資金 利益に与える影響が大きくなり,いわゆる金利リスクが拡大した。このリス クに対応するため管理手法面では,金利変動特性による運用資金,調達資金 の分類,マチュリティーラダーの導入等が図られた。また組織面では,
A LM委員会を中心に新しい組織管理体制が設けられ,金融機関が金利自由化局 面に対応するための意識面での改革に一定の役割を果たした。
金利リスク管理手法として様々な手法が導入されたが,必ずしも有効に機 能していないのが現状である。その原因として,何れの管理手法においても 動態面でのアプローチが不十分であったことが指摘される。また動態管理を 行うにあたっての体制(管理面,制度面の整備)が不十分であったこともあ げられよう。金融自由化以来,金利リスク管理のために金融機関が進めてき たのは,動態管理を可能にするための管理面,制度面での対応であると言え
よう。
いま,金融機関にとって最も懸念されるのは信用リスクの問題である。リ
スクの転嫁という面から金利リスクと信用リスクの関係を考える場合,金利
リスクとは何なのか, リスクか顕現化する過程はどうなのかという基本的問
題に立ち返って,主として金融機関の行動面から,この問題についてアプロー チしていく必要があろう。
2
.金利リスクの概念
2‑1金融自由化と金利リスク
金融自由化により金融機関を巡るリスク,すなわち金融リスクが拡大して いる。
その主なものとして,信用リスク,金利リスク,価格変動リスク,流動性リ スク,経営リスク,システムリスク等があげられる。このうち金利リスクは,
「予期せざる金利変動によって金融機関の収益(フロー)ないし純資産価値 (ストック)が減少するリスク」)と考えられる。この観点から金利リスクは,
「所得リスク」と「投資リスク」の
2つに分類することができる。)さらに「所 得リスク」は,具体的には資金利益の変動と考えることができる。
金融自由化は一般的には,制度の自由化と金利の自由化とに分けられる。
このうち金利リスクに直接的に影響を与えているのが,金利の自由化である。
金利自由化が進むと,金利変動が資金利益に与える影響が大きくなる。その 影響として次の
2つが考えられる。
( 1 ) 資金運用・資金調達の金利変動のミスマッチによる利鞘の変動 資金利益は,資金調達業務から生じる利息を表す資金運用収益から,資金 調達業務から生じる利息を表す資金調達費用をヲ
Il.、たものである。
金利変動により運用利息額,調達利息額が変動し,その変動の度合いのミ スマッチにより資金利益が変動する。これがいわゆる「金利リスク」である。
資金利益は,ボリューム変動の影響を受けるため,資金運用利回りから資金 調達利回りをヲ│いた総資金粗利鞘(以下利鞘)を分析の対象とする。
(2)
資金調達における市場性資金の増加による利鞘の縮小
市場金利水準は同一期間の規制金利より通常高いので,調達における市場
性資金の増加により利鞘が縮小する。この場合,金利変動がなくても資金運 用,調達の構造変化により資金利益は変動するので,金利リスク本来の定義 には合致せず,金利リスクの対象外であるという考えも成り立つが(
2)は利鞘 の変動という面では,
(1)と同じ効果をもたらすものであり,両者を峻別しつ つも広い意味で金利リスクの顕現化と促える事が,少なくとも資金利益,利 鞘の面から金利リスクの分析を行う際には必要と考えられる。
2 ‑2
金利リスクと資金利益
資金運用収益は,貸出金利息,有価証券利息配当金,コールローン利息等 からなり,経常収益に含まれ,その主要な部分を占める。一方資金調達費用 は預金利息,譲渡性預金利息,コールマネー利息等からなり経常費用に含ま れる。資金利益は,経常収益と経常費用の差である経常利益に含まれる。(資 料 1参照)
近年,フィービジネスの強化やキャピタルゲインを狙った有価証券運用の 拡大,国際部門への進出が進んだが,その背景として金利自由化による利鞘 の低下,即ち金利リスクの増大が考えられる。金利リスクを管理する上で,
資金利益の変動要因,動向を分析することが必要となる。
2 ‑3 金利リスクの発生メカニズム
金利の自由化以前においても,運用・調達の期間ミスマッチによる金利リ スクは存在したが,金利自由化後は,期間のミスマッチに加えて金利変動特 性のミスマッチが拡大した。
金利の自由化は,調達サイドの,その中でも預金の金利自由化と見なすこ とができる。日米円ドル委員会を契機に,調達サイド(預金)の金利の自由 化は一定のスケジュールに従って確実に進行したが,運用面特に貸出金の金 利自由化が遅れた。
このように調達サイドの金利自由化が運用サイドに比べて先行したことが,
金利リスク増大の主要因と考えることができる。
金利変動特性のミスマッチによる金利リスクの特徴として,金利上昇期に
おいては,調達側金利が市場金利の上昇の影響を受けてまず上昇し,運用側 の金利は調達側に比べて遅れて上昇する。その結果,利鞘は低下傾向となる。
金利低下局面では,調達側の金利低下,次に運用側の金利低下となるので利 鞘上昇傾向となる。また市場性資金は,規制金利より同一期間では一般的に 高金利である場合が多いので,金利自由化により利鞘は低下傾向となる。
3
.金利リスクの認知
3‑1金利リスクの現象面の認知
リスク管理の要諦は,リスクの分散,ヘッジ,制限,相互牽制にあるとい われている。しかしその大前提となるのが,リスクの認知である。金利リス ク管理においてもそれをどのように認知するかによって管理の内容が大きく 違ってくる。金利リスクを認知(計測)するため様々な方法が試みられてき た。その代表的な例として次の
3つをあげることがでこる。
(1 )
金利感応度分析,マチュリティーラダ一法
(2)デュレーション・ギャップ法
(3)
計量モデル法
これらの方法はいずれも,金利変動に伴う運用・調達資金の構成変化等の 動態的な要素が,考慮されておらずまたその事が,金利リスク管理手法とし て普及する最大の妨げになっていると考えられる。資金利益変動における動 態的な要素はシミュレーションに盛り込まれている。即ちシミュレーション においては,現在保有している運用,調達資金が,将来の金利変動によって,
それぞれの資金構成,金利水準がどのように変化するかを予想するものであ
り,その予想の過程において動態的な要素が明らかにされるのである。以下
では最初にシミュレーションの概括的な仕組みを述べ,次にそれをもとに金
利リスクが金融機関に与える影響について述べる。
3 ‑2 金利リスク基本要因
運用・調達資金の金利に直接影響を与えているものは,公定歩合,規制金 利,市場金利,長期プライムレート,短期プライムレートの金利水準である。
これらは,個別取引の金利を決定するに当たって基準となるもので金利変動 特性の指標となる金利である。(以下指標金利)個別金利の適用の際に規制 金利のように指標金利そのものが適用される場合もあるが,他の市場利金,
長期プライム,短期プライムの水準は個別の金利水準を決定する際の目安な るものである。指標金利が一定幅変動した場合,個別取引の金利変動特性に よって変動幅が異なってくる。その変動のメカニズムを明らかにすることが 金利リスク管理において重要である。
個別取引の金利(利息額)が決定される当たって次のものが要因となる。
元本額
契約期間(契約開始日,契約終了日) 当初約定金利(年利率)
金利更改条件
(指標金利の属性,金利更改の有無,金利更改時期,金利更改周期,
金利更改幅)
個別取引の利息支払総額=元本額×年利率×契約期間
/365である。
運用,調達資金は元本額,年利率,契約期間に応じて利息が支払われる(ま たは受け取られる)指標金利の変動がなければ,利息額は一定である。もし 指標金利が変動すれば,金利更改条件に基づいて,個別取引の金利は更改さ れる。普通銀行の金融商品で契約中途で金利更改に関する取り決めがあるの は,貸出金である。通常貸出金は,長期プライム,短期プライムの変動後,
直近の利払い期において金利が更改される。定期預金等は現状,中途で金利
は変動しない。運用資金,調達資金は,このような性質を持つ個別取引の集
合体である。指標金利の変動により個別取引の金利(または利息額)が変動 し,その結果,運用資金,調達資金全体の金利が変動する。すなわち,金融
・経済環境の変化→指標金利の変動→個別取引の金利変動→運用資金,調達 資金全体の金利変動→利鞘の変動というプロセスを経て金利リスクが顕現化 すると考えられる。
運用の個別取引の金利変動 調達の個別取引の金利変動
運 用 全 体 の 金 利 変 動 調 達 全 体 の 金 利 変 動
L
・ ・ ・ ・ ー ー ー ー ー ー ー ー ー ー ー ー ‑ ー ・ ・ ・ ー ー ー
‑ T ‑ー ー ー ー ー ー ー ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ー ー ー ー ー ー ー ‑ "
利 鞘 変 動
金融機関においては金利変動要因が異なる取引が多数存在するが,運用,
調達のそれぞれについて平残,平均金利,利息額が算出され全体の資金利益,
利鞘が確定する。
B/Sは特定日(月末,期末)の資産・負債の残高が集計
されたものであり,
P/Lは一定期間の収益・費用が計上されたものである
が,資金利益に関しては,平均残高,平均金利,利息額の関係から残高と利
益を統一的に管理することができる。金利リスクの認知に関しでも,資金利
益管理との整合性の点からも,このような管理方法が必要である。
運 用
調 達
O x
O ×
O ×
O
調達個別取引
×
運用個別取引
OO
×
×
1
3fZ ~I│利息額│ 巨亙 │平均金利
I I利 息 額 │
│資金利益│一一
く平残〉
平残は一定期間における日々の残高の平均値である。
即ち 平均残高= (日々の残高の合計)/一定期間日数
こ の 時 平 均 残 高 = {(個別取引額元本額×個別取引の当該日数)}の合計/
一定期間日数(個別取引の当該日数とは,一定期間内にその取引が存在する 日数を指す。)
く平均金利〉
平均利回り=期間中の総利息額/(平残×一定期間日数) x
36500(期間中の総利息額は,発生主義による補正後)
この時
平均利回り=平均金利= {(当日残高×当日金利)の合計}/当日残高の合 計…
(B)(但し金利は年利率で単位%)
収益管理においては,目標平残額を基準にして管理される。したがってシ ミュレーションにおいてもその平残額が基準とされる場合が多い。一定期間 内の運用資金,調達資金は期日到来によりその額が減少する一方,目標平残 を達成するために新規の取り込みが行われることとなる。その結果,一定期 間の平均金利が確定する。一定期間における期落ち分と未期落ち分は,期間 が開始される直前の運用資金,調達資金の契約終了日から計算可能である。
(但し中途解約要因による補正が必要となる)一方新規に関しては,取り込 み額,金利水準は予測せざるえないが,直前の運用資金・調達資金の内容に 大きく影響をうける。したがって一定期間における金利変動は,その直前の 基準となる運用資金,調達資金の金利変動要因に影響されることとなり,一 定期間における金利変動の影響を見るためには,基準となる運用資金,調達 資金を金利変動要因別に分類しそれに基づいて分析する事が必要となる。
契約期間(契約開始日,契約終了日)については,一定期間のスタート日 とエンド日の関係において次の
4つに分類でき,それぞれの場合について個 別取引の一定期間内に存在する日数が計算される。一定期間のスタート日を
S,エンド日を
E,個別取引の契約開始日を
s,契約終了日を
e,個別取引 の,一定期間における存在日数を
Tとする。但し,契約終了日は,計算から 除く。(片落ち計算)
(1 )
期間の当初において取引が既に開始され,期間中期日が到来しない時
S~s かっ e>E の時 T=E‑S+l
(2)
期間の当初において取引が既に開始され,期間中期日が到来する時
S~三 S かつ e 豆 E の時 T=e‑S
(3)
期間中に取引が開始され期間の終了時点でも取引きが継続している時
SくSかつ
e>Eの時
T=E‑s+l( 4)
期間中に取引が開始され期間中に期日が到来する時
SくSかつ
e豆
Eの時
T=e‑s一定期間のスタート日
Sにおいて既に取引が開始されているものをストッ
ク取引,その後に取引が開始されるものをフロー取引と呼ぶと,
(1),
(2)は期 間中におけるストック取引,
(3),
(4)はフロー取引と捉える事ができる。
スタート日
Sく契約期間の
4パターン〉
(一定期間) エンド日
E 0‑一 一 ‑ ‑ ‑ ‑ ‑ ‑ ‑ ‑ ‑ ‑ ‑ ー ー ー ー ー ・ ・ ー ー ー ー ‑ ‑ ‑ ‑ ‑ ‑ ‑ ー ー ー ・ ー ー ー ー ー ー ー ・ ・ ・ ・ ー ー ー ー ・ ・ ・ ・ ・ ・ ー ー ー 司 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ー ー ー ー ・ ・ ・ ・ ー ー ー ー ・ ・ ・ ・ ・
x (1)0‑‑‑‑‑‑‑
一 ‑ ‑ ‑ ‑ ‑ ‑ ‑ ‑ ‑ ‑ ‑ ‑ ‑ ‑ ̲ . ‑ ‑ ‑ ‑ ‑ ‑ ‑ ‑ 一 ー ー
X (2)O
一一一一一一一一‑̲.‑‑‑‑‑一一一‑‑‑‑‑‑‑‑‑‑‑‑‑‑‑‑‑一一一一一一一一一一一一一
X (3)O
一一一一一一一一一一
X (4)。は取引の開始日
(8),
Xは取引の終了日
(e),を示す。
個別取引は
Tによりそれぞれの平残を求められ元本額,契約期間という
2つの金利変動要因をシミュレーションに盛り込むことができる。
次に金利更改条件のうち指標金利の属性に関して次のように分類すること が出来る。
〈 ア ) 公定歩合に連動するもの
μ)規制金利に連動するもの ( ウ ) 市場金利に連動するもの
ω
長期プライムレートに連動するもの (対短期プライムレートに連動するもの
次の金利更改の有無に関しては,次のように分類することができる。
(A)
期限前に金利が更改されないもの
(B)期限前に金利更改されるもの
( c ) 期限前に金利更改される可能性のあるもの
(B)
について金利更改の方法等が明確にされているが, ( c ) については,その
時期,方法等が不明確であり,更改の可能性があるものとして捉えることと
なる。
3‑3
個別取引の金利変動の基本的プロセス
個別取引の金利変動の基本的プロセスは次のように考えられる。
金融経済環境の変化→指標金利の変動→金利更改条件による個別取引の金 利変動
指標金利の変動については,その変動時期と変動幅が問題となる。
まず指標金利の変動時期と個別取引への影響の関係は前述の契約期間の
4分類をもとに見る事ができる。但し,個別取引について期限前の金利更改が 常にあるものとする。
スタート日
Sく指標金利の変動と個別取引の関係〉
(一定期間) エンド日 E
O 一一一一‑‑‑帽ーー・・・・・ーーー・‑‑‑‑‑‑‑‑‑‑‑‑‑‑‑‑‑‑‑‑ーーーー・・司‑‑‑‑‑‑‑ー‑‑‑‑‑ーー‑‑‑‑‑‑‑‑‑‑‑‑‑‑‑‑‑‑X (1)
0‑‑‑‑一一一一ー一一‑‑一一一一一一一一‑‑‑‑‑‑X (2)
0‑一一一一一‑‑‑‑‑‑‑‑ー一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一 X (3)
O 一一一一一‑‑‑‑‑‑‑‑‑一一 X (4)
a b c
‑‑‑‑0‑‑ーー・・・ーーー・・・ーーー・‑‑‑‑・o・‑‑‑ーー・・・・ー‑‑・‑一一ー・・ーーー・・・・ーーー・・‑‑‑‑‑‑‑‑ー・・ー口
Oは取引の開始日(s),Xは取引の終了日(e),口は指標金利の変動日付)を示す。
個別取引は,その取引開始目前に指標金利が変動した場合,更改後の水準 に基づいて新規金利が適用される。また取引開始後に指標金利が変動した場 合,指標金利更改後の個別取引の金利期日に,金利が更改されるかまたは更 改される可能性がある。
例えば
a,b,
c各々の時点での金利更改は
aの場合
(SくT豆
(3)の
sJストック部分は,指標金利の変動後の金利更改日に金利更改されるか,金 利更改される可能性がある。フロ一部分は,指標金利更改後の水準に基づい て金利が適用される。
b
の場合((
4)の
SくTく(2)の
eJストック部分も,フロ一部分も指標金利の変動後の金利更改日に金利更改 されるか,金利更改される可能性がある。
C
の場合
(EくTJ一定期間において,指標金利の影響を受けない。
次に指標金利の変動幅に対して個別の金利がどの程度追随するかをみなけ ればならない。規制金利については,期間毎の適用金利が確定しているので,
期間別の残高構成を把握できれば容易に管理することができる。一方,市場 金利,長期プライムレート,短期プライムレートを指標金利とするものにつ いては,指標金利の変動幅に対して個別取引の変動幅は一定ではない。その 金利決定にあたっては,それらの指標金利を基準として,期間要因,地域的 要因,顧客の取引内容等を元に総合的に判断される。前もって金利変動幅が 約定によって決められている場合は問題ないが,そうでない場合は,過去の データを参考に予想値(追随率)を用いることとなる。その場合,金融・経 済環境の変化が大きい場合必ずしも過去のデータを用いることが適当でない 場合も考えられる。
個別取引について上記の内容で日々の金利変動の影響が把握でき日々の残 高・金利が確定すれば,一定期間の平均残高,平均利回りが確定する。すな わち期間中の平均残高は日々の残高の平均であり,平均金利は日々の金利の 残高による加重平均となる。
個別の取引について上記のようなシミュレーションを行うことは、最も正
確であるが取引の件数が膨大な場合,ホストコンビューターを使った,おお
がかりな計算が必要であり,前提条件を変えて頻繁に行うことは難しい。そ
こでより簡便的な方法が要求される。即ちそれは,一定期間をさらに細分化
し(例えば月次)その細分化された期間の最初の日に指標金利の変動があっ
たと見なすものである。月次の総期落ち額,総新規額について月次平残を求
めることにより,月中の各自に分散する期落ち,新規取引を全て期間のスター
ト日に起こった取引として取り扱うことができる。また指標金利の変動が月
初に起こると仮定すれば月次の平均金利が簡便な式で計算することができ る 。
期間を,細分化するに当って,月次より旬次さらに日次と短縮化する方が,
計算上の精度は増すわけであるが,それぞれのコストと算出結果を比較検討 しまた対象期間の長さも考慮してどの方法が最も適切であるかを判断しな ければならない。
3‑4
シミュレーションの基本式
まず基準となる月末の運用・調達資金について金利変動要因によって分類 する。
契約終了日から月次ごとの期落ち額,金利が算出される。貸出金について は一括して返済・解約されるものと,分割して返済・解約されるものがある が後者については分割返済額をもって期落ち額とみなすことができる。預金 の中で新型期目指定定期預金は 1年経過後,一部または全額解約可能である ので,過去のデータから中途解約率を算出し補正する必要がある。シミュレー ションは月次単位で試算するので,半期のシミュレーションを行う場合 ヵ月単位で
6回行うこととなる。各月の平残は目標値として既知である。月 次毎の期落ち額・金利は直近の月末を基準として算出される。
新規額は平残目標値と期落ち額から逆算される。新規額の金利は,期間毎 の予想金利の加重平均によって計算される。新規について対象期間内に期落 ちがある場合は,直近の月末値にもとづく各月の期落ちに追加される。対象 期間の直近の月末残高・金利と期落ち額・期落ち金利が既知で各月の平残目 標が与えられている時,月次の平均金利は月次の新規金利を変数として計算
される。
以上までの資金の流れを示すと次のようになる。
まず月次単位で期落ちの影響をみる。個別の期落ちは月内の各日に分散し
ている。月初に期落ちしたものと月末に期落ちしたものでは,額が同一であ
っても月中平残に与える影響は異なる。その影響を見るためには,期落ち額
く期落ち,新規のフロー図〉
新 規
↓
基準月末 1ヵ月目
と期落ち日から期落ちの月中平残を算出する必要がある。その平残額を月初 から期落ちしたもの捉えることができる。
期落ち全体の平残は,個別の期落ち額と期落ち日から次のように算出され る 。
期落ち全体の平残= {個別期落ち額
x(月日数一個別期落ち日+1 ) の合計}/月日数
また
個別の期落ち額の金利=個別の期落ち平残の金利であるので,期落ち全体 の月中平均金利は期落ち平残と期落ち金利の加重平均となる。
期落ち全体の平均金利=
(個別の期落ち月中平残×個別期落ち額金利)の合計 期落ち全体の平残
次に期落ち後の月中平均残高,月中平均金利について見てみる。
期落ち後月中平残=前月末残一期落ち平残
期落ち後月中平均金利= (前月末残×同金利一期落ち平残×同金利)/ ( 前 月末残一期落ち平残)
(説明)
直近月末残高を
G.同金利を
R.期落平残額を
K.同金利を
Rkとすると 期落ち後月中平残
=G‑K期落ち後月中平均金利
(GxR‑KxRk)/ (G‑K)期落ち前残高
G期落ち前金利 R
期落ち平残額 K 同金利
Rk→
E期落ち後月中平均残高
G‑K期落ち後月中平均金利
(G x R ‑K x R k) / (G ‑K)
月初に期落ちが起き,期落ち後の残高は
G‑K.金利は
(GxR‑KxR k) / (G‑K)となる。以後残高金利とも不変であるので,それが期落ち 後月中平均残高,期落ち後月中平均金利となる。
新規についても同様のことが成り立つので,ここで新規平残を
S.同金利 を
Rsとすると月中平残
=G‑K+S月中平均金利
(GxR‑KxRk+SxRs)/ (G‑K+S)また元本は変動せず金利だけが更改されるものの平残,更改前平均金利,
更改幅(貸出金等)を
F. Rf . r とすると 月中平残
=G‑K+S月中平均金利
={(GxR‑KxRk+SxRs‑FxRf+Fx (Rf+r)}/(G
‑K+S)
(GxR‑KxRk+SxRs+Fx r) / (G‑K+S)
(いずれも指標金利の更改は月初に起こるものとする。)
3 ‑5
シミュレーションの運用
実際のシミュレーションでは月中平残が目標値となるので,
sが逆算され る 。
また
Rsは,予想金利である。新規の金利水準を予想するにあたってまず 契約期間が問題となる。契約期間はその新規取引が期落ちの継続であるか,
純然たる新規であるか,また今後の金利水準(上昇か,低下か)が影響を与 える。期間構成の予想がされたあと,指標金利への追髄率が計算されなけれ ばならない。規制金利では,指標金利の水準がそのまま適用されるので期間 構成の予想が可能であれば,新規全体の金利は直ちに予想される。しかしな がら市場金利,長期プライムレート,短期プライムレート等の指標金利は金 利決定にあたっての目安,または基準となるものであり,予想を行う場合,
過去のデータが参考にされる(回帰分析等)その際,個別の主要な要因別(地 域別,規模別等)に過去のデータが整備されそれをもとに予想を行う方が精 度が増すことはいうまでもない。もちろんデータの対象として金利自由化以 前の規制金利時代は適当ではなく,金利自由化が進展中であることを考えれ ばより直近のデータが参考にされるべきである。
このように今後の期落ちゃ過去の新規の状況を把握すること,すなわちフ ロー分析を行う事は,金利リスクを認知するにあたって不可欠である。規制 金利時代においては,末残管理が主体であったものが,平残管理,フロー分 析と管理方法が深化してきた。この背景には,金利変動の影響をより的確に 把握しようとすることがあると言えよう。
次に元本が変動せずに金利だけが更改される(契約終了前に金利が更改さ れる)
Fについて考えると,普通銀行の運用資金・調達資金の中で上記に該 当するものとして貸出金があげられる。貸出金のうち固定金利貸出は中途で 金利更改されないが,それ以外の貸出金は指標金利である長期プライムレー ト,短期プライムレートが更改された場合,金利が更改される可能性がある。
可能性があるということは,言い替えれば,金利更改条件が確定でなく唆昧
なものも含まれるということである。
3‑6
金利リスク管理とシミュレーション
資金利益シミュレーションを行うことは,金利リスク認知・分析にとって 有効である。シミュレーションは将来の一定期間の金利変動を予測するもの であり,それは静態的要素と動態的要素からなる。静態的要素と動態的要素 は,それぞれシミュレーションにおける確定部分と予測部分と考えることが できる。
(1 )確定部分
基準となる時点での運用資金,調達資金の金利決定の基本要 因
但し,全てが確定しているわけでなく,一部は中途解約,期限前償還に より契約期間が短縮される場合があり,金利更改条件も変更される可能性 がある。それらは,金利変動(指標金利の変動)と密接な関係を持つ。
(2)
予 測部 分金 融 経 済環境 の 変 化指 標 金利 の 変 動 新 規 の 金 利 決 定 基 本 要因
どのような金利決定基本要因(元本額,契約期間,金利,金利更改条件) を持つ新規が,取り込まれるかは,指標金利の水準及び今後の変動予想が 大きく影響する一方,確定部分からも大きな影響を受ける。(例えば,新 規,継続取引の別)
金利自由化により,資金利益変動の予測部分に関して不確実性が増大する と考えられる。
金利自由化とは前にも述べたように,その主たるものは預金金利の自由化で ある。預金金利自由化は,自由金利商品の契約期間の拡大,最低預入金額の 引き下げを段階的に行うことによって進められた。(資料
2参照)この結果,
調達側では,市場金利を指標金利とする調達資金の増加と,契約期間の短縮 化が進み運用側とのミスマッチが拡大した。
不確実性の増大については,調達側で言えば金利状況による中途解約の可能
性が増すことや,新規についても商品の選択枝が広がったことがあげられ,
シミュレーション
lく確定部分(静態部分))
+く予測部分(動態部分)) 基準時点での金利決定基本要因
j
元本額 :契約期間
i当初約定金利
;金利更改条件
一部に契約期間の短縮,
金利更改条件の変更の 可能性→予測部分へ
(取引毎の個別要因) 顧客との取引内容 商品特性
地域特性
新規,継続取引の別
新規の金利決定基本要因
j
元本額 :契約期間
i当初約定金利
i金利更改条件
(影響)
金融・経済環境の変化 指標金利の変動
かつ規制金利と比べてはるかに変動の度合いが大きい市場金利動向が直接的 に影響を与えるようになったことが原因としてあげられよう。それは金利決 定の基本要因の変動を予測することが,従来(規制金利時代)より困難とな ってきたことを意味するものである。しかしさらに重要な事は,金利リスク の軽減に関して,その方法,導入時期,定着までの期間に関して不確実性が 生じたことである。
以上をまとめると,金利自由化による金利リスクの顕現化として
( 1 ) 資金運用・資金調達の金利変動のミスマッチによる利鞘の変動
(2)資金調達における市場性資金の増加による利鞘の縮小
に加えて
(3)
不確実性の増大 が挙げられ,さらに(
3) は
① 利鞘の変動予測に関する不確実性の増大
② 金利リスク軽減に関する不確実性の増大 に分けられる。
①について管理面からは,金利自由化局面におけるデータ蓄積の不足,予 測手法の未発達及びそれらをサポートするシステム面,管理組織の未整備等 が挙げられる。
制度面では,金利更改条件の不明確な貸出金の存在が指摘される。貸出金 の金利更改について,約定書ひな型三条は,利息,割引等の利率を銀行側が 一方的に変更しうるものとしている。即ち「金融情勢の変化その他相当の事 由がある場合に
Jr一般に行われる程度のものに」ということを条件として,
契約途中での金利変更を可能としている。貸出金の金利更改条件が不明確と いわれるものは,これを根拠として金利改更が行われるもので,実際に金利 変更を行う場合,変更時期,変更幅について貸出先との交渉が必要であり,
更改までの時間にパラつきが生じやすい。したがって短いタームで、見た場合,
金利更改を予想するにあたってかなりの不確実性が見込まれる。調達サイド が市場金利の影響により従来より短期間に変動する場合,運用サイドも管理 対象期間の短縮化が求められ結果として不確実性が増大する。
②については,具体的な金利リスク軽減策を見ることにより,何故不確実 性が増大したかを述べる。
4.金利リスク軽減に関する不確実性の増大
4‑1
金利リスク軽減策の概要
次に具体的な金利リスク軽減策について述べる。
金利リスクの影響として次の 3つがあげられることは既に述べた通りであ る 。
(1 )
運用・調達の金利変動のミスマッチによる利鞘の変動幅拡大
(2)調達における市場性資金の増加による利鞘の縮小
(3)
不確実性の増大
① 利鞘の変動予測に関する不確実性の増大
② 金利リスク軽減に関する不確実性の増大
言い替えれば金利リスク軽減策として次の事柄が求められる。
(1 ) ミスマッチ軽減 (2)
利鞘の適正化
(3)不確実性の減少
①利鞘の変動予測に関する不確実性の減少
②金利リスク軽減に関する不確実性の減少
それぞれについてどのような金利リスク軽減策がとられたか述べる。
4‑2
ミスマヴチ軽減策
金利変動のミスマッチは,金利決定の基本要因のミスマッチに置き換える 事ができる。金利自由化により,最もミスマッチが顕著に表われたのは,指 標金利の変更時期のミスマッチである。資金利益のうち最も大きな比重を占 める預貸金について考えると,規制金利時代は公定歩合の変動をキーとして 規制預金金利が変更され,短期貸出金の標準金利である短期プライムレート も同様に公定歩合の変更に合わせて変更されたので変更時期に関して大きな ミスマッチは生じなかった。金利自由化の進展により調達側で指標金利が市 場金利のものが一方的に拡大したため,ミスマッチが拡大した。この対応と して調達側の金利自由化が不可避であるので,ミスマッチの軽減のためには,
運用側の指標金利である短期プライムレートの市場金利に対する連動性を高
めることが必要となる。その具体的施策として,プライムレート決定方法の
見直しゃ,その短期プライムレートを基準とした長期プライムレートの導入
が図られた。
次の問題となるのは,契約期間のミスマッチである。従来から運用,調達 における契約期間の長短ミスマッチは存在し,それが資金利益の源ともなっ ていた。市場性資金の増加により,調達サイドの契約期間の短縮化がさらに 加速された。この対応として,運用側の契約期間を調達側に合わせるか,短 縮化することが考えられる。前者の対応としてスプレッド融資があげられる。
後者への対応として,短期貸出金の増加を行った場合,期間スプレッドが減 少することとなる。そこで契約期間は長くとって金利更改周期の短縮化(調 達側の契約期間に近づける)によって実質的に契約期間のミスマッチ減少を 図ることが進められた。具体的には,手形貸付における手形書換期日の短縮 化,長期貸出金における割賦期間の短縮化である。
4‑3
利鞘の適正化
この対応として調達側の金利上昇幅を抑えるか,運用側の金利を引き上げ ることが考えられる。前者の対応として,規制金利預金の取り込み(特に流 動性)を図る事が主要な施策としてあげられるが,金利自由化が進展する中 でその施策に一定の限界があることは否定できない。
一方,運用側の金利水準引き上げの施策として長期貸出金が推進された。
貸出金における長短の区分は明確でないが,通常期間 1年 未 満 を 短 期 年 以上を長期とし,長期の中でも期間 3 ‑ ‑ ‑ ‑ ‑ 5年を中期という場合が多い。長短 金利の変動や格差を説明する場合,債券の金利については,期待理論,流動 性プレミアム説等が有力な説となっている。貸出金金利は,債券のように市 場で金利が決定されるわけでなく,個別相対で決定される。
いずれにしても貸出金利はプライムレートを目安として,借り手の個別要
因(取引内容),貸出金の種類(担保,期間等),貸し手の個別要因(調達構
造等)を総合的に判断して決定される。言い替えれば,貸出金金利は決定要
因を特定することが難しいといえる。貸出金金利の長短各差についても,そ
れを明確にすることは難しいが,一般的に言われていることは,期間が長い
方が回収不能になる可能性が大きいため,その危険に対するプレミアムによ り長期貸出金利は短期貸出金利より高くなるという考えである。また貸出金 は期限前返済を求めることが難しいので,借り手にとって「期限の利益
Jが あり,そのプレミアム分が金利に反映されると考えられている。長期貸出金 は,このように短期貸出金により高い水準で貸出を行うことが,一般的には 可能と考えられるので,運用金利引き上げの主要施策となった。
4‑4
不確実性の減少
(1 )
利鞘の変動予測に関する不確実性の減少
この対応として不確実性をもたらしている要因とその影響を常に把握し,
それらを出来るだけ取り除くことが必要である。その対応として管理面と制 度面に分けて考えることができる。管理面では,金利変動要因について様々 な角度からのデーターを整備し予想と実積の差異を分析することが重要であ る。逆に言えば,様々な角度からの分析が適宜できなければ,不確実性が解 消されないことになり,この点からも金利リスク管理においてシステムパッ クアップ体制の強化が必要とされる。制度面での不確実性をもたらしている 諸要因の中では,貸出金における金利更改条件の不明確さが挙げられるが,
金利変更に関する特約書の徴求等により解消が可能である。
(2)
金利リスク軽減に関する不確実性の減少
以上述べた通り金利リスク軽減策の主体は貸出金における施策であり,具 体的にはプライムレート決定方法の見直し,運動型長期貸出金の増加,金利 更改周期の短縮化である。
ここで貸出金利の決定メカニズムに関して,従来の論議を整理すると
(1) r制度的」貸出金利決定理論
制度的,外生的な金利体系の影響を強く受けて決定される。
(2)
広義の貸出条件による調整
貸出市場においては金利条件ではなく,貸出期間や担保率等を含んだ広義
の貸出条件によって均衡がもたらされる。
(3) r
暗黙の契約」理論
暗黙のうちに銀行と借り手の間で金利リスクを分担しておりそれが貸出金 利における硬直性の原因となっているとしている。
(4) r
期待の均衡
J仮説 等があげられる。
貸出金利の決定に関して,金利リスクに注目すれば,規制金利時代には(
3)の「暗黙の契約」によりリスクが分担されていたものが,より明確な形でリ スクが分担される形に変化してきたといえよう。そして,その明確性(確実 性)はプライムレートの変更水準,実施時期,プライムレートを目安とした 個別貸出の金利水準の決定という行動を通じて借り手と貸し手のリスクの適 正な配分を図るために必須とも言えるものである。但し,これらの施策と平 行して,貸し手側においてコストの低減,オフバランス取引によるリスクヘ ッジ,資金利益以外の収益拡大等が行われる事は言うまでもない。しかしな がら現実には,これらのリスク軽減策について,その導入時期と定着化につ いては,大きな不確実性が存在した。次にその原因と,それがもたらした影 響についてのべる。
5. リスク軽減策導入に関する不確実性の増大 5‑1
金利自由化と不確実性の増大
金利自由化による不確実性の影響のプロセスを次のようにとらえる。
金利自由化は,
1979年の
N C Dに導入によりスター卜したが,本格的な進 展は
1985年の大口定期預金の導入以降と考えられる。
1985年から現在まで,
年次ごとに金利自由化の影響を運用,調達,金利経済環境の
3点から概括的 にとらえる。
運用(貸出金)
1981
年
3月 短期プライムレートの水準
公定歩合の上乗せ金利
0.25%から
0.5%へ変更 1989年
1月 新短期プライムレート導入
1991年
4月 新長期プライムレート導入
調達(預金)
1985
年 大口定期預金金利の自由化(最低預入金額
10億円でスタート) 以後,金利自由化は預入期間の拡大,最低預入金額の引き下げという形 で進んだ。
1989
年大口定期預金の最低預入限度の引き下げ進む
(4月 3千万円→ 2千万円
10月 2千万円→
l千万円)
1991年大口定期預金の最低預入限度(1
1月
l千万円→
3百万円)
金融経済環境
1985
年
'"'‑'1987年
(金利低下局面における金利自由化の進展)
金利自由化による限界部分の利鞘の縮小が金利低下によるプラス要因で 一部相殺され金利リスクは極端に顕現化しなかった。
1988
年
'"'‑'1990年
(金利上昇局面における金利自由化の急進展)
金利は
1988年半ばからジリ高となり,
1989年から本格的上昇に向かった。
特に
1989年(平成元年)は金利自由化の急進展と金利上昇が重なり金利
リスクの顕現化は拡大した。その後
1990年後半に金利上昇はピークを迎
えた。
1991
年
‑‑‑...‑1992年
(金利は再び低下局面へ)
景気低迷を背景に
1991年
‑‑‑...‑1992年金利低下傾向となった。
(資料 3参照)
預金金利自由化により,貸出金,特に短期貸出金の標準金利である短期プ ライムレートが事実上公定歩合に連動して変更されることが,金利リスク拡 大の最も大きな原因の一つなることは,十分に認識されていた。しかし実際 には,本格的預金金利自由化の年である
1985年から
4年後の
1989年にようや く新短期プライムレートが導入された。それに対して様々な原因が考えられ るが,例えば金利水準から見れば
1985年
‑‑‑...‑1987年は金利低下による利益プラ ス効果が働き,必ずしも導入を進める環境になかったことがあげられよう
oその後
1988年頃から金利上昇局面となり金利自由化も急速に進んだため,
短期プライムレート決定方法の見直しの機運が高まり,
1989年
1月に導入が 図られた。
いずれにしても新短期プライムレート導入時期と,その定着に関しての不 確実性が,その時点において金融機関経営に大きな影響を与えたと考えられ
る 。
5 ‑2 不確実性の増大がもたらす影響について
不確実性の増大に伴い悲観的予想に基づく意思決定が強まった場合(ミニ
マックス原理に基づく意思決定)一部に利益減少に対する過大評価が起きる
と考えられる。不確実性に関しては前述した通り,利鞘の変動予測に関する
不確実性の増大と,リスク軽減策導入に関する不確実性の増大があげられる
が,いずれも意思決定に関して影響をもたらすものの,後者の影響がより大
きいと考えられる。金利リスクに対する有効な軽減策の導入に関して不確実
性が存在する場合,かつリスクの影響が大きいと考えられる場合,一部に他
のリスクへの転嫁が起きると考えられる。即ち,利益減少に対する過大評価
→利益減少に対する対策案の検討,一部に対策案のリスク過小評価→ハイリ スク・ハイリターン取引の拡大の一要因→信用リスク増大というケースが想 定される。金利リスクと信用リスクの関係を考える場合,その前提として金 利リスクの顕現化としての利鞘の顕著な縮小,経営の悪化等の事実がなけれ ば,両者を直接的に結びつける事は一般的には難しいと考えられる。米国に おける銀行倒産の原因について,銀行自体の放漫な経営姿勢,あるいは債権 管理のずさんさに基づくとされ金利自由化と直接的な関係はないという見方 が一般的であった。しかしその背景に不確実性の増大という,いわば数値化 できない心理的要因が強く働らいた事が指摘され金利リスクの影響は無視 できないものである。もちろん不確実性の増大が信用リスク増大の全ての原 因であるとすることはできないが,主要な要因の 1っと考えられる。わが国 においては特に金利自由化の初期の段階の,貸出金における新型プライム レート未導入の時点で,その傾向が強かったと思われる。金利リスクに関し て,楽観的予想に基づく意思決定が強まった場合,金利リスクの過小評価に つながることは,容易に予想される。現実においては,その状況に応じて悲 観的予想,楽観的予想が交錯することとなり不確実性の影響を把握すること は難しいが,金利自由化がもたらした影響のーっとして注目されるべきであ ろう。
5 ‑3
信用リスクと金利リスク
現在,金融機関にとって信用リスク増大の問題は避けられないものとなっ ている。
信用リスクは,金融機関の中核的機能である信用創造に伴って生じるリス
クであり,金融機関にとって基本的,本源的,かっ伝統的リスクである。信
用リスクは元本が回収できないリスク(元本リスク)を含んでおり,その影
響は金融機関にとって深刻なものとなる。それゆえリスク管理の主体は信用
リスクであり,金利リスクの問題は相対的に重要性が薄れてきているとする
議論も一部に見られる。しかしリスク管理において重要なことは,その認知
の不確実性により他のより大きなリスクへ転嫁される事を防ぐことである。
金利リスクの認知の不確実性により,過大な信用リスクを被る事は回避され るべきである。金利リスクと信用リスクの関係において,金利リスクが顕現 化(利鞘の悪化等)していない状況において信用リスクが拡大する時,両者 の間に直接的な関係はないという見方が一般的である。
しかし,その場合でも金利リスクは,その不確実性に注目すれば信用リス クに一定の影響を及ぼしたと考えることができる。一方,信用リスクにおけ る,リスク認知,リスク軽減に関する不確実性が増せば,他のリスクへ転嫁 される可能性も考えられよう。
信用リスクを含めて今後リスク管理において重要な事は,リスクの直接原 因に対する対応に加えて,それに付随する管理面,制度面での不確実性(不 明確性)を可能な限り除去することであり,その事が安定した金融システム を維持する上からも不可決と思われる。
注1)横内龍三「金融環境の変化と金融機関経営をめぐる諸問題JW金融~ 486号 1987
年
9月 参 照注2) 4) 5)宮内 篤「金融機関の金利リスクについて
J
W金融研究』第7巻第2号 1988年
8月 参 照注
3)Mitchel 1 .
Karlyn,
Interest Rate Risk Management,
At TenthD i
strict Banks"Economic Review
,
Federal Reserve Bank of Kansass City,
May 1985参照 注6)武田真彦「貸出金利決定に関する理論的考察JIr金融研究』第4巻1号 1985年3月参照
注7)脇田安大「わが国の貸出市場と契約取引ー貸出金利の硬直性に関するー解釈JW金 融 研究』第2巻1号 1983年3月参照
【参考文献】
脇田安大 rGood Customer Relationshipと銀行行動JW金融研究資料』第7号 日本銀行 特別研究室 1981年2月
脇田安大「わが国の貸出市場と契約取引‑貸出金利の硬直性に関するー解釈JW金融研究』