九州鉄道会社改革運動の中期段階に見る 明治期鉄道企業の経営者と株主
東條正
1.はじめに
筆者はこれまで我国の近代企業制度導入期である明治期における代表的産 業の一つであった鉄道業についての分析を進めてきた。それは当該期におけ る鉄道企業が我国においても最初の近代巨大企業であり,それ故必然的に社 会的資金の集中形態である株主会社形態企業の典型的事例を構成し,延いて は我国の株式会社企業経営の創始期における諸問題を最も象徴的な形で析出 していると推察されるからである。より具体的に言うなら我国においても初 期の株式会社形態企業における財務,組織,労務等の諸問題は綿紡績企業等 と並んで鉄道企業において最も典型的な形で露呈していると思われる。本稿 ではこうした視角を中心に明治期鉄道企業分析を進めていくこととしたい。
ところで,本稿における分析は筆者が従来解明を進めてきた九州鉄道会社改
1)
革運動事件を対象とする一連の分析の一部をなすもので,この紛争の中期段 階を対象とし,その実態の実証的解明と,そこに見られる我国の株式会社形 態企業の創始期における経営諸問題や株主及び経営者の特性を析出すること を,その課題とする。
まず本論に入る前にこれまでの分析において既に明らかとなったこの紛争
2)