戦略的パートタイマーをめぐる問題点
法経論集第67・68号
中村 和 夫
闘 次
戦略的パートタイマーをめぐる問題点
はじめに
一、
pートタイマーをめぐる一般的実情
二︑具体例にみる戦略的パートタイマーの
性格三︑パートタイマーをめぐる法的問題
四︑戦略的パートタイマーと法的問題
167
説 論
はじめに
長期にわたって続いてきた好景気が︑ここにきて減速感を強めている︒乗用車に代表される個人消費関連業種
は不振であり︑高水準を続けてきた民間の設備投資に相当なかげりが出ており︑アメリカの景気低迷︒円高とい
うなかで輸出関連業種も厳しい状況にある︒このように︑一部の業種を除いて景気は急速に後退しつつあるが︑
他方︑好景気と内需拡大政策のなかできわめて深刻化していた人手不足感に一息つかせる効果を与えていること
も事実である︒ただ︑これは短期の需要超過の緩和によると考えるべきで︑一九九〇年代後半から予想される本
格的︑構造的な労働力不足問題の解消ではない︒すなわち︑経済企画庁の予測では︑生産年齢人ロのピークは一
九九五年であり︑その後は減少するとされ︑労働省の政策企画プロジェクトチームの検討では︑労働力人口の増
加率は︑一九九〇〜九五年が○・七%︑一九九五年〜二〇〇〇年が○・二%︑二〇〇〇年〜二〇一〇年が△○︒
二%と見込まれており︑長期的に労働力市場は一段と厳しさを増していくと考えられている︒
このように予想される労働力不足時代の対策としては︑技術革新や省力化のより一層の推進︑女性や高齢者の
積極的活用︑国際分業の展開︑外国人労働者の容認導入など考えられるが︑パートタイマーの果たす役割も今日
以上にますます大きくなるに違いない︒すなわち︑本格的人手不足時代のなかでは︑良質な人材確保のために企
業は︑否応なく時間短縮に取り組まざるをえないであろう︒労働基準法第三十二条本文通りに週四〇時間労働制
を実施せざるをえないし︑年休の完全消化や残業の大幅削減も行われなければなるまい︒企業が従前の生産を維
持していこうとすれば︑このように生じた労働の﹁隙間﹂に対して︑主としてパートタイマーによって埋めてい
Z68
戦略的パートタイマーをめぐる問題点
くことになろう︒このことは︑従来の安上り労働力という性格に変えて︑労働力確保の手段として︑パー
トタイマーが企業側に位置づけられることを示唆する︒他方︑正規従業員の時間短縮が進んでいけば︑﹁正規従業
員の所定労働時間に比べて相当程度低い﹂パートタイマーの割合は必然的に低下し︑いわゆる擬似パートタイマー
が増加するであろう︒また︑今後とも生き残りをかけて企業間競争は激化し︑産業構造の変革に符含した人事︒ ︵1︶労務戦略の再編の動きが加速することが予想されるが︑パートタイマーについてもそのような環境のなかで性格
づけが新たに行われることになろう︒
以上︑要するに一九九〇年代後半からの状況においては︑パートタイマーの性格や位置づけがこれまでと大き
く変化することが十分予想されるのであり︑このようなパートタイマーに関する問題点を探っておくことは重要
である︒そこで︑本稿では現在におけるパートタイマーの実情を明らかにしたうえで︑先行する形で登場してい
る新たなパートタイマーの事例を検討しながら︑問題点について考察を試みたい︒
ω 産業構造の変革と経営・人事戦略の変容については︑拙稿﹁経営戦略の変容と出向﹂労働法律旬報=九六号参
照︒
、
pートタイマーをめぐる一般的実情
法経論集第67・68号
8 パートタイマーをどのように定義するか論者によって一様ではなく︑そのことはまたパートタイマー問題 碑の核心を示唆するものである︒一九八九年六月に労働省が告示した﹁パ⁝トタイム労働者の処遇及び労働条件等 ヱ
説 論
について考慮すべき事項に関する指針﹂︵以下︑﹁指針﹂という︶の定義に従えば︑﹁一日︑一週又は一箇月の所定
労働時間が当該事業場において同種の業務に従事する通常の労働者の所定労働時間に比べ相当程度低い労働者﹂
と概念されることになる︒しかしここでは︑新たなパートタイマー問題を考察するという観点から︑より広い概 ︵2︶念をとる労働省の﹁パートタイム労働者総合実態調査し︵一九九〇年一〇月実施︑以下﹁調査﹂という︶に拠りな
がら︑パートタイマーに関する一般的実情についてみていくことにする︒このようにパートタイマーを理解する
場合︑その実態に照らして類型化して考えることが適切であるが︑﹁調査﹂のモデルに従えぱ第1図のように類型
化できる︒なお︑﹁調査﹂は︑統一概念として﹁パートタイム労働者﹂という用語をあて︑いわゆるパートタイム
労働者的取扱いを事業所が行っている者のうち︑一般の正社員より所定労働時間が短い者を﹁Aパート﹂︑一般の
正社員とほぼ所定労働時間が同じ者を﹁Bパート﹂と呼んでいるが︑以下では︑﹁パートタイマ1﹂を最広義のも
のとして使用し︑﹁調査﹂の分析に従うときは︑﹁Aパート﹂・﹁Bパート﹂の用語はそのまま使用することにしたい
︵なお﹁調査﹂に拠らない場合には︑﹁Bパ!ト﹂をいわゆる﹁擬似パート﹂と呼ぶ︶︒
¢⇒ 前述した﹁調査﹂は︑パートタイマーに関する初の本格的調査ともいえるが︑その最新統計でみると︑パー
トタイマーの総数は約六百七万人であり︑全労働者数の一四・六%を占めるにいたっている︵第1表︶︒このうち
女性は約四五六万人で四分の三を占め︑パートタイマー問題を考えるとき︑女性パートタイマ⁝という性格を抜
きに語ることができないことをあらためて示している︒また︑正社員より労働時間が短い者は約四八六万人であ
り︑正社員と労働時間がほぼ同じ者は約=一〇万人であってその比率は四対一である︒この数字は︑擬似パート
タイマーについて︑十分な考慮を払うべきことを要求するものといえよう︒
国 パートタイマーを雇用する事業所は︑全体の四九・五%である︒パートタイマーを雇用する事業所の雇用
Z70
戦略的パートタイマーをめぐる問題点
第1図 パートタイム労働者の類型化
最も広義の
・− P・クで
ム労鋤鋒 1ハートタ デマ〜)
卦を
︸いハ及の まる喪 一艶雛 ・ー匁 ノ添舞擬るし壷るΦ力男いわ所ムてい業でつー窮ダ行
・般のlll社員より所〜鉱 労働時間が短L1がへ一 トクでム労傾猪的取搬 いをしていない者
{いわ; bるパー1・以外
の短鋳間労働者1
・般のま齢1澱より断定 労働時問が短い黄
(Aハー1・ )
・般のIE社鼓とほぼ所 定労働時間が鰐じ者
{Bハ.. ト}
【E祉藁でありながら所 定労働時間の短い者
輔社最の短蒋措1労働 勘
非飯祉提の罐瞬間労働 者費いわ幽るバー1・」
を除いた者
{その他の短tt 間労働餐)
輔輔顯レ 補帰儒輔一棚N瞥}一軸聯
﹁ー毒ー悼働 蹄髄 レ 謄櫛 2 榔喩 酬ノi 噺⁝難⁝
旧 一r↓ー−﹂
蜘−r﹂ 鴨
…:麟蓬顯k鞠・砺輸1
L灘躍鍵堂1
第1表 類型別パートタイム労働者数及び構成比
いわゆるパート 蜷響智房ト鴇惚
性 パートタイム
J 働 讐
計 掌 生掬章fト Aパート Bパート
計 正社員の
Z階間労
ュ…蕎
その他の Z時間労 ュ者
労働鷺数(千人)
@男 子
@女 子
{1{NLO) 6,⑪66.7 5,837,8 712,3 4.634喀⑪ 1,203.5 228,9 155.9 72.§
ュ24,9} ユ、轟11、7 1.396、9 380,9 9(}7,2 弓89.7 114,& 66.4 48,4
s75,1} 4,§50. } 4,44LO 33三.4 3,727.7 713,3 114.…, 89,5 2q.6
構成比(%)
@人j 子 浴@ 子
1{}{k⑪ §6、2 11倉? 76.4 :L9,S 3.8 2.6 1豊2
P0{},0 92.4 25.2 50.G 32.4 7、6 4.4 3.2
P00,0 97.5 7.3 S158 15 ? 2.S 2,0 0,…聾
(濁 ()内は、パートタイム労働轡に占める割舎である。
(%)
50
40
3{}
2⑪
1⑪
O
第2表 雇用理由別事業所割合(M.A,)
業務鍵が壇加したから 学卒等岡般の正社員の擦醒・確保が困難だから ハートだと人を集めやすいから 年乗等時的な繁忙に対処するため 榊臼の忙しい時間瀞に対処するため 経験・知識・技熊のある人を採用したいかう 簡単な仕事内容だから 人件費が割安だから 仕事量が減った隣に雇調整が容易だから 退職した女子社興の再⁝麗用に役立つから 定隼社興の再耀用・勤務延長策として その他
(注) Aパート、Bパートそれぞれの計を憩Oとしている。
171 法経論集第67・68号
説
脅A爵禰
理由についてみると︑調査﹂の類型Aパー・Bパーでは︑第2表のようになる︒棄務量が増加したから﹂が
Aパート・Bパートともに最も高い︒これに︑﹁学卒等一般の正社員の採用・確保が困難だから﹂︒﹁パートだと人
を集めやすいから﹂・﹁年末等一時的な繁忙に対処するため﹂・﹁一日の忙しい時間帯に対処するため﹂等を加えて
考えると︑人手不足に対してパートタイマーの雇用が有効であると考える事業所の割合は相当程度高いといえる
だろう︒この数値は︑﹁人件費が割安だから﹂という理由がなお一定割合を保っているとはいえ︑これをかなり上
回っており注演してよい︒すなわち︑﹁仕事量が減った蒔に雇用調整が容易だから﹂という数値がかなり低いこと
とあわせ考えみれば︑従前企業がパートタイマーに対してもっとも雇用上の魅力としていた理由が後退し︑労働
力確保の垂な手段として位置づけていることが窺われるのであり︑今後とも.﹂の傾向は続いていくであろう︒
このうち︑=日の忙しい時間帯に対処するため﹂という理由がAパートで三六・四%と高率であることをみる
と・正規従業員の残業の縮減や年休消化等による労働力の不足に対処するためという理由が今後増加することが
予測できる︒また︑﹁定年社員の再雇用・勤務延長策として﹂という理由がBパートで二五︑七%との数値を示し
ている点は︑定年・再雇用と擬似パ〜トとのリンクがある程度普及していることを表すもので興味深い︒
四 パートタイマーの年齢階級別構成をみると︑40〜44歳が一七・九%︑45〜49歳が一五︒二%︑35〜39歳が
︸二゜九%の順となっている︒男子についてみると︑60〜64歳が二三・六%と一番多く︑ついで65歳以上が一四︑
○%︑55〜59歳が=二・四%の順となり︑55歳以上で全体の過半数を超え︑高年齢層が多い︒女子についてみる
と︑40〜44歳が一=・一%と最も多く︑ついで45〜49歳が一七・六%︑35〜39歳が一五︒○%︑50〜54歳がご一︒
六%の順となっており︑40〜44歳を頂点とするグラフを描いている︒右の数値は︑パートタイマーと一概にいっ
ても︑男子の場合には定年・再雇用という形の高年齢パートタイマーが︑女子の場合には婚姻︒出産等による離
172
戦略的パートタイマーをめぐる問題点
職後再就業するタイプのパートタイマーが︑それぞれ大きな割合を占めるものであることを示している︒
つぎに︑現在勤めている事⁝業所でのパートタイマーの勤続期間をみると︑﹁1年〜3年未満﹂が二六・三%と最
も多く︑ついで﹁3年〜5年未満﹂が一五・四%︑﹁6カ月〜1年未満しが=一・○%の順となっており︑平均勤
続年数は4・4年で︑男子が3・5年︑女子が4・6年であって︑女子パートタイマーの方が勤続年数が長い︒
また︑パートタイマーの今までの経験期間の平均は6・5年となっており︑男子では﹁1年〜3年未満﹂が二六・
七%と最も多く︑平均経験期間は5・2年であるのに対して︑女子では﹁10年〜20年未満﹂が二一・四%と最も多
く︑平均経験期間は6・8年であって︑女子の方が平均経験期間が長い︒とくに女子のBパートでは︑﹁憩年〜20
年未満﹂が二三・八%︑﹁20年以上﹂が一〇・二%と︑一〇年以上の長期経験者が三分の を占めている︒以上の
ような勤続期問や経験期間をみると︑短期雇用に留まらないパートタイマ〜がかなり存在することを示している︒
㈲ パートタイマーの労働条件に関して︑まず賃金について︑その支払形態では﹁晴問給﹂とする者が七五・
○%と最も多い︒賃金を﹁蒔間給﹂とする者の平均時間給は七〇二円︑﹁日給﹂とする者の平均日給は七〇一六円︑
﹁月給﹂とする者の平均月給は一四・二万円である︒年収についてみると︑平均年収額は=一一万円で︑﹁Aパー
ト﹂は一〇二万円︑﹁Bパート﹂は一八六万円である︒女子についてみると︑平均年収額は一〇八万円で︑﹁Aパー
ト﹂は九七万円︑﹁Bパート﹂は一六〇万円である︒これは︑とくに女子の﹁Aパート﹂で所得税の非課税限度額
(一Z〇万円︶が︑依然としてパートタイマーの壁として存在していることを示している︒
つぎに労働時間についてみると︑年間総実労働時間は︑﹁Aパート﹂で︷︑二七五時間︑﹁Bパート﹂で一︑八六
四時聞であり︑︸週当たりの出勤日数は男女とも平均五・三日である︒象た︑ 週当たりの所定労働時間は︑平
均31・6時闘で男子は33・9時間︑女子は31・1時間である︒右のような数値を見るかぎり︑今後正規従業員の
法経論集第67・68号
z73
説
E…A露岡
第3表 パートを選択する理由(M.A.)
汐谷 その他
焦調∵ず人゜知人がパー トで働いている
1
体力的に正社貴として働けない
病人・老人等の介護がある
︐寡事・育児の事憐
正社蝿として働ける会社がない
すぐにやめられるから
仕事の内容に興・瞭が持てた
賃金・待遇が良い
勤務時間・濁数を短くしたい
自分の都舎良い蒔問に働魯たい 時間短縮の進行とともに︑正規従業員との労働時間格鑑が縮減して︑擬似パートが増大することが予測できる︒ ㈹ パートタイマーの就業理由についてみると︑﹁家計の足しにするため﹂が五九・六%と最も多く︑ついで﹁生活を維持するため﹂が四〇・一%︑﹁余暇時間を利用するため﹂が二九・一%︑﹁子供に手がかからなくなった﹂が二七・一%︑﹁生きがい︑社会参加のため﹂が二六・六%となっている︒パ!トタイマーを選択した理由は第3表の通りであるが︑女子の﹁自分の都合の良い時間に働きたい﹂が五八・九%︑
﹁勤務時間︑日数を短くしたい﹂が三一・七%︑﹁家事・育児の事情﹂
が二三・一%などの数値を示していることは︑女子パートタイマーの
二iズの変化として注目してよいであろう︒
つぎに︑所得税の非課税限度額︵︷○○万円︶を超えそうな場合に
就業調整を行うか否かについてみると︑﹁年収が一〇〇万円を超えても
関係なく⁝働く﹂は︑﹁Aパート﹂で二六・○%︑﹁Bパート﹂で六三・○%
の数値を示しているのに対して︑﹁最初から年収が一〇〇万円にならな
いように計画的に働く﹂が﹁Aパート﹂で一六・七%︑﹁Bパート﹂で
四・四%︑﹁年収が一〇〇万円を超えそうになったら休みをとるなどし
て調整する﹂が﹁Aパート﹂で=一・○%︑﹁Bパート﹂で三︒四%︑
174
﹁最初から年収が︸○○万円を超えることはない﹂が︑﹁Aパート﹂で二五・六%︑﹁Bパート﹂で五・二%の数値
を示している︒これらの数値は︑先にも述べたが︑﹁Aパート﹂労働者︵とくに女子が想定される﹀において︑所
得税非課税限度額の壁が意識されていることを示すものといえる︒
︵2︶ 調査対象は︑主要九大産業に属する常用労働者五人以上雇用する一四︑六八五事業所と同事業所に雇用されて
いるパートタイマーのうちから︑一定の方法により抽出された三〇︑六〇〇人である︵労働統計調査月報四三巻
一一号︶︒このほか︑パートタイマーの最近の実情について︑﹃平成元年版労働白書﹄一 一六頁以下の﹁女子パー
トタイム労働者の労働問題﹂参照︒
法経論集第67・68号
二︑異体例にみる戦略的パートタイマーの性格
戦略的パートタイマーをめぐる問題点
e パートタイマーの一般的実情については︑前述したとおりであるが︑昭和六〇年前後から︑従来とは質的
に異なるパートタイマーが登場してきた︒このような﹁新たな﹂パ!トタイマー登場の要因として︑企業側の理
由と労働者側の理由をあげることができる︒
まず︑企業側の理由としては︑産業構造の変容や人事・労務戦略の変化の対応策の㎝つとして︑パートタイマー
の戦略化という方針がとられはじめたことが指摘できる︒すなわち︑従来観念されていたパートタイマーの労働
は︑補助的.定型的な作業が中心であり︑正規従業員の補完が主であった︒しかしながら︑今日における人事゜
労務戦略のなかでは︑正規従業員のスリム化とともに︑パートタイマーに判断業務や管理業務など正規従業員と
変わらない責任と権限を黛その霧内容における質的な変化も起こっているのである・とりわ娩販売職が妬
説
葺ム鶯冊
第4表 就業理由(MA.)
〔%}
7t) i
65.4 65.5 口、護 翅男1㌦ 徳女 ξ二
59.婦︶ ,・
P・:・:・:
:::::
毒・怐揩
4{}.1 .・
F:1⁝ 響. 35.2
33.9奄奄奄奄堰F:i:ii:::::・・:・:・:i:i:i燈iii嚢5匪.・:・:::::: ・:・::︐ ..︐o.・iiii澱ii三:三 ◎oi歪:::::三:1妻.匿︐︐9
1◎.5
@ 7.85・4 4,2
@ :・:・.・
14.3
a6.2
26.3
H甲 ●
Cφ ●
奄奄X● ︐學︐■Pし◎9勝■◆・::::−ii
2§.1
工8、{}
3L8
E♪3・
怐@}●夢
X︒:・﹂・・・・2甲曾︐曹︐圏 .・
27ほ
2、
33.編
E,轡・ヒ●・●・o・:・2・︐ ●.・:・傘溺義 . ゆ1♪ 1︷1︑9
15.蒋
@ 9.8
@ :・:・亀
@ 耀,o鷺◎
@ :メ:::
㈱ 印 哺 39 29 鐙
0
そ の 他
.†供に拳がかからなくなった
余暇時間を利用するため
生きがい︑祉会参加のため
以前の職業経験を生かすため
資格・披能を生かすため
家翫の足しにするため
生活を維持するため 中心であるデパートでは︑パートタイマーの資質を尊重して︑能力を発揮できる職場に重点的に配属されており︑また労働集約型産業の典型である外食産業では︑弾力的な人員配置により︑不必要な時間帯での人件費をコントロールして︑企業収益をめざしており︑このようなことから必然的にパートタイマーに対して正規従業員に準じた方針をもって処理するといった︑業種特有の事情の存在も無視しえない︒ つぎに︑労働者側の理由として考えられるのは︑パートタイマーの就業目的の変化である︒従来︑パートタイマーの就業目的は︑経済的な理由σみであったといっても過言ではない︒しかしながら︑﹁調査﹂で分析された第4表のように︑現在においてもこれが大きな理由であるとはいえ︑生きがいや社会参加︑余暇時間の利用といった就業目的をあげるパートタイマーも目立っている︒このようなパートタイマーの勤労意識の変化は︑パートタイマーに関する選択権が労働者側に移行することを意味する︒ しかも︑円高・内需拡大という労働力不足の状況は︑企業側の
こうしたパートタイマーの二!ズに即応する必要性を認識させ
た︒こうして︑﹁新たな﹂パートタイマーが登場してきたのである
176
戦略的パー一トタイマー一をめぐる問題点
が︑今後︑本格的労働力不足時代が予想されるなかでは︑パートタイマーの戦力化.有効活用は︑さらに多くの
企業において当然の制度として定着していくであろう︒企業において︑このようなパートタイマー制度を採用せ
ざるをえないという意味で︑これを﹁戦略的パートタイマー﹂と呼ぶことが適切であろう︒以下において︑戦略
的パートタイ了のうちいくつかの典型的事例を見な離それがどのような製を嵩するものであるかを検
討していきたい︒
⇒ まず︑同業他社に対して多くの刺激を与えた﹁伊勢丹﹂のサムタイマー制度をみていこう︒これは︑労働
者のニーズに合わせ︑個々に働きたい曜・日・時間を選択できる新しい形のパートタイマー制度として︑昭和六三
年四月から導入されたものである︒制度の概要は︑実労働時問の長短によって二つのタイプを用意し︑さらに専
門能力を有する者に対するタイプを設け︑勤務時間は︑所定の営業時間のうち︑二時間から七時間までと選択の
幅が広く︑時間帯も多種多様にわたり︑勤務日数も週五日にこだわらないという︑弾力的な勤務形態を用意して
いる︒これらのサムタイマーは︑原則として一年契約によっており︑契約更新時には︑定期昇給や能力考課︑さ
らに入事移動も行われている︒
タイプ別に見ると︑まず︑サムタイマー1と呼ばれるタイプは︑週の実労働時間が一二時間以上二八時間以内
と短く︑家事や育児に負担のかからない程度に働きたいとする主婦や︑余暇や趣味を充実させながら働きたいと
希望する者が対象とされ︑賃金よりも働きがいや社会参加へ重点をおく﹁社会参加型﹂と位置づけられている︒
時間給は販売系と事務系に区分され︑それぞれに一定の幅を与えているが︑前者の方がいくぶん高い︒一般労働
時間の四分の三以内で社会保険が適用除外となり︑賞与・退職に際してせん別金は支給されない︒
つぎに︑サムタイマー11のタイプは︑週の実労働時間は二八時間を超え三五時間以内であって︑週五日以内と
法経論集第67・68号 ヱ77
説 論
比較的労働時間が長い︒正社員までは希望しないが︑ある程度まとまった賃金と︑仕事にも責任をもちたいと希
望を有している主婦層が対象とされ︑﹁経済志向型﹂と位置づけられる︒時間給の取り扱いは︑サムタイマー1と
同様であるが︑社会保険に加入するほか︑賞与︑退職に際してせん別金が支給される︒
さらに︑サムタイマーmのタイプは﹁専門職型﹂と称し︑国家資格や特別の専門能力を持つ人が対象である︒
サムタイマー11のタイプに属する人たちの中から︑会社が能力評価を行い︑昇格が認められる︒週の労働時間は︑
サムタイマi11と同じであるが︑時間給についてはより高額の幅が設定されている︒社会保険︑賞与・退職に際
してのせん別金については︑サムタイマー11と同じく支給される︒
以上のように︑三種のタイプを制度化しているが︑とりわけサムタイマ!1と11で決定的に異なるのは︑実労
働時間のほかに賞与・退職せん劉金︑社会保険の適用の有無にある︒年次有給休暇は︑両タイプとも入社時から
付与されるほか︑両タイプとも仕事の内容はまったく変わりがなく対等の扱いである︒また︑両タイプ間での転
換を自由にできるシステムをとっている︒
以上のように︑伊勢丹で導入されたサムタイマー制度は︑パートタイマーの二ーズにあわせ︑柔軟な勤務形態
をとっていることが大きな特徴であるが︑現実の運用では︑勤務地︑職種︑契約曜日・時間帯等についてきめ細
かく希望を聴取するシートを︑パートタイマーに提出させて対応している︒
﹁伊勢丹﹂に見たような﹁選択就労型﹂の戦略的パートタイマーを採用する企業として︑﹁東急百貨店﹂は︑週
五日一日五時間決められた時間帯に働く定時社員と︑一日五時間以上週二五時間以上働くフリータイム社員A︑
一日五時間未満週二五時間未満働くフリータイム社員Bというタイプを用意し︑﹁阪急百貨店﹂は︑パート勤務か
らフルタイム勤務︑毎日勤務から曜日指定勤務など柔軟性に富んだ勤務シフトを用意するフリーパートナー制度
z78
戦略的パートタイマーをめぐる問題点
を導入している︒また︑大手生協である﹁N生協﹂では︑週契約時間一六時間以上三九時間未満︑契約日数四日
以上の定時社員とそれ以下の準定時社員というタイプに分け︑さらにワークチョイス制︑タイムチョイス制と柔
軟に対応できるようにしたうえ︑労働者が二人一組となって各自の都合にあわせる形の勤務時間のシフトを自由
に動かすことができるペア・ジョブ制度の試みもした︒
右に見た﹁選択就労型﹂戦略的パートタイマーの場合︑たしかにパートタイマーの勤務形態の多様なニーズに
合わせるような制度を企業は用意しており︑従来の定型パックの勤務形態でしか雇用をしないという姿勢から︑
パートタイマーに対する顧慮をしているものといえる︒しかしながら︑右に見たように︑企業が欲する長時間︒
長期勤務タイプや専門職タイプのパートタイマーとそれ以外のパートタイマーについて︑賃金等の労働条件で格
差をもうけて︑企業側の二iズに合った労働力の確保という姿勢を打ち出す性格のものでもある︒すなわち︑パー
の のトタイマーに対するインセンティヴが賃金か勤務時間かという形で示されているのであって︑賃金も勤務時間も
という形で示されていないことに留意しなければならない︒このことは︑パートタイマーが企業側の二iズに否
応なく従ってしまうという側面を拭いさるものではないことを示しており︑また︑パートタイマー自身の意識の
なかで︑パートタイマー間の差別について容認してしまう傾向を生み出すことにもなろう︒とくに︑勤務時間の
短いパートタイマーが︑賃金等の労働条件の低さについて不満を抱いた場合︑勤務時間が違うのだからという形
で︑自身納得させられてしまうことになりはしないか︑危惧の念を抱かざるをえない︒こうした点を考えれば︑
コ選択就労型﹂戦略的パートタイマーで一般に言われているように︑労働者の二ーズを重視しているとだけ性格
づけるべきではないであろう︒
コ つぎに︑パートタイマーの量的拡大と質的な変化の進展等に対応させて︑職務遂行能力に応じた処遇を明
法経論集第67・68号
179
説
…ム韻粥
確にしてモラール向上をめざす制度導入の例をみていこう︒その代衰例である﹁ダイエー﹂は︑職務遂行能力を
ベースとする職能資格制度﹁オレンジマスタープラン﹂を昭和六一年九月に導入した︒制度の概要は︑パートタ
イマーを準社員と定時社員というダイブに分け︑さらに定蒔社一・貫を︑オレンジ・パートナー︑オレンジ・シニア︑
オレンジ︒マスターという三つのランクに区分するというものである︒パートタイマーとして採用されると︑ま のず準社員となるが︑勤続二年以上で年齢が二〇歳以上五一歳未満︑週の契約時間が二五時間以上︑人事考課の成
績がBA以上︑過去1年の出勤率が九割以上の者に対して登用試験を実施して︑合格すればオレンジ・パートナー
となる︒オレンジ・パートナーからオレンジ・シニアには︑オレンジ・パートナー昇格⁝後の期間が2年以上︑二
二歳以上五三歳未満︑入事考課の成績が直近の三期連続して﹁AAA﹂であり︑過去一年の出勤率が九割以上︑
週契約時間が二五時間以上あって︑さらに業務改善レポートの提出と所属長の推薦があれば自動昇格する︒さら
に︑オンンジ︑シニアからオレンジ・マスターへ昇格するためには︑オレンジ・シニア昇格後の期間が二年以上︑
年齢二四歳以上五五歳未満馬人事考課の成績が直近の二期﹁AA﹂であり︑過去︸年の出勤率が九割以上︑週の
契約時間が二五時間以上あり︑所属長の推薦がある場合に︑資格のある昇格試験に合格しなければならない︒
右の各職務の位置づけは︑まず︑準社員は︑販売の基礎的な業務を修得するものとされている︒つぎに・オレ
ンジ・パートナーは︑標準的な知識や技能が要求され︑一般的な指示や一定の処理基準に基づく判断業務を確実
に遂行できることが求められる︒さらに︑オレンジ・シニアは︑やや高度な知識と技能を備え︑応用動作と判断
業務が確実に遂行できることが求められる︒また︑オレンジ・マスターは︑専門的な技能をもち︑企画︑立案が
できることのほか︑利益管理・顧客管理・部下の指導管理ができることが要求される︒
このように︑オレンジ︒マスタープランは職能資格制度であり︑職務遂行能力によって資格を区分しているこ
Z80
戦略的パートタイマーをめぐる問題点
とから︑賃金も資格に応じて支払われる︒新しい賃金体系の基本的な考え方は︑期待される職務遂行能力の高さ
をそれぞれの資格ごとの賃金幅に反映させるもので︑各資格ごとの昇格は︑習熟度曲線の考え方を尊重してグレー
ドが設定される︒賞与の支給は︑勤続一年以上の人を対象に支給されるが︑準社員と定時社員別々にテーブルが
用意され︑両者とも週三〇時間以上と三〇時間未満︑および考課︵ABC︶別にランク分けされて︑それぞれに
対応して支給額が設定される︒そして︑オレンジ・マスタープランの各資格に応じて定められた額が︑別途加算
される︒ ﹁ダイエー﹂に見たような﹁職能資格制度型﹂の戦略的パートタイマーを採用する企業として︑﹁西友﹂は勤務
日数・時間に応じて︑メイト社員とフレンド社員の一一つの身分に分類したうえ︑職務遂行能力によって昇進基準
を設定して四つのランクに区分し︑人事考課制度を導入するとともに︑能力と貢献度に応じた給与体系を確立す
る﹁ビーナスプラン﹂と称する人事制度を取り入れ︑﹁すかいらーく﹂は︑パートタイマーである準社員に時間帯
責任者としての権限と責任を与える﹁ユニット・マネージャi制﹂を導入して︑能力と経験を評価する四つのレ
ベルを設けて︑レベルを上がるにつれ時給に手当てを上乗せさせる制度をとり入れているが︑このうち最高レベ
ルのユニット・マネージャーになるためには登用制・度を設けている︒
右に見た﹁職能資格制度型﹂戦略的パートタイマーは︑従来のいくら長期間継続勤務しても賃金等の労働条件
向上は期待できないという労働者の不満を解消することにつながるものといえよう︒しかしながら︑従来ほとん
ど行われてこなかった人事考課や登用試験が導入され︑労働者の質が問われることは︑労働強化につながりかね
ないし︑このことと引き換えに実質的な労働条件向上がもたらされるかは疑念を持たざるをえない︒また︑同時
に行われる賃金体系の緻密化は︑パートタイマー自身の選別︑差別意識を醸成することにつながりかねない︒そ
法経論集第67・68号
181
説 論
して︑﹁職能資格制度型﹂戦略的パートタイマーは︑労働者の職能の向上とあわせて長期継続勤務をねらいとする
ものであって︑短期間勤務のパートタイマーの労働条件向上を行うものではないことに留意すべきであろう︒結
局︑このような制度のもとでは︑パートタイマーは否応なく長期間勤務することになるが︑この点で考えて︑正
規従業員との格差が解消されうる方向にあるのか︑十分見極める必要がある︒
︵3︶以下の事例は︑主として労政時報二九九五号に拠る︒このほかパートタイマーの事例研究については︑労働省
婦人局編﹃パートタイム労働の展望と対策﹄︵昭和六二年一〇月︶等参照︒
Z82
三︑パートタイマーをめぐる法的問題1﹁指針﹂の観点から
e パートタイマーをめぐる法的問題点として︑従来からしばしば議論されてきたのは︑正規従業員との間の
差別についてであり︑その内容としては︑賃金・退職金︑雇用契約︑年休取得︑社会保険加入などがあげられて
きた︒このうち︑年休取得については︑労働基準法第三九条三項による比例付与制度の導入により解決策を見出
した︒また︑パートタイマーの雇用保険については︑一週間の所定労働時間が二二時間以上で︑一年以上ひき続
き雇用されることが見込まれる等︑雇用保険の被保険者の要件が緩和された︒そして︑なお存在するその他の差 ︵4︶別の抜本的是正については︑立法によって解決を図るべきであるとして立法構想が行われたのであるが︑現在立 ︵5︶法化作業は頓挫してしまっている状況である︒そこで︑パートタイマーの法的問題点を整理するうえで︑労働省
のパートタイマーに対する告示をみながら︑若干の考察を行っていきたい︒
ω 従来︑一九八四年一〇月策定の労働省﹁パートタイム労働対策要綱﹂︵以下︑﹁要綱﹂︶がパ!トタイマー労
戦略的バートタイマーをめぐる問題点
働対策として存在していたが︑ 九八八年一二月のパート対策専門家会議の﹁今後のパートタイム労働対策のあ
り方について︵中間的整理︶﹂を承けて︑一九八九年六月に前述した労働省告示第三九号﹁指針﹂が告示さ紘池︒
﹁指針﹂の特徴として︑まず第一に︑パートタイマーの定義について︑﹁要綱﹂と同じく﹁一日︑一週又は一箇月
の所定労働時間が当該事業場において同種の業務に従事する労働者の所定労働時間に比べ相当程度低い労働者﹂
として︑通常労働者の所定労働時間との比較における相対的短さに求めているが︑一方︑所定労働時間が通常労
働者とはほとんど同じであるタイプと︑所定労働時間も就業実態も通常労働者とほとんど同じであるタイプを想
定し︑このうち前者に対しては︑当分の間適用することとし︑後者に対しては︑通常の労働者としてふさわしい
処遇をするように努めるとされている︒
特徴の第二として︑﹁要綱﹂でも規定されていた︑労働者保護法令が原則として通常の労働者も同様に適用に
なること︑様式を示した雇入通知書を交付することに努めること︑パートタイマーに適用される就業規則の作
成が必要であること︑常時使用するパートタイマーについて労働安全衛生法に基づく健康診断が必要であること
等に加えて︑﹁指針﹂では︑新たに以下のような事項について︑主に使用者の努力を求めながら︑充実がはかられ
た︒
①労働時間の設定の規定において︑新たに﹁労働日﹂およびそれらの﹁変更﹂の場合が加えられ・時間外労働
の抑制に努めるべきことのなかに﹁所定労働日以外の臼﹂の労働の抑制が加えられ︑時間外労働をさせる場合に
は︑雇入れの際あらかじめ明示するように努めることという規定のなかに︑﹁所定労働日以外の日﹂の労働を加え
た︒
②期間の定めある労働契約の規定において︑更新によって一年を超えて引き続き使用する場合・期間設定は一
法経言倉集第67。68号
183
論説③賃金︑賞与及び退職金については︑労使において︑その就業実態︑通常の労働者との均衡等を考慮して定め 1 年を超えない範囲内でできるだけ長くするように努めること︑が加えられた︒ 甜
るよう努めること︒
④給食︑医療︑教養︑文化︑体育︑レクリエーション等の施設の利用については︑パートタイマーにも利用さ
せるよう努めること︒
⑤就業実態に応じ︑パートタイマーの職業能力の開発及び向上等を図るための教育訓練を実施するように努め
ること︒ ⑥パートタイマーを常時一〇人以上使用するときは︑﹁措針﹂に定める事項等を管理させるため︑パートタイム
雇用労務管理者を選任すること︒
特徴の第三としては︑その実効性の面で︑﹁告示﹂という形でその強化が図られた︒
㊨ 以上のような﹁指針﹂の内容は︑﹁要綱﹂に比較すると︑パートタイマーの保護をきめ細かくはしているが︑
問題点も少なくない︒
まず︑﹁指針﹂が規制対象とするパートタイマーは︑所定労働時間の相対的短さで画定されているが︑前述した
ような今日における多様なパートタイマーの存在は︑一律的規制の困難性を示すものである︒
つぎに︑期間の定めのある労働契約について︑労基法上は期間の定めをするかどうかは労使の自治に委ねてい
るが︑一般的に︑正規従業員が期間の定めのある労働契約となっていることが︑身分格差や差別的取扱いの要因
ともなっていることや︑パートタイマーの雇用の不安感を生じさせていることを考えれば︑これらの観点からの
規制を考えてよい︒
戦略的パー・トタイマーをめぐる問題点
また︑賃金︑賞与︑退職金の決定をめぐって︑労使の自主的努力に委ねたことは︑決定基準として提示された
﹁その就業の実態︑通常の労働者との均等等﹂の文言が旦ハ体性を欠くことからいっても︑これからだけで正規従
業員との格差を解消することは困難といわなければならないであろう︒
さらに︑実効性の面では︑﹁告示﹂化されたが︑強制力を欠くという点では不十分である︒行政指導の役割を期
待するというのであれば︑その責任体制を少なくとも明確にしておく必要があろう︒また︑苦情処理など救済手
続きも︑実効性確保ということから求められる︒
㈲ 以上︑﹁指針﹂は︑現段階におけるパートタイマー保護という点では評価しうる点もあるが︑その限界性も
指摘でき︑このような点で実効性を伴う立法の導入が必要とされるのである︒たしかに︑パートタイマーに対す
るあまりに厳しい法規制を行うこと︑企業がパートタイマーに対する魅力を失い︑パートタイマ⊥雇用が減少す
るという議論も存するが︑前述したように︑本格的労働力不足時代の到来は︑かかる議論の妥当する余地を失わ
せてしまうであろう.なにより︑差別体制の基盤にたってパートタイマーを考えていく時代ではなくなっている・
という認識が必要であろう︒
他面︑期間の定めのない正規従業員の労働を︑典型労働と把握する時代は去りつつあるともいえる︒とすれば︑
多様な雇用形態にあわせて立法を整備したうえ︑きめ細かい法運用を行っていく必要が生じる︒パートタイマー
の法的問題も︑こうした点からとらえられるべき性格といえる︒その意味から︑戦略的パートタイマーの登場が
新たな法的問題を投げかけるのではないか︑吟味をしておくべきであろう︒
︵4︶ パートタイマーに関する立法構想については︑大脇雅子﹁パートタイム労働者をめぐる立法論的課題﹂季刊労
働法一五一号等参照︒
法経論集第67・68号 ヱ85
論説
︵5︶ パートタイマーをめぐる法的問題点については︑日本労働法学会誌六四号﹃パートタイム労働の法的諸問題﹄
の各論文︑山田省三﹁パートタイム労働問題への視座設定とその労働条件形成の法理﹂労働法律旬報=一二九号
一一三頁以下︑本多淳亮﹁パート労働者の現状と均等待遇の原則﹂大阪経済法科大学法学研究所紀要13号一一三頁
以下など参照︒
︵6︶ パートタイマーに対する労働省の対策の変遷については︑唐津博﹁パートタイム労働政策の進展と立法的規制
の動き﹂日本労働法学会誌七三号︑福島淳﹁パートタイム労働指針﹂日本労働法学会誌七五号参照︒
186
四︑戦略的パートタイマ!と法的問題
e前述したような戦略的パートタイマーが企業において導入されてきた理由について︑ここであらためて整
理をするとつぎのようになる︒
まず︑労働者の生活時間と労働時聞の設定の関係について︑前者を主として考える二ーズの増大のなかで︑従
来の硬直した勤務時間では︑パートタイマーを確保することができず︑勤務時間帯を柔軟化する必要性が生じた
ことがあげられる︒ ︑
つぎに︑流通小売業においては︑とくに消費者のニーズの多様化にあわせた顧客サービスの必要性から︑パー
トタイマーに対して︑生活体験者︑地域における惰報提供者と位置づけ︑その﹁専門職﹂としての役割を重視す
る方向がとられた︒
また︑企業間競争の激化により営業時間が延長されるなかで︑正規従業員以外によって業務の分業化を図る必
戦略的パートタイマーをめぐる問題点
要性が生じ︑人員の効率的運用が重要となった︒
さらに︑パートタイマーの業務内容が︑右にあげたような理由もあって︑補助的︑定型的なものから︑正規従
業員と変わらない判断業務や管理業務へと質的変化が行われることに対応して︑職能資格を整序する必要が生じ
た︒ そして︑パートタイマーの労働意欲を高揚させ︑納得感や公平感を得るために︑勤務日数︑勤務時間帯︑職能
資格に対応した賃金体系を整備する必要性が生じた︒
⇔ 以上のような企業の必要性の高まりのなかで登場した戦略的パートタイマーであるが︑法的問題点として
新たに何を投げかけているか︑最後に若干の整理をすると以下のようになろう︒
まず︑基本的な認識として︑前述したような具体例を検討するかぎり︑パートタイマーの一一ーズの多様化に対
応する側面があるとはいえ︑企業側の必要性に基盤を置くものであり︑労働者の要求を完全に反映することには
限界性を有していることを考えておく必要がある︒
つぎに︑戦略的パートタイマーの職能資格において︑上位に位置づけられる労働者は︑前述したように︑勤務
日数・勤務時間が長いことが条件とされているが︑正規従業員の時間短縮が進行していくなかでは︑それとの労
働時間の差はさらに縮まることになる︒そして︑このようなパートタイマーは︑正規従業員なみに責任能力や管
理能力を問われることになるのであるから︑正規従業員との差別が生じた場合には︑これまでの擬似パートで指
摘されてきた以上に︑問題となろう︒すなわち︑職能資格制度による戦略的パートタイマーの場合︑正規従業員 ︵7︶との均等・公平な取扱いを要求する理論的根拠が︑直戴かつ明瞭になるものと思われる︒
さらに︑職能資格制度に︑勤務年数などを要件とする例などを見ると︑このようなパートタイマーは︑雇用期
法経論集第67・68号
Z87
説
論 間が一年未満に設定されている場合にあっても︑パートタイマーの雇用契約の雇止めに対して︑企業の労働者に 娚対する長期勤務に対する期待度を反映させた︑法的解釈論を展開できる可能性を十分有するものと考えるべきで
︵8︶あろう︒
また︑賃金︒賞与︒退職金等に関する正規従業員との差別については︑基本的に︑正規従業員の場合︑その賃
金は生活的色彩を有し生涯労働総体で職能と賃金のバランスをとる考え方をとっているのに対して︑パートタイ
マーの場合には︑その都度でバランスをとっていくものであるという観点にたって考えていくべき性格のもので
︵9︶ある︒その意味では︑パートタイマ1の賃金水準に対して職務や習熟度を反映させる戦略的パートタイマーの賃
金体系は︑正規従業員との問で︑公正・公平な処遇をもたらしうる性格を有している︒このことは︑これまでの
パートタイマーと正規従業員との均等待遇という法的主張が弱められる可能性があるということにもなる︒しか
し︑まず︑入事考課について正規従業員との公正さや︑職能資格制度の登用の公平さが徹底して行われているか
どうか問われなければならないだろうし︑職務に対する評価について正規従業員と公平であることが要求され︑
職能資格とリンクする賃金等のとり扱いについては︑それぞれが︑社会的に見てまた社内的に正規従業員と均衡
がとれているか︑十分な吟味をする必要性があるであろう︒すなわち︑職能資格の細分化や賃金体系の緻密化が︑
﹁差別隠し﹂となってはならないのである︒
㊨ 以上のように︑戦略的パートタイマーの登場は︑パートタイマーに関するいくつかの新たな法的問題点を
投げかけるものとなった︒このような戦略的パートタイマーは︑先に指摘したように︑今後本格的労働力不足時
代のなかで︑さらに普及が予想されるが︑以上指摘した点を踏まえた法的対応を考えていくべきである︒一方︑
﹁調査﹂に見たように︑パ⁝トタイマー自身の一〇〇万円の壁に代表されるように︑戦略的パートタイマーにな
戦略的パートタイマーをめぐる問題点
りきれない労働者が残存していくことも予想され︑これに対して企業が従来通り安上がりタイプの労働力と位置
づけていくこともあわせ考えておかなけれぼならない︑
以上のような諸点を想定すれば︑現在中断しているパートタイマーに関する立法作業に着手して︑パートタイ
︐マーに対する環境整備を行うべきことは当然である︒そうした意味で︑戦略的パートタイマーの登場が︑パート
タイマー相互の選別・差別意識の醸成に繋がりかねないことから︑パートタイマー自身の連帯を促すような運動
的取り組みが︑以前にもましてこれからは必要となるであろう︒労働組合においても︑このような取り組みを行 ︵10︶うべきであり︑パートタイマーの組合加入に積極的に取り組むべきである︒
︵7︶ 正規従業員とパートタイマーの差別に対して︑均等待遇原則を打ち出して考える学説として︑前掲本多論文等
があるが︑戦略的パートタイマーにおいては︑均等待遇原則の妥当ならしめる現実的基盤があると思われる︒
︵8︶ 日立メディコ事件最高裁判例︵最一小判昭六一・=⁝・四労判四八六号︶の立場にたっても︑このような解釈
論をたてられる余地があろう︒なお︑最近の判例として︑三洋電機のパートタイマーに対する人員整理鷹止めの
事件︵大阪地判平3・10・22労判五九五号︶があるが︑その判旨によれば︑﹁当事者双方の雇用契約の継続への期
待は︑決して小さなものではなかったということができる︒﹂としてうえ︑﹁合意された契約更新の定めは︑被申
請人が経営内容の悪化により操業停止に追いやられるなど従業員数の削減を行うほかやむを得ない特段の事情の
ない限り︑契約期間満了後も継続して定勤社員として雇用することを予定しているものというべきであり︑定勤
社員を雇止めするについては︑いわゆる終身雇用の期待の下に期間の定めのない労働契約を締結している正社員
を解雇する場合とはおのずから合理的な差異があることは否定できないものの︑解雇に関する法理が類推され︑
右の趣旨の特段の事情のある場合に限って雇止めができるものというべきである︒﹂とされているが︑パ!トタイ
法経論集第67968号 ヱ89
説論 マーの雇止めに対する社会認識は厳しくなっていると受け止めるべきである︒ 卯 ヱ︵9︶ ﹁これからの賃金制度のあり方に関する研究会﹂によるパートタイム労働者の賃金制度に関する提言︵労政時
報二九九五号︶︒
︵10︶ 労働省﹁平成二年労働組合活動実態調査﹂によれば︑事業所にパートタイマーのいる組合のうちパートタイマー
が加入している組合の割合は七・七%ときわめて低い︵労働法令通信四四巻一〇号参照︶︒なお︑パートタイマー
問題に対して積極的に取り組んでいる組合として︑ゼンセン同盟があげられる︒ゼンセン同盟のパートタイマー
に対する基本方針については︑月刊ゼンセン︷九九〇年二月号参照︒