慢性特発性蕁麻疹患者における
抗 IgE 自己抗体および抗 FcεRIα 鎖自己抗体の 臨床的意義
日本大学大学院医学研究科博士課程 内科系皮膚科学専攻
伊﨑 聡志
修了年 2017 年
指導教員 照井 正
慢性特発性蕁麻疹患者における
抗 IgE 自己抗体および抗 FcεRIα 鎖自己抗体の 臨床的意義
日本大学大学院医学研究科博士課程 内科系皮膚科学専攻
伊﨑 聡志
修了年 2017 年
指導教員 照井 正
目次
概要
・・・・・
1
緒言
・・・・・
4
1
.慢性特発性蕁麻疹・・・・・
4
2.
慢性特発性蕁麻疹とマスト細胞・・・・・
4
3.
慢性特発性蕁麻疹と自己抗体・・・・・
5
4.
自己血清皮内テスト(autologous serum skin test, ASST
)・・・・・
6
研究の目的
・・・・・
7
期待される成果
・・・・・
7
対象・使用試薬
・・・・・
8
(1)
倫理的考慮・・・・・
8
(2)
対象・・・・・
8
(3)
使用試薬・・・・・
8
方法
1
・・・・・11
1-1.
検体血清からのIgG
の精製・・・・・
11
1-2.
抗IgE
抗体濃度測定・・・・・
11
1-3.
リコンビナント可溶性FcεRIα
鎖細胞外領域の精製・・・・・
12
1-4.
抗α
鎖抗体濃度測定・・・・・
14
1-5. ASST
・・・・・15
1-6.
患者背景との比較・・・・・
15
1-7.
統計解析・・・・・
16
結果
1
・・・・・17
1-1. CSU
患者群とNC
群間の精製IgG
に含まれる抗IgE
抗体濃度の比較 ・・・・・17 1-2. CSU
患者群とNC
群間の従来法抗α
鎖抗体濃度の比較・・・・・
17
1-3.
抗IgE
抗体濃度と従来法抗α
鎖抗体濃度の相関・・・・・
17
1-4. ASST
陽性群と陰性群間の抗IgE
抗体濃度、従来法抗α
鎖抗体濃度の比較・・・・・
18 1-5.
抗IgE
抗体濃度高値群と低値群における臨床的特徴の比較・・・・・
18
1-6. ASST
陽性群と陰性群における臨床的特徴の比較・・・・・
19
1-7.
シクロスポリンの治療効果の比較・・・・・
19
小括
1
・・・・・21
方法
2 ・・・・・ 22
2-1.
血清中の可溶性α
鎖濃度の測定・・・・・
22
結果
2 ・・・・・ 23
2-1. CSU
患者群とNC
群間の血清中の可溶性α
鎖濃度の比較・・・・・23
小括2
・・・・・24
方法
3
・・・・・25
3-1.
フリーの抗α
鎖抗体とIgG
の片側、および両側の可変領域に可溶性α
鎖を 結合した抗α
鎖抗体(以下総抗α
鎖抗体と呼ぶ)の濃度測定・・・・・
25
3-2. IgG
の片側、および両側の可変領域に可溶性α
鎖を結合した抗α
鎖抗体(可溶性
α
鎖結合抗α
鎖抗体)の濃度測定・・・・・
26
3-3.
フリー抗α
鎖抗体濃度の測定・・・・・
26
結果
3
・・・・・27
3-1. CSU
患者群とNC
群間の総抗α
鎖抗体濃度の比較・・・・・
27
3-2. CSU
患者群とNC
群間の可溶性α
鎖結合抗α
鎖抗体濃度の比較 ・・・・・27 3-3. CSU
患者群とNC
群間のフリー抗α
鎖抗体濃度の比較・・・・・
27
小括
3
・・・・・28
方法
4
・・・・・29
4-1.
各抗α
鎖抗体のIgG1
、IgG4
分画の測定・・・・・
29
結果
4
・・・・・30
4-1. CSU
患者群とNC
群間のIgG4
分画総抗α
鎖抗体価の比較・・・・・
30
4-2. CSU
患者群とNC
群間のIgG4
分画可溶性α
鎖結合抗α
鎖抗体価の比較 ・・・・・30 4-3. CSU
患者群とNC
群間のIgG4
分画フリー抗α
鎖抗体価の比較 ・・・・・30 4-4. CSU
患者群とNC
群間のIgG1
分画およびIgG4
分画総抗α
鎖抗体の比の 比較・・・・・
31
小括
4
・・・・・32
方法
5
・・・・・33
5-1. EXiLE
法によるマスト細胞活性化能の測定・・・・・
33
結果
5
・・・・・35
5-1. CSU
患者群とNC
群間のEXiLE
法によるマスト細胞活性化能の比較 ・・・・・35
小括5
・・・・・36
考察
・・・・・
37
まとめ
・・・・・
43
謝辞
・・・・・
44
図表
・・・・・
45
引用文献
・・・・・
75
研究業績目録
・・・・・
82
略語
ASST
:autologous serum skin test
:自己血清皮内テストAUC
:area under the curve
:ROC
曲線下面積CHO
:Chinese hamster ovary
:チャイニーズハムスター卵巣CSU
:chronic spontaneous urticaria
:特発性慢性蕁麻疹ds-DNA
:double stranded DNA
:二本鎖デオキシリボ核酸EAACI
:European Academy of Allergy and Clinical Immunology ELISA
:enzyme-linked immunosorbent assay
:酵素免疫測定法EXiLE
:IgE crosslinking-induced luciferase expression
FBS
:fetal bovine serum
:ウシ胎児血清FcεRI
:high affinity receptor for IgE
:高親和性IgE
受容体HRP
:horseradish peroxidase
西洋ワサビペルオキシダーゼIgE
:immunoglobulin E
:免疫グロブリンE
IgG
:immunoglobulin G
:免疫グロブリンG NC
:normal control
:健常者コントロールNFAT
:nuclear factor of activated T cells
:活性化T
細胞核内因子PBS
:phosphate buffered saline
:リン酸緩衝生理食塩水PMA
:paramethoxyamphetamine
:パラメトキシアンフェタミンQoL
:quality of life
ROC
:receiver operating characteristic
:受信者動作特性TBS
:tris-buffered saline
:トリス緩衝生理食塩水TMB
:3,3',5,5'-tetramethylbenzidine
:3,3',5,5'-
テトラメチルベンジジンUAS
:urticaria activity score
:蕁麻疹活動性スコア1
概要
背景
:
慢性特発性蕁麻疹(chronic spontaneous urticaria, CSU
)患者の一部 に、自己抗体が検出されることがある。自己抗体が検出されるCSU
は自己免 疫性蕁麻疹と呼ばれ、他の慢性蕁麻疹に比べ症状が重篤で治癒までの期間も長 い傾向があると報告されている。自己免疫性蕁麻疹患者の血清中に含まれる自 己抗体は、IgE
に対する抗体(以下抗IgE
抗体と呼ぶ)や高親和性IgE
受容体high affinity receptor for IgE
(FcεRI
)α
鎖に対する抗体(以下抗α
鎖抗体と 呼ぶ)が報告されている。しかし、これらの自己抗体がCSU
の病因にどのよ うに関わっているかは未だに明らかにされていない。活性化したマスト細胞から遊離産生されるヒスタミンやロイコトリエン
C
4などのメディエーターは、蕁麻疹症状発症を誘導する。患者血清中に皮膚マス ト細胞を活性化する因子が存在することを検証する方法として、自己血清の皮 内注射により生じた膨疹を測定する自己血清皮内テスト(
autologous serum
skin test, ASST
)が知られている。しかし、血清中のどの成分がマスト細胞の活性化を惹起することができるかは十分に理解されていない。
ASST
はシクロ スポリンの効果予測に利用できるとの報告もあるが、ASST
の判定基準は施設 間で統一性がないため、臨床症状との関連性は不明瞭である。目的:本研究では、
CSU
患者における抗IgE
抗体および抗α
鎖抗体と臨床的特 徴の関連性およびその役割を調べることを目的とした。方法:
CSU
患者109
人、および健常者コントロールnormal control (NC) 56
人 から採血を行い、血液を遠心分離し血清を得た。さらに血清からIgG
分画を精 製した。酵素免疫測定法により、精製IgG
分画中の抗IgE
抗体濃度、抗α
鎖抗2
体濃度を測定した。血清中の可溶性
FcεRIα
鎖の細胞外領域(以下可溶性α
鎖と 呼ぶ)濃度を調べた。抗IgE
抗体、抗α
鎖抗体濃度と臨床的特徴との関連性を 調べた。抗α
鎖抗体は、血清中に可溶性α
鎖が存在すると報告されているため、3
種類の測定方法を用いた。①従来の測定法による、可溶性α
鎖の結合していな い抗α
鎖抗体(以下フリー抗α
鎖抗体と呼ぶ)とIgG
の片側の可変領域に可溶 性α
鎖が結合した抗α
鎖抗体の濃度の総和(以下従来法抗α
鎖抗体と呼ぶ)の 測定、②IgG
の片側および両側の可変領域に可溶性α
鎖が結合した抗α
鎖抗体 の濃度の総和の測定、③フリー抗α
鎖抗体とIgG
の片側および両側の可変領域 に可溶性α
鎖が結合した抗α
鎖抗体の濃度の総和(以下総抗α
鎖抗体と呼ぶ)の測定である。これにより、フリー抗
α
鎖抗体を算出した。検体の一部でIgG1
分画とIgG4
分画を測定した。ASST
を行ったCSU
患者群についても同様の調 査を行った。IgE crosslinking-induced luciferase expression (EXiLE)
法により 精製IgG
のマスト細胞活性化能を調べた。統計学的解析はMann-Whitney-U test
またはFisher’s exact test
を用いた。p < 0.05
を有意とした。結果:抗
IgE
抗体濃度はCSU
患者群の方がNC
群よりも統計学的に有意に高 値だった(p < 0.0001
)が、臨床的なパラメーターとは相関がなかった。従来 法抗α
鎖抗体濃度はCSU
患者群とNC
群の間に統計学的な有意差はなかった(
p = 0.838
)が、CSU
患者群の間ではASST
の結果やシクロスポリンの治療 効果と相関があった(それぞれp = 0.0289
、p = 0.00683
)。そこでその要因に ついて検討したところ、①可溶性α
鎖濃度は、NC
群の方がCSU
患者群より も統計学的に有意に高値であった(p = 0.0359
)。②可溶性α
鎖が結合しておら ず、α
鎖の架橋が可能なフリー抗α
鎖抗体濃度は、NC
群の方がCSU
患者群よ りも統計学的に有意に高値だった(p = 0.0262
)が、フリー抗α
鎖抗体の3
IgG1/IgG4
比はCSU
患者群の方がNC
群よりも統計学的に有意に高値だった(
p = 0.0098
)。③抗α
鎖抗体によるマスト細胞脱顆粒能の指標としてEXiLE
法を用いたところ、抗α
鎖抗体によるα
鎖架橋の結果のNFAT
の転写活性はCSU
患者群の方がNC
群よりも統計学的に有意に高値であり(p < 0.0001
)、 またCSU
患者群はマスト細胞活性化能と従来法抗α
鎖抗体濃度に有意な正の 相関があった(p < 0.0001
)。結語:従来法抗
α
鎖抗体濃度は、NC
との有意差がみられなかったものの、CSU
患者群のみで検証すると従来法抗α
鎖抗体濃度高値群は有意にASST
に 陽性であり、シクロスポリンが有効であったことからCSU
の病態には抗IgE
抗体よりも抗α
鎖抗体が関与していると考えられた。その要因として、CSU
患者群の抗α
鎖抗体がマスト細胞の活性化能を持つことが明らかとなった。そ して、フリー抗α
鎖抗体のIgG1/IgG4
比はCSU
患者群の方がNC
群よりも統 計学的に有意に高値であったことから、IgG1
分画抗α
鎖抗体はマスト細胞の 活性化能が高いと考えられた。さらに、NC
群では可溶性α
鎖が抗α
鎖抗体と マスト細胞や好塩基球の細胞膜表面のFcεRI
との結合性を阻害している可能性 があった。一方、抗IgE
抗体濃度は臨床的特徴と明らかな関連はなかった。以 上より、臨床の場においてCSU
患者群の抗α
鎖抗体濃度を測定することは、マスト細胞の活性化能を予測できるものであり、バイオマーカーとして重要で ある。
4
緒言
1.
慢性特発性蕁麻疹蕁麻疹は日本皮膚科学会蕁麻疹診療ガイドラインの中で、「膨疹、すなわち紅 斑を伴う一過性、限局性の浮腫が病的に出没する疾患であり、多くは痒みを伴う」
と定義されている。蕁麻疹の分類を表
1
に示す。蕁麻疹は4
つのグループ、16
の病型に分けられており、その中で個々の皮疹に関する直接的原因または誘因 なく自発的に膨疹が出現する蕁麻疹は特発性蕁麻疹に分類される。さらにその うち4
週以上持続するものを慢性特発性蕁麻疹(chronic spontaneous urticaria, CSU
)と定義している。欧米では特発性蕁麻疹のうち、6
週以上持続するものがCSU
と定義されている(1)。慢性蕁麻疹のうち、
50
~75%
がCSU
である(2)。また生涯で1/4
以上の人がCSU
を経験し、定点観測では全人口の0.5
~1.0%
がCSU
を患っている(3)。繰り 返される痒みや膨疹により睡眠や社会生活、外観の変化がもたらすquality of life
(QoL
)の低下は心不全のそれと同等とも言われており重大な社会問題とみ なされている(4)。2.
慢性特発性蕁麻疹とマスト細胞皮膚マスト細胞から放出されたヒスタミンなどの生理活性物質は、皮膚微小 血管や神経系に作用し、紅斑、膨疹、および痒みなどの蕁麻疹症状を誘発する。
マスト細胞は、抗原特異的な
IgE
が細胞表面に発現する高親和性IgE
受容体(
high affinity receptor for IgE, FcεRI
)に結合し、多価抗原によりFcεRI
が架 橋されると活性化する。近年ヒト化抗IgE
モノクローナル抗体であるオマリズ マブがCSU
に効果があることが報告されている。その効果には、以下の3
つの 作用機序が考えられている。①オマリズマブがフリーのIgE
と結合するため、5
血中のフリーの
IgE
を減少させ、その結果好塩基球や肥満細胞上のFcεRI
の発 現が低下し、脱顆粒が抑制される(5)、②オマリズマブとフリーのIgE
の複合体が アレルゲンと結合する(6)、③形質細胞からのIgE
産生を低下させる(7)。これらの ことはCSU
患者において、マスト細胞がIgE-FcεRI
を介するシグナル伝達経 路で活性化していることを支持している。オマリズマブを中止するとすぐに症 状が戻ってしまうことから、オマリズマブは症状を抑えることはできても治癒 はできないと報告されている(8)。3.
慢性特発性蕁麻疹と自己抗体CSU
患者の血清中に、自己抗体が存在していることが報告されている(9)。自 己抗体が検出されるCSU
を自己免疫性蕁麻疹と呼ぶ。IgE
に対する抗体(以下 抗IgE
抗体と呼ぶ)もしくはFcεRI
のα
鎖に対する抗体(以下抗α
鎖抗体と呼 ぶ)が主な自己抗体であることが報告されている(10)。全CSU
患者の5
~10%
に 抗IgE
抗体が、30
~45%
に抗α
鎖抗体が検出される(1)。またHatada
らはCSU
患者において自己反応性抗二本鎖デオキシリボ核酸(double stranded DNA, ds- DNA
)IgE
抗体が有意に上昇しており、CSU
患者の好塩基球を直接活性化する ことを報告した(11)。自己免疫性蕁麻疹は他の
CSU
に比べて症状が重篤で、寛解に至るまでの期間 も長い傾向にあり(12)、自己抗体が慢性特発性蕁麻疹の重症化や治療効果の阻害 に関与することが示唆される。しかしながら、健常者や他の自己免疫性疾患にも 自己抗体が検出されている(13)。また自己抗体が常に血中に存在するにもかかわ らず蕁麻疹の出現は他のCSU
と同様に消長がある。CSU
の自己抗体に注目した研究は数多く存在する。臨床組織学的に検討した 報告(2)、抗α
鎖抗体の新しい検出法を提案する報告(14)、CSU
を含めた多数の自6
己免疫疾患における抗
α
鎖抗体を検証した報告(13)、患者血清中の自己抗体が好 塩基球を活性化するという報告(10)、CSU
患者血清の中でマスト細胞を活性化す るものとしないものがあるとする報告など(13)、その切り口も様々である。ただ し複数の自己抗体の中で、抗α
鎖抗体に着目した研究が多く、CSU
における抗IgE
抗体について検証する報告(15)は少ない。これまでにCSU
の自己抗体に関す る研究が進められているが、未だに病態や臨床症状との関連について明確な結 論は得られていない。その理由として、自己抗体と他の因子が複合的に絡み合い、CSU
の病因になることがうかがわれる。4.
自己血清皮内テスト(autologous serum skin test, ASST
)皮膚マスト細胞を活性化させる血清中の因子を確認する方法として、自己血 清の皮内注射により生じた膨疹を測定する
ASST
が知られている。ASST
陽性 のうち一部が抗IgE
抗体あるいは抗α
鎖抗体による反応と考えられている(16)。ASST
陽性の患者ではCSU
治療の第3
選択であるシクロスポリンが有用である とされているが(17)、ASST
の陽性率は、患者の選択法や重症度、皮内注射する血 清量、ASST
施行から計測までの時間、生理食塩水注射部位と比べどれほど膨疹 が大きければ陽性とするかの判断基準が施設間で異なるため、4.1
~76.5%
と幅 がある(17)。そのためASST
と臨床症状の関連性は未だ明らかにされていない(17)。ASST
陽性患者の血清で膨疹を惹起する因子を追求した研究がある。その研究 は膨疹を惹起する因子はIgG
分画、補体、IgE
ではないと報告しており、未だ その成分は不明である(18)。7
研究の目的
本研究では、
CSU
患者における抗IgE
抗体および抗α
鎖抗体と臨床的特徴の 関連性とその役割を調べることを目的とした。期待される成果
この研究結果は、
CSU
の病態、および効果的な治療法を選択するための検査 法を提示することができる。さらに、自己抗体がCSU
の病態にどのように関与 するかを解明できる。8
対象・使用試薬
(1)
倫理的考慮本研究の生命倫理に関しては、日本大学医学部倫理委員会、臨床研究委員会に 研究倫理および臨床研究審査申請書を提出し、委員会の承認を得た。患者の血清 採取に際して、承認番号
RK-150908-12
として承認を得た。ヒト皮膚由来培養 マスト細胞の使用に際して、承認番号RK-120210-03
として承認を得た。すべ ての被験者は、ヘルシンキ宣言に従い、インフォームドコンセントを得た。安全 対策に関しては、日本大学遺伝子組換え実験実施規定に定める学長の確認を受 けた後に実施した。(2)
対象2005
~2015
年の間に日本大学医学部附属板橋病院の皮膚科を受診した109
人のCSU
患者(男34
人、女75
人:平均年齢46.4
歳)と56
人の健常者(normal control, NC
)(男24
人、女33
人:平均年齢34.5
歳)を対象とした。109
人のCSU
患者のうち、61
人にASST
が施行され、25
人が陽性であった(陽性率:40.9 %
)。CSU
の 診 断 はEuropean Academy of Allergy and Clinical Immunology
(EAACI
)の診断基準に従った。NC
はアトピー素因がなく、アレ ルギー疾患と慢性蕁麻疹の既往がなく、現在蕁麻疹を発症していない人々を対 象とした。(3)
使用試薬以下の試薬はそれぞれ下記の会社から購入した。
Ab-Rapid SPiN EX
(ProteNova, Kagawa, Japan
)Amicon centrifugal filter units
(Merck millipore, Darmstadt, HE, GER
)9
Amicon ultra-4 centrifugal filter devices
(Merck Millipore, Darmstadt, HE, GER
)ビオチン標識マウス抗ヒト
IgG
(Clone G18-145
)(BD Pharmingen, Franklin Lakes, NJ, USA
)ビオチン標識マウス抗ヒト
IgG1
(Clone G17-1
)(BD Pharmingen, Franklin Lakes, NJ, USA
)ビオチン標識マウス抗ヒト
IgG4
(Clone G17-4
)(BD Pharmingen, Franklin Lakes, NJ, USA
)Centricon Plus-70
(Merck Millipore, Darmstadt, HE, GER
)マウス抗ヒト
FcεRIα
モノクローナル抗体(CRA1
、isotype IgG2bκ
)(
BioAcademia, Osaka, Japan
)マウス抗ヒト
FcεRIα
モノクローナル抗体(CRA2
、isotype IgG1κ
)(
BioAcademia, Osaka, Japan
)ウシ胎児血清(
Gibco, Waltham, MA, US
)Geneticin
(Gibco, Waltham, MA, USA
)GlutaMAX-I
(Gibco, Waltham, MA, USA
)HiTrap NHS-activated HP column
(GE healthcare, Tokyo, Japan
)HRP
標識マウス抗ヒトIgE
モノクローナル抗体(Fitzgerald, North Acton, MA, USA
)HRP
標識マウス抗ヒトIgG
モノクローナル抗体(Clone G18-145
)(BD Pharminge, Franklin Lakes, NJ, USA
)HRP
標識ストレプトアビジン(Biolegend, San Diego, CA, USA
) ヒトIgE, myeloma
(Calbiochem, Darmstadt, HE, GER
)ヒト
IgG
(Jackson Immuno Research Laboratories, West Grove, PA, USA
)10
Hygromycin B
(Invitrogen, Waltham, MA, USA
)Ionomycin
(Plymouth Meeting, PA, USA
)Luciferase Assay Buffer (Promega, Madison, WI, USA) Luciferase Assay Substrate (Promega, Madison, WI, USA) MEM
(Gibco, Waltham, MA, USA
)MEM α, no nucleosides
(Gibco, Waltham, MA, USA
)メトトレキサート 水和物(
Sigma-Aldrich, Darmstadt, HE, GER
) パラメトキシアンフェタミン(BioVision, Milpitas, CA, USA
)PBS
(TAKARA, Shiga, Japan
)Penicillin-Streptomycin
(Sigma-Aldrich, Darmstadt, HE, GER
)TBS
粉末(Roman Industries, Tokyo, Japan
)TMB microwell peroxidase substrate system
(KPL, Gaithersburg, MD, USA
)Tween 20
(Tokyo Chemical Industry, Tokyo, Japan
)11
方法 1
1-1.
検体血清からのIgG
の精製Ab-Rapid SPiN EX
を用いて、患者の血清からIgG
分画を精製した。付属の カラムの下部についているスナップオフプラグを外し、カラムを付属の2 mL
チ ューブにセットした。2000 × g
で5
秒間遠心し、ゲル保存液を取り除いた。カ ラム内にPBS 600 μL
を入れ、2000 × g
で5
秒間遠心し、ゲルを平衡化した。カラムの下にスナップオフプラグを刺し込み、
PBS
で5
倍希釈した血清600 μL
を入れた。30
~60
秒に1
回転倒混和しながら10
分間反応させ、スナップオフ プラグを外し2000 × g
で5
秒間遠心した。PBS 600 μL
をカラムに入れ、2000
× g
で5
秒間遠心し、合計3
回洗浄した。カラムの下にスナップオフプラグを刺 し込み、付属の溶出液(0.1 M Glycine-HCl
)(pH 2.5
~3.0
)を200 μL
入れた。タッピングで混和後、
1
分間静置した。スナップオフプラグを外し、付属の中和 液(1 M Tris
)5 μL
が入ったマイクロチューブにカラムをセットした。2000 × g
で5
秒間遠心し、IgG
溶出液を回収し、PBS 300 μL
を加えた。Amicon centrifugal filter units
付属の回収チューブに付属のフィルターデバ イスをセットし、総量500 μL
のIgG
溶出液を入れた。15000 × g
で15
分間遠 心した。新しい回収チューブにフィルターデバイスを逆さまにセットし、1000
× g
で2
分間遠心した。回収したIgG
溶出液にPBS 600 μL
を入れ、最終的に 血清の5
倍希釈の精製IgG
とした。1-2.
抗IgE
抗体濃度測定酵素免疫測定法(
enzyme-linked immunosorbent assay, ELISA
)により、抗IgE
抗体濃度を測定した。詳細な方法を図1
に示す。Maxisorp plates
(Cosmo
bio company, Tokyo, Japan
)にヒトIgE, myeloma
(1 μg / mL
)を100 μL
入12
れ、
pH 7.4
、4
℃で一晩静置して固相化した。Tris-buffered saline
(TBS
)1000 ml
に、Tween 20
を0.1 %
になるように加え、洗浄液として用いた。洗浄液でプ レートを4
回洗浄した。PBS
にFBS
を10%
になるように加え、ブロッキング 液として用いた。非特異的な結合を防ぐため、ブロッキング液100 μL
を入れ、室温で
1
時間ブロッキングした。洗浄液でプレートを4
回洗浄し、PBS
で10
倍 希釈した精製IgG
分画を100 μL
加え、室温で2
時間静置した。洗浄液でプレ ートを4
回洗浄し、PBS
で1
万倍希釈したHorseradish peroxidase
(HRP
)標 識マウス抗ヒトIgG
モノクローナル抗体を100 μL
入れ、室温で1
時間静置し た。洗浄液でプレートを4
回洗浄し、3,3',5,5'-tetramethylbenzidine
(TMB
)microwell peroxidase substrate system
を用い発色させた。2N H
2SO
4で反応 を停止させ、Multiskan GO microplate spectrophotometer
(Thermo Fisher Scientific, Kanagawa, Japan
)を使用し450 nm
の吸光度を測定した。ヒトIgG
を50 ng /mL
から0.775 ng / mL
まで倍々希釈で固相化し、HRP
標識マウス抗 ヒトIgG
モノクローナル抗体で検出したものを指標にし、ある検体の精製IgG
に含まれる抗IgE
抗体濃度をヒトIgE, myeloma
(1 μg / mL
)を固相化したELISA
で半定量的に測定した。プレート間の補正のため、その検体の抗IgE
抗体を毎回必ず測定し、検量曲線を描き、検体の精製
IgG
に含まれる抗IgE
抗体 濃度を算出した。1-3.
リコンビナント可溶性FcεRIα
鎖細胞外領域の精製FcεRIα
鎖細胞外領域を分泌するCHO
(Chinese hamster ovarian
)細胞(CHO
/ FcεRIα
)の培養上清からリコンビナント可溶性FcεRIα
鎖細胞外領域(以下可 溶性α
鎖と呼ぶ)を精製した(19)。MEM α 45 mL
、ウシ胎児血清(Fetal bovine
serum, FBS
)5 mL
(10%
)、5 mM
メトトレキセート25 μL
で培養用培地を作13
成した。
T225
フラスコ(CORNING, Corning, NY, USA
)にCHO / FcεRIα
を1 × 10
6cell
でまき、培養用培地30 mL
で培養した。70
~90%
コンフルエントに なったら、MEM α 49.5 mL
、FBS 0.5 mL
(1%
)、5 mM
メトトレキセート25 μL
で作成した回収用培地30 mL
に交換した。96
時間後に上清を回収した。新 しい回収用培地30 mL
を入れ、さらに96
時間後に2
回目の上清を回収した。以上を繰り返し行い、上清を
1000 mL
貯めた。HiTrap NHS-activated HP column
にシリンジを接続し、5 ml
の1 mM HCl
を、流速1
滴/
秒(または0.2
~1 ml / min
)で送液した。マウス抗ヒトFcεRIα
モノクローナル抗体(CRA2
)10 mg
を限外濾過し、0.2 M NaHCO
3/ 0.5 M NaCl
(カップリング液)
1 mL
に溶媒を交換した。CRA2 1 mL
を流速1
滴/
秒(または
0.2
~1 ml / min
)で送液した。カラム出口を付属のストッププラグで密閉し、室温で
30
分間反応させた。3 ml
のカップリング液を、流速1
滴/
秒(ま たは0.2
~1 ml / min
)で送液した。6 ml
の0.5 M C
2H
7NO / 0.5 M NaCl
(ブロ ッキング液)を流速1
滴/
秒(または1
~2 ml / min
)で送液した。6 ml
のCH
3COONa / 0.5 M NaCl
(洗浄液、pH 4.0
)を流速1
滴/
秒(または1
~2 ml / min
)で送液した。6 ml
のブロッキング液を流速1
滴/
秒(または1
~2 ml / min
)で送液し、室温で30
分間反応させ、未反応活性基に対する非特異的な結 合を防ぐため、ブロッキングを行った。6 ml
の洗浄液を流速1
滴/
秒(または1
~2 ml / min
)で送液した。6 ml
のブロッキング液を流速1
滴/
秒(または1
~
2 ml / min
)で送液した。6 ml
の洗浄液を流速1
滴/
秒(または1
~2 ml / min
)で送液した。Phosphate buffered saline
(PBS
)2 mL
を流速1
滴/
秒(または
1
~2 ml / min
)で送液し、免疫カラムを作成した。Centricon Plus-70
のフィルターカップに上清70 mL
を入れ、回収カップに セットした。3500 × g
で15
~40
分間遠心した。フィルターカップに濃縮カップ14
を逆さまにセットし、遠心分離機にそのデバイスを逆さまに設置し、
1000 × g
で2
分間遠心した。濃縮カップをフィルターカップから外し、濃縮液を回収した。濃縮液を
PBS
で希釈し、総量1 mL
にした。作成した免疫カラムに濃縮液1 mL
を入れ、室温で4
時間反応させた。PBS 10 mL
で2
回洗浄し、0.1 M Glycine / 0.2 M NaCl
(溶出液、pH2.7
)5 mL
で溶出した。溶出物を1 mL
ずつ採取し、1M Tris-HCl
(中和液、pH9.0
)で直ちに中和した。Amicon ultra-4 centrifugal filter devices
のフィルターデバイスに溶出物を 入れ、7500 × g
で10
~20
分間遠心した。回収チューブから濃縮液を回収し、PBS
で希釈した。1-4.
抗α
鎖抗体濃度測定過去に報告されている、リコンビナント可溶性
α
鎖を固相化する方法で抗α
鎖抗体濃度を測定した(14), (20)-(21)。この測定法で検出される抗α
鎖抗体を、以下 従来法抗α
鎖抗体と呼ぶ。測定法の詳細を図2
に示す。Maxisorp plates
に前述 のリコンビナント可溶性α
鎖(1 μg / mL
)を100 μL
入れ、pH 7.4
、4
℃で一晩 静置して固相化した。TBS 1000 ml
に、Tween 20
を0.1 %
になるように加え、洗浄液として用いた。洗浄液でプレートを
4
回洗浄し、非特異的な結合を防ぐため、
10% FBS
を100 μL
入れ、室温で1
時間ブロッキングした。洗浄液でプレートを
4
回洗浄し、PBS
で10
倍希釈した精製IgG
分画を100 μL
入れ、室 温で2
時間静置した。洗浄液でプレートを4
回洗浄し、PBS
で1
万倍希釈したHRP
標識マウス抗ヒトIgG
モノクローナル抗体を100 μL
入れ、室温で1
時間 静 置 し た 。 洗 浄 液 で プ レ ー ト を4
回 洗 浄 し 、TMB microwell peroxidase
substrate system
を用い発色させた。2N H
2SO
4で反応を停止させ、Multiskan
GO microplate spectrophotometer
を使用し450 nm
の吸光度を測定した。プレ15
ート間の補正のため、ヒト型化した抗
α
鎖モノクローナル抗体(22)を62.5 ng /
mL
から0.975 ng / mL
まで倍々希釈したものを毎回必ず測定し、検量曲線を描き、検体の精製
IgG
に含まれる従来法抗α
鎖抗体濃度を算出した。1-5. ASST
Konstantinou
らが報告したASST
の方法を(17)、一部改変してASST
を行っ た。静脈血を10 mL
採取し15
分静置した後、3000 rpm
で15
分遠心分離し血 清を回収した。1mL
シリンジと27G
針を用い、血清50 μL
を前腕屈側に皮内注 射した。陰性コントロールとして血清注射部位から3
~5 cm
離した部位に生理食塩水を
50 μL
皮内注射した。30
分後に判定し、膨疹の直径が陰性コントロールより
2 mm
以上あるものを陽性とした。1-6.
患者背景との比較実験で得られたデータと患者背景(性別、年齢、罹患期間、
ASST
の結果、重 症度、他疾患の自己抗体の有無、末梢血非特異的IgE
値、一般採血結果、シク ロスポリンの治療効果、臨床経過)を調査した。重症度は日本皮膚科学会の蕁麻 疹診療ガイドラインに準じた。重症度分類を表2
に示す。1
:無症状、2
:症状 はあるが気にならない、3
:不快ではあるが我慢できる、4
:支障はあるが何とか 生活できる、5
:社会生活ができない、6
:ショックないしそれに準ずる症状と分 類した。他疾患の自己抗体として、抗核抗体、抗サイログロブリン抗体、抗マイ クロゾーム抗体を測定した。臨床経過の分類を表3
に示す。臨床経過は、寛解:
治療をしなくても症状が出現しない、再燃性:
治療をstep up
する途中で膨疹が 完全に消失する期間があるがstep down
すると再燃する、持続性:
治療をstep
up
しても症状は軽快するが膨疹は完全に消失せずstep down
すると悪化する、16
抵抗性
:
治療に全く反応しない、不明:
短期で通院を中断し経過が不明の状態と 分類した。シクロスポリンの治療効果は、シクロスポリン内服開始前と開始4
週 後のUrticaria activity score
(UAS
)7
を比較し改善率を算出した(23)。UAS7
と は患者の痒みの程度と(0 = none, 1 = mild, 2 = moderate, 3 = severe
)膨疹の 数(0 = none, 1 = 1~20, 2 = 21~50, 3 = 50
以上)によるスコアを1
日ごとに合 計し(スコア: 0
~6
)、さらにそのスコアを1
週間分合計したものである(スコ ア: 0
~42
)(24)。1-7.
統計解析実験データの
2
群間の統計学的解析はMann-Whitney-U test
またはFisher’s
exact test
を用いた。p < 0.05
を有意とした。17
結果 1
1-1. CSU
患者群とNC
群間の精製IgG
に含まれる抗IgE
抗体濃度の比較CSU
患者群は中央値0.627 μg / mL
(四分位範囲: 0.379 – 1.01
)(n = 109
) であり、NC
群は中央値0.373 μg / mL
(四分位範囲: 0.246 – 0.602
)(n = 56
) だった。CSU
患者群の方がNC
群よりも抗IgE
抗体濃度は統計学的に有意に高 かった(p < 0.0001
)(図3
)。Receiver operating characteristic
(ROC
)曲線を 描き導き出したカットオフ値は0.465 μg / mL
だった。以下ではカットオフ値以 上を高値群、カットオフ値未満を低値群と呼ぶ。抗IgE
抗体濃度高値群のCSU
患者と、抗IgE
抗体濃度高値群のNC
とのオッズ比は4.46
だった。1-2. CSU
患者群とNC
群間の従来法抗α
鎖抗体濃度の比較CSU
患者群は中央値0.355 μg / mL
(四分位範囲: 0.239 – 0.553
)(n = 109
) であり、NC
群は中央値0.386 μg / mL
(四分位範囲: 0.232 – 0.563
)(n = 56
) だった。CSU
患者群とNC
群間の従来法抗α
鎖抗体濃度に統計学的な有意差は なかった(p = 0.838
)(図4
)。1-3.
抗IgE
抗体濃度と従来法抗α
鎖抗体濃度の相関CSU
患者群とNC
群それぞれにおいて、抗IgE
抗体濃度と、従来法抗α
鎖抗 体濃度に相関があるかどうかをSpearman
検定で調べた。NC
群ではr = 0.118
、p = 0.390
であり、相関がなかった(抗IgE
抗体濃度および抗α
鎖抗体濃度が極端に高値だった
1
検体は除いて検定した)が、CSU
患者群ではr = 0.324
、p =
0.0006
であり、相関があった(図5
)。18
1-4. ASST
陽性群と陰性群間の抗IgE
抗体濃度、従来法抗α
鎖抗体濃度の比較ASST
陽性群の抗IgE
抗体濃度の中央値は0.738 μg / mL
(四分位範囲: 0.424 – 1.21
)(n = 25
)であり、ASST
陰性群の抗IgE
抗体濃度の中央値は0.628 μg / mL
(四分位範囲: 0.272 – 0.954
)(n = 36
)であった。ASST
陽性群とASST
陰 性群間の抗IgE
抗体濃度に統計学的な有意差はなかった(p = 0.189
)(図6
)。ASST
陽性群の従来法抗α
鎖抗体濃度の中央値は0.450 μg / mL
(四分位範囲: 0.304 – 0.799
)(n = 25
)であり、ASST
陰性群の中央値は0.319 μg / mL
(四分 位範囲: 0.214 – 0.506
)(n = 36
)だった。ASST
陽性群はASST
陰性群よりも 従来法抗α
鎖抗体濃度は統計学的に有意に高かった(p = 0.0289
)。ROC
曲線を 描き導き出したカットオフ値は0.578 μg / mL
だった。ASST
陽性で従来法抗α
鎖抗体濃度高値群と、ASST
陰性で従来法抗α
鎖抗体濃度高値群とのオッズ比 は4.13
だった(図7
)。1-5.
抗IgE
抗体濃度高値群と低値群における臨床的特徴の比較CSU
患者群とNC
群の間で統計学的な有意差が出た抗IgE
抗体濃度と臨床的 特徴との関連を調べた。ROC
曲線から得られた抗IgE
抗体濃度のカットオフ値(
0.465 μg / mL
)を基に測定結果を2
群に分け、カットオフ値以上を高値群、カットオフ値未満を低値群とし、患者の特徴を比較したものを表
4
に示す。抗IgE
抗体濃度高値群の従来法抗α
鎖抗体濃度の平均は0.540 μg / mL
だった(n
= 74
)。低値群の平均は0.347 μg / mL
だった(n = 35
)。抗IgE
抗体濃度高値群 の方が低値群よりも従来法抗α
鎖抗体濃度が有意に高かった(p = 0.0267
)。治 療経過については抗IgE
抗体濃度高値群と低値群の間に統計学的な有意差はな かった。19
1-6. ASST
陽性群と陰性群における臨床的特徴の比較ASST
陽性群と陰性群間の臨床的特徴との関連を調べた。ASST
陽性と陰性で 測定結果を2
群に分け、患者の特徴を比較したものを表5
に示す。ASST
陽性群の従来法抗α
鎖抗体濃度の平均は0.597 μg / mL
だった(n = 25
)。ASST
陰性群の平均は0.396 μg / mL
だった(n = 36
)。ASST
陽性群の方 がASST
陰性群よりも従来法抗α
鎖抗体濃度が統計学的に有意に高かった(p = 0.0294
)。ASST
陽性群のシクロスポリン治療によるUAS7
改善率の平均は76.8%
だっ た(n = 18
)。ASST
陰性群のシクロスポリン治療によるUAS7
改善率の平均は21.1%
だった(n = 9
)。ASST
陽性群の方がASST
陰性群よりもシクロスポリン 治療によるUAS7
改善率が統計学的に有意に高かった(p = 0.00179
)。1-7.
シクロスポリンの治療効果の比較シクロスポリン治療による
UAS7
改善率について詳細に検討した。抗IgE
抗 体濃度高値群のシクロスポリン治療によるUAS7
改善率の中央値は75.0%
(四 分位範囲: 18.3 – 100
)(n = 19
)であり、低値群のシクロスポリン治療によるUAS7
改善率の中央値は55.0%
(四分位範囲: 15.0 – 95.7
)(n = 8
)だった。抗IgE
抗体濃度高値群と低値群間のシクロスポリン治療によるUAS7
改善率に統 計学的な有意差はなかった(p = 0.585
)(図8
)。ASST
陽性群のシクロスポリン治療によるUAS7
改善率の中央値は97.1%
(四 分位範囲: 58.0 – 100
)(n = 18
)であり、陰性群のシクロスポリン治療によるUAS7
改善率の中央値は16.7%
(四分位範囲: 0.00 – 20.0
)(n = 9
)だった。ASST
陽性群の方が陰性群よりもシクロスポリン治療によるUAS7
改善率は統計学的 に有意に高かった(p = 0.00179
)(図9
)。20
ASST
施行例で従来法抗α
鎖抗体濃度のカットオフ値(0.578 μg / mL
)を基 に2
群に分けシクロスポリンの効果を比較したところ、従来法抗α
鎖抗体濃度 高値群のシクロスポリン治療によるUAS7
改善率の中央値は100%
(四分位範 囲: 100 – 100
)(n = 7
)であり、低値群のシクロスポリン治療によるUAS7
改 善率の中央値は33.3%
(四分位範囲: 16.7 – 86.1
)(n = 20
)だった。従来法抗α
鎖抗体濃度高値群の方が低値群よりもシクロスポリン治療によるUAS7
改善率 は統計学的に有意に高かった(p = 0.00683
)(図10
)。21
小括 1
抗
IgE
抗体濃度はCSU
患者群の方がNC
群よりも統計学的に有意に高かっ たが、臨床的なパラメーターとは相関がなかった。従来法抗α
鎖抗体濃度はCSU
患者群とNC
群の間に統計学的な有意差はなかったが、CSU
患者群の間 ではASST
の結果やシクロスポリンの治療効果と相関があった。臨床的な評価 項目と相関があったのは抗α
鎖抗体濃度であったため、CSU
の病態に強く関 連しているのは抗α
鎖抗体濃度であることが推測された。血清中に可溶性α
鎖 が存在することが報告されている(25)-(26)。抗α
鎖抗体濃度にCSU
患者群とNC
群の間に統計学的な有意差が出ない理由として、NC
群の血清中には可溶性α
鎖が多く存在し、抗α
鎖抗体とマスト細胞や好塩基球の細胞膜表面のFcεRI
と の結合を阻害しているという仮説をたてた。そこで次に血清中の可溶性α
鎖を 測定し検討した。22
方法 2
2-1.
血清中の可溶性α
鎖濃度の測定ELISA
により、血清中の可溶性α
鎖濃度を測定した。詳細な方法を図11
に示す。
96 well EIA/RIA plates
(CORNING
)にマウス抗ヒトFcεRIα
モノクロ ーナル抗体(CRA1
)(3 μg / mL
)を50 μL
ずつ入れ、4
℃で一晩静置し固相化 した。0.05% Tween-20 PBS
(PBS-T
)を洗浄液として用いた。洗浄液300 μL
でプレートを3
回洗浄し、10% FBS
を200 μL
ずつ入れ室温で1
時間静置しブ ロッキングを行った。洗浄液でプレートを3
回洗浄し、2
倍希釈したCSU
、NC
の血清を50 μL
ずつ入れ、4
℃で一晩静置した。洗浄液でプレートを5
回洗浄 し、ヒトIgE, myeloma
(2 μg / mL
)を50 μL
ずつ入れ、室温で1
時間静置し た。洗浄液でプレートを5
回洗浄し、HRP
標識マウス抗ヒトIgE
(0.5 μg / mL
) を50 μL
ずつ入れ室温で1
時間静置した。洗浄液でプレートを5
回洗浄し、TMB microwell peroxidase substrate system
を用い発色させた。2N H
2SO
4で 反応を停止させ、Multiskan GO microplate spectrophotometer
を使用し450
nm
、570 nm
の吸光度を測定した。プレート間の補正のため、リコンビナント可溶性
α
鎖を100 ng / mL
から1.56 ng / mL
まで倍々希釈したものを毎回必ず 測定し、検量曲線を描き、検体の血清中の可溶性α
鎖濃度を算出した。指標とし た検量曲線の感度以下だった検体は、すべて最低感度濃度の1/2
(0.78 ng / mL
) として算出した。23
結果 2
2-1. CSU
患者群とNC
群間の血清中の可溶性α
鎖濃度の比較血清中に可溶性
α
鎖が存在することが報告されているため、CSU
患者群とNC
群間の血清中可溶性α
鎖濃度に有意差があるかを検証した。CSU
患者群の 血清中の可溶性α
鎖濃度の中央値は1.74 ng / mL
(四分位範囲: 0.78 – 5.50
)(n
= 109
)だった。NC
群の血清中の可溶性α
鎖濃度の中央値は3.14 ng / mL
(四 分位範囲: 0.78 – 10.7
)(n = 56
)だった。NC
群の方がCSU
患者群よりも血清 中可溶性α
鎖濃度は統計学的に有意に高かった(p = 0.0438
)(図12
)。24
小括 2
NC
群の血清中の可溶性α
鎖濃度はCSU
患者群と比較して統計学的に有意に 高く、抗α
鎖抗体とマスト細胞や好塩基球の細胞膜表面のFcεRI
との結合を阻 害しているという仮説を支持する結果が得られた。血清中に可溶性α
鎖が存在 することが確認されたため、血清中の抗α
鎖抗体は、理論上以下の3
つの形が 存在することになる。①可用性α
鎖が結合していないフリー抗α
鎖抗体、②IgG
の片側の可変領域に可用性α
鎖が結合した抗α
鎖抗体、③IgG
の両側の可 変領域に可用性α
鎖が結合した抗α
鎖抗体である。抗α
鎖抗体の分類を図13
に示す。そこで次に、特に活性化能が高いと思われるフリー抗α
鎖抗体濃度を 測定した。25
方法 3
3-1.
フリーの抗α
鎖抗体とIgG
の片側、および両側の可変領域に可溶性α
鎖を結合した抗
α
鎖抗体(以下総抗α
鎖抗体と呼ぶ)の濃度測定総抗
α
鎖抗体濃度を測定できるELISA
を構築し、その濃度を測定した。その 詳細な方法を図14
に示す。96 well EIA/RIA plates
にCRA1
(3 μg / mL
)を50 μL
ずつ入れ、4
℃で一晩静置し固相化した。0.05% Tween-20 PBS
(PBS-T
)を 洗浄液として用いた。洗浄液300 μL
でプレートを3
回洗浄し、10% FBS
を200 μL
ずつ入れ室温で1
時間静置しブロッキングを行った。洗浄液でプレートを
3
回洗浄し、リコンビナント可溶性α
鎖(100 ng / mL
)を50 μL
入れ、固相 化したCRA1
が準飽和状態となるように、室温で3
時間静置した。洗浄液でプ レートを3
回洗浄し、100
倍希釈したCSU
、NC
の精製IgG
を50 μL
ずつ入 れ、4
℃で一晩静置した。洗浄液でプレートを5
回洗浄し、ビオチン標識マウス 抗ヒトIgG
(1 μg / mL
)を50 μL
ずつ入れ、室温で1
時間静置した。洗浄液で プレートを5
回洗浄し、10% FBS
で1000
倍希釈したHRP
標識ストレプトア ビジンを50 μL
ずつ入れ室温で30
分間静置した。洗浄液でプレートを5
回洗 浄し、TMB microwell peroxidase substrate system
を用い発色させた。2N H
2SO
4で反応を停止させ、Multiskan GO microplate spectrophotometer
を使用し
450 nm
、570 nm
の吸光度を測定した。プレート間の補正のため、可溶性α
鎖100 ng / mL
を入れた後、ヒト型化した抗α
鎖モノクローナル抗体(22)を10
ng / mL
から0.156 ng / mL
まで倍々希釈したものを毎回必ず測定し、検量曲線 を描き、検体の精製IgG
に含まれる総抗α
鎖抗体濃度を算出した。26
3-2. IgG
の片側、および両側の可変領域に可溶性α
鎖を結合した抗α
鎖抗体(可溶性
α
鎖結合抗α
鎖抗体)の濃度測定可溶性
α
鎖結合抗α
鎖抗体濃度を測定できるELISA
を構築し、その濃度を測 定した。その詳細な方法を図15
に示す。96 well EIA/RIA plates
にCRA1
(3 μg / mL
)を50 μL
ずつ入れ、4
℃で一晩静置し固相化した。0.05% Tween-20 PBS
(PBS-T
)を洗浄液として用いた。洗浄液300 μL
でプレートを3
回洗浄し、
10% FBS
を200 μL
ずつ入れ室温で1
時間静置しブロッキングを行った。洗浄液でプレートを
3
回洗浄し、100
倍希釈したCSU
、NC
の精製IgG
を50 μL
ずつ入れ、4
℃で一晩静置した。洗浄液でプレートを5
回洗浄し、ビオチン 標識マウス抗ヒトIgG
(1 μg / mL
)を50 μL
ずつ入れ、室温で1
時間静置した。洗浄液でプレートを
5
回洗浄し、10% FBS
で1000
倍希釈したHRP
標識スト レプトアビジンを50 μL
ずつ入れ室温で30
分間静置した。洗浄液でプレートを5
回洗浄し、TMB microwell peroxidase substrate system
を用い発色させた。2N H
2SO
4で反応を停止させ、Multiskan GO microplate spectrophotometer
を使用し
450 nm
、570 nm
の吸光度を測定した。プレート間の補正のため、可溶性
α
鎖100 ng / mL
を入れた後、ヒト型化した抗α
鎖モノクローナル抗体(22)を10 ng / mL
から0.156 ng / mL
まで倍々希釈したものを毎回必ず測定し、検量 曲線を描き、検体の精製IgG
に含まれる可溶性α
鎖結合抗α
鎖抗体の濃度を算 出した。3-3.
フリー抗α
鎖抗体濃度の測定総抗
α
鎖抗体濃度から可溶性α
鎖結合抗体濃度を引き、フリー抗α
鎖抗体濃 度を算出した。27
結果 3
3-1. CSU
患者群とNC
群間の総抗α
鎖抗体濃度の比較CSU
患者群は中央値0.895 μg / mL
(四分位範囲: 0.520 – 2.54
)(n = 42
)で あり、NC
群は中央値1.05 μg / mL
(四分位範囲: 0.586 – 2.25
)(n = 42
)だっ た。CSU
患者群とNC
群間の総抗α
鎖抗体濃度に統計学的な有意差はなかった(
p = 0.734
)(図16
)。3-2. CSU
患者群とNC
群間の可溶性α
鎖結合抗α
鎖抗体濃度の比較CSU
患者群は中央値0.697 μg / mL
(四分位範囲: 0.269 – 1.40
)(n = 42
)で あり、NC
群は中央値0.417 μg / mL
(四分位範囲: 0.261 – 0.850
)(n = 42
)だ った。CSU
患者群とNC
群間の可溶性α
鎖結合抗α
鎖抗体濃度に統計学的な有 意差はなかった(p = 0.209
)(図17
)。3-3. CSU
患者群とNC
群間のフリー抗α
鎖抗体濃度の比較総抗
α
鎖抗体と可溶性α
鎖結合抗α
鎖抗体濃度の測定は同じプレートで行い、測定値の差をフリー抗
α
鎖抗体濃度として算出した。CSU
患者群は中央値0.325
μg / mL
(四分位範囲: 0.163 – 0.979
)(n = 42
)であり、NC
群は中央値0.546
μg / mL
(四分位範囲: 0.309 – 1.51
)(n = 42
)だった。NC
群の方がCSU
患者 群よりもフリー抗α
鎖抗体濃度は統計学的に有意に高かった(p = 0.0262
)(図18
)。28
小括 3
フリー抗
α
鎖抗体が主にマスト細胞や好塩基球の活性化能を持つと考えられる が、フリー抗α
鎖抗体濃度はNC
群の方がCSU
患者群よりも統計学的に有意に 高かった。そこで2
つの仮説を考えた。①Soundararajan
ら(27)は、CSU
患者の 総IgG
におけるIgG1
分画がIgG4
分画より好塩基球活性化能が高く、抗α
鎖 抗体の機能の決定にはIgG
分画の配分が重要であると考察した報告があるため、NC
群ではマスト細胞の活性化能の低いIgG4
分画の抗α
鎖抗体濃度が高い可能 性がある。②フリー抗α
鎖抗体がCSU
患者群では既にマスト細胞や好塩基球に 結合しているため見かけ上低値にみえる可能性がある。そこで②は検討が難し いため、次に①の検証を行った。29
方法 4
4-1.
各抗α
鎖抗体のIgG1
、IgG4
分画の測定ditection antibody
をビオチン標識マウス抗IgG4
およびIgG1
(1 μg / mL
) に変更し、方法3
と同様のELISA
の系を用い、IgG4
分画およびIgG1
分画総 抗α
鎖抗体価を算出した。同様にIgG4
分画可溶性α
鎖結合抗α
鎖抗体価を算 出した。IgG4
分画総抗α
鎖抗体価からIgG4
分画可溶性α
鎖結合抗体価を引き、IgG4
分画フリー抗α
鎖抗体価を算出した。30
結果 4
4-1. CSU
患者群とNC
群間のIgG4
分画総抗α
鎖抗体価の比較CSU
患者群の吸光度は中央値0.0250
(OD450
)(四分位範囲: 0.00716 – 0.0598
)(
n = 42
)であり、NC
群の吸光度は中央値0.0315
(OD450
)(四分位範囲: 0.0148 – 0.0850
)(n = 42
)だった。CSU
患者群とNC
群間のIgG4
分画総抗α
鎖抗体 価に統計学的な有意差はなかった(p = 0.0931
)(図19
)。4-2. CSU
患者群とNC
群間のIgG4
分画可溶性α
鎖結合抗α
鎖抗体価の比較CSU
患者群の吸光度は中央値0.0252
(OD450
)(四分位範囲: 0.00968 – 0.0483
)(
n = 42
)であり、NC
群の吸光度は中央値0.0227
(OD450
)(四分位範囲: 0.00974 – 0.0629
)(n = 42
)だった。CSU
患者群とNC
群間のIgG4
分画可溶性α
鎖結 合抗α
鎖抗体価に統計学的な有意差はなかった(p = 0.540
)(図20
)。4-3. CSU
患者群とNC
群間のIgG4
分画フリー抗α
鎖抗体価の比較総抗
α
鎖抗体と可溶性α
鎖結合抗α
鎖抗体の測定は同じプレートで行い、測 定値の差をフリー抗α
鎖抗体の吸光度として算出した。CSU
患者群の吸光度は 中央値0.000575
(OD450
)(四分位範囲:
-0.00211 – 0.0105
)(n = 42
)であ り、NC
群の吸光度は中央値0.00973
(OD450
)(四分位範囲: 0.00361 – 0.0176
)(
n = 42
)だった。NC
群の方がCSU
患者群よりもIgG4
分画フリー抗α
鎖抗 体価は統計学的に有意に高かった(p < 0.0001
)(図21
)。ASST
試行例でも同様に比較した。ASST
陽性群のIgG4
分画フリー抗α
鎖抗 体価の中央値は0.00175
(OD450
)(四分位範囲: 0.000469 – 0.0150
)(n = 8
) であり、ASST
陰性群の中央値は0.000623
(OD450
)(四分位範囲: 0.000145 –
0.00935
)(n = 8
)であった。ASST
陽性群とASST
陰性群間のIgG4
分画フリ31
ー抗
α
鎖抗体価に統計学的な有意差はなかった(図22
)。4-4. CSU
患者群とNC
群間のIgG1
分画およびIgG4
分画総抗α
鎖抗体の比の 比較CSU
患者群とNC
群間の総抗α
鎖抗体のIgG1
分画とIgG4
分画の比に有意 差があるかを検証した。CSU
患者群の総抗α
鎖抗体のIgG1
分画とIgG4
分画 の比の中央値は1.01
(四分位範囲: 0.478 – 1.76
)(n = 42
)であり、NC
群の総 抗α
鎖抗体のIgG1
分画とIgG4
分画の比の中央値は0.677
(四分位範囲: 0.304
– 1.12
)(n = 42
)だった。CSU
患者群の方がNC
群よりも総抗α
鎖抗体のIgG1
分画とIgG4
分画の比は統計学的に有意に高かった(p = 0.0098
)(図23
)。32
小括 4
IgG4
分画の抗α
鎖抗体はマスト細胞や好塩基球を活性化させる能力に劣り、NC
群ではIgG4
分画の抗α
鎖抗体濃度が高い可能性がある、という仮説を支持 する結果が得られた。そこで実際にCSU
患者とNC
の精製IgG
がマスト細胞 を活性化するかどうか確認実験を行なった。しかし、抗IgE
抗体や抗α
鎖抗体 の濃度は、IgG
全体の1/5000
~1/50000
であり、結果は自己抗体濃度が高い検 体でもマスト細胞の脱顆粒率が、多くて1
~2%
上昇したのみであった。したが って、マスト細胞を用いたCSU
患者とNC
の精製IgG
によるマスト細胞の活 性化能の検証は不可能と判断した。血清中に存在する、食物アレルギーの特異的IgE
によるマスト細胞の活性化を検証する感度の高い実験系が、中村亮介博士(国立医薬品食品衛生研究所、医薬安全科学部)から
IgE crosslinking-induced
luciferase expression (EXiLE)
法として報告されており(28)、次にこのEXiLE
法 で解析を進めた。33
方法 5
5-1. CSU
患者群とNC
群の精製IgG
によるマスト細胞活性化能の測定ヒト
FcεRIα/β/γ
鎖とnuclear factor of activated T cells
(NFAT
)-responsive luciferase reporter
を発現したラット好塩基球白血病細胞株(RBL-2H3
細胞)(以下この細胞を
RS-ATL8
細胞と呼ぶ)は、国立医薬品食品衛生研究所、医薬 安全科学部、第三室、中村亮介室長よりご供与して頂いた。このRS-ATL8
細胞 はヒトFcεRI
の架橋でNFAT
の核内移行が起こったとき、luciferase
が発現す る細胞である。この細胞に基質(luciferase assay substrate
)を添加することに よ り 発 光 す る 。 発 光 強 度 に よ りFcεRI
の 架 橋 の 程 度 を 測 定 す る 方 法 がNakamura
らによってEXiLE
法として報告された(28)。この細胞を用いてCSU
患者群とNC
群の精製IgG
分画によるFcεRI
架橋の強度に差があるかどうかを 調べるため、Nakamura
らの方法に準じ、最適な条件を設定した。RS-ATL8
細 胞を2 × 10
5cells/well
で24 well plate
(CORNING
)に播種し、37 º C
、5% CO
2下で
2
日間培養した。培地はMEM
、10% FBS
、1% GlutaMAX-I
、1% Penicillin- Streptomycin
、Geneticin
(0.5 mg/mL
)、Hygromycin B
(0.2 mg/mL
)で作成 した(以下MEM
培地と呼ぶ)。2
日後、well
中の上清を除去し、MEM
培地を2 mL
加え、ピペッティングでplate
に接着しているRS-ATL8
細胞をはがし、1 mL
ずつ別のwell
に播種して、上記同様に培養した。2
日後、well
中の上清 を除去し、MEM
培地を2 mL
添加した。そのwell
から細胞をはがし、2 × 10
4cells/well
で、96 well plate
(CORNING
)に播種し、一晩培養した。翌日、well
中の上清を除き、PBS
でwell
を洗浄後、CSU
およびNC
由来の精製IgG
分画(
30 ng/mL
)を50 μL
ずつ添加し、3
時間刺激した。刺激後、上清を完全に除 去し、luciferase assay buffer
で、細胞を破砕した。細胞破砕液を20 μL
ずつ96
well white plate
(BERTHOLD, Tokyo, Japan
)に添加し、さらにluciferase
34
assay substrate
を50 μL
ずつ加え、Centro LB 960
(BERTHOLD
)で発光を 検出した。fold increase
は、RS-ATL8
細胞にMEM
培地のみを添加した発光強 度を1
として算出した。同一プレートに必ずCSU
患者群とNC
群を置き、内在 性のコントロールとして、CRA1
およびparamethoxyamphetamine
(PMA
)(1 μg/mL
)+ Ionomycin
(10 μg/mL
)(以下P + I
と呼ぶ)刺激による発光強度を 毎回測定した。1 ng/mL
のCRA1
の刺激によってfold increase
が10
未満の実 験データは刺激が適切に入っていないものとして採用せずやり直すこととした。また