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(1)

青年期 における基本的信頼感 と対人関係 ( 2 )

Se ns eo fBa s i cTms ta ndPe e r ィe l a t i o ns hi pi nAd o l e s c e nc e( 2 )

弘前大学保健管理セ ンター

田名場美雪 ・佐 々木大輔 ・佐藤清子

Ⅰ は じめに

1 . 基本的信頼感 とはなにか

2. 発達段階上の危機

3. 大学生の対人関係のもちかた 4. 仮説

Ⅱ 方 法

Ⅲ 結 果 と考察 1. 結果 2. 考察

Ⅳ 事例の検討

Ke ywo r d s:s e n s eo fb a s i ct ms t ・Pe e r ‑ r e l a t i o n s h i p

Ⅰ は じめに

問題 に直面 したとき,何かを決定 しなければならないとき,私たちはなにをよりどころとするのだろ うかo 自らの過去経験 と知識あるいは信念に照 らし合わせた り,各種 メデ ィアやインターネッ トなどか ら情報 を入手 した り,信頼できる他者 にア ドバイスを求めた りす る。そ して,最終的に自分 自身で決定 する。た くさんの情報やア ドバイスを手に入れた として も,最後 に取捨選択す るのは自分なのである。

取捨選択のよりどころとなるべき自分 自身を信頼できなければどうなるだろう 。 決定す ることが困難に なった り,決定 して も不安感や不全感 につきまとわれ るかもしれ ない。 「よ りどころとなる自分 」 につ いて,エ リクソンの提唱 した概念である 「 基本的信頼感」をもとに検討 し,新入生全体の傾向と,来談 者の傾向について探索的に検討す る。

1. 「 基本的信頼感 」 とは

発達 の第一段階の危機 「 基本的信頼 対 基本的不信」は,乳児期 に優勢 になる心理社会的危機 ( 個 人の発達的欲求と文化の社会的期待 とのあいだに生 じる緊張状態)である。 「 基本的信頼感 ( s e n s eo f b a s i ct r u s t ) 」 の発生はその時期 に由来 し,生後一年の経験か ら獲得 され る自己 自身と世界に対する 一つの態度であ り,他者に関 しては筋の通 った信頼, 自己に関 しては信頼 に値す るとい う単純 な感覚 を意味す る。この基本的信頼感の影響はこの段階にのみ限定 され るのではな く,その後の発達段階で, その傷つきという形ではっきりと輪郭 を表す とされている。つま り,第一段階以降 もその感覚は維持

されている 1) 。

従来の 「 基本的信頼感 」 尺度はエ リクソンの呈示 した概念 を十分反映 したものとはなっていないと いう批判があった

谷 ( 1 9 9 6 ) は,従来の尺度を再検討 した結果,基本的信頼感の中心的な内容を示 す 「 基本的信頼感」 と,他者についての信頼感 を表す 「 対人的信頼感」の 2 因子を抽出 した 2) 。 この

‑ 1 3 ‑

(2)

ことは,従来の基本的信頼感尺度が二つの異なる内容を測定 していたことを示す ものである。 また,

「 基本的信頼感」は 「 対人的信頼感 」 に比べて,抑 うつ傾向や特性不安 と高い相関をもっことからも

「 基本的信頼感」 と 「 対人的信頼感 」 は基本的に異なる概念であ り,識別 して考慮す る必要性がある ことが示 されている。 さらに, 「 基本的信頼感 」 は 「 対人的信頼感」に比べて, 自殺を考えた経験の 有無 とも高い相関をもっている ( 田名場, 2 0 0 0 )

3)

0

つま り,「 基本的信頼感」項 目はエ リクソンの呈示す るものを反映 していると仮定 され, 「 対人的 信頼感」項 目はむ しろ現実の人間関係に基づ く感覚を測定する尺度 と言える。そ こで,本研究ではこ の考えにそいなが ら,「 基本的信頼感 」 と 「 対人的信頼感」を区別 しなが ら検討 し,実際の相談内容 とどのような関連性をや っているのか探索的に検討する.

2. 発達段階上の危機

大学新入学生にとっての 「 基本的信頼感」の意味を考えてみる。青年期 には 「 個人的同一性 対 役割拡散」 という心理社会的危機 を迎える。そ して,前述 した第一段階の危機の問題は青年期 には同 一性の危機に伴 って 「 時間的展望 対 時間的展望の拡散」 として顕在化する。すなわち,青年期に おいては,乳児期以来形成 されてきた基本的信頼感の程度が,それまでの 自己の時間的連続性の統合 の程度に非常 に深 く関わるのである。「これまで も,まさに現在 も, これか らも,私は私であるとい う感覚をどの程度 もてるのか」は基本的信頼感を基礎に してな りたってい くのである。 したが って.

「 基本的信頼感 」 の低 さが 「 時間的連続性 」 の低 さとなって現れる場令,その人は精神的不安定 さや 現実場面でのなん らかの困難 さをかかえることが想定 される。

3. 大学生の対人関係のもちかた

青年期は, 自己への理解の深 ま りと,親密な友人関係への希求がその特徴 としてあげられる。すな わち,両親への無意識の同一視が失われ, これによって不安定になった自己を安定化 させるために親 密な友人関係が求め られるというものである。そ してこれがその後の青年の人格形成に大きな役割を 果たすことが強調 されている。そ してたいていの場合,同性の友人 との親密な関係が異性 との親密な 関係形成に先行す る。 このように青年が新たな自己像を形成するにあたっては, 自分 自身への関心の 高さ,友人関係の親密さといった様相が大 きく関与 していると考えられてきた。

しか し,相談場面で, 自他を傷つけることを恐れて,学生が相手 との関わ りと表面的なものにとど める傾向が指摘 された り ( 岡田, 1 9 9 3 ) 4) ,対人場面での傷つ きへの恐れか ら対人関係へのコミッ ト を避け,その場の雰囲気がよければよいとする傾向がある。実際,当大学での来談者 にも 「 広 く浅 く の対人関係は得意であるが,それ以上はどのようにつきあっていいのかわからない」 という悩みを抱 える者は少な くない。 このような現実場面での対人関係を回避す る傾向は,「 対人的信頼感」の低 さ と関連すると推測 され る。

4. 仮説

以上から次の仮説を検討する。

①基本的信頼感は同一性の感覚の中核をなすと考えられる自己の時間的連続性の感覚とより密接 に関わる。

②対人的信頼感は現実の人間関係に関連するので,対人関係回避傾向 との関連が高い。

なお,来談者については,仮説を検証するのではなく,探索的に検討を加えるものとす る。

‑ 1 4 ‑

(3)

Ⅱ 方 法

全新入生 に対 して郵送法 による質問紙調査 を実施 した。詳細 は以下の とお りである。

①調査対象者 :弘前大学の人文学部 ・教育学部 ・医学部 ・理工学部 ・農学生命科学部,および医療技 術短期大学部の平成 1 2 年度新入生 1 4 4 5 名 ( 男子 7 4 8 名,女子 6 9 7 名),分析対象者は 1 4 2 5 名 ( 男子 7 3 2 , 女子 6 9 3 名)である。

②調査方法 :郵送法 による記名式 の質問紙調査である ( 回収 も郵送で行 った) 0

当大学合格者 には入学手続 き書類等 と共 に保健管理 セ ンターか らの 『 健康調査書』が送付 され るが, この一部 を使用 した。使用 した尺度の概念 は表 1 のとお りであ る ( 質問項 目の詳細 は付表参照)

0

「 基 本的信頼感 」 対人的信頼感 時間的連続性 対人関係回避傾向」尺度全質問項 目に対 して,評定 はいずれ も 0 ( あてはまらない) か ら 5 ( あてはまる) までの 5 件法 によっている。

表 1 使用 した尺度の概念

「 基本的信頼感」尺度

「対 人信 頼 感 」 尺 度

「 時間的連続性 」 尺度

「 対人関係回避 」 尺度

自己についての信頼感 他社 についての信頼感

自己の時間的連続性の結合の程度 対人関係への コミッ トを避ける程度

③調査時期 :調査は平成 1 2 年 3 月末か ら 4 月初旬にかけて実施 した.統計的解析 については t S P S S を使 用 した。

Ⅲ 結 果 1. 結果

各尺度 についての全回答者お よび男女別 の傾向をみてみる ( 表 2 ,表 3 参照) 0

「 基本的信頼感」尺度 には男女間 に有意 な差 はみ とめ られ なか った0 「 対人的信頼感 」 尺度では,女 子が男子 よ りも高 く, 「 時間的連続性」尺度で は女子が男子 よ り高 く. 「 対 人関係回避傾 向」尺度で は男子が女子 よ りも高いとい う性差がみ とめ られた。

次 に各尺度間の相関をみてみ る。表 4 に示す とお り, 「 基本的信頼感 」 「 対人的信頼感 」 「 時間的連 続性 」 「 対人関係回避傾向」の間 においてすべてに有意 な相関 (p<. 0 0 1 ) がみ とめ られ た。特 に,

「 基本的信頼感 」 と 「 時間的連続性」との相関が高 く ( r ‑. 5 れ 「 対人的信頼感 」 と 「 時間的連続性 」

の相関 ( r ‑ . 3 3 ) よ りも強い もの となっている. このことは, 「 基本的信頼感」 と 「 対人的信頼感 」 と は本質的 には異 なるものである可能性 を示 してい る. 「 対人関係回避傾向 」 は, 「 対人的信頼感 」 と の相関がよ り高 く, 「 対人的信頼感」は現実の人間関係 を反映 していることを示 している0

表 2 各 尺度 の平均 と標準偏差

全体 ( N=1 4 2 5 ) 男子 ( N= 7 3 2 ) 女子 ( N= 6 9 3 ) 男女間比 較 ( t) 基 本 的 信 頼 感 1 5 . 7 2( 4. 8 5 ) 1 5 . 8 6( 4 . 8 9 ) 1 5 . 9 8( 4. 8

0 ) 1 . 1 7 対 人 的 信 頼 感 1 4 . 2 5( 3 . 4 6 ) 1 3 . 61( 3 . 6 5 ) 1 4. 8 8(

3 . ll )

*

* 7 . 3 3 時 間 的 連 続 性 1 7 . 41( 4 . 0 2 ) 1 7 . 0 3( 4 . 0 3 ) 2

0 . 0 2( 3 . 9 8 )

*

* 3 . 61

対人関係 回避傾向 7 . 0 4( 4. 7 3 ) 7 . 6 6( 4 . 8 9 ) 6 . 8 3( 4. 4 6 )

*

(4)

表 3 各 尺度 におけ る性差

「 基本的信頼感 」 尺度 男子 ‑女子

「 対人的信頼感 」 尺度 男子 <女子

「 時間的連続性」尺度 男子 <女子

「 対人関係回避傾向」尺度 男子 >女子

表 4 各尺度間の相 関

基本的信頼感 対人的信頼感 時間的

展望 対 人 的 信 頼 感

時 間 的 連 続 性 * * *0 *0 . . 3 5 3 7 * *0 . 3 2 * * ‑ 0 . 3 2 対 人関係 回避傾 向 * * ‑ 0 . 31 * * ‑ 0 . 4 9

注) * *

P<. 0 01 2. 青年期におけるアイデンテ ィテ ィを考え る上での重要 な概念 「 考察 基本的信頼感 」

「 対人的信頼感 」 「 時 間的連続性」のうち,「 基本的信頼感」 には男女差がな く, 「 対人的信頼感 」

「 時間的連続性」 には男 女差がみ とめ られたことは何 を意味す るのであろうか。 「 基本的信頼感」は

,発達の ごく初期 にその 源泉をもつ といわれてお り,人の発達 にとってきわめて本質的 なものであ り

,多 くの場合,性 による 影響 をほとんど受けない

と考えて もよいだろう。

性差がみ とめ られた 「 対人的信頼感 」 「 時間的連続性」 は,発達の各段階

で顕現 して くるものであ るが,その内容そのものには男女差があるはずである。 なぜならば,たとえ

各段階での発達課題が男 女に同等であっても,男女両性では同 じ状況が異なった様相をもって立ち現れて くる ( 氏

原, 1 9 9 0 ) 5) か らである。たとえば文化や社会 によって男性 ・女性に要求 され る役割行動が

異 なることや,身体的発 達の男女差が心理面の発達へ影響 を及ぼす こと

も考え られ るのである0 同 じように 「 対人関係回避傾向」は,現実場面への対応 をあ らわすので,

男性 ・女性 をとりまく状 況の差異 と,期待 され る役割行動の差異か ら,男女差が出てきたと説明でき

るのではないだろうか。

「 基本的信頼感」 と 「 時間的連続性」 との相関はきわめて高いものであ っ

た。青年期の課題 と して

「 時間的連続性」が畢要であることが伺われ る。そ して, 「 基本的信頼感 」

と 「 対人的信頼感」 とは 本質的には異 なるものである可能性を示 してい る。 「 対人関係回避傾向」や

「 対人的信頼感 」 は現実 の人間関係 を反映す るものであ り,「 基本的信頼感 」 と 「 時間的連続性 」 は

, よ り基底的な部分,い わゆるアイデンテ ィテ ィにかかわ るもので

Ⅳ 質問紙調査の結果をふまえなが ら,実際に来談 した新入生の得点パター ンと 事例の検討 ある。

相談内容等 との関連を検 討 し,質問紙調査を相談サー ビスへ生

かす方法 を模索 したい.

相談 に訪れた新入生 ( 1 2 年 4 月 1 日か ら同年 1 2 月 2 2 日まで)のうち,匿名希

望の来談者 を除いた来談 者数 は 1 9 名 ( 男子 8 名,女子 1 1 名).質問紙調査の得点パター ンの特徴 ごとにそ

の相談内容をみてい く。

その際,尺度の内容の性質上 「 基本的信頼感 」 の低 さ, 「 対人的信頼感 」 の低 さ

, 「 時間的連続性 」 の 低 さ, 「 対人関係回避傾向 」 の高

さが問題 となって くる。

4 つの得点のパター ンか ら, 1 9 事例は, 3 つに分けること

(5)

①特 に問題のない得点パター ンを示 した事例 ( l o 飼)

②対人関係回避傾向の強 さが特徴的な事励 (2 例)

③基本的信頼感の低 さが特徴的 な事例 (7 例)

以下,順に検討 してい く . なお, プライバシー保護のため事例の性別等は省略す る .

( 1 )特 に問題のない得点パター ンを示 した事例 ( 1 0 例)

4 つの尺度得点 とも平均点前後を 示 している。得点上は顕著な特徴 を 示 さない事例である。その相談 内容 をみ てみ ると, 来談者 自身の特性 等 が主 な相談 内容 にな ってい る も の とそ うで ない もの と,大 き く二 つに分け ることがで きる。

( D相談 内容 と本 人 の特性 や行 動 パ ター ン等 とは直接 的 な関連 が推測

□ 平 均 値

2 5 2 0

1 1 5 0 5 0 \ ' 事 例

1

基本的信頼感 対人的信頼感 時間的連続性 対人関係回避傾 向

図 1 特 に問題のない得

点パター ン ( 事例 1) されない事例 事例 1 家族に生 じた重大な問題 についての相談 ( 6 事例)

. 相談の内容はきわめて深刻 なものであ ったが, 本人の特性や行動パター ン等

とは直接的な関連はみとめ られないと思われ る.

事例 2 同性の友人に生 じた重大なの問題 につ

いての相談。相談の内容はきわめて深刻なもので あったが,本人の特性や行動パター ン等 とは

直接的な関連はみとめ られない相談 と思われ るo 事例 3 日常生活での トラブル ( インターネッ トでの トラブルなど)の相談. 日常生活の様子の

報告など,気軽なお しゃべ りが大半 を占める。

事例 4 自分の言動の傾向 ( 思 ったことをす ぐ

に口にす る) とどのようにつきあった らよいか, 初めて暮 らす土地の風土や環境 ・文化への戸惑い,大学での講義や カ リキュラム,同級生たちへ

感 じているフラス トレーシ ョンについての相談。

事例 5 大学入学に伴い物理的に離れることになっ

た異性の友人とつきあい方についての相談 内容 。

事例 6 転学部 について, 自分以外にもそのような希望をもって

いる学生がいるのかどうかとい う相談 内容。

②相談内容 と本人の特性や行動パター ン等 と直接的な関連が推測 され る事

例 (4 事例) 以下の事例 は,得点

パ ター ンは① と同様 にきわめて平

均的あるいは 健全である。ただ し

,得点パ ター ンそのものか らは相

談 内容やその 深刻度をまった く推測

できない事 例であ り,事例 9 と事例 1 0 は相談

継続中である。

事 例 7 不 本 意

入学 で あ る こと や, 集 団生活 で

の人 間関係 に苦 心 す る ことか ら過食 して しま

っ たとい う相談内容。

12 0

1 0 0

基本的信頼感 対人的信頼

(6)

事例 8 大学入学前に過食経験あ り.大学入学に伴 う生活環境等の変化から,また過食を繰 り返 して しまうのではないかという相談内容。

事例 9 入学前か ら悩まされている心身症 とつきあいなが ら,大学生活をどのように過 ごしてい くのかについての相談。日常生活の様子など報告 されている。受診歴あ り,現在 も治療中である。

相談継続中。

事例 1 0 大学入学前から感受性の高さに戸惑 うことが多かった。入学後,神経症的な行動に悩 ま される。受診をすすめ.現在治療中である。相談継続中。

( 2) 対人関係回避傾向の強 さが特徴的 な事例 (2 例)

対人関係回避傾向の高さが相談内 容 に反映 していると考え られ る事 例である。

事 例 11 集団生活 での対 人 関係 ( 特定の他者 との関係)で疲労 し ている, どのように生活 した らよ いかという相談内容。心身症的な 症状が訴えられたので,受診 をす すめる。対人的信頼感 も低 い傾向 がある。

20 1 0 0

′ ノ

′ ′//▲ [} 事 例▲コ平

均値 1 1

事 例

1 2

▲ー

一 一

‑▲′

向 基本的信頼

感 対人的信頼感 時間的連続性 対人関係回避

図 3 対人関係回避傾向の強さが特徴的な得点パター ン

( 事例 1 1・1 2 ) 事例 1 2 集団生活での対人関係 ( 不特定多数の他者 との関係)で疲労 している,他者 と一緒に

食 事するのが苦痛であるという相談内容。

( 3) 基本的信頼感の低 さが特徴的な 7 例 とも基本的信頼感の低 さ 事例

が相 談内容に反

映 していると考え られ る事例であ

る。

事例 1 3 大学入学前 に精神病 と診 断 され治療継続中であるが,

集中 力 ・思考力に不安があるとい

う相 談 内容。その劣等感か ら,

「 普通 の人たち」 とつ きあう価値

のない 人間ではないだろうかと考え

て し まうことがある。時間的連

低い。基本的信頼感 と時間的連続 続性 も 2 [ コ平均値

1 0

0 ■事例

1 3

ノ■

向 基本的信頼感 対人

的信頼感 時間的連続性 対人関係回避僚

図 4 基本的信頼感の低さが特徴的な得点パターン

( 事例 1 3 ) 性が共 に低い ことか ら, アイデン ティティの不安定さが推測できる。

事例

1 4 常に孤独な感 じがする,一人でいると不安,他者 と一緒にいても見捨て られるのではな い

かという不安につきまとわれ る。 自分が何を考えているのかわからないときがあるという相談 内

容。対人的信頼感 も低いことか ら,見捨てられ不安が非常に強いのではないかと推測できる。

事例 1 5 幼い頃か ら家庭内の問題に巻 き込まれてきた,家を出たいがどうすればよいかとい

(7)

事例 1 6 神経症,受診 をすす め る。

事例 1 7 小 ・中 ・高 と 自分 の外見 に劣等感 を もっていた。 大学 入学 後 は,努 力 して外見 を整 え人並 み にな った と思 うが, 自信 が もて な い,異性 か ら告 白され て も信 じる ことがで きない とい う相談 内 容 。

事例 1 8 過去 に,意図的 に対 人関 係 を シャ ッ トア ウ トしていた。入 学後,再度,対 人関係 を も とうと した ら, で きな くな ってい た,他 者 と共 にい るのが苦痛 に感 じると

対人関係 回避傾 向 もや や 低 い。

口 平 均値

2 1 0 0 0 』事例 1

4

ヽ 向

基本的信頼

感 対人的信頼感 時間的連続性 対人関係回避

図5 対人関係 回避 傾 向の強 さ が特 徴的 な 得点 パ ター ン

( 事例 1 4) い う

相談 内

容 。

対人的信頼感 もやや低 めで ある。

事例 1 9 家庭 内に問題 があ り,その ことで頻繁 につ

らい記 憶 が よみが え り ,虚 し く 淋 しい気 持 ち におそわれ るとい う

相談 内容。対人的信頼感 もやや低 めで あ る。

平均的な得点パター ンを示す事例 の場合の相談 内容には

,進路や コンサルテーシ ョン, 日常生活につ いてが多い. なお,相談内容 と本人の特性や行動パター ㍗

等 と直接的な関連が推測 されない 6 事例 ( 辛 例 1 か ら事例 6) は,現在 までのところ初回面接のみであ

った。相談事例の約 3 分の 1を占めるこれ ら 事例は,いわゆる心理相談 とは性質 を異にす る相談内容であ り, ア ドバイスや情報 を与えた り話

し合 っ て方法 を探す という対応 をとった。 ただ し,得点パター ンがただちに相談内容に反映 してい

るわけではない。得点パター ンにはなん ら問 題はな くても,事例 7 か ら事例 1 0 のように本人の特性や行

動傾向そのものが相談内容になってい ること もある。 また 事例 9 や事例 1 0 のように,相談 内容の深刻

度が強かった り,治療が必要であ った り,棉 談 も継

続 し長期 にわたる可能性のある場合 もある。

対人関係回避傾向が強い来談者の場合,その相談内容 も

現実の対人関係をめ ぐるものであ った。対人 的な トラブルに巻 き込 まれた り,対立 しているというより

も, どのように対面 した らよいのかわか らず に 「 一人で当惑 している 」 というものであった.対人関係

回避傾向の強い者 が下宿や寮などで複数の他 者 と日常生活行動 を共に しなければならない場合,その負担

感は大 きく,疲弊 され るものと考え られ る。

対人関係 を回避 したいのに集団生活 を送 ることを余儀なくされている事例であ り,現実場面で

のス トレ スを緩和することが必要 となる。 基本的信頼感が低い来談者の相談 内容は,同一性にかか

わる不全感や,幼い頃か らの家庭内の問題に つながるものや,病理 レベルのものなど,深刻 なものとな

っている。 したが って,継続中の ものが多 く なっている。現実場面での問題が解決 しても,不全感が残

り,何度 も来談す ることが多い。相談 を通 し て

自己の成長 をはかっているものと思われ る。 「 基本的信頼感 」 の低 さ,「 対人的信頼感」の低 さ,「 時間

的連続性」の低 さ, 「 対人関係回避傾向」

の高 さが,来談者の理解に際 してのある程度の指標になることが推測できる。今後,事例の積み重ね

(8)

参 考 文 献

I )E ri k s o n. E. H:I d e n t i t ya n dt h el i f ec y c l eU ni v e r si t i e sP r e s s , I n c . 1 9 5 9 ( 小此木啓吾訳編 「自我同一 性 」1 9 7 3 誠信書房)

2 ) 谷 冬彦 :青年期における基本的信頼感と時間的展望.発達心理学研究.第 9 巻.第 1号, 3 5 ‑ 4 4 , 1 9 9 8 3 ) 田名場美雪 :新入生における基本的信頼感と対人関係.弘前大学保健管理概要 第 21 号, 1 卜1 5 , 2 0 0 0 4 ) 岡田 努 :現代の大学生における 「 内省および友人関係のあ り方 」 と 「 対人恐怖的心性 」 との関係 ・発達

心理学研究,第 4巻,第 2号 ,p 1 6 2 ‑1 7 0 ,1 9 9 3

5 ) 氏原 寛 ら共編 :現代青年心理学 :男の立場と女の状況 培風館, 1 9 9 0

付表 使用 した質問項 目 ( ※は逆転項 目)

「 基本的信頼」尺度

※ ・物事がうまくゆかな くなると, 自分の中にひきこもって しまうことがある。

※ ・自分 自身の ことが信頼できない と感 じることがある。

冗 ・人か ら見捨て られたのではないかと心配 になることがある。

※ ・人生 に対 して,不信感を感 じることがある。

冗 ・失敗す ると二度 と立 ち直れないような気がす る。

・私は自分 自身を十分に信頼できると感 じる。

「 時間的連続性」尺度

冗 ・今の 自分は本当の 自分ではないような気がす る。

冗 ・私 は過去の出来事 にこだわ っている。

・今の生活 に満足 している。

※ ・過去のことはあまり思い出 した くない。

※ ・毎 日が同 じことの くり返 しで退屈だ。

・私は自分の過去のことを受け入れ ることができる。

※ ・私の過去はつ らいことばか りだ った。

「 対人信頼感 」 尺度

・自分が困 ったときには, まわ りの人 々か らの援助が期待できる

・普通,人はお互いに誠実にかかわ りあっているものだと思う 。

・一般的に,人間は信頼できるものであると思う。

・周囲の人 々か ら自分が支えられていると感 じる。

※ ・私 には頼 りにできる人がほとんどいない。

「 深い関わ り回避」尺度

※ ・おたがいに,心 を打 ち明け会 う 。

冗 ・人間の生 き方などについて真剣 に話 し合 うことがある。

冗 ・友だちと精神的に深い関係をもちたい。

・友だちと真剣に議論す ることは恥ずか しいことだ

・友だちには自分の本心は見せない。

・友だちとはあた りさわ りのない会話ですませている

・友だちと意見が対立す るのが怖い。

‑ 覇O‑

表 3 各 尺度 におけ る性差 「 基本的信頼感 」 尺度 男子 ‑女子 「 対人的信頼感 」 尺度 男子 &lt;女子 「 時間的連続性」尺度 男子 &lt;女子 「 対人関係回避傾向」尺度 男子 &gt;女子 表 4 各尺度間の相 関 基本的信頼感 対人的信頼感 時間的 展望対 人 的 信 頼 感時 間 的 連 続 性 ** *0*0 .

参照

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