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初期成人期の母娘関係に関する研究

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初期成人期の母娘関係に関する研究

一母娘システムとしての分析一*1

永田忠夫,新美明夫n,松尾貴司*2

AStudy of Young Adult Daughter−Mother Relationships

一Analysis of Daughter−Mother Systems

Tadao Nagata, Akio Niimi and Takashi Matsuo

要旨:本研究では,初期成人期の母娘関係を母娘の2者間システムの観点からとらえ,

娘が青年期後期までに培われてきた関係をその後どのようなかたちで維持し発展さ せてきているのかを明らかにすることを目的とした.愛知淑徳短大コミュニケーショ

ン学科卒業生(23歳〜35歳)を対象とし,育ててくれた母親が存命の867名のみにつ いて分析した.データは,システム年齢(娘の年齢),システム構造(母・娘・関係 構造),システム機能(母と娘の絆と相互支援),コミュニケーション(交流方法)

の現況について検討した.主に初期成人期のシステム機能である「母と娘の絆」「相 互支援;生活支援資源交換」とシステム維持に関係する「コミュニケーション」につ いて,娘の年齢段階と5居住形態(別居;未婚,核家族,夫の親と同居,同居;既婚,

未婚)を用いて分析した.また,初期成人期およびそれ以後の時期に重要な機能とな る「生活支援資源交換」については,システムを構成している諸要素がどの程度関与 しているかを検討した.

Keywords:初期成人期,母娘関係,サポート,母娘システム

     y皿ng−adult, mother−daughter relationship, support, mother−daughter system

1.問題および目的

 青年期以前の母娘関係は,主に娘(子)の母への依存内容や依存から自立への変化過程に関する 研究がなされてきた.青年期については,娘が母への依存を継続的に有するが,その依存のあり方

が変化するという知見が得られている(高橋,1968;落合,1996;小高,1998).少ないながらも,

青年期以後の成人期における母娘関係の研究もなされ始めてきた(伊藤ほか,1980;川浦ほか,1996;

水野,2002).

 母娘関係の維持が成人期以降においてどのような様態で維持され継続されているか,維持されて いる意味内容は何かを検討することは,単に発達の過程を明らかにするのみでなく,現代社会がお かれている高齢化・少子化の社会情勢のなかで重要なことと考えられる.

 母娘関係を発達的視点で考えると,母娘関係は,母子共生関係のステージから始まり,母子分離 後も母親が娘に対して養育・自律・社会化・教育・精神的安定の維持のためにかかわり社会に適応 していけるように援助し,娘はその援助を得ながら社会的に一人前の女性とし成長していくという 関係のステージに移行する.援助内容や量,依存関係の強さや依存内容の種類などからさらに細分 化できるであろうが,そうした優劣のある援助関係のステージを経て,自立した母と娘が対等な関

tl本研究は,平成14年度・15年度愛知淑徳大学研究助成(共同研究)を受けた.

2愛知淑徳大学コミュニケーション学部コミュニケーション心理学科

(2)

初期成人期の母娘関係に関する研究 95

係で相互依存的援助や相互補完的援助の関係をもつ3つめのステージにいたる.さらに日本人の家 族や親子や社会的規範などに対する価値態度の変化あるいは少子化と高齢者が増加するという時代 的変化のなかで,子が親を娘が母を援助・養護するステージが4つめのステージとして付け加えら れる.こうしたステージを想定してみると,娘にとっての青年期はここで示した2つめのステージ の後半であり,3つめのステージの準備状態の時期と考えられる.娘にとっての初期成人期は,3 っめのステージとなる.

 母娘関係を2者の世代間関係としてとらえることも出来る.森岡・青井(1985)は,家族の世代 間関係に関する研究を概観し, 「家族の世代間連帯」の要素について6つの下位概念を紹介してい る.それは,①情緒的連帯(愛情に関する認知・成員間の好悪の感情;信頼・公平・尊敬・理解),

②結合面から見た連帯(交流の程度;共同活動・相互交流内容と頻度など),③意見の一致面から 見た連帯(価値観・社会現象に対する意見・信念の家族成員間の一致度),④家族構造(家族成員 の数や属性,成員間の地理的な距離など),⑤機能的連帯(支援や資源の交換の量;経済的援助と サービスの交換の程度),⑥規範的連帯(家族規範が家族成員によって維持されている程度;期待 や義務に対する規範の受容度)のディメンジョンである.母娘関係は,家族の世代間関係の1つで

ある.

 母娘関係の発達的視点と関係性の視点を統合し,システム論的概念を導入して整理してみると以 下のようになる.

 生体システムは, 「構造(システムの要素の組み合わせの様態)」と「機能(ある程度の規則性 をもって繰り返さされる出来事のパターン)」および「発達(システムの要素が分化・統合してい く過程)」の3つの属性が問題となる.また,2者間のシステムの「適応過程(安定状態の維持)」

には,情報の交換すなわちコミュニケーションのやりとり(交流)の状況が問題となる(遊佐,1984).

 家族を1つのシステムとしてとらえるとき,母娘システムはその下位システムである.母娘シス テムの下位システムは,母システム(個人)と娘システム(個人)となる.母娘システムは,母と 娘の2者間システム(世代間システム)を形成していることになる.

 本研究は,初期成人期の母娘システムを検討対象としている.そこで,初期成人期の母娘システ ムの現況概観を図1に示した.家族の世代間連帯の6つの下位概念とこの母娘システムとの関係を みると,情緒的連帯はシステム機能の母と娘の絆に,結合はコミュニケーションに,家族構造は2 者間構造に,機能的連帯はシステム機能の相互支援に当てはまる.本研究では,価値観や家族規範 の一致度は,価値観や家族規範が母娘個々人の内在化した態度であるので,その一致・不一致は母 と娘の結びつき(絆)に反映されると考え,母と娘の絆の一部であるとして扱った.母娘システム の構造は,その下位システムである母システムと娘システム(以下,母または母親,娘と表記する)

および2者間の構造(同居/別居,空間的距離など)から成り立っていると考えられる.

 母娘システムの年齢(発達・歴史)は,娘の出産に始まり現在にいたるまでの時間軸(娘の年齢)

で調べられる.その流れは,母娘システムを構成する個人システム(娘システムと母システム)の 発達段階や個人ライフサイクルのステージなどで影響を受け,2者間の構造や母娘システム機能の 変化に大きな影響を与える.

 2者間のシステム構造を取り上げると,青年期までは,ほとんどの母娘が同居して近接距離空間 で暮らす構造であったものが,初期成人期では,母娘が別居や遠距離での居住,あるいは結婚によ る社会的距離の隔たりを含む構造を持つことが多くなる.

 システム機能の面を取り上げると,青年期までの家族・親子システム機能は,養育・教育・社会 化・精神的安定など多様でその機能達成が社会や個人にとって重要な課題である.しかし,初期成 人期の母娘システム機能を考えると,大学在学中や大学を卒業して間もない頃の青年期後期と比べ

(3)

ても,娘の急激な精神的自立度の高まり,経済的依存度の低下,別居生活などにより,システムが 成し遂げるべき機能は減少し,そのシステム維持の必要性は一見低下してくるように思われる.

 娘

・未婚/既婚

・子供の有無

・有職/無職

・生活基盤  (金銭)

 (時間)

 (健康)

・別居/同居

・空間的距離

システム機能

・母と娘の絆

(情緒・価値・規鑓

・相互支援

(生活支援行動

 母

・生活基盤  (金銭)

 (時間)

 (健康)

図1 初期成人期の母娘システムの現況(本研究の概観)

 しかし,落合・佐藤(1996)が,親子関係のあり方の段階(心理的離乳の過程)を検討し,成人 期には「子は親から信頼・承認されている関係」 「親が子を頼りにする関係」+「…  」を推測 していることからも,成人期においても親子の相互支援的な機能や情緒的な絆の機能は続いていく と考えられる.

 また,伊藤ら(1980)が示しているように,既婚者(若い成人期の女性;26歳〜44歳)にとって も,母親は依存の対象であるし,心の支えとして機能する.

 成人期においても親子(母娘を含めて)関係が維持され,新しいシステム機能を持つとすれば,

依存関係から発展していく母と娘の絆(愛情交換機能)と,自立しあった個人間の相互依存・相互 補完機能と考えられる.両者間で繰り返される行為・行動・意識としては,対等な関係における生 活支援資源(物的・精神的)交換と母と娘の絆の強さに関する認知であろう.高齢化・少子化社会 においては,母娘システムの機能として,情緒的むすびつきを基とした相互サポート機能が十分発 揮される状況を検討する必要が増してくる.

 初期成人期〜成人期の母娘システムで交わされる具体的なサポート内容としては,生活支援資源 すなわち物的資源,生活情報資源,労働力,金銭,心理的援助などの相互支援機能や母娘の愛情交 換が重要であると考えられる(水野,2002).

 その次のステージでの重要なシステム機能は,社会体制が親子システムの維持や家族システムの 維持を強く望む状況であればあるほど,子(娘)が親(母)の介護や扶養するシステム機能(ソ・一一一E

シャルサポート)がより重要なものとなるであろう.

 嶋(1991)は,青年期の大学生を対象にしたソーシャルサポート研究をおこない,母親が子ども にサポートする量は多く,その内容の因子は心理的サポート・娯楽関連的サポート・道具的手段的 サポートで,特に道具的手段的サポートが多いとしている.和田(1992)は,両親のサポートとし て,情緒的・気楽さ・道具的を因子として抽出して検討をしている.しかし,青年期までのサポー トは,その時期のシステム機能である養育・教育・社会化や精神的安定を円滑に機能させるために

(4)

初期成人期の母娘関係に関する研究 97

母親が子どもに行うものである.したがって,母から子どもへの一方通行のサポート行為であるこ とが多いといえる.

 2者間のシステムの「適応過程(安定状態の維持)」について検討する際には,コミュニケーシ ョン(交流)の状況が問題となる.青年期後期は母親と別居する娘の数は増加するが,それまでは 同居がほとんどで近距離にいつも居るのでコミュニケーション手段は対面的となることが多い.し かし,初期成人期では,娘が職業を持ったり結婚したりして自立し,母親は自己独自の生活領域を 持つ時期になり,母娘は別々の生活空間を持つことが多くなる.その際に,システムを維持するた めには,さまざまなコミュニケーション方法を用いて交流を継続する必要がある.

 本研究では,初期成人期の母娘関係を母娘の2者間システムの観点からとらえ,娘が青年期後期 までに培われてきた関係をその後どのようなかたちで維持し発展させてきているのかを明らかにす ることを目的とした.

ll.方法

1.調査対象および手続き

1)対象者:愛知淑徳短期大学コミュニケーション学科の全卒業生(すべて女性).1期生

(1989年3月卒業)〜13期生(2001年3月卒業)の2,054名.

2)手続き:前回の調査(新美ら,2003)で宛先不明で返送された者を除き,1917名を対象に郵送 法で実施した.調査票発送(2003年9月12日)して約1か月後,未返送者には本人宛に督促ハガキ を送付した.回収は2004年2月下旬まで行われた.最終的な有効回収数は887票,回収率は46.3%

であった.

 なお,分析対象は,育ててくれた母親が存命の867名とした.

2.調査票の構成

 調査票は6部構成とした.第1部は,現在の氏名・住所・メールアドレス・職業・家族・同居形 態,第2部は,同窓会サイトの利用状況・希望,インターネット利用環境,第3部は短大時代の友 人との交流について,第4部では母娘関係(母親との同居/別居・母親との住居の距離・母親との 絆・母娘間の交流について・母娘間の資源交換状況・母娘の生活基盤)について,第5部では携帯 電話と日常生活について,第6部では有子の者に限って,子育てにおける携帯電話利用について尋 ねた.本報に直接関係する調査内容は第1部と第4部である.

3.母娘関係についての質問項目と回答法 1)娘システムにっいて

 ①職業:有職/無職②結婚暦:未婚/既婚(母子家庭を含む),③子ども:有/無,④生活基 盤(金銭的余裕・時間的余裕・健康度→4段階評定)

2)母システムについて

 ①生活基盤(金銭的余裕・時間的余裕・健康度→4段階評定);ただし,母親の生活基盤の余裕 については,娘が認知した推測の評定値を代替した.

3)母娘システムについて

 (1)システムの年齢(発達・歴史)の側面;母娘システムの年齢(娘の出産に始まり,現在の娘 の年齢までの年数).母の年齢は娘の年齢に平行して加齢する.

 (2)システム構造の側面(2者関係の構造);①同居/別居,②母と娘との住居距離→母親の住 んでいる家まで行くのにかかる時間で測定

 (3)システム機能の側面;①母と娘の絆;小高(1998),落合ら(1996),水野ら(2002)を参考にし,

「母娘の絆」尺度項目(26項目)を作成した.→5段階評定法を用いた.②支援機能=資源の交換

(5)

[母から娘への提供と娘から母への提供]の回数を測定した.→8件法(1.ほぼ毎日,2.3日に1回 程度,3.週に1回程度,4.月に1回程度,5.3か月に1回程度,6.半年に1回程度,7.1年に1回程度,8.

まったくなかった).時間間隔としては等間隔ではないが,資源交換の量として考え,交換量の評 定データとして扱い8段階評定として計算した.物的資源(4項目),生活情報資源(2項目),労 働力(4項目),金銭(2項目),心理的援助(4項目)

 (4)システム維持の側面;適応機能(娘システムと母システム間の情報交換)=コミュニケーシ ョン(対面交流・電話交流・電子メール交流・郵便交流)→資源の交換と同様の8件法で回答を求

めた.

 娘の年齢および母娘システムの年齢は,現役で短大に入学した者の2004年3月末時点での年齢に 換算し,1群:23歳〜26歳ll群;27歳〜29歳, III群;30歳〜32歳, IV群;33歳〜35歳として分析

した.

 尺度の検討は, 「母と娘の絆」, 「生活資源の交換」, 「コミュニケーション」に関する各尺度 に対して作成した尺度項目すべてを用いて因子分析(主成分解,バリマックス回転)をおこない,

固有値1以上を基準にして因子を抽出した.その因子の負荷量が.50以上の項目によって下位尺度 項目を構成し,下位尺度の内的整合性を検討するために信頼度係数(標準化された項目に基づく Cronbachのα係数)を求めた.

 下位尺度の構成後,下位尺度得点の記述統計と下位尺度得点間の相関を求めた.

皿.結果および考察

1.母娘システム構造について

 母娘システム構造の要素は,個人システムである娘システムと母システムおよび2者間の構造と し,その特徴を調べた.

1)娘システムの特徴

 娘システムの特徴を明らかにするために,娘の現在の属性である未婚/既婚(子どもの有無)・

無職/有職を年齢との関連を含めてクロス集計をした(表1).23歳から35歳までの間に,年齢が 増すのにしたがって既婚者が増加し,また子どもを有する率も増加する.無職/有職については,

年齢が増すにしたがって有職者が減少していく現状が読み取れる.

表1年齢と未婚/既婚・無職/有職のクロス表 ()内は子ども有の内数

合計

23歳〜26歳 27歳〜29歳 30歳〜32歳 33歳〜35歳 未 婚

 婚

157(0)

R3(11)

100(0)

P24(62)

48(0)

Q05(148)

29(0)

P58(131)

334(0)

T20(352)

合計 190(ll) 224(62) 253(148) 187(131) 854(352)

無職

L職

29 P63

78 P52

133 P25

108 W0

348 T20

合計 192 230 258 188 868

 生活基盤の余裕(4段階評定で得点が高いほうが余裕がある)について,4つの年齢群の記述統 計量を算出し(表2),群間に差があるかどうかを一元配置の分散分析によって検討した(以後す べての分散分析後の多重比較は,TukeyのHSD法を用い,有意確率5%水準でのサブグループ化で

(6)

初期成人期の母娘関係に関する研究 99

検討した).また,生活基盤の余裕の程度に関して,結婚(未婚/既婚)と職業(無職/有職)の 2要因の各水準間に差が見られるかを二要因の分散分析を用いて検討した.

表2 娘の生活基盤

度数 平均値(SD) 歪度 尖度 自由に使えるお金の工面ができますか。

ゥ由に使える時間的余裕を確保できますか。

フ力や健康面で日常生活に支障がありますか。

862 W62 W63

2.98(.813)

Q.60(.946)

R.59(.696)

一.57

│.12

│1.63

一.04

│.89

P.83

 金銭的な余裕に関しては,4つの年齢群間に有意差が見られなかった.結婚・職業の2要因の各

水準間別に見ると,未婚者は既婚者よりも(F(1)=4.822,p<.05),有職者は無職者よりも(F(1)=55.330,

p<.001)金銭的余裕があった.結婚・職業の2要因の各水準間には交互作用が見られ(F(IF15。276,

p<.001),未婚・無職者が最も金銭的余裕が無く (N=26,M=2.23(1.07)),未婚・有職者(N=305,

M=3.22(.78))が最も金銭的余裕があった.既婚者 については,無職者(N=318,M=2.76(.77)),有職 者(N=207,M=3.07(.76))であった(図2).

 時間的余裕に関しては,4つの年齢群間に有意

差があった(F(3,858)=20.028,p<.001).多重比較

の結果,サブグループ化は{23歳〜26歳群=27歳

〜29歳群}{30歳〜32歳群=33歳〜35歳群}(p<.05)

であり,30歳を境に若い方が時間的余裕を確保し

ている.

 結婚・職業の2要因の各水準間別に見ると,未

婚者は既婚者よりも(F(1)=72.778,p<.001)時間的

余裕があったが,有職者と無職者との間には有意 差は見られなかった.しかし,結婚・職業の2要 因の各水準間には交互作用が見られ(F(1)=5.076,

p<.05),既婚・無職者が最も時間的余裕が無く

(N=319,M=2.29(.96)),次いで既婚・有職者(N=207,

M=2.41(.88)),未婚・有職者(N=304,M=3.02(.80))

であり,未婚・無職者(N=26,M=3.35(.80))が最 も時間的余裕があった(図3).

 健康面での生活支障の程度については,年齢段 階,未婚/既婚,無職/有職いずれにも有意差が みられなかった.

2)母システムの特徴

 今回の調査では母システムの構成要素である母 親の年齢の項目が欠落していた.しかも,娘の年 齢を基準に母親の年齢を推定することは母親の結 婚年齢や子どもの数などが異なるので特定できな い.しかし,娘の年齢は,対象となった娘の母娘

3.4

32

3

辺 28 平 26

2.4

22

ら、

s℃

未婚 既婚

無職有職

一一一一 ウ職 一有職

34

3.2

周2 s

辺26  2.4  2.2

図2 娘の金銭的余裕

未婚 既婚

図3 娘の時間的余裕

無職有職

一一一・ウ職 一有職

(7)

システム年齢となるので,母親の年齢が不明であったとしても,ほぼ母親のライフサイクルの時期 を推測することができる.したがって,娘の年齢段階によって分析した.

 母親の生活基盤の余裕について,娘の4つの年齢群の記述統計量を算出し(表3),群間に差が あるかどうかを一元配置の分散分析によって検討した.

 金銭的余裕に関しては,娘の4年齢段階間に有意差があった(F(3,855)=IO.008, p<.001).多重 比較の結果は,表4のようになった.母親の生活基盤の一つである金銭的工面は,娘の年齢が進む に従って余裕ができてくる.子どもが自立的で独立的な生活を確立するようになっていくこと,言 い換えれば子どもへの金銭的出費から解放されるようになることや収入の面でも成熟期になり夫婦 の収入が多くなり経済的豊かになっていくことが金銭的余裕を増す原因であろう.

 時間的余裕に関しても,娘の4年齢群間に有意差があった(F(3,857)=7.393,p<.001).多重比較 の結果,{娘23歳〜26歳の群}{娘27歳〜29歳の群=娘30歳〜32歳の群=娘33歳〜35歳の群}(p<.05)

のようになった.娘が26,27歳ころを境に時間的余裕が変化してきている.すなわち母親に時間的 余裕が増加するのは,50歳を過ぎたころからであり,50歳頃が子ばなれと金銭的余裕を伴って,自 己の生活の豊かさを重視する生活態度へ変化させるターニングポイントとなることが推測される.

 健康面での生活支障の程度については,娘の4つの年齢群間に有意差がみられなかった.

表3 母親の生活基盤の記述統計

度数 平均値(SD) 歪度 尖度

自由に使えるお金の工面ができますか。

ゥ由に使える時間的余裕を確保できますか。

フ力や健康面で日常生活に支障がありますか。

859 W61 W63

2.98(.816)

Q.82(.828)

R.09(.854)

一.54

│.32

│.51

一.13

│.42

│.67

表4 母親の金銭的余裕と年齢(多重比較)

娘の年齢 度数

α=.05のサブグループ

1 2 3

23歳〜26歳 Q7歳〜29歳 R0歳〜32歳 R3歳〜35歳 L意確率

191 Q27 Q56 P85

2.74

P,000

2.95 R.04

D674

3.04 R.18 D229

3)2者関係構造の特徴

 2者関係構造として,居住状況が母娘「同居/別居」状態であるかどうか,母娘が別戸籍状況か どうか(娘が「未婚/既婚」),母親の住んでいる家まで行くのにかかる時間(空間的距離)がど の程度かを指標に分析した.

(1)居住形態について

 居住形態については,育ててくれた母親との同居/別居,母親との戸籍状態(未婚/既婚)のデ ータから「同居(未婚・既婚)/別居(未婚・核家族・夫の親との同居)」の5の居住形態に分類

した.娘の無職/有職別に居住形態の状況を示したのが表5である.

(8)

初期成人期の母娘関係に関する研究101

表5 居住形態と無職/有職のクロス表

別居 同居

未婚 新核家族

夫の親と同

@ 居 既婚    未婚

合計

無職

L職

2(0.2%)

R8(4.4%)

287(33.3%)

P82(21.1%)

19(2.2%)

P9(2.2%)

14(1.6%)  24(2.8%)

V(0.8%) 270(31.3%)

346(40.1%)

T16(59.9%)

合計 40(4.6%) 469(54.4%) 38(4.4%) 21(2.4%) 294(34.1%) 862(100.0%)

(2)空間的距離

 母親の住んでいる家まで行くのにかかる時間は,直接分単位で回答を求めた.その結果,0分から 900分までの回答があった.度数を勘案しながら,ご近所(15分以内),ちょっと離れているがいつ でも会いにいける範囲(〜30分),何か用事があって出かけて会いに行く範囲(〜1時間),都合を つけて出かけ会いに行く範囲(〜3時間),会いに行けば1日以上つぶれそうな範囲(3時間を越 える)の5段階に分類した.同居者は,0分とした.別居者の分布を表6に示した.なお,調査対象 者から得た分単位のデータを基に記述統計量を算出した結果,分析対象者全員は,N=865, M;50.53 分(92.75),別居者のみは,N=546, M=80.06分(106.16)であった.

表6 母親との距離(同居者を除く)

母の家まで 度数 パーセント 累積パーセント 15分以内

̀30分以内

̀1時間以内

̀3時間以内 R時間を越える

146 P09 P27 X4 V0

26.7     26.7 Q0.0     46.7 Q3.3     70.0 P7.2     87.2 P2.8     100.0

合計 546 100.0

2.母娘システム機能について 1)母と娘の絆

(1)「母と娘の絆尺度」の検討

 娘の認知する「母と娘の絆尺度」として作成した26項目を因子分析した結果,5因子が抽出され た(表7).第1因子は,母親に対してこれまで育てていただいた感謝の気持ちをもち,それにお 返しをしたいと思う気持ちを表明している内容であり, 「感謝の念」と名づけた.第2因子は,現 在の自分の生き方を形成するのに,母親を尊敬し,その生き方に多大な影響をうけ,人生のモデル

としての存在感を感じている内容であるので「人生モデル」とした.第3因子は愛着と依存の感情 を母親に持っているので「母への依存」,第4因子は母との関係を対等で独立した人間としてとら えているので「対等な関係」,第5因子は母親を干渉してくる対象としているので「干渉」と名づけ

た.

 信頼度係数を計算したところ.70以上であったので内的整合性は高いと考え,各下位尺度項目を

(9)

加算し,各下位尺度得点を算出した(表8).

 母親に対する「感謝の念」は,分布が右肩上がりで最頻値(19.2%)が最高点の40点,平均値が 36.14であった.ほとんどの初期成人期の娘は母親に対して感謝の念を持っているといえる.

 母親を「人生モデル」として感じている初期成人期の娘は,平均値が高め寄りで,最頻値(28点)

の山がやや平均値より右に寄り,低い得点のほうに緩やかな裾野を描く分布となった.全体的に娘 は母親を「人生モデル」として高い評価を示している.

 関係が依存的・密着的で「母への依存」状態であると考えられる初期成人期の娘の分布は, 「感 謝の念」と「人生モデル」の中間的な分布を示した.

 母親との関係を「対等な関係」としてとらえている初期成人期の娘は,最頻値を15点とする右寄 りの山で,左ゆるやか傾斜,やや尖鋭の分布を示した.

 母親を自分に対して「干渉」してくる存在として認知している初期成人期の娘は,扁平な分布を 示した.また,1項目からなる尺度であるので,信頼性に疑問が残る.

 母と娘の絆を構成する5つの下位尺度得点の相関を示したのが表9である.「感謝の念」「人生 のモデル」「母への依存」の3下位尺度間では,相互に高い相関を示している.「対等な関係」は,

前3下位尺度と中程度の相関関係を持っているが, 「干渉」は,他の4下位尺度とは,相関が見ら れなかった.

 本研究結果と水野の研究結果(30〜60歳のデータ;親密・対等・葛藤)と比較すると,本研究の

「感謝の念」 「人生モデル」 「母への依存」が統合されて「親密」に, 「対等な関係」が「対等」

に, 「干渉」が「葛藤」に対応すると考えられ,小高の研究(大学1回生〜4回生のデータ;親から のポジティブな影響・親との対立・親への服従・親との情愛的絆・1人の人間として親を認知する)

と比較すると,本研究の「感謝の念」と「母への依存」が「情愛的絆」に, 「人生モデル」が「親 からの影響」にほぼ対応すると考えられる.本研究は,小高の研究対象よりも加齢者であることか ら,質問項目の内容がより成長した対象者用に選択されたこともあるし,加齢と共に「親との対立」

「親への服従」 「1人の人間として親を認知する」が「対等な関係」や「干渉」に再構成されたと も考えられる.

 図1の母娘システムの概念図で示した「母と娘の絆」は,森岡ほかが概観した「家族の世代間連 帯」の要素のうち,①情緒的連帯(愛情に関する認知),③意見・価値観の一致,⑥規範的連帯が混 在した内容と思われる.これは,家族の場合の小集団システムと母娘関係の2者間システムという

システムの大きさの差が,構成メンバー関係の機能分化の程度や要因間の分化に影響を与えている と考えられる.

(2)母娘システム年齢(娘の年齢)と「母と娘の絆」の関係

 初期成人期の娘の年齢を4群に分け,母と娘の絆の5下位尺度得点およびそれを構成する項 目評点の平均値に統計的な差が見られるかどうか分散分析を用いて検討した.

 その結果, 「感謝の念」は,4つの年齢群間に有意な差は見られなかった.項目では, 「13 最 近お母さんのありがたみを感じることがよくある」に有意差が見られ(F(3,857)=12.274,p<.05),

多重比較の結果{23歳〜26歳群=27歳〜29歳群・=30歳〜32歳群} {27歳〜29歳群二30歳〜32歳群=

33歳〜35歳群}(p<.05)の関係が見られ,初期成人期の初めの頃{23歳〜26歳}よりも33歳を過ぎ た頃{33歳〜35歳群}のほうが母親のありがたみを強く感じていることを示している.

 「母親への依存」には,4つの年齢群間に有意な差がみられ(F(3,858)=2.853,p<.05),多重比 較の結果, {23歳〜26歳群=27歳〜29歳群=30歳〜32歳群}と{27歳〜29歳群=30歳〜32歳群=33 歳〜35歳群}のグループとなり, {23歳〜26歳群}のほうが{33歳〜35歳群}より母親への依存が 強い.母への依存度は年齢を重ねるにしたがって減っていくが, {33歳〜35歳群}の娘でも,平均

(10)

      初期成人期の母娘関係に関する研究103

値11.88(SD2.51)と子ども的な母への依存傾向は残っていると思われる.

 初期成人期の後半では,母と娘の絆は「母への依存」から「感謝の念」に変化していくと思われ

る.

  「人生のモデル」 「対等な関係」 「干渉」は,尺度得点および各項目について,いずれもシステ ム年齢群の間に差が見られなかった.

       表7 母と娘の絆  (回転後の因子行列)

1 2 3 4 5

質問頓目 感謝 人生の 母への 対等な 干渉

平均値SD)

の念 モテラレ 依存 関係

2 お母さんを大事こ思っている 476(.51) .8勿 .1㌶ .241 .100 「(随 .722

1 お母さ々こ対して感鯛寺ちを持っている 476(.51) .8麗 .131 .242 .(遭ε 「(鵬 .733

7 お母さ々こ対してこれか臼よ親孝行したい 468(.弱) .731 .170 .274 .1田 「(}42 .(研

8 お母さ〃こ大潮こ思われている、と感じる 447(.74) .6抱 .269 「115 口47 .174 .597

3 私士お母さんを尊敬している 生36(.78) .615 .3〔叉 .301 .060 二11e .617

13最近お母さんのありがたみを感じることがよくある 4田(.66) .9助 .1(肖 .412 .Z〜8 二11ε .596 19租まこのお母さんの子であってよかったと思う 438(.8D .5陀 .3[鶏 .368 .165 「11ε .〔B7 10私とはお母さんはお互レ帽言頼しあってし・ると思う 415(.田) .514 .430 .(溺 .473 「071 .681 12お母さ々こよって自微働紘がった a47(1.01) .199 、?磐 .173 .ぴ .(鵬 .〔運 24お母さんの影響で自分の考えがしっかりしたものとなった 348(1.00) .130 .?田 .2〔逼 .249 .081 .6〔迫

6 お母さ〃こよって自分の人生観が深められた &60(.%) .銘5 .7加 .104 .1(刃 二(辺 ,679

26お母さんは生き方の1!卵レを租こ示してくれたと思う a77(.92) .(η8 .6η .1〔打 .(鴻8 「14C .525 21お母さんの考え方や生き方を尊重している a79(.{石) .361 、鰯 .2臼 .178 三143 .殴 25 利の佃茸蹴士お母さんの価1直観と一致している &13(1.(5) .114 .5禦 .451 .255 二〇田 、576 9 お母さんノ鋤)ことを誇りに思ってしV(くれる 378(.97) 、〔斑 .541 二279 2④ .14ε .(迎 18お母さんの唇動こよって何かをする意欲力W・てきた事がある a48(1.00) .2皮 .§口 .3旬 .200 .13C .558 14お母さんに突き放されるとショックである &85(LO9) .216 .161 .6麗 .(尼1 .(24 .511 22重要なことを快めるときには、棺談する湘談したいと思う) 411(LOO) .374 .271 .6麹 」㏄ .134 .(鴻5 20お母さんと一緒にいるだけでなんとなく安心できる 416(,91) .454 .鵠8 .続 .1図 「(呪 .650

宏お互しが対等な関係であると思う a65(.99) .(幽 .143 .172 .7釣 .02ε .613 5お互いこ独立した人間としてづきあっ百・る a78(.%) .(脳 .233 =1(E .6勾 「251 .田8 11お互いこ自分の考えや意見をはっきり言い合える 431(.85) .2η .167 .1〔η 。6釣 .072 .臼4 16おた力料こ悩みごとを打ち明けられる a肪(1.06) .301 .鯉 .39θ .509 .119 .6(Σ 17お母さんは何かと利の言動に口を出してくる 3田(1.13) 二〇47 「012 .084 二(迎 .90ε .鴎2 4 私うη可かを決める際お母さんの意測ま十分参考になる ag6(.%) .423 .414 .474 .1〔洞 .13ε .〔立o 15お母さんは私フ)言うことや行動を受け入れてくれる 3田(.89) .聞9 .3αヨ .31ε .347 二斑 .490

固有値 5044 生5皮 28[B 26〔菟 L1〔田 医酬法:主万辮 匝胸去1バリマックス法

累積寄与率 193弼 3τ(21 479肥 582炬 砿719

(11)

表8 母との絆(記述統計量)

度数 最小値 最大値 平均値 歪度 尖度 α係数

感謝の念 849 1 40 36.14(4.12) 一1.85 5.28 .904

人生のモデル 857 1 40 28.53(5.72) 一.36 .39 .879 母への依存 862 1 15 12.15(2.43) 一1.00 .96 .754 対等な関係 860 1 20 15.40(2.79) 一.59 .55 .704

干渉 864 1 5 3.23(1.13) 一.01 一1.05

表9 「母との絆」下位尺度間の相関係数

感謝・信頼 尊重・モデル 愛着・依存 対等な関係  干渉 ・葛藤

Pear80nの相関係数 1 .700(**) .690(**) .571(**) 一.053

感謝の念

N

849 842 847 845 849

Pear80nの相関係数 .700(**) 1 .639(**) .617(**) 一.005 人生のモデル

N

842 857 855 854 857

Pearsonの相関係数 .690(**) .639(**) 1 .478(**) .034 母への依存

N

847 855 862 858 862

Pear80nの相関係数 .571(**) .617(**) .478(**) 1 一.042 対等な関係

N

845 854 858 860 860

Pearsonの相関係数 一.053 一.005 .034 一.042 1

干 渉

N

849 857 862 860 864

** 滑ヨ係数は1%水準で有意(両側)です

(3)居住形態と母と娘の絆

 同居形態を育ててくれた母親と別居(未婚,核家族,夫の親と同居),同居(既婚,未婚)の5 形態に分類し,一元配置の分散分析を用いて母と娘の絆の下位尺度得点の平均値に差があるかどう かを検討した.

 その結果,「感謝の念」については,5群の間に有意差が見られたが(F(4,839)=5.192,p<.001),

多重比較ではサブグループ化はできなかった.

 「人生のモデル」は,5群の間に有意差があり(F(4,486)=6.475,p<.001),多重比較の結果は,

{未婚/同居=未婚/別居=核家族=既婚/同居} {未婚/別居=核家族=既婚/同居=夫の親と 同居}にグループ化ができた.夫の親と同居している娘は,未婚で自分の母親と暮らしている娘と 比較すれば,自分の母親の生き方を尊重し,母親を人生のモデルとして捉えている.夫の母親との 生活やそこでの嫁的存在という立場が,育ての母親の価値観や規範の一致を明確にさせ,母親の生 き方を見直す機会となっていることがうかがえる.

 「母親への依存」 は,居住形態の違いで有意な差が見られなかった.

 「対等な関係」は,5群の間に有意な差が見られ(F(4,849)=12561,p<.001),多重比較の結果

{未婚/同居=未婚/別居=核家族} {未婚/別居=核家族=夫の親と同居=既婚/同居}の2つ のサブグループ化ができた.既婚でいずれかの親と同居している娘は,パラサイト的である未婚/

同居の娘より母親と独立した家族意識(自己意識)を常々持つ機会が多いので,母親と対等な関係

(12)

初期成人期の母娘関係に関する研究105 であるという思いが強いと考えられる.

 「干渉」は,5群の間で有意差が見られ(F(4,853)=69.11,pく001),多重比較の結果, {核家族

=夫の親と同居=未婚/別居二未婚/同居}{既婚/同居}となった.既婚し,育ての親と同居して いる娘にとって,母親は口うるさい存在なのであろう.

 青年期後期頃までは,子どもにとって母娘システムがおかれている生活状況がほぼ同じで,同居,

慣れ親しんだ育ての親との間でシステム機能を維持すればよかった.しかし,初期成人期になれば,

母親から心理的にも物理的にも距離ができ,娘の生活状況が変化し,それに伴って母娘の絆も多様 化してくる.ほとんど青年期後期までの親子・母子関係は年齢段階を中心とした軸で捉えることが できるかもしれないが,初期成人期以降の研究は,年齢,居住形態や家族成員とは異なる生活のあ り方・関係の持ち方を把握して,母と娘の絆機能の意味づけや母娘システムを維持する目的を抑え つつ分析する必要がある.

2)相互支援機能

 初期成人期のシステム機能として,母から娘への一方的支援を経過し,自立しあった大人の母娘 がこれまでの親密な関係を土台にして維持しつつ相互支援をすることが重要な機能となる.その相 互支援内容は,物的資源,生活情報資源,労働力,金銭,心理的援助などの生活支援資源交換が上

げられる.

(1)母娘間の生活支援資源交換について

 母娘間で交わされる生活支援資源に関する16項目を因子分析にかけた(表10).

 因子分析の結果,4つの因子に分解でき,第1因子を悩み相談やつらい時のサポートを内容とする

「心理的サポート交換」,第2因子を生活情報や日用品の提供,日常的用事の援助を内容とする「日 常的サポート交換」,第3因子を病気や金銭的危機の際のサポートを内容とする「緊急時サポート 交換」,第4因子を特別な日にお祝いの品を届けるといった行為を内容とする「儀i礼的物資交換」

と名づけた.

 信頼度係数を計算したところ.70以上であったので内的整合性は高いと考え,各下位尺度項目を 加算し,各下位尺度得点を算出した(表11).得点が低いほど生活資源の提供が多い.

 相対的に見ると,初期成人期の女性とその母親との生活支援資源交換の量は, 「日常的サポート 交換」が最も頻繁で, 「心理的サポート交換」, 「儀礼的物資交換, 「緊急的サポート交換」の順 で減少していく.

 各生活支援資源交換内容別の下位尺度得点間の相関は,表12のようであった. 「心理的サポート 交換」 「日常的サボ・一一一+ト交換」 「緊急的サポート交換」の3下位尺度間では,高い相関を示してい

る. 「儀礼的物資交換」は,前3下位尺度とやや相関関係がある程度である.

(2)母娘システム年齢(娘の年齢)と「生活支援資源交換」の関係

 初期成人期の娘の年齢を4群に分け,生活支援資源交換に関する4下位尺度得点およびそれを構 成する項目評点の平均値に統計的な差が見られるか分散分析を用いて検討した.

 「心理的サポート」に関しては,4つの年齢群の間に有意差が見られ(F(3,834)=9.139,p<.01),

多重比較では, {23歳〜26歳群} {27歳〜29歳群=33歳〜35歳群=30歳〜32歳群}の2つにグルー プ化された.{23歳〜26歳群}が27歳以上の群より母娘間での心理的サポート交換がよく行われる.

項目別に見ると母13・娘13の悩みごとや相談ごとの傾聴({23歳〜26歳}{27歳〜35歳}),母12・

娘12の困った時つらい時の同席にもサブグループ化({23歳〜29歳=33歳〜35歳}{30歳〜32歳}})

があり同じような傾向が見られた.しいて言えば,心理的サポート交換は23歳〜26歳が多く,徐々 に減少していく.早期初期成人期の娘は,まだまだ母親の心理的支援が必要な時期であると思われ

る.

(13)

表10 母娘システムの機能;サポート (回転後の因子行列)

因子 1 2 3 4

質問項目

平均直SD) 心理的 日常的 緊急時 儀礼的 共通性 母13 母に悩みごとや相談ごとを聴いてもらった(心理) 4.78(2.13) .843 .196 .ll5 .115 ,776

娘13 悩みごとや相談ごとを聴いてあげた(心理) 5,08(2.2D .812 .205 ,167 ,053 ,732

母12 困った時、っらい時に、一緒にいてくれた(心理) 5.41(2.26) .735 .237 .355 .129 ,739

娘12 困った時、っらい時に、一緒にいてあげた(心理) 6.00(2.10) .706 .177 .422 ㎡135 .725 母8 生活の知恵・料理・ファッションなど身近なことにつ

439(1.87) 。327 .695 .096 .084 ,605

いてのアドバイスをしてくれた(情報)

娘8 生活の知恵・料理・ファッションなど身近なことにつ

4.73(1.87) ,309 .679 .187 .084 .598

いてのアドバイスした(情報)

娘6 食べ物・日用品・衣服などをあげた(物) 5.36(1.58) .056 .679 .045 .295 ,553

母6 食べ物・日用品・衣服などをくれた(物) 4.16(L67) ,079 .673 一.039 .271 .534

母9 家事・育児や家族の世話などの用事を手伝ってくれた

3.78(2.37) .174 .599 .425 一.185 .604

(労力)

娘9 家事・育児や家族の世話などの用事を手伝った(労力) 4.47(2。19) .215 .54§ .456 一.228 .604

娘10 母が病気やけがをした時、看病や生活援助をした(労

6.75(L92) .226 .175 。7§6 .063 .604 カ)

娘11 お金が必要な時、金銭的な経済援助をした(金) 7.61(LO7) .085 一.063 .666 .056 .458

母10 病気やけがをした時、看病や生活援助をしてくれた

6.30(2.13) .259 .277 .647 .131 ,579

(労力)

母11 お金が必要な時、金銭的な経済援助をしてくれた

6.75(1.71) .168 .095 .588 .153 .406

(金)

娘7 誕生日や盆・正月などの機会に品物を送った(物) 6.13(1.34) .131 .139 .124 ,853 .780

母7 誕生日や盆・正月などの機会に品物を送ってきた(物) 6,32(L48) .144 .180 .154 .845 .791

固定値 2,889 2,854 2,599 1,801

因子抽出法:主成分解 回転法:パリマックス法

累積寄与率 18,058 35,894 52,437 63,692

表11 システム機能:生活支援資源  (記述統計量と信頼性係数)

度数

最小値 最大値

平均値(SD) 歪度 尖度 α係数

心理的サポート 叝崧Iサポート ル急時サポート V礼的物資交換

841 W46 W44 W51

32 S8 R2 P6

21.16(7.41)

Q6.83(8.15)

Q7.33(5.21)

P2.44(2.63)

一.38

@.20

│1.54

│1.53

一.61

│.37 Q.45 S.04

.880 D796 D708 D831 母娘総資源交換 820 26 128 88.Ol(18.49) 一.573 .257

(14)

初期成人期の母娘関係に関する研究107 表12 システム機能:サポート因子間の相関係数

心理的サポニト 目常的サボート 緊急時サポート 儀礼的交換

Pear80nの相関係数 1 .567(#) .581(**) .327(**)

心理的サポート

N 841 831 834 834

Pear80nの相関係数 .567(林) 1 .503(#) .304(**)

日常的サポート

N 831 846 836 840

Pear80nの相関係数 .581(**) .503(#) 1 .296(**)

緊急時サポート

N 834 836 844 838

Pearsonの相関係数 .327(**) .304(**) .296(**) 1 儀礼的物資交換

N 834 840 838 851

t+@相関係数は1%水準で有意(両側)です

 「日常的サポート交換」は,4年齢段階群間で有意差が見られ(F(3,842)=6.245), {23歳〜26 歳群} {27歳〜29歳群=33歳〜35歳群=30歳〜32歳群}の2グループ化がある.日常的サポート交 換は早期初期成人期のグループが他のグループよりも多い.項目では,娘8生活の知恵・料理・フ ァッションなど身近なことについてのアドバイスした({23歳〜26歳=33歳〜35歳} {27歳〜35歳 の群}),母9・娘9の家事・育児や家族の世話などの用事を手伝う({23歳〜26歳} {27歳〜32 歳} {30歳〜35歳})となり,早期初期成人期の娘が母親に生活情報の提供を多く行うが,家庭生 活上の労力サポートの交換は段階的に減少していく.

 「緊急時サポート交換」は,年齢段階間で差があり(F(3,840)=9.641),多重比較で{23歳〜29 歳}{27歳〜29歳の群=30歳〜32歳の群=33歳〜35歳の群}の2グループ化があった.最も若い群 が他の年齢群より緊急時サポート交換が多い.項目では,母10・娘10病気やけがをした時の看病や 生活援助({23歳〜29歳}{27歳〜35歳}),母11・娘ll金銭的な経済援助({23歳〜26歳} {27 歳〜35歳の群})であり,若い方の年齢群が病気や経済的危機といった緊急時サポート交換が多い.

若いほど同居者が多いのもその原因と思われる.

 「儀礼的物資交換」は,4つの年齢段階間に差は見られなかった.

(3)居住形態と資源交換

 同居形態を別居(未婚,核家族,夫の親と同居),同居(既婚,未婚)の5形態に分類し,一元 配置の分散分析を行ない資源交換の下位尺度得点の平均値の差の検定を行なった.

 その結果,すべての下位尺度に,有意差が見られた. 「心理サポート交換」 (F(4,830)=9.597),

「日常的サポート交換」(F(4,835)=30.449),「緊急時サポート交換」(F(4,833)=21.858)(F(4,840)=7.687)

であった.

 多重比較の結果,4下位尺度の結果を表13〜表16に示した. 「心理サポート交換」は,同居/既 婚が他の形態に比べて多く, 「日常的サポート交換」は, {同居者} {別居者}{核家族と未婚/

別居}の順で多く, 「緊急時サポート交換」は,{同居者}{別居者}のグループができ,それぞ れのサボ・一一・一ト交換について前者の方の量が多かった. 「儀礼的物資交換」は, {夫の親との同居=

同居/既婚=核家族=別居/未婚} {同居/既婚=核家族=別居/未婚=同居/未婚}のサブグル ープ化が見られ, {夫の親と同居}と{同居/未婚}の間で差が見られた.

参照

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