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嘘の原因帰属による対人関係の変容性の検討-感情・信頼感との関係- [ PDF

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Academic year: 2021

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(1)嘘の原因帰属による対人関係の変容性の検討 −感情・信頼感との関係− キーワード:嘘,帰属,親密度,感情,信頼感 行動システム専攻 三上 聡美 問題. いるかを確認し、得られた結果をもとにして場面を設. 本研究では、対人関係に及ぼす嘘の影響という視点. 定した研究を行う。. から、嘘をつかれたときの状況、特に嘘の内容と相手. 以上の3つの嘘(利己的嘘・儀礼的嘘・愛他的嘘). との関係性に着目する。そして嘘 を つ か れ た と き. が、対人関係の潤滑油となるのであれば、日常生活で. に、嘘をつかれた側が嘘の理由をどのように. はよく用いられる方法となり、良好なものとして捉え. 帰属するかによって、相手と今後の関係性を. られるはずである。しかし、嘘をつくということはポ. どのように調整しようとしているのかを明ら. ジティブな面として捉えられにくいというのも現実で. かにすることを本研究の目的とする。. ある。Duck( 1993) が 、 安 定 的 で 親 密 な 対 人. 「嘘つきは泥棒の始まり」と言われるように、嘘を. 関係を築くためには適応的な行動だけでなく、. つく行為は、良いものではないと一般的には認識され. 適応的な認知が必要であると指摘しているよ. ている。しかし一方で、 「嘘も方便」と言われるように、. うに、つかれた嘘の意図をどのように帰属す. 嘘をつくことが暗黙の了解になっているのも確かであ. るかが重要になると考えられる。よって、嘘. る。. をつかれた側が、つかれたその嘘をどのよう. 嘘に関するこれまでの研究では、人が嘘をつくとき. に理由帰属するかによって、個人差変数を検. にどのような行動をとるかといったような非言語的、. 討する必要性があると考えられる。. 生理的側面や、認知的な側面から検討されてきたもの. 2.嘘と感情・信頼感. がほとんどである(村井,2004;the global deception. 嘘と個人側面については、これまで知見が得られて. research team, 2006) 。これまで嘘についての研究が. いるが、一貫しているとは言い難いものがある(古屋、. 多く検討されてきている一方で、嘘が対人相互作用に. 1991;Kashy & DePaulo、1996) 。だが、嘘をつかれ. 及ぼす影響に関する研究はまだ数少ない。. たときについても同じような知見となるとは言い難い。. 1.本研究における嘘の定義と取り扱う嘘の種類. そこで、嘘をつかれたときの感情と相手への信頼感に. 嘘の種類については、研究者によって定義は異なる. ついて検討する。. が、本研究での嘘の定義については、過去の研究にな. 嘘をつかれたときの感情は、適応的な認知. らい、 “他者に真実とは異なる発言をする”とする。特. がなされるとポジティブなものになると予測. に、Allan & Barbara(2002)の嘘の 4 つのタイプの. される。反対に、不適応的な認知がなされれ. うち、3 つの嘘に注目する。. ば、ネガティブとなる。つまり、利己的嘘を. まず、 “単に自分の利益を考えたことによる嘘”と. つかれたと理由帰属すると、相手が利益を得. して 「利己的嘘」と解釈することにする。次に、 “両. るために、自身が犠牲になると認識すること. 者の関係をつなぎ、実害が起こる可能性がかなり低い. でネガティブな感情を抱くと予測される。一. とされる嘘”として、 「儀礼的嘘」と解釈する。そして、. 方、愛他的嘘をつかれたと理由帰属した場合. “相手に有益になるとされる嘘”について、 「愛他的嘘」. には、相手が自身に利益を与えてくれたとい. と解釈する。. うことで、ネガティブな感情は抱きにくい。. 本研究では、それぞれの嘘についての場面を設定し. また、儀礼的嘘をつかれたと理由帰属した場. た場面想定法による質問紙調査を行う。場面を設定す. 合は、両者に害が及ぼす可能性は低いので、. るにあたり、まず、どのような嘘が日常場面に適して. 利己的嘘と愛他的嘘の中間ほどに位置するで. 1.

(2) あろう。. “体重や身長をごまかす”. 信頼感においては、小杉・山岸(1998)によって、. “体調は悪くないけれど、 どうしても外出したくな. ある自分物について信頼性に関する情報が何もない場. いときに風邪を引いたことにする”. 合には、一般的信頼の高い人は低い人よりも、その人. 2. 「自身に起因するが、他者もかかわる嘘」. 物の信頼性を高く見積もる、という結果が得られてい. “返信の必要なメールの対応を忘れていて相手に. る。よって、一般的信頼の高い人の相手への普段の信. 詰められた時に、メールが届いてないから確認で. 頼感は、一般的信頼の低い人よりも高いため、嘘をつ. きていないと言う”. かれることによって、一般的信頼の低い人よりも相手. “異性の友達と遊びに行くことを、 恋人には同姓の. への信頼が低くなることが推測される。つまり、つか. 友達と遊びに行くと言う”. れた嘘を原因帰属することで、より強いネガティブ感. “友達にもらった手作りお菓子などのプレゼントを. 情を抱くと、相手への信頼感は低くなることが考えら. 本当は気に入らなかったが、嬉しいと喜んだ” 3. 「相手に起因する嘘」. れる。 また、嘘をつかれることによっての相手への信頼感. “相手が何かにおいて心配している時に、確信はな. も、相手との親密度の違いによって異なると考えられ. いけれど大丈夫だよと安心させてあげる” 4. 「冗談・社交辞令的な嘘」. る。 そこで、親密性の高い友人と低い友人の 2 者から、3. “今朝、芸能人を見かけた”. つの嘘をつかれることによる感情・信頼感について、. “相手が同意を求めてきた内容に、自分はそのこと. 以下の仮説をもとに検討を行う。. についてそれほど考えていないけれど、とりあえ ず同意に応じる”. 1.親密な相手からつかれた嘘を利己的理由に帰属した. “笑える、差し障りのない冗談のようなもの”. ときのネガティブ感情は、儀礼的嘘、相対的嘘と帰. 考察. 属したときよりも高くなるだろう。. 以上の結果は、 「自身に起因する嘘」 「相手に起因す. 2.非親密な相手からつかれた嘘を愛他的理由に帰属し. る嘘」 「社交辞令的な嘘」の 3 つによりまとめることが. たときのネガティブ感情は、儀礼的嘘、相対的嘘と. できると考えられる。よって、本研究で定義した、 「利. 帰属したときよりも低くなるだろう。. 己的嘘」 「儀礼的嘘」 「愛他的嘘」は日常で用いられる. 3.親密な相手からつかれた嘘を利己的理由に帰属した. 嘘として扱うことができるということが分かった。. ときの相手への信頼感は儀礼的嘘、相対的嘘と帰属. また、上記の回答例の他の記述として、 “恋人や親友. したときよりも低くなるだろう。. など、親しい人に嘘をつかれたら、軽い嘘でも傷つく”. 4.非親密な相手からつかれた嘘を愛他的理由に帰属し. というものがあった。この記述からも、本研究を行う. たときのネガティブ感情は、儀礼的嘘、相対的嘘と. ことへの意義が伺えることが示唆された。. 帰属したときよりも高くなるだろう。 第二研究 第一研究. 目的. 目的. 第一研究によって得られた結果をもとに、「利己的 嘘」 「儀礼的嘘」 「愛他的嘘」の 3 つの場面を設定し、. 嘘の場面を設定のため、日常において比較的よく用 いられている嘘の場面を収集する。. それぞれの嘘をつかれることによって、どのような感. 方法. 情を抱くか、また相手への信頼感について検討する。. 調査対象者 20 代の男女を対象とし、2008 年 10 月下. 方法. 旬から 11 月上旬にわたってメール法にて調査を行っ. “友人と食事に行く約束をしていたが、友人が体調. た。 “日常でよく用いると思われる嘘”について自由記. を崩したことで約束を断られる”場面想定した質問紙. 述について回答を求めた。. 調査を行った。断られた理由は嘘の記述であり、3 種. 結果 嘘の内容として、27 の回答が得られ、4 つに分. それぞれ違う理由とした。また、嘘をつかれる相手を、. 類した。以下に例を示す。. 親密な友人と、非親密な友人の2者を設定し、計6種. 1.「自分のプライベートに関する嘘」. 類の質問紙を作成した。. 2.

(3) 調査対象者 2008 年 12 月上旬に、北部九州に在住す. はみられなかった。わずかに疑問は残るが、場面設定. る学生(大学、専門学校生)を対象として調査を行っ. に問題はないと考えられるため、操作は有効であると. た。回収された 299 名の質問紙うち、274 名(男性 115. いえる。. 名、女性 159 名)を分析対象とした。. 2.感情. 質問紙構成. 感情尺度について、内的整合性を検討するためにα. ①友人の想起. 係数を算出したところ.89 と十分な値が得られた。しか. 親友については、回答者が最も親しいと思っている. し、1 項目において、他の項目に比べ値が低いために. 友人、非親密な友人については、これから親交を深め. 削除した。再度、削除した 10 項目においてα係数を算. ていく段階の友人を 1 人想定させた。. 出したところ.92 とより高い値が得られた。. ②嘘の理由帰属. 次に感情項目について下位尺度を算出し、下位尺度. 友人がどのような理由で嘘をついたかを尋ねる 4 項. を従属変数、嘘の種類と親密度を独立変数とした 2 要. 目を作成し、4 件法にて回答させた。. 因分散分析を行ったところ、交互作用は有意ではなか. ③嘘をつかれた時の感情. った(F. 佐藤・安田(2001)による日本語版 PANAS、井上・. (2, 268). = 0.70, n.s.) 。親密度の主効果はみられ. なかったが、嘘の種類において主効果がみられたため、. 小林(1985)を参考に、感情についての尺度を計 11. Tukey の HSD 検定による多重比較を行ったところ、. 項目、SD 法にて作成した。項目例としては、 “嬉しい. 利己的嘘は儀礼的嘘と愛他的嘘よりも有意に感情得点. −悲しい” 、 “楽しい−苦しい” 、 “平穏な−怒り” 、 “安. が高く、また、儀礼的嘘は、愛他的嘘よりも有意に感. 心な−心配な”である。6 件法にて回答させた。. 。これより、つかれた嘘 情得点が高かった(p <.001). ④嘘をつかれた時の信頼感. を利己的嘘と理由帰属した際に感情がもっともネガテ. 天貝(1995)の成人版信頼感尺度より“他人への信. ィブになることが分かった。また、儀礼的嘘と理由帰. 頼” 、 “不信”因子における尺度 14 項目を用いて、6 件. 属した際の感情は、愛他的嘘と理由帰属した際よりも. 法にて回答させた。. ネガティブになることが分かった。よって、仮説 1、2 は支持されなかったが、利己的嘘へ理由帰属すること でネガティブ感情が高くなるという点については支持. 結果 1.理由帰属. され、また、儀礼的嘘が愛他的嘘よりもネガティブ感 情が高いという点においては支持されたといえる. 設定した場面において,操作が有効であったかを確. (Figure1) 。. 認するため,嘘の種類(利己的嘘・儀礼的嘘・愛他的 嘘)と理由帰属に関する項目において,1 要因分散分 析を行った。結果、4 項目全てにおいて有意であった。. ***. (それぞれ、F (2, 271) = 27.22, p <.001、F (2, 271) = 28.21,. p <.001、F. (2, 271). ***. 5. = 44.50, p<.001 、F (2, 271) = 21.86,. p<.001) 。. ***. 4. それぞれにおいて Tukey の HSD 検定による多重比. 感 情. 較を行ったところ、利己的嘘と理由帰属する項目につ いては、利己的嘘の設定場面は、儀礼的嘘と愛他的嘘. 3. 2. 。よって、利 よりも有意に得点が高かった(p <.001) 己的嘘の場面設定の操作は有効であるといえる。. 1. 次に、愛他的嘘と理由帰属する項目については、愛 0. 他的嘘の設定場面は、利己的嘘と儀礼的嘘よりも有意. 利己的嘘. 儀礼的嘘. 愛他的嘘. Figure1 嘘の理由帰属によるネガティブ感情の大きさ(p <.001). 。よって、利己的嘘の設 に得点が高かった(p <.001) 定場面の操作も有効であるといえる。 そして、儀礼的嘘と理由帰属する項目については、. また、感情項目各々については、嘘の種類と親密度. 儀礼的嘘の設定場面は愛他的嘘よりも有意に得点が高. を独立変数、感情項目を従属変数とした 2 要因分散分. かった(p <.001)ものの、利己的嘘との間に有意な差. 析を行ったところ、下位尺度にての検討同様、すべて. 3.

(4) の項目において交互作用はみられなかったが、嘘の種. 指して、実態よりも過剰に認知的な脚色をすることが. 類について主効果がみられた。したがって、各々の項. 必要であることも指摘している。つまり、1)相手との. 目について Tukey の HSD 検定による多重比較を行っ. 関係の肯定的特徴を強調し、2)故意に関係の価値を高. たところ、ほとんどの項目において、利己的嘘が最も. めるような帰属を行う、3)極端に楽天的な捉え方をす. ネガティブ感情が高く、次に儀礼的嘘、そして愛他的. ることなどであるとしている。この考えは、嘘をつく. 嘘の順となった。また、親密度においての主効果はい. ことで対人関係を良好に維持できるというように捉え. ずれもみられなかった。. られることもできるであろう。本研究において、愛他. 3.信頼感. 的嘘をつかれたと理由帰属する際に、ネガティブ感情. 信頼感尺度の因子分析結果を行った結果(重みなし. は比較的低いという結果からも窺えるように、内容が. 最小 2 乗法,プロマックス回転) 、先行研究とほぼ同様. 真実でないにしろ、相互関係が肯定的であると帰属す. の結果を得た。因子名は、第 1 因子から順に「不信」. ることによって、対人関係への影響は良いものとなる. 「他人への信頼」とし、各因子に含まれる項目の合計. と考えられる。. を下位尺度得点とした。. 一方で、対人関係の維持は、認知を肯定的に変容す. 嘘の種類と親密感を独立変数、信頼感尺度の各下位. る必要はなく、正確に認知し、共感することで親密さ. 尺度得点を従属変数とした 2 要因分散分析を行った結. は維持できるとという知見もある(Simpson, Ickes, &. 果、交互作用、主効果、ともに有意な差は得ることは. Orina、2001) 。よって、相手の嘘をどのように帰属し. できなかった(順に、F (5, 268) = 1.08, n.s、F (5, 268) = 0.93,. たしても、もしそれを共感できるとすれば、対人関係. n.s)。よって、仮説 3、4 は支持されなかった。. は良好になるのである。親密な関係のみに関わらず、 非親密な関係においても、今後親密さを深めることを. 考察. 考慮すれば適応的なものであると考えられるだろう。. 1.嘘の理由帰属と感情について. 2.嘘をつかれたことによる相手への信頼感について. 嘘をつかれたときに感情に変化が起こるのは、誰に. 研究結果より、感情については、嘘の種類において. 嘘をつかれたかということよりも、どんな嘘をつかれ. 顕著なものが得られたものの、信頼感については顕著. たかによるものではないかと考えられる。つまり、相. な結果を得ることができなかった。信頼と騙されやす. 手がどんな関係であっても、相手のついた嘘を利己的. さには関係がないことが示されているが(Rotter、. なものによるものだと理由帰属すると、嘘をつかれた. 1980a) 、これは相互の関係性においても関係性がない. 側の感情はネガティブになる。また一方で、愛他的な. ことが示唆されたといえる。. ものによる嘘だと理由帰属するとネガティブ感情は低. 親密な関係における信頼は、両者の関係性における 経験に基づく(Rempel, Holmes, & Zanna、1985)。よ. くなるのである。 Ennis, Vrij & Chance(2008)は、親密な関係より. って、両者で相互作用が繰り返されると、相手の行動. も非親密な相手に、自然で流暢な嘘をつきやすいと述. の予測が可能になり、またその行動の原因を相手の意. べている。よって、嘘をつかれる側は、非親密な相手. 図や動機、傾性に帰属するようになる。したがって、. の嘘を見抜きにくいということが考えられる。また、. 相手から嘘をつかれても、相手とのこれまでの関係が. 他者をうそだと思う瞬間は、自身が嘘をつく回数より. 悪いものでなれば、信頼感が著しく低下することはな. も低い(村井、2000)ことより、非親密な相手に関わ. いと考えられる。一方で、嘘をつかれたときに、相手. らず、親密な相手からの嘘も見抜きにくいのではない. の行動の意図に帰属するという点においては、本研究. かと考えられる。. の結果からも窺えるものである。だが、嘘をつかれた. また、Harvey & Omazu(1997)は、親密な関係を. ことによって抱かれるネガティブな感情が、信頼感を. 管理・維持するためには、トラブルが起こる前に処理. 低下させるという影響は考えられにくい。. することが重要であると述べ、コミュニケーションの. 本研究では、日常比較的用いられる嘘をとりあげた. 活性化について述べているが、さらにその上で、ある. が、他によっては信頼感に変化が生じる可能性も考え. がまま正直であるよりは、後々までの関係の維持を目. られる。その点について検討の必要性があるだろう。. 4.

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参照

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