協同組合共済における教育
高 野 智
■アブストラクト
協同組合共済における教育については,保障事業を行う上での教育と協同 組合共済としての教育という2つの側面がある。また,協同組合共済といっ てもその根拠法は各組織により異なり,設立の経過や組織の社会的役割もそ れぞれのものを有する。従って,各協同組合共済がそのような観点を教育に も取り入れ,組織の人材育成の中に組み入れるとともに,組合員や利用者に 対し知らせていくように取り組んでいる。単に保障事業の教育だけでなく,
共済や協同組合についても教育していくことが,協同組合共済の教育におけ る特徴である。
そしてこれは,組合員や利用者だけでなく社会に対しても持続的に取り組 んでいく必要があり,それをいかに実践していくかが今後の課題である。
■キーワード
協同組合,共済の社会的役割,共済教育
1.はじめに
協同組合共済における教育について述べるにあたり,単に保障事業の側面 からの教育ということにはならない。保障事業を提供する保険会社が存在す るのに,なぜ共済団体が存在するのかという側面についても協同組合共済に 携わる職員に教育していく必要がある。また,協同組合共済を利用するには,
通常その協同組合の組合員になることが必要とされるが,協同組合としてそ /平成25年9月24日原稿受領。
の組合員や利用者にも,協同組合や共済事業について,必要な情報を提供す るなど広義に教育をしていくことが望ましい。
全国に共済団体は6,678団体 と数多くあり,協同組合共済の教育につい て一概に言えるものではないが,本稿では,全国共済農業協同組合連合会
(以下, JA共済連 という),全国共済水産業協同組合連合会(以下, JF 共水連 という)全国労働者共済生活協同組合連合会(以下, 全労済 と いう),日本コープ共済生活協同組合連合会(以下, コープ共済連 とい う),などの協同組合共済の取り組み事例などを参考にしながら,協同組合 共済における教育を考察していくこととする。
2.協同組合共済としての教育に対する考え方
協同組合共済は,保障事業を行う組織である。共済の引き受け,推進や支 払査定業務などの事業を遂行するための業務知識の習得や,組織運営を行う ための教育は当然必要であり,各団体とも,職種別研修や階層別研修等の教 育制度を有し,人材育成を図っている。生命系の共済及び損害系の共済の両 方を取り扱う団体,生命系あるいは損害系のみの共済を取り扱う団体,短期 共済のみを取り扱う団体など,それぞれ組織の特性に違いはあるものの,そ れぞれの特性を踏まえ,保障事業を担うための人材育成が体系化されている。
そして,共済事業を普及し推進する役割を担う人材の研修や育成にも各協同 組合共済は注力しており,専門的な知識を持ち,コンサルタントとしての役 割を担うJA共済のライフアドバイザーはその一例である。
むしろなぜ協同組合共済なのかという点で,教育に関し大きな特徴がある ように思う。共済事業とは, 私たちの生活を脅かすさまざまな危険(生命 の危険や住宅災害,交通事故など)に対し,組合員相互に助け合う保障事業 で,組合員があらかじめ一定の掛金を拠出して協同の財産を準備し,死亡や 災害など不測の事故が生じた場合に,共済金を支払うことによって組合員や 遺族に生じる経済的な損失を補い,生活の安定をはかる助け合いのしく
1) 日本共済協会編 ファクトブック日本の共済事業 ((2012)
P12参照。
み である。つまり,協同組合の理念に基づき共済事業を行っている団体 であるという特徴があり,それを職員にも教育していく必要がある。各共済 団体においては,その点について教育研修のカリキュラムの中に組み込まれ ており,主に次の点を中心に触れられている。①共済事業とはなにか,②共 済事業の歴史,③共済事業の社会的役割,④協同組合原則,⑤組織の設立目 的や存在意義についてなどである。これらについて触れながら,自組織が共 済団体として存在している意義を教育していくことが必要となる。
3.協同組合及び共済に関する教育の取り組み
前述した①〜④については,どの協同組合共済もほぼ共通事項であり,日 本において協同組合の事業の一つとして共済事業が始まった経緯や,共済事 業が社会にどう貢献しているかなどの内容となる。その中で特に ④協同組 合原則 について少し説明しておくこととする。協同組合原則は,世界の協 同組合の連合組織である国際協同組合同盟(以下, ICA という)が定め た世界共通のものを指し,協同組合がその価値を実践に移すための指針のこ とである。協同組合原則には,以下の通り7つの原則 が定められている。
第1原則 自発的で開かれた組合員制 第2原則 組合員による民主的管理 第3原則 組合員の経済的参加 第4原則 自治と自立
第5原則 教育,研修および広報 第6原則 協同組合間の協同
第7原則 地域社会(コミュニティ)への関与
ICAによると,ICAの加盟組織は96カ国271団体傘下の組合員は世界全体 で10億人を超えるとのことであるが ,世界の協同組合がさまざまな事業を
2) 前掲注1)
P4参照。
3) 前掲注1)
P40参照。
4)
ICA
ホームページより,(2013年3月26日現在の数字)。行う際に,このような原則を指針としていること,日本の協同組合共済もそ の一員として事業を行っていることなどについて,職員教育をしていくこと も一つの特徴であろう。
⑤組織の設立目的や存在意義 については,各組織固有のものであり,
それぞれの特徴がある。もともと共済事業は,各協同組合の組合員のニーズ に応えるために,協同組合組織が相互扶助性を活用した保障制度を組合員に 提供するようになったのが始まりである。農業や漁業に携わる人々,給与労 働者や消費者,自営業者,中小企業経営者などの属性を対象としての事業活 動を行い,組合員に必要な保障を組合員の手に届く範囲で提供するような保 障制度を実施している。従って,JA共済を例にとると,相互扶助の精神の もとに農家の営農と生活を守り高め,よりよい社会を築くことを目的に組織 された農業協同組合(以下, JA という)の組合員や利用者に対し,どの ような事業理念で共済事業を実施し,どのような保障を提供しているかとい うようなことを職員教育していく必要がある。その他の団体をみても,漁業 協同組合(以下, JF という)の組合員を対象とするJF共済,労働組合 の組合員を対象とする全労済,地域の生活協同組合の組合員を対象とするコ ープ共済,中小企業の事業者を対象とする中小企業共済などそれぞれの組織 によって対象とする組合員が異なる。これはもともとそれぞれの設立経過が 違い,それぞれの組織の根拠法で定められている目的も異なることによるも のであるが,それらをそれぞれの組織の職員にも教育をしていかなければな らない。また,JA共済連,JF共済連,コープ共済連は,それぞれのグルー プ組織で,共済事業だけでなくいくつかの事業も行っていることから,グル ープ全体の方針,運営や目標なども,職員教育のなかで周知させていく必要 がある。
例えば,JA共済連では,人材育成の体系の中で,若手に対し協同組合の 理念やJA共済の使命に関する研修を行うとともに,地域のJAでの体験研 修を組み入れている。JA共済の利用者は,地域のJAの組合員などである。
従って,JA共済の事業を担うためには地域のJAがどのような組織でどの
ような運営をしているか,実際に体験させることが狙いとされている。その 体験内容は,農産物直売所での購買実習,農業体験,ライフアドバイザーの 推進同行など地域のJAによって異なるようだが,地域のJAと組合員・利 用者のことを理解するうえで,貴重な機会となるであろう。また,共済事業 のみを行っている全労済では,協同組合であるとともに労働者福祉事業団体 としての側面も有することから,人材育成の体系の中で,若手に対しそれら に関する研修を行っている。2012年は,国連が定めた国際協同組合年であっ たこともあり,若手に限らず全役職員を対象に,年間を通してあらゆる集合 研修において,全労済の設立経過及び存在意義や,協同組合の社会的役割に ついて,再認識するための研修を実施した。
このように,各組織それぞれが,保障事業を行う上での職員教育及び協同 組合共済としての職員教育という側面から,人材育成を行っているが,いく つかの共済団体は,組織の規模や職員数などの関係から,教育研修プログラ ムが十分ではない組織も存在する。このようなニーズに応えるため,日本共 済協会では共済団体向けに共済団体職員研修会を開催している。これは,共 済団体職員の人材育成の支援のための研修として,共済実務に関する基礎的 スキルの向上を目的としているもので,これまで以下のとおり年間6講座を 開催している。
講座名 研修の主な内容
生命共済支払査定研修会
自動車共済支払査定研修会
共済金支払認定業務の知識,問題解決について
損害査定の基礎的知識と自動車構造について 経理処理の基礎知識,税務,決算など実務について 経理研修会
普及推進活動の基礎的な知識について 普及推進研修会
火災共済支払査定に関する基本行動や査定技術,モ ラルクレームについて
火災共済支払査定研修会
共済概論等共済の基礎知識について 共済基礎研修会
いずれも保障事業を行う上で必要となる実務研修が中心であるが, 共済 基礎研修会 においては,新入職員や共済担当新任者向けとして開催し,
共済と法 や 共済掛金のしくみ などの基礎知識のほか, 共済の概要 として,共済の主な特徴や協同組合と共済などについても組み込まれており,
共済事業全般の基礎知識について習得できる内容となっている。そしてこれ らの研修には,さまざまな共済団体の職員が参加するため,研修に参加し知 識を習得するとともに,いろいろな共済団体が存在していることについてお 互いを知る機会にもなっている。
4.組合員などへの教育
ICAの協同組合原則の第5原則 教育,研修および広報 には, 協同組 合は,組合員,選出された代表,マネジャー,職員がその発展に効果的に貢 献できるように,教育訓練を実施する。協同組合は,一般の人々,特に若い 人々やオピニオンリーダーに,協同組合運動の特質と利点について知らせ る。 と記述されている。つまり,協同組合の出資者であり利用者である組 合員や一般の人々に対し教育をすることが記されているわけである。これは,
協同組合原則という指針であり義務ではないものの,協同組合共済もこれを ある程度意識した運営を行っている。各協同組合共済が,組合員教育と題し て公表しているものではなく私見にはなるが,各組織の取り組みのなかで,
組合員教育や一般の人々に共済や協同組合について知らせるような取り組み をしていると思われるものをいくつかとりあげることとする。
⑴ 協同組合及び共済事業について(JAグループ)
前段で,協同組合共済の職員教育として協同組合及び共済事業についての 取り組みについて説明したが,これは組合員や利用者,一般の人々などにも 同様に周知すべきものである。各組織ともなんらかの取り組みをしているが,
ここではJAグループのケースをとりあげる。JAグループは,全国に組合
5) 前掲注1)
P40参照。
→脚注が入らないためアキを作成しています。訂正時注意
員が約983万人おり,JAの数が703団体 あるという規模の大きさ及び設立 経過などから,組合員との接点は各地域のJAの組織が担っているが,JA グループの総合指導機関であるJA全中は,そのホームページにおいてJA のことを説明するにあたり, 協同組合はその設立の基本的な考え方や組織 の運営について,株式会社とは大きく違っている として,協同組合と株式 会社の違いを次のように説明している 。
そして,JA共済連のホームページにおいては,JA共済を告知するだけ でなく, 共済 ってなんですか? という標題をつけ,共済と保険の違い や協同組合について説明をしている。一般の人々にはわかりづらい協同組合 や,共済と保険の違いについて,わかりやすい語句で説明されている。
6)
JA
共済連ディスクロージャー資料JA
共済連のご案内2013P28参照。
7)
JA
全中ホームページJA
グループについて 参照。協同組合 株式会社
利潤の追求
<営利目的>
投資家,法人
<株主>
事業は限定されない,利益金の分 配を通じた株主へのサービス,利 用者は不特定多数の顧客
株主代理人としての専門経営者
1株1票制 組合員の生産と生活を守り向上さ
せる
(組合員の経済的・社会的地位の 向上,組合員および 会員のため の最大奉仕)<非営利目的>
農業者,漁業者,森林所有者,勤 労者,消費者, 中小規模の事業 者など<組合員>
事業は根拠法で限定,事業利用を 通じた組合員への サービス,利 用者は組合員
組合員(その代表者)
1人1票制 (人間平等主義に基 づく民主的運営)
目的
組織者
事業,
利用者
運営者
運営方法
⑵ ライフプランニング活動(コープ共済連)
保障事業に関する保障の点検や保障の見直しなどについて,組合員や利用 者に適切な保障の提供を提起するための活動を各組織とも実施している。
JA共済連の 3Q訪問活動 や,全労済の 生活保障設計運動 などがそ れにあたるが,本稿ではコープ共済連のライフプランニング活動をとりあげ る。
ライフプランニング活動は,生協の組合員がくらしを守り,くらしを見直 すために適切なアドバイスができるようにライフプラン・アドバイザー(以 下, LPA という)を養成し活動をすすめるもので,1994年にスタートし た。
2009年には,ライフプランニング活動15周年を迎え,今後の活動の指針と なる ライフプランニング活動のめざすもの が策定された。その中では,
ライフプランやくらしにかかわるお金について,組合員どうしの学びあいの 場を提供することによって,組合員のくらしの向上に貢献すること。またこ の活動を広げることで,生協やコープ共済の信頼構築と発展に寄与すること とし,次の4点が掲げられている 。
①組合員の経済的,精神的なくらしの向上に貢献します。
②生協の事業や活動の周知を促し生協の発展に貢献します。
③生協の地域をつなぐかけ橋として社会に貢献できる活動を行います。
④コープ共済の社会的信頼の向上に寄与します。
この活動の特徴は,生協の職員,組合員とも受講できるものであること,
生協らしく生活全般を見ていくという視点であること,コープ共済の募集と は直接関わらない活動であること,などが挙げられる。2012年度時点で,
LPAは総勢3,029名となり,そのうち組合員のLPAは1,314名で半数に近 い数字であり,多くの組合員が参加している生協らしい活動となっている。
8)
http:
//coopkyosai.coop
/about/ lpa/ history.html
(コープ共済連HP
ライ フプランニング活動の歩み より)。→見出しのみなってしまうためアキを作成しています。訂正時注意
⑶ 年金等福祉知識普及推進事業(JF 共水連)
人々のくらしに関わる情報の提供や啓発活動は,各組織の特性に合わせさ まざまな取り組みが展開されている。その中で,JF共水連の取り組みをと りあげる。
JF共水連では,漁村地域に生活する組合員を対象に年金等福祉知識普及 推進事業を展開している。もともと,高齢社会の到来に備え,漁業者の老後 の生活安定のために必要な経済的基盤づくりを目指し,JF共済で漁業者ね んきんを始めたという経緯もあり,老後の生活資金をどうするかということ については,JF共済を利用する漁協の組合員の関心が高いところである。
そのような背景もあり,当事業では,地域の漁協組合員やその家族などを対 象に,年金地域講習会を展開し,老後の生活資金準備,食生活と健康などを 題材とし,年金制度,福祉情報,健康や医療などについての啓発活動を行っ ている。このような講習会を提供することで,組合員の生活福祉の向上をめ ざすとともに,組合員やその家族と会する貴重な機会ともなっており,この 間各地の漁村地域で開催されている。
⑷ 防災・減災の取り組み(全労済)
協同組合共済として,各組織とも組合員や利用者への啓発を目的としたさ まざまな社会的取り組みを展開しているが,本稿では全労済の防災・減災の 取り組みをとりあげる。
もともと全労済は,社会貢献活動の主要な取り組みとして防災・減災の活 動を掲げていたが,東日本大震災が起こったこともあり,更にこの取り組み を進めている。コンセプトとしては,災害の多い日本において,防災・減災 は,安心できる社会づくりのために欠かせないテーマであるとして,家族で 災害のしくみ等を楽しく学べる ぼうさいカフェ の開催や,Webサイト で簡単に防災・減災に関する個々の現状の再確認ができる 防災点検アンケ ート 等を通じて,地域の防災意識の向上を後押しする取り組みを行ってい る 。特に, 防災点検アンケート は,組合員に防災・減災の知識をわかり
9) 全労済 社会貢献活動レポート (2013)P11参照。
やすく伝えるため, 備える・守る・再建する をキーワードとする 住ま いと暮らしの防災・保障点検運動 として,東日本大震災の後に展開されて きた。
また,ホームページにおいては, 全労済のみんなの防災 サイトを設け,
防災の知識を正しく楽しく身につけることができるような内容とし,定期的 な情報発信を行うとともに,東日本大震災を風化させない取り組みとして,
被災地の消防団・防災組織の経験をヒヤリングしまとめたものを,広く情報 共有するなどの取り組みを行っている。縦長で海も山もある日本では,防 災・減災の取り組みは各地域によって事情が違うなか,全労済はこれらの取 り組みを継続的に行うことで,全国にいる組合員が災害に準備をし,生活を 守ることができるように,防災・減災の啓発活動を展開している。
5.課題と今後に向けて
⑴ 保障事業を行う上での教育の課題と今後
各協同組合共済団体は,それぞれ組織の特性を踏まえ,保障事業を担うた めの教育制度が体系化しているが,今後さらに社会の変化に合わせた人材育 成の対応が必要となろう。この間も個人情報保護法の施行,コンプライアン スの遵守,保険法の施行,国際会計基準や監督規制の動向,社会保障の動向 など,保障事業に影響を及ぼす事項について,随時職員教育に取り入れ,人 材育成を図ってきており,今後もこのような社会の変化に対応する職員教育 が求められる。また,生命系と損害系両方の共済を取り扱う組織においては,
それぞれ業務知識の習得や実務対応などについて研修体系を組む必要があり,
より計画的に体系化していかなければならない。
その中で,特に大規模災害に関する対応をどのように準備し,職員教育に 盛り込んでいくかについても大きな課題であろう。JA共済や全労済のよう に自然災害に関する補償を提供している組織は,どのように体制を組み,そ のためにどのように人材育成を図るかについて,この間準備を進めてきてい る。
JA共済の自然災害損害査定においては,適正に支払査定を行うだけでな く,丁寧な損害調査を心がけるとともに,契約者の心情を察した気配りのあ る対応をし,JAへの信頼感を高めることとしている。そのために,JA・都 道府県本部・全国本部それぞれの役割に応じてスムーズな対応ができるよう 資格制度を定め,体制の強化を図っている 。実際,東日本大震災において も,全国各地から合計2,475名の自然災害広域損害査定員等を派遣し,JA とJA共済連が一丸となって,初動対応や損害調査を進めた 。今後の大規 模災害に向けた対応として,更に体制を整備するため,JA・都道府県本 部・全国本部それぞれで自然災害損害査定員の増員のための整備を図ってき ている。そして,平成25年度を初年度とする JA共済3か年計画 におい ても, 大規模災害発生時の万全な損害調査・支払査定に向け,JAの自然災 害調査員3万100人,連合会総合職の自然災害損害査定員資格取得率100%態 勢の構築をめざす 。 とし,更なる査定員の人材育成を掲げている。
全労済では,東日本大震災の対応として,訪問調査活動を被災組合員と接 する大切な機会と捉え,全労済グループの役職員が被災住宅の損害調査を行 った。全国から延べ6,000名を超える職員がその対応にあたった。そして,
今後の大規模災害の対応への重要課題として,災害対応要員の育成と体制強 化が掲げられた 。自然災害の査定対応としては,風水害と地震災害の査定 があるが,まずは地震災害の認定ができるスキルを有する職員を早急に増員 するために,現場調査要員の育成に向けた研修計画をたて,この間計画的に 実施をしてきている。2013年度までに全職員がその資格を有することとし,
研修計画が進められている。
10)
JA
共済総合研究所 共済総研レポート2008.12/JA
共済の自然災害損害査 定について より。11) 前掲注6)
P8参照。
12) 日本農民新聞2013年3月25日号より。
13) 全労済ディスクロージャー資料 東日本大震災全労済の取り組みと今後の課 題 より。
⑵ 協同組合及び共済に関する教育の課題と今後
これまで各組織が,協同組合及び共済に関する教育に取り組んできたこと に触れてきたが,これは継続的に実施する必要がある。自組織の職員だけで なく,派遣職員や関連会社職員も含め,協同組合共済として,どのような社 会的役割を有しているのか周知する機会を体系化しておくことが望ましい。
そして,前述したように組合員や利用者,そして社会に対しても,協同組合 や共済事業について,持続的に発信していくことが必要となる。
2012年は,国連が定めた国際協同組合年であった。これは,協同組合がも たらす社会経済的発展への貢献が,国際的に認められた証しであり,昨年は 協同組合共済も含み,いろいろな協同組合が連携して, 協同組合がよりよ い社会をつくります というスローガンのもと,さまざまな取り組みを展開 した。今年は,ポスト国際協同組合年を迎えるなか,ICAは,世界の協同 組合が今後10年にわたって取り組むべき行動目標 協同組合の10年に向けた 計画(ブループリント) を作成した。この計画では,2020年までに協同組 合が①経済・社会・環境の持続可能性において認知されたリーダーとなる,
②人々に最も好まれるモデルとなる,③もっとも急速に成長する事業形態と なる,という3つの目標を掲げている 。
国連は,国際協同組合年の目標として 協同組合の認知度の向上 , 協同 組合の成長の促進 および 適切な協同組合政策の確立 を掲げた。それら を実現するためにも,国際協同組合年の取り組みが単年度で終わるものでは なく,継続的な取組みを実施していくことが重要であり,このような内容も 協同組合共済として,内外に発信をし,継続的に告知していくべきである。
5.おわりに
協同組合共済は,それぞれの組織で大きな特徴がある。主要共済団体の根 拠法をみても,事業の目的として, 国民経済の発展に寄与すること , 組
14)
http:
//www.iyc
2012japan.coop
/whatsnew
/news
130313 01.html
(IYC全 国協議会HP
より)。合員や会員のために奉仕すること , 営利を目的として事業をしてはならな いこと などが明記されている 。従って,単に保障事業を提供しているだ けの教育や人材育成だけでは足りず,これまで述べてきたとおり,共済や協 同組合,組織の社会的役割について,職員教育だけでなく,組合員や一般の 人々に対して継続的に訴えていく必要がある。
国連が定めた国際協同組合年という事実は永遠に残る。国際的にも認めら れた協同組合というビジネスモデルで共済事業を行う組織として,社会的役 割を果たしているということを,職員や組合員にもきちんと理解してもらう という視点が含まれることに,協同組合共済の教育の大きな特徴がある。
(筆者は一般社団法人日本共済協会勤務)
15) 前掲注1)