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破産法一〇四条における超過配当をめぐる諸問題 : 最決平成二九年九月一二日金判一五二七号八頁を契 機として

著者 石橋 英典

雑誌名 同志社法學

巻 69

号 8

ページ 3463‑3492

発行年 2018‑03‑31

権利 同志社法學會

URL http://doi.org/10.14988/pa.2019.0000000326

(2)

    破産法一〇四条における超過配当をめぐる諸問題同志社法学 六九巻八号四七三四六三

――最決平成二九年九月一二日金判一五二七号八頁を契機として――

           

1   は じ め に

  破産法一〇四条は、連帯債務や保証債務のように一人の債権者に対して複数の債務者が共同して重畳的に債務を負担する契約関係おいて、当該債務者(以下、「全部義務者」という

)の全員またはその一部が破産した際の手続参加について規律している。この規定によれば、債権者は破産手続開始時に有する債権の全額についてその権利を行使することができ、手続開始後に他の全部義務者が弁済をしたとしても、債権者の債権全額が消滅しない限りは、債権者は引き続き手続開始時の債権額をもって参加したままとなるとされている。この規定に従えば、債権者は、破産手続開始後に一部弁済を受けたにもかかわらず、手続開始時の債権額に基づき配当額が計算されることによって、配当次第では債権者

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    同志社法学 六九巻八号四八破産法一〇四条における超過配当をめぐる諸問題三四六四

が有する実体法上の債権額を超える金額を最終的に受け取る場合が生じうることとなる。この配当によって生じる実体法上の超過分をどのように扱うべきか。すなわち、実体法上の権利関係と破産手続における権利関係の間に齟齬が生じた場合に、これをどのように是正すべきかが問題となる。この問題については、旧破産法以来、学説において議論されてきた一方、裁判所の立場は明確でなかったものの、最決平成二九年九月一二日金判一五二七号八頁(以下、「平成二九年決定」という。)によってその立場が示されることとなった

)(

  そこで、本稿では、このように、破産法一〇四条の規律の結果、実体法上の超過分が生じることとなる場合の配当(以下、「超過配当」という)に関するこれまでの議論を整理しつつ、平成二九年決定によって示されることとなった最高裁の立場を分析するとともに、この問題と関連してなお解明しなければならない問題を指摘することを目的としたい。

2   超 過 配 当 の 処 遇 に 関 す る 学 説

⑴  手続開始時現存額主義と超過配当   超過配当の処遇に関する議論を概観する前提として、まずはその原因となる破産法一〇四条の規律について概観する。以下では次の【設例】を前提に論じることとしたい。

【設例】債権者Aが破産手続開始決定を受けた主債務者Bに対し、五〇〇万円の債権を有しており、連帯保証人Cは破産手続開始決定後、四〇〇万円の弁済をした。当該破産手続において、配当率は五〇%(配当額は二五〇万円)となった。

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    破産法一〇四条における超過配当をめぐる諸問題同志社法学 六九巻八号四九三四六五   破産法一〇四条は、まず、その第一項において、全部の履行をする義務を負う複数の者のうち、全員ないしその一部について破産手続開始決定があった場合、債権者は破産手続開始時において有する債権の全額について手続に参加することができると規定し、さらに、第二項によって、手続開始後に他の全部義務者から弁済がなされたとしても、債権全額が消滅しない限り、破産債権者は手続開始決定時に有する債権の全額についてその権利を行使することができると規定している。【設例】で言えば、AはBの破産手続において、その手続開始時に存在する五〇〇万円を破産債権として行使することができ、Cは手続開始後に四〇〇万円を弁済したとしても、Aの債権は五〇〇万円として引き続き権利行使ができることとなる。このように、債権者がそれぞれの全部義務者に対する破産手続開始時の債権全額について破産債権者としての権利を行使する機会を保障する制度を、講学上、手続開始時現存額主義(以下、「現存額主義」という)といい、その趣旨は、一般的に、複数の全部義務者を設けることにより、責任財産を集積して当該債権の目的である給付の実現をより確実にするという機能を破産手続において重視したものであるとされている

  この点に関し、制度設計としては、一部弁済をした全部義務者の権利を保護するため、債権者の権利を弁済額に応じて割合的に取得することも考えられる。しかし、その場合、弁済額に対応する部分について債権者は破産債権として権利行使することができず、手続開始時の届出額を基準とする場合と比べ、配当が減ることとなる。破産法は、この点に関し、自己の債権の可能性を高めるためにとった債権者の行為、また、全部義務者には残債務の履行義務が残っている点などを評価して、債権者との関係で全部義務者の立場を劣後させる現存額主義を採用したとされている

  さらに、全部義務者の手続参加につき、破産法一〇四条三項および四項により、債権者が破産手続開始時において有する債権の全額について破産手続に参加した場合、全部義務者は、手続開始後の段階においては、弁済などによって当該債権を全額消滅させない限り手続に参加することはできないこととなっている。【設例】で言えば、Aの債権が全額

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    同志社法学 六九巻八号五〇破産法一〇四条における超過配当をめぐる諸問題三四六六

消滅しない限り、Cは四〇〇万円弁済したとしても手続に参加することはできず、その結果、配当を受け取ることもできないこととなる。

  以上から、破産法一〇四条の規律に従えば、【設例】では、Cが手続に参加できない以上、Aが二五〇万円の配当を受け取ることとなる。その結果、Aの実体法上の債権は五〇〇万円であるにもかかわらず、Cによる弁済と併せて、最終的に六五〇万円を得ることとなり、一五〇万円分を実体法上超過して受け取ることとなるため、その処遇が問題となるのである。

⑵  超過配当分の処遇方法の概観   破産法一〇四条によって生じ得る超過配当をどのように処理するかについては、その方法として最終的な帰属先とその分配方法の観点から大きく分けて計四通り考えることができる。すなわち、【図】のように、最終的な帰属先としては、破産財団(他の債権者)と手続開始後に一部弁済をした全部義務者の二通りが考えられ、また、その分配方法としては、債権者に配当した後に不当利得返還請求によって返還を求めるという手続外での方法と破産管財人が超過分を債権者に配当せず、破産財団ないし全部義務者に直接配当するという手続内での方法の二通りを考えることができる。本稿では、最終的な帰属先を破産財団とした上で、手続外で処理する方法を①説、手続内で処理する方法を②説とし、最終的な帰属先を全部義務者とした上で、手続外で処理する方法を③説、手続内で処理する方法を④説ということとする。

  この問題に関する学説では、①説と②説の区別は意識的になされておらず、大きく分けて三

分配方法

手続外(不当利得) 手続内(破産管財人)

最終的な 帰属先

財団 ①説 ②説

全部義務者 ③説 ④説

【図】

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    破産法一〇四条における超過配当をめぐる諸問題同志社法学 六九巻八号五一三四六七 つの学説があるとされ、その内容としては、破産財団に帰属すべきとする説

と債権者に配当した上で、手続外で全部義務者との不当利得返還請求によって調整すべきとする説

、一部弁済をした全部義務者に直接配当すべきとする説

に分かれている。本稿では、最終的な帰属先とその分配方法という観点からこれまでの学説を整理しつつ、その論拠や問題点などについて概観していくこととしたい。

⑶  超過分は最終的に破産財団に帰属すべきとする説(①②説)

ⅰ  根  拠   まず、超過分は最終的に破産財団に帰属すべきとする説(①②説)は、現存額主義を破産手続においてもっぱら債権者を保護するためのものであり、全部義務者を保護するものではないと解している

。すなわち、破産手続における債権者の地位は、「人的担保」ある債権の効力として認められる特別の地位であり、それゆえに、現存額を基準として配当を受けるのは債権者のみであると捉えている

。このように解することで、債権者の債権が実体法上満足するに至った場合、現存額主義はその役割を終え、残りの超過分は破産手続との関係で不当利得となることから、破産財団に帰属することとなるとしている。

  また、複数の全部義務者が破産し、債権者がそれぞれの手続に債権全額をもって参加したことで各手続による総配当額が実体法上の債権額を超える場合、配当が最後になされた破産手続との関係で不当利得となることが通説であることから ((

、ここでの問題も同様に考えるべきとの指摘もなされている ((

  なお、超過分が破産財団に帰属した後に、他の債権者の配当原資となる際、一部弁済をした全部義務者も当該配当に加わることができるか否かという点が問題となりうる。①②説を支持する見解は、全部義務者は配当に加わることがで

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    同志社法学 六九巻八号五二破産法一〇四条における超過配当をめぐる諸問題三四六八

きないということを前提とするものが多いようである。その理由として、一部弁済と配当との合計が債権者の債権全額に満たない場合、破産法一〇四条三項ただし書により、結果的に全部義務者は全債権者に後れてのみ弁済を受けることとなることから、全部義務者の求償権はいわば劣後的破産債権のように扱われることになるのに対し、期せずして債権者の債権全額が満足した場合に全部義務者も配当に加わることができるとすれば、全額満足しなかった場合に比べ有利な扱いとなり、不当であるということが指摘されている ((

。また、全部義務者は、債権者の債権について一部を弁済しただけで、残債権の履行を果たしていないことから、このような不利益を甘受すべきであるとの指摘もなされている ((

。他方、他の債権者と並んで一部弁済をした全部義務者も超過分の配当に加わることができると解する場合には、④説において後述するように、そもそも全部義務者が配当手続に加わることができるのか否かが問題となろう ((

ⅱ  手  続   超過分は最終的に破産財団に帰属すべきとする説においては、破産財団に帰属させるための手続について意識的に論じられているものは少ないようである。方法としては、前述のように、超過分を含めて債権者に配当した後に、破産管財人が不当利得返還請求をするという方法(①説)と、超過分については破産管財人がそもそも債権者に配当せず破産財団に留めておくという方法(②説)が考えられる。前者の不当利得返還請求によるべきとする見解は、破産法一九四条二項によって破産管財人は届出額に従って配当せざるをえないことをその根拠としている ((

。他方、後者の破産管財人の超過分の留保によるべきとする見解は、破産管財人に、配当を一括で行う義務があるか明らかでなく、仮にあるとしても、債権者は実体法上の債権満額を得る以上、当該債権者に損害が発生したとは言えない点を指摘している ((

。ただし、後者の見解に立ったとしても、破産管財人が全部義務者による一部弁済の事実を把握していない場合には、前者のよう

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    破産法一〇四条における超過配当をめぐる諸問題同志社法学 六九巻八号五三三四六九 に、配当を受けた債権者に対し不当利得返還請求をすることとなろう。

ⅲ  問題点   ①②説に対しては、まず、全部義務者の地位が債権者だけでなく他の債権者との関係でも劣後することになる点について指摘されている。すなわち、超過分は、破産手続開始後に一部弁済をした全部義務者の出捐によって生じたものと見ることができるが、①②説によった場合、当該超過分は、破産財団に帰属した後、当該全部義務者の参加の可否にかかわらず他の債権者にも配当されることとなる。しかし、そもそも他の債権者は、手続開始時に届け出られた額をもとに自らの配当を期待すべきであって、手続開始後に生じた部分は期待し得ないはずである。それにもかかわらず、超過分からの配当を受けることができるとすれば、これは他の債権者に対して、予期せぬ利益を認めることとなってしまい、その範囲において全部義務者の権利は後退していることとなる。このことから、①②説が考える人的担保ある債権を保護するための現存額主義の帰結として、一部弁済をした全部義務者は他の債権者に対しても劣後的な地位となることは、果たして妥当な結論と言えるのかについて疑問が呈されている ((

  また、前述のように、一部弁済をした全部義務者には残債権の履行義務が残っていることから不利益を甘受すべきとの見解に対しては、残債務の履行義務は債権者に対して負うものであって、他の債権者に対して負うものではない以上、他の債権者との関係についてまで劣後することを正当化できるものではないとの指摘もなされている ((

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    同志社法学 六九巻八号五四破産法一〇四条における超過配当をめぐる諸問題三四七〇

⑷  超過分は最終的に手続開始後に一部弁済をした全部義務者に帰属すべきとする説(③④説)

ⅰ  根  拠   超過分は最終的に手続開始後に一部弁済をした全部義務者に帰属すべきとする③④説は、現存額主義を、破産手続における債権者と全部義務者の優先劣後関係を現したものと捉えている。民法上の規律においては、全部義務者による弁済などによって弁済による代位が生じ、求償権の範囲で債権者の債権(原債権)は全部義務者にその範囲で移転することになる(民法五〇〇条、五〇一条)。また、一部弁済をした全部義務者は、弁済した価額に応じて債権者とともにその権利を行使することができ(民法五〇二条)、それによって得られる金銭からの弁済や配当については債権者が優先することとなっている(債権者優先主義) ((

。破産手続においては、破産法一〇四条の現存額主義により、一部弁済をした全部義務者の権利行使は制限されることとなるが、その取扱いの実質は、弁済・配当において債権者優先主義を採るのと異ならないものとして捉えるべきであるとしている ((

。このように捉えることで、超過分については、一部弁済をした全部義務者に帰属すべきことが導かれるとしているのである。

  また、破産手続開始時の届出債権額が配当の基準となる以上、他の債権者や破産財団に損失があるとはいえず、超過配当の処遇に関する問題は債権者と一部弁済をした全部義務者との間の内部問題であるとの指摘もなされている ((

ⅱ  手  続   超過分は最終的に一部弁済をした全部義務者に帰属するとして、その帰属させる手続に関しては、債権者に配当した後に、当該破産手続外において不当利得返還請求によって処理すべきとする③説と、超過分を破産管財人が留保した上で、当該破産手続内で一部弁済をした全部義務者に直接配当すべきとする④説に分かれている。

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    破産法一〇四条における超過配当をめぐる諸問題同志社法学 六九巻八号五五三四七一   ア  ③説:債権者に配当した後に不当利得返還請求によって処理すべきとする説   まず、③説は、その理由として、手続の簡明性や経済性を挙げている。すなわち、破産手続内で処理するとすれば、一部弁済をした全部義務者が複数存在する場合や、弁済の有無やその額について争いがあった場合、それらに関する紛争が破産手続に持ち込まれることによって手続が遅延するおそれがある。手続外での不当利得返還請求にその解決を委ねることで、それらによって生じ得る遅延を回避することができ、破産管財人の負担軽減にもつながることがその理由の一つとして挙げられている ((

。また、実体関係に従って配当表を変更する手続上の根拠は存在せず、破産管財人としては債権者の届出債権を前提とした配当表を作成せざるをえないことも指摘されている ((

  イ  ④説:手続内で一部弁済をした全部義務者に直接配当すべきとする説   他方、④説については、まず、その前提として、全部義務者が配当を受けるために破産手続に参加することの可否が問題となる。

  破産法一〇四条三項ただし書によれば、債権者が債権全額について破産手続に参加する限り、全部義務者は手続に参加することができないこととなっている。これを素直に解せば、債権者が債権届出をする限り、全部義務者が債権届出をしても不適法却下されることとなるはずである。他方、破産法一〇四条四項では、手続開始後に全部義務者が債権者の債権全額を弁済した場合、「その求償権の範囲内において、債権者が有した権利を破産債権者として行使することができる」とされており、破産手続に参加することができるとしている。この点に関しては、全額弁済をした全部義務者は新たに届出をする必要はなく、弁済した時点で届出名義を債権者から弁済をした全部義務者に変更することができるとし、また、その際、全額弁済をした全部義務者は、代位弁済の事実を証する資料が添付されていれば求償権者単独でもできると解されている(民法五〇〇条) ((

。では、【設例】のように全部義務者による手続開始後の一部弁済と配当によ

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    同志社法学 六九巻八号五六破産法一〇四条における超過配当をめぐる諸問題三四七二

って債権者の債権全額が満足に至る場合はどうか。届出名義の変更について債権者の同意がある場合はともかく、債権者が同意しない場合、全部義務者の単独での名義変更は、全額弁済ではなく一部弁済であることから、債権者の債権全額の満足を証する資料がない限りはできないこととなろう。このことからも、④説では、一部弁済をした全部義務者が破産手続に参加できる、すなわち、債権者が破産手続に参加している場合であっても債権の届出が可能であることを説明しなければならないこととなる。

  この点に関し、まず、破産法一〇四条三項の規律は、全部義務者が権利行使できないことを定めているのであって、債権の届出に関しては、これをできるとする見解がある ((

。この場合、破産管財人は全額について異議を述べる認否をすることになろう。その他に、債権者が破産債権の届出を取り下げ、又はその債権の全額につき満足を受けたことを条件とする、いわゆる「予備的届出」ができるとする見解がある ((

。この見解は、予備的届出を認めたとしても、配当に加わることさえ否定できれば、債権者と全部義務者による、実質的に同一の権利についての二重行使を防ぐことができ、手続の円滑・迅速な進行を特段妨げる事情とならないとしている ((

  以上のようにして一部弁済をした全部義務者も債権の届出ができることを前提とすることで、超過分は全部義務者に直接配当すべきであるとしているのが④説である。

ⅲ  問題点   ③説に対しては、まず、債権者の破産債権について破産手続開始決定後に発生する利息や遅延損害金の処遇についての問題が指摘されている。すなわち、破産手続開始決定後に債権者が有する債権について発生する利息や遅延損害金は、破産法上、一般破産債権に後れて配当を受けることとなる劣後的破産債権として扱われている(破産法九七条一号二号、

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    破産法一〇四条における超過配当をめぐる諸問題同志社法学 六九巻八号五七三四七三 九九条一項一号)。他方、全部義務者が有する債権(求償権)は、債権者が手続に参加しない限りは一般破産債権として扱われることとなる(破産法一〇四条三項)。③説によった場合、超過分は債権者にまずは配当されることとなり、一部弁済をした全部義務者は債権者に対して超過分について不当利得返還請求をすることとなるが、その際、債権者が有する破産手続開始決定後に発生した利息や遅延損害金に当たる部分は、不当利得とならない、あるいは、残債権の履行請求権と相殺されることで、結果的に、債権者の劣後的破産債権たる利息や遅延損害金が、一部弁済をした全部義務者の一般破産債権たる求償権よりも優先して回収されることとなると指摘されている ((

  ④説に対しては、債権者がその債権の全額をもって手続参加しているにもかかわらず、全部義務者が手続参加(債権届出)できることは、破産法一〇四条三項の文言に反することが指摘されている ((

。また、一部弁済をした全部義務者に直接配当するためには、その前提として、破産管財人が当該事実を覚知している必要がある。しかし、破産管財人が常にこれを覚知しているとは限らず、また、覚知していなかった場合、超過分は債権者に配当された後に、破産管財人による不当利得返還請求によって一部弁済をした全部義務者へ配当をし直すこととなるのであれば、破産管財人の負担という観点から相当でないとの指摘がなされている ((

。同様に、一部弁済をした全部義務者が、配当との合算によって債権者の債権全額が消滅することを覚知しない場合もあり得るが、この場合にも、破産管財人が超過する事実を覚知していたとすれば超過分を破産財団に組み込むことになるのか、債権者に配当することになるのかといったように、手続的な処理が不明確である点が指摘されている ((

  さらに、④説に対しては、債権者の債権全額が満足する段階がどの時点か、すなわち、中間配当によって満足に至るのか、それとも最後配当によって満足に至るのかも問題となる。すなわち、中間配当の場合であればともかく、最後配当によって債権者の債権全額が満足に至る場合、全部義務者に超過分を配当させるような配当表を作成することは、そ

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    同志社法学 六九巻八号五八破産法一〇四条における超過配当をめぐる諸問題三四七四

の時点では不可能であることが指摘されている ((

⑸  小  括   以上、超過分の処遇をめぐる学説について概観してきた。各学説の対立点として、まず、超過分は最終的に破産財団に帰属することになるのか、それとも一部弁済をした全部義務者個人に帰属することとなるのかという点で分かれている(【図】における上段と下段)。これは現存額主義をどのように捉えるかにかかわっており、前者は現存額主義を人的担保ある債権を有する債権者のみを保護するものであると解しているのに対し、後者は実体法における債権者と全部義務者(代位弁済者)の優先劣後関係を反映させたものと解している。次に、超過分を帰属させるための手続として、これを手続外での不当利得返還請求によるとするのか、手続内での破産管財人の調整によるとするのかで分かれている(【図】の右列と左列)。この点に関しては、最終的に財団に帰属すべきとする説はあまり意識されていない一方で、最終的に一部弁済をした全部義務者に配当すべきとする説においては、一部弁済をした全部義務者がそもそも破産手続に参加することができるのか否かという点が問題となっている。

  このように、学説では見解が分かれているものの、この点に関する最高裁の立場は明らかではなかった。しかし、前述のように、平成二九年決定によって、最高裁の立場が一定程度示されることとなり、また、この事件では、原々審・原審・最高裁とそれぞれ異なる立場を採用している。そこで、以下では、この事件を取り扱いつつ、ここでの問題をさらに検討することとしたい。

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    破産法一〇四条における超過配当をめぐる諸問題同志社法学 六九巻八号五九三四七五

3   最 決 平 成 二 九 年 九 月 一 二 日 金 判 一 五 二 七 号 八 頁

⑴  事実の概要   平成二九年決定における事実の概要は以下の通りである。まず、平成二三年九月二一日、Z社は破産開始決定を受け、Yが破産管財人に選任された。Z社は甲信用金庫に二口の借入債務を負担し、X信用金庫が当該各債務を保証していた。さらに、X信用金庫の保証債務についてAが物上保証人となり、A所有の不動産に抵当権が設定されていた。Zの破産手続において甲信用金庫が二口の債権全額について届け出ていたが、X信用金庫も将来の求償権として届け出ており、不適法却下されてはいなかったようである。平成二四年一月五日、XはZの保証人として、その元本全額および遅延損害金の一部(五六五一万一二三三円)を代位弁済し、同月一二日にXが届け出ていた破産債権を「将来の求償権」から「求償権」に変更し、甲信用金庫は一口の債権の手続開始前の損害金以外の届出を取り下げた。平成二四年一〇月二六日、Aは不動産の売却代金をもってXに対しその求償債権の一部(二五九三万九〇九二円)を弁済し、平成二七年八月一九日、予備的届出として当該一部弁済による求償権の届出をした。このAの求償権については、Xの破産債権の残額が配当によって全額消滅することによる、破産法一〇四条四項に基づく求償権の範囲内での原債権の代位行使という性質において認める旨の認否がYによってなされている。なお、BのXに対する弁済は、Xが有する二口の求償権についてそれぞれ全額に満たない形で充当されている(弁済の結果、Xの実体法上の残額は三〇五七万二一四一円)。Zの破産手続における配当率は八〇・二三六%となり、Xの届出債権額をもとにした配当額(四五一二万四八〇八円)につき、Yは、実体法上の残額の限度でXに配当し、超過分(一四五五万二六六七円)はBに配当する旨の配当表を作成した。その際、配当表には、Xの備考欄に残債権合計を超えて配当はできない旨が記載され、また、Aの備考欄には「……債権

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    同志社法学 六九巻八号六〇破産法一〇四条における超過配当をめぐる諸問題三四七六

(残債権)が配当によって全額消滅することによる、法一〇四条四項に基づく原債権の代位行使に対する配当として」と記載されている。このように破産管財人Yは④説の方法によって配当を行ったわけであるが、これに対しXは、主位的には③説、予備的に②説によって配当をすべきであるとして、配当表のXとBに対する配当額の変更を求めて異議申立をした。

⑵  原々審(大阪地堺支部決平成二八年六月一六日金判一五二七号二〇頁)   まず、原々審は、現存額主義により、求償権を有しているにもかかわらず全部義務者の権利行使が制限されていることから、「破産法一〇四条の解釈に当たっては、過度にその権利を制約するような拡張的な解釈は許されない」として、全部義務者の権利を保護する立場を明らかにしている。

  その上で、最判平成二二年三月一六日民集六四巻二号五二三頁(以下、「平成二二年判決」とする)が採用する口単位説を前提とし、破産法上、手続開始後の利息や遅延損害金は劣後的破産債権として、一般破産債権と区別されることから、破産法一〇四条二項および四項にある「その債権の全額が消滅した場合」に、債権者の劣後的破産債権は含まれず、一般破産債権が弁済された場合には、一部弁済をした全部義務者が配当に加わることができるとした。これは、破産法一〇四条は、あくまで破産手続への参加に関する規定であり、破産手続における債権者平等に反してまで、一般破産債権者たる全部義務者の権利を制約し、債権者を保護することを予定しているということはできないためであるとしている。

  また、超過分の配当に関しては、超過配当の事実が破産管財人に明らかな場合にこれを全く考慮しないのは相当と言えない点、③説は、全部義務者や他の一般債権者との関係においても「一般部分に対する超過配当額が事実上劣後部分

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    破産法一〇四条における超過配当をめぐる諸問題同志社法学 六九巻八号六一三四七七 に充当される結果、実体法上の不当利得とはならないと解さざるをえず、……破産手続上の優劣関係や債権者平等に反し不当である」点、①②説は、全部義務者の権利を制限して他の債権者が利益を得るに等しく債権者平等に反する点から、破産法一〇四条四項の適用又は類推適用によって④説の方法によるべきとした。

  このように、原々審は、その結論として④説を支持している。一部弁済をした全部義務者の有する求償権は、本来は一般破産債権であることを重視している点、また、破産法一〇四条はあくまでも手続参加に関する規定であって、債権者の手続開始後に発生した遅延損害金や利息との関係、あるいは他の債権者との関係についても、一部弁済をした全部義務者を一般破産債権者として検討している点に特徴があるといえよう。

⑶  原審(大阪高決平成二九年一月六日金判一五二七号一六頁)   これに対し、原審はその結論として②説を支持している。   まず、原々審でも問題となった、破産法一〇四条二項および四項にいう「債権の全額が消滅した場合」について、手続開始後の遅延損害金や利息も破産債権である以上、これに含まれるとした上で、一部弁済をした全部義務者は、「債権者が届出破産債権の全額の満足を受けない限り、破産手続において、債権者が有した権利について、破産債権者(求償権者)として権利を行使することができない」とした。

  そして、超過分の配当に関しては、「破産債権者の一般破産債権に対して行われるべきものであるから、一部の配当によりX(債権者)の実体法上の一般破産債権残額が消滅する以上、Y(破産管財人)は」超過分を「一般破産債権に対するものとしてX(債権者)に配当すべきではないし、X(債権者)もこれを受領することができない」として、他の一般破産債権者の配当原資とすべきとした。ただし、破産管財人が超過分を債権者に配当せず、破産財団に帰属させ

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    同志社法学 六九巻八号六二破産法一〇四条における超過配当をめぐる諸問題三四七八

て、他の債権者の配当原資とすることができる根拠については明示されていない。

⑷  最高裁(平成二九年決定)   最高裁は、原々審、原審とも異なる③説をその結論として採用している。   まず、破産法一〇四条一項および二項の現存額主義について、「複数の全部義務者を設けることが責任財産を集積して当該債権の目的である給付の実現をより確実にするという機能を有することに鑑みて、配当額の計算の基礎となる債権額と実体法上の債権額とのかい離を認めるもの」として、平成二二年判決とほぼ同様の見解を示した上で、「その結果として、債権者が実体法上の債権額を超過する額の配当を受けるという事態が生じ得ることを許容しているものと解される」とした。ただし、続けて括弧書きにおいて、「なお、そのような配当を受けた債権者が、債権の一部を弁済した求償権者に対し、不当利得として超過部分相当額を返還すべき義務を負うことは別論である」として、超過分に関しては、手続外での債権者と一部弁済をした全部義務者による不当利得返還請求による処理に委ねられることを示しており、このことから③説を採用したと評価することができる。

  さらに、「破産法一〇四条三項ただし書によれば、債権者が破産手続開始の時において有する債権について破産手続に参加したときは、求償権者は当該破産手続に参加することができないのであるから、債権の一部を弁済した求償権者が、当該債権について超過部分が生ずる場合に配当の手続に参加する趣旨で予備的にその求償権を破産債権として届け出ることはできないものと解される。また、破産法一〇四条四項によれば、債権者が配当を受けて初めて債権の全額が消滅する場合、求償権者は、当該配当の段階においては、債権者が有した権利を破産債権者として行使することができないものと解される」として、④説を支持する見解が主張する予備的届出は認められないこと、全部義務者による一部

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    破産法一〇四条における超過配当をめぐる諸問題同志社法学 六九巻八号六三三四七九 弁済と配当の合算によって債権者の債権全額が消滅する場合、当該配当に全部義務者は配当に参加できないことが示されることとなった。

  また、木内道祥裁判官の補足意見が付されており、そこでは、ここでの手続的な問題についてより詳細に述べられている。

  まず、債権者が超過分を受け取る理由として、確定した破産債権は、破産債権者表の確定債権額として記載され、確定判決と同一の効力を持ち、破産債権者表の記載を変更する手続が無い以上、請求異議の訴えなどによる以外に変更する道はないこと、また、破産管財人の権限として、配当額について超過分を減額し得る法的根拠は存在しないことが挙げられている。

  さらに、一部弁済をした全部義務者の手続参加について、配当除斥期間内に債権者の破産債権が配当によって全額消滅するという停止条件が成就する必要があるが、それまでに配当はされないこと、また、残債権を全額消滅するに足りる配当請求権を債権者が取得することを停止条件としても、配当表確定後の配当通知によって取得するため、配当除斥期間内での条件成就はあり得ないことから、請求異議訴訟などによって債権者の手続参加額が変更されない限り、予備的届出によっては参加することができないことが説明されている。

4   学 説 ・ 判 例 の 検 討

⑴  平成二九年決定の意義   平成二九年決定により、超過分の配当の問題に関する最高裁の立場としては、破産法一〇四条は超過分が生じること

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    同志社法学 六九巻八号六四破産法一〇四条における超過配当をめぐる諸問題三四八〇

は織り込み済みであること、また、現存額主義は①②説が主張するように、債権者のみを保護する制度ではなく、債権者と一部弁済をした全部義務者との関係で捉え、超過分はその内部調整の問題であると捉えていることがはじめて明らかとなった。さらに、超過分の調整方法としては手続外における債権者と一部弁済をした全部義務者との間の不当利得返還請求によって処理されるべきことを示唆し、結論として③説の立場に立っていると捉えることができる。

  さらに、破産管財人の義務について、破産管財人は超過分が生じることを覚知していたとしても、破産債権の届出額に従って配当すればその責任は果たしたこととなることが明確化されたことから、この点に関する実務的な意義は大きいといえよう ((

  ただし、平成二九年決定の射程については慎重に検討する必要があると思われる。というのも、後に改めて述べるが、原々審が指摘するように、債権者への超過配当を認め、手続外での不当利得返還請求による処理に委ねた場合、破産手続開始後の利息や遅延損害金との関係において、一部弁済をした全部義務者の権利が④説のように破産手続内で処理される場合と比べて害されることとなるおそれがあるためである。また、破産法一〇四条が、債権者が超過配当を受けるという事態が生じ得ることを許容しているとしても、債権者の不当利得を積極的に認めていると解することは適当とはいえない。このように考えると、平成二九年決定によっても、④説のように一部弁済をした全部義務者を手続に参加させ、直接配当する可能性が否定されたとまでは言えず、なお、④説を採用する余地は残されているということができよう。

  このように、平成二九年決定の意義は大きいものの、破産法一〇四条の現存額主義によって生じる超過配当やそれに関連する問題については、なお検討しなければならない点が多く残されている。そこで、以下では、それらについて検討していくこととしたい。

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    破産法一〇四条における超過配当をめぐる諸問題同志社法学 六九巻八号六五三四八一 ⑵  全部義務者による手続参加   まず、全部義務者による破産手続への参加についてである。平成二九年決定により、④説において主張されていた予備的届出については認められないことが明らかとなった。しかし、債権届出期間に債権者がその債権全額について届け出ている場合、それと並んで全部義務者が将来の求償権としてその債権を届け出ることができるかどうかについては、なお明らかではない。

  破産法一〇四条三項によれば、債権者がその債権全額について手続に参加する限り、全部義務者は当該手続に参加することができない旨が規定されている。この規定により、債権者がその債権全額について債権届出をする限り、全部義務者による将来の求償権についての債権届出は不適法されることとなるのか否かが問題となるが、④説では、単純に参加できるとする見解と予備的届出とすることで認められるとする見解が主張されていたことについては前述の通りである。実務においても、全部義務者による届出を不適法却下することなく、全額異議の認否をすることで対応していることが紹介されており ((

、平成二九年決定の事案においても、原審および原々審の認定した事実によれば、当初は甲信用金庫がその債権全額について届出をしていたにもかかわらず、Xは将来の求償権としての債権届出ができていたようである。この点に関しては、破産手続開始決定前に全部義務者が一部弁済をしていた場合、弁済額に相当する届出は適法なものであることから、全部義務者による届出がなされた際には、手続開始前の弁済の存否についての実体的な判断が必要となる。そうであれば、債権者がその債権全額について債権届出をしているにもかかわらず、全部義務者が債権届出をした場合については、これを一律に不適法却下することはできないといえよう ((

  また、平成二二年判決における田原裁判官の補足意見でも、債権者がその債権全額について債権届出をしている場合、保証人の将来の求償権についての債権届出については、「破産法一〇四条三項により、その権利を行使することができ

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    同志社法学 六九巻八号六六破産法一〇四条における超過配当をめぐる諸問題三四八二

ないため、債権調査において全額につき異議が述べられることになる」としている。

  このことから、平成二九年決定によって明らかにされたこととしては、あくまでも「予備的届出」は認められないということであり、債権者がその債権全額について債権届出をしている場合であっても、全部義務者は将来の求償権として債権届出をすることができると解する余地は、なお残されているといえよう。そうであれば、これを前提として、全部義務者は手続開始時の将来の求償権としてその債権を届け出た後、破産管財人がこれについて全額異議の認否をすることで、手続開始後に一部弁済をしたことによって超過配当となる場合に、当該弁済をした全部義務者が手続に加わることも可能となる。ただし、一部弁済をした全部義務者に配当するためには、全額異議の認否を認める旨の認否に変更するのと併せて、債権者が弁済された部分の届出を取り下げる必要がある。債権者が取下げに応じず、なお配当を求める場合には、破産管財人が請求異議の訴えを提起することとなろう ((

  なお、平成二九年決定での事案のように、債権届出期間に全部義務者が将来の求償権として届出をせず、債権調査を経て債権者表が確定した後は、木内裁判官の補足意見に示されているように、全部義務者が請求異議の訴えなどによってこれを変更しない限り、債権者表確定後の債権届出によって当該手続に参加することはできないこととなろう ((

⑶  債権者の債権全額の消滅の時期と名義の変更   平成二九年決定では、債権者の債権全額が消滅する時期が最後配当の時点であった。この場合について最高裁は、「求償権者は、当該配当の段階においては、債権者が有した権利を破産債権者として行使することができないものと解される」と判示している。

  では、配当手続がまだ続く、中間配当の場合はどうか。中間配当と全部義務者による一部弁済の合算により債権者の

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    破産法一〇四条における超過配当をめぐる諸問題同志社法学 六九巻八号六七三四八三 債権全額が消滅する場合、その次の配当からは一部弁済をした全部義務者が配当を受ける余地が残されていると考えることができる。さらに言えば、超過部分を債権者に配当することなく、一部弁済した全部義務者に配当するために、債権者の債権全額が消滅する割合で中間配当を行い、その後、債権者から一部弁済をした全部義務者へ名義の変更をすることで、これが可能となりうる ((

。【設例】で言えば、まず、配当率二〇%の中間配当を行い、Aに一〇〇万円が配当されることで、Aは実体法上の債権全額が消滅することになる。その後、AからCへの名義の変更を行い、AではなくCの債権五〇〇万円として配当率三〇%の最後配当を行うことで、Cに一五〇万円が直接配当されることとなる。手続開始後に全部義務者が全額弁済した場合には、当該全部義務者は、弁済の事実を証する資料を付することで単独で名義の変更ができると解されていることから ((

、ここでも、一部弁済と中間配当によって債権者の実体法上の債権全額が消滅したことを証する資料を付することで、全部義務者単独による名義の変更が可能となろう。

  ただし、中間配当は、大規事件で長期化するような事案の場合に行われる例外的な配当との指摘があるように ((

、破産財団が大規模な場合に行われるものであり、破産債権者の数や意向、配当実施に要する費用などを総合的に判断してなされるものである。そのため、もっぱら一部弁済をした全部義務者を手続に参加させるために中間配当を行うことがどこまで正当化できるのか問題となろう。

⑷  手続開始後の利息および遅延損害金   平成二九年決定は、超過分が生じるとしても債権者にそのまま配当し、その後、手続外において債権者と一部弁済をした全部義務者の間の不当利得返還請求によって調整されることを示した。この点に関しては、前述の③説に対する指摘にあったように、劣後的破産債権である手続開始後に発生した利息および遅延損害金の処遇が問題となる。

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    同志社法学 六九巻八号六八破産法一〇四条における超過配当をめぐる諸問題三四八四

  平成二九年決定の原々審もこの点に着目し、債権者が超過分を含めて配当を受け取った場合、劣後的破産債権たる手続開始後の利息や遅延損害金は、一部弁済をした全部義務者との関係だけでなく、他の一般破産債権を有する債権者との関係においても、「実体法上不当利得とならないと解さざるをえず、……破産手続上の優劣関係や債権者平等に反し不当である」と指摘していた。

  この点、④説に立ち、手続内において一部弁済をした全部義務者が直接配当を受けることができるとすれば、破産債権の優劣関係に基づいた配当がなされることで超過分が債権者の劣後的破産債権に充当されることを回避することができる。しかし、破産管財人が超過配当となることに気付かずに配当することもありうることから、④説に立ったとしても、なお、ここでの不当利得返還請求に関する問題が生じうることとなる。

  そこで、改めて、破産法九九条によって手続開始後の利息および遅延損害金が劣後的破産債権とされることについて検討しなければならない。まず、開始後利息については、元本債権が手続開始前の原因に基づく以上、本来破産債権ではあるが、無利息債権との均衡などから劣後的破産債権となるとする見解 ((

と、利息が元本使用の対価としての性質を持つことから、本来破産債権になりえず、免責の対象とする必要性から破産債権となるとする見解がある ((

。前者の見解に立てば、一部弁済をした全部義務者との関係で不当利得は成立せず、後者の見解であれば、不当利得が成立することとなる。開始後損害金についても、本来的に破産債権であるのか否かについて、開始後利息と同様の議論がなされていることから、不当利得の成否についても同様のことが当てはまる ((

  また、この問題は、平成二九年決定の原審・原々審でも争われたように、破産法一〇四条一項や二項、四項における債権者の「債権の全額」に開始後利息および遅延損害金が含まれるのか否かという問題とも関連する。平成二九年決定の原審は、開始後利息および遅延損害金も破産債権である以上、「債権の全額」に含まれるとし、これを超える分が、

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    破産法一〇四条における超過配当をめぐる諸問題同志社法学 六九巻八号六九三四八五 一部弁済をした全部義務者との関係において超過分となるとした。開始後利息と遅延損害金が破産債権となりうるのか否かについての前述の見解の対立からも、原審の構成も理論的には可能となる。しかし、その結果として、破産法一〇四条によって、債権者の劣後的破産債権が、本来であれば一般破産債権たる一部弁済をした全部義務者の求償権に優先し、その範囲で破産法上の一般原則たる破産債権の優劣関係を歪めることとなってしまう。平成二九年決定が示すように、複数の全部義務者を設けることが責任財産を集積して当該債権の目的である給付の実現をより確実にするという機能を有することを鑑みて、配当額の計算の基礎となる債権額と実体法上の額のかい離を認める結果として、債権者が超過配当を受けることを許容しているものと解したとしても、劣後的破産債権の回収までも許容していると解することは、債権者の保護として行き過ぎと言わざるを得ないであろう。

  ところで、平成二二年判決によれば、破産法一〇四条一項および二項は、「飽くまで弁済等に係る当該破産債権について、破産債権額と実体法上の債権額とのかい離を認めるものであって、同項にいう『その債権の全額』も、特に『破産債権者の有する総債権』などと規定されていない」ことから、債権者が複数の債権を有している場合、複数債権全体を単位とするのではなく、それぞれの債権を単位とすべきとした。原々審も指摘するように、債権者の有する破産債権のうち、破産手続開始までに有していた一般破産債権と手続開始後に生じた劣後的破産債権は明確に区別される以上、破産法一〇四条一項、二項および四項にいう「その債権の全額」に後者は含まれないと解することができ、前述の通り、破産法上の破産債権の優先劣後に関する原則からも含まれないと解すべきであるといえよう。

  以上のことから、手続開始後の利息および遅延損害金が、そもそも破産債権かどうかについて争いはあるが、破産法一〇四条の現存額主義の結果生じた超過分が債権者に配当されたとしても、同条が劣後的破産債権についても債権者を保護していると解するべきでないことから、劣後的破産債権に当たる部分については不当利得となるということができ

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    同志社法学 六九巻八号七〇破産法一〇四条における超過配当をめぐる諸問題三四八六

よう。

⑸  物上保証   平成二九年決定において、手続開始後に一部弁済をしたAは物上保証人であった。全部義務者が一部弁済をした場合、残債務についてなお債務を負っているのに対し、物上保証人は、担保目的物について担保権が実行された後には残額の負担を負わないことから、物上保証人も全部義務者と同様に現存額主義が働くのか否かについては、旧破産法下において大きな問題となっていた ((

。この点に関し、最高裁は、平成一四年九月二四日民集五六巻七号一五二四頁(以下、「平成一四年判決」とする)により、「債務者が破産宣告を受けた場合において、債権の全額を破産債権として届け出た債権者は、破産宣告後に物上保証人から届出債権の弁済を得ても、届出債権全部の満足を得ない限り、なお届出債権の全額について破産債権者としての権利を行使することができるものと解するのが相当である」として、物上保証人にも現存額主義が働くことを明示し、現行破産法も一〇四条五項はこの判例の考え方を立法化したものであるとされている ((

  ところで、物上保証ではなく、債務者の債務の一部のみを保証する一部保証の場合には、保証債務の限度で破産法一〇四条および一〇五条が準用され、現存額主義が働くとされている ((

。この場合、手続開始後に一部保証人がその保証債務を全て弁済すると、現存額主義は働かないこととなり、その範囲で債権者の債権額は減額し、当該保証人は債権者に代位してその権利を行使することができることとなる。

  一部保証と物上保証では、債務者の債務の一部について保証しているという点から、その法的地位は類似したものと捉えることもでき、そうであれば、物上保証の場合についても、現存額主義が働く範囲は、その物的責任を負う範囲に限られ、破産手続開始後に当該責任を果たした場合には、当該物上保証人はその範囲で債権者に代位して権利行使する

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    破産法一〇四条における超過配当をめぐる諸問題同志社法学 六九巻八号七一三四八七 ことができるとの指摘もなされている ((

  このように、物上保証の場合の問題については立法的な解決が図られたとされているが、その是非についてはなお問題が残されており検討の必要性がある ((

5   お わ り に

  以上、超過配当をめぐる問題について、平成二九年決定までの学説を概観しつつ、これをもとに判例を検討し、なお検討しなければならない問題について簡単ではあるが、私見を含め考察してきた。

  破産法一〇四条の歴史的沿革は、破産法一〇四条は旧破産法二四条および二六条を引き継いだものであるが、現存額主義に関して規定したものとされる旧破産法二四条は、当時のドイツ破産法(Konkursordnung )六八条を参考にしたものとされ、他方、将来の求償権者の権利について規定する旧破産法二六条は、フランス法の理論を参考にしたものとされている ((

。前者の旧破産法二四条の系譜とされるドイツ破産法六八条は、現行ドイツ倒産法(Insolvenzordnung )四三条、四四条に引き継がれ、わが国の破産法一〇四条と同様の内容が規定されており、債権者は、全部の履行をする義務を負う者が数人いる場合、それぞれの全部義務者の破産手続において手続開始時の債権全額について請求することができ(二重考慮の原則:Grundsatz der Doppelberücksichtigung)、全部義務者は債権者の債権全額が消滅するまで権利行使することができない(二重届出の禁止:Verbot der Doppelanmeldung)とされている(InsO四三条、四四条)。それゆえ、手続開始後に全部義務者が弁済した場合、超過配当の問題が起こることも同様であるが、この点に関しドイツでは、超過分を債権者が受領することは不当利得を構成し、倒産管財人はその分を減額することができ、債権者が減

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