コソボ分離に関する国際法(一) : ICJ勧告的意見要 請を素材として
著者 櫻井 利江
雑誌名 同志社法學
巻 62
号 2
ページ 257‑311
発行年 2010‑07‑31
権利 同志社法學會
URL http://doi.org/10.14988/pa.2017.0000012191
コソボ分離に関する国際法(一)一同志社法学 六二巻二号
コソボ分離に関する国際法(一) ― I C J 勧 告 的 意 見 要 請 を 素 材 と し て ―
櫻 井 利 江
(二五七)
一 はじめに二 国際法における分離権
(一) 自決権の意味
分実の会社際国るす関に離行三 (二論議るす関に権離分)
(一) 国際連盟
(二) 一九四五年以降
1バングラデシュ
2エリトリア
(三) 国内裁判所
コソボ分離に関する国際法(一)二同志社法学 六二巻二号
(四) 国内法
四コソボの概要 (五) 和平合意 (一) 紛争から停戦まで 析的分の料資係関請要見意勧告五 (二後以治統定暫連国) (一)分離に関連する国際法
1領土保全
( 1セ諸持支アビルび)よおアビルセ国 ①条約・国際文書における領土保全 ②領土保全と自決権との関係 ③国際社会の実行
( 2)コソボおよびコソボ支持諸国 ①領土保全の意味 ②国際法原則の一つとしての領土保全 ③国際社会の実行
2自決権
( 1セ諸持支アビルび)よおアビルセ国 ①自決権の意味 ②救済的分離
( 2)コソボおよびコソボ支持諸国
(二五八)
コソボ分離に関する国際法(一)三同志社法学 六二巻二号 ①救済的分離
②自決権の主体としてのコソボ(以上、本号)
3独立宣言
4国家承認
(二) 特別の事例
(三) 安保理決議一二四四 び六結 (的よ) 勧告権量裁びお意権轄四るす関に見管
一 はじめに
分離(se ce ss io n
)とは主権国家に居住する一部の集団がその所属国家から離脱し、居住領域に新たな国家を創設する、または他の独立国と統合または連合するプロセス、言い換えれば居住領域の領土主権を変更するプロセスを言う。コソボは旧ユーゴ(ユーゴスラヴィア社会主義連邦共和国/SFRY)解体後、新ユーゴ(FRY)を経てセルビア領土の
一部となり、二〇〇八年二月一七日、コソボ議会が﹁コソボ共和国﹂として独立を宣言し、二〇一〇年三月現在までに六五カ国により国家として承認が付与された。
二〇〇八年一〇月八日、国連総会は、セルビアが提出した決議案
―
﹁コソボ暫定自治政府による一方的独立宣言は国際法に従っているか﹂という問題に関して国際司法裁判所勧告的意見を要請する―
を決議として採択した (。 1)
(二五九)
コソボ分離に関する国際法(一)四同志社法学 六二巻二号
これを受け、裁判所は一〇月一七日、国際司法裁判所規程第六六条二に基づき、当該問題について国連およびその加
盟国による問題に関する資料の提供を認め、同問題に関する陳述書の提出期限を二〇〇九年四月一七日に、また陳述書を提出した国または機関が他の陳述書に対して意見書を提出する期限を二〇〇九年七月一七日とすることを決定し、陳
述書が三六カ国およびコソボ(うちコソボ承認国は二〇カ国)から、意見書が一四ヵ国およびコソボから提出された (
。 2)
﹁、一二月一日に開始され一論二月一一日に終了し、が弁コ上ソボ独立宣言の国際法の頭合法性事件﹂に関する口セ ルビア、コソボ他三〇ヵ国が口頭弁論に参加した (
え書踏を論弁頭口・見え意・書述陳のらかま、各る与、たま、か否かえ本与を見意的告勧件国びお請要件本の会総はよ 。き一〇二は件続手理審の年本〇属三月現在係中で、国際司法裁判所 3)
る場合の内容について検討中である。諸国家は、本件勧告的意見要請手続きにおいて分離を国際法上どのように捉えているのか。
二 国際法における分離権
(一) 自決権の意味
主権国家からの分離を主張する集団は、人民の権利として確立している自決権を法的根拠として援用する。自決権は国際人権規約(一九六六年)共通第一条一項において﹁すべての人民は自決の権利を有する。この権利にもとづき、す
べての人民は、その政治的地位を自由に決定し並びにその経済的、社会的および文化的発展を自由に追求する﹂と規定され、その後多様な意味内容をもつ権利として発展した。そのうち﹁政治的地位を自由に決定﹂する意味の自決権は、
植民地人民がその地位を離脱し、独立を達成する権利として確立したことについて今日議論はない。このように集団が
(二六〇)
コソボ分離に関する国際法(一)五同志社法学 六二巻二号 帰属する国家から離脱し新たな国際法上の地位を達成するために行使される自決権は外的自決と呼ばれ、主権国家に属する集団が外的自決の意味で主張する自決権は分離権と呼ばれる。
非植民地化がほぼ達成された現在において、既存国家の人民に分離権が認められるのかについては議論がある。一方で、既存国家の人民にとって、この政治的地位を決定する権利という意味の自決権は、所属国家内部で領土的現状を変
更せずに行使する範囲で
―
すなわち内的自決の意味だけが認められるという議論がある。既存国家に所属する一部集団に分離権が認められるかどうかについては否定する見解が多い。(二) 分離権に関する議論
分離権を否定する根拠として当初は二つの理由が主張されていた。一つは自決権の主体とされる人民の定義の欠如であり、もう一つは国家の領土保全原則である。人民の定義がないために、主権国家に属する一部集団が所属国家から分
離独立を達成しても、その新国家内部からまたあらたな集団が分離独立を主張することになり、まるで玉ねぎを剝くように、際限なく集団内部から分離集団が出現する。主体が定義されない限り、権利として認めることはできない。
二つ目の理由である領土保全については、既存国家からの分離はその国家の領土的削減をもたらし、それは領土保全
侵害行為を構成するので領土保全原則に反すると主張する。自決権が領土保全原則と関連付けて初めて規定されたのは植民地独立付与宣言であるが、同宣言採択をめぐる国連における議論をみる限り、領土保全原則は植民地および主権国
家に対する外部からの侵害行為に対抗する概念として主張されており、分離権に対抗する概念としては捉えられていない (
個はが、自決権以外の条項すあべて主権国家に帰属するるで。に国際人権規約は自決権つ約いてはじめて規定した条 4)
人の人権に関する規定であり、国家の権利義務とされる領土保全原則については触れていない。
(二六一)
コソボ分離に関する国際法(一)六同志社法学 六二巻二号
自決権の主体である人民と国家の領土保全とのあらたな関係について規定したのは、友好関係原則宣言(一九七〇年
国連総会決議二六二五(
ⅩⅩⅤ
のるあで定規なうよの次フ))ラグラパ七第則原決自。 前記パラグラフのいかなる部分も、右に規定された人民の同権および自決の原則に従って行動し、それゆえ人種、信条または皮膚の色による差別なくその領域に属する人民全体を代表する政府を有する主権独立国家の領土保全または政治的統一を、全部または一部、分割または毀損しうるいかなる行動をも承認しまたは奨励するものと解釈し
てはならない。同パラグラフは、欧州民族的少数者保護枠組条約(一九九二年 (
お採言宣ンーィウたれさ択で議会界世るす関に権人)、 5)
よび行動計画(一九九三年 (
連)九九一(言宣念記年周〇五会総国年たにおいて、ま一て部表現を変え五 6)(
般員的告勧的(一会委見約条止一九九六年意 ( )、禁別差種人 7)
族年〇二(言宣利権民七住先連国てしそ)〇 8)(
)において繰り返し確認され、 9)
これにより自決権と領土保全との関係が定式化された。
同パラグラフで自決権と領土保全との関係が以上のように規定されたことから、この解釈をめぐり、分離権を肯定す
る趣旨とする見解と、反対に分離権を否定する趣旨とする見解とが対立するようになった。同パラグラフによれば、主権国家人民については、国家内部のすべての人民集団が平等に政府に代表され、人権が尊重される、いわゆる内的自決
が保障されているとき、当該国家の領土保全が保障される。ただし同政府がすべての国内人民の内的自決を保障していない場合の帰結については不明確である。同宣言に関する起草過程での審議では、後者のような状況において分離を認
める可能性を示唆する意見があった (
。 10)
同パラグラフの解釈について肯定説の視点からは、国家に属する政府によって集団が差別的に扱われ、人権が重大か
つ深刻な状態にまで侵害され、国家の政策決定にその意見が反映されていないという特別な状況においては、当該国家
(二六二)
コソボ分離に関する国際法(一)七同志社法学 六二巻二号 の領土保全は保障されず、集団の人権を回復するための最終的手段として分離権が認められると主張され、このような解釈をとるものは多い (
. B uc eit L . C ch
団の人権が差別に部的に重大かつ深刻集内一(。ブックハイト)のは主権国家部 11)侵害される場合に最終的手段として許される分離を救済的分離(
re m ed ia l se ce ss io n
)と呼んだ (団が救済的分離の理論では分離権存る在するとしても、どのような集。いの済する多くて釈は救解的論分沿にっ理の離 。定肯を権離分、在現 12)
にも無条件で認められるわけではなく、限定的に認められると主張され、実体的および手続的な二つの条件が整っている場合に限定して認められるとする。実体的条件とは、所属政府によって集団が差別的に扱われ、人権が重大かつ深刻
な状態にまで侵害され、国家の政策決定にその意見が反映されていないという特別な状況の存在であり、手続的条件とは人権回復のためのあらゆる手段を尽くしたが回復されず、最終的手段として分離しか残されていないという状況の存
在である。ただしこのように分離権の存在を肯定する解釈においても、権利の存在を示唆するにとどまり、断定していない (
保人、国際法主体ではない民さ集団は国際法である領土れ用土適の解釈によれば、領保。全は国家間関係だけにこ 13)
全原則には拘束されないと捉える (
。 14)
今日、分離権の存在を否定する理由として主張されるのは、そのような解釈の裏付けとなる国家実行の欠如である。 クロフォード(
J. C ra w fo rd
)は、一九四五年以降の一方的分離(un ila te ra l s ec es sio n
)をめぐる一五の事例 (の分析から、 15)
集団の所属国が分離に抵抗している限り、分離の試みは国際的承認を得ていない (
尊国を体全民人家は位に合場のそ、単とる的利権の者数少族し民、権人、てがあで民はは既存国人家も自決権の主体で とが証明される説する。この否定こと 16)
重、代表政府、ルールオブローの尊重等、内的自決が保障されるという意味の権利として認められるとされる (
項のべての文書は同時に領域国領る土保全尊重に関する留保条すす意定解では、領土保全の味については、自決権を規 。見のこ 17)
を必ず伴っていることから、領土保全は国家の利益を絶対的に保障する原則、国家内部からの挑戦であろうと、外部か
(二六三)
コソボ分離に関する国際法(一)八同志社法学 六二巻二号
らの挑戦であろうと、国家領土を侵害しようとするいかなる行為にも対抗する原則として捉えている (
。 18)
なお、クロフォードは一方的分離の用語について、権限移譲(
de vo lu tio n
)や独立付与(gr an t of in de pe nd en ce
)のような同意プロセスを通じた領域主権変更の場合と区別して、集団が所属国家の同意なしに一方的に分離するプロセスを指す意味で用いており、後述のような当初は所属国家に対抗して一方的に分離を主張して武力闘争に発展したが和平交渉を経て、当事国が分離集団の分離権を認めた事例は含んでいない。
クロフォードと同様にヒギンズ(
R . H ig gin s
)は分離権について、実定法(ha rd la w
)に発展するための国家実行を欠くと指摘し (わい国際的共感を集めてた範時期があったにもかかな広ルてに﹁コソボではセビ、アからの分離につい後 19)
らず、諸政府が領土的一体性を優先し続けている間に状況が展開し、分離を真に必要とするための前提条件が薄れてしまった﹂として分離を拒否する諸国家の強固な意思の存在を指摘した (
事よため認を権離分にうのドーォフロクもに他。 20)
例の欠如を理由として分離権を否定する見解は多い (
を存るすくう危を亡ので家国るあで体主のの国社は権離分。いながずる際め認を離分は会社会際は離分。るす損毀を国 減れ国権主ばはれさ行実の離家・領土を削。分断し、領土的現状分 21)
否定する見解ではこのように主張される。
そこで次に実際に諸国家は分離権を全く認めていないのかについて再検討する。
三 分離に関する国際社会の実行
(一) 国際連盟
オーランド諸島事件に関して国際連盟理事会の管轄権について諮問された法律家委員会はその報告書(一九二〇年 (
) 22)
(二六四)
コソボ分離に関する国際法(一)九同志社法学 六二巻二号 において、﹁実定法と国際法は集団にその居住領域を国家から分離する権利を認めていない﹂とした上で、自決原則の適用に関連して、国家が法律上確立している場合と、国家が変遷期すなわち事実上の存在状況にある場合とを分けて議
論し、﹁一般論として、主権国家として確定的に存在し、国際社会の独立した一員となり、その性格を永続的に有している国家﹂については自決原則を適用するかどうかは国内問題であるが、領土主権が確立せず、国家が完全に形成され
ていないとか、解体過程にあり、法的に(国家主権の)状況が不明確な場合のように、事実上の状況から正常な状況へ﹁国家が変遷過程にある状況において、自決原則は役割を果たすよう求められ、共通の伝統、言語、文明に基礎をおく
一部の国民(
na tio n
)の新たな熱望が表面化し結果(ef fe ct
)を生ずれば、(その結果を)対内的、対外的平和の利益のために考慮すべき﹂とする見解を示した。これを受けてオーランド諸島事件の本案について諮問された報告者委員会は報告書(一九二一年 (
込決れていない﹂としながら、自原含則について理論的検討に踏みまもは規則(自決)に際法国則連約で盟規、くなは )原のこ﹁ていおに 23)
み、一方では﹁少数者がその所属する国家から分離し他国に統合することは、すべて例外的な解決としかみなすことができない﹂、ただし﹁領域国が(少数者にとって)正当かつ効果的な補償を与える意思または実施する力が欠如するとき、
最終手段としてはじめて所属国家からの分離が考慮される (
こ離す出見を点通共のと論理の分的済救にここ。たべ述と﹂ 24)
とができる。
(二) 一九四五年以後
国連発足後、主権国家からの分離独立が、領域国とその一部集団との間での分離独立闘争を経て成功した事例として
はバングラデシュおよびエリトリアがある。
(二六五)
コソボ分離に関する国際法(一)一〇同志社法学 六二巻二号
1
バングラデシュ バングラデシュは、イギリス領インド植民地からパキスタンとして独立後、パキスタン領土の一部(東ベンガル州)を構成していた。東ベンガル州住民は一九七一年三月二六日バングラデシュとして独立宣言し、一二月三日、インド軍による東ベンガル州への武力支援が開始され、一二月一六日、パキスタン政府軍が降伏した。バングラデシュ独立宣言から一年後の一九七二年三月までには五〇カ国余が国家承認を付与し、(日本一九七二年二月一〇日承認)、同年四月一
八日、コモンウェルス加盟が容認され、同年一一月までに九六カ国が国家承認を付与し、一九七四年二月、パキスタン政府がバングラデシュに国家承認を付与した後、一九九四年九月一七日、国連加盟が容認された (
。 25)
クロフォードによれば、領域国パキスタンによるバングラデシュ独立への同意がなされた後に国際社会による承認の付与がなされた経緯から、分離権を認めた事例ではなく、領域国の同意による国境線の変更の事例と捉え、また領域国 の同意に先立って付与された一〇〇カ国近くからの国家承認については、既成事実を承認したものと捉えている (
の確領域における実行的支配立る、国家性基準を満たす実体同よ議にような分析については論がある。バングラデシュ 。のこ 26)
創設という既成事実が形成されるプロセスにおいて、隣接国インドによる武力行使が最大の要因として作用したことは明らかである。他国の武力行使の結果、形成された実体の法的効果を認めることは武力行使禁止原則に反することにな
り、この点でクロフォードの見解には疑問がある (
。 27)
2
エリトリア エリトリアは推定人口三五〇万人、一八九〇年にイタリア植民地となり、第二次大戦後の講和条約(一九四七年)によるイタリアの領土権原放棄の後、一九五〇年に採択された国連総会決議三九〇A(V)により、エチオピアとの連邦
(二六六)
コソボ分離に関する国際法(一)一一同志社法学 六二巻二号 国家を結成することになった。一九五二年連邦制が発足したが一九六二年、エチオピアは一方的に連邦制を廃止し、エリトリアを一四番目の州として併合した。この連邦国家形成期間、エリトリアの自治権、同人民の代表権、政府へのア クセスは認められていない (
。 28)
エリトリア民族解放戦線(EPLF)を中心とする三〇年に及ぶ対エチオピア分離独立闘争を経て、一九九一年、エ チオピア政権交代後の新政権の下で暫定期間憲章(
T ra ns iti on al P er io d C ha rte r
)が採択された。同憲章二条は国民、民族および人民(na tio n, na tio na lit ie s, an d pe op le s
)の自決権を規定し、﹁関係国民、民族および人民が上記権利が侵害、剥奪または無効にされたと確信するとき、独立のための自決権(
th e rig ht t o se lf- de te rm in at io n of in de pe nd en ce
)﹂の存在を確認する。二年の暫定期間経過後の一九九三年四月一三―二五日に実施された住民投票において、投票者の九九・八三%の圧倒的多数が分離独立を選択した結果を受けて、五月二四日、独立を宣言し、五月二八日、国連加盟が容認された。エリトリアの独立について、クロフォードは分離権にもとづく独立とはしていない (
。他方、エリトリア独立を人 29)
民の自決権の行使による分離独立とみる見解があり (
. W M er ell
自﹁(を例ウェラー()権事はエリトリア独決)の受るいてし析分と﹂れ入の実求要決自う伴を期延施立 ( 述た述のようにスイスはその陳書、でこの見解を採っている。ま後 30)。 31)
(三) 国内裁判所
国内裁判所の諮問意見ではあるが、分離権について国際法の視点からも詳細に検討した事例として、ケベック分離問
題に関するカナダ連邦最高裁判所諮問意見(一九九八年)がある。同意見は自決権の主体に関して以下のような意見を示した。自決権の主体である人民とみなされる集団として、第一に植民地支配下、第二に外国の従属、支配または搾取
の下にある人民、がある。それ以外に多くの学説では自決権は第三の状況において一方的分離権の根拠となりうると主
(二六七)
コソボ分離に関する国際法(一)一二同志社法学 六二巻二号
張する。第三の状況についてはさまざまな方法で表現されるが、基本的な主張点は、人民が内的自決権の意味ある行使
を阻止されたとき、人民は最終的手段として分離によって(自決権を)行使する権利がある、というものである (
le de m ea nin ul ple eo p gf ab fin
て定たれさ限人しうる否民()につい定クをへらくは第三の、政ス府の意義ある()アセ そお。 32)主権国家に所属する一部集団であっても、これらは﹁特別な状況の下﹂にあるとみなすことができ、外的自決の意味の自決権
―
すなわち分離権―
享受の可能性がある (と分法際国のめたるす化当正を離だまは況状の三第しだた。るすと 33)
して十分確立した国際法の基準を反映しているかどうかは依然として不明確である (
内部地たし越卓で内を府政ダナカ、位占な自クッベケに由はめ民住、りおてくも意スとあるアクセ義﹂否定されたこが いベック人につ政ては﹁府への。ケ 34)
部、カナダ全土そして世界中で、政治的選択をし、経済的社会的文化的発展を追求することができる。そのような(分離権が適用される)例外的な状況は現在の条件のもとでケベックには明らかに適用されない (
。 35)
同意見はケベック州住民が分離権が適用されるような特別な状況にはなく、本件ではケベック州の分離権に関する議論はそれ以上必要なしとして分離権に関する詳細には踏み込んでいない。ただし国際法における分離権の存在を否定し
たわけではなく、むしろ例外的な状況において認められる可能性を示唆している。
(四) 国内法
旧社会主義体制のもとで連邦国家制度をとっていた諸国の憲法、一九六八年チェコスロヴァキア憲法、一九七七年ソ
連憲法、一九七四年ユーゴスラヴィア(SFRY)憲法では、各連邦構成国に自決権にもとづいて連邦からの離脱を認めていた。ただし一九七七年ソ連憲法では、共和国間の境界線画定は連邦政府の権限と規定されていた(七〇条)こと
から、共和国の分離権の行使は実質的には否定されていると解釈されていた。
(二六八)
コソボ分離に関する国際法(一)一三同志社法学 六二巻二号 一九八〇年代以降に制定・改正された憲法または国内法においても、分離権を規定するものがある。セント・キッツ・アンド・ネビス連邦憲法令(一九八三年 (
をトント・クリスフがァー島との連邦セ島島)ィヴネ、は会議ススィヴネ﹁は 36)
終了し、したがって本憲法はネヴィス島における効力を有しないと規定しうる﹂(一一三条)と規定し、ウズベキスタン憲法は﹁カラカルパキスタン(
K ar ak alp ak ist an
)共和国はカラカルパキスタン人民全体による住民投票にもとづいてウズベキスタン共和国から分離する権利を有する﹂(七四条)と、それぞれ特定の連邦構成国について分離権を認めている。
一九九三年ロシア憲法は﹁領土保全とともに連邦内での人民の自決権を承認する﹂(前文および五条三項)と規定し、一九九五年エチオピア憲法は国民、民族および人民の権利(
R ig ht s of N at io ns , N at io na lit ie s, an d P eo ple s
)の一つとし て、﹁すべての国民、民族および人民は分離権(th e rig ht t o se ce ss io n
)を含め、無条件の自決権を有する﹂(三九条)として﹁人民の自決権﹂を規定する。二〇〇三年セルビア・モンテネグロ憲法憲章は、﹁三年の期間終了の時点で、加盟国はその国家的地位を変更するかまたはセルビア・モンテネグロの国家連合から離脱するための手続きを開始する権利を有する﹂(六〇条)と規定し、二〇〇六年、同条にもとづいてモンテネグロが同国家連合から離脱した。
分離に関する手続きを明確にする法(二〇〇〇年、カナダ (
意関問諮所判裁高最邦連るすに題問離分州クッベケ、は) 37)
見を受けて、州その他の地方自治体による連邦からの分離を前提として、住民投票の実施方法等を含めて制定された。二〇〇三年に改正されたリヒテンシュタイン憲法 (
tie s ali ip ic un m
合連かよらの分離権を認るめに)(体治自礎基各、は 38)る規定を追加している (
。 39)
(二六九)
コソボ分離に関する国際法(一)一四同志社法学 六二巻二号
(五) 和平合意
冷戦終了後の一九九〇年代以降に合意された分離紛争をめぐる和平合意において、紛争当事国が分離権を認める意思を表明した事例が現れた。以下の紛争当事国と分離運動集団との間の和平合意において、紛争の一方の当事者である国 家が分離を主張してきた集団の分離権を認めた (
のである。 40)
ガガウジア(一九九四年、モルドヴァ (
(ド年八九九一国ン英ラルイア北)、、 41)(
プ(パ、年一〇〇二ルィヴンゲーブ)、 42)
アニューギニア (
二ンス、年五〇〇(ダンダース部南)、ー 43)(
、交者事当争紛、えを方争闘力武で間の双に家害末たしらたもを損多的物と者牲犠の数と国りを属分離独立主張して所 紛例事の争集離分るぐめおに団いて、当該)は長年にわたを 44)
所属国家と分離集団との間で和平合意が結ばれた。これらの和平合意において、これらの分離権を主張する各集団の分
離権が実際に認められた。これらの事例は国家に属する一部集団の分離権の存在を実証する国家実行と捉えることができる (
。 45)
四 コソボの概要
コソボは人口約二一〇万人(二〇〇八年一二月現在)、そのうち約九二%をアルバニア民族が占め、その他はセルビア民族、トルコ民族等で構成される。一三八九年、コソボの戦いでセルビアがオスマン・トルコに敗退し、以後、一九一三年にバルカン戦争でトルコに勝利したセルビアがコソボを奪回するまで、コソボはオスマン・トルコの領土となっ
た。一九一八年、コソボはセルビア・クロアチア・スロベニア王国の一部に編入されたが、国際連盟の支援により締結された民族的少数者保護条約のもとで、セルブ・クロアート語以外の民族語による教育が許容されていた。
(二七〇)
コソボ分離に関する国際法(一)一五同志社法学 六二巻二号 一九四一年第二次世界大戦中、コソボはドイツ、イタリア、ブルガリアに分割占領され、ユーゴスラビア社会主義連邦共和国(SFRY/六共和国で構成)建国(一九四五年)後、一九四六年SFRY憲法により、コソボはセルビア共
和国に属する自治地域となった。一九七四年SFRY憲法では、コソボ自治州は共和国に準じた大幅な自治権を獲得し、独自の憲法、議会、政府、裁判所を有した。
(一) 紛争から停戦まで
一九八九年、コソボ内でアルバニア民族とセルビア民族の対立が深まる中、セルビアはアルバニア民族に対する弾圧政策を強化し、一九九〇年九月、セルビア憲法改正によりコソボから自治権をはく奪したのに抗議して、一九九一年一
〇月一八日、コソボのアルバニア民族は﹁コソボ共和国﹂の樹立とセルビアからの独立を宣言し、非合法武装組織﹁コソボ解放軍﹂(KLA)を組織して武力闘争を開始した。
一九九八年、セルビアがKLA掃討作戦を展開すると、コソボの治安情勢と住民の人道状況は急速に悪化した。一九九九年二月六日、ランブイエにおいて国際社会の仲介で和平交渉が開始された。コンタクト・グループ(米露英独仏伊) により提示されたランブイエ和平案 (
の、な自治権の付与②高NATO軍主体度のにみ当初①コソボ対はする共和国並、 46)
国際平和部隊のコソボ受け入れ、③三年後における合意事項の包括的見直し、等を骨子とするものであった。しかし、最終案では、米国の主張等によって、②については、NATO軍主体の国際平和部隊の﹁ユーゴ全土﹂への受け入れ、
③については、三年後の国際検討会議で住民の意思(住民投票)を尊重してコソボの地位を確定 (
。ビたし裂決ずれ入け受がアルセは 案平和のこ、れさと、 47)
一九九九年三月二四日、NATOはコソボにおける人道的危機が深まったとしてコソボを含むセルビア全域の軍事目
(二七一)
コソボ分離に関する国際法(一)一六同志社法学 六二巻二号
標及び経済インフラに対し空爆による攻撃を開始し、空爆は七八日間続いた。これに対し、セルビアはKLA掃討作戦
を強化し、数十万のアルバニア民族住民がコソボから強制的に移住させられたと言われる。六月三日、停戦協定が結ばれ、六月一〇日、安保理決議一二四四 (
書議属付と文前はで決同。たれさ択採が 48)
二
ラ和共邦連アビスにゴーユ﹁ていお国(FRY)およびこの地域における諸国の主権と領土保全の原則﹂に言及し、また前文では﹁ヘルシンキ最終文書﹂にそして付属書
二
(るす及言に)﹂案意で合エイブンラ﹁は。(二) 国連暫定統治以後
一九九九年、国連事務総長特使を責任者とする国連コソボ暫定統治機構(UNMIK)による統治が始まり、二〇〇一年五月、同特使はコソボ統治に関する基本法となるコソボ憲法枠組を発表した。同憲法枠組にもとづき、コソボ住民
により構成されるコソボ暫定自治政府諸機構(PISG)が設置され、同機構の一つとなるコソボ議会にはコソボにおける少数者であるセルビアその他六民族の議席が含まれる。
二〇〇五年一一月、元フィンランド大統領アハティサーリがコソボ地位交渉特使に任命され、コンタクト・グループの下、コソボの地位に関する包括的解決案の取りまとめを開始した。コソボの地位交渉継続中の二〇〇六年九月三〇日、 セルビアはコソボ人民の参加なしに﹁コソボ(
K os ov o an d M et oh ija
)はセルビア領土の不可分の一部﹂と明記する新憲法を採択した。二〇〇七年二月二日、アハティサーリ特使は包括的解決案により、コソボは﹁民主的に自由統治﹂し、独自の憲法、治安部隊(コソボ治安軍)を持ち、国際条約を締結できるほか、国際機関への加盟も認めるという、名目上は独立承認
ではないが事実上は国際社会の監督下での事実上の独立を示す提案をしたが、セルビアは拒否した。二〇〇七年三月二
(二七二)
コソボ分離に関する国際法(一)一七同志社法学 六二巻二号 六日、同特使は最終報告書 (
、案に対反のアシロは議り決理保安るす認承をよ採同年UE、米はらか月八同決。たっかなれさ付に案、たし告勧をが
ise in su pe rv d pe de nd en ce
し、﹁出提にけ長総務事際連国る社会の監視下におを独立()﹂国 49)ロシアによるいわゆるトロイカ仲介プロセスが開始されたが、一二月一四日、﹁裏返していない石はないと誓う﹂という表現で、あらゆる可能な解決手段が尽くされたが交渉は不調に終わったことを報告した。
二〇〇八年二月一七日、コソボ議会は﹁コソボ共和国﹂独立宣言 (
る立に性法違の言宣独しはアビルセ、日関て一告す請要を見意的勧国に所判裁法司際五月れ述こに対し前のように、八 、書文同れがたし択はでて自決権には触をいない。採 50)
決議案を国連総会に提出し、同案が採択された。以下、勧告的意見が要請された問題に関して諸国家が提出した陳述書、意見書および口頭弁論記録を手がかりに、諸国家がコソボの分離について国際法上どのように捉えているのかを考察す
る。
五 勧告的意見要請関係資料の分析
国際司法裁判所の勧告的意見が要請された問題に関して諸国家が提出した陳述書、意見書および口頭弁論における主張は、コソボの独立宣言に関連する多くの論点に及んでいる。それらの議論に関して、ここでは(一)分離に関する国際法、(二)特別の事例、(三)安保理決議一二四四そして(四)国際司法裁判所の管轄権および勧告的意見付与の適切
性、という論点に分けることにする。当然ながら、セルビアおよびその支持諸国、コソボおよびその支持諸国それぞれの立場からの主張では、その重点の置き所は大きく異なる。コソボおよびコソボ支持諸国の議論では、本件に関する国
際司法裁判所の管轄権、および勧告的意見表明の妥当性を否定する主張がその大半を占めている。領土保全にも自決権
(二七三)
コソボ分離に関する国際法(一)一八同志社法学 六二巻二号
にも言及しない諸国もある。本稿では(一)~(四)それぞれの論点に関して、諸国家の主張がどのように対立している
のかに注目して議論を整理したい。(一)に関しては、
1
領土保全、2
自決権、3
独立宣言そしてかコア支持諸国、コソボおよびソルボ支持諸国、それぞれの視点ビセ各に論がある。び論点つるいて、セルビアおよ議
4
す関に等認承家国ら、コソボの分離について国際法上どのように捉えているのかを分析する。
(一) 分離に関連する国際法
1
領土保全(
1
) セルビアおよびセルビア支持諸国 セルビアおよびセルビア支持諸国は領土保全原則が多数の国際条約、国際文書において規定されることにより国家の領土的現状維持を意味する国際法の基本原則として確立しており、国際社会における実行においても領土保全原則は国家だけではなく分離集団のような非国家実体にも適用され、分離を排除する原則として機能してきたと主張する。
① 条約・国際文書における領土保全 (セルビア) ヘルシンキ最終議定書(一九七五年)、新ヨーロッパのためのパリ憲章(一九九〇年)、少数民族に属する人の権利宣言(一九九二年)、欧州民族的少数者保護枠組条約(一九九五年)、国連先住民権利宣言(二〇〇七年)は、 一方で自決権を規定しながら、同時に国家の領土保全を規定している (
。 51)
少数者・先住民の保護に関する個別の、または地域的文書、例えば国連少数民族に属する人の権利宣言(一九九二年)、
欧州民族的少数者保護枠組条約(一九九五年)、国連先住民権利宣言(二〇〇七年)は﹁そのような(少数者)集団の
(二七四)
コソボ分離に関する国際法(一)一九同志社法学 六二巻二号 権利が当該国家の領域内部で達成されなければならず、宣言のいかなる部分も主権平等、領土保全、政治的独立に反する行為を許すと解釈してはならない﹂と規定する (
。 52)
(スペイン) 国連憲章二条一項は加盟国の主権平等原則を規定するが、その中心になるのは国家の主権と領土保全保護原則である。友好関係原則宣言主権平等原則は同原則の要素の一つとして、﹁d国家の領土保全と政治的独立の不可 侵﹂があると規定する (
。 53)
(ロシア) ヘルシンキ議定書は領土保全に対するいかなる行動も禁止する (
。 54)
② 領土保全と自決権との関係 (セルビア) 友好関係原則宣言自決原則第七パラグラフに関する準備作業(
tr av au z pr ep ar at oir es
)記録からすれば、国家内部の集団による自決権の主張に対して国家の領土保全を保障する趣旨と解釈することができる。第七パラグラフ に関してイタリア代表(A ra ng io -R uiz
)は以下の意見を述べていた。 自決原則の受益者(主体)が人民であるということが明らかになったので、論理的に国家の領土保全と政治的一体性を保護する規定が必要になった。これは国際的レベルで扱わねばならない問題である。独立が宣言されるのは
確かに国内法レベルであるが、憲法規定は国際的レベルにおいては国家の領土保全と政治的一体性を保護できない。そのような保護条項が国際法になければ、自決原則は国家の領土保全と政治的一体性を破壊するために援用さ
れる可能性がある。人民が定義されていないので、どのような集団でも自決原則を援用することができることになり、集団による自決権の行使によって国家の領土保全を破壊する危険から保護するため、場合ごとの保護は絶対必
要である (
。 55)
(二七五)
コソボ分離に関する国際法(一)二〇同志社法学 六二巻二号
同意見からすれば、同パラグラフは国家内部の集団による分離運動から国家の領土的現状を保護する趣旨である (
。 56)
一方的独立宣言起草者(以下、コソボ)は領土保全原則はいかなる特定の時点で存在する国家の永久性を保障するものでもなく、したがって既存国家内部の集団による独立宣言を排除するためには作用せず、他国の強制的行動および干
渉からの保護に限定される、と主張する。しかし領土保全は一般国際法原則であり、これは非国家実体にも適用される。国際法の古典的構造は変化し、現在の国際的実行は明らかに非国家実体を国際法の直接的主体とみなしている。国際関
係の定義は拡大し、国際法の適用範囲に関する限り、内戦、人道法違反、テロ、権力の国内的奪取にも及ぶ。国際法は今日、非国家実体の行為に直接的に対処する。コソボも﹁おそらく領土保全原則の受益者が国家のみならず国家内部の
人民も含むまでに拡大しているとする解釈﹂を受け入れるであろう (
。 57)
(スペイン) 友好関係原則宣言自決原則第七パラグラフの準備作業から分析すれば、国家内部の集団の一方的行為に よる自決権の行使に対して国家の領土保全原則が従属するという結論にはならないはずである。自決権の内的自決と外的自決の二つの側面について、人種差別禁止条約委員会が採択した一般的勧告(
G en er al R ec om m en da tio n X X I
)によれば、内的自決については﹁五(c)すべての市民の公的事項への参加権﹂として定義され、外的自決については、例として外国による従属、支配および搾取に人民を従属させることの禁止、および自由に政治的地位を決定する﹂ことと
定義される。また、バダンテール委員会第二意見も国家の領土保全を確認した文書である (
。 58)
(中国) 領土保全尊重は国際関係を規律する基本的規範であり、自決を支持する国際文書は、自決権の行使が既存国 家の領土保全への脅威にならないようにその範囲を十分限定しなければならない、という結論を支持する宣言を同時に含んでいる (
。 59)
(ロシア) 自決と領土保全原則との関係については、友好関係原則宣言保護条項に基礎づけられるが、非植民地化以
(二七六)
コソボ分離に関する国際法(一)二一同志社法学 六二巻二号 後、自決の議論では領土保全が強く優先され、主権国家の集団の自決権としては内的自決の行使が優先される (
。 60)
(ルーマニア) 領土保全原則は絶対的性質を有する国際法原則であり、従って関係国が合意する場合を除き、領土ま たは国境線のいかなる変更もしないことを意味する (
。 61)
(スロヴァキア) 国際法は常に国家の領土保全を優先し、同時に政府はすべての合法的手段によって一方的分離に対 抗する権利がある (
。 62)
③ 国際社会の実行 (セルビア) 国際社会はこれまで、国内紛争に関して常に国家の領土保全を優先してきた。カタンガ(一九六〇年)、
ビアフラ(一九六七年)、そして一九九〇年代以降もボスニア・ヘルツェゴヴィナ、クロアチア、ソマリア、コンゴ、グルジアにおける内戦状況、そしてスーダンにおけるダルフールの状況に関して、いずれも安保理は当事国の主権、統
一、独立および領土保全を確認している。
バダンテール委員会第二意見(一九九二年)は、SFRY解体後に成立したクロアチア、ボスニア・ヘルツェゴヴィ
ナ、FRYの領土保全を明示的に確認し、さらに今日のセルビアの領土保全の確認を示唆したものであり、ボスニア・
ヘルツェゴヴィナの領土保全尊重についてはデイトン合意(一九九五年)でも再確認された。安保理は一九九六年以降のコソボ危機に関連する決議においても、常にFRY、セルビア・モンテネグロそしてセルビアの領土保全を確認して
きた (
。 63)
安保理が主権国家内部の非国家実体と当該国家の領土保全との関係に関して直接取り組んだ最近の例がある。安保理
決議は、ボスニア・ヘルツェゴヴィナ領域内のセルビア民族による分離の主張に対し、﹁すべての当事者および関係者
(二七七)
コソボ分離に関する国際法(一)二二同志社法学 六二巻二号
はボスニア・ヘルツェゴヴィナの領土保全を厳密に尊重﹂し、﹁いかなる実体によるものであろうと、領土保全に対抗
してなされる一方的宣言または強制された取極めは受け入れられない (
確よ面直に戦内びおたて企の離分るけし状に土を性要重の全保領況と権主ていおにお内に国ダン関する決議でも、当事 様同。リたし定規、にアコンゴ、ソマ﹂、スーと 64)
認している (
。 65)
領土保全と自決権とは対立するのではなく並立する(
fit t og et he r
)。植民地および外国の占領下のコンテクスト以外では、自決は当該主権国家内部でのみの権利という定式によって表明される。さもなければ国際社会は分離権が国家統一と領土保全の権利よりも法律上優先されるという主張に直面することになるが、そのような前提を支持する国際的実
行はない (
。 66)
(中国) 自決権行使において領土保全は尊重されるべきであり、これはカタンガ、ビアフラ問題に関するウ・タント
(
U T ha nt
)事務総長の﹁加盟国の特定部分の分離問題に関する限り、国連の態度は明確である。国際機構、国連は決して加盟国の一部の分離原則を受け入れてこなかったし、受け入れないし、わたくし自身も受け入れないと確信する﹂(一九七〇年)とする声明、およびエチオピアのソマリ族の自決に関する英国外相の﹁自決権は帰属国家から分離し帰属国家の領土保全を侵害する権利を、国家内部の集団に与えるものでないことは広く受け入れられている﹂とする発言
に反映されている (
。 67)
(スペイン) 安保理は常に国家の主権、領土保全を擁護してきた (
。 68)
(
2
) コソボおよびコソボ支持諸国 コソボおよびコソボ支持諸国の領土保全に関する議論では、同原則は国家間の行為を規律する原則なので非国家主体(二七八)
コソボ分離に関する国際法(一)二三同志社法学 六二巻二号 である分離集団には適用されず、したがって分離は国家の領土保全を侵害する行為ではないと捉えている。また領土保全原則は国際法における基本原則の一つであるが、他のすべての国際法原則に優先する原則ではないし、国家実行にお
いても、領土保全は分離を排除する意味の原則としては適用されていないと主張する。
① 領土保全の意味 (コソボ) 領土保全原則は専ら国家を名宛人とする原則であり、独立宣言には関係しない。領土保全は国家領土を他 国、ことに武力行使または脅威による外部の介入から保護するものとして意図され形成された、定義からしても独立を宣言したとき、その起草者は国家ではなくて人民を代表して行動するものである (
。 69)
(米国) セルビア陳述書は分離は領土保全に反すると主張するが、それは正しくない。コソボの独立は、国家間関係に適用される領土保全原則に従っている。領土保全原則は国家間の行為を規律する原則であり、国家内部の非国家アク ターは規律しない (
い (
n- s le op pe l nia lo co no
保離国)による分独法立を排除しな。際、全地原則は非植民人こ民(土領にと 70)。 71)
(英国) 国連憲章二条四項の領土保全原則は国家内部からの解体(
in te rn al fra gm en ta tio n of S ta te s
)の禁止は明示 してない。現代国際法の領土保全は国際関係、ことに国家間における武力の行使または威嚇の禁止に直接関係するものである。領土保全は国内の分裂に対して領土(的現状の維持)を保障するものではない (。 72)
分離が国家の領土保全を侵害するというのは誤りである。領土保全原則は国際関係だけに適用される (
。 73)
(フランス) 領土保全原則は国家間関係に係る原則であり、国家とその住民との関係には関係しない (
。 74)
(ドイツ) 領土保全は国家間の規則であり、国際法は個人にいかなる義務も創設しない。友好関係原則宣言自決原則
(二七九)
コソボ分離に関する国際法(一)二四同志社法学 六二巻二号
は国家に自決権の尊重を義務付ける。国家に対しては領土保全を侵害しない義務を課しているが、個人には課していな
い (
。 75)
(フィンランド) 領土保全は国家間関係を規律する原則なので、その効力は既存国家保護という一般的価値に限定さ
れる (
。 76)
(スイス) 国連憲章二条四項の領土保全尊重義務は他国に対して、対外的に適用され、国家内部の実体には適用され ない。たとえ領土保全が実体にも適用されると理解したとしても、絶対的ではなく自決権に対抗するときは制限されうる。友好関係原則宣言自決原則によれば、政府が人民の自決権を侵害する場合には領土保全は無制限に保護されない (
。 77)
(オランダ) 非植民地化以後の政治的自決権は領土保全原則を相当に尊重してきているが、同原則は国家内部で行使すべきものである (
。 78)
② 国際法原則の一つとしての領土保全 (米国) 国連憲章二条四項の領土保全原則、そして二条一項の主権平等原則は公理であるが、そのような事実は既存国家領土から新たな国家の現実の出現を排除しているわけではない (
。 79)
(英国) 国際法には集団の分離よりも既存国家の領土的現状の維持を優先するルールはない。クロフォードも﹁国際法は領土保全が少なくとも武力の行使および干渉に関する限り国家の領土保全を保護するが、保障の提供まではしてい
ない (
﹂と論ずる 80)(
。 81)
(ドイツ) 主権原則、その一つの側面である領土保全は重要だが国際法の唯一の重要原則ではない。自決原則にも同
様の重要性がある。このコンテクストで関係するヘルシンキ議定書(Ⅷ)において、主権平等原則、領土保全原則と等
(二八〇)
コソボ分離に関する国際法(一)二五同志社法学 六二巻二号 しいレベルで自決原則は承認されている (
。 82)
(アルバニア) 領土保全原則は国家主権の行使に関する限り重要な役割をもつが、決して国家内部の憲法的プロセス を制限するものではない。領土保全原則は国内人民またはその一部に対抗して国家の存在を保障すると理解することはできない (
。 83)
(スイス) 国連憲章二条四項の領土保全尊重義務は、他国に対して対外的に適用され、国家内部の実体には適用されない。たとえ領土保全が実体にも適用されると理解したとしても、絶対的に適用されるわけではなく自決権には制限さ
れうる。友好関係原則宣言自決原則からすれば、政府が人民の自決権を侵害する場合には領土保全は無制限に保護されない。領土保全は他の基本原則から孤立しているわけではなく、いかなる状況においても分離権を排除するという目的
で(国家領土を)保護する原則ではない (
。 84)
③ 国際社会の実行 (米国) セルビア陳述書の主張はもっぱら、領土保全原則が国家間関係を規律する国際慣習法として既に長期間確立
しており、多数の条約で規定されているので、本件で議論するに及ばないという点に尽きる。しかし歴史上の内戦に関
する事例をみれば、国家内部の非国家実体による平和的な独立宣言を領土保全原則は排除していない。
セルビア陳述書はボスニア・ヘルツェゴヴィナ、クロアチア、コンゴ、グルジア、ソマリア、スーダンにおける内戦
の事例に関して、領土保全原則が非国家主体による平和的独立宣言を排除した事例であると主張する。しかし反対に、これらの事例は安保理が(内戦当事国の領土)を維持することが国際社会の平和と安全を促進させると判断し、そのよ
うな文言を関連決議に規定したことを意味するに過ぎない。分離実体による独立宣言が国際法違反であるとした安保理
(二八一)
コソボ分離に関する国際法(一)二六同志社法学 六二巻二号
決議はないし、非国家アクターによる平和的独立宣言を排除する一般国際法を明言したり、または他の状況において国
家的一体性の維持が国際の平和と安全に最適であると明示した安保理決議はない。
セルビアの主張は一九九〇年代のボスニア・ヘルツェゴヴィナ、クロアチア紛争に関する安保理決議に依拠している。
これらの安保理決議は民族浄化または大規模人権侵害を伴う、ボスニア・ヘルツェゴヴィナおよびクロアチアの領土の一部を併合しようとするセルビアの軍事的目的に対処する趣旨で採択された。国対国の原則として定式化されてきた領
土保全原則は非国家主体による独立宣言を国際法違反とはしていない (
。 85)
(英国) カタンガの事例において、安保理はコンゴからのカタンガ分離を﹁強く非難﹂する決議を採択した。しかし 安保理が非難したのは外国によるカタンガへの干渉であり、分離そのものではない。事例では分離を禁止する国際法の一般的規則は示唆されていない (
家さ国連に加盟容認れ明たとき、当該国、﹁声ウの国陳述書は、・。タント事務総長中 86)
の領土保全、独立および主権原則について、すべての加盟国による容認があったことを示唆する﹂を引用している。しかし同事務総長は﹁コンゴの領土保全に対する外部からの﹂干渉があったので、カタンガのコンゴから分離を阻止した
のである。他方コソボに関する国連の一連の取決めの目的はFRYからコソボ住民を保護し、大規模な人権侵害と犯罪が実行された直後にコソボの自治を確立し保障することである。
コソボ独立に反対の諸国は、新国家の出現に関して非常に慎重な見解をもち、国際法は分離を国内的危機に対して選択される救済策としてみなしていないと主張する。確かに国連自身も﹁分離原則﹂は採択したことがないものの、国家 として確立した実体については拒否せず、そのように(国家として)受け入れ、承認してきた。分離を禁止する原則があるとすれば、国連加盟国リストを書き換えることになろう (
。 87)
(アルバニア) 領土保全原則は国家主権の行使に関する限り重要な役割をもつが、決して国家内部の憲法的プロセス
(二八二)