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生物の知性の探求と知能ロボットへの応用

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Academic year: 2021

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九州大学学術情報リポジトリ

Kyushu University Institutional Repository

生物の知性の探求と知能ロボットへの応用

山口, 達也

https://doi.org/10.15017/1931719

出版情報:Kyushu University, 2017, 博士(機能数理学), 課程博士 バージョン:

権利関係:

(2)

(様式3)

氏 名 :山口 達也

論 文 名 :生物の知性の探求と知能ロボットへの応用 区 分 :甲

論 文 内 容 の 要 旨

脳のメカニズムの解明と知能ロボット・人工知能技術は相乗的に発展しうる.脳の機能が複雑で 高度なことは様々な場面で論じられてきた.ヒトの脳機能を解明することの困難さが注目されがち であるが,様々な生物において興味深い知性のメカニズムが知られている.本研究では繊毛虫(テ トラヒメナ・ゾウリムシ)の空間記憶現象,アメーバの時間学習,ダンゴムシの記憶行動の三つに 着目し,それらのメカニズムを数理モデリングによって解明することで生物らしい素朴な知能を持 ったロボット制御のやり方を提案した.

<繊毛虫における空間記憶行動のメカニズム>

共同研究者である國田助教は,単細胞の繊毛虫「テトラヒメナ」が円形空間の形状を記憶できる ことを見出した.このテトラヒメナの記憶行動を再現するような数理モデルを構築することで,繊 毛虫が持つカルシウムイオンチャネルのうち,遅いタイムスケールで開閉するイオンチャネルが記 憶行動に重要な役割を担っていることを明らかにした.

単細胞の繊毛虫「ゾウリムシ」は円形,正三角形,正方形の空間形状を記憶できることが知られ ている.このゾウリムシの記憶行動を再現する数理モデルを構築することで,正多角形容器に対す る記憶行動のメカニズムを提案した.この数理モデルでは,細胞が容器の壁と周期的に衝突するこ とにより細胞内の振動性の内部状態が共鳴を起こし,様々な正多角形容器に対して形状学習が可能 である.

テトラヒメナの円形空間記憶メカニズムを掃除ロボット「ルンバ」に実装し,繊毛虫型記憶メカ ニズムを搭載したロボットの行動を検証した.ルンバの制御にはマイクロコントローラArduinoを 使用し,正方形空間において実機実験を行った.実験の結果,繊毛虫型記憶メカニズムを搭載した ルンバは空間サイズを学習し,与えられた正方形空間に内接する円周上を移動するようになった.

<アメーバの時間学習>

アメーバは周期的な環境変動を学習・記憶して伸長することが知られている.またそのメカニズ ムは位相振動子の集団同期を用いた数理モデルによって説明できることが知られている.これを受 けて,アメーバの位相振動子モデルを書き換えることで学習能力を備えた位相振動子の同期モデル を構築した.

脳における学習方法のうち,シナプスの可塑性を利用して神経細胞ネットワークを確立するやり 方が有名である.これに対して,本研究では学習能力を備えた位相振動子モデルを用いてシナプス の可塑性を仮定せずに実現可能な情報処理機構を構築した.この機構が振動状態の入力を受け取る と,入力の時間差検出及び周波数分類が可能である.

<ダンゴムシの記憶行動>

生物が連続して方向転換するとき,その転向方向は直前の転向方向とは逆方向に転向する頻度が

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高いことが知られており,これは交替性転向反応と呼ばれている.交替性転向反応は,前の行動に 応じて次の行動を選択できるという点で,生物における学習行動の一つと言える.特にダンゴムシ における交替性転向反応に注目し,数理モデルを構築することで交替性転向反応を再現できるよう なアナログ制御機構を構築した.

交替性転向反応は「左右の脚の運動量を均等化しようとした結果生じた行動である」とする仮説

(Bilaterally Asymmetrical Leg Movements, BALM仮説)が有名である.これを受けて,BALM 仮説を採用すると,生物が起伏のある地形を移動するとき,地形の勾配方向に沿って移動すると予 想した.この予想を確かめるために,ダンゴムシを凹凸のある地形で歩かせ,その行動を観察した.

その結果,ダンゴムシは谷部分を選択して移動することを見出し,ダンゴムシの行動選択において BALM仮説の役割が重要であることが明らかになった.

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