九州大学学術情報リポジトリ
Kyushu University Institutional Repository
高卒者の建設業就職への途 : 「高卒就職者の職業別 進路」研究より
吉本, 圭一
雇用職業総合研究所
http://hdl.handle.net/2324/18528
出版情報:つち. 13 (2), pp.15-19, 1989-02-01. 雇用促進事業団 バージョン:
権利関係:
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雇用職業総合研究所研究員
吉本圭一
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(資料出所:労働省「新規学卒者の職業紹介状況報告」綴織版)
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高卒者の就職難と就職離れが進む一方で︑
建設業では人手不足が続いている︒この小論
では︑高卒者の進路に関する研究成果を用い
て︑建設業への就職実態を明らかにし︑また
今後の可能性について考えてみたい︒
近年の高卒者をめぐる就職環境は大きく変
化している︒ここ数年は︑円高不況などで求
人数が減少し︑就職を諦めて専修学校なぜへ
進路希望を変更するといった現象が目立った︒
最近︑景気が回復し求人は持ち直してきたも
のの︑就職希望率の減少はまだ続いている︒
建設業に目を転じてみると︑景気動向に応
じた上下はあるものの︑毎年求人数が実際の
就職者数を大幅に上回っている︒つまり︑高
卒就職状況が悪化したときでも︑建設業は依
然として売り手市場であり︑なかなか人が集
まらず︑未充足の求人が多く残っていたわけ
むてある
図1の求人充足率の推移を見ると︑建設業
の求人充足率は他の産業と比べて低く︑ここ
一〇余年︑三割から四割の問で収まっている︒
これに対して︑卸・小売業やサービス業な
どの第三次産業では・求人の減少につれて︑ ㈹
糊
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60 70(%
40 50
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46.4 60.3
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4.3
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仕事が、自分の性 格に合っているか 自分の能力や特技 が生かせるか 安定していて失業 のおそれがなさそ うか
おもしろそうな仕 事か
長く働ける仕事か 収入が多そうか 人と接することの
多い仕事か
その充足率は上昇している︒かつて建設業と
同じく求人充足率の低かった製造業の場合も︑
第三次産業で十分吸収しきれない就職者が流
れ込み︑次第にその求人充足率が上昇してい
った︒ すなわち︑建設業は︑他の産業の求人充足
率の伸びにとり残されている︒今日の建設業
の状況は︑かつてのように高卒者を他の産業
と引き合うのではなく︑他の産業では需要が
減り︑就職を諦める者まで出ている中で︑﹁敬
遠﹂とか﹁すれ違い﹂が起きているという問
題なのである︒
会社や人のために 役立つ仕事か 将来発展する職業 か
将来独立できる可 能性があるか イメージのよい職 業か
休日や休暇が多く 時間のゆとりがあ
りそうか
希望決定群(N=3792)
希望未決定群(N=2926)
(三つまで選択)
(資料出所:黙灘義烈牽校生の購望に関する)
そして︑このような問題の背景を見る際︑
高卒者の価値観や好みだけで片づけるのでは
なく︑職業教育との関連にも目を向けてみた
いと思う︒
まず︑高校生は仕事に何を求めているのだ
ろうか︒最近の若者は﹁新人類﹂などともて
はやされるが︑職業希望やその選択の基準を
聞いてみると︑職業についての考え方の大枠︑ は︑大人たちと変わらないように思う︒ともあれ︑ここでは﹁安定志向﹂と﹁スペシャリスト志向﹂という二つにまとめてみよう︒ まず高校生の職業観の一つの柱は︑安定・安全といった志向である︒さらにいえば︑ブランドで選ぶとか﹁寄らば大樹の陰﹂といった選択も類似しており︑こうした志向は︑大人たち同様︑あるいはそれ以上に強いように思える︒希望する職種でいえば︑公務員や事務職の希望が多く︑また実際の可能性以上にあげられている︵雇用職業総合研究所﹃高校生の職業希望に関する調査研究報告書﹄一九八六年︶︒また︑図2の職業を選択するときの重視条件では︑職種希望が明確でない生徒のばあい︑ ﹁安定していて失業のおそれがなさそうか﹂ ﹁収入が証そうか﹂ ﹁休日や休暇が多く︑時間のゆとりがありそうか﹂などを重視しようとしている者が多い︒ もう﹈方では︑ ﹁仕事が︑自分の性格に合
っているか﹂ ﹁自分の能力や特技が生かせる
か﹂ ﹁おもしろそうな仕事か﹂などが重要な
選択基準である︒こうした基準を重視してい
・るのは︑専門・技術職を希望する生徒たちで
ある︒この職種への希望も︑実際の就職可能
性以上に多く集まっている︒また︑将来的に
は﹁管理職﹂よりは﹁専門家﹂としてのキャ
リアを望んでいる高校生が多い︒これらに共
(16)
通する柱が︑仕事・職業キャリアを重視する
﹁スペシャリスト志向﹂である︒
①規模と職種
さて︑実際の就職動向に話を進めると︑図
3に示すように︑建設業の場合︑他の産業と
比べて中小の事業所が多く︑一〇〇人未満の
事業所への就職者が六割までを占めている︒
逆に︑金融・保険業や運輸・通信業ではほぼ
半数が一〇〇〇人以上の大事業所へ就職して
おり︑大きな差がある︒また︑この事業所の規
模の差は︑同時に賃金・休暇などの労働条件
や安定性の格差にもつながる︒
建設業の中で︑そうした産業とブランドイ
メージで互角に競争できるところは数少なか
ろう︒また︑建設業は︑そもそも毎回違った
注文を受け︑.その納期に合わせて仕事がスタ
ートする︒今後とも︑昌いろいろな労働条件の
改善が必要ではあるが︑こうした側面だけで
の勝負はあまり得策ではない︒つまり︑安定
志向を満たすことで若者を引きつけようとす
ることは.建設業にとっては︑なかなか難し
い課題である︒ とすると︑建設業の魅力は別のところで探
さねばならない︒これはちゃんとある︒図4
は︑それぞれの産業への就職者がどんな職種
につくのか比較したものである︒ここから︑
・専門・技術職へのチャンスを比べると︑建設
業では四一%と最も高く︑製造業ではわずか
一三%であり︑残りのほとんどが技能工・生
産工程の職業についている︒自分の能力や特
技を生かしたいスペシャリスト志向の若者に
とって︑建設業は魅力的な機会を提供できる
のではあるまいか︒
つまり︑安定志向をかなえることは難しく
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盤
灘雲
とも︑スペシャリスト志向を持つ若者を集め
ることは十分可能性があると見てよい︒もち
ろん︑資質や教育・訓練が伴っていなければ︑
それも単なる﹁可能性﹂に終わってしまうの
だが︒
②高校の学科と専門・技術職チャンス
そこで︑建設業就職者が受けてきた教育・
訓練をみてみよう︒図5は︑右には建設業就
職男子の出身学科︑左には産業計での高卒.就
職男子の学科構成を図示している︒学科の並
べ方は︑就職判子の建設業比率の高い学科の
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(N二84138)
計
建設業
製造業
運輸・
通信業
卸・
小売業
金融・
保険業
サービ ス業
圓300−499人
[Z] SOO−999人
□1,000人以上 E$ 2g人以下
ew 30−99人 匿ヨ100−299人
産 業 別
(資料出所:贈欝灘「高輪者の職業別進路に)
(17)
順である︒高卒就職男子の半数近くは工業系
学科出身であるが︑建設業への就職者はさら
に工業系学科に集中しており︑七割を占めて
いる︒ つづいて︑この工業系出身者だけを取り出
して︑その中の学科を細分してみると︑図6
のように︑特定の学科への集中がはっきりす
る︒ つまり︑工業系学科の中では︑土木学科・
建築学科は合わせて工業系就職者の一割︵男
子就職者の六%︶を占めているにすぎないけ
れども︑こと建設業就職者に関しては︑この
二学科で工業系学科の中で六割以上︵男子建
設業就職者の四三%︶を占めている︒この両
学科では就職者の半数近くは建設業へ集中し
ており︑教育と就職先との関連が密接である︒
このように︑工業系学科から建設業への就
職といっても︑密接な関連は土木・建築の二
学科のみである︒同じ工業系でも他の学科で
は目立った関連はなく︑農業・水産系などか
ら建設業への就職比率とほとんど同レベルで
ある︒ 建設業では︑専門・技術職へのチャンスが
大きいと指摘したが︑それもしかるべき教育
を受けていることが前提となる︒図7で︑建
設業における出身学科と職種の関連をみると︑
土木・建築の二学科で専門・技術職比率が高 く︑他に大きく水を開けている︒つまり︑現状の建設業で就職して生かすことができるのは︑主として土木技術や建築・設計技術である︒そして︑こうした求人がいくら余ってい
墾 難1糞灘難難
鎌i欝麟鱗灘i灘
蠣態繋鵜麟蝦麹霧i麟
灘 4 鷹
ても︑候補になり得る高卒者はごく少数であ 励 ︵る︒他の関連技術を持っている者が建設業で
活躍する機会は︑まだまだ小さいといえよう︒
事務 齧蜍Z術
その他不明
@ サーヒス販売 生産工程 保安
建 設 41.0 49.5
13.3
鷺
780
運輸通信 58%
サ造業
S7.3%
^輸業
S.4%
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@ス業P0.5%
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@4.5%
7 2 21 6 i7.0. 33.8 25 3
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@ 59.4 一
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15.3 12.9
34.7 98
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19.1 42 208
10.5 63.7 234
事務 保安 その他不明 サービス専門技術 販売 生産工程
(資料出所:雇用職業総合研究所「高卒就職者の職業別進路に関する研究」1988年)
最後に︑若者にとって建設業が魅力的な就
職機会であるための今後の課題を︑少し考え
てみたい︒課題の一つは︑これまでのハンデ
ィーであった﹁安定性﹂とか労働条件面につ ㌔♂
鑛
イ)産業計(N=35013)
商業(14.5%)
普通科
(32.60/o)
懲曲灘灘購鍮飾冤 翻冠揃 あ サ 。 轍輝藩.
ロ)建設業(N=2126)
その他(0.3%) 商業(4.5%) その他(O・1%)
樋科 .・:二:・
(16.3%) ・●・.・ ・ ・ 工業手斗 .。.㌦㌦㌦・.
(45.8%) .・●. .●・ .
農業、水産 (7.9%)
工業科(71.3%)
農業、水産(6.8%)
注)学科名不明を除く
(資料出所:雇用職業総合研究所「高卒就職者の職業別進路に関する研究」1988年)
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いて︑改善を一層進めることである︒
他方︑それだけでは消極策であり︑建設業
のセールス・ポイントを積極的に拡大する方
向がありはしないだろうか︒ここで専門・技
術職へのチャンスとして示唆したことである︒
ただし現状は︑建設業で就職してすぐ活用で
きるのは︑主に土木・建築技術に限定されて
いる︒
霧灘16顯1鞭麟糞懸顯_蕪麟馨欝嚢灘灘欝灘鑛鑛織
イ)産業計(N=l1299)
その他(3.9%)
化学系
(7.1foO ) zi
磁
機械系翻(43.0%)蓬
ロ)建設業(N ・ l163)
土木(5.1%)
化学系(1.0%)
X一 : :
鞭官㌦〜
fh1!X.一s
電気・
電子
(30.7%o)
電気・
電子
(20.9906)
副.=設
その他(4.1%)
土木 (25.1906)
デザイシ系 S−ifii!!1!!1 (2.6%)
建築(36.6%)
注)小学科名不明を除く
(資料出所:雇用職業総合研究所「高卒就職者の職業別進路に関する研究」1988年)
今後︑建設業における専門・技術職へのチ
ャンス拡大には︑土木・建築学科出身以外の
高卒者がどのようなキャリアをたどるかが焦
点である︒このため︑例えば①職業教育にお
いて小さな学科の枠を越えて関連分野の教育
を拡大すること︑②建設業でのデザイン・イ
ンテリア科など関連学科の人材を積極的に活
用すること︑③専門・技術職への転換を進め
るための在職中の教育訓練を整備すること︑
などが課題となろう︒
(o/0W0)
70 60 50 40 30 20 10
土木・ 電気・電子 機械系 商業科
(292) 建:築 (243)デザイン系(112)農業・水産科(95) 普通科
(426) (30) (167) (347)
工業系学科
(資料出所:雇用職業総:合研究所「高卒就職者の職業別進路に関する研究」1988年)
(19)