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ネットワークポリマー論文集 Vol. 39 No. 1(2018) 総説 ポリウレタンの製造およびその原材料の特徴ならびにそれらの最近の進歩 山崎 * 聡 概 要 ポリウレタン (PU) は, 化学的な意味で, ウレタン結合を有する高分子化合物と定義されているが, 工業的に, 多くの PU は, ウ

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【総 説】

山崎 聡

三井化学株式会社 研究開発本部

合成化学品研究所

〒 299-0265

千葉県袖ヶ浦市長浦 580-32

ポリウレタンの製造およびその原材料の特徴ならびに それらの最近の進歩

山崎 聡 概   要

ポリウレタン(PU)は,化学的な意味で,ウレタン結合を有する高分子化合物と定義されているが,工業的に,

多くの PU は,ウレタンのみならず,ウレアなどの分子凝集力が高い化学結合から構成されている。それゆえ,

広義には,それらの結合を形成する「イソシアネートから誘導される高分子」と定義されている。一般的に,

PU の製造プロセスおよび生産性は,イソシアネートの化学構造により大きく影響される。さらに,PU の物理 的性質を広く制御するために,多種多様な化学構造のポリオールが使用されている。そのため,PU の製造プロ セス,成形加工法および用途も多岐に渡っている。PU は,マスプロダクトの汎用性をもつ反面,少量多品種の 高い機能が求められるファインケミカルの側面があるため,絶えず高機能化や環境対応のための研究開発が行わ れている。本稿では,まず,イソシアネートおよびポリオールの化学について,概説した後,PU の製造プロセ スおよびその原材料の特徴ならびにそれらの最近の進歩について,紹介する。

1.緒言

1.1 イソシアネートの化学

PU は,大別して,イソシアネートおよび活性水素 化合物(ポリオール,ポリアミン,ポリチオール類な ど)との重付加反応によって形成される。PU の物性 は,イソシアネートやポリオールの化学構造,その配 合比および重合プロセスに大きく影響される。まず,

PU の合成を考えるうえで,イソシアネートおよびそ の反応を理解することが重要である。

Fig. 1に,工業化されている汎用イソシアネートを,

Fig. 2に,工業化されている主な特殊イソシアネート

の構造を示す1)

イソシアネートモノマーの生産量のうち,約 68%

が,ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI),次 いで,約 28%が,トリレンジイソシアネート(TDI),

残り約 4%が特殊イソシアネートと言われる脂肪族,

脂環式および芳香脂肪族イソシアネート群である。工 業的には,イソシアネートといえば,MDI および TDI に代表される芳香族イソシアネートとなる1)

芳香族イソシアネートは,MDI のように対称性が

高い,あるいは TDI のように平面性が高い分子構造 であるため,それらから誘導されるウレタンおよび/

またはウレア基を含むハードセグメントの凝集性が向 上しやすい。そのため,ポリオールから誘導される柔

Fig. 1 Chemical structure of common diisocyanate.

(2)

軟な分子セグメントであるソフトセグメント相とハー ドセグメント相とのミクロ相分離性が明確な高次構造 を形成するため,脂肪族/脂環式イソシアネートから 誘導されるポリウレタンと比較して,機械物性(特に,

弾性)および熱的性質(特に,軟化温度)の面で優れ た物性を発現する。しかし,芳香環にウレタン結合が 直結しているため,紫外線などの照射により,キノン 構造を形成しやすく,黄変しやすい課題を有している。

一方,脂肪族/脂環式イソシアネートは,黄変しにく いポリウレタンを製造することができるが,脂肪族イ ソシアネート基はポリオールとの反応性が遅いうえ,

通常,芳香族イソシアネート系ポリウレタンよりも,

機械物性や熱的性質の面で劣ることが多い。

Fig. 3に,イソシアネート基の主要な反応を示す1)

PU は,ポリオールの水酸基とポリイソシアネート のイソシアネート基との反応により形成されるウレタ ン結合を有する。それに加えて,フォームの分野では,

化学発泡剤となる二酸化炭素を発生させるため,水と イソシアネート基の反応に基づくウレア結合が形成さ れる。さらに,硬質フォームの分野では,断熱性に加 えて,耐熱性も要求されるため,イソシアヌレート結 合,カルボジイミド結合なども導入される。一方,コー ティング(Coatings),接着剤(Adhesives),シーラ ント(Sealants)およびエラストマー(Elastomers)

からなる用途(CASE 用途)において,コーティング 材,接着剤ではさまざまな結合が導入されている。ウ レタン,ウレア結合の他に,例えば,基材との接着性 や密着性を向上させるために,アロファネート結合や ビゥレット結合が,耐候性や耐熱性を向上させるため に,イソシアヌレート結合などが導入されている。

1.2 ポリオールの化学

ポリオールも多様な化学構造を呈している。一分子 中に二つ以上の水酸基を有する化合物をポリオールと Fig. 2 Chemical structure of specialty diisocyanate.

Fig. 3 Major reaction of isocyanate group.

(3)

総称する。ポリオールは,主に,エーテル,エステル,

カーボネートなどの繰返し構造から形成されており,

一分子中の平均の水酸基の数(平均官能基数)は 2 か ら最大 8 程度,さらに,数十から数万の分子量の範囲 を網羅する化合物である。

ポリオールの中で,プロピレンオキサイド(PO)

やエチレンオキサイド(EO)などのアルキレンオキ サイドを開環重合したポリオキシプロピレングリコー ル(PPG)の生産量が最も多く,約 70%を占めている。

PPG は,比較的,粘度が低いため,作業性に優れる。

エーテル結合から構成されているので,耐水性や低温 柔軟性に優れるうえ,平均官能基数のバリエーション が豊富である。そのため,PU の機械および熱物性を 制御しやすい。PPG の大部分は,軟質フォームや硬 質フォーム,シーラントに使用されている。アジピン 酸を用いたポリエステルポリオールは耐熱性や機械物 性に優れているが,耐水性(耐加水分解性)に劣る。

エステル系の中でも耐水性に優れ,さらに耐熱性を重 視した用途には,ポリカプロラクトンポリオール

(PCL)が用いられている。耐水性や耐菌性(防かび性)

が重視される用途では,ポリ(オキシテトラメチレン)

グリコール(PTMEG)が,耐久性が重視される用途 では,ポリカーボネートポリオール(PCD)が用い られる。PCD は,熱可塑性ポリウレタンエラストマー

(Thermoplastic polyurethane elastomer, TPU), ひ いては PU の中で最も高い耐久性を示すため,長期に

渡って繰り返し使用されるシート,フィルムやパッキ ンなどの用途に適している2)

1.3 PU の高次構造

PU は,学術的に,比較的分子量が大きいポリオー ルが主成分であるソフトセグメントおよびイソシア ネートおよび鎖伸長剤(または硬化剤)から構成され るハードセグメントを一次構造とするマルチブロック コポリマーに分類される。特に,PU のハードセグメ ント中のウレタン基および/またはウレア基は,それ らの水素結合に基づく分子間相互作用により,強固な 物理架構造を形成する。そのため,PU は,ソフトセ グメント相とハードセグメント相のミクロ相分離構造 が発達した高次構造を形成する。Table 1に,各種官 能基の凝集エネルギーを示す3)。ウレタンおよびウレ ア結合は,他の結合と比較して,非常に高い凝集エネ ルギーを有している。

Fig. 4に,PU の高次構造のモデル図を示す4)

Table 1 Cohesive energies for various functional groups Functional group Cohesive energy (kJ/mol)

-CH2- 4.94

-O- 3.35

-COO- 18.00

-OCOO- 17.58

-NHCOO- 26.37

-NHCONH- 50.23

Fig. 4 Schematic model for molecular and aggregation structure of polyurethane.

(4)

このミクロ相分離構造の形成は,他のポリマーと大 きく異なる特徴である。特に,ハードセグメント相の 凝集性が高く,良好なミクロ相分離構造を形成した PU は,伸長あるいは圧縮しても,元の形状に戻りや すい。すなわち,ゴム弾性に富んだポリマーとなる。

PU の合成処方にもよるが,ハードセグメント相の大 きさはナノオーダーであることが分かってきた5)。一 方,PU の用途によって,その高次構造は異なる。

Fig. 5に,PU の用途と高次構造のモデル図を示す6)

特に,エラストマーは,それらの機械物性の向上や 成形性の改良のために,化学架橋構造の他に,ミクロ 相分離構造の制御が重要となってくる7)

2.PU の製造

2.1 概要

PU の製造プロセスの約 80%強は,ポリオール成分 およびイソシアネート成分の二液をかくはん混合し て,型への注入,基材へのコーティング,ラミネート 接着あるいはスプレーにより反応硬化する方法(2 液 成分混合硬化(2K))であり,現場で施工できるメリッ トがある。この方法に加えて,イソシアネート基末端 PU プレポリマーを空気中の水分と反応させて,ゴム 弾性体を形成させる湿気硬化法が挙げられる。また,

ポリイソシアネート化合物のイソシアネート基を低分 子量の活性水素化合物で保護したブロックイソシア ネートをポリオール成分に混合して一液で反応硬化さ せる方法(1 液成分硬化(1K))が挙げられる。さらに,

ポリエチレン,ポリプロピレンなどの熱可塑性ポリ マーと同様,ペレットあるいはパウダー形状から,射 出,押出,インフレーション,発泡などの熱可塑成形 する方法が挙げられる。このように,PU は他のポリ マーと異なり,多様なプロセスを経て,製造すること ができる。

次に,これらの製造プロセスをフォームと CASE 用途に大別して説明する。

フォームはワンショット法で製造されている。その 製造プロセスは二つに大別される。一つ目は,ポリオー ル,発泡剤の起源となる水,触媒,整泡剤などの活性 水素化合物をあらかじめ混合して調製したレジンプレ ミックスとポリイソシアネートとを混合かくはんした 反応混合液を連続的にベルトコンベアに注入して,反 応硬化させるスラブストック法である。二つ目は,加 熱した型(モールド)に反応混合液を注入して,モー ルドに合わせた形状を連続的に製造するモールド法で ある。スラブストック法はフォームの大量生産に向い ている。ただし,フォームを成形後,切断,裁断加工

Fig. 5 Schematic model for super order structures against various applications of polyurethanes.

(5)

などが必要である。一方,モールド法はスラブストッ ク法と比較して,フォームの生産性は劣るが,複雑な 形状に沿ったフォームが容易に製造できるメリットが ある。さらに,硬質フォームでは,主に住宅,タンク の断熱材として,スプレーして製造する方法あるいは 金属,他のプラスチックにラミネートする方法などに 適用されている。前述したように,硬質フォームは断 熱材としての多用されている。そのため,過去から,

熱伝導率が低く,オゾン層を保護する物理発泡剤の適 用に関する検討が盛んに行われている。古くは,クロ ロフルオロカーボン類が使用されていたが,1990 年 中頃では,ハイドロクロロフルオロカーボン類に代わ り,さらには,昨今では,塩素がなく,地球温暖化係 数が低いハイドロフルオロカーボン類に代替されてき た。

次に,CASE 分野について説明する。本分野では,

ポリイソシアネートを誘導化もしくはポリオールと反 応させたイソシアネート基末端ウレタンプレポリマー を合成し,それらと活性水素化合物を反応させて,

PU を製造する方法が多い。コーティング,接着剤は,

ビゥレット,アロファネートあるいはイソシアヌレー ト基などを含有するイソシアネート誘導体とポリオー ル類とを反応させる 2K およびブロックイソシアネー ト技術を活用した 1K システムが多い。接着剤の一部 でホットメルト型 TPU が適用されている用途もある。

これらの用途では,地球温暖化に関わる二酸化炭素や 有機溶剤の排出を削減するといった環境規制に対応す るため,低温で反応硬化できる PU,あるいは水系や 無溶剤化が広く検討されている。シーリングについて も 2K および 1K システムが多い。

エラストマーのうち,熱硬化性 PU は,イソシアネー ト基末端 PU プレポリマーと硬化剤とを反応させる 2K システムだが,TPU は前述したプロセスとは異な る。大部分の TPU は,ペレットの形状とするために,

塊状重合法で製造されている。以下,TPU の製造プ ロセスについて説明する2)

ポリオール,鎖伸長剤である短鎖グリコールおよび ジイソシアネートを同時に重合させるワンショット法 と,ポリオールとジイソシアネートとをあらかじめ反 応させて,PU プレポリマーを合成後,短鎖グリコー ルを添加し,重合させるプレポリマー法に大別される。

これらの方法を用いて,バッチ法,バンドキャスティ

ング法および反応押出法によって,TPU は工業的に 製造されている。これらの製造方法のうち,バンドキャ スティング法と反応押出法は連続プロセスであり,現 在,最も広く採用されている。バッチ法とは,所定温 度に調整したポリオールと短鎖グリコールに,ジイソ シアネートを添加し,通常,数分間程度かくはん後,

該反応混合液をトレイに移液する。その後,加熱して 固化させた後,さらに重合反応を進めて,樹脂塊を得 る。その樹脂塊を切断し,粉砕後,押出機を用いてペ レットを製造する。バッチ法だと,幅広い硬度あるい は溶融粘度の TPU の製造が可能であるが,ペレット を得るまでの工程が非常に長いことが欠点である。二 つ目の方法であるバンドキャスティング法は,ポリ オール,短鎖グリコールおよびジイソシアネートをミ キシングヘッドに送液し,素早くかくはん後,その反 応混合液を連続的に所定温度に調整されたコンベア上 に供給し,TPU を重合する。得られる形態は板状で あるため,それを細かく切断後,押出機を用いてペレッ トを製造する方法である。この方法だと,連続的に TPU を重合することが可能であるが,原料を混合後,

オープンな状態に解放されるため,蒸気圧が高い脂肪 族イソシアネート,例えば,ヘキサメチレンジイソシ アネート(HDI)や 4,4’- ジシクロヘキシルメタンジ イソシネート(H12MDI)などを使用する場合,労働 衛生上,過大な設備が必要となる。これらの課題を克 服するために開発された製造方法が反応押出法であ る。通常,反応押出法には,二軸押出機に代表される 高粘度のポリマーを混練できる装置が使用されてい る。重合温度を上昇させることにより,反応時間の短 縮化を図るとともに,押出機の先端にストランドダイ を装着することによって,重合反応からペレットまで 連続的に製造できるメリットを有する。この反応押出 法を基に,さまざまな TPU の製造技術が開発されて いる。

2.2 PU 製造の最近の進歩

真球状のパウダー TPU を製造する技術が最も大き な進歩と思われる。イソシアネートの多様な反応性を 利用して,溶媒中でパウダー状の TPU を製造する方 法である。溶媒法では,水中でポリウレタンを合成す る「水中懸濁重合法」8)と,ポリウレタンに対する溶 解性が低い有機溶媒中で合成する「非水分散重合法」9)

(6)

の二つが工業的に実用化されている。両方法ともに,

従来の方法では工業的に困難であった数百ミクロン オーダーの粒子径を有する TPU の合成およびその粒 子径の制御が可能である。まず,水中懸濁重合法につ いて概説する。この技術のポイントは,主にケチミン を用いて,水中で素早く粒子状の TPU を合成するこ とにある。ケチミンとは,脱水反応により,アミンを ケトンと反応させた化合物(C=N-R-N=C)であ り,ケトンがアミンのブロック剤の役割を果たしてい る。このケチミン化反応は可逆反応であるため,ケチ ミンに水が接触すると,アミンとケトンに解離する。

この原理を用いて,プレポリマーにジアミンから調製 したケチミンを混合させた後,水と高速でかくはん,

分散させることにより,水中で鎖延長反応を素早く完 結させる方法である10)。通常,この製造方法に用い るプレポリマーは,水に不溶であるため,水中にプレ ポリマーを分散させた時には,表面張力によりプレポ リマーが球状となる傾向を示す。表面張力の制御,す なわち得られる TPU の粒子径を精密に制御する場合 には,界面活性剤を添加することもある。重合反応が 終了した後,脱水,乾燥工程を経て,製品を得る。こ の方法により製造された TPU は,主にパウダースラッ シュ成形やトナーバインダー用途に使用されており,

150 μm 程度の真球状の粒子である。

次に,非水分散重合法について概説する。非水分散 重合は,主に,エチレン性不飽和基含有モノマーを用 いた粒子分散型のエマルジョンの合成に利用されてい る。この方法によるパウダー状 TPU の合成の技術ポ イントは,有機溶剤中で粒子の会合や凝集を抑制する ための分散安定化剤の使用である。分散安定化剤の構 造について,例えば,分子中に不飽和結合を有するポ リオールに炭素数 6 以上の炭化水素基からなる側鎖を 有するエチレン性不飽和モノマーを反応して得られる 化合物であることが例示されている11)。この分散安 定化剤をポリオールとイソシアネートとの合計量に対 して,数重量部用いることにより,有機溶剤中で粒子 径の揃った TPU が得られる。有機溶剤としては,n- ヘキサン,シクロヘキサンなどの炭化水素系の溶媒が 用いられている。重合反応が終了した後,水中懸濁重 合法と同様,乾燥工程を経て,製品となる。この方法 により製造された TPU も主にパウダースラッシュ成 形用途に使用されている。Fig. 6に,この方法により

製造されたパウダー TPU の走査型電子顕微鏡(SEM)

像を示す。本製造プロセスにより,粒子表面が真球状 のパウダーが製造できる。

これらの製造プロセスは共に,日本で開発されたオ リジナル技術であり,パウダー TPU は自動車内装材 を中心として,広く実用化されている。

3.原材料の最近の進歩

3.1 ポリオール

今後,益々伸長が期待される PU には,環境規制へ の対応が求められている。環境規制への対応は,PU の機能の向上にほかならない。まず,ポリオールであ る PPG の高機能化が挙げられる。二酸化炭素の排出 を抑制するために,自動車のシートクッションに用い られる軟質フォームの軽量化のニーズが高い。それと 同時に,乗り心地性の向上も求められている。軟質 フォームに用いられる PPG では,PO のアニオン重 合反応過程でモノオールが副生することが知られてい る。このモノオールは PU の鎖延長反応を抑制するた め,軟質フォームの軽量化およびそれに伴う乗り心地 性も損ねていた。このモノオールの副生を抑制するた めに,有機分子であるホスファゼンを触媒とした高純 度 PPG が開発され,実用化されている12)Fig. 7に ホスファゼン触媒の構造を示す13)

ホスファゼン触媒は,PO と共に EO との共重合も 可能であるため,モールド成形に利用されている分子 末端が 1 級水酸基の PO/EO ブロック共重合 PPG の 製造が容易である。そのため,主に,高弾性の軟質ポ リウレタンフォーム用途を中心に実用化されている。

一方,ホスファゼン触媒の他,このモノオールの副 生を抑制する触媒として,複金属シアン化錯体(Double Metal Cyanide, DMC)が挙げられる13)。DMC 触媒は,

Fig. 6 SEM image for thermoplastic polyurethane particles.

(7)

配位アニオン重合機構により,活性水素化合物への PO の開環重合反応が進行する。DMC 触媒は,PO の 重合活性が高く,しかもモノオール副生量も低い優れ た触媒である。そのため,分子末端に EO 共重合を必 要としないスラブ成形の軟質ポリウレタンフォームや 高分子量 PPG が必要とされているシーラントの用途 を中心に実用化されている。ただし,DMC 触媒は,

アルキレンオキサイドの重合活性の高さから,PO を 重合させた後,EO を共重合することが困難である13)。 PPG の分子成長末端での触媒の連鎖移動速度よりも,

EO の重合速度が優先し,その単独重合体が副生する。

その他,グリセリンなどの極性低分子開始剤を実質的 に使用できない点などが挙げられる。前者の課題,特 に,PO/EO のブロック共重合を実現するために,

DMC 触媒で PO の付加重合後,別のリアクターに触 媒を含んだ PPG を移し,アルカリ金属もしくはその 性質に類似した触媒を用いて,EO を共重合させるプ ロセスが必要である。

低モノオール PPG に加えて,1 級水酸基化率が高 い PPG も開発され,実用化されている14)。PO のア ニオン重合反応においては,β- 開裂が支配的である ため,得られる PPG の分子末端は 2 級水酸基の形態 が多い。イソシアネートとの反応性を向上させるため,

前 述 し た よ う に,PO の 重 合 後,EO を 共 重 合 し,

PPG の分子末端の 1 級水酸基化率を向上させている。

この方法だと,親水性の EO の使用量が増すため,得 られる PU の湿潤下における物性が低下するなどの課 題があった。この課題を解決するために,トリス(ペ ンタフルオロフェニル)ボラン(B(C6H53))を触媒

とした高反応性 PPG が開発された14)。さらに,この ルイス酸系触媒をチューブ型反応管に充填して,PPG を連続的に工業生産した製造プロセスが検討された。

本触媒では,PO のアリルエーテルへの異性化反応は 抑制されるが,PO のアルデヒドへの副生が生じるこ とが課題であった。副生したアルデヒドはアルコール と反応し,最終的にジオールに変換される。PO のア ルデヒドへの副生を抑制するために,各素反応の反応 速度解析に基づく PO の合成温度のパターンを構築 し,フィルムエバポレーターを反応管に連結させ,反 応と交互に連続的にアルデヒドを留去するプロセスが 採用された14)

カーボンニュートラルのコンセプトにより,植物に 由来する再生可能原料を活用したポリオールの開発も 旺盛である。その一つとして,非可食のひまし油をベー スに,有機合成の技術を駆使したバイオポリオールが 開発され,自動車のシートクッションに搭載されてい る15)。ひまし油や大豆油などの植物資源の活用16), 17)

の他,特殊な触媒を用いて,二酸化炭素を固定するポ リオールの合成技術が開発された。

その一つが,Fig. 8に示した反応スキームにより,

二酸化炭素,PO およびジオールを原料としたポリ エーテルカーボネートジオールである18)

この合成触媒は,コーネル大学が開発した N,N- ビ ス(サリチリデン)-1,2-シクロヘキシルジアミン(salcy)

を錯体とした遷移金属錯体(CoIII(salcy)OAc)と報 告されている19)。この遷移金属錯体は,従来提案さ れていた二酸化炭素と PO との共重合触媒よりも,反 応選択性や活性が高いメリットがある。現在,この技 術を活用したポリエーテルカーボネートポリオールに より,軟質,硬質ポリウレタンフォームや CASE 用 途にて市場開発が進んでいる。

さらに,上記した DMC 触媒のリガントを改良する ことにより,PO,二酸化炭素を原料としたポリエー Fig. 7 Mitsui’s Phosphazene catalyst.

Fig. 8  Synthetic scheme of poly (ether-carbonate) diol using transition metal complex catalyst.

(8)

テルカーボネートポリオールが工業化された20)。ス ラブストックの軟質ポリウレタンフォームとして,

ベッド,ソファーなどに採用されている。

古くから,アルキレンオキサイドと二酸化炭素とを 共重合する触媒技術の開発が行われてきたが,工業化 には至らなかった。しかし,ここ数年,触媒技術の著 しい進歩により,二酸化炭素を固定化したポリオール が工業化され,各種 PU への用途展開が進んでいる。

3.2 イソシアネート

MDI および TDI が大部分を占めるイソシアネート モノマーの工業化は,ポリオールと比較して,非常に ハードルが高い。このような状況下,視力矯正用レン ズ,コーティング材,接着剤およびシーラントの原料 として使用されている m- キシリレンジイソシアネー ト(XDI)の大型の連続製造プラントが立ち上がり,

工業化された。XDI はアラルキルジイソシアネート であり,イソシアネート基が直接,芳香環に連結して いないため,それから得られる PU は難黄変性を示す。

さらに,XDI のアルコールとの反応性は,脂肪族イ ソシアネートよりも高く,芳香族イソシアネートのそ れに近いため,PU の生産性が向上する21)

2 種類の新規なイソシアネートモノマーが開発さ れ,実用化され始めた。前述したように,CASE 用途 では,紫外線などにより変色しない PU が望まれてお り,脂肪族あるいは脂環式の構造を有したジイソシア ネートおよびその誘導体が用いられている。しかし,

これらの脂肪族ジイソシアネートを用いた PU は,耐 久性の指標である長期耐候(光)性に優れるが,MDI や TDI などの芳香族ジイソシアネートを用いた PU と比較して,力学物性および耐熱性(軟化温度)の面 で大きく劣っている。一方,市場では,簡単な成形方 法にて,有機溶剤などを使用せず,薄く,軽い,耐久 性に優れた PU が求められている。このような市場 ニーズに対応するために,芳香族ジイソシアネートの 特長である優れた力学物性および耐熱性の発現と同時 に,耐候性に優れた PU を与えうる新規な脂肪族ジイ ソシアネートが開発された。そのイソシアネートが,

Fig. 9に示すトランス -1,4- ビス(イソシアナトメチル)

シクロヘキサン(FORTIMO1,4-H6XDI)である22)-24)。 スポーツグッツ,ウエアラブル材料および工業部材を 初めとして,実用化され始めた。

二つ目は,Fig. 10に示した新規な直鎖状脂肪族ジ イソシアネートの 1,5- ペンタメチレンジイソシアネー ト(STABiO PDI 25), 26)である。

脂肪族ジイソシアネートを変性し,多官能化したポ リイソシアネートを硬化剤とする PU のコーティン グ,接着剤の用途では,その耐溶剤性や,主剤である ポリオールとの硬化速度(生産性)を向上させたい市 場ニーズがある。これらのニーズに対して,植物原料 由来のイソシアネートである 1,5- ペンタメチレンジイ ソシアネート(STABiO PDI)が世界で初めて 工業化され,コーティング,接着剤分野を中心に採用 が始まった。STABiO PDIのバイオマス度は 71%

であることが報告されており,工業化されているイソ シアネートの中では,最も高い。

このようなイソシアネートモノマーの他,環境規制 に対応した水系イソシアネート硬化剤や低温硬化型の ブロックイソシアネート27)も開発され,実用化され 始めた。従来,水系イソシアネート硬化剤の親水性セ グメントとして,オキシエチレン基が導入されていた が,得られる PU の耐水性が低下する課題が残されて いた。そこで,より水への分散性を向上させると共に,

耐水性の低下を抑制するために,スルフォン酸塩を親 水性セグメントとした水系イソシアネート硬化剤が開 発された28)。さらには,イソシアネート硬化剤とし て広く使用されている対称性構造のイソシアヌレート に対して,より低粘度のイソシアネートの 3 量体(イ ミノオキサジアジンジオン)が開発された。非対称構 造に制御することにより,分子間相互作用が低減し,

低粘度の 3 官能性イソシアネート硬化剤となり得るこ Fig. 9  Trans-1,4-bis (isocyanatemethyl) cyclohexane

(FORTIMO 1,4-H6XDI).

Fig. 10 1,5-pentamethlylenediisocyanate (STABiO PDI).

(9)

とが報告されている29)Fig. 11に,その構造を示す。

PU の製造に関わる硬化時間および温度の低下によ る省エネルギー化,溶剤系から水系,ノンソルベント 系への変換など,環境規制に対応しつつ,PU の機能 も向上させることが必要となっている。これらの社会 的ニーズに対応するためには,新規なイソシアネート モノマーに加えて,イソシアネートの化学を応用した 新規な誘導体の開発が不可欠である。

4.結論

PU の製造および原材料の特徴ならびにそれらの最 近の進歩を中心に概説した。2000 年以降の技術動向 を鑑みると,多くの日本初の技術が開発,実用化され ている。多様な化学構造を有する原材料,処方および さまざまな加工技術を適用できる PU は,我々の生活 になくてはならない高分子材料である。国連で採択さ れた Sustainable Development Goals(SDGs)の実現 のためにも,経済,環境および社会に配慮した機能性 PU の開発が今後も期待される。

参考文献

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(10)

[Review]

Features for Production Method and Raw Material of Polyurethanes and Their Latest Progress

Satoshi Yamasaki*

* Synthetic Chemicals Laboratory, R&D Center, Mitsui Chemicals Inc.

(580-32, Nagaura, Sodegaura-shi, Chiba 299-0265, Japan)

Synopsis

Polyurethane (PU) is defined as a polymer having urethane bond in the chemical structure, but most of PU are industrially composed not only of urethane but also chemical bonding having high molecular cohesion force such as urea.

Therefore, in a broad sense, PU is defined as “polymer derived from isocyanate” that forms those bonds. Generally, the production method and productivity of PU are greatly influenced by the chemical structure of isocyanate. In addition, a wide variety of polyol in chemical structure are used in order to widely control the physical properties of PU. Therefore, the production process, molding process and application of PU are also diverse. While PU has versatility of mass products, on the other hand, there are aspects of fine chemicals that require high functions with small quantities of various type, so research and development for constantly improving functions and environmental issues are being carried out. In this paper, after outlining the chemistry of isocyanate and polyol, the features for production method and raw material of PU, and further their latest progress are introduced.

(Received October 19, 2017 ; Accepted December 15, 2017)

Key-words : Polyurethane, Isocyanate, Polyol, Production, Physical property, Latest progress

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