自転車事故と事故現場の環境との関係 10D8104018K 額田博己
中央大学理工学部情報工学科 田口研究室 2014 年 3 月
あらまし:本研究では, 自転車事故に対して事故現 場における周囲の環境に着目して評価を行う. まず 事故の現状・傾向を分析し, さらに交通量や道幅な どの道路環境のデータを用いて様々な角度から自転 車事故と周囲の環境との関連性について考察する.
キーワード:決定木, アソシエーションルール分析, 交通事故
1 序論
近年, 移動手段として便利で誰でも簡単に乗車で きることから, 自転車を利用する人が増加しており, それに伴い自転車事故件数も増加している.
事故の主な原因は, 安全不確認や一時不停止など の事故当事者の意識行動によるものが多いが, それ 以外にも事故現場の周囲の環境に事故が誘発される ような原因があると考えられる. 本研究では, それ ら外的要因を明らかにすることで, 自転車事故の低 減・防止に繋げることを目的とする. 事故現場の交 通量及び道幅などのデータを解析し, どの要素が事 故と関わりが強いのかを評価する.
2 使用するデータ 2.1 事件事故発生マップ
埼玉県警察で掲載されている事件事故発生マップ より, 埼玉県内における交通事故の詳細を知ること ができる[1].
2.2 道路交通センサス
平成 17 年度及び 22 年度道路交通センサスの一般 交通量調査データを使用する.
2.3 対象とする範囲
さいたま市周辺の領域(標準地域メッシュコード 533964,533965, 5333974, 533975 の範囲)における 自転車事故を対象とする[2].
3 施設に着目した自転車事故環境の評価
2 章から得られたデータをもとに, 施設と自転車 事故の関係を調べる.
3.1 駅周辺の自転車事故環境の評価
埼玉県内でも駅利用者が多く, 駅周辺の交通量が 大きいと考えられる大宮駅と浦和駅の 2 つを対象と する. 駅を中心として距離 100m ごとに
事故密度(𝐧/𝐦
𝟐) = 事故件数 [𝐧]
対象範囲面積 [𝐦
𝟐] を求め, どの範囲までが事故と強い結びつきがある かを調べる.
図 3.1 で大宮駅と浦和駅のみの事故密度を調べて みると, 両駅に似た傾向が見られた. 両駅とも範囲 200m の事故密度が最大値となっており, 500m 以降は 事故密度が安定している.
両駅それぞれの中心から距離 200m の範囲の特徴 を調べると, 両駅とも駅から距離 200m 以内の範囲 に大型ショッピングモールを複数構えており, それ らの施設付近の交差点での事故が多く見られた.
図 3.1 駅からの範囲別事故件数 4 カテゴリ別事故データに着目した自転車事故の 分析
4.1 アソシエーションルール分析
2.2 節のカテゴリ別データに対し, アソシエーシ ョンルール分析を行い, 道路環境以外のデータが事 故にどのような影響があるのかを調べる.
4.1.1 概要
アソシエーションルール分析とは「データベース に潜む興味深いルール(パターン)を列挙すること」
を目的とした分析手法である[3].
4.1.2 評価指標
アソシエーションルール分析ではルールの探索, 評価をする上で支持度(support)と信頼度
(confidence)の 2 つの値を主に利用する. 以下の式 では探索するデータベースの集合を D, その要素数 を|D|, アイテム集合を I, 任意のアイテム集合を X, Y ⊆ I と表記している.
support (X ⇒ Y ) = count ( X ∪ Y )
| D | (4.3)
confidence (X ⇒ Y ) = count ( X ∪ Y )
count ( X ) (4.4) 4.2 分析結果
<重傷度と年代>
重傷事故での高齢者の割合が大きく, また 死亡 事故における高齢者の割合も大きくなっており, 半 分以上の死亡事故に高齢者が関わっている. この結 果から, 高齢者は重症度の重い事故を引き起こしや すい傾向にあると分かる. また, 分析の結果[前 提]:重傷 or 死亡, [結論]:高齢者の場合に Lift 値が 高いことから, 前提が結論に効いていることがわか る.
図 4.1 年代別に見る事故の重さ
0 2 4 60 500 1000
10 0 20 0 30 0 40 0 50 0 60 0 70 0 80 0 90 0 10 00 11 00 12 00 13 00 14 00 15 00
密度[n /
㎡]
事故件数
[n]
駅からの距離[m]
平均件数 最大件数 全駅平均密度
大宮密度 浦和密度
1 1000
軽傷 重傷 死亡 事
故 件 数
事故の重さ
一般 高齢者 子供
5 道路環境に着目した自転車事故の分析 5.1 決定木(Decision Tree)
交通量・速度・道幅などの道路環境データに対し 決定木により得られたデータから, 道路環境が事 故とどのような関係があるのかを調べていく.
5.1.1 概要
決定木とは, 意思決定や物事の判断を多段階にわ たって行うとき, その各段階での条件分岐の様子を 階層的な木構造で表現したものである[4].
5.1.2 評価指標
|𝑆| をノードのデータ数, |𝐶
𝑗| をクラス𝐶
𝑗のデー タ数, A を分割に用いた変数, 𝑆
𝑗を分割後のノー ドのデータ数とすると
<数値の場合>
目的変数が数値の場合は, ノードの分散と, 分割 後のノードの分散から改善度を計算する. ノードの 分散は以下のようになる.
d(S) = ∑(𝑎 − 𝑚𝑒𝑎𝑛(𝑎))
2𝑎∈𝑆
(4.1) ただし
mean(a) = 1
| 𝑆 | ∑ 𝑎
𝑎∈𝑠
(4.2) よって分割による改善度は以下のようになる.
gain (S, A ) = d(S) − ∑ 𝑑(𝑆
𝑗 𝑗)
| S | (4. 3 ) 5.2 分析結果
<交通量>
図 5.1 より自動車と自転車の交通量の変化が似て おり, 事故件数が増加するにつれ交通量も全体的に 増加している. 交通事故は車両同士の衝突により起 こるものなので, 付近事故件数が増加するに伴って 交通量が大きくなるという予想はできていたが, こ の図から車両の交通量が事故に関係あることが確認 できた.
図 5.1 付近事故件数別の自動車と自転車の交通量
<道幅>
図 5.2 より事故件数が多くなるにつれて道路幅と 歩道幅も大きくなっており, 道幅が広がるにつれ自 動車と自転車の交通量が増加することがわかる. ま た, それにともない車線数も増えていた. しかし, 歩道が広がることで通行がしやすくなり, 自動車と の衝突する可能性が下がり事故が減少するように思 うが, むしろ増加している. このことから事故が交 差点付近で起きやすいと考えられる.
図 5.2 自動車交通量と道幅
<速度>
図 5.3 では自動車交通量と速度の関係を調べる.
自動車交通量と速度に同様の変化の傾向があり, 事 故が多い地点では自動車の交通量が多く, また平均 速度も早いということがわかる. 交通量が多く速度 が速い場所は, 大きな交差点があることが多い.
図 5.3 自動車交通量と速度 6 まとめ
駅やデパートなどの人が集まりやすく, 交通量の 多い施設の近い範囲で事故が多いことから, 建物と 事故に関係性があることが確認できた. また付近の 事故件数と比べることで, 交差点での事故が多く, そのような交差点は車両の交通量が多いだけでなく, 道幅が広くて速度も速いことが分かった. それ以外 にも歩道橋や見通しの良さなども事故と関係すると 考えられる.
今後の課題として, 今回扱った交通量データは主 に細街路ではない国道などの一般道路であるため, 細街路の交通量を扱うことが挙げられる. そして, 天気・勾配・道の見通しの良さなどの要素を取り入 れることで, さらに事故を引き起こしやすくしてい る周囲の環境を知ることができると考えられる.
参考文献
[1] 埼玉県警察ホームページ, “事件事故発生マッ プ”, (オンライン), 入手先
<https://webmap.police.pref.saitama.lg.jp/mach ikado/webmap/infopage.html>.
[2] 総務省統計局, “地域メッシュ統計の特質点沿 革, (オンライン), 入手先
<http://www.stat.go.jp/data/mesh/pdf/gaiyo1 .pdf>.
[3] 株式会社数理システム, Visual Mining Studio 技術資料バージョン 7.3, 2012.
[4] 石川博, 新美礼彦, 白石陽, 横山昌平, 未来へ つなぐデジタルシリーズ 11 データマイニングと集
合知 – 基礎から Web, ソーシャルメディアまで- pp.74-80, 2012.
0 10000 20000 30000 40000 50000
0 500 1000 1500
自 動 車 交 通 量[ 台]
自転車交通量[台]
35 32.5 30 27.5 25 22.5 20
17.5 15 12.5 10 7.5 5
0 5 10 15 20
0 1 2 3 4
道 路 幅[ m]
歩道幅[m]
35 32.5 30 27.5 25 22.5 20
17.5 15 12.5 10 7.5 5
0 10000 20000 30000 40000 50000
0 20 40 60
自 動 車 交 通 量[
台] 速度[km/時]
35 32.5 30 27.5 25 22.5 20
17.5 15 12.5 10 7.5 5
事故件数
事故件数
事故件数