電動アシスト自転車の事故分析
山中 明彦 概要
排気量 50cc 以下の原動機付自転車(以下、「原付」という。)は、長年、生活の足として多くの方に 利用されてきたが、その国内出荷台数は年々減少傾向にある。一方、電動アシスト自転車(以下、「電動 アシスト」という。)の出荷台数は年々増加を続け、平成 20 年には原付の出荷台数を上回った。
交通事故においても同様の傾向にあり、原付乗員の死傷者数は減少しているのに対し、電動アシスト 乗員の死傷者数は年々増加している。
電動アシスト乗員の死傷者は、「高齢者(65 歳以上の人をいう。以下同じ。)」及び「女性」が多くを 占めている。このため、「高齢者」及び「女性」に焦点を絞り、自転車(電動アシストを除く一般の自転 車。以下同じ。)や原付との比較から、電動アシスト事故の特徴を分析した。
1 背景及び目的
図1に自転車、電動アシスト及び原付の国内出荷台数の推移を示す(出典1)、2))。
平成13年から21年で、原付の出荷台数は年々減少を続け、54万台から26万台とほぼ半減した。一 方で、電動アシストの出荷台数は年々増加し、19 万台から 36 万台とほぼ倍増した。このため、平成 20 年には電動アシストの出荷台数は原付の出荷台数を上回った。
図1.国内出荷台数の推移
図2に自転車、電動アシスト及び原付の車両保有台数の推移を示す(出典1)、3)、4))。
原付の保有台数は 935 万台から 769 万台と約2割減少した。一方で、自転車と電動アシストとの合計 は 6,505 万台から平成 20 年には 6,910 万台と若干増加した。電動アシストについては保有台数データが 公表されていないため、平成8年からの出荷台数を累計すると、平成13年の102万台から21年の315 万台と約3倍になり、自転車に対する割合は約4%となった。
自転車 6 53 6 28 59 9 56 6 51 9 45 4 4 4 5 4 8 3 4 2 6
原付 54 54 5 4 5 0 4 7 4 8 4 6 3 0 2 6
電動アシス ト 19 20 2 1 2 4 2 5 2 7 2 8 3 2 3 6
1 9
3 2
3 6 5 4
3 0
2 6 6 53
4 83
4 26
0 1 00 2 00 3 00 4 00 5 00 6 00 7 00 8 00
0 1 0 2 0 3 0 4 0 5 0 6 0 7 0 8 0
H 13 H 14 H 15 H 16 H 17 H 18 H 19 H 20 H 21
自 転 車 の 出 荷 台 数( 万 台) 電
動 ア シ ス ト 及 び 原 付 の 出 荷 台 数( 万 台)
電動アシスト 自転車
原付
図2.車両保有台数の推移
図3に乗員死傷者数の推移、図4に乗員死者数の推移を示す。
原付乗員の死傷者数は平成13年の119,515人から21年には72,005人と4割減少した。自転車乗員 の死傷者数は平成 16 年まで増加したが、その後減少を続けている。一方で、電動アシスト乗員の死傷者 数は平成 13 年の 615 人から 21 年には 1,112 人と8割増加した。このため、電動アシスト乗員の死傷者 数は、自転車乗員の死傷者数に対し、1%弱まで増加した。
原付乗員の死者数は平成 13 年の 753 人から 21 年には 359 人と半減した。一方で、電動アシスト乗員 の死者数はこの間 19 人から 29 人と5割増加した。自転車乗員の死者数は年々減少を続けているが、下 げ止まり傾向にある。電動アシスト乗員の死者数の自転車に対する割合は4%まで増加した。
図3.乗員死傷者数の推移
原付 9 35 9 1 4 8 9 2 8 7 4 85 7 83 5 8 13 7 90 7 6 9 自転車+電動アシス ト 6 ,5 05 6 ,4 3 8 6 ,8 5 9 6 ,7 9 5 6,88 8 7,18 9 6 ,9 58 6 ,9 10 -
電動アシス ト 1 02 1 2 2 1 4 3 1 6 7 19 2 21 9 2 47 2 79 3 1 5
自転車 1 77 ,19 6 1 79,898 18 3,4 42 18 9,4 51 184 ,61 8 1 74 ,52 3 1 70,867 16 1,8 33 15 5,1 64 原付 1 19 ,51 5 1 17,215 11 1,0 48 10 9,6 21 104 ,15 5 93 ,62 7 88 ,44 2 7 8,3 52 7 2,0 05
電動アシス ト 61 5 675 7 64 8 00 91 4 93 0 1 ,05 6 1,1 34 1,1 12
1 77, 196
1 61, 833
1 55, 164
6 15 1 ,13 4 1 ,11 2
1 19, 515
7 8,3 52
7 2,0 05
0 5 0,0 00 1 00, 000 1 50, 000 2 00, 000
H 13 H 14 H 15 H 16 H 17 H 18 H 19 H 20 H 21
死 傷 者 数( 人)
電動アシスト 自転車
原付 1 02
2 79
3 15 9 35
7 90
7 69 6 ,50 5
6 ,91 0
0 2 ,00 0 4 ,00 0 6 ,00 0 8 ,00 0 1 0,0 00
0 2 00 4 00 6 00 8 00 1 ,00 0
H 13 H 14 H 15 H 16 H 17 H 18 H 19 H 20 H 21
自 転 車
+ 電 動 ア シ ス ト の 保 有 台 数( 万 台) 電
動 ア シ ス ト 及 び 原 付 の 保 有 台 数( 万 台)
自転車+電動アシスト 原付
( H8年以降の出荷台数累計) 電動アシスト
図4.自転車及び原付乗員死者数の推移
表1に平成 20 年の乗員の保有台数当たり死傷者数と致死率(死傷者数に対する死者数の割合。以下 同じ。)を示す。
電動アシストの致死率は自転車の約6倍となっている。これは電動アシストの保有台数当たり死傷者 数は少ないものの、保有台数当たり死者数がほぼ同じであることによる。すなわち、電動アシストは事 故には遭いにくいものの、死亡事故に遭う可能性は自転車と同程度であると言える。
表1.乗員の保有台数当たり死傷者数と致死率(H20)
電動アシストは出荷台数の増加に伴い、死傷事故も増加傾向にある。今後、電動アシストの事故が問 題となることが予想されるため、以降電動アシスト事故を分析し、その特徴を明らかにする。
2 電動アシスト事故の特徴
2-1 全般
図5に電動アシスト乗員の性別・年齢層別死傷者数、図6に乗員の年齢層別死傷者数構成率を平成 13 年から 21 年までの 9 年間の累計で示す。
電動アシスト乗員の死傷者は年齢の上昇とともに増加し、65歳から 74歳をピークとしている。この ため、電動アシスト乗員の死傷者の半数は高齢者となっており、自転車や原付の乗員死傷者と比較し、
「高齢者」の構成率が高い。また、16 歳から 74 歳では女性の死傷者が男性を上回っており、「女性」の 構成率が高いことも特徴である。
自転車 9 73 97 5 94 8 83 4 8 19 7 87 7 09 68 8 66 6
原付 7 53 72 4 62 8 64 0 5 81 5 25 4 72 42 3 35 9
電動アシス ト 1 9 1 6 2 5 2 5 27 25 36 2 9 2 9
9 73
6 88
6 66
1 9 2 9 2 9
7 53
4 23
3 59
0 2 00 4 00 6 00 8 00 1 ,00 0 1 ,20 0
H 13 H 14 H 15 H 16 H 17 H 18 H 19 H 20 H 21
死 者 数( 人)
電動アシスト 自転車
原付
自 転 車 電 動 ア シ ス ト 原 付
保 有 台 数 当 た り 死 傷 者 数 ( 人 / 万 台 ) 2 3 . 4 4 . 1 9 9 . 2
保 有 台 数 当 た り 死 者 数 ( 人 / 万 台 ) 0 . 1 0 0 . 1 0 0 . 5 4
致 死 率 ( % ) 0 . 4 3 2 . 5 6 0 . 5 4
図5.電動アシスト乗員の性別・年齢層別死傷者数(H13-21 累計)
図6.乗員の年齢層別死傷者数構成率(H13-21)
図7に電動アシスト乗員の性別・年齢層別死者数、図8に乗員の年齢層別死者数構成率を示す。 電動アシスト乗員の死者は 86%が 65 歳以上の高齢者であり、自転車や原付と比較し、「高齢者」の構 成率が特に高い。
図7.電動アシスト乗員の性別・年齢層別死者数(H13-21累計)
男 26 8 8 7 88 1 25 15 5 28 9 69 2 7 86 3 09 2,79 9 女 18 5 16 2 3 4 1 5 08 57 3 1,19 6 1,49 3 7 02 41 5,20 1 計 45 3 24 9 4 2 9 6 33 72 8 1,48 5 2,18 5 1 ,4 88 3 50 8,00 0
男 1 1 1 1 5 7 3 0 49 35
女 0 0 3 3 1 1 0 4 5 32 7
計 1 1 4 4 6 1 7 7 5 81 42
0 5 00 1 ,00 0 1 ,50 0 2 ,00 0 2 ,50 0
1 5歳 以下
1 6-2 4歳 2 5-3 4歳 3 5-4 4歳 4 5-5 4歳 5 5-6 4歳 6 5-7 4歳 7 5-8 4歳 8 5歳 以上 死
傷 者 数( 人)
男 女
0 2 0 4 0 6 0 8 0 1 00
1 5歳 以下
1 6-2 4歳 2 5-3 4歳 3 5-4 4歳 4 5-5 4歳 5 5-6 4歳 6 5-7 4歳 7 5-8 4歳 8 5歳 以上 死
者 数( 人)
男 女
1 7
5 0
1 3 8 3
5 0
8 7
0 2 0 4 0 6 0 8 0 1 00
自転車 電動アシスト 原付
死 傷 者 数 構 成 率(
%)
6 4歳以下 6 5歳以上 N=2,799 人
N=5,201 人
N=1,576,992 人 N=8,000 人 N=893,980 人
N=130 人 N=101 人
図8.乗員の年齢層別死者数構成率(H13-21)
以上より、電動アシスト事故の特徴として、「高齢者」及び「女性」の死傷者数が多いことが挙げら れる。そこで、これらに焦点を絞り分析を進める。
2-2 高齢運転者事故の特徴
図9に電動アシスト運転者(1当及び2当)の年齢層別死傷者数の推移を示す。
平成 13 年から 21 年の間に、64 歳以下の死傷者数も増加しているものの、高齢者は更に増加しており、 ほぼ倍増している。
図9.電動アシスト運転者(1当及び2当)の年齢層別死傷者数推移
図 10 に高齢運転者(1当及び2当)の運転免許有無別死傷者数構成率を示す。
高齢者人口当たりの運転免許非保有率は 62%であるが、電動アシストの死傷者は 91%が「運転免許な し」と高く、自転車の 89%と比べて、有意な差は見られない。高齢者の電動アシストや自転車による死 傷者のほとんどが運転免許を所有していない。
図 10.高齢運転者(1当及び2当)の運転免許有無別死傷者数構成率(H13-21) 6 0
8 6
4 2 4 0
1 4
5 8
0 2 0 4 0 6 0 8 0 1 00
自転車 電動アシスト 原付
死 者 数 構 成 率
(
%)
6 4歳以下 6 5歳以上
2 88
4 91 3 08
5 85
0 1 00 2 00 3 00 4 00 5 00 6 00 7 00
H 13 H 14 H 15 H 16 H 17 H 18 H 19 H 20 H 21
死 傷 者 数(
人)
6 5歳以上
6 4歳以下
8 9 9 1
1 1 9
0 2 0 4 0 6 0 8 0 1 00
自転車 電動アシスト
死 傷 者 数 構 成 率(
%)
運転免許あり
運転免許なし
N=7,399 人 N=231 人 N=5,105 人
N=263,992 人 N=4,007 人
図 11 に高齢運転者(1当及び2当)の地形別死傷者数構成率を示す。
自転車は市街地での死傷者が 82%と多数を占めている。これに対し、電動アシストや原付は非市街地 での死傷者が約 1/3 を占めており、「非市街地」での死傷者数構成率が自転車より高い。
図 11.高齢運転者(1当及び2当)の地形別死傷者数構成率(H13-21)
図 12 に高齢運転者(1当及び2当)の事故類型別死傷者数構成率を示す。
電動アシストは「出会い頭事故」が半数を超えており、左折時や右折時の事故も含め、主に交差点で の事故が多い。電動アシストと自転車の事故類型は類似しているが、電動アシストでは若干「出会い頭 事故」の死傷者数の構成率が高い。原付は車両単独事故や追突事故が多いこともあり、出会い頭事故の 構成率は約4割と、電動アシストや自転車より低い。
図 12.高齢運転者(1当及び2当)の事故類型別死傷者数構成率(H13-21)
図 13 に高齢運転者(1当)の法令違反別死傷者数構成率を示す。
電動アシストは、原付に対して「信号無視」や「一時不停止」など、「止まる」という基本的な交通 ルールが守られていないことによる死傷者数構成率が高い。また、自転車に対してもこれらの違反の構 成率が高い。
ただし、ふらつきが少ないためか、ハンドル操作不適の構成率が自転車より低い。
1 8
3 1
3 7 8 2
6 9
6 3
0 2 0 4 0 6 0 8 0 1 00
自転車 電動アシスト 原付
死 傷 者 数 構 成 率
(
%
)
市街地 非市街地
N=263,992 人 N=4,007 人 N=117,857 人
0 1 0 2 0 3 0 4 0 5 0 6 0
人対車両 正面衝突 追突 出会い頭 追越追抜時 左折時 右折時 その他 工作物 転倒 その他 その他
車両相互 車両単独
死 傷 者 数 構 成 率(
%)
自転車 電動アシスト 原付
N=263,992 人 N= 4,007 人 N=117,857 人
図 13.高齢運転者(1当)の法令違反別死傷者数構成率(H13-21)
図 14 に高齢運転者(1当及び2当)の相手当事者別死傷者数構成率を示す。
電動アシスト、自転車及び原付の死傷者の約8割は、「自動車」相手の衝突事故で発生している。 相手当事者の「その他」には車両単独事故での工作物への衝突などが含まれており、車両相互事故で は、ほとんどが「自動車」相手の衝突事故である。
図 14.高齢運転者(1当及び2当)の相手当事者別死傷者数構成率(H13-21)
図 15 に高齢運転者(1当及び2当)の相手自動車危険認知速度別死傷者数構成率を示す。
相手当事者の多くが自動車のため、自動車相手の事故に限定し、相手自動車の危険認知速度別に死傷 者数構成率を比較した。
10km/h 以下の低速域での死傷者数構成率が約4割と高いが、電動アシストは自転車より高速域での構 成率が若干高い。高速域での死傷者数構成率の高いことが、致死率の高い原因ともなっている。
0 2 0 4 0 6 0 8 0 1 00
自動車 自動二輪 原付 自転車 電動アシスト 歩行者 その他
死 傷 者 数 構 成 率
(
%)
自転車 電動アシスト 原付
0 5 1 0 1 5 2 0 2 5
信号無視 優先通行妨害等 交差点安全進行
義務違反 指定場所
一時不停止等 ハンドル
操作不適 ブレーキ
操作不適 前方不注意 安全不確認 その他 死
傷 者 数 構 成 率(
%)
自転車 電動アシスト 原付
N=41,487 人 N= 667 人 N=42,082 人
N=263,992 人 N= 4,007 人 N=117,857 人
図 15.高齢運転者(1当及び2当)の相手自動車危険認知速度別死傷者数構成率(H13-21)
図 16 に高齢運転者(1当及び2当)の人身損傷主部位別死傷者数構成率を示す。
脚部損傷の構成率が最も高いが、電動アシストは自転車や原付と比較して、「頭部」損傷の構成率が 高い。これも致死率が高いことに影響している。
図 16.高齢運転者(1当及び2当)の人身損傷主部位別死傷者数構成率(H13-21)
図 17 に高齢運転者(1当及び2当)の人身損傷主部位別死者数構成率を示す。
電動アシストは自転車と同様、「頭部」損傷による死者が約7割を占める。原付は「頭部」損傷が約 5割と自転車より低く、ヘルメット着用の効果が大きいと思われる。
電動アシストや自転車の運転者に対しても、ヘルメットの着用が望まれる。
図 17.高齢運転者(1当及び2当)の人身損傷主部位別死者数構成率(H13-21) 0
5 1 0 1 5 2 0 2 5 3 0 3 5 4 0
全損 頭部 顔部 頸部 胸部 腹部 背部 腰部 腕部 脚部 その他
死 傷 者 数 構 成 率(
%
)
自転車 電動アシスト 原付
0 1 0 2 0 3 0 4 0 5 0
~10 km/ h ~20 km/ h ~30 km/ h ~40 km/ h ~50 km/ h 5 0km /h超 その他 死
傷 者 数 構 成 率(
%)
自転車 電動アシスト 原付
N=215,558 人 N= 3,499 人 N= 93,693 人
N=263,992 人 N= 4,007 人 N=117,857 人
0 1 0 2 0 3 0 4 0 5 0 6 0 7 0 8 0
全損 頭部 顔部 頸部 胸部 腹部 背部 腰部 腕部 脚部 その他
死 者 数 構 成 率(
%
)
自転車 電動アシスト 原付
N=4,453 人 N= 197 人 N=2,146 人
2-3 女性運転者事故の特徴
65 歳以上の高齢者については前項にて分析を行ったため、ここでは 64 歳以下を対象とする。 図 18 に 64 歳以下電動アシスト運転者(1当及び2当)の性別死傷事故件数の推移を示す。 男性運転者の事故も約4割増加しているが、女性運転者の事故はほぼ倍増している。
平成 21 年の女性運転者の事故件数は男性の約 3.5倍となっており、女性ユーザが多いことも推定さ れる。
図 18.64 歳以下電動アシスト運転者(1当及び2当)の性別死傷事故件数推移
平成 21 年に3人乗り(幼児2人同乗)が多くの都道府県で解禁となった。女性運転者が2~3人乗 りすることが多いと考えられるため、女性運転者の2~3人乗り事故に注目する。
図 19 に 64 歳以下女性電動アシスト運転者(1当及び2当)の乗車人員別・年齢層別死傷事故件数を 示す。
図 19.64 歳以下女性電動アシスト運転者(1当及び2当)の乗車人員別・年齢層別死傷事故件数(H13-21累計)
これをみると「2~3人乗り」での事故が、「30 歳代」に集中する傾向にある。
ここからは「30 歳代」の女性運転者に焦点を絞り、「2~3人乗り」時の事故の特徴を分析する。
図 20 に 30 歳代女性運転者(1当及び2当)の乗車人員別死傷事故件数構成率を示す。
電動アシストは自転車と比較し、「2~3人乗り」での事故の構成率が高い。30 歳代の女性が2~3 人乗りを目的として電動アシストを利用し、事故に遭うことが多いと推定される。
8 0
1 15 2 15
4 00
0 5 0 1 00 1 50 2 00 2 50 3 00 3 50 4 00 4 50
H 13 H 14 H 15 H 16 H 17 H 18 H 19 H 20 H 21 事
故 件 数( 件
)
女性
男性
N= 42 件 N= 193 件 N=4,926 件
0 1 00 2 00 3 00 4 00 5 00 6 00 7 00
1 5歳 以下
1 6-1 9 2 0-2 4 2 5-2 9 3 0-3 4 3 5-3 9 4 0-4 4 4 5-4 9 5 0-5 4 5 5-5 9 6 0-6 4 事
故 件 数( 件)
3人乗り 2人乗り 1人乗り
図 20.30 歳代女性運転者(1当及び2当)の乗車人員別死傷事故件数構成率(H13-21)
図 21 に 30 歳代女性運転者(1当及び2当)の衝突地点別死傷事故件数構成率を示す。
「交差点」での事故が多くを占めるが、電動アシストでは「歩道」での事故が2割を超える。安全を 考えて歩道を通行されている方が多いと思われるが、歩道上での事故も多く発生している。
なお、電動アシストの「歩道」での事故(71 件中 15 件)について相手当事者を見ると、自動車が 10 件、二輪車が 1 件、自転車が 4 件となっている。
図 21.30 歳代女性運転者の衝突地点別死傷事故件数構成率(H19-21)
図 22 に 30 歳代女性電動アシスト運転での運転者(1当及び2当)及び同乗幼児の人身損傷主部位別 死傷者数構成率を示す。
運転者は脚部や腕部を損傷することが多いが、同乗幼児は「頭部」や「顔部」を損傷しているケース が増加する。このため、同乗幼児には必ずヘルメットを着用させる必要がある。
図 22.30 歳代女性電動アシスト運転での運転者(1当及び2当)及び同乗幼児の人身損傷主部位別 死傷者数構成率(H13-21)
8 6
6 9 1 1
2 4 2
7
0 2 0 4 0 6 0 8 0 1 00
自転車 電動アシスト
事 故 件 数 構 成 率
(
%)
3人乗り 2人乗り 1人乗り
0 1 0 2 0 3 0 4 0 5 0 6 0
頭部 顔部 頸部 胸部 腹部 背部 腰部 腕部 脚部
死 傷 者 数 構 成 率(
%)
女性運転者 同乗幼児 0
1 0 2 0 3 0 4 0 5 0 6 0 7 0 8 0
歩道 路側帯 非分離道路 第一通行帯 交差点内 その他
事 故 件 数 構 成 率(
%
)
自転車 電動アシスト
N=3,565 件 N= 71 件
N=97,278 件 N=516 件
N=133 人 N=136 人
3 まとめ
電動アシストの出荷台数は年々増加しており、それに伴い事故の増加が懸念される。
電動アシスト事故の特徴は、「出会い頭事故が多い」、「運転免許を所有していない」、「頭部損傷が多 い」など、原付事故よりも自転車事故に類似している。
ただし、以下の点で自転車や原付の事故との違いが見られる。
・「高齢者」及び「女性」の事故が多く、年々増加している。
・「信号無視」や「一時不停止」などが多い。
また、「非市街地」での事故も多いため、「相手自動車の危険認知速度」が高く、「頭部」を損傷し やすい。
・ふらつきが少ないためか、ハンドル操作不適による事故が少ない。
・30 歳代女性運転の2~3人乗りでは、「歩道」での事故が2割を超える。 また、同乗幼児は「頭部」や「顔部」を損傷している。
・負傷事故は自転車より少ないが、死亡事故の発生は同程度である。
これまでのところ、保有台数当たりでは、電動アシストの事故は自転車の事故より少ない。しかしな がら、電動アシストはまだ普及段階であり、ユーザ層が高齢者や女性など偏りがあると思われる。この ため、今後も事故の動向に注意していくことが必要である。
4 最後に
電動アシストの事故防止及び被害軽減のために、以下の通り提言する。
・交通ルールを遵守する。
→信号交差点では信号を守る。信号のない交差点では、一時停止や徐行での安全確認を行う。
・運転免許を持たない高齢者へ、交通安全を啓発する。
・ヘルメットを着用する。
→幼児には必ずヘルメットを着用させる。また、高齢者を初め全ての運転者に、ヘルメットの 着用を推奨する。
・通行が認められた歩道を通行する場合は、歩行者などに注意して徐行する(歩行者優先)。また、自 動車などの飛出しにも注意が必要である。
・自転車が安全に通行できる、自転車道や自転車レーンの整備が必要である。
交通ルールをしっかり守り、電動アシストを安全に活用してください。
出典
1)社団法人自転車協会統計データ
2)一般社団法人日本自動車工業会統計データ 3)国土交通省統計データ
4)総務省統計データ