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Key words:Hokkaido(北海道);measles(麻疹);PA antibody(PA抗体)

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(1)

道衛研所報Rep. Hokkaido Inst. Pub。 Health,56,71−73(2006)

2005年度の北海道における麻疹PA抗体保有調査

Surveillance of PA AntibQdy to Measles Virus in Hokkaido in Fiscal Year 2005

長野 秀樹   伊木 繁雄   佐藤 千秋     奥井 登代   岡野 素彦

Hideki NAGANo, Shigeo IKI, Chiaki SATo,

  Toyo OKul and Motohiko OKANo

Key words:Hokkaido(北海道);measles(麻疹);PA antibody(PA抗体)

 麻疹はパラミクソウイルス科に属する麻疹ウイルスに

よって引き起こされる急性熱性発疹性の感染症である1).

麻疹ウイルスの感染経路は空気感染,飛沫感染,接触感染 と様々であり,その感染力は極めて強い.麻疹ウイルスに 対する免疫を持たない,いわゆる麻疹感受性者が感染した 場合,ほぼ100%が発症する.また小児では1000人制1 人程度脳炎を起こすことが知られており,さらに成人が感 染した場合は,一般に重篤な症状を起こす危険性がある.

 現在,日本における麻疹患者数は著しく減少しており,

感染症動向調査2)によれば,2001年における全国患者推 定数が28.6万人であったのに対し,2005年では4,200人 であった.また,麻疹患者の年齢については,2歳以下が 最も多く低年齢層が流行の中心であることは例年と変わら ない.しかし,最近全国各地で麻疹の予防接種を受けてい ながら年長児及び成人麻疹の発症が目立つとの報告があ る3).このような現状をふまえ,麻疹の予防接種に関して は,2006年4月から,生後12から24ヵ月に至るまでの間

に1回と5歳以上7歳未満の小学校就学前の1年間に1回 の計2回接種となった(平成17年7月29日付け健発第

0729001号厚生労働省健康局長通知)。

 北海道では,2000年12月から翌年夏にかけて麻疹の流 行を経験したことから,2001年5月北海道小児科医会総 会において,5年以内の北海道内における麻疹制圧を目標

とした「北海道麻疹ゼロ作戦」が提案された.定期検診時 のワクチン接種勧奨と接種歴問診,未接種者への積極的勧 奨,保健所勤務医,保健師による接種指導教育の徹底など

具体的行動により,成果をあげている4).

 本調査では,麻疹の今後の流行予測と予防接種計画の効 果的な運用を目的として,北海道における各年齢層のワク チン接種歴及び麻疹PA抗体保有状況を調べたので報告す

る.

材料及び方法

1.調査対象

 検査検体は市立札幌病院から分与された血清を用いた.

調査対象は0〜1歳群で23名,2〜3歳,4〜9歳,10

〜14歳,15〜19歳,20〜24歳,25〜29歳,30〜39歳,

40歳以上の8群で各25名ずつの計223名について調査し

た.

2.測定方法

 血清中の麻疹ゼラチン粒子凝集(particle agglutina−

tion:PA)抗体価は麻疹ウイルス抗体価測定キット(富 士レビオ㈱)を用いて測定した.方法はキット添付の使用 書に従った.

結 果

1.ワクチン接種状況

各年齢層におけるワクチンの接種状況を表1と図1に示 した.接種歴不明164名を除いた59名の麻疹ワクチン

表1年齢別ワクチン接種歴

       麻疹

年齢

   合計

(歳)

      ワクチン       不明ワクチン 麻疹 種者

MMR 自然 非接 0〜1

2〜3 4〜9

10〜14 15〜19

20〜24 25〜29

30〜39 40〜

23 25

25

25 25 25

25

25 25

2

16

15 7 2

3 1

1 1

11 10 9 10 14 21

25 25 25 25

一71一

(2)

接種率(%)

 100

80

60

40

20

0

□不明 目非接種者 愚自然麻疹

囲MMRワクチン

田麻疹ワクチン

024101520253040

〜  〜  〜  〜  〜  〜  〜  〜 〜

1  3  6  14  19  24  29  39

     年齢群

  図1年齢別ワクチン接種率

≧8192 4096

  2048   1024

垣  512 渥  256

託 128

   64    32    16   〈16

△非接種者○ワクチン接種者e自然麻疹●不明

△20  880  ●80  §§§  88●  333  888  3…8

 0●  080  888  0●  88●  88●  ●●  ●8●

・§§§8§8883

△△△

△●

△●

Q●●  ●●●   OO

  OO●880

0●   ●

28● ● ●

△△△

● ●8●

。●●38●

88・ ●●

●    ●

●    ●

。8●

    83●

    8…8

§1 …33..8.

88・ 833 ●8●

●   ●●  ●●●

    ●●

? l l 1ρ 1弄㍗0誓5害0宍0

1    3    9   14   19   24   29   39

        年齢群

図2 年齢別PA抗体保有状況

(MMRワクチンを含む)接種率は78%(46/59)であっ

た.年齢別にみると0〜1歳15%(2/13),2〜3歳

100%(16/16),4〜9歳100%(15/15),10〜14歳91%

(10/11),15〜19歳75%(3/4)であった.しかし,20歳

以上の年齢群をはじめ,各年齢群においてワクチンの接種 歴不明者が多く,本データからワクチン接種状況を的確に

把握するには至らなかった.

2.年齢別麻疹PA抗体保有状況

1)0〜1歳

 本年齢群の抗体価の分布状況を図2に,また月齢別に細 分した抗体保有状況を表2に示した.11ヵ月齢までで麻疹

PA抗体陽性(1:16以上)者は13名中8名(62%)で

あった.このうち,移行抗体が既に消失していると考えら れる8〜11ヵ月齢では6名中4名(67%)が抗体陰i生で あったが,1〜7ヵ月齢児では7忌中6名(86%)が陽性 を示した.ワクチン接種対象となる1歳児においては,ワ クチン接種済みの2名を含めた10名山7名(70%)が抗 体陽性であった.また,0〜1歳児群における抗体陽性率

は65%(15/23)であった.

2)2歳以上

 2歳以上の麻疹PA抗体保有状況を図2に示した.15〜

!9歳群(84%)を除いた年齢群においてはPA抗体価1:

16以上の抗体陽性者は90%を超えていた.平成16年度

(2004年度)版感染症流行予測調査報告書5)の基準による と,1:256以上でウイルスを中和する抗体がほぼ100%血 中に存在するとされており,麻疹ウイルスの曝露を受けて

もほとんど発症することはないと考えられている.そこで,

1:256以上の陽性率についてみると,15〜19歳で80%と 10代後半で若干低い傾向を示したが,他の年齢群では90

%以上であった.また,本年の調査では,ワクチン接種者

の1名(15〜19歳群)がPA抗体陰性の麻疹感受性者で

あった.

3.麻疹感受性

 PA抗体価が1:16未満の麻疹感受性者数を算出したと

ころ,0〜1歳35%,2〜3歳4%,4〜9歳4%,10

〜14歳0%,15〜19歳16%,20歳以上の3群合わせて

0.5%という結果であった.

表2 乳児月齢別PA抗体価(〜23ヵ月齢)

PA抗体価

      1234567891011

月 齢

12〜23  <16

  16   32   64

 128  256  512

 1024  2048  4096

≧8192

2

1 1 1

1

1

4 3

1

1

2(1)

2(1)

()=ワクチン接種済(内数)

 小児にとって麻疹は重症度の高い疾患であり,近年は成 人での発症も問題となっていることから,その対策は国民 全体の健康増進という観点からも重要である.感染症流行 予測調査は,予防接種事業の効果的な運用と長期的視野に 立った疾病の流行予測を目的とした事業であり,麻疹の感 受性調査は1978年から実施されている.本調査では,健 常人における麻疹PA抗体価を測定している.抗体測定法

は1996年に,赤血球凝集抑制(hemagglutination inhibi−

tion:HI)法から,より高感度で中和法との一致率も高 いとされる6)PA法に変更された. PA抗体価1:16未満 のいわゆる麻疹感受性者の確認とワクチン接種状況の把握 は,集団免疫の状況を把握する上で重要な情報である.そ れぞれの年齢群の検体数は少ないが,今回の調査からいく

つかの知見が得られた.

一72一

(3)

1)ワクチン接種者の1名に麻疹感受性者が認められた.

 ワ・クチン接種歴があるにもかかわらず麻疹に感染する例  が全国的にみられることや,患者数の減少により追加免  疫の機会が失われてきているという状況からみても,今  後とも,抗体価の経時的観察が必要であると思われる.

2)11ヵ月齢までのPA抗体陽性率は62%であった.移

 行抗体を保持していると考えられる1〜7ヵ月齢児では  7名中6名がPA抗体陽性であったが,既に消失してい

 ると考えられる8〜11ヵ月齢での陽性者は6名中2名

 (33%)であった.ワクチン接種対象となる1歳児では,

 PA抗体陽性率は70%(7/10,)に上昇したものの,3  名はPA抗体価が1:16未満であったことから,麻疹感  受性者であった.このことから,接種年齢に達した時点  での早期の予防接種が望まれる.2歳以上においては,

 PA抗体陽性(1:16以上)者が97%であり,1:256以  上の者が94%であったが,15〜19歳群で若干低い値を

 示した.

3)2〜3歳の年齢群では,1=256以上のPA抗体価保

 有率が高いという特徴を示した.これは,ワクチン接種  からあまり時を経ていないということが大きな要因に  なっていると思われる.また,自然麻疹により免疫を得  たと考えられる過去に罹患した2名については,PA抗  体価1:1024及び1:8192以上であった.

4)15〜19晶群ではPA抗体陰性(1:16未満)者が4名  確認されたが,2〜3歳,4〜9歳,30〜39歳の3群

 においてもそれぞれ1名ずつ確認された.また,ワクチ  ン接種年齢に達していない!1ヵ月齢まではPA抗体陰  性者が多く,ウイルスの曝露に対して無防備な状態にあ

 る.この傾向は過去3年間の調査(2002〜2004年

 度)7 9)においても確認されている.

 現在の麻疹対策の中心は,1歳児群のワクチン接種率を さらに向上させ,流行そのものを抑制することにある.

2006年4月から2回接種が導入され,麻疹感受性者の減 少が図られている.様々な国あるいは地方レベルでの取り

組みによって年間の患者数は激減したが,一方では茨城県 や千葉県で麻疹の集団感染が確認されており,全国的に拡

大する可能性も否定できない10).また,患者数の減少に伴

い,麻疹感染の実態把握を行うためには,定点把握から全 数把握へのシフトも考慮する必要がある.実際,沖縄県や 宮崎県では自治体独自で全数把握の取り組みを実施してお り効果を上げている2).このような状況下において,今後 も麻疹抗体保有状況の継続調査をすることで,麻疹制圧の ための有益な疫学情報を得ることができると思われる.

 稿を終えるにあたり,血清材料の採取にご協力頂き,ま た本事業の推進にあたりご尽力頂きました市立札幌病院の

富樫武弘院長に深謝いたします.

文 献

1)Katz SL, Gershon AA, Hotez PJ:Measles(Rubeola)一   Krugman s Infectious Diseases of Children,10th ed.,

  Mosby−Year Book, Inc., New York,1998, p.247

2)国立感染症研究所感染症情報センター:病原微生物検出情

  報(月報)27,85(2006)

3)国立感染症研究所感染症情報センター:麻疹の現状と今後

  の麻疹対策について 資料8,平成14年10月

4)国立感染症研究所感染症情報センター:病原微生物検出情

  幸艮, 25, 66 (2004)

5)厚生労働省結核感染症課 国立感染症研究所感染症セン   ター:感染症流行予測調査報告書 平成16年度,平成18

  年3月

6)Sato TA, Miyamura K, Sakae K, Kobune F, Inouye S,

  Fujino R, Yamazaki S=Arch. Vio1.,14200),1971(1997)

7).佐藤千秋,伊木繁雄,工藤伸一:道面研所報,53,90

  (2003)

8)石田勢津子,伊木繁雄,佐藤千秋,長野秀樹:道衛研所報,

 54, 77 (2004)

9)長野秀樹,伊木繁雄,佐藤千秋:道衛研所報,55,55

  (2005)

!0)国立感染症研究所感染症情報センター:感染症発生動向調   査(週報),8,11(2006年第16週)

一73一

参照

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