防災科学技術総合研究報告 第25号 1971年3月
551,351:551,468(521.42)
玉石海岸における浸食機構に関する研究(I)
海岸砂れきの移動調査
岡本隆一…・ノ1・島圭二・椎葉元則 建設省土木研究所地質研究室
Studies on the Erosion Mechanism Al◎ng the
S◎一Ca11ed Tamaishi Coast(I)lnvestigations of the Drift of Beach Grave1s
ByRyuichi Okamoto,Keiji Kojima and Motonori Shiiba
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Abstract
Investigations of gravels and of the sand甘ave1drift by using g1ass marb1es were made along the coast of Toyama Bay.
(1)1・…tig・ti…fg・…1・・1・・gth・・…t.
Samp1ing,naming and measurement were done for the grave1s of the coastal areas from M量yazald to the river Joganji.In the westem area of the coast,granite groups were dominant,
w㎞1e in the east,sedimentary rocks plenty.
There were special grave1s of1iparitic welded tuff in the river Sasa,of white1iparite in the river Ogawa,and of porous homb1ende andesite in the river Joganji,
The regularities in diameter,natness,roundness and so on of the gravels were round to be particu1ar characteristics depending on the micro−geomorphology of the areas.
(H)Investigation using glass marbles as the tracer.
Drift investigations were made from September1969to March1970by using the tracers of 10,O0091ass marb1es.They were29mm in diameter and thrown at Tanaka and Sonoke and at the1eft mouth of the river Kuエobe,respective1y.
The resu1t shows that al1marbles of every p1ace drifted westwards during the period,and that the drift time was proportional to the drift distance.Marbles drifted5.25km from Tanaka,and2.65km from Sonoke and the left side ofthe river Kurobe.
1. 調査目的 海岸拾よび黒部川左岸に拾いて行なった.
富山湾海岸に堆積するれきの岩石学的拾よび物
理的性質あるいはその堆積状態を調査し,さらに 3.調査地付近の慨要
追跡子を投入して,その移動状況を調査・観察し, 概査の結果,富山湾海岸一帯は主として粒度の れきの移動ならびに海岸浸食に関する基礎資料を 粗いれき浜からなり,笹川以西の平野部では全体 得る. として西へ行くにつれ,れき径を滅ずる傾向がみ られ,常願寺川より西では砂浜になる.言た笹川 2.調査地域 より東は,山地がじかに海岸にせまり海食崖下に 調査対象地域は,海岸にれきの存在する,境川
以西常願寺川1までの区間とし,昭和43年度は,田 中海岸より,滑川荒俣海岸 まで,海岸れき調査を 行在い,昭和44年度には海岸れき調査は,宮崎海 岸より田中海岸言でと,滑川荒俣海岸より常願寺 川左岸付近 まで,追跡子調査は,田中海岸・園家
れき浜を形成しているところが多い.
れき種は西から東へ向かって,常願寺川付近は,
安山岩・花こう岩が多く,早月川付近は,花こう 岩・せん緑岩が多くなる.黒部川周辺からは流紋 岩やチャートが目立ち小川付近では堆積岩(砂岩・
けつ岩),歩よび溶結凝灰岩が多くなる.
富山湾海岸浸食に関する研究 (第1報) 防災科学技術総合研究報告 第25号 1971
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図1 富山湾海岸れき調査位置図
玉石海岸における浸食機構に関する研究(1)一海岸砂れきの移動調査一岡本・小島・椎葉
形状からみると,荒俣(滑川市)から生地にか けて,へん平なれきが多く,白岩川付近では球状 れきが多いなど局部的な特徴が若干みられる.
黒部川の扇状地に拾けるれきの移動状況は変則 的で,上流に14固のダムが建設され,その堆積量 は著しく,下流への供給は止まり,河口から吐出 量は激滅している.
4 調査内容 41 海岸れき調査 41.1 調査位置
海岸 東 宮崎海岸より田中海岸 まで 12カ所(44年)
↓ 田中海岸より
滑川荒俣重で 22カ所(43年)
西滑川荒俣より
常願寺川付近 12カ所(44年)
河川 黒部川,早月川各河口2カ所 計4カ所 (43年)
小川,常願寺川 各1カ所 計2カ所 (44年)
調査地点を海岸ではほぼ1km(護岸工事の関
係でずれはあるが)ごとに,河口では流路方向にO−5km問隔に設定した.
41.2 調査方法
上記地点に拾いて,海岸線ではてい線に平行に,
河口部では,自然流路に平行に券の拾の3mの測 線をとり写真撮影を行なったのち,その測線上の れきについて観察・測定を行ない,れき種・粒径 円摩度・へん平率・球形度等を求め解析を行なっ た.同時に測線付近のれきの分布状態・微地形,
護岸工事の状況などの観察とスケッチを行なった.
特に昭和4件度に拾いては,採取個数によるぱ らつき(後記「調査結果のぱらつき」参照)を少 なくする意味で,1測線で採取個数が1OO個にみ たないものはl100個になるまで測線を延長して,
観測を行なった.
41.3 調査結果 (1)れき種
富山湾に流出する各河川の流域には非常に多種 多様の地層が分布しているため,それらを供給源 とする海岸れきのれき種も当然のことながら多様
である.
ほとんどの地点で多く見られる岩石は,花こう 岩類・せん緑岩・流紋岩・安山岩等である.
各れき種の地域による特徴をしるすと,花こう 岩類は黒部川・生地付近を境として,西に多く,・
東に少ない.片麻岩についても同じようなことが 言える.堆積岩類・ホルノフェルス・白色流紋岩・
玄武岩質安山岩については,黒部の扇状地以東に
多い.
河川に特徴的なれきは,笹川・小川に流紋岩質 溶結凝灰岩(流紋岩一1)が多く,小川には白色 流紋岩(流紋岩一3)が多い.重た常願寺川では 多孔質角せん石安山岩を多く見る.当然これらの 影響は河口近くの海岸にも見られる.笹川・小川 については,上流まで供給源調査を行ない,分布
と流出の確認を行なっている.
(2〕粒 径
昭和43年度実施の分についてぱ,採取位置,個 数等に問題はあるが,一般的に黒部川または早月 川付近が,粒径が大きいということが言える.
昭和44年度実施の分では特徴的なれき種を追う と,笹川・小川右岸,常願寺川が比較的粒径が大
きい.最大粒径の変化図で,9,10,17の地点
で粒径が大きく出ているが,これは採取位置がて い線付近ではなく,消波ブロックと防波堤の間で 採取したもので他と若干条件が異なる.また地点15は消波ブロック前の水中より,25,26は砂
浜のため,これも水中より採取したものである.(3〕円摩度
(Krumbeinの円摩度表による,1.Oへ近づ
くほどかどがとれ摩耗し丸くなる.)昭和坦年度実施の分については個数が少在く比 較するには問題があるが,片貝川付近が円摩度が 一番低い.
昭和44年度実施のものでみると,笹川・小川で 円摩度が低く西へ行くに従い高くなり,白岩川右 岸で一番高く,常願寺川で再度低くなる.
またその中で,一度円摩されたれきが海岸で再 ぴ割れたと推定されるものが,地点4〜10(東草 野付近〜八幡海岸)に多いという特徴がある.こ の地点は浸食がはげしいと言われていて,消波ブ
ロック等が多い箇所と一致する.
(4)へん平率拾よび球形度
加
へん平率=一 (α=長径,ろ=中径,o α2
=短径)
富山湾海岸浸食に関する研究 (第1報) 防災科学技術総合研究報告 第25号 1971
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玉石海岸に鮒る浸食機構に関する研究(1)一海岸砂れきの移動調査_岡本.ノ」、島.椎葉
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富山湾海岸浸食に関する研究 (第1報) 防災科学技術総合研究報告 第25号 1971
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玉石海岸における浸食機構に関する研究(1)
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富山湾海岸浸食に関する研究(第1報)防災科学技術総合研究報告 第25号 1971
3 れきの体積
球形度=
れきを外囲する球の体積
÷π
(ともに1.0に近づくほど球に近い.)
全般的にみると生地付近で一番へん平なれきが
多い.
昭和必年度実施の結果からみると,消波ブロッ クと防波堤の問で採取した,地点9,10,17,
水中採取の15,それと常願寺川付近で比較的円れ きが多いということが推察できる.
(5)採取地付近の観察
海岸の徴地形(てい線から防波堤または消波ブ ロックなどの間までの小起伏など)には,各地点 ごとにかなり相違がある.そしてこの相違が,海 岸れきの特徴,分布を大きく左右している.その ため同一地点でもれきの採取位置によって粒径・
形状などにばらつきがあると思われる.
(6〕調査結果のぱらつき
これらの調査結果の地点ごとのぱらつきには,
上記の採取地点拾よび位置の選定に関するものの ほかに,測線の長さ(採取個数),肉眼観察,判 定などに伴うものなどがあげられる.
これらの要因を考慮して,石田海岸の同一地点 で測線をかえて測定を行なった.
この結果,同一微地形を選定し,測線上100個 程度のれきについて観察・測定を実施し,れき種 判定に関しては詳細な観察を行なった後,同系統 の岩種を統合整理することによって上記のぱらつ
きをかなり滅少させうることがわかった.
42 特徴れき調査
れき調査の結果,笹川,小川,常願寺川に特徴 的なれきが見いだされた.そこで移動状況の資料 とするために,笹川,小川を選んで河口2カ所の みについて計測を行なった.この結果笹川河口で は,測線30mについて流紋岩1(流紋岩質溶結凝 灰岩)を132個,小川河口では同様にして,流紋 岩1を1O個,流紋岩3(白色流紋岩)を72個採取
した.そしてこれらについて一連の観察,計測を 拾こなつた.
43 供給源調査
海岸れき移動の指標となると考えられる特徴れ きの供給源として,笹川上流の流紋岩1,小川上 流の流紋岩1拾よび3の踏査を行なった.この結
果供給源での露岩の状況,各河川の供給量の推定 をどに関する資料が集積された.
44 追跡子調査 441 調査位竈
下新川海岸の田中,園家拾よび黒部川左岸河口 の3地点を選定した.
442 調査方法
追跡子としては,径30mm程度の色つきのガラ ス玉を使用し,各地点色別のものをてい線付近,
深さ30〜50cmの海中に投入し,数日後から約3
ヵ月後の移動状況を調査した.追跡子の回収については,}海岸を歩いて,打 上げられているものを拾う という作業を数週間
ごとに行なった.
443 調査内容
(1)予備調査
田中海岸(1回目):ガラス玉を試験的に600 個(草色)投入した.
径29mm, 比重2.42
投入:7月12日,採取:7月30日 採取個数1原点付近 1個 東へ100〜150m 3個
約600m 1個12)本調査
田中海岸(2回目):投入個数10,OOO個 (赤,羽根模様)
園家海岸 1投入個数10,OOO個 (緑,羽根模様)
黒部川左岸河口 :投入個数10,000個 (黄,羽根模様)
径29mm, 比重2.52
移動状況歩よぴ採取個数は,図15,図16に示す.
田中海岸では82日間で西へ約3km,園家では約
4km,黒部川河口では約1.3kmそれぞれ西へ
移動した.園家海岸に拾いては,9月22日に1度 だけ,原点から約600m東への移動が付近の人に よって報告されたほかはいずれも東への移動は認 められない.これらガラス玉の移動は,場所によ って速度は異なるが定速で移動しているようであ り,採取個数が少在いので正確ではないが表1に 示すように,移動が大きいほど重量の減少も大き い.・また同距離で検討した場合消波ブロックなど が多く,浸食の大きいと考えられる田中海岸から 柳原にかけての移動のものが重量滅が大きい.重 た図11に示す割れたれきの頻度とガラス玉の割れ玉石海岸に拾ける浸食機構に関する研究(1)一海岸砂れきの移動調査_岡本.小島.権葉
た頻度には相関がありそうである.
園家海岸に投入したガラス玉(緑)が約1,400 mでとまっているのは,海底に谷地形を形成して いると思われる黒部川の河口に到達してしまった ためと考えられ,黒部川左岸河口(黄)について は,消波ブロックが妨げとなって発見できなかっ
たためかと思われる.
なおガラス玉の採取については,9月22日,1O 月8日,11月19日発見のものは,全部地点番号を つけて回収し,形状の観察,重量の測定を行なっ
た.
表1 移動によるガラス玉の重量の減少 (大きく破損したものは除いて平均)
移動距離 m
100〜600
1200〜1400 1800〜2200 〜2300 250G〜3100田中海岸 個 数
36
35 8
重 量 9
32.367 29.714 26.806 26.352 26.576
移動距離 m
100〜300 300〜700 700〜900 1000
1000〜1400園家海岸 個 数
6 118
7 5重 量
32.463 31.492 31.173 30.792 30.3I4移動距離 m
原点〜200 〜400 400〜500 500〜900 900〜1300
黒部河口左岸
個 数 12 1O
1l14 12
重 量 9
32.894 31.760 32.400 32.199 32.199
5 ま と め
51 海岸れき調査
(1)てい線付近の同一微地形を選ぴ,数mの測 線をはってl c mオーダーのれきを1OO個以上計 測することによって,いくつかの規則性が見いだ
された.
調査は,れき種,れき径,へん平率拾よび球形 度,円摩度の観察拾よび計測を主体とした.
(2)れき種ぱ大別すると,調査地域西部で花こ う岩類が圧倒的に多く,東部では堆積岩類が多い.
二,三の地区で特徴れきが見いだされ,供給源調 査によってその供給地が確認された.常願寺川の 多孔質角せん石安山岩,小川の白色流紋岩(流紋 岩3),小川拾よぴ笹川の流紋岩質溶結凝灰岩(
流紋岩1)がこれで,れき移動の指標になる.
(3)これら特徴れきはいずれも西へ向かって少 なくなり,消滅する.詳しい変化の様子は今後の 調査に期待される.
(4)れき径,へん平率,円摩度に関しても規則 性が見いだされる.しかしれき質,てい線付近の 微地形や消波ブロック,突堤などの構造物,風力,
波力,海岸線の形態などの影響が無視できないた め,特異点がしぱしぱ出現する.このため特異点
の条件のチエックが必要であり,目下これらを考 慮した解析を続行中である.
5.2 追跡子調査
u)今回のガラス玉を使っての調査は,1.見つ けやすい.2、大きさ,質ともに同じものを多数そ ろえることができる.3.安価である.4.比重が石 と似かよっているなどの点から適切な方法であっ
た.
12) 9月〜11月の間にガラス玉は西へ移動して いる.そして移動時問と移動距離は比例し,同一 地点では移動距離が大きいほど摩耗していること,
移動距離が同じでも,場所によって摩耗度に差が あること,投入箇所に埋まっていたものはほとん ど摩耗していないこと(れきの上下運動はあ言り はげしくないか,これによる摩耗はけたはずれに 小さい)などが見いだされた.
ここに今後の調査方針を要約して示せぱ,次の よう在項目が考えられる.
1.海岸れきの調査
(1)調査地域を広げる.
(2)特徴れきが見いだされたため,これらの移 動状況を追跡する.
13)各種の特徴とガラス玉の移動歩よび摩耗と の関連性を調ぺる.
富山湾海岸浸食に関する研究 (第1報)防災科学技術総合研究報告 第25号 1971
2.追跡子調査
(1)投入地点をかえて行なう.
(2)季節的に移動方向,速度などが違うと思わ れるので時期をずらして行なう.
13)時間的に短い動きを追跡する.
(4)てい線付近だけでなく,もっと深い部分の
移動も調査する.
(5)てい線付近に拾けるれきの上下の入れか わり具合をしらぺる.
(6)れきの摩耗との対応性を調査するなどの点 が課題である.