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福岡県古賀市の砂浜海岸で採集されたシマトラフヒメシャコ

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Academic year: 2021

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Cαrcinological Socie砂ofJapan

福岡県古賀市の砂浜海岸で採集されたシマ卜ラフヒメシャコ

M a n t is s h r i m p Bigelowina p h a l a n g i u m (Fabricius

1793)

f o u n d in a s a n dy b e a c h of K o g a City

F u k u o k a Prefecture

小 林 哲

1 Sato sh i K o ba yash i . は じ め に シ マ ト ラ フ ヒ メ シ ャ コBigelowina p halangium (Fabricius) ( ヒメシャコ科Nannosquillidae) は 西 部 インド洋から西部太平洋,北部オ ーストラリアの熱 帯 ・亜熱帯域を中心に広域に分布することが知られ ている( A hyong,200 1; 浜野. 2005). 日本では駿河 湾以南で採集されたという報告があり,沖縄の他, 大分県の中津干潟で生息が確認されている . ただ し 九 州 以 北 の 温 帯 海 域 で の 採 集 例 は 非 常 に 少 な く,戦前の駿河湾,三重県,和歌山県や1965 年の 福岡県筑前新宮などの古い記録がある他は,大分県 の中津干潟で多数の生息が確認されているのみで現 時点で確実な報告はない. そのため日本ベントス学 会編の「干潟の絶滅危倶動物図鑑」では絶滅危慎II 類に指定されている( 有山. 20 12). 筆者は現在,福岡県の玄界灘に面する開放的な砂 浜海岸で底生動物の生態調査を行っているが,潮間 帯で二枚貝の採集を行っていた際に縞模様のある小 型のシャコを採集した( 図1) . そこで A hyong (200 1) および浜野 (2005) をもとに同定を行ったところ , それがシマトラフヒメシャコであることを確認でき た. 今回の報告は絶滅危倶種ではあるものの, もと もと分布していたが近年個体数が急速に減少してい るという例ではなく,温帯域に非常にまれな熱帯性 の種の採集確認であると考えてよいだろう . l 干812-0053 福岡県福岡市東区箱崎 3-36-36--401 3-36-36--401. H akozak:i. Higashi. Fukuoka, Fukuoka 812--0053, Japan

E-mail: m okuzuz

@r

ock.odn.ne.jp

. 材 料 と 方 法 シマトラフヒメシャコが採集されたのは20 13 年 2 月28 日の日中である. 採集地点は玄界灘に面した 福岡県古賀市の開放的な砂浜海岸 (33044'N, 1300 28'E) ではあるが. 2 つの河川 の河口から沖合へ張 り出された突堤に固まれてやや波浪が弱められてい るため,完全に解放的な海岸に比べると傾斜がゆる や か で 細 か い 砂 が 混 じ っ て い る ( 図1e). 筆 者 は 20 11年秋から毎月 2-3 回程度,干潮時に低潮線付近 の波打ち際で底質表面から5 cm 程度の深さで水の 飽和した砂を撹祥して二枚貝( コタマガイG omp hina m elanaegis R omer. ノてカガイMactra chinensis Philippi. チョウセンハマグリM eretrix lamarckii D eshayes. フ ジノハナガイDonax semigranosus D unker等) の採集 を続けている. 採集個体は表層の砂を撹持していた 時に飛び出してきたもので,いったん砂に全身を潜 らせて隠れたのを取り出して採集した. . 結 果 と 考 察 採集個体は全長4 2 mm であり. A hyong (200 1)の 雄56-80m m, lt惟2 1-85 m m からすると小型であり未 成体の可能性もある. 眼は双峰形だが球形にふくら み,眼練は眼柄の中央付近にまでのびている. 額板 は方形で前縁中央は鋭く突出している( 図 Ib). 尾 節の後縁部は上下2層に分かれ上層には5練が等間 隔にはえている. 下層には可動の亜中央線があり, 歯列の先端が真横に並ぶ亜中央歯が列生する. 下層 には不動の7対の練歯が列生する( 図1c,d). なお 日本甲殻頬学会内叩

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I

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(2)

図1 . a- d シマトラフヒメシャコ. a:全体 ( 背面) ,b:頭胸部( 背面) , C:第6腹節,尾節および尾肢( 背面) , d:尾節後部( 腹面) . e シマトラフヒメシャコが採集された福岡県古賀市の砂浜海岸.

(3)

浜野 (1999,2005) では下層に5対とされているが, これは筑前新宮で採集された個体が左右で7 本と 5 本の異なる練歯の数を持つ奇形であり, 5対を正常 とみなしたためである. しかし, Ahyong (2001 ) の図では 7 対が正常のようであり,今回の標本も 7 対が認められた .7対の内訳は、内側から中間歯4 対 (1対目と 3 対目が 2 対目と 4 対目より大きい) , 中間赫 1対,側歯 l対,側練 l対である . 尾肢内肢 の外縁基部は背部後方へ折り返り,縁部は大きくく ぼんでいる( 図1c). シマトラフヒメシャコの生息場所は,オーストラ リアで は1 0 m 0浅の砂ー砂泥底で,

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字型の巣を作 るとされている(A hyong,2001) . 最近大分県の中 津干潟( 大新田) においてシマトラフ ヒメシャ コが 砂泥干潟の低潮線付近に最大25 c m以上の深さのほ ぼ垂直な巣穴を掘ることが報告されており ,その巣 穴からニ ッポンヨー ヨー シジミ Divariscintilla toyo-hiwa伐nsisYamashita, H a g a & Lutzenの共生が確認さ れて新種記載された. また巣穴の断面写真には同時 に巣穴の外にマテガイ So/en strictus Gouldが写 って いる (Yamashita et a,.l 2011). 一方,今回採集され た海岸の環境は中津干潟とは明 らかに異なってお り,巣穴らしいものも確認されていない. 同所的に 分布する 二枚貝も異なっている. また筆者は同じ場所とその周辺の開放的な海岸で l年半近く同様な調査を続けてきたにも関わらず, シマ トラフヒメシャ コを採集したのは今回がはじめ てである. そのため今回の採集場所には本種が生息 していても非常に少ないと考えられる. なお1965 年に死体が打ち上げられたという筑前新宮の海岸 ( 浜野,1991 ) は,今回の採集場所に近接した,同 じ玄界灘に面するやや開放的な砂浜海岸であり 3 k m程度しか離れていない. よってこの周辺海域 でシマトラフヒメシャコが今後も確認される可能性 はあると考えてよいだろうが,玄界灘のような開放 的な砂浜海岸は内湾の干潟に比べると一般に底生動 物が調査される機会が少ないため,今回の例のよう に希少種が報告されることは非常にまれであると思 われる. 古賀市で採集されたシマトラフヒメシャコ 一般にインドー太平洋に広域分布する熱帯性の種 でも,日本の温帯域では冬期の低温に対する耐性の 違いによって出現する様式は様々であり,個体群が 維持されているものの繁殖期が短くなっている例 や,暖流により運ばれてきたものの死滅回遊や無効 分散をする例が知られている( 朝倉, 2003). 熱帯 域を中心に分布するシマトラフヒメシャコでは,玄 界灘沿岸で2月という低温期にも関わらず潮間帯付 近で生きた個体が採集された. 冬期福岡の玄界灘沿 岸は,周防灘に面した大分に比べると低温と強風波 浪に晒される厳しい環境である . このことは少なく ともこのシャコにある程度の低温耐性が備わってお り,非常にまれではあるものの厳しい環境で越冬で きる個体がいることを示している. そのため近年の 海水温の上昇に伴って,今後九州周辺で新たに採集 される可能性もあると考えてよいだろう .

薗 語 辞

大阪府立環境農林水産総合研究所水産技術セン ターの有山啓之博士には同定に関してコメントをい ただいた. お礼を申し上げる.

圃T I

A hyong, S. T., 200 1. Australian Stomatopoda. Records of the Australian M u s e u m, Supplement, 26 : 1-326. 有山啓之, 2012. シマトラフヒメシャ コ. 干潟の絶滅 危倶動物図鑑海岸ベントスのレッドデ ータブッ ク( 日本ベントス学会編) . 東海大学出版会,東 京, p.175. 朝倉彰, 2003. 生物地理. 海洋ベントスの生態学 (日本ベントス学会編) . 東海大学出版会,東京, pp.303-367. 浜野龍夫, 199 1. シャコ類の生物学⑬一日本産 シャコ 類の分類と検索ー17ヒメシャコ科. 海洋と生物, 12: 46--50. 浜野龍夫, 2005. 水産研究叢書51シャコの生物学と資 源管理. 日本水産資源保護協会,東京, 208 pp. Y a m ashita, H目,Haga, T., & Lutzen, J., 20日 The bivalve

Divariscintilla toyohiwakensis n. sp. (Heterodonta: Galeommatidae)合o m Japan, a commensal with a man-tis shrimp. Venus, 69: 123- 133

参照

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