フォーラム 2018
海岸林から考える ふるさと・里浜の復興デザイン
2018 年 2 月 24 日(土) 12:30〜16:00
東北学院大学 土樋キャンパス 押川記念ホール
東北地方太平洋沖地震・津波(東日本大震災)で被災した海岸では、海岸林
の再生が市民や企業、行政など多彩な人々の連携の下で進められています。
このフォーラムでは、(1) 誰しもが想い、願う「ふるさとの、うるわしい海岸林・
海辺」を創出するために、被災後7年間の取り組みをふり返り、課題やアイデア
を共有します。そして、(2) これからを見据えて、「地域の自然と歴史に学ぶ森
づくり」、「人づくり・地域づくりと連結する森づくり」について考えます。
主 催: 「生態系サービスの享受を最大化する‘里浜復興シナリオ’創出」プロジェクトチーム 共 催: 「地域の自然と歴史に学ぶ里浜復興」研究会
後 援: 日本海岸林学会、日本緑化工学会、植生学会、日本景観生態学会、自然環境復元学会、 日本生態学会生態系管理専門委員会
協 力: 東北学院大学、新浜町内会、南蒲生/砂浜海岸エコトーンモニタリングネットワーク
プログラム
11:30
開 場
11:30〜12:20 参加者交流 (ピロティーで、ポスター発表や資料展示が可能)
12:30 開 会・趣旨説明
12:40〜13:40 基調講演
これまでの海岸林、これからの海岸林
吉﨑 真司 (日本海岸林学会長・日本緑化工学会副会長・東京都市大学
環境学部長)
13:40〜13:50 休 憩
13:50〜15:05 講演(プロジェクト成果報告)
地域とともにあった海岸林
-仙台湾岸の里浜史を読みとく-
菊池 慶子 (東北学院大学 文学部)
よい海岸林は、よい砂浜から -砂浜海岸エコトーンにおける砂丘・森・湿地の共存-
岡 浩平 (広島工業大学 環境学部)
本当に海岸林は津波防災に有効か? -歴史と科学から考える海岸林の効果検証-
柳澤 英明 (東北学院大学 教養学部)
15:05〜15:50 参加者間の情報・意見交換
森づくりから、地域づくりへ
15:50 総 括・閉 会
お願い
・ 情報・意見等の整理、分かちあいを促進するために「記入票」を準備しました。ご活用下さい。 講演の合間に、会場内や受付で適宜回収させていただきます。
フォーラム「海岸林から考える ふるさと・里浜の復興デザイン」(2018 年 2 月 24 日)
これまでの海岸林、これからの海岸林
吉崎 真司(東京都市大学 環境学部)
四方を海で囲まれた我が国の沿岸域には、「海岸林」または「海岸防砂林」と呼ばれる森林が見られ る。それらの多くはクロマツやアカマツを主とするマツ林であり、人工的に造成されたものであるが、 2011 年 3 月 11 日に発生した東日本大震災以後、様々な視点から海岸林を見直すことが必要になって いる。被災した東北地方太平洋岸だけではなく、今後南海トラフに関連する地震と津波の発生が懸念 される関東以西の太平洋岸でも、新たな海岸林の造成が試みられている。それらは、今まで蓄積され てきた海岸砂丘造林や海岸砂地造林技術に加えて緑化工の技術を必要とする。更に、沿岸域(砂浜や 湿地)の生態系にも配慮した海岸林造成技術が求められている。
本日の発表では、これまでに我が国で進められてきた「海岸林」の歴史、造成技術、風食防止の考 え方、東日本大震災以後に行われてきた海岸林修復の現状と課題等をレビューしたうえで、今後、将 来に向かって目標とすべき海岸林の姿や考えるべき課題を整理するとともに、沿岸域の新たな立地評 価を提案する。
1. 我が国の海岸林の種類と分布(海岸林と海岸防災林) 2. これまでの海岸林
(1)海岸防災林としての成立の歴史 (2)造成技術
(3)造成の結果
(4)風食(飛砂)防止の考え方 (5)マツ枯れ問題と天然更新 3. 津波前の海岸林の現状と課題 4. 震災後~現在までの海岸林
(1)海岸防災林再生のイメージ(望ましい将来像) (2)静岡県遠州灘海岸林
(3)宮城県仙台市岩沼試験地
(4)岩手県陸前高田市の海岸林と盛土試験地 (5)課題
5. 東日本大震災以後の流れ 6. これからの海岸林
(1)循環の視点から
(2)垂直的・水平的視点から (3)海岸林の役割
(4)海岸林にとって大切なこと(環境アセスメントと市民科学) (5)Eco-DRR 度マップの作成(提案)
地域とともにあった海岸林 -仙台湾岸の里浜史を読みとく-
菊池 慶子(東北学院大学 文学部)
1.仙台湾岸における植林史
(1) 近世(江戸時代)の植林と拡充●17 世紀半ばに始まる植林
●仙台藩による植林奨励 (藩直営・給人家臣・地元の村と個人) ●仙台湾岸での拡大
(2)近現代(明治~昭和戦後期)の植林と拡充 ●植林の契機と背景
①1905 年(明治 38)大凶作後の失業扶助事業 ②大正天皇即位記念
③1932 年(昭和 7)産業奨励政策で「海岸砂防林奨励事業」開始 昭和三陸地震津波 ④1948 年(昭和 23)~ 治山事業計画で再開
●「愛林碑」に刻まれた昭和戦中・戦後期の植林史
(3)植林と地域
●近世:御林(オハヤシ)を村で植え継ぎ、管理 ⇒“ヤマ”としての共同利用へ ●近現代:国有林・県有林の拡大 / 地元集落・組合・県林務課の協力関係
・国営・県営事業に地元住民の雇用 家族男女が植林作業に従事 ・1942 年(昭和 17)以降、「海岸林保護組合」結成
規約に県営海岸林の保護・育生 林野火災の防止等
・人口砂丘、砂浜の安定に向けて組合が砂草観察 砂草苗の育生(名取市下増田北釜地区)
2.暮らしを守るための活用
(1)防災林としての役割 :日常的な潮風害・飛砂害の防備 津波防災 (2)ヤマとして共同利用:枝葉、下草の利用 “松葉さらい”の慣行 (3)飢饉・凶作時の開放:伐採し換金、食料確保 救荒食としての松皮 (4)魚付き林の認識:仙台湾岸全域のクロマツ林にあり
3.再生と存続に向けて
-“地元の解散”“暮らしの維持に不要”“共同性喪失”の時代に- ●防災林としての認識 農地環境の安定による地産の保証●植林の歴史と現在を地域史学習へ 再生現場で防災の未来を考える 〇残存林の存続へ調査・研究
〇海岸林・後背湿地・砂浜 海岸エコトーンの一体的保存と活用 多様な“生き物”の生育・生息に触れる楽しさ
フォーラム「海岸林から考える ふるさと・里浜の復興デザイン」(2018 年 2 月 24 日)
よい海岸林は、よい砂浜から
-砂浜海岸エコトーンにおける砂丘・森・湿地の共存-
岡 浩平(広島工業大学 環境学部)
1.砂浜海岸エコトーンとは?
エコトーンとは、タイプの違う生息地の間の移行帯を指す概念である。砂浜海岸エコトーンは、海 から陸への移行帯を指し、海から砂浜そして砂丘へと変化し、砂丘間や砂丘後背地には湿地が成立す る。この領域は、自然条件では主に草本が優占し、安定した立地では樹林が形成される。また、開発 しやすい空間でもあることから、古くから農地や宅地に改変され、それに伴い海岸林が造成されてき た。海岸をイメージすると、砂浜や海岸林(クロマツ)など単一の景観を連想する人が多いかもしれ ないが、自然および人の営みによって、砂丘・湿地・森林が共存する空間なのである。
2.砂浜海岸エコトーンを細かくみる
砂浜海岸エコトーンは、砂丘・湿地・森によって多様な景観を形成しているが、一つ一つの立地を 細かくみると、その中にも動植物や環境の多様な変化を見出すことができる。例えば、砂丘では、一 般に海から陸にむかって、波や砂の移動の影響が軽減され、生育する植物も変化していく。仙台湾の 事例では、海から陸にむかって、コウボウムギやハマニンニク→ケカモノハシやオニシバ→ハマナス と優占する種が変化する。仙台湾の後背湿地でも、わずか数十 cm の地盤高の変化に応じて、ヒメガマ →コウガイゼキショウ類→ヒメジソ→カモノハシと優占種が変化する。海岸の森林つまり海岸林は、 クロマツ林が一般的であるが、マツ枯れによって広葉樹に遷移した林では、砂丘や湿地と同様に、林 内の植生に変化がみられる。高知県大岐浜の海岸林では、海から陸にむかって、トベラやマサキ→ヤ ブニッケイやネズミモチ→タブノキやクスノキと林冠の構成種が変化し、樹高も徐々に高くなり、20m を超えるまでに成長している。砂浜海岸のエコトーンは、水域から陸への水平および垂直方向の環境 変化に応じて、大きくみると、砂丘・湿地・森と変化するが、その内部では動植物や環境のさらなる 多様な変化が生じているのである。
3.砂丘や湿地は海岸林の良きパートナー