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も推進され ロシア経済の電力やエネルギーへの集中は低下することも推測されている 一方 エネルギー輸出の成長率は次第に減少し 2030 年頃に輸出量は固定化することも予想されている 2 同時に 中国や日本などの東方のエネルギー市場に対する輸出の多様化により 欧州のエネルギー市場の割合は減っていくとされ

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1 2013 年 8 月 27 日 ロシア関連メモ 106 国際公共政策研究センター 主任研究員 石野 務

2030 年までのロシアのエネルギー政策

ロシアは、石油と天然ガスを中心としたエネルギー資源がその輸出の約 7 割を占めてい る。また、石油、天然ガス、及びその他の石油製品の輸出に対して課せられる輸出関税や、 資源の採掘に対して課せられる鉱物資源採掘税による歳入は、合わせてロシアの歳入の約3 割を占めており、エネルギー資源の開発と有効活用が、ロシア経済の今後の発展における 最も重要な課題となっている。 2014 年 5 月にロシアは中国と長期の天然ガス供給契約を行い東シベリアの天然ガス田開 発や中国向けガスパイプラインなどのインフラ事業開発に弾みをつけた。一方、2014 年 7 月末のEU によるロシアに対する追加制裁ではロシアの石油分野に対する技術供与の制限 が定められ、海外の先進技術を必要とする自然条件の厳しい北極海大陸棚や東シベリア、 極東おける新規油田開発に影響が及ぶものと予想されている。

本メモでは、2010 年に公表された“Energy Strategy of Russia,For the Period up to 2030:(2030 年までのロシアのエネルギー政策)”1に示されたロシアのエネルギー政策に ついて整理し、ロシアを取り巻く国際環境の変化がこの政策に対してどのような影響を与 え得るのかについて考察することと致したい。 第1. 解説 1. 2030 年までのロシアのエネルギー政策 (1) ロシアにおけるエネルギー部門の動向 燃料・エネルギー複合体は、産業部門に対する燃料やエネルギー、天然資源の供給者と しての役割と、関連する産業の最終製品の利用者としての2 つの役割を有している。現時 点で産業部門は国内のエネルギー資源の50%以上、電力の約 60%を消費する一方、燃料・ エネルギー複合体からの装置や器具に対する需要の80~85%に対応しており、国内経済や産 業の成長に大きな影響を与えている。戦略でも、「エネルギー部門は引き続き支配的役割を 保ち、最大の顧客として他産業の発展を支える役割を負っている。」と解説されている。 ロシアは、ハイテクや科学集約的なエネルギー非消費型産業の増強を図っており、エネ ルギー非消費型産業に有利な経済構造に変容して行くことが予想されている。更に省エネ 1 http://www.energystrategy.ru/projects/docs/ES-2030_(Eng).pdf

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2 も推進され、ロシア経済の電力やエネルギーへの集中は低下することも推測されている。 一方、エネルギー輸出の成長率は次第に減少し、2030 年頃に輸出量は固定化することも 予想されている2。同時に、中国や日本などの東方のエネルギー市場に対する輸出の多様化 により、欧州のエネルギー市場の割合は減っていくとされる。 石油・ガスなどの一次的なエネルギー資源をそのまま輸出することから、石油製品やガ ス化学製品などの付加価値の高い製品を国内で生産しそれを海外へ輸出することへの展開 が目指されている。ただしその実現のためには、新たな設備投資のための資金や先端技術 が必要である。 (2) ロシアのエネルギー政策実施計画 2010 年から 2030 年までを 3 つの期間に分けて実施内容を定めている。戦略実施第 1 段 階(2010~2015)でエネルギー部門の基本的な生産設備やインフラの更新による新しい経 済の基礎を確立し、戦略実施第2 段階(2016~2022)に革新的な成長や新しい経済のイン フラ整備を行ない、戦略実施第3 段階(2023~2030)には従来のものとは本質的に異なっ た技術による革新的な経済開発を行っていく計画である。 (3) エネルギー部門の課題 エネルギー安全保障面では、燃料・エネルギー複合体における投資水準が低く設備の老 朽化が進んでいること(国内市場での活動における利益率が低く、エネルギー部門の大規 模な改修が充分に行われていないことも老朽化の一因となっている)や、国際的水準に満 たないロシアの工業水準、ロシアの経済やエネルギー部門が国内エネルギー消費の 53%を 天然ガスに依存しているという単一エネルギー源への依存度の高さ、東シベリアや極東に おけるエネルギーインフラ開発の遅れ、などが課題として挙げられている。 経済におけるエネルギーの効率化については、潜在的な省エネの可能性が国内エネルギ ー総消費の約40%にも上ることが課題とされ、省エネ推進に対する良好な経済環境の整備 や省エネ技術やプロジェクトに対する国の援助などが必要とされている。 エネルギー部門予算については、国内市場での活動における低い利益率の他に、国の税 収入の総額における燃料・エネルギー企業が占めるシェアの高さが課題として挙げられて おり、エネルギー企業に対する合理的な税負担や燃料・エネルギー複合体の企業の技術の 近代化や技術開発の推進などに対する戦略的な政策のサポートなどが必要とされている。 環境保全面については、エネルギー部門は大気汚染の 50%、表層水汚染の 20%、二酸化 炭素排出の70%を占める主な環境汚染源の一つとなっており、省エネ技術の導入や再生可 能エネルギーによる発電や熱生産を拡大するための条件整備などが必要とされている。 (4) 埋蔵資源の状況 2 本メモ 121 ページ 別表 2:2030 年までのロシアのエネルギー輸出計画を御参照。

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3 埋蔵資源の状況については、初期に開発された石油・ガス鉱脈の埋蔵量の消費が進み、 回収困難な鉱床の割合が増加していることが指摘されている。複雑で掘削しにくい燃料や エネルギーの割合が増加しており、東シベリア、極東、ヤマル半島、北極海の大陸棚、カ スピ海における資源探索によって、炭化水素生産の地理が変化している。毎年探索によっ て発見される埋蔵量は採掘量を下回っており、新たな地域や水域における地理的な探索の ペースの向上や地理的な探索や埋蔵資源利用における民間投資の推進などが必要とされて いる。 2030 年までの期間に、西シベリア、レノツグスカヤ、ティマンペチョスカラの石油・ガ ス生産地域が、石油・ガス鉱床増加の主要地域となり、北極海大陸棚や極東、南海の石油・ ガス鉱脈の開発も有望視されている。これによりロシアのエネルギー資源生産地域は徐々 に東方に移っていくことが見込まれる。 (5) 燃料・エネルギーバランスについて 国内消費におけるガスのシェアの増加や、高付加価値製品の生産の成長が遅く輸出にお けるエネルギー資源の高い割合も変わっていないなどの課題が指摘されている。石炭や化 石燃料以外のエネルギーのシェアを上げることにより国内消費におけるガスの割合を減ら すことや、燃料・エネルギー複合体からの付加価値の高い製品の製造、輸出、国内消費を 奨励することなどが必要とされている。原子力開発や、クリーンコールなど石炭を基盤と したエネルギー開発に対する国による直接的なサポートが見込まれている3 ロシアの燃料・エネルギーのバランスに関しては、以下の目標が示されている。 ① エネルギー消費において天然ガスの占める割合を、2005 年の 52%から 2030 年 には46~47%に引き下げる。 ② エネルギー消費において非化石燃料エネルギーの占める割合を11%から 2030 年 には13~14%に引き上げる。 ③ エネルギーの国内消費や輸出、生産の控えめな成長により、経済におけるエネル ギー部門の強さを大幅に減じる。 (6) イノベーションやエネルギー部門における科学・技術政策について 輸入されたエネルギー関連技術や装置に対する高い依存度や、近代的な要求に対するエ ネルギー企業の技術レベルの不適合等の課題があり、科学的・技術的潜在力の再生や開発、 革新的な活動のための好ましい環境の確保などが必要とされている。 科学的調査や、燃料・エネルギー複合体における極めて重要な技術の探知などに対する 経済的なサポートや、海外からの優れた技術の輸入や海外資産の購入に対する国の援助な どの方策などが見込まれている。 3本メモ125 ページ 別表 8:2030 年までのロシアのエネルギーバランス計画を御参照。

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4 (7) 国際エネルギー政策 国際エネルギー政策については、ロシアのエネルギー資源の販売市場や輸出商品構成の 多様性の不足、エネルギー通過国のロシアエネルギーへの依存の維持、ロシアと海外諸国 間の政治問題などの課題が指摘されている。輸出エネルギー市場や輸出商品構成の多様化 や、ロシアの主要な輸出エネルギー資源の安定した価格や安定した需要を含むエネルギー 市場の安定した状況の確保、北極海大陸棚プロジェクトを含むリスクがあり高度なプロジ ェクトの実施における有能な国際的企業の協力の確保などが必要とされている。 エネルギー問題の国際的協議プロセスへの積極的な参加や、独立共同体諸国やユーラシ ア経済同盟、北東アジア、上海経済機構、EU、その他の国際的機構や諸国とのエネルギー 協力の推進、技術的に高度なものやリスクの高いプロジェクトを優先した海外からの投資 勧誘に対する援助などが見込まれている。 (8) 燃料・エネルギー複合体の開発についての戦略的政策 燃料・エネルギー複合体の開発についての重要な戦略としては、①国の東部における燃 料・エネルギー複合体の開発、②北極海の大陸棚やロシアの北部領土における炭化水素鉱 床の開発、③エネルギーインフラの空間的多様性の開発、④非化石燃料エネルギーの開発、 ⑤省エネの推進が挙げられている。 サハリンの大陸棚や、サハ共和国、マガダンやイルクーツク、クラスノヤルスク地方等 の東部地域における燃料・エネルギー複合体の開発は、これらの地域のエネルギーの自給 をもたらすとともに、アジア太平洋地域の費用によってロシアの炭化水素輸出の多様性を もたらすものとされ、また、北極海大陸棚やロシアの北部領土の炭化水素鉱床の開発は、 石油・ガス生産の活力を安定化させ、2015 年から 2030 年までの間に見込まれるシベリア 地域の既存の石油・ガス田からの生産の減少を補うために行われるとされる。 最も重要な戦略的エネルギーインフラ整備事業としては、以下が挙げられている。 ① 東シベリア-太平洋間のパイプライン建設。 ② “北”と”南”の石油製品のパイプライン建設。 ③ “ノルドストリーム”と”サウスストリーム”のガスパイプライン建設。 ④ ヤマル半島からの多重のガス輸送システムの建設。 ⑤ 石油やコンデンセート、液化天然ガスなどの液体炭化水素のための海港や輸送イ ンフラの開発。 (9) 各エネルギー資源の課題や今後の方策 ① 石油複合体 初期に開発された西シベリアの石油鉱床が枯渇していく見込みであり、北極海や極東の 海の大陸棚や東シベリアや極東の石油資源の開発や、多種の構成要素を伴う石油・ガス混 合鉱床の広範囲な開発や、関連する石油ガス、メタン、ヘリウム、ガスコンデンセートの

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5 利用が必要とされている4 掘削についての複雑な技術の欠如や、輸出先の多様化に対するインフラによる制約など の課題があり、地質学的探索や新鉱脈の操業開始により石油資源の再生拡大を行うことや、 多種の成分を有する石油・ガス鉱床向けに、石油生産や関連する石油ガスの処理、石油・ ガス化学についての検討を行う大陸棚石油センターを開発すること、石油、石油製品の輸 送インフラの開発などが必要とされている。 国は、東方面への石油や石油製品の輸送インフラの開発によって、製品構造と輸出先の 多様化の実現を目指している。 ② ガス産業 チュメン地域の主要ガス鉱床が枯渇して行く見込みであり、ヤマル半島、北極海や極東 の海の大陸棚、東シベリア、極東において新たなガス生産センターを開発する必要がある。 ガス輸送パイプラインにおけるインフラの制約、欧州向けガス輸出における高い輸送リ スク、ガス精製やガス化学工業の開発不足などの課題があり、古い鉱床における産出の減 少を補うため、複雑な気候や地質学的環境を持つ辺境地域で新たな鉱床を稼働させ、国内 市場への供給や輸出先の多様化を目指した輸送インフラの適切な建設を行う必要がある。 ガス生産は、西シベリアやヨーロッパロシア、ヤマル半島など伝統的なガス生産地域や、 東シベリアや極東、カスピ地域など新たな石油・ガス生産地域の両方で発展する52030 年 までのガス生産予測は以下である。 ① ヨーロッパロシアのガス生産は、2005 年に 460 億立方メートルであったものが 1310~1370 億立方メートルに増加する。 ② 西シベリアのガス生産は、ヤマル半島やオビ湾やタズ湾の開発により6080~6370 億立方メートルの水準になる。 ③ 東シベリアや極東のガス生産は、1320~1520 億立方メートルに増加する。 新たな輸出ルートの開発に関しては、ノルドストリームプロジェクトに優先的な役割が 与えられる。ロシアのガスは、このガスパイプラインにより他国の領土を回避して欧州に 届けられることとなる。また、ガスパイプラインの建設と合わせて、ロシアの海外市場に おける地位を上げることを優先的な目的とした、液化天然ガス生産や輸送のプロジェクト が開発される。 ③ 石炭産業 収益性が低く将来性のない炭鉱の閉鎖や国営の石炭企業の廃止など、リストラはほぼ終 了している。石炭火力発電に対する国内需要の減少、石炭企業の輸出収入への依存度の増 加、石炭産業の革新的な潜在力の不足、ロシアの石炭機械製造業の開発の不足、輸入され た技術や装置への依存の増大などの課題があり、収益性が無く将来が見込めない石炭鉱の 4本メモ126 ページ 別表 9:2030 年までの各段階の石油生産計画を御参照。 5本メモ126 ページ 別表 11:2030 年までの各段階のガス生産計画を御参照。

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6 閉山プログラムの完了や、石炭貨物を経済的に合理的な料金で運搬し運搬先の多様化を図 ることを目的とした交通や港湾インフラの開発などが必要とされている。 ④ 電力産業 電力消費の中心が東部やヨーロッパロシアの都市部に移行しており、ロシア全体の統合 的なエネルギーシステムの中で、季節的、日中の時間的最大負荷が増大する傾向がある。 シベリアの水力・燃料資源の効率的活用に資するシベリアとロシア中心部間の配電網の 不在、近代的なコンバインド発電や環境に優しい石炭発電や送電技術の開発における技術 力のかなりの遅れ、電力産業の天然ガスへの依存度の非常な高さなどの課題があり、隔離 された地方のエネルギーシステムの接続や統合による、ロシアの総合的なエネルギーシス テムの改善、天然ガスに対する集中依存の軽減や国の燃料・エネルギーバランスの多様化 を目的とした、原子力発電、石炭火力発電、水力発電産業を含む再生可能エネルギー発電 の先行開発、新たな環境に優しく高能率の石炭火力や、高い性能を有するコンバインド発 電、新世代の送電網、その他の産業の能力を向上させる新たな技術導入の拡大などが必要 とされている6 ⑤ 原子力燃料サイクルと原子力発電産業 原子力発電産業は燃料基盤の再生産が可能であり、高速中性子原子炉や閉鎖的な核燃料 サイクルを含む新しい世代の原子力発電技術の導入や開発を伴う長期的な技術政策が、原 子力発電産業の燃料の制約を解消すると考えられており、伝統的な熱中性子原子炉の他に、 高速中性子原子炉や原子力燃料サイクル関連施設の建設が行われる予定である。なお、核 燃料サイクルや原子力発電産業における国家戦略の課題は、ロシアの原子力技術の輸出潜 在力を高め、原子力発電所や原子力燃料、電力の輸出を促進することとされる。 ⑥ 熱供給 都市部の熱供給については、熱供給ネットワークやボイラー室を主とした固定資産の高 い償却率や、運用の信頼性の不足、エネルギーロスの多さ、環境への悪影響などの課題が ある。 近代的かつ経済的、環境的なコジェネ装置の利用によるセントラルヒーティングを基盤 とした熱供給の開発や、スチームタービンやガスタービン、ディーゼル装置を基盤とした セントラルヒーティングの中規模地域や熱負荷の低い地域での拡大などが見込まれている。 ⑦ 再生可能エネルギーや地域エネルギー資源の利用 「ロシアの再生エネルギーの潜在能力は毎年45 億トンの石炭と同等である。それには主 として太陽エネルギーと風力エネルギーが含まれるが、現在の国のエネルギー消費の4 倍 6本メモ127 ページ 別表 14:2030 年までの各段階の電力生産計画を御参照。

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7 を超える。」という調査結果がある。 再生可能エネルギーを基盤として作られる電力のシェアを増加させ、電力消費の0.5%か ら4.5%にシェアを引き上げることが目標とされ、小規模水力発電所や風力・潮力・地熱発 電所、バイオマスを燃料の一部とする火力発電所などの稼働が見込まれる。 (10) 地域や産業界における燃料・エネルギー複合体の開発について ロシア領土内の燃料・エネルギー複合体開発は、ロシア連邦の地方政策や燃料・エネル ギー複合体の個々の産業開発のマスタープランの向上に基づいたものであり、地域の既存 のエネルギー潜在力に配慮しながら実施される。以下が各地域における実施方針である。 ① 中央部 中央部は電力産業や石油精製産業、石油化学産業が発展したエネルギー不足の地域であ る。原子力発電の役割や地域エネルギー資源の利用、省エネが強化される。 ② 北西部 北西部では、北極海大陸棚の活発な開発やエネルギー輸送インフラの開発が継続され、 戦略実施第2 段階の終わりまでにエネルギー余剰地域に転ずる。2030 年には石油や液化天 然ガスを含む天然ガス、電力を国内のエネルギー不足地域や海外に輸送するようになる。 ③ 南部地域 2030 年までに南部地域の燃料・エネルギーバランスにおける原子力発電や水力発電、地 域エネルギー資源による発電のシェアは増加する。地域のエネルギー安全保障が確立され るだけでなく、ロシアのエネルギー資源を国際市場に届ける輸出センターとしての役割も、 サウスストリームガスパイプラインやカスピパイプラインなどのエネルギー輸送インフラ の開発を基盤として強化される。 ④ ボルガ地域 伝統的なボルガ・ウラル地域の石油やガス生産は、徐々に減少していく。一方、石炭発 電設備の近代化や水力発電所開発が推進され、2030 年までに本地域の燃料・エネルギーバ ランスの中で石油やガスの占める割合が減り、石炭や水力発電の割合が増える。 ⑤ ウラル地域 自給率は若干下がるものの、ウラル地域の国内の主要なエネルギー生産地としての地位 は変わらない。ヤマル半島やオビ湾、タズ湾のガス鉱床で活発な開発が行われ、伝統的な ガス生産地域の生産減を補う。既存や新たに開発される鉱床から石油・ガス精製やガス化 学複合体へのパイプラインシステムや、新たなガス精製やガス化学複合体の建設も行われ る。

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8 ⑥ シベリア地域 クラスノヤルスクやイルクーツク地域では石油鉱床の開発やガスセンターの開発が行わ れる。2030 年には、ロシアにおいて石炭生産でトップ、石油・ガス生産で第 2 位となり、 石油化学の主要な地位を占め、ヘリウム輸出では主要な役割を果たすようになる。 ⑦ 極東地域 サハリン地域の石油・ガス鉱床や、サハ共和国の石油・石炭鉱床の開発が行われ、2030 年には、自らの消費を賄うだけでなくアジア・太平洋地域の諸国への輸出も行う、エネル ギー余剰地域となる。 2. 所見 エネルギー部門がロシア経済全体の成長や産業発展の基礎となるというロシアの基本構 造に揺るぎはない。ロシアのエネルギー部門は、国内産業部門にエネルギーを供給する一 方、最大の顧客として国内産業部門の生産を支えており、その動向はロシア国内経済に大 きな影響を与えている。 “2030 年までのロシアのエネルギー政策”では以下のエネルギー戦略の主要方針が示さ れている。エネルギー部門の成長がロシア経済の発展を保障するものであり、その為には これら方針の実現が不可欠である。 ① 埋蔵量の消費が進み今後減産が見込まれる伝統的な鉱床の代わりとなる新たな鉱 床を北極海大陸棚や西シベリア、極東地域に開発する必要がある。そのために当 該地域におけるエネルギー資源の生産・運輸インフラ整備を推進する。 ② エネルギー資源や製品の輸出先の多様化を図る。そのためにアジア・太平洋地域 への輸出を強化し欧州のエネルギー市場への依存度を下げる。 ③ 石油やガスなどのエネルギー資源そのものの輸出を、石油製品やガス化学製品な ど高付加価値製品の輸出にシフトして行く。そのために製品製造インフラ開発や 人材開発などを行う。 ④ 伝統的なエネルギー資源の効率的な利用や省エネ、原子力発電や再生可能エネル ギー利用などの新たな非炭化水素エネルギー資源や技術を基礎とした新たな投資 やイノベーションによる国のエネルギー部門の革新的な成長を目指す。 初期に開発されたヨーロッパロシア地域や西シベリア地域の地下資源の消費が進み、北 極海大陸棚や西シベリア、極東などロシア東部に生産の中心が移行しつつあるというのが 地理学的な流れである。 石油生産については、ロシア全体で2005 年に 470 百万トンであった生産量を 2030 年に は535 百万トンまで 65 百万トン増産する計画であるが、今までの主要生産地であったチュ

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9 メン地域で▲28 百万トン、ウラル地域で▲20 百万トン、ボルガ地域で▲17 百万トン減産 が見込まれている。これを今後開発が強化されるコサーカス・カスピ海地域で17 百万トン、 北部・北西部地域で19 百万トン、極東地域で 29 百万トン、東シベリア地域で 68 百万トン 増産することにより補っていく計画である。天然ガス生産についても、ロシア全体で2005 年に6410 億立方メートルであった生産量を 2030 年には 9400 億立方メートルまで約 3000 億立方メートル増産する計画であるが、主要生産地であったチュメン地域のナディム・プ ータソブスキィで▲2590 億立方メートルの大幅な減産が見込まれる。これを既存のヨーロ ッパロシア地域で910 億立方メートルの増産を行う一方、新規ガス田開発によりヤマル半 島で2200 億立方メートル、オズ湾・タズ湾で 680 億立方メートル、極東地域で 840 億立 方メートル、東シベリア地域で610 億立方メートル増産することにより補っていく計画で ある。 表1:2030 年までの各段階の石油生産計画 2005(実績) 2008(実績) (2010~2015)第1段階 (2016~2022)第2段階 (2023~2030)第3段階 第3段階最大値の2005年比増減 石油生産合計 (単位:百万トン) 470.2 487.6 486~495 505~525 530~535 65 2005年実績比(%) 100.0 103.7 103~105 107~112 113~114 114 以下を含む (単位:百万トン) 北部・北西部 24.5 29.1 32~35 35~36 42~43 19 ヴォルガ地域 52.7 54.1 49~50 44~45 34~36 -17 ウラル 49.2 52.6 45~47 36~41 25~29 -20 コーカサス・カスピ海地域 4.9 4.8 7~11 19~20 21~22 17 チュメン地域 320.2 319.0 282~297 275~300 291~292 -28 トムスク地域 14.1 13.7 12~13 11~12 10~11 -3 東シベリア 0.2 0.5 21~33 41~52 75~69 69 極東 4.4 13.8 23~25 30~31 32~33 29 表2:2030 年までの各段階のガス生産計画 2005(実績) 2008(実績) 第1段階 (2010~2015) 第2段階 (2016~2022) 第3段階 (2023~2030) 第3段階最大値の 2005年比増減 ガス生産合計 (単位:10億立方メートル) 641 664 685~745 803~837 885~940 299 以下を含む (単位:10億立方メートル) チュメン地域 585 600 580~592 584~586 608~637 88 以下を含む ・ナディム・プータゾブスキィ 582 592 531~559 462~468 317~323 -259 ・オズ湾・タズ湾 - - 0~7 20~21 67~68 68 ・ボルシェヘツカヤ 渓谷 3 8 9~10 24~25 30~32 29 ・ヤマル - - 12~44 72~76 185~220 220 ヨーロッパロシア地域 46 46 54~91 116~119 131~137 91 以下を含む ・カスピ海地域 - - 8~20 20~22 21~22 22 ・ストックマン鉱床 - - 0~23 50~51 69~71 71 東シベリア 4 4 9~13 26~55 45~65 61 極東 3 9 34~40 65~67 85~87 84 以下を含む ・サハリン島 2 7 31~36 36~37 50~51 49

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10 ロシアがエネルギー資源生産を東方地域にシフトして行く中で、生産地から近いために 輸送が欧州地域よりも行いやすく、今後のエネルギー需要の拡大も見込まれる中国や日本 をはじめとしたアジア太平洋地域が新たなエネルギー輸出先として有望視されていること は必然的な動きと理解される。中国との大規模な天然ガスの長期供給契約の締結はこの流 れに乗ったものである。 ただし、新たなエネルギー資源の探索や、生産・輸送のための新たなインフラ整備には 多額の資金が必要になる。2010 年から 2030 年までに合計で約 1 兆 8 千万ドル~2 兆 2 千 万ドル(邦貨187 兆~229 兆円:1 ドル=104 円)の必要投資額が見込まれており、ロシア 国内だけでは賄えない分については海外の金融機関などから調達する必要がある。 表3:2030 年までの燃料・エネルギー複合体等の開発に対する必要投資額(単位 10 億ドル) 投資額 第1段階 (2010~2015) 第2段階 (2016~2022) 第3段階 (2023~2030) 合計 合計 449~456 391~523 979~1196 1819~2177 以下を含む 石油産業 162~165 134~139 313~321 609~625 ガス産業 150~155 131~136 284~299 565~590 石炭産業 12~13 14~16 42~47 68~76 電力産業 122~126 110~233 340~529 572~888 熱・エネルギー供給産業 85~98 125~142 329~356 547~588 一方、戦略では、燃料・エネルギー複合体の開発の障害となるロシア産業界の技術的な 遅れが指摘されている7。具体的には、生産工程が複雑な石油精製産業に対するロシア製品 の供給シェアが30~40%に過ぎないことや、高効率で環境に優しい石炭火力発電機の生産 施設やタービン工学の遅れからロシア製のガスタービン発電機の供給が50%に達しないこ となどが挙げられている。今後の新規のエネルギー生産開発においても、特に自然条件の 厳しい極東地域や東シベリアの資源開発や北極海底資源の掘削等では欧米の先進技術の活 用が不可欠であろう。 2010 年に再検討されたこのロシアのエネルギー戦略の実現の障害となるものとして、ウ クライナ危機に関連して最近開始された金融取引の制限や石油分野の技術供与の制限など の欧米諸国のロシアに対する経済制裁8の今後の展開が注目される。最近の報道に拠れば、 ロシアでの新たなエネルギー開発の計画の見直しを始めた欧米企業が出始めてきており、 また、国営石油会社のロスチネフは欧米銀行からの資金調達が困難になったためにロシア 政府に対し資金援助の要請を行うなど新エネルギー開発に支障が出始めている。 7 本メモ115 ページ (2)燃料・エネルギー複合体と産業部門の開発の相互作用を御参照。 8 内容については、ロシア関連メモ 105 「EU によるロシア経済制裁の強化」 を御参照。

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11 経済制裁が長期間に亘り継続されることとなれば、ロシアの新たなエネルギー資源開発 に不可欠な資金や先進技術の海外からの導入がますます困難となり、ロシアのエネルギー 戦略の実施に大きな影響を及ぼすこととなるであろう。表1 や表 2 に示された新規の油田 やガス田開発計画が遅れた場合には、既存の主要生産地域の生産落ち込みによってロシア のエネルギー生産は減少に転じ、ロシア経済が縮小することとなる。(新規の鉱床開発が全 く行われなかった場合、石油生産は2030 年には 2005 年比 14%増加する計画が 14%の減 少になり、天然ガス生産については、ナディム地域で大幅な減産が見込まれるため、同時 期に46%増加する計画が 40%の減少になる。) これにより国民生活に影響が出るようになれば、現在非常に高い水準にあるプーチン大 統領に対する支持率が落ち込む可能性もあり、そうなった場合にロシアは、経済制裁の行 われる原因となったウクライナに対する対応の見直しを迫られることとなると考えられる。 我が国とロシアとの関係という観点からは、我が国が保有している高度な省エネ関連技 術、高効率・低公害の石炭発電機などの先進技術や、再生可能エネルギーや水素生産・貯 蔵等に関する新技術、核燃料サイクルや核廃棄物処理技術などに将来必要とされる技術な ど、ロシアのエネルギー部門に対する我が国の協力という面で、多くの可能性があると考 えられる。 エネルギー輸入先の多様化によりエネルギー調達リスクを軽減したいという我が国のニ ーズと、今後見込まれる東シベリアや極東のエネルギー資源開発によって東方に対するエ ネルギー資源輸出を増やしたいというロシアのニーズは合致し、日露両国の経済発展に資 するものである。我が国のエネルギー安全保障の面から、エネルギー分野における日露両 国の協力を今後も継続していくことが望まれる。

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12 第2. “2030 年までのロシアのエネルギー政策”のサマリー 1. 概要  ロシアの長期的なエネルギー政策については、当初、2003 年に 2020 年までの期間に ついての政策“2020 年までのロシアのエネルギー政策”が公表された。さらに、2008 年の世界金融危機を契機にエネルギー資源価格が暴落した後、次第に回復していく中 で、2010 年に、2030 年まで期間を延ばして新たな目標や国の開発優先事項が加えられ た “2030 年までのロシアのエネルギー政策”が公表された。その目的は、「天然資源 の効率的な利用と経済成長を最大化することにより、国民の生活の質を向上させ国際 的な経済的地位を強化することにある。」とされる。  “2030 年までのロシアのエネルギー政策”では、2010 年時点での“2020 年までのロ シアのエネルギー政策”の計画の実施状況を分析したうえで、2030 年までの社会経済 発展やロシアのエネルギー資源に対する見通しについて触れ、さらにこれらに基づい た新たな国のエネルギー政策が展開されている。 2. “2020 年までのロシアのエネルギー政策”の 2010 年時点における実施状況について  数量目標は未達なところもあるが、①競争的な自由貿易市場の導入や、②新しい水準 のエネルギー効率化への転換の完了、③燃料・エネルギー複合体の国の経済を牽引す るという役割から国の経済や国民の需要に効率的に安定して供給するという役割への 転換などにより、「エネルギー分野における安定的・進歩的な開発の基盤を築くことが 出来た。」と評価されている。 3. 2030 年までの社会経済発展の主な傾向と見通しについて  人的資源の質の向上や革新的な製造業の近代化などにより国内経済の競争力・効率化 を向上させることが戦略的発展のシナリオの前提である。エネルギー部門は引き続き 支配的役割を保ち、最大の顧客として他産業の発展を支える。  ロシアの伝統的な部門における経済的な強みや新たな知識集約型の部門に加えて、人 材の効率性や高度な技術産業の育成、及び革新的要因を経済成長の主な要因とするこ とが戦略的発展のシナリオの前提となっている。このシナリオの前提の実施により、 国内経済の競争性や制度の多様性、効率性を向上させ、ロシアの社会経済発展のレベ ルや水準を他の先進国と同等にすることが目指される。  ロシアのエネルギー分野は、国の発展にとって重要な支配的役割を保つこととなる。 これが、ロシアの地域間のインフラによる接続の欠如を解消し、東シベリアや極東地 域の社会経済の発展を加速させる新たなエネルギーインフラの建設を通してエネルギ ー供給と製造業に基づく新たな産業クラスターを創造する。  ロシアのエネルギー部門は、技術工学、治金、化学などのロシアの多くの産業や、建

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13 設や運輸などの産業の最大の顧客として、国内経済の革新的な発展を支える投資にお いて重要な役割を果たす。 4. ロシアのエネルギー資源に対する需要の見込み  エネルギー非消費型産業に有利な経済構造に変容して行く一方、省エネの推進が行わ れ、ロシア経済の電力やエネルギーへの集中は低下する。エネルギー輸出の成長率は 次第に減少し、2030 年頃に輸出量は固定化する。中国や日本などの東方のエネルギー 市場に対する輸出の多様化により、欧州のエネルギー市場の割合は徐々に減っていく。  市場の需要に合わせてエネルギー消費の少ないハイテクや科学集約的な産業が成長す るが、一方、エネルギーや原材料集約型の産業の成長速度は鈍化する。このためロシ ア経済はエネルギー非消費型産業に有利な経済構造に変容していく。  本質的に省エネ型である製造部門やハイテクサービスが、石油やガス部門よりも強力 に経済成長を進める。経済構造の変化と同時に、省エネのための組織的技術的な施策 が実施され、その結果、2030 年までにロシア経済の電力やエネルギーへの集中ははっ きりと低下する。  ロシアは、引き続き国際的な炭化水素の主要なプレーヤーに留まり、電力や石炭市場 の発展に活発に貢献し、国際的な原子力発電産業における地位を強化していく。ロシ アの昔からのエネルギー資源消費者と安定した関係を継続する一方で、新たなエネル ギー市場においても同様の安定した関係を発展させていくことも、主要な原則の一つ に挙げられている。  一次エネルギーの輸出と同時に、高次に付加されたエネルギー製品の輸出や、ロシア の燃料・エネルギー企業による海外生産の成長が強調される。非常に競争性の高い石 油やガス化学製品の国際的市場も、将来はロシアの特別な関心の対象となる。  2030 年までの間、エネルギー資源の輸出がロシア経済の主な発生的要因となるが、そ の経済に対する影響は減少していく。エネルギー輸出の成長率は次第に減少し、2030 年頃には輸出量は固定化する。この傾向は、経済の多様化を行いエネルギー輸出に対 する国の依存を引き下げるという、国の長期経済政策と一致している。  欧州や独立国家共同体のエネルギー市場がロシアの燃料・エネルギー複合体の生産物 の主な販売先であることは変わらない。輸送リスクを減らすため、これらの市場に対 するロシアからの安定したエネルギー供給を確約するための大規模な輸出インフラの さらなる開発を含む方策が実施される。同時に、東方のエネルギー市場(中国、日本、 韓国、太平洋のその他諸国)に対する輸出の多様化により、欧州のエネルギー市場の 割合は徐々に減っていく。2023~2030 年には、東方のエネルギー輸出の割合は、石油 や石油製品については現在の6%から 22~25%に、天然ガスについては 0%から 19~20% に増加する見込みである。  ロシアは、世界の主要なエネルギー資源輸出者としての地位を保持しつつ、製品構造

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14 やエネルギー輸出先の多様化や、新たな国際的エネルギービジネスの開発、国外での ロシア企業の存在の強化などにより、国際エネルギー市場における地位の質的な変換 を行う。これによってロシアのエネルギー部門の欧州へのエネルギー資源輸出に対す る依存性を減少させ、一次エネルギーの輸出を増加させなくても、ロシアのエネルギ ー企業の国際ビジネスの効率性と収益性を増加させることが可能になる。 5. 国のエネルギー政策 (1) 3 つの段階における政策  戦略実施第1 段階にはエネルギー部門の基本的な生産設備やインフラは更新され新し い経済の基礎が確立される。戦略実施第2 段階には革新的な成長や新しい経済のイン フラ整備が行われ、戦略実施第3 段階には従来のものとは本質的に異なった技術が強 調される革新的な経済開発が行われる。  戦略実施第 1 段階(2010~2015)では、経済危機を克服し新しい経済の基礎を確立す る。国のエネルギー政策の全ての主要項目が迅速に進展できるように国内外の障害を 取り除くために必要な環境が整えられる。エネルギー部門の基本的な生産設備やイン フラはこの段階で更新される。  戦略実施第 2 段階(2016~2022)では、革新的な成長や新しい経済のインフラ整備が 行われる。その結果、第2 段階では、生産設備の近代化や、関連する規制・制度の改 正、第1 段階で整備された東シベリアや極東、北極海やヤマル半島の大陸棚における 投資集約的なプロジェクトの実現、経済界や燃料・エネルギー複合体におけるエネル ギー効率の向上がなされる。  戦略実施第 3 段階(2023~2030)では、伝統的なエネルギー資源の効率的な利用や、 新たな非炭化水素エネルギー資源や技術を基礎とした、従来のものとは本質的に異な った技術が強調される革新的な経済開発が行われる。国は、主にエネルギー部門の革 新的な開発のサポートや、エネルギー部門の効率的な機能のための関連する持続可能 な制度的な環境整備に関与する。 (2) 主な戦略のガイドライン ① 国のエネルギー安全保障のための戦略  投資水準が低く設備の老朽化が進んでいることや工業水準が国際的水準に達していな いことなどが課題であり、戦略的な備蓄システムの開発や新たなエネルギー資源鉱床 の開発を必要としている。  国のエネルギー安全保障における課題は、①燃料・エネルギー複合体における投資水 準の低さ、②燃料・エネルギー複合体における高い減価償却率。(電力やガス産業にお

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15 いては約60%、原油精製工業においては 80%)、③ロシアの経済やエネルギー部門が、 国内エネルギー消費の53%を天然ガスに依存しているという、単一エネルギー源への 依存度の高さ、④環境水準も含めて、燃料・エネルギー複合体の工業的な潜在能力が、 国際的な科学・技術水準に対して未達、⑤東シベリアや極東におけるエネルギーイン フラ開発の遅れなどである。  エネルギー安全保障を確保のためには、①燃料やエネルギー資源の戦略的な備蓄シス テムの構築や、発電やエネルギー輸送における最低限の余力の確保、季節的な備蓄の 水準、エネルギー部門における重要事故発生時に対応するための備品の備蓄などにつ いての規制、②経済のあらゆる部門や国民社会的に重要な機関、私企業などに対する エネルギー安全保障の供給における、連邦や地方政府の実施主体や機構と、エネルギ ー供給会社やエネルギー消費企業の権限や責任の分離、③時宜を得た資源探索、伝統 的な資源の新たな鉱床の準備や開発、官民連携、合理的な税政策、代替的な新エネル ギー利用の準備などが必要である。 ② 経済におけるエネルギーの効率化のための戦略  潜在的な省エネの可能性が国内エネルギー総消費の約40%に上ることが課題であり、 省エネ推進に対する良好な経済環境の整備や省エネ技術やプロジェクトに対する国の 援助などを必要としている。  経済におけるエネルギーの効率化における課題は、手の付けられていない組織的・技 術的な潜在的に可能と思われる省エネが、住居で18~19%、発電、交通、鉱業で 13~15%、 熱供給で9~10%、燃料生産やエネルギーの供給で 5~6%、農業で 3~4%見込まれ、国内 のエネルギー総消費の約40%に上るということである。  経済におけるエネルギーの効率的利用には、①省エネ活動に対する企業の推進や省エ ネ市場の創造などによる省エネ推進に対する良好な経済環境の整備、②効率的なエネ ルギー利用に対する義務の強化や、非効率な装置の交換に対する税制優遇など、規制 や、水準、基準の設定、③国や地方政府による省エネプログラムの設立や、省エネ技 術やプロジェクトに対する国の援助などが適用される。 ③ エネルギー部門予算の効率性のための戦略  国内市場での活動における相対的に低い利益率や、国の税収入の総額における燃料・ エネルギー企業が占めるシェアの高さが課題であり、エネルギー企業に対する合理的 な税負担や燃料・エネルギー複合体の企業の技術の近代化や技術開発の推進など戦略 的な政策のサポートなどが必要とされる。  エネルギー部門予算の課題としては、①エネルギー企業の輸出収入に重きを置いた現 在の財政政策の下、国内市場での活動における相対的に低い利益率のために、エネル

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16 ギー部門の大規模な改修が充分に行われていないことや、②国の税収入の総額におい て燃料・エネルギー企業が占めるシェアのバランスが取れていないことが挙げられて いる。  エネルギー部門予算の効率性のための戦略には、①エネルギー企業に対する合理的な 税負担や投資家の権利を保護する法制度などによる好ましいビジネス環境の形成、② エネルギー分野の技術面の見直しなど将来の規制や水準、基準のためのシステムの構 築、③エネルギープロジェクトの実施のための官民連携の発展や燃料・エネルギー複 合体の企業の技術の近代化や技術開発の推進など戦略的な政策のサポートなどが適用 される。 ④ ロシアのエネルギー部門の環境保全のための戦略  エネルギー部門は主な環境汚染源であり、省エネ技術の導入や再生可能エネルギーに よる発電や熱生産を拡大するための条件整備などが必要とされる。  エネルギー部門は、大気汚染の 50%、表層水汚染の 20%、二酸化炭素排出の 70%を占 める主な環境汚染源の一つである。  ロシアのエネルギー部門の環境保全のための戦略には、①燃料・エネルギー資源の製 造、輸送、貯蔵、消費における省エネ技術や、環境に優しいエネルギーを導入するた めの環境整備、②石油ガスの適切な利用やフレアリングの削減を妨害する施設や技術 の排除、③再生可能エネルギーによる発電や熱生産を拡大するための条件整備などが 適用される。 (3) 埋蔵資源の利用  埋蔵資源の利用については、複雑で掘削しにくい燃料やエネルギーの割合が増加して おり、東シベリア、極東、ヤマル半島、北極海の大陸棚、カスピ海における資源探索 によって、炭化水素生産の地理が変化しているという傾向がある。毎年探索によって 発見される埋蔵量は採掘量を下回っており、新たな地域や水域における地理的な探索 のペースの向上や地理的な探索や埋蔵資源利用における民間投資の推進などが必要と されている。  埋蔵資源の利用についての国家エネルギー政策の戦略的目的は、国の経済のエネルギ ー需要やエネルギー輸出に合わせて、持続可能な効率的で環境に優しい資源の再生産 を確保することである。  ロシアの埋蔵資源については、①ロシアの燃料やエネルギー資源の中で、複雑で掘削 しにくい燃料やエネルギーの割合が増加している、②東シベリア、極東、ヤマル半島、 北極海の大陸棚、カスピ海における資源探索によって、炭化水素生産の地理が変化し ているという傾向がある。

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17  この分野では、①毎年探索によって発見される埋蔵量は、採掘量を下回っている、② 東シベリア、極東、ヤマル半島、北極海の大陸棚における地理的な探索のペースはか なり遅い、③既存の埋蔵資源の探索は、包括的に全量を採掘するという視点から見れ ば非効率であるなどの課題がある。  戦略的な目標の達成のためには、①新たな地域や水域における地理的な探索のペース の向上、②地理的な探索や埋蔵資源利用における民間投資の推進、③包括的な全量採 掘や石油採掘の割合を改善するなど埋蔵資源の効率的な利用の推進などが必要とされ る。  その為に、①地理的な探索に対する国の資金提供や、北極海大陸棚を含む新たな地域 や水域の開発における国家関与の増強、②許可政策の改善、探索に対する過度な行政 の障害の撤廃、埋蔵資源利用者に対する税制優遇の迅速な適用、③ロシア大陸棚にお ける探索のために特別な税体系の設置などの方策や国家エネルギー政策のメカニズム が用いられる。 (4) 国内エネルギー市場の開発  国内エネルギー市場においては、市場の基本的な機構や為替取引のメカニズムなど市 場インフラの不足や国内市場の不平等な取引につながる地域的・技術的な独占の存在 などの課題があり、カルテルや技術の独占を防止するための反モノポリ法の強化や、 エネルギー市場監査の先進的なシステムの構築など透明性のある公平な制度の創造が 必要とされている。  国内エネルギー市場の戦略的な目標は、高品質のエネルギーを適切な価格で得ること に対する国内の需要に、安定して応えることである。そのために、フェアトレードの 原理に基づく競争性のある市場が必要とされる。  国内エネルギー市場の最近の傾向は、エネルギー為替取引や、石油やガス部門におけ る国の参加の強化である。  ①市場の基本的な機構や為替取引のメカニズムなど市場インフラの不足、②国内市場 の不平等な取引につながる地域的、技術的な独占の存在、③主なエネルギー資源の国 内価格の不均衡、④エネルギーインフラへのアクセスに関する不透明性などの課題が ある。  戦略的な目標の達成のためには、①エネルギー市場における経済的な集中に対する国 のコントロールや、エネルギー部門における独占に対する国の規制の強化、②全ての タイプの燃料・エネルギー資源に関する国内での為替取引システムの開発、③エネル ギーインフラに対するアクセスシステムの強化、④全てのエネルギー市場における潜 在的な競争力の増強や、省エネや効率的利用を促進するための効果的で安定した価格 システムの創造などが必要とされる。  その為に、①カルテルや技術の独占を防止するための反モノポリ法の強化や、エネル

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18 ギー市場監査の先進的なシステムの構築など、透明性のある公平な制度の創造、②エ ネルギーの為替取引や、エネルギーデリバティブ取引への民間企業の参加の推進、③ 国内市場におけるガス、電力、熱など基本的なエネルギーの自由化の推進などの方策 や国家エネルギー政策のメカニズムが用いられる。 (5) 適切な燃料・エネルギーバランスの推進  国のエネルギー需要に応じるための再生可能エネルギーの役割の増大や、新たなニュ ーコール技術による石炭産業の発展が最近の傾向として挙げられる。国内消費におけ るガスのシェアの増加や高付加価値製品の生産の成長が遅く、輸出におけるエネルギ ー資源の高い割合も変わっていないことなどの課題がある。  石炭や化石燃料以外のエネルギーのシェアを上げ、国内消費におけるガスの割合を減 らすことや、燃料・エネルギー複合体からの付加価値の高い製品の製造、輸出、国内 消費を奨励することなどが必要とされており、石炭やガスなどの代用エネルギーの効 率的な競争環境の整備や、原子力開発や、クリーンコールなど石炭を基盤としたエネ ルギー開発に対する国による直接的なサポートが見込まれる。  適切な燃料・エネルギーバランスを形成するためのエネルギー政策の戦略的方針は、 エネルギー安全保障の必要性や、経済性やエネルギー効率性を考慮して、燃料・エネ ルギーの生産と、国内消費、輸出を最適化し、ロシアの国際経済における地位を強化 することである。  ①国のエネルギー需要に応じるための再生可能エネルギーの役割の増大、②新たなニ ューコール技術による石炭産業の発展、③高付加価値のエネルギー製品の開発が最近 の傾向として挙げられる。  この分野の課題としては、①国内消費におけるガスのシェアの増加、②高付加価値製 品の生産は期待されていたほど伸びず、輸出におけるエネルギー資源の高い割合も変 わっていないこと、③原子力エネルギーの開発のペースが遅いこと、④再生可能エネ ルギー開発や、地域のエネルギーバランスにおいて地元産のエネルギー資源の利用が 不十分であること、⑤国や地方政府レベルで、熱量やエネルギー利用のバランスを予 測してエネルギー企業を管理するメカニズムが不足していること等が挙げられる。  戦略的な目標の達成のためには、①石炭や化石燃料以外のエネルギーのシェアを上げ、 国内消費におけるガスの割合を減らすこと、②多様な燃料・エネルギー資源間におい て、輸出と国内消費の適切な割合を定めること、③燃料・エネルギー複合体からの付 加価値の高い製品の製造、輸出、国内消費を奨励することなどが必要とされる。  その為に、①石炭やガスなどの代用エネルギーの効率的な競争環境の整備や、原子力 開発や、クリーンコールなど石炭を基盤としたエネルギー開発に対する国による直接 的なサポート、②燃料・エネルギーバランスの構造や傾向についての見通しを考慮し た再生可能エネルギーの長期的な政策の精緻化、③国内市場と輸出のエネルギー供給

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19 における同等の収益性の確保、④エンジン燃料や石油精製の質の向上を目指した国家 政策の実現、石炭の処理や濃縮プロジェクト、天然ガス、石炭、バイオマスなどすべ てのエネルギー資源に基づく合成液体燃料プロジェクトに対する国家の適切なサポー トなどの方策や国家エネルギー政策のメカニズムが用いられる。 (6) 地域エネルギー政策  エネルギー生産や精製、輸出の中心は国の北部や東部に移行しつつある。地域ごとの エネルギー自給率や消費の不均衡のレベルの高さや、複数の地域間や地域内のエネル ギー供給システムにおける障害などの課題がある。  エネルギー部門の開発のための規制や促進における権限や責任の分権による連邦の行 政権と地方政府の行政権の間の相互交流の改善や、国による地域をまたがるエネルギ ーインフラ整備のサポートなどが必要であり、複数の地域間や地域内のエネルギーの 移動に必要とされる搬送ラインや、エネルギー集約タイプや省エネタイプなどの地域 特性に合った地域工業クラスターのための様々なタイプのエネルギーインフラの開発 が見込まれる。  地域エネルギー政策の目的は、エネルギー生産や消費の地域的な構造の最適化により 地域のエネルギー安全保障を確保できる、安定した自己調整的なシステムを作ること である。  この分野における最近の傾向は、エネルギー余剰とエネルギー不足の新たな地理学や、 エネルギー生産や精製、輸出の中心が国の北部や東部に移行しつつあることである。  この分野の課題としては、①地域ごとのエネルギー自給率や消費の不均衡のレベルの 高さや、産出地域から連邦中央部へのエネルギー製品収入の合理的な移転、②マスタ ープランや個々の産業の戦略、連邦のターゲットプログラムなどの燃料・エネルギー 複合体に関する連邦の戦略教書や、エネルギー企業の投資プログラムと、地域の社会 経済の発展のための戦略や政策や計画との間の一貫性の欠如、③複数の地域間や地域 内のエネルギー供給システムにおける障害などが挙げられる。  戦略的な目標の達成のためには、①省エネ政策の実現や、エネルギー安全保障や安定 供給、エネルギー部門の開発のための規制や促進における権限や責任の分権による、 連邦の行政権と地方政府の行政権の間の相互交流の改良、②国による地域をまたがる エネルギーインフラ整備のサポート、③東シベリアや極東、ヤマル半島、北極海のエ ネルギー開発などのエネルギービジネスや、国家の主な地域の戦略的政策の実施など が必要とされる。  その為に、①エネルギー部門や産業に対する国と地域の戦略的開発プログラムの整合 性を確立し、様々なレベルの官庁の責任や権限について法的な分離を行い、エネルギ ー生産から得られる収入分配の透明性を改善すること、②複数の地域間や地域内のエ ネルギーの移動に必要とされる搬送ラインや、エネルギー集約タイプや省エネタイプ

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20 などの地域特性に合った地域工業クラスターのための様々なタイプのエネルギーイン フラの開発、③地域のエネルギープログラムや、省エネや地域エネルギー資源の費用 効率の良い利用の最大化、費用効率の良い分散化や個別のヒーティングシステムなど の精緻な作り込みや実施などの方策や国家エネルギー政策のメカニズムが用いられる。 (7) イノベーションやエネルギー部門における科学・技術政策  輸入されたエネルギー関連技術や装置への高い依存度や近代的な要求に対するエネル ギー企業の技術レベルの不適合等の課題があり、科学的・技術的潜在力の再生や開発、 革新的な活動のための好ましい環境の確保などが必要とされる。  科学的調査や革新的な活動や、燃料・エネルギー複合体における極めて重要な技術の 将来の傾向についての探知に対する経済的なサポート、海外からの優れた技術の輸入 や海外資産の購入に対する国の援助などの方策などが見込まれる。  国のエネルギー政策におけるこの要素の戦略的な目的は、高度に効率的な国内の技術 や装置や、国のエネルギー安全保障を維持するために必要とされる科学的、技術的、 そして革新的な解決策を、ロシアの燃料・エネルギー複合体に提供することによって、 エネルギー部門に持続可能な国の革新的システムを構築することである。  この分野の最近の傾向は、燃料・エネルギー複合体における資本集約的な科学的・技 術的開発の成長や、エネルギー部門におけるテクノロジーパークなど包括的調査や生 産システムの発展である。  この分野の課題としては、①輸入されたエネルギー関連技術や装置への高い依存度、 ②近代的な要求に対するエネルギー企業の技術レベルの不適合、③科学とビジネス供 給者の間の総合的・普遍的な交流システムの欠如、④技術移転センターや、イノベー ション・技術センター、テクノロジーパーク、ベンチャーファンドなどの革新的なイ ンフラ開発がエネルギー部門では行われていないことなどが挙げられる。  戦略的な目標の達成のためには、①基礎科学、応用調査や開発、実験的な施設や科学 的・技術的情報システムなどを含む、科学的・技術的潜在力の再生や開発、②燃料・ エネルギー複合体の工業的・技術的基盤の根本的な刷新、省エネ、エネルギープラン トやシステムの効率性、安全性、環境的な業績の強化、再生エネルギーの迅速な開発、 消費者が所有する燃料・エネルギー製品の向上などを目的とした、革新的な活動のた めの好ましい環境の確保、③ロシアのエネルギー部門の革新的発展や、海外で実現済 みの類似のプロジェクトのために用意されたプロジェクトの開発や実施における、エ ネルギー企業の活動に対する国家のサポートや助成の整備、④科学的・技術的活動の 結果に対する権利の保護、⑤国際的に最高の解決策の実施や、最高の質のレベルでの 国内開発の実現を目的とした国際協力の潜在力の活用、⑥人材開発や、科学的基盤、 科学、教育、イノベーションの統合を発展させ維持することなどが必要とされる。  その為に、①今後予想される効率性や世界の傾向、調査・開発に対する国のサポート

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21 を考慮した、科学的調査や革新的な活動、及び燃料・エネルギー複合体における極め て重要な技術の将来の傾向についての探知に対する経済的なサポート、②予算の活用 や商業上の利益の一部を調査や開発面に還元することによる、エネルギー需要に合致 した新たな方法の探索を目的としたエネルギー部門における基本的な科学のための資 金の確保、③革新的なサイクルの復活:基礎研究、実地調査、プロジェクトの計画、 プロトタイプモデルの策定、プロトタイプモデルの策定における国家の参加、調査や 開発活動向けの投資に対する免税、エネルギー企業による国内産の機械や技術、ロシ アにとっては新しい外国製品や技術の購入に対する税的優遇の提供、④エネルギー部 門におけるエンジニアリング会社や設計会社、その他先進的・革新的技術を実施する 会社に対してインセンティブとなる税制度の開発、⑤エネルギー部門におけるイノベ ーション分野におけるベンチャー企業の促進、⑥海外からの優れた技術の輸入や海外 資産の購入に対する国の援助などの方策や国家エネルギー政策のメカニズムが用いら れる。 (8) エネルギー部門における社会的政策  エネルギー生産地域における社会インフラ開発の不足や燃料・エネルギー複合体にお ける人的資源の一般的な低下などの課題があり、国民に対して適切な価格でエネルギ ー供給を行うことが出来るエネルギー供給体制やエネルギー部門で用いられる人的資 源の能力開発や向上などが必要とされる。  エネルギー小売価格の独占に対する規制や、職業的再訓練や個人の再訓練を考慮した 職業教育システムの普遍化、全てのレベルの専門家の訓練強化などの方策が見込まれ る。  この分野の国家政策における戦略的な目標は、エネルギー部門と社会の間の社会的協 力の開発や、エネルギー部門における人的資源の再生産である。  社会とエネルギービジネスの間の相互依存や関係の高度化に関連したこの分野の最近 の傾向は、国民のエネルギー製品やサービス消費の増加と、燃料・エネルギー複合体 の開発における人的資源の役割の増加である。  この分野の課題としては、①国内の主な石炭や石油、ガスの生産地域における社会イ ンフラ開発の不足、②炭鉱の重大事故における人的要因の増大、③燃料・エネルギー 複合体における人的資源の一般的な低下などが挙げられる。  戦略的な目標の達成のためには、①国民に対して適切な価格でエネルギー供給を行う ことが出来るエネルギー供給体制、②エネルギー産業の発展や機能に関する課題の解 決における、社会とエネルギー産業界との間の実務的な協力の開発、③エネルギー部 門で用いられる人的資源の能力開発や向上などが必要とされる。  その為に、①国民の支出の中におけるエネルギー関連費の比率維持を目的とした、ガ ス、熱、電力、石油製品などのエネルギー小売価格の独占に対する規制、②国民に対

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22 するエネルギー供給のためのエネルギー業界の責任の強化、③家庭や政府機関のため のエネルギー供給の備蓄率についての規制の整備、④事故や傷害率を減らすことによ る燃料・エネルギー複合体の企業に安全な労働条件の形成、⑤地域センターの特別な システムや、近代的な要請に合わせた職業的再訓練や個人の再訓練を考慮した職業教 育システムの普遍化、全てのレベルの専門家の訓練強化などの方策や国家エネルギー 政策のメカニズムが用いられる。 (9) 国際エネルギー政策  ロシアは、生産能力の一層の強化や、主たるエネルギー資源やそれから産出される製 品、およびロシアの企業が競争力のある強みを有している技術の輸出に備えることに 関心がある。  ロシアのエネルギー資源の販売市場や輸出商品構成の多様性の不足、エネルギー通過 国のロシアエネルギーへの依存の維持、ロシアと海外諸国間の政治問題などの課題が あり、エネルギー問題の国際的協議プロセスへの積極的参加や、独立共同体諸国やユ ーラシア経済同盟、北東アジア、上海経済機構、EU、その他の国際的機構や諸国との エネルギー協力の推進、技術的に高度なものやリスクの高いプロジェクトを優先した 海外からの投資勧誘の援助などが見込まれる。  国際エネルギー政策の戦略的な目的は、ロシアのエネルギー潜在力を全面的に統合し て国際エネルギー市場で効率的に活用し、そこでの地位を上げ、国の経済のために最 も高い利益を上げることである。  今日、ロシアはすでにエネルギー資源取引の国際的なシステムにおいて主要な地位の 一つを占めており、燃料・エネルギー生産やエネルギー市場への供給における国際的 な協力において積極的な役割を果たしている。ロシアは、生産能力の一層の強化や、 主たるエネルギー資源やそれから産出される製品、およびロシアの企業が競争力のあ る強みを有している技術の輸出に備えることに関心がある。従来からのロシアのエネ ルギー資源の利用者との安定した関係と、新たなエネルギー市場との同様に安定した 関係は、国のエネルギー政策にとって、国の国益と調和した国際的なエネルギー安全 保障の確立という意味で、最も重要な方向性である。  この分野における最近の傾向は、主要な燃料・エネルギー資源の国際価格のボラティ リティの高さや、ロシアのエネルギー資源の伝統的な市場における競争の激化である。  この分野の課題としては、①世界の経済危機によるエネルギー資源ニーズの減少と価 格の下落、②ロシアのエネルギー資源の販売市場や輸出商品構成の、多様性の不足、 ③エネルギー通過国のロシアエネルギーへの依存の維持、④ロシアと海外諸国間の政 治問題、⑤国際市場におけるロシアエネルギー企業の活動の少なさが挙げられる。  戦略的な目標の達成のためには、①国際エネルギー市場の開発システムの予見可能な 安定した発展を目指して、本システムにおけるロシアの国益を評価すること、②輸出

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23 エネルギー市場や輸出商品構成の多様化、③ロシアの主要な輸出エネルギー資源の安 定した価格や安定した需要を含む、エネルギー市場の安定した状況の確保、④海外に おけるロシアの主要エネルギー企業の地位の向上、⑤北極海大陸棚プロジェクトを含 む、リスクがあり高度なプロジェクトの実施において有能な国際的企業の協力の確保 が必要とされる。  その為に、①エネルギー問題の国際的協議プロセスへの積極的参加、エネルギー資源 の国際的合意や国際的組織における輸入者や輸出者、移送者の利益のバランスの確保、 ②独立共同体諸国やユーラシア経済同盟、北東アジア、上海経済機構、EU、その他の 国際的機構や諸国とのエネルギー協力の発展、③石油輸出国諸国機構やガス輸出国フ ォーラムのメンバー国との、国際ガス・石油市場における活動の調整、④相互利益の 前提で、技術的に高度なものやリスクの高いプロジェクトを優先した海外からの投資 勧誘の援助、⑤国際資金市場や先進的なエネルギー技術へのロシアエネルギー企業の アクセスの確保、⑥ロシアのエネルギー資源の販売市場や輸出先の多様化を目的とし た、国の東部、南部、北西部、北部における交通インフラ建設の奨励、⑦水素、核融 合、潮流エネルギーなどの将来のエネルギーの開発における国際協力へのロシアの積 極的な参加などの方策や国家エネルギー政策のメカニズムが用いられる。 6. 燃料・エネルギー複合体の発展見込みと戦略的な政策 (1) 2030 年までの期間における燃料・エネルギーのバランス  2030 年までに計画されたロシアの燃料・エネルギーのバランスに関して、以下が行わ れる予定である。 ① エネルギー消費において天然ガスの占める割合を、2005 年の 52%から 2030 年 には46~47%に引き下げる。 ② エネルギー消費において非化石燃料エネルギーの占める割合を11%から 2030 年 には13~14%に引き上げる。 ③ エネルギーの国内消費や輸出、生産の控えめな成長により、経済におけるエネル ギー部門の強さを大幅に減じる。 (2) 燃料・エネルギー複合体の開発についての戦略的政策  重要な戦略として、①国の東部における燃料・エネルギー複合体の開発、②北極海の 大陸棚やロシアの北部領土における炭化水素鉱床の開発、③エネルギーインフラの空 間的多様性の開発、④非化石燃料エネルギーの開発、⑤省エネの推進が挙げられてい る。  戦略は、国内経済のエネルギー資源に対する増大する需要を満たし、エネルギー生産 と消費の構造を最適化し、経済やエネルギー部門のエネルギー効率を改善し、世界や 国家、地域のエネルギー安全保障を推進することを目的とし、燃料・エネルギー複合

参照

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