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考えを伝える力の育成をめざして

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Academic year: 2021

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考えを伝える力の育成をめざして

-児童の実態に応じた授業の工夫-

高 度 学 校 教 育 実 践 専 攻 教 員 養 成 特 別 コ ー ス

小 川 梓

キーワード:考えを伝える力,授業の工夫 1. 課題設定の理由

筆者は学部時代の教育実習で,子どもが答 えを出そうとする際に「こう答えてほしい」

と理想の解答へ導こうとする支援と思いが 強すぎたため,教師の答え探しのような授業 をしていた。そこで,子どもが考えをもって,

それを表現することのできる授業をしたい と思い,大学院では自分の考えを相手に伝え ることの必要性が子どもたちにわかるよう な授業構成の方法を取り上げたいと考えて いた。

しかし,教職大学院入学後の講義やインタ ーンシップを通じ,授業構成そのものより,

筆者がめざす授業を実現するためには,まず 子ども自身が伝える材料となる考えをもつ ことや伝えようとする思いをもつことが重 要になると気付いた。

これらのことから,子どもが自分の考えを 持つことと,それを表現しようとする意欲を 養うことが,伝える力の育成につながるので はなるのではないかと考え,本研究課題を設 定した。

2. 1年次の実践研究

1年次の前期授業科目の「授業づくりのチ ーム演習」で行った模擬授業と,基礎インタ ーンシップの授業内容は次の通りである。

実習責任教員 川上 綾子 実習指導教員 若井 ゆかり

実地日 場所・学年 教科・単元 1 2016.6.4

授業づくりのチーム演習

大学院授業 第6学年

算数 比 例 2 2016.11.21

基礎インターンシップ

N小学校

第1学年

算数 いろいろなかたち

(1)「授業づくりのチーム演習」の振り返り 本時は比例の初回ではないので,前回学ん だことの確認から始まっている。「本時は,新 しいことを覚えない」と子どもたちに言った すぐあとに,「今からみんなにやってもらう ことを言います」と義務的な作業の指示を出 していた。分かりやすい言葉かけだとしても,

言い方ひとつで一気にやる気が削げてしま う恐れがあることに,プロトコルを起こして 気付いた。

これらは,当時の教材研究が甘く,前時の 振り返りの部分が不十分であったことが最 も大きな原因だと考える。毎時の授業を独立 的に考えていたため,単元における前後の時 間の横の繋がり(今回の場合は主に前時),ま た,それまでに学んできた関連する単元との 縦の繋がりも考慮し,もっと広い視野から教 材を読み取る力が欠けていた。

これらの課題を踏まえ,迎えた基礎インタ ーンシップでの実践研究は,本研究テーマに より近づくきっかけとなった。

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(2)基礎インターンシップの振り返り この単元は5時間すべて担当させていただ いた。本時はその中の4/5に該当し,これま での3時間と本時との違いは,ものを使って 図形を構成するのではなく,点と点をつない で図形を構成するため,数に限りのある三角 板や棒だけでは再現できない複雑な形,ある いは三角・四角以外の多角形をつくることが できることである。本時の展開においては,

「考えたものを発表する時間」に重点を置い た。

○ 成果

本授業実践の成果としては,すべての児童 が既習の三角や四角をつくって図形を構成 することができたことがあげられる。また,

発表したいと意欲的な児童も多かった。

○ 課題

① 「課題→見通し」(導入)段階

圧倒的に「課題→見通し」(導入)のプロセ スが長くなっていた。授業のねらいや教材と は関係のない話題を広げすぎたり説明が長 くなったりすることが大きな原因だと考え られる。また,長い時間を取ったにもかかわ らず,次の活動のための説明や指示(何に注 意してつくるか,何を発表してもらうかなど)

は不十分であった。そのため,考える時間を 十分に与えることが出来ず,また活動方法に ついてもしっかりと共通理解を図れなかっ た。

② 伝える場における支援

自分がつくった形を前に出て書きたいか と聞くと,子どもたちのほぼ全員が手を挙げ た。しかし,自分があたると思わなかった子 や前に出てからどの作品を書こうか悩む子 がいたため,前で書き終わる時間が随分かか ってしまった。複雑な形に挑戦しようとする

が,当初のルール(点をつなぐ)から外れて いることに書いている途中で気づき,何を書 いているか分からなくなって途中でやめよ うとする子どももみられ,他の子どもの考え を十分に評価できる時間がなかった。

③ 発問や声かけ

子どもに対し,自由な点つなぎでつくった ものに対して「どうやってつくったか」「その 中に三角がいくつできたか」の2点を発表す るようにもとめた。しかし,実際は多角形の 中に三角を見いだせない子どもがいたこと から,1年生にとって後者の発問は難しかっ たと考える。

以上の3つの課題をもとに,筆者がめざす 授業を実現するためには,まず子ども自身が 伝える材料となる考えをもつための十分な 時間を保証することや伝えようとする意欲 を高めることが重要になると気付き,総合イ ンターンシップではその点に留意した授業 づくりをしようと考えた。

3. 2年次の実践研究

1年次実習と同じ1年生に配属となった。

総合インターンシップⅠ・Ⅱの授業実践内容 は次の通りである。

実地日 場所・学年 教科・単元 3 2017.6.2

総合インターンシップⅠ

S小学校

第1学年

国語

おばさんと おばあさん 4 2016.10.26

総合インターンシップⅡ

S小学校

第1学年

道徳

じ か ん わ り

(1)総合インターンシップⅠの振り返り 子どもたちは学校生活にも少しずつ慣れ だしてきていた。授業実践においては1年次

(3)

3 の課題をもとに,的確な導入に努めることで 展開の活動時間を十分に確保するとともに,

子どもの関心意欲を展開においても維持で きるように心がけた。また,本時の目標であ る長音のある言葉を集め,読み書きできるよ う,子どもたちが楽しんで勉強できる授業に しようと計画した。

○成果

① 「課題→見通し」(導入)段階

今回の授業は,家庭学習の音読ですでに取 り扱っていた。的確な導入に努めるため,教 科書を使って教材を思い起こさせ,今日は何 をするのかをコンパクトに伝えることがで きた。

これによって考える時間と発表する時間 を十分に確保し,課題である長音のある言葉 を見つけ,表記と異なる音で読む活動はでき た。

② 伝える場における支援

導入の場面では,すべての児童が答えられ る発問を用意し,緊張の緩和を意図した伝え る場を多く設けた。展開では,挙手はしたも の何を答えたらいいかわからないという子 どももいたが,掲示物を多く使用していたの で,板書の該当する箇所を示し指しながら,

より具体的な問いかけを行うなどして発言 に結びつけ,自信を持たせることができた。

○課題

① 展開の学習活動

本時は長音のある言葉を集め,読み書きで きることを目的としていた。筆者自身が子ど もの読み・書きなどの学習状況を十分に把握 していなかったことにより,計画段階で,子 どもの実態に合わせた授業計画ができてい なかった(図1参照)

図1 展開からまとめの活動計画

② 発問や声かけ

発言に対して周囲の子どもは「同じです」

と反射的に返していた。基礎インターンシッ プでは発言者や他の子どもに「どうしてそう 考えたか」のような問いを返したので,今回 も同様に問いかけた。しかし答えが一つのも のに対してまで細かく聞き返してしまい,結 果的に同じ回答を他の子どもに繰り返し求 めることがあった。

(2)総合インターンシップⅡの振り返り 前期の授業実践を通し,子どもの実態にあ わせた適時適切な声かけ,意思表現の仕方を

「発表」だけに絞らず,「書く」活動で評価す ることも十分期待できると考えた。

上記の事柄に留意し,学習活動の能力が向 上したことによる意思表現の多様化も念頭 に置き,引き続き子どもが意思や考えを伝え たいといった際の支援を行い,見通しをもっ て指導ができるように心がけた。

○成果

① 展開の学習活動

展開前半:板書にあわせた発問の位置づけ,

子どもの活動に向けての具体的な方法の説 明を計画したため,見通しをもちながら授業 が行えた。

当初の計画

子どもの実態を捉え直した計画

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4 子どもから出てきた考えは余すことなく 板書している。それにより,子どもは自分の 考えが認められたといった自己肯定感を味 わうことができたと考えられる。

展開後半:自分でできることの発表と書く 活動では自分の生活を見つめ直すきっかけ となるように,ワークシートに書く活動を取 り入れた。結果,多くの子どもが自分のこと を自分でしているということを書き上げる ことができていた。

② 発問や声かけ

絵や吹き出し調に切り抜いた台詞の貼り 物を使い,物語を4つの場面に区切りながら 読み聞かせを行った。そのようにして,読み 聞かせを場面ごとに止めながら行うことで,

今何を考えるべきか焦点を絞って子どもに 問いかけることができた。

③ 伝える場における支援

展開の途中で,主人公の気持ちの移り変わ りや自分に置き換えて思ったことを発表さ せた。新しい考えを出す子どもにも,同じ考 えを持つ子どもに対しても,「どうしてそう 思ったか」「あなたならどうする」といった考 えに至る根拠を言葉にさせたり,「○○さん と同じ気持ちかな」と他の子どもの言葉を繰 り返させたりすることで,発言者の気持ちに 共感することや新たな表現の仕方も子ども たちは知ることができた。

○課題

① 展開の学習活動

展開前半:子どもからの考えを余すことな く書いていたため,似ている考えを近しいも のとまとめておくべきであった。それによっ て教師が板書する時間が大幅に短縮され,展 開後半でも十分な時間の確保ができた。

展開後半:後半になると子どもたちの集中

力が途切れてきてしまい,発表の挙手も少な くなった。書く活動に移ると,何を書けばい いかわかっていても,それが問われているこ とに正しい答えなのか不安そうであった。

② 発問や声かけ

1人1人に反応していたら時間がないとい う反省点を踏まえ,今回は発問や声かけのタ イミングを計画段階で配置したが,その結果,

脱線しないようにすることに囚われてしま った。いくら板書や読み聞かせに力を入れて も,効果のある使い方ができず,淡々と授業 を行ってしまった。

③ 伝える場における支援

意見の発表では挙手した児童を全員立た せ順番に発言するというスタイルを取った ために,発言順を待っている間に何を言おう としていたか忘れてしまったり,じっとして いられずにフラフラするために,他の子ども が発言している途中で注意を促したりする ことになった。流れに山がなくなってしまっ たのは,この課題が一番の原因であったと考 える。

4. 今後の取り組みについて

子ども自身それぞれ自分の中にエンジン を持っている。しかしエンジンを持っている だけでかけ方が分からなかったり,どこへ向 かって進めばいいか分からなかったりする。

伝える力もエンジンと同じで,それを引き起 こすためには,子どもの実態や実態にあわせ た価値づけの仕方が重要であると,2年間の 長期実習を通して分かった。

4 月から正規の教員として教壇に立つこと に向けて,特に2年次の実習では子どもの実 態にあわせた授業づくりを深く学べた。今後 も引き続き本研究の課題と向き合っていく。

参照

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