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−社会人基礎力の育成をめざして−

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奈良教育大学学術リポジトリNEAR

短期大学における「キャリアデザイン」の授業実践

−社会人基礎力の育成をめざして−

著者 丸山 実子

雑誌名 奈良教育大学教職大学院研究紀要「学校教育実践研

究」

巻 7

ページ 99‑102

発行年 2015‑03‑31

URL http://hdl.handle.net/10105/9973

(2)

1. 研究の背景・目的

近年、国公立・私立を問わず、また大学院におい てさえも、専門分野にかかわらずキャリア教育ある いはキャリアデザイン教育が導入され授業が行われ ている。(和田, 2007 )

特に、女子学生比率の高い短期大学においては、

学生の生涯にわたるキャリアを見据えるために、就 職を目標とすることが第一にあり、4年制大学の学 生よりも、入学後早期に就職活動の準備とスキルの 育成にスピードが求められている。順調に内定を得 て卒業をしたとしても、短期大学生が入社後1年で 離職する率は、ここ数年 17 %から 18 %前後を行き 来した状況であり(厚生労働省, 2013 )、こうした 就職活動のミスマッチが、その後の生活にも影響が 出ており、高等教育から社会への接続がうまくいっ ていないと読み取れる。

このようなことを防ぐためにも、キャリア教育を 実践していく際、就職するための教育、いわゆる職 業教育だけではなく、ひとりひとりの社会的・職業 的自立を目指す能力や、たとえ離職してもその先も 自律できるような生きる力を養うことが必要だと思 われる。

(平野, 2011 )が言うように学生たちが2年間と いう短い間に、これからの人生をゆたかにする教養 を学ぶことは勿論、社会人として活躍するための

「社会人基礎力」、そして、その力の根底にある「生 きる力」をいかに身に付けるかは大きな課題とされ ている。

社会人基礎力とは、 「前に踏み出す力(主体性・働 きかけ力・実行力)」、 「考え抜く力(課題発見力・計 画力・創造力)」、「チームで働く力(発信力・傾聴 力・柔軟性・情況把握力・規律力・ストレスコント ロール力)」の3つの能力 /12 の能力要素)のことで、

「職場や地域社会で多様な人々と仕事をしていくた めに必要な基礎力」として経済産業省が 2006 年か

ら提唱しているものである。

社会人基礎力は、キャリア教育・職業教育の方 向性を考える上での視点として取り上げられている ことや、中等教育を修了するまでに、生涯にわたる 多様なキャリア形成に共通した能力を身に付けさせ、

高等教育では、この目標が達成されていることを前 提に、推進されることが基本とされている。 (中央審 議会答申, 2011 )こうした社会人基礎力を軸とした キャリア教育を授業の中で実践することは、学生ら にとって有効ではないかと考えられる。

そこで、本研究では、短期大学における社会人 基礎力の視点を取り入れた授業プログラムを検討し、

A 短期大学にて授業実践を行うことを目的とした。

2. 方法

先行研究を参考に A 短期大学にて、「キャリアデ ザインⅠ」「キャリアデザインⅡ」の授業プログラ ムを作成し、授業実践を行った。授業時期は、それ ぞれ 2013 年度前期(4月~7月)、後期 15 回(9月

~1月)である。

各授業の授業前、授業後にアンケート調査を実施 し、分析・考察する。対象者は、 2013 年度入学生

( B 学科、女子 154 名)である。1回目のアンケー ト調査は、前期授業の初日(スタート時)( 153 名)、

2回目のアンケートは、前期授業の最終日(終了時)

( 141 名)、3回目のアンケートは、後期授業の初日

(スタート時)( 136 名)、4回目のアンケートは、後 期授業の最終日(終了時)( 152 名)に行った。

「キャリアデザインⅠ」(前期)についての質問項 目は、「前に踏み出す力」として、「将来についての イメージ」「将来への期待度」。 「考え抜く力」として

「働くことへの理解度」「自己理解」。「チームで働く 力として」、「他人と接することについて」に関する 計5項目とした。

「キャリアデザインⅡ」(後期)についての質問項

-社会人基礎力の育成をめざして-

丸山 実子 Jitsuko Maruyama

奈良教育大学大学院教育学研究科教職開発専攻

School of Professional Development in Education 、 Nara University of Education

(3)

目は、「前に踏み出す力」として、「卒業後のイメー ジ」「就職活動についての目標 / イメージ」。「考え抜 く力」として「キャリアデザインの理解度」「働くこ との理解」「就職活動の方法」に関する計5項目と した。質問項目は、それぞれ5件法により回答を求 め、分析には、エクセル統計( Windows2007 )を 用いた。

3. 「キャリアデザインⅠ」および「キャリアデザ インⅡ」のプログラム検討

短期大学では、専門分野の学問を学ぶと同時に、

実社会に巣立つための準備期間が大学に比べ短い。

前期の段階から将来の自分をイメージさせ、ライフ プランニングをし、 「自分」と「社会」を知ることを 行うことで、2年次から卒業と、卒業後までの計画 性をもった自分を育成しておくことを目指した。ま た後期では、約9割の学生が就職を希望して入学し てくるため、2年次にメインとなるであろう就職活 動がスムーズに行われるような職業的教育の一環と して、面接トレーニング中心のプログラムとする。

次に表1.表2.は、シラバスの内容と社会人基 礎力を照らし合わせたものを示した内容について説 明する。これらは、「キャリアデザインⅠ」「キャリ アデザインⅡ」で社会人基礎力を対応させ実施する ものである。

授業内容は、①前に踏み出す力をつけさせるため に、主体性、働きかけ力の中でも、実行力とし、こ の授業をきっかけに目的を設定し確実に行動するよ うに促し、ふりかえりとして点検させるようにした。

②考え抜く力をつけさせるために、まず現状を把握 し、課題を明らかにする課題発見力を身に付けさせ、

その課題の解決に向け準備をする計画力をもって新 しい価値を生み出す創造力を養わせる。③チームで 働く力をつけさせるために、この力はすべての項目 で取り入れる。なぜならば、毎回、個人ワーク⇒ペア ワーク⇒グループワークの形式を授業に取り入れグ ループ活動を必須にしたいからである。その際、決 まりきった人とではなく、柔軟性を持たせるため毎 回席替えを実施し、様々な人と分かち合えるように する。

また、授業初回より社会のルールとして規律性を ルール化し、グループワークの中で自分の意見をわ かりやすく伝える発信力と、相手意見や話を聴き入 れる傾聴力と情況把握力の向上に繋げた。

最後は必ず全体シェアリングを行い、学生全体で 今日の活動の反省や振り返り、精神的緊張がどのよ うであったかを互いに話し合うことでストレスの発 生源に対応するストレスコントロール力も身に付け させた。このような枠組みを取り入れ授業を通年実 施する。

表1 シラバス「キャリアデザインⅠ」

表2 シラバス「キャリアデザインⅡ」

丸山 実子

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4. 授業実践

4. 1. 「キャリアデザインⅠ」の実践

「キャリアデザインⅠ」の目標は、高校生活から大 学生活への意識の切り替え、受動的な学習態度から 能動的な学習意識への移行ができることと、初期の コミュニケーションの取り方の修得である。そのた めに授業では、スタート時に、キャリアをデザイン するためにマネープランニングと生涯のお金につい て考えさせる。その上で社会に出て女性が働く上で ポイントとなる長期的な視点を持ちながら、ライフ プランニングを立て、この先 10 年、 20 年、 30 年を 節目とした長期的なプランニングを A3 用紙1枚の ライフプランニングシートに仕上げる。

次に、その内容から逆算し、これからスタートす る学校生活や卒業までの短期的なプランニングを行 う。その後、これまでを振り返り、内容を併せて、学 生同士で紹介し伝え合うことで他者との関わりの中 で自己理解を深めていく。その際、学生同士のペア ワークから4名のグループワークに発展させること でより他者理解と自己理解を深めるように実施した。

このようなペアワークからグループワークを都度実 施することによりこの授業が座学ではないことを認 識させ、授業内容をほぼグループワーク行うことで、

受動的な学習態度から能動的な学習意識への移行と コミュニケーション力の向上を養えるように促した。

4. 2. 「キャリアデザインⅡ」の実践

「キャリアデザインⅡ」の目標は、就職活動に必要 な知識の修得、および、意欲的に就職活動に向かう マインドの醸成である。そのために授業では、社会 人としてのマナー(挨拶・身だしなみ・言葉遣い・

文書作成・電話の掛け方など)をトレーニングし、

様々な働き方(正社員・非正社員について)を知り 得たうえで、業界研究をグループで実施する。

その上で、この時期になるとインターンシップへ の応募や就職活動解禁日( 12 月1日)への準備が早 期に必要であるため、それまでに必要な書類として 履歴書やエントリーシートの書き方と送り方、面接 指導と模擬練習を実施する。これまで授業で行った

「業界研究」と「職種研究」での学びを思い出させ、

「企業研究」に繋げさせることをアドバイスすると、

これまでの授業で学んだことを学生も思い出し、授 業内の資料や情報を上手く活用し、設問を埋めてい く。こうした中で、1か所埋まることで安堵の表情 を見せる学生も多く、書いたものを仲間からフィー ドバックしてもらうことで、1人だけで活動するの ではなく、周りと関係を保ちながら一歩一歩進んで いく。そのため、社会人としてのマナーを習得する 挨拶、電話対応や就職活動対策の模擬面接練習では、

周りとスムーズに躊躇せずトレーニングすることが

でき習得も早かった。

5. 授業評価

5. 1. 「キャリアデザインⅠ」の授業評価

質問項目は、それぞれ、1点から5点として点 数化し、平均値を算出した。その結果を表3に示 す。表3「キャリアデザインⅠにおける能力領域の 変容」では『将来についてのイメージ』については、

スタート時と終了時において、平均値が 0.7 ポイン ト上昇した。 『働くことへの理解度』については、ス タート時と終了時では、平均値が 0.5 ポイント上昇 した。 『将来への期待度』については、スタート時と 終了時では、平均値が 0.2 ポイント低下した。 『自己 理解』については、スタート時と終了時では、平均 値が 0.9 ポイント上昇した。 『他人と接することにつ いて』については、スタート時と終了時では、平均 値が 0.7 ポイント上昇した。

表3  「キャリアデザインⅠ」における能力領域 の変容

5. 2. 「キャリアデザインⅡ」の授業評価

質問項目は、それぞれ、1点から5点として点

数化し、平均値を算出した。その結果は、表4に示

す。表4「キャリアデザインⅡにおける能力領域の

変容」では、 『キャリアデザインの理解度』について

は、スタート時と終了時において、平均値が 0.2 ポ

イント上昇した。『働くことへの理解度』について

は、スタート時と終了時では変化がなかった。 『卒業

後のイメージ』については、スタート時と終了時で

は、平均値が 0.5 ポイント上昇した。 『就職活動の目

標・イメージ』については、スタート時と終了時で

は、平均値が 0.8 ポイント上昇した。 『就職活動の方

法』については、スタート時と終了時では、平均値

が 0.8 ポイント上昇した。

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表4  「キャリアデザインⅡ」における能力領 域の変容

6. まとめと考察

「キャリアデザインⅠ」において、 『自己理解』の得 点が上昇したことにより、学生の自己理解は深まっ たといえるであろう。さらに講義の中で職業と自己 分析ワークを行う中で、自分がなりたいものと職業 適性検査の結果が合致しないことや、他者から見た 自分と、思い込んでいた自分とのギャップなどで、

スタート時の「何とも言えない」という将来への期 待度に曖昧さを保持していたが、終了時にははっき りと、「よく分らない」と明確化されたと思われる。

「キャリアデザインⅡ」において、『キャリアデザ インの理解度』の得点が上昇したことにより、 「キャ リアデザインⅠおよびⅡ」の授業を通して、自分自 身でキャリアをデザインしていくことや、他者との 関りの中で新たな自分を見出し明確になることへの 理解も深まったと推察できる。しかしながら、 『働く ことへの理解度』が他の項目に比較して変化のない 数値をしている。

短期大学生にとって、4年制の大学とは異なり、

早期に就職活動の情報を伝えると、入学して間もな い自分に自信がなく不安と焦りで、精神的に追いこ んでしまうことが多い。そのため筆者は前期でおお よその就職活動の概要を口頭で伝えたものの、詳細 については後期になってから就職活動の流れが動画 化されたものが効果的だと思い画像で伝えた。しか し、企業説明会に参加した学生らは、画像とは異な る内容で実施する企業の実態を知り、企業説明会と

いう入り口の時点で混乱させてしまったことと、併 せて働くことへの理解にも疑問や混乱を持たせたこ とにより、効果的ではなかったことが課題に残る。

現在、 「社会人基礎力」は社会で注目されるように なり、検定に取り上げられ、いろいろな大学で「社 会人基礎力」の育成と評価の試行が見られるように なってきた。(斎藤, 2009 )そうした意味でも、高 等教育の現場で、社会人基礎力の視点を取り入れた 授業実践は注目されている。

併せて、短期大学に在学する学生の多くを占める 女性は、生涯において職業人、育児、介護など多く の役割を担うことが多く、将来をデザインしなおす 意識が薄いまま職業人としてキャリアを中断してい るケースも少なくない。

本研究では、短期大学生自身のライフプランニン グを立案させ、他者との交流活動を繰り返すことで、

自己理解の手立てとなったと思われる。こうした自 己理解を深め、社会人基礎力を育成することで、今 後のキャリアをより自分でデザインしていく力を短 期大学生のうちに身に付けられる更なるプログラム 開発が求められ、実施されることが求められる。

参考文献

平野多恵( 2011 )十文字学園女子短期大学部研究 紀要, 0286-7109 「短大生のためのライフスキ ル教育―成果と可能性」

経済産業省( 2006 )「社会人基礎力」

厚生労働省( 2014 )「新規短大等卒業就職者の事業 規模離職状況」

文部科学省( 2011 )「大学における教育内容等につ いて」

文部科学省( 2013 )「中央教育審議会・答申」

埼玉女子短期大学シラバス( 2013 )

斎藤 寧( 2009 )比治山大学短期大学部紀要, 44 , 2009 「社会人基礎力」の詳細定義, 21-29 杉浦礼子,安部耕作( 2013 )高田短期大学紀要, 「短

期大学におけるキャリア教育の必要性」(その 4) 31 : 107-118

和田佳子( 2007 )北海道武蔵女子短期大学紀要,

39 : 204-236 「女子短大生のキャリアデザイ ン」

丸山 実子

参照

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