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東シナ海における海面上昇に伴う潮汐変化 九州大学

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Academic year: 2022

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(1)II‑018. 土木学会西部支部研究発表会 (2013.3). 東シナ海における海面上昇に伴う潮汐変化 九州大学 学生員 ○田中香. 正員 田井明. 1.はじめに 内湾の潮汐・潮流は水環境の重要な因子であり,その変化は大きな影響をもたらすと考えられる.九州西部 に位置する有明海や八代海は,我が国で最も潮汐が大きい海域であり,その恩恵もひとつの要因として豊かな 水環境が形成されてきた.しかし,近年,二枚貝を中心として漁獲量が減少するなど水環境は悪化しており, その原因として潮汐・潮流の減少が指摘され多くの研究が行われてきた.田井ら 1)は,有明海の潮汐の長期的 な減少に関して,干拓などによる人工的な海岸線の改変よりも,外洋潮汐振幅の長期的な減少の影響が大きい ことを示した.しかし,外洋潮汐の変化・変動についてはあまり研究が進んでおらずそのメカニズムなどは未 解明である.そこで,本研究では,我が国周辺の外洋潮汐の変化・変動とそのメカニズムを明らかにするため に,実測データの解析と数値シミュレーションを行った. 2.実測データの解析 実測データは日本海洋データセンター2)およびハワイ大学海面センター3)のホームページで公開されている ものを用いた.得られた潮位データを 1988 年から 2002 年までの期間について,720 時間ずつ解析期間をず らしながら 369 日分のデータを用いて,調和解析により主要 38 分潮に分解した.結果の中から,厳原,鹿児 島ならびに枕崎の M2 潮振幅と平均海面の経時変化を Fig.1 に示す.なお B.M.の変更年では値が大きく変化す るため,その日時を含む調和分解の結果は削除した.Fig.1 から,1990 年代後半に M2 潮振幅の減少と平均海 面の上昇が生じていることが分かる.Fig.2 に Fig.1 と同様に 1990 年代後半に M2 潮振幅の減少が生じていた 験潮所を黒丸, 生じていない験潮所を白丸で示す. これより東日本では M2 潮振幅の減少は見られなかったが, 九州を中心とした西日本においては変化量には差があるが,減少することが示された. 3.海面上昇による潮汐振幅の変化 実測データの解析により外洋潮汐振幅が変化していること,その変化と海面上昇が対応していることが示唆され た.Pickering et al.4)は,北海を対象として数メートルの海面上昇により潮汐振幅がどのように変動するのか数値シ ミュレーションを行い, 海面上昇により潮汐振幅は空間的に非一様に変化することが示した.そこで, 本研究で POM を用いた数値実験により,海面上昇に伴う我が国周辺の潮汐振幅の変化について調べた.計算は,Fig.3 に示す対 象領域を 0.1°間隔で 601×521 に分割し Satellite Geodesy (Smith and Sandwell's predicted bathmetry)5)から入手 した水深データを与えて行った.開境界条件は東側から振幅 0.3m の M2 潮を与え,南側は放射境界とした.シミュ レーション結果から得られた現在の M2 潮振幅の分布を Fig.4 に示す.本モデルは,実測データの解析結果や Ogura6) に示されているような東シナ海の無潮点の位置を良好に表現していることが分かった.次に海面上昇が 1m,5m 起 こった場合のシミュレーションを行い,現在の振幅との差をとった結果をそれぞれ Fig.5,Fig.6 に示す.これより, 水深の 1%にも満たない 1m,5m の海面上昇でも M2 潮振幅に影響することが明らかとなった.また,台湾海峡や 朝鮮半島西岸,東シナ海湾奥で増加することが分かった.実測データで見られたような,海面上昇による M2 潮振 幅の減少は一部の海域を除き見られなかった.. 53 52 51 50 1988 15. 1990. 1992. 1994. 1996. 1998. 2000. 72 M2 tidal amplitude (cm). 80 M2 tidal amplitude (cm). M2 tidal amplitude (cm). 54. 79 78 77 76 1988. 2002. 1990. 1992. 1994. 1996. 1998. 2000. 71 70 69 68 1988. 2002. 1990. 1992. 1994. 1996. 1998. 2000. 2002. 1990. 1992. 1994. 1996. 1998. 2000. 2002. 0. MSL. MSL. 5. MSL. 0. 10. -5. -5 -10 -15. 0 1988. -10 1990. 1992. 1994. 1996. 1998. 2000. 2002. 1988. 1990. a)厳原. 1992. 1994. 1996. 1998. b)鹿児島 Fig.1. M2 潮・平均海面. ‑177‑. 2000. 2002. 1988. c)枕崎.

(2) II‑018. 土木学会西部支部研究発表会 (2013.3). Fig.2. 解析対象とした験潮所. Fig.3. 計算対象領域と水深分布(m). (1990 年代に M2 潮振幅が減少した験潮所→●,その他→○). Fig.4. M2 潮振幅の分布(m). Fig.5. 平均海面+1m での振幅変化 (m). Fig.6. 平均海面+5m での振幅変化(m). 4.まとめ 本研究では,実測データの解析と数値シミュレーションを行った.実測データ解析からは,西日本における 1990 年代後半の M2 潮振幅の減少,数値シミュレーションからは,平均海面の上昇による潮汐振幅の変化が 明らかになった.近年,海面の上昇速度は早まっており,それに伴い生じる潮汐振幅の変化により将来起こり うる影響を把握することは非常に重要であると考えられる. 参考文献 1)有明海および八代海における半日周期潮汐の長期変化について,水工学論文集,54,pp.1543-1548,2010 2)日本海洋データセンター: http://www.jodc.go.jp/index_j.html 3)ハワイ大学海面センター: http://uhslc.soest.hawaii.edu/ 4)Pickering et al. :The impact of future sea-level rise on the European Shelf tides ,Continental Shelf Research, 35,pp1-15,2012 5) Satellite Geodesy:http://topex.ucsd.edu/index.html 6) Ogura:The tides in the seas adjacent to Japan.Bull.Hydr.Dep.Japan,7,189pp.with 65 plates,1933. ‑178‑.

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