東 京 湾 にお け る陸棚 波 に起 因 した異 常 潮 位 の分 析 とその将 来 影響
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(2) 1307. 東 京湾 にお ける陸棚 波 に起因 した異 常潮 位 の分析 とその将来 影響 (2) 潮 位 偏 差 に 及 ぼ す 物 理 的 要 因 の 分 析. 3. 銚 子 沿 岸 に お け る 潮 位 偏 差. 防災 の 側 面 か らは,災 害 につ な が る事 態 が 起 こ り う る. こ こ で は,東 京 湾 に伝 播 す る陸 棚 波 系 の 異 常 潮 位 の 起. と判 断 され た際,適. 切 な タ イ ミ ン グで 予 報 を発 令 す る措. 源 が 銚 子 沿 岸 で の 顕 著 な 潮位 偏 差 に あ る と考 え て,銚 子. 置 が望 まれ る.陸 棚 波 系 の異 常 潮 位 に関 して は,現 在 ま. 沿 岸 で の 潮位 偏 差 の 出現 特 性 を 分 析 す る.な お,潮 位 偏. で の と こ ろ,発 生 を 予 報 で き る段 階 に は至 って い な いが,. 差 と して は,気 圧 成 分 に 対 す る補 正 前 の 値 と補 正 後 の 値. 今 後 は津 波 や高 潮 同 様 に予 報 技 術 を 向 上 して い く必 要 性. の2種 類 が あ るが,本 稿 で は前 者 を ξ0,後 者 を ξ1の記 号. が あ る と考 え る.そ の た め に は,陸 棚 波 の場 合,そ. を用 い て 区 別 す る.. 源 と な る高 潮 位 が ど の よ うな物 理 的 要 因 に よ って 発 現 し. (1) 潮 位 偏 差 の 出 現 特 性 の分 析 銚 子 に お け る1967年 か ら2006年 の40年 間 を対 象 と して,. の起. う るか を把 握 して お く必 要 が あ る. 一 般 的 に,沿 岸 に お い て 高 潮 位 を 引 き起 こす 要 因 と し. 日本 海 洋 デ ー タセ ン ター の 潮 汐 デ ー タ(但 し,1972,78‑. て は,気 圧 や風 の 効 果,wave. 80年 の 計4年 分 は 欠 落)お よ び60分 潮 に基 づ く推 算 潮 位 よ. らに は海 水 の 熱 膨 張 や海 流 の 位 置 や 強 度 な どが 関 係 して. り潮 位 偏 差 ξ0を求 め て,気. 象業務 セ ンターの気象 デー. setup,エ. ク マ ン輸 送,さ. くる と考 え られ る.こ の よ う な様 々 な 物 理 的 要 因 の う ち,. タベ ー ス に収 録 され て い る海 面 気 圧 を使 用 して 気 圧 成 分. 図‑3は 気 圧 成 分 を取 り除 い た 潮 位 偏 差 ξ1と風 向 お よ び. 補 正 値 ξ1を求 め た.図‑1は. 波 高 と の 相 関 を 調 べ た結 果 で あ る.対象 期 間 は,2001年. 各 年 の 最 大 潮 位 偏 差,ま. 図‑2は 顕 著 な 潮 位 偏 差 と して,ξ0が30cm以. た. 上 の出現 時. 間 を年 ご とに 累 計 した結 果 で あ る. こ れ らよ り,東 京 湾 に お い て 異 常 潮 位 が 出 現 した2006. か ら2005年 の計5年 間 で あ り,風 は 犬 吠 埼 灯 台 の デ ー タ, ま た 波 高 は ナ ウ フ ァ スで 入 手 可 能 な 鹿 島 港 で の デ ー タ を 利 用 した.但. し,風. デ ー タ は,風 速10m/s未 満 の デ ー タ. 年 は,銚 子 にお け る潮 位 偏 差 に関 して も,過 去40年 間 で. を 除 外 し,比 較 的 風 速 が 大 き な と き の相 関 に 注 目 した.. 規 模,出. 太 平 洋 東 岸 の海 岸 線 は概 ね南 北 に伸 び て い るた め,北 寄. 現 時 間 と もに 最 大 級 で あ った こ とが わ か る.. な お,気 候 変 動 が 潮 位 偏 差 に及 ぼ す 影 響 に つ い て も危 惧 さ れ る と こ ろ で あ る が,少. な くと も こ の2つ の結 果 か. らは 明 瞭 な トレ ン ドを 見 出す こ と はで き な い.. りの 風 が 卓 越 す る場 合 に エ クマ ン輸 送 に よ り沿 岸 で の水 位 上 昇 が発 生 し,反 対 に南 寄 りの 風 に よ り水 位 低 下 が 発 生 す る と考 え られ る.図‑3の 向 で は 正 の偏 差,反 た め,一. 潮 位 偏 差 の傾 向 はN系 の 風. 対 にS系 の 風 向 で は負 の偏 差 を示 す. 見 す る と風 向 と潮 位 偏 差 ξ1に強 い 相 関 が あ る. よ うに感 じ られ,エ. クマ ン輸 送 の寄 与 が 推 測 さ れ る.. しか し,同 時 にN系 の 風 向 が 卓 越 した 場 合,S系. の風. 向 よ り も波 高 が 顕 著 に 出 現 す る傾 向 を 読 み 取 る こ とが で. 図‑1. 図‑2. 銚 子 にお け る年間 最大 潮位 偏差 の推移. 銚子 にお ける顕著 な潮 位偏 差 の累計 出現 時間. 図‑3. 銚 子 にお け る潮位 偏差 と風 向 ・波高 の相 関.
(3) 1308. 海. 岸. 工. 学. 論. 文. 集. 第55巻(2008). 潮 位 偏 差 に影 響 す る可 能 性 を指 摘 す る こ とが で き る.つ ま り,2006年10月. 上 旬 の 例 で は,残. りの25cm程. 度 の潮. 位 偏 差 分 に寄 与 した物 理 的 要 因 を考 え る必 要 が あ るが, 信 岡 らは こ の事 例 に対 して エ ク マ ン輸 送 の寄 与 が 全 体 の 38%程 度 で あ る こ と を示 して お り,25cm程. 度 の偏差 は. こ の エ クマ ン輸 送 の寄 与 で あ った可 能 性 が 高 い. 以 上 よ り,銚 子 に お け る潮 位 偏 差 の 物 理 的要 因 を ま と め る と,潮. 位 偏 差 ξ1はwave setupの 寄 与 で 大 部 分 が 説. 明 可 能 で あ るが,過 去 最 大 レベ ル の異 常 潮 位 時 に は エ ク マ ン輸 送 の寄 与 を考 慮 しな い と説 明 が っ か な い.し たが っ て,防 災 上,陸 棚 波 の 起 源 と な り う る銚 子 で の潮 位 偏 差 を監 視 す る上 で は,特 に 波 高 と北 寄 りの 風 が もた らす エ ク マ ン輸 送 の 両 者 に注 意 す る必 要 が あ る と考 え られ る. 図‑4. 銚子 にお け る風 速(風 向N,NNE,NE)お が潮 位偏差 に及 ぼ す影響. よ び波高 4. 東 京 湾 内 へ の 陸 棚 波 伝 播. き,こ の た め潮 位 偏 差 ξ1は風 向 よ り も波 高,す. な わ ちw. 以 上 の よ う な物 理 的要 因 に よ り,銚 子 沿 岸 に お い て 顕. ave setupの 出 現 特 性 で 決 定 づ け ら れ て い る可 能 性 も あ. 著 な水 位 上 昇 が 長 時 間 継 続 した場 合,ポ. る.. の 保 存 を 満 た す た め に 浅 水 で の水 柱 が 負 の 渦 度 を獲 得 し,. そ こで 更 に,図‑3よ N,NNE,NEのN系 て,波. り発 生 頻 度 の 高 い こ とが 判 明 した の 風 向3方 向 の デ ー タ の み を抽 出 し. 高 が 比 較 的 穏 や か な 際(1m以 下)と 荒 れ て い る 際. テ ン シ ャル 渦 度. そ の結 果 陸 棚 波 の伝 播 が 発 生 す る こ と に な る(図‑5).こ こで は,銚 子 で の水 位 上 昇 と東 京 湾 へ の 伝 播 の 関係 性 を 防 災 上 の視 点 を 重 視 して 分 析 を行 う.. (4m以 上)の2パ タ ー ンの 波 高 レ ン ジ に対 す る潮 位 偏 差 の 特 性 を 調 べ た結 果 を 図‑4に 示 す.潮 位 偏 差 ξ1に対 してN 系 の風 向 に よ る エ クマ ン輸 送 の 寄 与 が 卓 越 す るな ら ば, 波 高 の レ ンジ に 関係 な く,風 速 の増 加 に伴 って 潮 位 偏 差 は単 純 増 加 して い く はず で あ る が,風 速 が 比 較 的 小 さ い レベ ル に お い て も潮 位 偏 差 が30cmを 越 え る場 合 もあ り, エ ク マ ン輸 送 の寄 与 は 明 瞭 に は確 認 で き な い.一 方,波 高 の レ ン ジの 違 い が 潮 位 偏 差 に及 ぼ す 影 響 は 明 瞭 で あ り, 高 波 浪 時 に は正 の潮 位 偏 差 が 非 常 に 顕 著 に現 れ て い る. し た が っ て,潮. 位 偏 差 に 及 ぼ す エ ク マ ン輸 送 とwave. setupの 両 者 の 寄 与 を 比 較 した 場 合,wave. setupの 寄 与. の方 が よ り大 き い と考 え る こ と が で き る. ま た,潮 位 偏 差 ξ1を目的 変 量,N系. と き の 風 速 と波 高 の2つ を 説 明 変 量 と して,重 を行 っ た 結 果,標 0.51,ま. 図‑5 の風が吹 いてい る 回帰 分析. 準 偏 回 帰 係 数 は風 速 が0.11,波. た重 相 関 係 数 は0.58と 計 算 さ れ た.こ. 高が. の 結 果,. 陸棚 波 の伝播 経路. (1) 陸棚 波 の 理 論 解 伝 播 速 度 の 理 論 解 は,不 連 続 水 深 の場 合,非 分 散 性 の 波 動 と して以 下 の よ う に導 か れ る(宇 野 木,1993).. や は り潮 位 偏 差 に対 す る波 高 の影 響 は 風 向 ・風 速 の 影 響 よ り もか な り大 き い こ とが わ か る. した が って,少 つ い て は,潮. (1). な く と も2001年 か ら2005年 の デ ー タ に. 位 偏 差 ξ1の大 部 分 がwave. setupの 寄 与 と. 解 釈 す る こ とが で き る.し か し,2006年10月. 上 旬 の銚 子. の 例 の よ うに 潮 位 偏 差 ξ1が60cmに も達 す る異 常 潮 位 を wave. こ こで,fは. GISを 用 い て,房. setupの 寄 与 の み で 説 明 で き な い こ と は,信. 岡 ら. た と こ ろ,陸. (2007)の 研 究 で 明 らか に な って い る.ま た,図‑4に. おい. 幅 は26.7km,ま. て ほ ぼ35cmあ と,銚. た りで 頭 打 ち に な って い る こ と を 考 え る. 子 地 点 で のwave. setupは35cmを. 越 え な い範 囲 で. コ リオ リパ ラ メ ー タ,Lは. 陸 棚 の 幅,h1は. 陸棚 水 深,h2は 外 洋 の 水 深 で あ る.. 仮 定 し た場 合,平. た 陸 棚 水 深 を300mと. 均 陸 棚 幅 は29.1kmで 8000mと. 総 半 島 周 辺10地 点 の 陸 棚 幅 を算 出 し. 棚 水 深 を200mと. あ っ た.接. 均 陸棚. 仮 定 した場 合,平. 続 す る外 洋 の 水 深h2を. 仮 定 す る と 式(1)よ り 陸 棚 波 の 平 均 伝 播 速 度 が.
(4) 1309. 東 京湾 にお け る陸棚波 に起 因 した異常 潮位 の分 析 とそ の将来影 響 2.2m/s(h1=200m),2.4m/s(h1=300m)と. 計 算 され る(但. し,. 表‑1. 陸 棚 波 伝 播 の 実 事 例(2001年. 〜2005年). 鹿 島 灘36°Nで のf=8.57×10‑5S‑1と す る). (2) 2006年10月 上 旬 の事 例 写 真‑1か らわ か る通 り,横 浜 で 冠 水 が 発 生 した 時 間 帯 は 北 寄 り の風 が5〜7m/s程 度 吹 い て い た も の の,顕. 著な. 高 潮 が 発 生 す る よ う な気 象 条 件 で は なか った.図‑6に. 示. す 通 り,こ の期 間 の 潮 位 偏 差 の ピ ー ク は,銚 子,布 良, 横 浜 の 順 に遅 れ て 発 現 して い る こ とが わ か る.銚 子 と横 浜 で は1日 程 度 の 時 間 差 が あ り,伝 播 速 度 は2.5m/s程 度 と計 算 さ れ る.し. たが って,ケ ル ビ ン波 の よ う な重 力 波. て は,2006年10月. の事 例 以 外 に も,1971年9月. と1972年7. と比 較 す る と非 常 に遅 い速 度 で 伝 播 し,ま た 理 論 速 度 と. 月 に連 続 して 発 生 して い た こ と が過 去 の 新 聞 記 事 や 神 奈. も近 似 して い る た め陸 棚 波 の 形 態 で 伝 播 した 可 能 性 が 高. 川 県 治 水 事 務 所 へ の ヒ ア リ ング結 果 よ り明 らか に な っ た.. い と考 え られ る.. こ の うち,1971年. の 事 例 で は,横 浜 にお い て4,5日. 間連. 続 して 冠 水 被 害 が発 生 して い る.こ の 時 期 は秋 の 大 潮 の 時期 に あ た り,ま た 高 潮 位 が 長 期 間 継 続 した た め に,満 潮 時 刻 が 幾 度 と重 な り,冠 水 被 害 が 連 続 して発 生 した も の と考 え られ る.な お,Isozaki(1971)は. こ の期 間 の潮 位. 変 動 に陸 棚 波 と考 え られ る伝 播 が 太 平 洋 岸 を 東 か ら西 へ と伝 播 す る状 況 を 明 らか に して い る. (2) 陸 棚 波 に対 す る 防 災 上 の 留 意 点 1971年 と2006年 の異 常 潮 位 を 横 浜 港 に お け る各 基 準 高 に対 して比 較 した 結 果 を 図‑7に 示 す.こ て み る と,1971年. の よ う に比 較 し. の ケ ー ス は朔 望 平 均 満 潮 位 と比 較 す る. と20cm以 上 も高 い 潮 位 で あ っ た け れ ど も,現 在 の 高 潮 注 意 報 の 潮 位 水 準 に は 届 か な い程 度 の 潮 位 で あ った こ と が わ か る.現 在 で は護 岸 の 改 修 が 当 時 と比 較 す る と相 当 に進 ん で い る た め,こ の と き と 同程 度 の 潮 位 が 出 現 して も当 時 の よ う な被 害 が 発 生 す る とは 考 え に くい. 一 方 で ,2006年 図‑6. 2006年10月 異常 潮位 発生 時 の潮位偏 差. の ケ ー ス は1971年 の ケ ー ス と比 較 して,. さ ら に40cmも 潮 位 が 上 昇 して お り,き. わめ て特異 な状. (3) 2001年 〜2005年 の 陸 棚 波 伝 播 の 発 生 事 例. 況 で あ っ た こ とが わ か る.し か し,そ の2006年 の ケ ー ス. 銚 子 に お い て 潮 位 偏 差 ξ0が30cm以 上 に 発 達 し,か っ. に して も,高 潮 注 意 報 は発 令 さ れ るが,警 報 は発 令 さ れ. 偏 差 の ピー クが 横 浜 へ と半 日 か ら2日 程 度 と ゆ っ く り と. な い レベ ル で あ る.し か し,写 真‑1か ら も明 らか な通 り,. した 速 度 で 伝 播 した と判 断 で き る ケ ー ス を2001年 か ら. か な り の冠 水 が 実 際 に は発 生 して お り,必 ず し も高 潮 注. 2005年 の計5年 間 の 潮 位 デ ー タ の 中 か ら抽 出 した.そ. の. 意 報 や 警 報 が 陸 棚 波 伝 播 に伴 う異 常 潮 位 の 危 険 性 を表 す. 示 す 合 計7つ の 時 期 に銚 子 か ら横 浜 へ 向 け. 指 標 と して十 分 で あ る とは言 い 切 れ な い こ と に留 意 す べ. 結 果,表‑1に. て潮 位 偏 差 が 伝 播 す る状 況 を確 認 す る こと が で きた.表‑ 1の 最 下 段 に は2006年10月. の事 例 に つ いて も示 して い る. が,い ず れ の伝 播 速 度 も理 論 速 度 の 値 と同程 度 の 値 を示 して お り,陸 棚 波 の 形 態 で伝 播 した可 能 性 が 高 い と考 え られ る. 5. 陸 棚 波 に 対 す る 防 災 上 の 留 意 点 と将 来 的 な 影 響 (1) 横 浜 港 に お け る 異 常 潮 位 の事 例 台 風 や低 気 圧 の通 過 に伴 う一 般 的 な 高 潮 以 外 で,原 因 が 特 定 で きな い もの の,顕 著 な潮 位 偏 差 が 長 期 間継 続 す る現 象 を 異 常 潮 位 と考 え る と,少 な く と も横 浜 港 に お い. 図‑7. 横浜 港 にお け る過去 の高 潮位 と各 基準 面.
(5) 1310. 海. 岸. 工. 学. 論. き で あ る.. 文. 集. 第55巻(2008) ま た,2001年. ま た,表‑1に. 示 す 通 り,潮 位 偏 差 の顕 著 な 期 間 が2〜5. か ら2005年 の潮 位 デ ー タ を分 析 した と こ. ろ,明 瞭 な 形 で 銚 子 か ら横 浜 へ と伝 播 す る陸 棚 波 を 合 計. 日間 とか な り長 期 間 継 続 す る こ と も陸 棚 波 伝 播 の 特 徴 で. 7ケ ー ス確 認 した.そ の 伝 播 速 度 は,1.6〜4.8m/sで. あ る.台 風 の通 過 に 伴 う通 常 の高 潮 の 継 続 時 間 は,東 京. 理 論 速 度 と同 等 で あ った.. 湾 の 場 合 で は8〜10時 間 程 度 で あ り(河 合 ら,2002),こ. あ り,. 現 在 ま で の と こ ろ,横 浜 に お け る異 常 潮 位 に伴 う大 規. の た め 高 潮 時 に満 潮 が 重 な る 回 数 は1回 あ るか な い か で. 模 な 冠 水 被 害 の 件 数 は,確 認 して い る範 囲 で1971年 以 降. あ る が,陸 棚 波 に起 因 した偏 差 の伝 播 時 に は複 数 回 満 潮. 3件 発 生 して お り,い ず れ の ケ ー ス も大 潮 満 潮 時 に発 生. が 重 な り,そ れ だ け異 常 潮 位 が 発 生 しや す い状 況 に あ る. して い る.し か し今 後,海 面 上 昇 が 進 行 して い け ば,陸. と い え る.し たが っ て,陸 棚 波 に伴 う異 常 潮 の場 合,最. 棚 波 の 伝 播 に よ り,小 潮 満 潮 時 等 に お い て も冠 水 が 発 生. 高 潮 位 の 到 達 地 点 と して は,通 常 の高 潮 よ り も低 位 で あ. す る頻 度 が 増 加 す る可 能 性 が 十 分 に あ る.し た が っ て,. り,そ の た め 護 岸 を乗 り越 え て の浸 水 の 可 能 性 は そ れ ほ. 実 質 上,海 面 上 昇 の 影 響 が 早 期 に 顕 在 化 す る可 能 性 もあ. ど大 き くな い もの と考 え られ るが,潮 位 が 平 均 的 に高 位. り,陸 棚 波 が 引 き起 こす 異 常 潮位 につ い て,今 後 は他 の. な 状 況 が 長 く続 くた め,雨 水 管 等 を逆 流 して 海 面 よ り も. 気 候 変 動 の 影 響 とセ ッ トで 考 え て,防 災 上 対 策 して い く. 低 位 の マ ンホ ー ル か ら海 水 が 流 出 し,冠 水 が 短 時 間 の 間. 必 要 性 が あ る と考 え る.. に 進 行 して い く危 険 性 を 考 え る必 要 が あ る.実 2006年10月. の事 例(写 真‑1)で は,マ. 際 に,. ンホ ー ル を 逆 流 して. 周 辺 が 冠 水 した とい う証 言 が 得 られ て い る.. 先 の2001年‑2005年. の 分 析 で は,顕. して は 年 間1,2回 で は な い.加. 著 な陸棚波 の伝播. た が っ て,発 生 頻 度 と. え て,実 際 に冠 水 の よ う な被 害 が 発 生 す る. の は,陸 棚 波 の起 源 す な わ ち銚 子 付 近 で の潮 位 偏 差 が き わ め て大 き く,な お か っ,大 潮 の期 間 に顕 著 な 陸棚 波 の 伝 播 が 重 な っ た場 合 で あ る と考 え られ る た め,被 害 の 発 生 確 率 は 決 して 大 き い もの で は な い.し か し,将 来 的 に 海 面 上 昇 が 進 行 して い った 場 合,大 潮 で は な く小 潮 の タ イ ミ ング で も,陸 棚 波 の伝 播 が 重 な った 場 合 に は冠 水 が た,陸 棚 波 伝 播 を念 頭 に お. く と,海 面 上 昇 の 影 響 が従 来 予 想 す る よ り も早 く顕 在 化 す る危 険 性 も懸 念 され る.. 防 災 上,陸 棚 波 に 起 因 す る異 常 潮 位 の 出現 を 予 測 す る た め に は,陸 棚 波 の 起 源 と な る地 点 で の潮 位 偏 差 の 特 性 を 明 らか に して お く必 要 が あ る.銚 子 に お け る1967年 か ら2006年 の 各 デ ー タを 分 析 した と こ ろ,横 浜 の 各 地 で 冠 水 が 発 生 した2006年 に お いて 最 大 級 の 高 潮 偏 差 が 発 生 し た,銚 子 地 点 に お い て高 潮 偏 差 を 引 き起 こす. 物 理 的 要 因 と して は,気 圧 低 下 の 要 因 を 除 く と,wave setupの 影 響 が 最 も大 き い と考 え られ る が,過 ベ ル の 高 潮 偏 差 の 場 合 ,wave. 去最大 レ. setupの み で は説 明 が 付 か. ず,北 寄 りの 風 に伴 うエ ク マ ン輸 送 の効 果 が 大 き く寄 与 して い る と考 え られ る.. 参. 考. 文. 献. 宇野 木 早 苗 (1993): 沿岸 の海洋 物 理学,東 海 大学 出版会, 672p. 河合 弘 泰,竹 村 慎 治,原 信 彦 (2002): 東京 湾 にお け る台風 に よ る高 潮 と高波 の同時 性 と継続 時 間特 性, 海 岸工 学論 文 集, Vol.49(1), pp.251‑255. 気象 庁 (2006): 災 害 時気 象速 報, 低気 圧 に よ る平 成18年10月 4日 か ら10月9日 にか けての暴 風 と大 雨, 災害 時 自然 現象 報 告書, 第3号, 40p. 末 永正 次, 松 本英 雄, 板 橋直 樹, 三原 正裕, 梅木 康之, 磯 部 雅 彦 (2003): 広 島 湾 の異常 潮位 につ いて, 海 岸工 学論 文 集, Vol.50(2), pp.1316‑1320. 信 岡 尚道, 加 藤 史訓, 武若 聡, 松浦 健 郎 (2007): 2006年10 月 上 旬 の 茨城 沿 岸 高 潮 の 発生 要 因, 海 岸 工 学 論 文集, Vol.54(1), pp.306‑310. 橋 本孝 治, 吉 本純, 村 上智 一, 安 田孝 志 (2007): エ クマ ン輸 送 に起 因 す る新 たな外 洋型 の高 潮発 生 機 構, 海 岸工 学 論 文集, Vol.54(1), pp.271‑275.. 6. ま と め. て い た.ま. こ に記 して謝 意 を 表. す る.. 程 度 で あ り,頻 発 して い る とい う状 況. 発 生 す る可 能 性 が 高 ま る.ま. 究 を進 め る に あ た り,神 奈 川 県 横 浜 治 水 事 務 所. か らは有 益 な情 報 を 多 数 頂 い た.こ. (3) 陸 棚 波 に 伴 う異 常 潮 位 の 将 来 的 な 影 響. と して7ケ ー ス が 検 出 さ れ た.し. 謝 辞:研. Isozaki, I. (1971): Unusually high mean sea level in September 1971 along the south coast of Japan, Meteorology and Geophysics,Vol.23,No.4, pp. 234-257. Kitade, Y., Matsuyama, M. (2000): Coastal-trappedwave with several-dayperiod cause by wind alongthe southeastcoast of Honsyu, Japan, J. Oceanogr.,56, pp.727-744. Shoji, D.(1961): On the variations of the daily mean sea levels along the Japanese Islands, J.Oceanogr.Soc. Japan, 17, pp.21 -32 . Yoshida, K., Shoji, D., Masuzawa,J.(1972): A possible interaction between the storm tides and the Kuroshio-a speculation on the recent floods, Records Oceanorg., Works in Japan, 11(2), pp.47-51..
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