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博士論文審査要旨 申請学位

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(1)博士論文審査要旨 申請学位 申請者. 博士(教育学)(課程外) スタント、カワン ( Soetanto, Kawan) 工学博士、医学博士、薬 学博士 米国北カルフォルニア大学教授、東京工業大学客員研究員、早 稲田大学客員教授. 論文題目 ユニヴァーサル化時代における大学教育に関する研究― Interactive Operational Control, IOC 授業法の提案及びその実践―. 面接試験(2003 年 5 月 17 日) 主査 早稲田大学教育学部教授 中野美知子 副査 早稲田大学名誉教授(受理申請時・教育学部教授)田辺洋二 副査 早稲田大学教育学部教授 東後勝明 副査 早稲田大学名誉教授 今野喜清 副査 早稲田大学名誉教授 石垣春夫 学識確認(2003 年 1 月 15 日) 早稲田大学教育学部教授 早稲田大学名誉教授 通産省・統計部部長 東京大学名誉教授. 中野美知子 田辺洋二 田辺孝二 鈴木博. 申請者について スタント氏は 1985 年に東京工業大学より工学博士を授与した後、米国 Drexel 大 学及び Thomas Jefferson 大学で助教授、準教授となり、1993 年より桐蔭横浜大学 工学部制御システム工科大学教授となった。その間に 1988 年に東北大学より医 学博士、2001 年に東京理科大学より薬学博士を授与された。1994 年に桐蔭工学 研究科大学院教授、人間科学工学センター副所長、工学部医用工学プログラム 長、先端医用工学センター副所長(ハイテク・リサーチセンター・研究者代表 18 億円)、私立大学財団より、2.4 億、科研費 1.2 億など、企業委託研究、米国 の NIH grants など 14 本の大型研究助成金を得ている。 医用電子計測、超音波. 1.

(2) 医学、造影剤薬学の分野の著書論文など約 350 点。スタント氏は 1992 年に米国 超音波医学会の Fellow Award を日本では唯一受賞している。教育学博士はイン ドネシアで大学を創設するために必要な資格である。 1論文の目的と授業実践成果 1993 年に赴任した大学での教育実践を 8 年間にわたり記述し、かなり学力のな い学生を相手に、日本音響学会と日本超音波医学会の論文発表件数が以下の表 で示されるように日本一になっていったかを克明に示したものである。また、そ の教授法が大衆化時代(18 歳人口に占める大学、短大進学率が 50%を超える場 合、アメリカではユニヴァーサル化といわれている)の大学教育に一つの解決 案になることを実践的に示すことが論文の目的である。. Soetanto研. 東北大K&C研 明星大Y研. 京都大M研. 神奈川大E研. 東工大O研. 東工大U研. 日立. GE YMS. 東芝 0. 10. 20. 30. 40. 50. P aper Presented in total 日本超音波医学会主要研究室及び大手メーカ論文発表件数 1997から2000までの5回分の合計. 2.

(3) Soetanto研. 東工大U研. 神奈川大T研. 筑波大N研. 山形大T研. 東工大U研. 電通大K研. 東北大N研. 理科大H研. 東北大K研 0. 10. 20. 30 40 50 Paper Presented in Total. 60. 70. 80. 日本音響学会主要超音波研究室の論文発表件数 1998から2000までの5回の合計. 1998 年 5 月に米国音響学会から Fellow Award を受賞しているが、 これは教育部 門(変革時代における大学授業法の実践研究―人と心を育てる教育)と研究部 門(医用超音波造影剤の開発及び血管造影システムへの応用に関する研究)に 対する受賞で、 日本では 4 人目の受賞となっている。 論文を一読すれば、明 らかなように、ひたむきな教育への熱意が直接(hands-on report)伝わるように、 記述され、 そのため、本論文はひつじ書房から出版契約を得ている。IOC 授業 法について 26 回の招待講演をし、ラジオやテレビでもゲストとして招かれたり、 中国語で雑誌記事も多く書いている。 論文は 16 章で構成されている。. 3.

(4) 第1章. 序章 1.1 はじめに 1.2 21 世紀における教育の在り方. 第2章. 本論文の問題意識 2.1 現代の大学生及び授業実態 2.2 現代の日本の教育の問題点 2.3 日本の大学改革 2.4 大学教育の位置づけの再検討 「授業改革の必要性」. 第3章. パイロット・スタディー 3.1 はじめに 3.2 医療工学の授業 3.3 電気計測の授業 3.4 科学と技術の授業. 第4章. 大学授業法の先行研究 4.1 学習への動機付け 4.2 大学授業法の先行研究. 第5章. 大学 IOC 授業の提案 5.1 はじめに 5.2 IOC 授業 5.3 補助的な課題による動機付け 5.4 授業運営の配慮 5.5 教員側の心構え 5.6 学生の授業への心構え 5.7 まとめ. 第6章. デジタル回路講義の授業実践 6.1 はじめに 6.2 教科書の設定 6.3 英語の導入に関して 6.4 教育環境の徹底 6.5 講義室での授業 6.6 シラバス及び注意事項 6.7 結果 6.8 授業評価 6.9 まとめ. 第7章. 専門教科における英語の導入. 4.

(5) 7.1 理工学部生の英語実力テスト 7.2 英語の導入 7.3 アンケート調査 7.45年間のアンケート調査 7.5 まとめ 第8章. 感想文ノートの導入―双方向の授業展開 8.1 はじめに 8.2 双方向性コミュニケーション授業実践 8.3 感想文ノートの分析 8.4 学生の理解の枠組みを踏まえた授業実践 8.5 まとめ. 第9章. アンケート調査用紙の導入 9.1 はじめに 9.2 大学の組織的なアンケート調査の場合(調査1) 9.3 私的アンケート用紙の提出とその実践(実践研究8) 9.4 まとめ. 第 10 章 記名、無記名による比較調査 10.1 はじめに 10.2 記名無記名のアンケート調査 10.3 まとめ 第 11 章. 学生から見た IOC 授業法の実行度 11.1 授業運営の配慮度(調査3) 11.2IOC 授業法の実行度(調査4) 11.3IOC 授業法の5年間の実行度(調査5) 11.4 まとめ. 第 12 章 学生個人の意識変化とその成長 12.1 はじめに 12.2 実践研究9. 成績不振の学生の変化(クラス95). 12.3 実践研究10. 授業ごとの学生の成長. 12.4 実践研究11. 新学科の学生の場合. (クラス98) (クラス2000). 12.5 まとめ 第 13 章 受講生、非受講生の成績動向調査 13.1 はじめに 13.2 クラス94の学生の成績動向調査 13.3 クラス95の学生の成績動向調査 13.4 まとめ. 5.

(6) 第 14 章 本教育方法の再現性―5 ヵ年の調査 14.1 はじめに 14.25年間のアンケート調査の統計 14.3 まとめ 第 15 章 本教育法のもたらした効果 15.1T 大学理事長の評価 15.2 実践研究12 15.3 調査9. 学内. 国内. 15.4 調査10. 学外. 15.5 調査11. 国際. 15.6 実践研究13. スタント効果. 第 16 章 全体のまとめ 16.1 まとめ1 16.2 まとめ2 参考文献 和書 洋書 参考資料 1.教育の業績での受賞 2.ハイテクリサーチセンター構想に選定される 3.日経新聞. 「先端人」. (スタント効果). 気泡を生かす逆転の発想。超音波診断に高性能造影剤 4.日経産業新聞(新造影剤) 5.通産産業省諮問委員会 21世紀経済産業政策のビジョン 6.人材教育 偏差値の低い学生も研究に夢中にさせる秘訣は、時には「彼のために」厳しく 叱ること 7.Pacific Friends Prof. Kawan Soetant’s Challenge, Guiding Students to Realize Their Great potential 8.旺文社. (研究及び教育―スタント効果). 超音波の安全性を追求。 「スタント効果」で、先駆医用機械の研究開発に臨む 9.コミュニケーションを大切に学生一人ひとりの「意欲」 「能力」を引き出していき たい 10.皆さんのやる気を個性を大切にします。 「自分が主人公」になった研究を行って みませんか。. 6.

(7) 11.大学取得ランキング「特許」 、朝日新聞社 12.大学の崩壊、鵜川著p.110,124,142,239 13.デジタル回路テキストの一部の例 14.デジタル回路練習問題例 15.デジタル回路テスト例 16.大学の組織的な授業アンケート用紙 17.私的アンケート用紙例. 2.0 論文の概要 序章では日本の大学教育の現状をまとめ、現代社会のニーズとアメリカでの大学教育大衆 化の対応方法の体験などをふまえて、大学教員の授業の取り組み方、刺激を与える授業、 双方向性、討論参加形式の授業などを含む IOC 授業法構想への経過を記述している。 文部省では、92年前後の「生徒急増期」に合わせ、臨時的に各大学の定員を増やした。 その後受験生は減ったが、当面、そのままの定員を維持しようという大学が多く、新しい 大学の開設も相次いだ。定員が増え、受験生が減ったのだから、必然的に、大学は入りや すいものになり、浪人生の数は激減した。その結果、伝統のある予備校が閉鎖するなど、 受験産業の経営が厳しくなり、高校生が「勉強しなくなった」といわれるようになった。 文部省が97年に行った試算によると、2009年の大学・短大志願者数と入学者数(そ れぞれ70万7千人)は、均衡を保つ。志願率や進学率は今後も上昇するのに反して、2 1世紀には進学人口の激減から、大学進学希望者全入時代を迎えることになる。もちろん、 これは全体の数字なので、多くの私立大学・短大にとって、 「全入時代」はすでに訪れてい るといっていい。 長引く不況を受け、受験生の国立志向が高まっているといっても、その国立大とて、安 泰ではない。構造改革と規制緩和の波は、もはや大学すら「聖域」とは位置づけていない。 ボーダーレス社会のなかで、大学間の国際競争も激化している。国立大の法人化に向けた 動きも進んでおり、大学同士の統合、再編も進んでいくであろう。各大学には「生き残り」 に向けた危機感が広がっており、週刊誌にも「大学倒産時代」といった見出しの躍ること が、珍しくなくなった。 大学を見る社会の目も変わってきた。経済界も、もはや「企業内教育」をじっくりやる 余裕はなく、「即戦力」がほしいと言い出したのだ。受験時の学力を表す大学の「銘柄」で はなく、これまで軽視されてきた大学教育の中身が重視されるようになってきた。もう一 度、大学で学ぼうと考える人も急速に増えている。大学はもはや社会と隔絶した象牙の塔 のままでは生き残れず、一般の人たちにとっても、 「社会に出たらもう、大学なんて関係な い」という時代ではない。 日本より早く「大学ユニバーサル化」時代をむかえた米国は、一時、多くの大学が倒産. 7.

(8) するのではないかと予測されたという。しかし、いまの米国の大学は、幅広い層の国民に 高等教育の機会を提供する一方、世界中の多くの学生をひきつけ、その大学制度は日本も 含めて、ほかの国々の「手本」になっている。その理由は 3 点にまとめることができる。 1)米国では、すでに高校は今世紀前半に志願者全入時代に入ったと教育社会学者マー チン・トロウ(1976)が言った。彼は、高等教育は「エリート期」「マス期」「ユニバ ーサル期」の三段階を経て発展するとの説をたてている。18歳人口に占める就学率が1 5%までは、高等教育が少数者の特権である「エリート型」 、これを超えると相対的多数の 権利である「マス型」、50%を超えるとだれもが参加可能な段階「ユニバーサル型」とな る、という考えである。 日本の大学、短大進学率は50%をわずかに下回るが、現状が「ユニバーサル段階」ま できていることに、異存のある人は少ないだろう。現状を受け入れ、それに伴って生じる 様々な問題を認識したうえで、やはり、大学全体をある程度いくつかのタイプ、層に分け て考えていく必要がある。新しい世紀のなかで日本の大学がどのような道をたどっていく のか。文部科学省は「競争的環境のなかで個性輝く大学」を目標に掲げ、米国型の大学を まねようとしているが、その前に、すべての国公私立大学を同列にとらえる建前を見直し てほしい。そしてそれは決して、 「トップ30」を決めるだけですむ問題ではない。 本来、国公私立の大学のそうそうたるメンバーが顔をそろえる大学審議会(現中央教育 審議会の大学分科会)でこそ、大学の大衆化や全入時代の大学がいかにあるべきか、とい う問題を論じるべきだったのだ。が、その答申は相変わらず、すべての大学に向けて画一 的な提言を発する、という建前論に終始してきた。正面から「大学の危機」に取り組もう という姿勢が、足りなさすぎたのではないか。そしてそれぞれの大学も、高等教育機関と いう公的な存在であることや、国の助成を受けていることを認識し、たとえ厳しくても、 入学者の状況、経営面などをきちんと情報公開する必要がある。学内や地元地域はもとよ り、対外的に公表、発信していくべきである。 今後は、 「全入状態」の大学がますます増えていくとみられる。該当する大学は、その事 実を受け入れ、どういう大学をめざすのか、どんな入試、教育を行っていくのかを、きち んと明らかにしてほしい。大学の種別化、機能の分類といったことが行われていかないと、 学生にも社会にとっても、無駄なコストが大きすぎるからである。 理想を言えば、そうした大学の種別化は国からの"押しつけ"や、偏差値による序列化につな がる形であってはならない。個々の大学の判断で自主的に行われていくのが望ましいので はないか。日本の高等教育の諸問題を考える上での大きな指針となると思う。 2) M.J.アドラー(1984)は教育改革宣言ですべての人に対する質の高い教育 の必要性をあげ、公立学校の質の低下は、子どもの将来を損なうと言った。その対策とし て、地域社会レベルでの統一が必要であり、同じコース・オブ・スタディが基礎的学校教 育の本質であるとし、ハイスクールから一切の職業教育、科目を排除する「知育」の提唱. 8.

(9) を宣言した。 3) 危機に立つ国家的教育改革への至上命令(1983)の提案を背景にしたアメリカ の教育政策は、学力低下への警告をうけて、厳しいしつけの必要性をあげている。過去2 0年間、アメリカの工業生産力は確実に低下し、大企業はつぎつぎと世界的競争に敗北し ている。その原因は知的水準の低下であるとして、凡庸な職業訓練科目、家庭科目、自動 車運転科目などによって、卒業に必要な単位を充足するのをやめるようにし、必修基礎科 目として国語、数学、理科、社会科、コンピュータ科学の五つを指定した。 大学進学希望者には、外国語を加え、卒業時には資格試験を実施し、さらに、教師に対 しても正式採用までに試験を行い、また在職中にも試験を受けさせるようにした。これら は、州法によって実施されるところが増えている。また、授業日数の平均を180日から 200〜220日に、1日7時間にせよと提案した。そして現在、この教育を受けた生徒 がアメリカを変えつつある。 1991年の大学設置基準の改定を機に、カリキュラム改革が始動した。大学カリキュラ ムについてはこれまでも様々な試みがあったが、旧設置基準ではカリキュラムという概念 が確立しておらず、一般教育、専門教育などの科目区分および区分ごとの卒業単位数の差 異等により、大幅な改革はむずかしかった。しかし、新基準では教育課程の考え方が明示 され、また授業科目の区分規定がなくなり、大学がカリキュラム編成の自決権を手にした ことから、さまざまな改革が現実のものとなった。その改革とは、例えば、教養部の解体、 一般教育の再編、カリキュラムの改革、シラバスの作成、自己点検や自己評価、科目等履 修制度、講座や学科などの再編成などである。筆者も学部再編成整備委員や自己点検委員 など、委員になることが増えてきた。それでも大学改革の実が容易には育ってはいかない。 確かにシラバスや自己点検・自己評価のように形式は整ってきた。しかし、実質的な改革 はどうなのだろうか。シラバスはできても授業の中身は昔と同じではないだろうか。自己 点検・自己評価は現状を美化する作文の羅列になっていないだろうか。それとも、形式的 な作文といった書類づくりであっても、やってさえいれば改革を自覚出来るようになるか ら、長い目で見れば実質的な大学改革につながるのであろうか。 上記の問いかけに対し、次のリクルート社の調査結果(College Management, Recruit 19 96)は大いに参考になる。調査対象251大学の75、300人の学生は、大学設置基 準が改正されてから入学し、改革によって変化した大学生活を経験した学生である故、大 学改革が実を結んでいるかどうかを、学生の反応を通じて知ることが出来る。今回の調査 結果は、全体として次のようなものである。図書館や研究室の設備などの教育施設や食堂 などの生活施設の満足度は上昇している。しかし、 「教授陣が授業の取り組みに熱心」「刺 激を受ける授業」「討論・参加形式の授業」などの授業改革の項目では満足度が低い。大学 についての「 『ハード面』の満足度は上昇したが、 『教育ソフト』は下降ぎみ」である。い まのところは「『授業改革』の成果はまだ見えてこない」というまとめがなされている。大 学改革の効果があがっているのは施設面で、教育面ではほとんど功を奏していないという. 9.

(10) ことである。残念ながら、大学改革は形式面ばかりで中身は変らないのではという危惧は、 今のところ当っていることになる。 第2章では、スタント氏の問題意識をまとめている。大衆化時代の学生はもはやエリー トではなく、しかも大教室での一斉授業のような経済効率性も同時に追求する必要がある。 学力低下を目撃しながら、一般教育を軽視しても社会のニーズに答えるためには専門教育 を重視しなければならない板ばさみにある。 戦後日本の高度経済成長を背景に、高等学校への進学率の上昇、国民の高等教育への要 求の高まりなどを要因として、大学・短期大学への進学率は上昇傾向をたどっている。具 体的には、1955年に10%程度であったものが、63年に大衆化の指標とされる15% に達し、70年代には40%台に突入し、現在では49%とユニバーサル化の指標とされ る50%に近づいた。18歳人口の減少傾向の中で、とくに4年制大学への志願率は依然 と高く、進学率の上昇もしばらく続くものと思われる。大学あるいは短期大学に進学した 者のうち大学や短期大学にどのくらい残ったかを示す指標としての残留率について見ると、 2001年度の大学の場合、全国平均は39.1%となっており、残留率は低い。しかし、 ここ10年問の推移は上昇傾向にあり、徐々に残留する傾向にある。2001年度の短期 大学の場合、全国平均は59.5%と比較的高く、大学と同様上昇傾向にある。 大学側からするとこのような独創性のない学生たちが入学して来るのは、望ましくない。 欠陥を持つ中高教育の影響を大学がまともに受けてしまうことになるからである。そのよ うなわけで、T大学をはじめ多くの大学が、いかにしてこれらの学生の独創性を育てよう かとその対策を考えているのは周知の事実である。しかし、良い対策が見つかりそうもな いのはつい最近の2001年文部科学省の報告からもうかがえる。18才人口が激減して いるのに、大学・短大への進学率は48.6%を超えている。これは、大学によっては独創 性どころか高校レベルの補習授業を必要とするような低レベルの高校生が入って来るよう になってしまったことを示している。大学や短大も存続していくためには学生が必要なの である。日本は世界でもあまり例をみない大学教育のユニバーサル化の段階に入ったと言 える。大学はもはや従来の大学教育ではありえない。 大学の「ユニバーサル化」の進行は、たんに学生数の拡大のみならず、高等教育や教育プ ログラムの水準の多層化や機能の多様化をもたらさずにはいられない。マーチン・トロウ が「エリート型」から「ユニバーサル型」への移行と呼んだ諸現象が、伝統的なヨーロッ パ型の人材を養成するために、補習的な授業を加えたり、CAIのようなコンピューター その他のメディアを活用する施設設備を必要とするようになる。ユニバーサル化は一面で は多数の学生を大教室の講義で教えるという画一的な経済効率性を追求せざるをえないが、 他方では多様性に応えるという意味でコストの高い設備も不可欠になるということでもあ る。以上のことは今日の高等教育が取り組んできた難題であったが、伝統的なエリート主 義的高等教育体制のヨーロッパにとっても、いまや共通の課題となっている。. 10.

(11) 「大学のカリキュラム改革」の現状については大学ごとにいろいろなものがあり、その傾 向を一括して述べることは困難である。これまでのところ、改革の中心は、カリキュラム の前提となる教育研究組織についても、教養部の廃止や新構想の学際的学部の新設が中心 で、一般の学部を含む大学全体の組織改革は必ずしも方向性を見いだしていないというの が現状ではないだろうか。しかし、現在進行中のカリキュラム改革の背景には、学術の高 度化・多様化、社会の国際化・情報化、学生層の知的・文化的変容、生涯学習の要請、1 8歳人口急減期への突入など、大学をめぐる諸要素の大きな変化がある。大学がこれらの 変化に適応し発展するためには、専門教育を含むカリキュラム全体の改革が必須の課題で あり、それを可能にするためにこそ設置基準が改正されたのである。 これまで大学に関する社会の関心は入り口、つまり入試にあった。しかし、今、関心は 急速に、学生は何を学んだか、すなわち中身に移りつつある。社会は、教育の質を問うよ うになってきている。企業も学卒者の採用にあたって、いわゆる偏差値ランクに基づく学 校歴よりも、学生が何を学び、何を身につけたかという意味での学習歴を評価する努力を 始めた。大学は、どれだけ偏差値の高い学生を集めるかではなく、学生にいかなる質の教 育を提供できるかが問われている。さらに、これからのカリキュラム改革は、学部構成の 改革も視野にいれる必要が起こってこよう。今回の設置基準の改正で、従来は学部ごとに 法学士、工学士など29種あった学士の種類は、学士一本に統合された。少なくとも、旧 来の学部の枠組みをこえた教育の展開が期待されているのである。 現在、ほぼ90%の大学・短期大学においてカリキュラム改革が実施されたが、最も顕 著な傾向は旧来の一般教育の軽視=専門教育の重視である。また、多くの大学では、近年の 学生の学力低下問題に対応し、補習教育や導入教育を取り入れるカリキュラム改革で始ま った改革は、その後大学の構造改革へと移り、国立大学の法人化や大規模な再編・統合の 時代を迎えた。法人化については、2004年度に実施される予定である。 文部省の「大学改革の今後の課題についての調査研究」 (1995年1月)によると、学 生は、 「分かりやすい」、 「役に立つ」、 「社会のニーズに合った授業」、 「小人数で目の届く指 導」 、 「授業方法の工夫」等を望んでおり、「教員の授業内容・授業方法」、 「教員との触れ合 い」、「情報処理科目」等について不満を持っていることがわかる。勿論、学生の勉学に対 する姿勢に問題なしとはしないが、授業が真に学生の期待に応え得るものとなっていない 問題はことさら重大であり、学生にとって授業への魅力を希薄化させる要因ともなってい る。私立大学は教育研究の充実向上を図るため、不断の努力を続けているが、さらなる発 展を期すには学生に魅力ある授業となるよう、授業の内容や進め方を工夫し、展開するこ とが緊急の課題となってきた。 そこで、上記の意見をもとに学生の期待に応え得る授業を整理してみると、次の4つに 集約することができる。 1)学習意欲の高揚を図り、学生に分かり易い授業とすること、 2)問題発見・解決型の授業を提供すること、. 11.

(12) 3)学生のニーズを取り入れたカリキュラムの実現を図ること、 4)高度情報社会に適応し得る情報教育の充実を図ること。 これらの視点から授業のあり方を見直していくことが望まれるが、それには時間、空間、 距離など物理的な制約を超え、コンピュータやネットワークなどを通して文字、音声、画 像をデジタル化して一体的に扱えるマルチメディアを積極的に活用する授業改革の推進が 不可欠となってきた。 21世紀では、私立大学はそれぞれが目指す教育理念の一層の具現化に向け、授業環境 の質的改善を進めていかねばならない。経営と教育の両立は困難を極めるが、人材育成を 使命とする大学にとって授業改革の遅滞は一刻の猶予も許されない。 「授業評価」では、1991年の大学設置基準等の大幅改正に伴い、多くの大学・短期大 学において教育改革が急速に行われた。改革の中心はカリキュラム改革であるが、授業評 価の導入についても進めるように指導されている。 自己点検・評価の導入も大学改革の画期的な出来事であった。基準の大綱化により各大 学に教育研究の点検・評価が努力義務化され、今日までほぼ90%の大学・短期大学で実 施され、半数以上が結果を公表している。これと並行して、一部の大学では客観的な外部 評価を実施したり、大学基準協会では96年度から「相互評価」を実施したりして、大学 評価が盛んとなった。2000年度からはさらに国立大学を対象とした国の第三者評価も 開始され、さらに各大学では自己点検・評価が義務化、外部評価が努力義務化され、大学 の社会的責任がますます重くなってきた。 日本の大学ではこれまで学生による授業評価は、顕在的かつ組織的な形ではあまり行われ てこなかった。学生が教授の講義内容を判定したり、単位取得や試験の難易度を示したり するアングラ出版は少なからず大学で行われていたが、それはあくまでも非公式な学生活 動の一環として行われていたにすぎず、公認された制度として定着しているわけではなか った。日本では、経済界においても生産者の保護を重視する傾向が強く、高等教育におい てもこれまで伝統的に政府の援助は学生にではなく、機関としての大学や教職員本位にむ けられてきた。米国の大学の様に学生を消費者としてとらえる発想はほとんど存在せず、 いまでもそうした発想は充分認められているとはいえない。 しかし、1997年は、日本でも学生の授業評価を公認された制度として、あるいは学生 にアピールする政策として、堂々と採用する大学が出現してきた。そのことはサービスの 提供者としての大学が、これからは学生消費者の意向を無視してはやっていけないと認め 始めたことを意味する。つまり、日本でも学生による授業評価が制度としてようやく市民 権を獲得しつつあるように思われる。1997年5月24日付けの毎日新聞には「95年 度は全国242校が実施:学生による授業評価は91年の大学設置基準の改正で、自己点 検・評価を求められたことから導入する大学が急増。92年度にはわずか38大学しか実 施していなかったが、95年度は全大学の半分近い242校で実施。全学部、学科で行っ ている大学も110にのぼる」と書いてある。2001年10月現在、文部科学省の調べ. 12.

(13) によると「2000年度全国596校が実施、95年より更に導入する大学が急増。95 年度にわずか242校しか実施しなかったが、2000年度はほぼ全大学で実施する」 。 これまで日本の大学で学生による授業評価が行われてこなかった理由の一つは成績評価を 下す大学教員に絶大な権限があり、あたかも十九世紀ドイツの大学のように、学生には教 授の権威に疑問を抱く能力あるいは勇気を持つ者ではないと思われていたのかもしれない。 しかし、1990年代以降日本の高等教育は、大学の収容力と入学学生の需給バランス、 教授と学生の関係、さらには大学の威信やヒエラルキーなどにおいて、重大な変化の兆し を示し始めている。若い受験生の学校選びは、戦後何十年にわたって変わることのなかっ た国立大学中心の受験体制を一気に変えさせ、大都市を中心とした私学志向を高めさせる ことになった。従来、教職員の福祉向上を重視して経営されてきた大学は、次第に学生と いう集団の消費者行動の行方を無視しては大学の威信と評判を維持しがたくなっている状 況に直面した。 教授と学生との関係も同じような問題にぶつかっている。例えば授業中の「私語」の広が りは、講義に自分とのかかわりを何ら見出せぬ学生の消極的な消費者反乱とみられぬこと もない。教授たちは、「私語」にふける学生たちを自分に振り向かせるためには、単に自分 の研究の成果を陳述すれば、それが自ずと教育になるという「研究と教育が両立」すると いう伝統的な大学教育観では、何の解決も見出せぬことを思い知らされたのである。学生 による授業評価も、その解決策を求めるうえの様々な方策のひとつである。学生の授業評 価が大学教育の向上や改善の有力な解決策となりうるか否かは、まだ不透明である。メリ ットもあるし、デメリットも少なからず出ると予想される。これを実施しているいずれの 大学でも、賛否両論が激しく交わされていることであろう。しかし、はっきりしているこ とは、これからの大学は、学生消費者の要求を無視しては存続しえなくなったということ である。 結論をいえば学生の授業評価は、学生とは、教師とともに大学の授業についての直接的な 情報源であり、学生はその授業について信頼できる観察者であることを信ずるところにお いて初めて成立しうるものであろう。教授は確かに「授業という料理をつくる料理人」で ある。しかし、その料理がどんな味がするかは、食べた者にしかわからない。少なくとも 料理人は食べた者からどんな味がするかを聞いて知っておく必要があるのではないか。 (第 8章参照)評価はどんなものであれ必ず両刃の剣になる。学生による授業評価を通じて教 授の教育責任に対する自覚が高まり、教授法の改善につながる可能性もあれば、これを踏 み絵のように悪用され、授業が学生にこびたものとなり、アカデミック・スタンダードの 低下や、アカデミック・フリーダムの脅威になる恐れもないとはいえない。つまり教授団 を活性化する可能性もあるが、萎縮させかねない危険性の両面も含まれている。 それゆえ、学生による授業評価にあたっては例えば試行錯誤による経験と研究の積み重 ね、教師と学生とのコミュニケーションや信頼関係と協力関係の確立が不可欠の前提とな るであろう。. 13.

(14) 「大学教育の位置づけの再検討」では、筆者は、これまで大学は専門教育の場であると考 えてきた。即ち、学生は自分の好きな事をするため、好きな道を極めるために自分の意志 で選択してきたのであって、好きでないのならやめたら良い、否むしろ好きでない、ある いは向いていないとわかったなら自ら辞めて行くべきだとすら考えていた。 しかし、現状ではこの様な認識の学生は極めて希なようである。「やりたい人この指とま れ」で自分からとまってくる学生はほとんどいないようである。したがって、前述の様な 筆者の考え方では日本の大学教育は既に成り立たなくなってきているのであろう。目的意 識を持たずに大学に入学し、大学に入学後も自分の目標を探す努力すらしない学生が多い。 大学生活は自分に与えられた人生で最も長い休憩時間とでも言うような時間の使い方をし、 授業に遅刻したり、私語をすることが当然の権利であるかのように振る舞い、一生懸命勉 強しようとする数少ない熱心な学生にどんなに迷惑をかけているかについて想像だにでき ない学生が多い。この様な悲しい状況に置かれた日本の大学教育において、今要求されて いるのは単なる専門教育ではないと思えてくる。このような悪い状況が生じてしまったの は、中高校および家庭における極端な受験一辺倒の教育の歪み、さらに、自分は本来何が したいのか、どのようにして世の中に貢献し、どのようにして生きていきたいのかを考え るのではなく、どの高校、どの大学、どの有名企業に入りたいのかだけを考えさせた本質 を置き去りにした教育のつけがまわってきているのではないだろうか。しかし、現状を嘆 いていても、現状打破は不可能である。今、日本の大学教育に求められているのは、専門 教育だけではなく、彼ら若者達に夢と自覚を持たせ、人間形成を行うことも必要になって きているということではないだろうか。 まず学生に夢と自覚を持つ人間形成を行い、目的意識と責任感を植え付け、そして初めて 専門教育を始められるようになるのではないだろうか。前述したように、これは彼ら学生 だけの責任ではないように思える。受験一辺倒のこれまでの教育や日本社会の余裕のなさ 等により、彼らがこれらの最も本質的な部分を考えるチャンスが奪われてしまっていたの かもしれない。しかし、この様な現状を嘆いてばかり返し、出席しても私語や居眠りばか りだった学生も、筆者のデジタル回路の授業では目も生き生きとして、試験でも優等生並 みの高得点をあげ、最終の定期試験の平均点は89点になった。 本論文で後述するような試み、努力実践の結果として、授業に学生が必ず集まるように なった。 第3章では、「パイロット・スタディ」について述べている。 第 1 章で述べた問題意識に基づいて、 博士論文の課題を設定し実践計画を立てるために、 筆者がT大学において行った授業である。実践研究1の医療工学は通常の1学期全部を担 当する場合(15回)を述べる。また、実践研究2から実践研究3までの授業は1学期で 1回から3回までの講義を担当する場合を述べている。 1.. 医療工学(実践研究1a、1b). 14.

(15) 2.. 電気計測(実践研究2). 3.. 科学と技術(実践研究3). 以上のパイロット・スタディではシラバスの検討、学生の将来と授業の関係、会社訪問、毎 回 3 行感想文、授業評価、学生の自己反省、先端技術と講義の関係の説明、英語の演習問 題の導入、討論による授業の活性化などの授業実践から得た経験をもとにして、デジタル 回路の講議を中心に本論文の授業研究を展開することにした。 第4章では、「大学授業法の先行研究」について述べている。 4.1「学習への動機づけ」では、教育活動に携わる教師にとって、恐らく最も関心があり また頭を悩ませている問題の一つは、如何にすれば学生が学習するのか、言い換えれば学 生にやる気を起こさせるにはどうすればよいかということであろう。いかなる教授方法を とろうとも、学生がそれを受け入れ、自ら学習活動を行なわなければ成果を得ることはで きない。学生は何故学習するのか、あるいはしないのか。この何故というのが動機づけ (motivation)の問題である。一般に動機とは、活動を開始させ、維持し、方向づける原動力 となるものであり、こうした一連の心的過程を動機づけと呼ぶ。言うまでもなく学習には 学生の 能力"が重要な条件であるが、それは十分条件ではない。考え方によっては、より 重要とも言えるのがこの動機づけという情意的側面である。しかし、この二つの側面をそ れぞれ切り離して考えることは難しい。この情意的側面には認知的側面との、無視できな い相互作用的関係が存在している。 「大学授業法の先行研究」では、何人かの学生は学習に自発的に熱中できる。しかし、 Ericksen (1978)によると大多数の学生が、教師からの奨励、挑発、かつ刺激を必要とする、 もしくは希望する。教室の有効な学習は、まず第一に学生に教科への興味を持たせ、それ を維持することだが、それは教師の資質に大いに依存する。学生の学習意欲の程度に関係 なくそれを変え、教室の雰囲気に影響を与える。 Bligh (1971)及び Sass (1989)によると、学生の動機づけには残念ながら簡単な方法はない。 学生がより課題に積極的に取り組み、学習しようとする動機づけには多くの要因が影響す る。学生のその課題の有用性に対する理解力および達成したいという気持ち、自信および 自尊心、忍耐および固執などが関係する。 また、すべての学生が、同じ価値、ニーズによ って動機づけられるとは限らない。学生の何人かは他人からの承認、また挑戦課題の克服 などが動機づけとなる。Lowman (1984)、Lucas (1990)、Winert and Kluwe (1987)、そして Bligh (1971)によると学生の自己動機づけの増強は教育のやりかたによって影響される。学生が自 分で動機づけできるためには、教師は下記のことを薦めるとよい。 1.学生が自分でできるということに対する確信を支援するには、まめに、早めに、 ポジティブ・フィードバックを与える 2.容易すぎず困難すぎない課題を割り当てることによって学生が成功する機会を与 える. 15.

(16) 3.資料の意味および価値を見つけることを助ける 4.開放的、肯定的な雰囲気を作り出す 5.学生自身が学習コミュニティーの価値あるメンバーであることを自覚させる Ericksen (1978)は日常のよい教授法を促進する特別な努力によって学生の無関心を直せる という研究を示した。学生は、純粋な興味を持つ熱心な教員によって、課題に対してより 積極的な取り組みをする。したがって、学習を促進する試みはさらに学生の動機づけを増 強する。 さらに、動機づけ要因の分析を学生にさせることを薦める。Sass (1989)は、高度に動機づ けられたものおよび動機づけが低かった2つのクラスに分けて実践的に調査している。2 つのクラスの各学生の動機づけの程度に応じて、その影響を及ぼした特定要因のリストを 作る。また、その後、学生は小集団に分かれて動機づけの程度に関係する要因及び特性に ついて合意に達するまで討論する。 Sass の報告によると彼の20以上のコースでは、次の 8つの特性は学生の動機づけへの主な要因とされている。 1.教師の熱心さ・情熱 2.適切な資料 3.教科の構成 4.適度な教材レベル・簡単すぎず難しすぎず 5.学生の活発な関与・参加 6.多種多様性 7.教師と学生の目的意識の一致 8.適切な例、具体的な例および理解し得る例の使用 この Sass の結論は筆者のIOC教授法のある部分(第5章に参照)に類似した結果にな る。 第5章では 「大学授業法の提案、IOC法」について述べる。 先行研究で述べたように、学生が分かりやすい授業や面白い授業によって授業に興味が 出る、分かれば頑張れる、頑張ればより分かる。また、面白く分かるとやる気が出るし、 課題を克服することによって達成感を得る。通常の授業では、動機付けをうまくやるのは、 何か「補助的な課題」を付け加えることが必要と考える。教員はまず、講義をうまくやる 自信が絶対に必要である。筆者はパイロット・スタディの「医療工学」や「電気計測」な どいくつか良い授業を体験したため、大学授業に自信を得た。そこで、大学授業研究を対 象とした「デジタル回路」を講議するとき敢えて講義以外にもう一つのハードル、すなわ ち後述の第7章「専門教科に英語」や第8章「3行感想文ノート」などを導入する。また、 学生の動機づけによる「心の変化」を把握するために学期の最後に「私的なアンケート調 査」を実施する。こうなれば、パイロット・スタディの授業結果より「よい動機づけ」が 可能と考えられる。特に筆者の関係したT大学の学生の背景としては、学生のほとんどが. 16.

(17) 受験を幾度も失敗した挫折経験(悪循環)の持ち主である。そのため、これらの学生の自 信を取り戻し、成功体験を経験させるために、つまり「良い循環」にするためには、今ま でできなかった学生だけに、あの「悪循環の殻」から抜け出すにはかなりの覚悟を必要と する。 「内的動機づけ」ができる前に、まずはやむをえなく「外的な援助(力やエネルギー)」 を借りる(与える)必要があると思われる。しかも、その方法は必ず彼らに納得できるも のとし、何か特別なシステムやプログラムを考えなければならない。つまり、彼らにかな り「強い動機づけ」を与えなければならないと考えたからである。 第5.2節では、本教育法であるIOC授業法(オリジナル1)では、第1外国語であ る英語導入(オリジナル2)、そして3行以上の感想文(オリジナル3)から構成される。 本教育法の学生の意識変化や動機づけ度、そして教育法の「品質管理」のために私的アン ケート(参考資料1)を付け加えることを薦める。 しかし、筆者のIOC授業法の他に、もう2つスモールゴール (Small. Goals)である英. 語の導入及び感想文を学生に挑戦させるものとして設けた。これらのスモールゴール は学 生の動機づけに大いに役に立つと考える。デジタル回路の課題やスモールゴールを実行す るとき学生を「内的な動機づけ」を心がけている。授業の最初か最後かそして休憩すると きに体験談や雑談の形で学生に何気なく動機づけをする。 動機づけを行うとき、教室で勉学しやすい雰囲気や環境をつくり出すことが大事だと思 うが、教える学生の学年やクラスによって異なる。一般的には低学年のときより高学年の 方が厳しくない。高学年になると、学生の人数が少なくなり、学生と顔見知りになってい るし、お互いに性格も理解するため、学生との双方向コミュニケーションも低学年よりう まく機能する。ですから、教室を低学年より厳しくしなくても期待する動機づけも達成で きる。アンケートによると学生が「静かな環境の方が勉強しやすく集中できる」という調 査結果があった。 IOC授業法は図5-1のように5つの要素から構成されている。 1. IOC授業法は、a)授業運営の9項目、b)教員の心構えの5項目、c)学生の 心構えの11項目構成されている。授業運営を守る上で、良い授業ができるよう教 員と学生がお互いに協力する必要がある。両者のどちらかが欠けると目標であるや りがいのある良い授業ができなくなる。 2.英語の導入については第7章を参照していだたきたい 3.最低3行の感想文を書かせる 感想文を書かせることによって双方向性コミュニケーションになる。詳細は第8章を参照 していただきたい。 4. 勉学できる環境 ―教室の規則を厳しくする 現代の大学崩壊状況の中で、授業方法を一所懸命に工夫しても、私語が少しも収 まらないという報告がある。今回は勉学できる環境・雰囲気をつくるには、勉学. 17.

(18) 意欲を持たせ、学生の注意力を高めるには教員側の心構えの他に、学生側の気持 ちを引き締めなければならないと考えた。 5.. 動機づけ「Motivation」に関する雑談 1コマが90分という授業時間は学生にとってかなり長く感じたり、短く感じた りする。最近の学級崩壊や大学崩壊の社会現象の中では残念ながらほとんどの学 生が授業時間を長く感じている。中には「だれだれの教員の授業は地獄みたいに なかなか終わらない」、そうなると「私語が多い」 、 「眠たい」などの現象が多く見 られるようになる。. そこで、筆者は「面白くてやさしい」、 「すぐに役立つ授業」をする、 「話にめりはり」をつ ける他に、いつも90分の授業を「20分ずつ」に分けて、その間に適切な「雑談・体験 談」などを混ぜて、 「授業の単調さ」を避ける。このようにいつも「学生を惹きつける」努 力をする。 したがって、本教育法であるIOC授業法は5つの要素から構成される。また、本教育 法の学生の意識変化や動機づけ度、そして「品質管理」のために学期の終わりに私的アン ケートを付け加えることを薦める。 本教育法の特徴として成績の悪い学生を多く救うことができた。教室でより多くの学生 をターゲットとし、彼らを動機づけることもできた。(8章実践研究7、12章実践研究9 —11参照) 第5.3節では、 「補助的な課題による動機づけ」について述べる。本教育法で動機づけられ た受講生と非受講生が卒業するまでの「成績動向調査」を比較検討した。その結果デジタ ル回路受講生の方が非受講生より良い成績を収めたということがわかった。また、研究室 に配属された学生は積極的に研究に取り組んで、学会などで講演をし、特許申請などとい う優れた成果を出すことができた。さらなる成長を見せている。 本研究の目的である大学授業法の実践には、教員と学生がともに授業への意識改革を行 う必要がある。特に教員は授業の双方向性(Interactive)のある Operational Control、IOC法 をうまく行う必要がある。IOC法は講義運営の配慮、教員の心構え、そして受ける側の 学生の心構えから構成されている。これからそれぞれの要素について述べる。また、学生 側から見たIOC法の実行度(どの程度実行されているか)は、第11章の学生の感想文 ノート参照。 第5.4節の「授業運営の配慮」については、以下の9項目に配慮した運営が重要である。 1. 授業準備の戦略. 2. 科目の位置づけと概念の理解を徹底させる. 3. 授業の流れと展開. 4. 魅力ある授業展開. 5. 自発的に学ばせる方法. 6. 学生との接し方. 18.

(19) 7. 夢を持たせ、エキサイティングな授業展開. 8. 小テストなどによる理解度の確認. 9. 授業を通じて学生の生きる力を養う. 第5.5節の「教員側の心構え」ついては、以下の5項目を意識する必要がある。また、そ れぞれの項目を実施した学生の反応は第11章参照。 1. 教室や授業のIOCを上手に. 2. 無力な指導、不適当な指導を避ける. 3. 学生の可能性を信じる. 4. 学生の建設的な意見に対し聞く耳を持ち、柔軟な姿勢が必要. 5. なるべく学生全体を意識して全体をまとめる力が必要である. 第5.6節の「学生の授業への心構え」については、以下の11項目があげられる。また、 それぞれの項目を実施した学生の反応は第11章参照。 1. 学生の協力と責任は不可欠. 2. 規律を高める. 3. 積極的に授業に参加する. 4. なるべく予習と復習をする. 5. 私語を控える(私語厳禁). 6. 遅刻をしないように努力する. 7. 自分の目標を確実に設定する. 8. 自信を見つけるように努力をする. 9. 自分は必ずできるという自信を持つ(劣等感をもたない). 10. レジャーランド感覚から少しでも脱皮するように努力する. 11. 教員から教えてもらうのではなく、自分から学んでいく姿勢. 以上のように講義運営の配慮、教員の心構え、そして受ける側の学生の心構えの三者が 一体になったとき相乗作用も加味して、初めて良い教育成果を期待できる。 第6章では、 「デジタル回路の講義の実践授業(実践研究5) 」について述べる。 筆者はもともと超音波工学が専門で、1993年から2001年まで、それまで勤務し てきた米国の Drexel 大学および Thomas Jefferson 医科大学を辞してT大学に着任した。 T大学に着任した筆者が担当することになった科目は、電子工学の中心的な科目のひとつ である「デジタル回路」だった。当大学では、筆者の着任する以前は「デジタル回路」、 「ア ナログ回路」などの科目は難しくてわけがわからないと学生から嫌われて不人気な科目で あった。筆者の所属する制御システム工学科は、メカトロニクス、電子制御、情報制御な どを核とする学科であり、本来「デジタル回路」、「アナログ回路」等は重要な花形の科目 のはずだが、約100人の履修学生の多くが途中で脱落し最後まで講義に出席した学生は 数名、最終試験に合格した学生はたった1〜2名といった状態であった。そこで、普通の. 19.

(20) 教え方では通用しないのではと考え、テキストの選定にあたっては国内だけでなく米国の 参考書も含めて多数集めたが、納得のいくものは見つからなかったので、これらの参考書 を基に自分なりのテキストを作成した。 授業にあたっては、 「10分以上の遅刻者の入室は許可しない」、 「私語の厳禁」、 「70%以 上の出席がないと成績の評価をしない」、「前から10列目より後ろの着席者には単位を与 えない」等の厳しい「挑戦状」を学生に突きつけて、その上、英語のテキストを使用して スタートした。おまけに毎回授業の後半では演習を行った。しかし、その反面、授業に際 しては、デジタル回路がどのような分野でどのように利用されているか等を、筆者の人生 経験談等とともに話すことで学生の興味を引きつけるように努めた。その結果、他の授業 ではこれまでやる気がなく、遅刻、欠席を繰り返し、出席しても私語や居眠りばかりだっ た学生も含めて、この科目を履修した90%以上の学生が合格し、「自分もやればできるの だ」という自信が持てたと、人気の科目に変身した。 その結果、この授業ではどの学生の目も生き生きとして、試験でも優等生並みの高得点 をあげ、最終の定期試験の平均点は86点となった。筆者のデジタル回路の授業は7年目 であるが、年を重ねる毎に合格する学生の数も平均点も上昇しており、とうとう「授業内 容がやさしいから、もっと手ごたえのある課題を出して下さい」と挑戦的な感想を述べる 学生まで現れた。筆者は、決してT大学の学生のために極端にやさしい問題だけを扱って いるつもりはなかった。彼を満足させる問題を作るのは可能だったが、他の学生の自信を 無くしてしまう事をおそれて迷った。そこで、彼のために、かなり高度なボーナス問題を 準備することで彼の満足度と他の学生の満足度のバランスを取ることにした。デジタル回 路の授業では、筆者と学生の挑戦、そして学生間の良き競争関係を作り出すことよって教 室という空間の緊張感を醸成してきた。 具体的には、 (1)教材の選定、(2)授業運営管理の工夫、 (3)授業方法の工夫、(4) 評価方法の工夫(5)学生とのコミュニケーションの確立を心掛けることで、教室に積極 的に勉強する雰囲気を作り上げていったのである。 第6.2節「教科書の選定」については、従来の形式にとらわれず学生に知識欲を起こさ せる面白い授業を目指し、テキスト選びを始めた。国内だけでなく米国の参考書も数多く 集め検討したが、納得のゆくものが見つからなかったので手作りプリントを使うことに決 めた。このプリントは基本となる事項、日本語と演習問題(英語)とで構成されている。 第6.3「専門教科の英語導入」に関して筆者が、授業に英語を取り入れようとしたのは、 学生たちの多くが、日本式の講義スタイルしか経験したことがないと思われたからである。 筆者は、アメリカ・日本・インドネシア・シンガポールと、それぞれの授業スタイルを経 験してきた。その経験を生かして、アメリカ式の授業法を取り込み、東西融合したグロー バルで新鮮な授業を学生たちに提供したいと考えた。 たとえ英語が苦手な学生でも、英語による演習やテストに合格すれば、それだけでも自. 20.

(21) 信になる。同時に、他大学の友人(あるいは兄弟や親戚の人)と大学について語る時、専 門教科の授業を英語で受けたと胸を張って言える。苦労して頑張って合格すれば、その内 容も忘れないだろう。英語が得意ではない学生でも授業内容を事前にしっかり理解しさえ すれば、あとは英語に置き換えるだけのことなのだからと、日本語による授業に重点を置 き、いかにしたら学生が理解しやすいか、毎回、プリントを作る段階で熟考した。 筆者は日本の大学に勤めているのだし、語学の担当教員でもないのだから、本来、日本 語で講義を進めるべきであろう。しかし、筆者は、講義の時間を通じて、何とか彼らに自 自信を付け元気を出してもらいたいと思っていた。演習とテストを全て英語で行うことに よって、彼らが自信を持つきっかけを作りたいとも思った。だが、これを達成させるため には、大きな問題がある。英語に自信のない学生にいきなり英語の授業をしても、授業内 容が理解できず、かえって自信喪失を招いてしまう。そこで、授業後に行う演習やテスト だけを英語で取り組むこととし、そのためには日本語による講義で、基本となる事項をし っかり理解してもらえるように心がけた。筆者は、ここに細心の注意を払った。つまり、 当たり前のことを確実に理解させることに重点を置いたのである。 英語は得意であると自信を持って言える学生は多くはない。したがって、それらの学生 が萎縮しないよう、講義を始めるに当たって学生たちに、 「私も日本語を覚えたてのころは、 いろいろ失敗した。だから、君たちも、この講義で専門英語を使う際、失敗を恐れてはい けない。 」ということを話した。さらに、「私は、この講義を、「 『この大学で、アメリカ式 授業を経験した』と君たちが胸を張って他人に言えるような授業にしたいと思っている。 だから最後まで頑張ってほしい。最初は出来なくても、必ず身につく。私も頑張るから、 君たちも僕と一緒に頑張ろう」と語りかけ、受講生に講義目標をしっかりと認識してもら うようにした。 これまで述べてきたように、このような方法で授業を行っていけば、 ①この授業の内容に対する理解が進むであろう ②これで自信がつけば、他の授業科目にも熱心に取り組もうという意欲も高まる ③英語に親しみを覚えれば、この授業をきっかけに、英語に対する苦手意識も軽減され 英語力の向上にもつながる ④アメリカなどの他国の話も交じえれば、国際感覚も身につく つまり、一挙四得の効果が期待できるのではなかろうかと考える。 第6.4節の「教育環境の徹底」に関しては、第6.4.1節の「教室の環境及び単位取得ル ール」について述べる。世の中には、権利と義務がある。学生には、教員に対し、しっか りした授業を要求する権利がある。しかし、その一方、その授業をしっかり受け止めよう と努力する義務があるのではなかろうか。筆者は、しっかりした授業をしなければならな いというプレッシャーを学生から受けながら(そのように自分にプレッシャーをかけなか けながら) 、学生に対しては、授業において負うべき義務の最低限を明確に規定した。つま. 21.

(22) り、 ①遅刻は十分まで。それ以後は、入室を許可しない。 ②私語厳禁。違反者は、その場で退室させる。 ③出席重視。出席率が78%以上でない場合は評価しない。欠席は通算で3回まで。そ れ以上欠席した場合は単位を認定しない。但し、特別の事情がある場合は除く。 ④2回の中間テストを含む3回のテストを行うが、3回の平均が60点以下の者は不合 格とする。 というものである。 中・高校生にとっては、これらは当たり前のことであろうが、大学生の中には、大学は 勉強をしたい人だけが、厳しく狭い門を自らの力でくぐり抜けて入ってくる場なので、何 でも自由と勘違いし、開放された気分で授業を受け、権利を主張し義務を怠る者がいるの である。したがって、筆者は、自分自身にも課題を課す一方、受講する学生にも自らの義 務を遂行してもらい、対等な立場で頑張ろうとしたのである。 第6.5節「講義室での授業」では、この科目は選択科目となっており、しかも、担当教授 は外国人で、学生へ事前に配ったシラバス(図6-1)には、英語を使うことを記載してお いたので、学生にとっては内容的に難しい上に、 「苦手な英語を用いての授業をするなんて」 という感じであった。ところが、教室に入ると、なんと筆者の予想をはるかに越える65 人もの学生が座っていた。筆者が担当するまでは、この授業を履修していた学生は数人に 過ぎないと聞いていたので、これには大変驚いた。筆者は、きっと学生たちが間違って教 室に入って来たのだと思い、「この教科はデジタル回路ですよ」と言うと「はい!」と返事 が返ってきた。そこで、さらに「この授業では英語を使いますよ。そのことを承知してい るのですか」と言うと、やっと「え〜?」という叫び声が上がった。 「君たちは、シラバス を読んでいないのですか?」と更に問いかけた。筆者は、できれば少人数で授業を行いた いと思っていたので、「間違って入室した人は、どうぞ退室して下さい」と言った。ところ が、一人も退出しないではないか。これには驚きとともに、これはやり甲斐があるぞと思 った。しかし、安心するのはまだ早い。なぜなら、当大学では、履修科目を決める期間を 二週間ほど設けている。その間は、どの授業に出席してもよく、学生は授業内容や教員と の相性、単位が取りやすいかなどを検討して(但し、これができるのは、筆者の科目のよ うな選択科目だけであり、必修科目はそうはいかないが……)決めるのである。したがっ て、筆者の授業も二週間ほど経たないと、受講人数は決まらない。ところが、三週間すぎ ても減るどころか、逆に80人程に増えていた。この状況を見て、筆者は、教室の大きさ などのことも考え、60名程にしたく、 「本当に受講する気持ちのある者だけ出席してほし い」と訴えた。しかし逆に、学生たちは一歩もひかなかった。つまり、筆者の挑戦状に対 して、多くの学生が受けて立つことを表明したのである。筆者はそれまで、日本の大学生 は授業に対してはあまり積極的ではなく、楽な方へと流されやすいと聞いていたし、T大 学の学生もきっとそうであろうと思っていた。筆者は、そのような学生を相手にするのだ. 22.

(23) との思いで、準備段階から燃えていたが、逆にこの時、学生たちの反応を見て、人数の多 さに圧倒されながらも、学生の熱意に「これはやれそうだ!」と、フアイトが湧いてきた。 まず第1回目の講義では、図6-2に示すような授業計画及び単位取得のための注意事項(図 6-3、図6-4)などを学生に詳しく説明した。なるべくこの計画に沿って授業展開をする。 そして「デジタル回路」についての最先端の研究とのつながり(学生は非常に興味を示し た)や学問上の位置づけ、将釆性、そして授業が全て終わった時に君は何ができるか、な ど学生たちに夢をもたせるように話すことを心掛けた。14回におよぶ講義の間、この姿 勢を常に持ち続け、実践してきた。さらに、第2回目以降の授業では、難しい内容でも学 生が理解できるように、学生の目線でなるべく易しく教えることを心掛けた。それと同時 に、毎回必ず前回の授業内容を確認し、今日の講義との繋がりを理解させた。また、昼食 直後の午後一時からの講義であったために、学生が眠くならないよう、頃合いを見計らっ て、学生たちの身近な話題や興味を示しそうな話を盛り込んで、睡魔を追い払う工夫も試 みた。このことが功を奏したのか、学生が同級生を誘い、誘われた者がさらに仲間を誘う ようになったようである。この現象は、8年目になっても続いている。 第6.7節では第6章の「結果」について述べる。T大学において、筆者は授業を通じて学 生たちに「自信を持たせたい」を目標に掲げ、掲げた以上はいろいろ工夫して行ってきた。 図6-11はテスト1〜テスト3のそれぞれの学生の結果を示している。テスト1では2年 までの成績が下位の者ほど点数が悪く、6点しか取っていない学生もいる。注目すべきは テスト3で、成績下位の学生までもがかなり高得点を納め、全員が合格点に到達できたこ とである。これを以って、この講義は成績上位の学生のものだけではなく、下位の学生も 含めた受講者全員のための講義であることが実証できた。 さらに、テスト1〜テスト3の結果を図6-11で表すと、テストごとに得点が上昇傾向に あるのが明確に理解できる。また、テスト2においては、十問中一問だけ、教えていない 応用問題を出題した。予想通りほとんどの学生はできなかったが、一割の学生が解けた。 これで少なくても平均が5〜8点下がったが、選択科目であり、しかも英語を使った専門 科目の試験で、これだけの学生が受講し、さらに全員が高得点で合格出来たのには驚かさ れた。図6-12では全講義の出席人数を示している。この授業に常に出席する学生の数は 65人である。そして最終テストを受けた学生が64人という数字は、いつも出席する学 生だけが試験を受けるということを意味する。全回出席した学生の比率は51%、1回あ るいは2回欠席した学生の比率はそれぞれ17%と13%で、通算91%という高い出席 率であった。この高い出席率はそのあとの好成績に直接反映していると思われる。 図6-11. 23.

(24) 60 50 40. 第1回 第2回 最終回. 30 20 10 0. A. 80-100. B. 61-70. C. 50-60. D. -49. 図 6-12. 80 70 60 50 40 30 20 10 0. 1. 2. 3. 4. 5. 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 講義別出席者. 図 6-13. 60 50 40 30 学生の評 価. 20 10 0. 1. 2. 3. 4. 5. 24.

(25) 図 6‑14. 90 80 70 60 50 40. 学生の取組. 30 20 10 0. 1. 2. 3. 4. 5. 6*. 第6.8節では、 「授業評価」について論じる。図6-13と図6-14ではそれぞれ学生の本 講義に対する評価と学生自身の取り組み方に関する自己評価を示す。学生のこの授業に対 する評価は5ランク(5が素晴らしい、1が悪い)あり、ランク5は54人で83%(昨 年度50%)、4は9人で14%(26% ) 、3は2人で3%(21%)、2は0人(3%) になっている。5と4と評価した学生がなんと全体の97%(76.25%)であった。さ らに、特に欄外に6点と記した学生もいた*。また図6-14の学生自身の取り組みに関す る自己評価を見ると、学生自身もこの授業に自信を持って真面目に取り組んでいることが 読みとれる。 演習後、毎回学生に感想文用紙(図6-7、詳細は第8章参照)の提出を課しているが、 その内容は次のようなものである。 「それぞれの内容はそれなりに難しいのかも知れないが、 先生の教え方だと、とても簡単な内容に思えてしまう。……先生にお願いしたいのは、今 のままの下手な日本語で、今のままの良い授業をしてもらいたい。」「先生のやる気が凄か ったので、私も授業に興味を持つことができた。始めの頃に先生自身のことをいろいろと 聞かしていただいて、こんなに一生懸命に生きている人もいるのかと驚かされた。 」「分か り易い授業。丁寧な説明、面白い話など、とても親しみやすい先生で、あまり興味が無か ったデジタル回路でしたが、楽しく授業が受けられた。」 「今までの講義の中でも特に理解 できたと思う。今回の講義を3、4年のセミナー、卒業研究で生かしていきたい。 」「英和 辞典を使わずに問題文の意昧が理解できて、自分でも驚きを感じた。 」「最初は、演習問題 などが英語で書いてあるので大変だったけれど、やっているとだんだん分かるようになっ ていった。」「この授業を受けてなんか自分に自信がついたような気がする。授業をうけて いて面白いなあと思ったことは初めてです。 」筆者の、授業に対する真剣な気持ちが学生に 伝わったことが分かり、また、英語の演習等を乗り越えることができたことで、文章にも. 25.

(26) 自信が感じられるようになってきた。 第6.9節では、本章の「まとめ」について述べる。 8年間継続したこのような方法の講義で、学生たちは、各人各様の困難を乗り越えたこ とで自信を持ち、次へのステップに堂々と向かっていこうとする姿勢を見せてくれた。筆 者自身、さらに教え方の研究と工夫を重ね、より多くの学生に自信を持たせることが出来 たらと思っている。本研究は変革時の大学ユニバーサル化の大学教育において、教員と学 生のコミュニケーションにより学生の授業への動機付けを試みる新しい授業法を論じ、そ の実践データの検証が目的であった。本研究においては、負の社会文化的な影響を強く受 けていたとしても、大学生に対する勉学意欲の「動機づけ」が可能であることを立証でき たと思う。 第7章では、 「専門教科に英語の導入」について述べる。 アンケート調査の結果 2)英語の導入に対する意見(受講後) 1. 大賛成 15 人 2.賛成 41 人 3.やる気が出る 11 人 4.特に無い 13 人 5.良くない 1 人 6. 反対 1 人 図7-3 50 40 % 30 20 10 0 大賛成. 賛成. やる気が出る. 特にない. 良くない. 反対. 図7・英語の導入に対する意見 図7より「良くない」と「反対」は2%しかいないので、大多数の 学生は英語の導入に対して賛成意見であるものと理解できる。 3.専門教科における英語(演習やテスト)の導入後のあなたの英語の意識変化 1. 大好き 2 人 2.好き 11 人 3.嫌いではなくなる 20 人 4.なんとなく分かって くる 41 人. 5.やはり無理 8 人. 26.

参照

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