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博士(文学)学位請求論文審査報告要旨

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Academic year: 2021

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博士(文学)学位請求論文審査報告要旨

論文提出者氏名 植田真平

論 文 題 目 鎌倉府の支配体制と権力構造

審査要旨

本博士学位請求論文は、14世紀なかばに、室町幕府が鎌倉に設置した、東国支配のための機関であ る鎌倉府についての専論である。序章「南北朝・室町期東国史研究の現状と課題」においては、当該問 題に関する研究史の整理と課題の提示がされている。すなわち、1980年代に東国の内的動向と対中央 関係の議論があり、1990年代以降は事件・内乱史を中心とする研究が進展したと整理し、そのうえで、事 件・内乱や政治史・政局史ばかりでなく様々な視点から東国を論じることや、鎌倉府の権力構造を実態的 に明らかにし、中小領主層をその支配体制に位置づけること等を課題として提示している。分厚い研究史 を有する東国史研究・鎌倉府研究について、明快な整理、的確な課題提示を行っているといえる。

以下、順を追って特徴・成果等を述べていく。第一部「鎌倉府の支配体制」は、四つの章から成る。

第一章「公方足利基氏期鎌倉府の支配体制」では、初代鎌倉公方(鎌倉府の長、以下単に公方とよぶ)

である基氏の時期に、足利氏一門・譜代被官と東国武士との地域社会における競合、さらには鎌倉府 内部の政治的対立を見出し、支配体制の展開をこの矛盾のなかで論じている。地域社会にまで目を配 った対立軸設定は、従来にないものである。

第二章「公方足利氏満・満兼期鎌倉府の支配体制」では、第二代公方氏満、第三代公方満兼の時期 に、東国武士に対する足利氏一門・譜代被官の優位が確定し、強権的・排他的な鎌倉府支配が展開し、

東国社会全体の反発により、東国武士・東国社会を取り込んだかたちへ転換していくが、地域社会の 矛盾が止揚されなかったため、東国を二分する上杉禅秀の乱に至るとする。第三章「上杉禅秀の乱の 実像と意義」は、その上杉禅秀の乱を一次史料で捉え直し、鎌倉府と室町幕府の動向のずれが生まれ、

幕府の影響が強まって、その後の鎌倉府・幕府の対立、内乱に至ることを論じている。第二章で、当 該期の鎌倉府の矛盾を内乱のみならず、鎌倉府の支配体制全体のものとして包括的に論じた意義は大 きく、第三章も手堅い実証である。

第四章「鎌倉公方足利持氏の北関東支配」では、第四代公方持氏による、上杉禅秀の乱後の強権的 支配、地域社会再編を論じ、鎌倉府権力が公方と関東管領上杉氏とに分化して内部崩壊を招くとする。

公方と上杉氏との対立が、中小領主層の要求、地域社会の矛盾という下からの要因によることを明確 に指摘した点は重要である。

第二部「鎌倉府の権力構造」は五つの章から成る。第五章「南北朝・室町期の都市鎌倉と東国武士」

では、鎌倉府が置かれた重要都市鎌倉において、東国武士の在鎌倉活動や鎌倉寺社の存在をふまえて、

鎌倉府が支配を展開していたとする。当該期の都市鎌倉研究は、その前後と比べて遅れており、東国 武士の活動から実証的な復元が図られている点、意義が認められる。

第六章「鎌倉府奉行人の基礎的研究」は、鎌倉府の吏僚である奉行人の総体的検出・検討を行った ものである。文字通り、「基礎的」な作業であるが、実はこうしたところが従来は明らかにされてい なかったのであり、検出自体がたいへん貴重な成果である。加えて、吏僚組織の整備も論じられてお り、鎌倉府の権力構造解明を前進させる成果と評価できる。

第七章「鎌倉公方足利持氏の近臣と公方権力」と第八章「鎌倉・古河公方足利成氏の近臣と公 方権力」では、公方を直接支える勢力である近臣を検討している。持氏期の近臣は永享の乱で没

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氏名 植田真平

落し、公方空位期を経た第五代公方成氏には、新たな勢力が権力中枢に進出したことを論じ、享徳の 乱後の古河公方権力は一地域権力へ変容をとげるとする。当該期の近臣について包括的に述べたもの はほとんどなく、重要な成果である。

第九章「都鄙関係と上杉氏」では、関東管領山内上杉氏と越後上杉氏との一族結合、両上杉氏を介 した幕府・鎌倉府の関係を論じている。両上杉氏の関係が、幕府・鎌倉府のそれと密接につながって いるとする。手堅い実証である。

以上、二部九章の成果をふまえ、終章「鎌倉府と中世後期東国政権論」では、鎌倉府が、東国社会 の動向と即応するなかで、自立的な東国政権として成立したと位置づけている。

本論文は、従来、上位権力の抗争や、鎌倉府と反鎌倉府勢力との対抗で検討されがちであった鎌倉府 研究において、史料の博捜によって、あまり目を向けられていなかった中小の武士に検討対象を広げ、鎌 倉府の支配体制が一方的な上からの抑圧でなく、地域社会の動向と影響を与えあいながら展開していっ たことを明らかにした。さらに、鎌倉府を構成する人びとを詳細に分析し、権力構造の成立・展開・変容を 明らかにしている。中小武士と上杉氏の問題のすり合わせや、鎌倉府と室町幕府との関係には、なおつ められる点があると思われるが、今後の研究によって十分解決が期待できるであろう。

このように、鎌倉府を支配体制と権力構造の両面から検討し、特に前述のように中小の武士まで含み 込んだかたちでその全容に迫った研究は、これまでほとんど例がなく、日本中世史における(特に中世後 期の)国家史・政治史・地域史を大きく進展させるものであると考える。

したがって、本論文は博士学位の授与にふさわしい論文である。

公開審査会開催日 2015年 5月 16日

審査委員資格 所属機関名称・資格 博士学位名称 専門分野 氏 名

主任審査委員 早稲田大学文学学術院・教授 博士(文学) 早稲田大学 室町時代・戦国時代・

織豊期の研究、戦争

久保健一郎

審査委員 早稲田大学文学学術院・教授 博士(文学) 早稲田大学 院政期・鎌倉期・南北 朝期の研究、荘園村 落史

海老澤衷

審査委員 早稲田大学文学学術院・教授 博士(文学) 早稲田大学 平安時代史、東国史 川尻秋生 審査委員 埼玉大学教育学部・准教授 博士(文学) 早稲田大学 日本中世史、武士団

研究

清水亮

審査委員

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参照

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審査委員 早稲田大学文学学術院・教授 文学博士(早大) 菊池徹夫 審査委員 早稲田大学文学学術院・客員教授 博士(文学)東京大学 後藤

審査委員資格  所属機関名称・資格  博士学位名称  氏  名  主任審査委員  早稲田大学文学学術院  教授    兼築  信行  審査委員  早稲田大学文学学術院  教授  博士(文学)早稲田大学 

審査委員 早稲田大学 文学学術院・教授 博士(文学)早稲田大学 中国宋代史 近藤 一成 審査委員 早稲田大学 文学学術院・教授

審査委員 早稲田大学文学学術院・教授 学術博士(大阪大学) 日本語学 森山 卓郎 審査委員 早稲田大学文学学術院・教授 博士(文学)早稲田大学 中国語学

主任審査委員 早稲田大学文学学術院・教授 博士(文学)早稲田大学 仏教美術史 肥田 路美

主任審査委員 早稲田大学文学学術院 教授 上野 和昭 日本語学 博士(文学)早稲田大学 審査委員 早稲田大学文学学術院 教授 高梨 信博 日本語学. 審査委員

主任審査委員 早稲田大学教育・総合科学学術院・教授 博士(文学)早稲田大学 中国隋唐史 石見 清裕 審査委員 早稲田大学文学学術院・教授 博士(文学)早稲田大学

主任審査委員 早稲田大学教授 教育学博士(東京大学) 心理統計学 豊田秀樹 審査委員 早稲田大学教授 博士(文学 早稲田大学) 健康心理学 福川康之