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博 士 ( 環 境 科 学 ) 今 井 裕 之

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Academic year: 2021

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博 士 ( 環 境 科 学 ) 今 井 裕 之

     学 位 論 文題 名

Design of Selective ― Oxidation Catalysts based on     Control of Crystal Morphology

    for Effective Utilization of Hydrocarbons

(炭化水素資源有効利用のための結晶形態制御に基づく選択酸化触媒設計)

学 位 論 文 内 容 の 要 旨

  固体触媒上での反応は固体表面で進行するため,表面の微細構造が触媒特性に大きく影 響する,そのため,固体触媒表面の微細構造の制御は,触媒性能の向上に向けた触媒設計 の戦略上,極めて重要である.結晶表面はバルクの延長にあると仮定されるので,触媒の バルク構造の制御が,触媒性能の向上に繋がる.また,組成,バルク構造が同一であって も,結晶性固体の表面構造は表面に露出した結晶面によって異なる.そのため,触媒反応 に有効な特定の結晶面のみを露出させること,すなわち結晶形態の制御も触媒性能向上の ための触媒設計指針となる.

  本研究では,炭化水素資源の有効利用に重要な2つの選択酸化反応(  ̄ブタン選択酸化,

CO選択 酸化) を取り上 げ,上 記考えに基づき触媒結晶のバルク構造と形態の制御による 選択酸化触媒の触媒設計とその実証を行った,結晶形態の中でも,特に結晶サイズが触媒 性能に与える影響について調べた.固体触媒による選択酸化は,工業的にも多岐にわたる 反応が実施されており,そのための触媒性能の向上は,炭化水素資源の有効利用を促進し 環境保全に大きく貢献する.

  バナジウム‐リン複合酸化物(VPO)触媒の前駆体(VOHP04・0.5H20)結晶合成において,

結晶の微小化に有効である,層状化合物VOP04‑ 2H20を原料とした剥離‐還元法を用いて,

用い る反応 溶媒の組 み合わせ ,並び にその混合比を系統的に変化させ,VOHP04・0.5H20 結晶の形態制御を試みた.合成条件を種々に変化させた結果,組成及びバルク構造を同一 にして(VOHP04・0.5H20),結晶サイズの制御が可能であることが見出された,更に,特定 比率 の2‐ ブタノール/工夕ノール混合溶媒中での合成において,VOHP04・0.5H20結晶の サブ ミク口 ンサイズ 化(340 nmX35 nm)に成 功した. この混合 系においては,エタノー ル量の増加に伴い,結晶は微小化,且つ均一化する傾向が見られた,前駆体結晶合成後の 溶液 中の剥 離VOP04シートの構造,並びにサイズは,工夕ノール共存に関わらず,違いは 見ら れなか った.生 成直後のVOHP04・0.5H20結晶は,工夕ノール共存により,結晶サイ ズが大きく異なった.これらのことから,エタノールの共存効果は溶液中の剥離体には現 れず,前駆体結晶が生成する際に発現することが分かった,

  サプ ミク口 ンサイズ 化したVOHP04・ 0.5H20結晶から得られたVPO触媒は,門‐ブタン 選択 酸化に おいて, 世界最高 レベル の触媒性能を示した.サブミク口ン化したVOHP04. 0.5H20結晶からは,高結晶性かつメソ孔を有さない(V0)2P207触媒結晶が得られた,選択 酸化相である(V0)2P207が純粋相で得られ,またメソ孔がないことで逐次酸化が抑えられ,

これが高性能を発現した理由であると推定した。

  前駆体結晶サイズによる触媒結晶の構造及びサイズの違いを明確にするため,門,ブタン

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選択 酸化条 件下にお いて,VOHP04・ 0.5H20結晶からVPO触媒結晶への変換過程を各種物 理化学的手法を用いて追跡を行った.マイク口サイズ結晶では非常に複雑な変換経路が存 在す るーこ れに対し ,サブ ミクロン化した結晶では,まずVOHP04・0.5H20結晶は素早く 脱水され,アモルファス構造へと変換していった.同時に結晶表面並びにバルクが強く酸 化さ れた. その後, 徐々に(V0)2P207相が生成し,高結晶化が進行していった.サプミク ロ ン 化し たVOHP04・ 0.5H20結晶の 変換過程 におい て,他のVPO結晶 相への 変換は起 こ らず ,(V0)2P207単一相 へのみ変換が進行することが分かった.また,構造変換初期にお いて は,結 晶形態は 保持さ れるが,(V0)2P207相の生成,高結晶化に伴い結晶に無数の亀 裂 が 生 じ , そ れ ら の 亀 裂 か ら よ り 微 小 結 晶 が 生 成 し て い く こ と が 見 出 さ れ た .   VOHP04・ 0.5H20結晶から(V0)2P207結晶への変換過程において,n‐ブタン選択酸化反応 ガス中に水蒸気を共存させると,変換が促進されることが見出された,それに伴い, ‐ブ タン選択酸化において,無水マレイン酸選択率及び転化率の定常状態に到達する時間が短 縮することが見出された.変換過程における水蒸気共存効果を,各種物理化学的手法を用 いて 系統的 に追跡し たとこ ろ,アモルフんス構造からの(V0)2P207への結晶化及び,酸化 VPO結晶相からの(V0)2P207相への還元―相変換が水蒸気により促進されることが分かった.

  高表 面 積VPO触 媒 の実 現 の ため , 規 則性 メ ソ ポーラ スVPOの 合成を試 みた.VOP04. 2H20を 剥 離 する こ とでVOP04ナノ シート を溶液中 に生成 し,このVOP04ナ ノシート を原 料に ,カチ オン性界 面活性 剤をテンプレートとすることで,規則性メソ構造を有するVPO 化合 物が合 成するこ とがで きた.VOP04/カチオン 性界面活性剤の比が小さい場合には,

ヘキサゴナル構造体が,一方,比が大きい場合にはラメラ構造体がそれぞれ生成すること が分かった.また,アルキル鎖長が長くなるにっれて,格子定数が大きい構造体が生成す ることが見出された.

  炭化水素から生成される水素を有効に使用することは重要であり,ひいては炭化水素の 有効利用に繋がる.選択酸化は水素を精製し,有効利用する手法のーつである,本研究で は,金微粒子を触媒として用いて,選択酸化による水素精製を試みた,Ti02,Fe203,Zn0 を担 体とす ると,担 体上に ナノサイ ズの金 微粒子が 生成し,いずれもH2酸化よりもCO酸 化に 高活性 を示した .中で も,Fe203,Zn0を担体と した触媒は,室温において,多量の H2存 在下にお いて,H2を酸化す ることな く,COを 完全に酸化除去することができた,更 に,COの完全酸化に必要な化学両論比の02量で完全除去が達成できることが見出された.

また,触媒活性の失活が見られず,繰り返し使用も可能な優れた耐久性を有していること が分かった.

  以上の本論文で得られた知見は,結晶のパルク構造と結晶サイズの制御が選択酸化触媒 の性能を向上させるのに有効なことを明らかにした,本研究の知見を基に,より高性能な 選択酸化触媒の設計に繋がるものと期待される。

‑ 110

(3)

学 位論文 審査の要旨

主 査    准 教 授    神 谷 裕 一 副 査    教 授    嶋 津 克 明 副 査    教 授    松 田 冬 彦

副 査    教 授    上 田    渉 ( 触媒 化 学研 究 セン タ ー)

     学位論文題名

Design of Selective ―Oxidation Catalysts based on     Control of Crystal Morphology

    for Effective Utilization of Hydrocarbons

(炭化水素資源有効利用のための結晶形態制御に基づく選択酸化触媒設計)

     学位申請者は,炭化水素資源の高効率利用のための重要な 2 つの選択酸化反応

(ブタン選択酸化,CO 選択酸化)を取り上げ,触媒結晶の形態制御に基づいた触媒 設計とその実証を行った.特に,結晶サイズが触媒性能に与える影響を詳細に調べた.

     ブ タン選択酸 化に活性を 示すバナジ ウムーリン複合酸化物(VPO) 触媒の結晶 サ イズを系統 的に変化させるために,層状化合物 VOP04‑2H20 の剥離―還元を利用 した触媒調製における反応溶媒の組み合わせとその混合比の影響を調べた.その結果,

2 .ブタノール/エタノールからなる反応溶媒を用い,両者の比率を変えることで前駆 体VOHP04‑0.5H20 の結晶サイズが系統的に変化することを見出した.2 ・ブタノール の みを反応溶 媒とした際 に生成する 前駆体結晶 のサイズは950 nmx200 nm であっ た,工夕ノールの混合比率を上げてゆくと前駆体結晶のサイズは徐々に小さくなり・

特定比率の 2 ・ブタノール/エタノール混合溶媒中では,サブミク口ンサイズ(340 nmX35 nm) までに微 細化した前 駆体結晶が 生成した. 剥離溶液中 の VOP04 シー ト の二次元構造とそのサイズはエタノール共存の影響を受けなかったことから,溶液中 のVOP04 シートにェタノールが配位し、これにより前駆体結晶の成長が阻害されサ ブミク口ンサイズの前駆体結晶が生成したと推定した.前駆体結晶のサイズと触媒性 能との間には相関性が存在し,結晶サイズが小さくなるほどブタン選択酸化における 無水マレイン酸選択率は向上した.とくに,サブミク口ンサイズの前駆体結晶から得 られたVPO 触媒は,世界最高レベルの触媒性能を示した.

     前駆体結晶サイズと触媒性能との関係を明らかにするために,前駆体結晶から

VPO 触媒への結晶変換過程における前駆体結晶サイズの影響を,各種の物理化学手

法を用いて調べた,サブミク□ンサイズの前駆体結晶においては,変換過程の初期段

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階で前 駆体結晶の 層間水が 迅速に脱 水してア モルファ ス相へと 変化し,その後,徐々 に(V0)2P207相へと 変換した ,この迅 速な脱水 がブタン 選択酸化に 不適な非 選択酸化 相(an‑VOP04)の 生 成 を 抑 制 し た . こ の 高 結 晶 性(V0)2P207相 の 形 成が , 触 媒が 高 性能を 発現した理 由と推定 した.一 方,サイ ズのより 大きなミ ク口ンサイズ前駆体結 晶では ,層間水の脱水が遅いため,前駆体結晶から非選択酸化相への相変換が進行し,

触媒性能を低下させた.

    ブ タ ン 酸 化 反 応 ガ ス 中 で 行 わ れ る 前 駆 体VOHP04‑0.5H20結 晶 か ら活 性 触媒 相 ((V0)2P207)へ の 結 晶変 換 は ,通 常 の条 件 で は100時 間 以上 の 長時 間 が 必要 で あり 大きな 問題となっ ていた. 学位申請 者はこの 問題に対 し,ブタ ン酸化反応ガス中に水 蒸気を 共存させる ことで, 結晶変換 を極めて 迅速に完 結できる ことを見出した.通常 の条件 下での結晶 変換過程 において 出現する 種々の結 晶相を予 め合成し、反応ガス中 で の結 晶 変換 に お ける 共 存水 蒸 気 の影 響を詳 細に調べた 結果,ア モルファ ス相から (V0)2P207へ の 結 晶 化 過 程 及 び ,6‑VOP04か ら(V0)2P207へ の還 元 ー 結晶 相 変 換過 程が共存水蒸気により促進されることを明らかにした.

    炭 化 水 素 か ら 製 造 さ れ るH2中 の 微 量COを 優 先 的 にC02へ と 酸 化 す る 反 応 (PROX反 応) を 高 選択 的 に進 行 さ せる 触 媒 の開 発 は, ク リ ーン な 水素 を基盤と する 社 会の 構 築に 不 可 欠で あ る. 学 位 申請 者は, 担持金微粒 子触媒を 用いたPROX反 応に よ る 微 量COの 酸 化除 去 を 試み た ,Ti02,Fe203,Zn0担 体上 に は, ナ ノ サイ ズ の金 微粒子 が生成し, いずれもCO酸化に高 い活性と 選択性を 示した,中でも,Au/Fe203 Au/Zn0触 媒 は ,COのみ を 完 全に 酸 化除 去 し た. 更 に ,こ れ らの 触 媒 は化 学 量論 量 の02だ けでCOを完 全 に 酸化 除 去す る こと ができた ,触媒の失 活は見ら れず,繰 り返 し使用が可能な優れた耐久性を有していることが分かった,

    以上 の と おり , 学 位申 請 者は 固 体触 媒上での ブタン選択 酸化およ びCO選択酸 化 におい て,触媒結 晶のサイ ズが触媒 性能に多 大な影響 を及ぼす こと明らかにし,結晶 サイズ 制御を礎と する触媒 設計指針 を提示し た.また ,この指 針を基に高性能な触媒 を開発 した,これ らの研究 成果は, 持続可能 な社会の 構築に不 可欠な炭化水素資源の 高効率利用に対して大きく貢献すると期待される,

  よって審査委員一同は,申請者は博士(環境科学)の学位を受けるのに充分な資格を有 するものと判定した.

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