博 士 ( 農 学 ) 堀 沢 栄
学 位 論 文 題 名
木質担体を用いた厨芥類の微生物分解処理 学位論文内容の要旨
微 生 物 を 繁 殖 さ せ た 担 体 を 用 い て 厨 芥 類 を 分 解 処 理 す る 生 ゴ ミ 処 理 機 の 研 究 を 行 っ た 。 こ れ ま で 廃 棄 物 と し て 焼 却 ま た は 埋 め 立 て 処 理 さ れ て き た 、 厨 芥 類 お よ び 木 質 廃 棄 物 を 資 源 と し て 循 環 利 用 す る こ と を 目 的 と し て い る 。
(1) 木 質 担 体 を 用 い る 生 ゴ ミ の 微 生 物 分 解 処 理 お よ ぴ 資 源 化
学 生6名 を モ ニ タ ー と し て 、 毎 日 の 生 活 か ら 排 出 さ れ る 生 ゴ ミ の 種 類 と 量 を 調 査 し 、 木 質 担 体 を 使 用 す る 家 庭 用 生 ゴ ミ 処 理 機 を 用 い て 微 生 物 分 解 処 理 実 験 を 行 っ た 。6名 か ら 排 出 さ れ る 生 ゴ ミ は 、 生 重 量 でO. 66kg/dayで 、 木 質 担 体 ( オ ガ 眉 ) を4キ ロ ( 約251) 使 用 し た 生 ゴ ミ 処 理 機 で 分 解 処 理 さ れ た 。 こ の 結 果 を も と に 、 生 ゴ ミ 処 理 機 を 恒 温 室 に 設 置 し 毎 日 一 定 量(0. 7kg)ず つ 生 ゴ ミ を を 分 解 処 理す ると 、担 体温 度 は約33ー39℃ 、含 水率 は約65−70% 、 pHは 約8.5で ほ ば 一 定 し た 。
(2) 生 ゴ ミ 処 理 機 の 担 体 と し て の 木 質 担 体 の 性 能
木 質 担 体 ( オ ガ 屑 ) の 見 か け 比 重 の 低 さ は 、 ′ 生 ゴ ミ 処 理 機 の 撹 拌 を 容 易 に し 、 高 い 空 隙 率 、 保 水 率 、 排 水 性 は 、 微 生 物 の た め の 好 気 的 な 環 境 を っ く る の に 適 し て い る こ と を 示 し た 。 ま た 粒 度 に よ っ て 、 見 か け 比 重 、 空 隙 率 、 保 水 率 、 排 水 性 の 値 が 異 な り 、 粒 径 の 異 な る 粒 子 の 配 合 具 合 で 、 空 隙 率 、 排 水 性 を 保 存 し た ま ま 保 水 率 を 大 き く で き る こ と が 明 ら か と な っ た 。
生 ゴ ミ 処 理 機 で の 使 用 に 伴 う 木 質 担 体 の 機 能 の 変 化 を 検 討 し 、 木 質 担 体 は 処 理 機 内 で 撹 拌 さ れ る こ と に よ っ て 摩 耗 し 、 繊 維 化 す る こ と が 判 明 し た 。 使 用 済 み の 木 質 担 体 は 、 空 隙 率 が 保 存 さ れ て い る に も 関 わ ら ず 、 好 気 的 条 件 を っ く る こ と が 出 来 を く な っ て い た 。 こ れ は 、 木 質 担 体 屑 粒 子 の 繊 維 化 と と も に 粒 子 表 面 に 付 着 し た フ ミ ン 質 の 増 加 に よ る 保 水 性 の 向 上 に 伴 っ て 、 排 水 性 が 大 き く 減 少 し た こ と に よ る 。 化 学 分 析 か ら 、 木 質 担 体 は 生 ゴ ミ 処 理 過 程 で ホ ロ セ ル ロ ー ス が 減 少 し 、 生 ゴ ミ 由 来 の 窒 素 、 燐 酸 、 カ リ ウ ム を ど の ミ ネ ラ ル 分 が 増 加 す る こ と が 示 さ れ た 。 し た が っ て 使 用 済 み の 木 質 担 体 は 、 肥 料 な ど に 利 用 で き る こ と が 示 唆 さ れ た 。
(3) 使 用 済 木 質 担 体 屑 の 利 用
使 用 済 木 質 担 体 ( オ ガ 屑 ) と 分 解 水 の 肥 料 の 肥 料 効 果 の 検 討 す る た め に 、 コ マ ツ ナ (Bra鉛 ゴCaCa叩eSぬ ゼ み 、 ハ ツ カ ダ イ コ ン ( 凪maロ 恥 飴 ガy恥var.raぬCUjaDC. ) 、 ビ サ イ
( 胎pカ 卸Us叩 . ) の ポ ッ ト 栽 培 を 行 な っ た 。 ポ ッ ト 栽 培 試 験 よ り使 用済 み木 質担 体お よび 分
解水は肥料効果を有することが明らかとなった。
使用済木質 担体のキノ コの培養基 質としての 可能性を検 討するため に、ヒラタケ (Pleurotus ostreatus)、シ イタ ケ(Lentinula edodes)、ハタケシ メジ(LyophyDum decastes)、マッシュルーム(Agaricus bisporus)を用いて、菌糸の伸長試験おび栽培栽 培を試みたところ、いづれのキノコにも菌糸の成長が見られ、ヒラタケはで子実体形成を 確認した。したがって、使用済木質担体はキノコの培養基として利用できる可能性が示さ れた。
以上結果より、使用済木質担体は農地や林地で有機肥料やキノコの培地などとして再利 用できることが示され、木材の多段階利用およぴ資源循環系確立に寄与しうることが示唆 された。
(4)生ゴミ分解に対する外的環境の影響
家庭用生ゴミ処理機を用いて、設置環境の温度および湿度を調整し、組成を限定したモ デル生ゴミを投入量を変化させて分解実験を行い、環境条件の生ゴミ処理に及ばす影響を 検討した。その結果、木質担体(オガ屑)の温度、含水率は環境温度や湿度に応じて変化 し、生ゴミ処理能は環境条件の変化に影響を受けていることを確認した。また、生ゴミと オ ガ 屑 の 比 率 は 分 解 挙 動 に 大 き く 影 響 す る こ と が 明 ら か と な っ た 。
(5)生ゴミ処理速度と環境条件
家庭用生ゴミ処理機をスケールダウンしたモデル装置およびモデルゴミを用いて、環境 温度および木質担体(オガ屑)含水率の処理速度に対する影響、環境から侵入する微生物 によって形成される微生物相を分析した。
環境温度10一50℃における投入ゴミの重量減少率、炭酸ガス発生率は40℃にピークが見ら れた。このことから微生物の分解カを利用するためには、50℃以上の加温は不必要である ことが示唆された。また10℃では著しく分解率が低下した。20―40℃では大きな差が見られ ず、この範囲が適温であると結論付けられた。微生物相は、環境温度および処理時間によ っ て 変 化 し た が 、 相 の 変 化 が 処 理 速 度 に 重 大 な影 響 を及 ぼ すこ と は無 か った 。 木質担体含水率を20−80木質担体%に変化させた条件下の投入ゴミの重量減少率は、20% では著しく低下し、また70%以上でもやや低下した。30−60%ではほば同程度の高い重量減 少率が得られ、炭酸ガス発生率も同様の傾向を示し、また微生物濃度も同じ傾向を示した。
分解率が著しく低下した含水率20%では酵母が優占種となった。したがって、このような 低含水率下ではバクテリアの生育可能な水分活性の範囲を下回っていると考えられた。70
%以上の高い担体含水率では、木質担体の最大保水量以上の水分が存在するため、通気の ための通路が水でふさがれて部分的に嫌気条件になるため分解率が低下すことになった。
したがって、生ゴミ分解に適した木質担体含水率は、バクテリアの生育可能な水分活性以 上の含水率を有し、木質担体の最大保水率以下の範囲である30―60%と結論づけられた。
以上のように、有機物を微生物分解させる際に、粉体化木質材料を担体として使用する ことによって、系内の含水率や温度が、それぞれ20−40℃および30ー60%と広範囲にわたっ て良好な分解挙動を継続できることが判明し、粉体化木質担体が、有機物の微生物分解に おける良好な環境条件調整材としての特色を有し、実用的価値が高いことが明らかとなっ た。
学位論文審査の要旨
学 位 論 文 題 名
木質担体を用いた厨芥類の微生物分解処理
本 論 文iま 、 図56、 表22を 含 む 総 頁 数139の 和 文 論 文 で あ り 、 他 に 参 考 論 文10編 が 添えられ ている。
バ イオマス 廃棄物の有 効利用が 望まれて おり、い ろいろな方法が考案され実用化されつ っ ある。粉 体化木質担 体(オガ 屑)を用 いた微生 物処理は、良く知られた方法でありなが ら 、 そ の 有 す る 特 性 ・ 有 用 性 に っ い て 科 学 的 な 検 討 が な さ れ て い な か っ た 。 本 研究は、 厨芥類を微 生物分解 処理する 際の木質 担体の有用性の検証およびその特色を 明 らかにす ることを目 的にして おこなわ れ、これ まで廃棄物として焼却または埋め立て処 理 されてき た厨芥類お よび木質 廃棄物を 混合処理 する事で、ともに資源として再生し、循 環 利 用 す る 事 が 出 来 る こ と が 示 さ れ た 。 成 果 の 概 要 は 以 下 の 通 り で あ る 。
(1)木質担体を用いる生ゴミの微生物分解処理および資源化
学生6名をモ ニターと して、毎 日の生活 から排出 きれる生ゴミの種類と量を調査し、木質 担体を使用する家庭用生ゴミ処理機を用いて微生物分解処理実験を行った。,6名から排出さ れる生ゴミ は、生重 量でO. 66kg/dayで、木質担体を4キロ(約251)使用した生ゴミ処理機 で分解処理 された。 この結果 をもとに 、生ゴミ 処理機を 恒温室に設 置し毎日 一定量(0. 7k g)ずつ生ゴミをを分解処理すると、担体温度は約33←39℃、含水率は約65ー70%、pHは約8. 5でほば一定した。
(2)生ゴミ処理機の担体としての木質担体の性能
木質担体の 見かけ比 重の低さは、生ゴミ処理機の撹拌を容易にし、高い空隙率、保水率、
排水性は、 微生物の ための好 気的な環 境をっく るのに適 しているこ とを示し た。また粒度 によって、 見かけ比 重、空隙 率、保水 率、排水 性の値が 異なり、粒 径の異な る粒子の配合 具合 で 、空 隙 率 、排 水 性を 保 存 した ま ま保 水 率 を大き くできる ことが明 らかとなっ た。
生ゴミ処理 機での使 用に倖う 木質担体 の機能の 変化を検 討し、木質 担体は処 理機内で撹 拌されるこ とによっ て摩耗し 、繊維化 すること が判明し た。使用済 みの木質 担体は、空隙 率が保存さ れている にも関わ らず、好 気的条件 をっくる ことが出来 なくなっ ていた。これ は、木質担 体屑粒子 の繊維化 とともに 粒子表面 に付着し たフミン質 の増加に よる保水性の 向上に伴っ て、排水 性が大き く減少し たことに よる。化 学分析から 、木質担 体は生ゴミ処 理過程でホ ロセルロ ースが減 少し、生 ゴミ由来 の窒素、 燐酸、カリ ウムなど のミネラル分 が増加する ことが示 された。 したがっ て使用済 みの木質 担体は、肥 料をどに 利用できるこ
実 秀
崇 裕
邦
沢
橋
島
井
寺
高
矢
玉
授
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師
教
教
教
講
査
査
査
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主
副
副
副
とが示唆された。
(3)使用済木質担体の利用
使 用 済 木 質 担 体 と 分 解 水 の 肥 料 の 肥 料 効 果 の 検 討 す る た め に、 コ マ ツ ナ(Bras釘ca c卿鉛 打jみ、ハツカダイコン(ぬ脚鋤Us開ぬ閉svar.raぬcUぬDC.)、ビサイ(ぬ脚aロ恥
班)のポット栽培を行なった。ポット栽培試験より使用済み木質担体および分解水は肥料 効果を有することが明らかとなった。
使 用 済 木 質 担 体 の キ ノ コ の 培 養 基 質 と し て の 可 能 性 を 検 討 す る た め に 、 ヒ ラ タ ケ
( 鬥eHr0オUs〇s打ea如 み、 シ イ タ ケ (E釦tむuaP出 ぬみ 、ハ タケ シメ ジぐZ,卿 カrH脚 ぬ 飽sとPみ 、マ ッシ ュル ーム (ん 讎ゼcUsW叩甜恥うを用いて、菌糸の伸長試験おび栽培栽 培 を試 みた とこ ろ、 いづ れの キノ コにも菌糸の成長が見られ、ヒラタケはで子実体形成を 確 認し た。 した がっ て、 使用 済み の木質担体はキノコの培養基として利用できる可能性が 示された。
以上 結果 より 、使 用済 みの 木質 担体は農地や林地で有機肥料やキノコの培地などとして 再 利用 でき るこ とが 示さ れ、 木材 の多段階利用および資源循環系確立に寄与しうることが 示唆された。
(4)生ゴミ分解に対する外的環境の影響
家庭 用生 ゴミ 処理 機を 用い て、 設置環境の温度および湿度を調整し、組成を限定したモ デ ル生 ゴミ を投 入量 を変 化さ せて 分解実験を行い、環境条件の生ゴミ処理に及ぼす影響を 検討し,た。その結果、木質担体の温度、含水率は環境温度や湿度に応じて変化し、生ゴミ 処 理能 は環 境条 件の 変化 に影 響を 受けていることを確認した。また、生ゴミとオガ屑の比 率は分解挙動に大きく影響することが明らかとなった。
(5)生ゴミ処理速度と環境条件
家庭 用生 ゴミ 処理 機を スケ ール ダウンしたモデル装置およびモデルゴミを用いて、環境 温 度お よび 木質 担体 含水 率の 処理 速度に対する影響、環境から侵入する微生物によって形 成きれる微生物相を分析した。
環境温度10−50℃における投入ゴミの重量減少率、炭酸ガス発生率は40℃にピークが見ら れ た。 この こと から 微生 物の 分解 カを利用するためには、50℃以上の加温は不必要である ことが示唆された。また10℃では著しく分解率が低下した。20一40℃でiま大き詮差が見られ ず 、こ の範 囲が 適温 であ ると 結論 付けられた。微生物相は、環境温度およぴ処理時間によ っ て 変 化 し た が 、 相 の 変 化 が 処 理 速 度 に 重 大 な 影 響 を 及 ば す こ と は 無 か っ た 。 木質担体含水率を20ー80%に変化させた条件下の投入ゴミの重量減少率は、20%では著し く 低下 し、また70%以上でもやや低下した。30も0%ではほば同程度の高い重量減少率が得 ら れ、 炭酸 ガス 発生 率も 同様 の傾 向を示し、また微生物濃度も同じ傾向を示した。分解率 が 著し く低 下し た含 水率20% では 酵母が優占種となった。このような低含水率下ではバク テ リア の生 育可 能な 水分 活性 の範 囲を下回っていると考えられた。70%以上の高い担体含 水 率でiま、木質担体の最大保水量以上の水分が存在するため、通気のための通路が水でふ さ がれ て部 分的 に嫌 気条 件に なる ため分解率が低下すことになった。したがって、生ゴミ 分 解に 適し た木 質担 体含 水率 は、 バクテリアの生育可能な水分活性以上の含水率を有し、
木 質 担 体 の 最 大 保 水 率 以 下 の 範 囲 で あ る30− も 0% と 結 論 づ け ら れ た 。 有機 物を 微生 物分 解さ せる 際に 、粉体化木質材料を担体として使用することによって、
系内の含水率や温度が、それぞれ20ー4()℃および30160%と広範囲にわたって良好な分解挙 動 を継 続で きる こと が判 明し 、粉 体化木質担体が、有機物の微生物分解における良好な環 境 条 件 調 整 材 と し て の 特 色 を 有 し 、 実 用 的 価 値 が 高 い こ と が 明 ら か と な っ た 。 以上 のよ うに 本研 究は 、厨 芥類 など易分解性のバイオマスを無臭の内に分解消滅させる た めの マト リッ クス とし て、 粉体 化木質担体の有用性を様々な角度から検証したものであ
り、その成果は学術的・応用的に高く評価される。よって、審査員一同は、堀沢栄が博 士 ( 農 学 ) の 学 位 を 受 け る 十 分 な 資 格 が あ る も の と 認 定 し た 。