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学位論文題名 ゛Study on Ion Implantation-Induced Martensitic Transformation inAustenitic Stainless Steel by Means of TErvi

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Academic year: 2021

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博 士 ( 工 学 )Dwi GustlonO

     学位論文題名

     ゛ Study on Ion Implantation‑Induced     Martensitic Transformation in Austenitic Stainless Steel by Means of TErvi

    (オ ー ステ ナ イ ト系 ス テ ンレ ス 鋼に お け る

イオ ン 注 入マ ル テン サ イ ト変 態 に関 す る 透過 電 子顕 微 鏡による 研究)

学位 論文内容 の要旨

  最近、薄膜材料の高機能化あるいはバルク材料表界面の機械的、化学的特性に優れた材料 開発・改質が強く求められている。これまでオーステナイト系ステンレス鋼においては、材 料改質法として、主に、焼入れ、冷間加工や水素注入等を利用することにより、マルテンサ イト相形成による改質が古くから研究され、現在も広く用いられている。一方、18‑8並びに 316ステンレス鋼への燐イオン注入によって、オーステナイト(Y冫相からaマノレテンサイト 相が形成されることがJonsonらの研究により明らかにされて以来、遷移金属や希ガス元素な ど種々のイオンをオーステナイト系ステンレス鋼に注入することによる誘起マルテンサイト 変態に関する研究が精力的に行われ、これまでイオン注入下でのマルテンサイト変態は、注 入元素の強制固溶に伴う結晶内部における応力場の形成に起因することがX線回折実験等か ら示唆された。しかし、イオン注入誘起マルテンサイト変態過程における、変態相核形成の ミクロサイトと注入元素分布との関係と相成長過程や変態駆動カーの効果およびイオン注入 誘起変態機構は未解決である。

  本研究は、イオン注入過程で誘起されるマノレテンサイト変態過程をミクロ構造観察・解析 により解明することを目的に、301オーステナイトステンレス鋼を用い、Ti及びFe金属イオン、

およびArガスイオン注入と超高圧電子顕微鏡(TEM)による微細組織のその場観察実験により行 った。特に,イオン注入パラメータ(元素種、注入量、加速電圧等)の相変態現象に及ぼす 効果を組織の平面並びに断面観察により調べた。また、イオン加速器連結型超高圧電子顕微 鏡を用いた「その場」観察実験手法を活用することにより、イオン注入誘起マルテンサイト 相核形成及び成長機構を検討した。

  本論文は、6章から構成されている。

  第1章は、序論で、マルテンサイト相変態に関する研究の現状を述ベ、イオン注入による 相変態の未解決課題と研究目的について述べた。

  第2章では、本研究に用いた実験手法である、イオン注入法の原理、条件および相変態過 程 の 直 接 観 察 の た め の 電 子 顕 微 鏡 観 察 用 の 試 料 作 成 法 に っ い て 記 述 し た 。   第3章 で は 、Ti、Feお よびArの各 イ オ ン注 入 によ り 誘 起さ れ たマ ル テ ンサ イ ト相 の 組織観察に基づいた変態挙動を解析した。その結果、溶体化処理した301ステンレス鋼に対 し、100keVから300keVのエネ ルギーを 有するTi、Fe並びにArイ オンを室 温で注入した結 果、イオン注入過程で微細な積層欠陥転位ループ等の格子欠陥集合体が多数形成され、注入 量の増大に伴い、マルテンサイト相が誘起されることが観察された。この誘起マルテンサイ ト相は一定の晶癖面を有する析出形態として、オーステナイト(り相マトリクス中に分散し て誘起された。また、その数密度および誘起析出相サイズはイオン注入量の増加に伴い増大 することが観察された。特に、Arイオンを注入した場合に他の元素と比較してマルテンサイ ト変態が促進されることを見出した。さらに、素地とマルテンサイト相との方位関係を解析 した結果、Fe並びにTiイオン注入した場合には、Kurdjumov−Sach (K‑S)関係にあり、Arイオ ン注入の場合には、K‑S関係とNishiyamaーWaassermann(N―W)関係の変態相であることが判明、

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(2)

イオン注入誘起マルテンサイト変態は、注入イオン種に強く依存することを示した。また、

注入イオン種のステンレス鋼の相安定性に及ばす効果をSchaeffler相図に基づき検討した結果、

誘起マルテンサイトは、注入イオンによる組成変動に起因しないことを示し、イオン注入誘 起マルテンサイト変態の主な駆動カとして、注入元素により結晶格子内に導入された局所的 な応カに起因することを見出し、注入イオンの原子半径の大きいほどマルテンサイト相が誘 起されやすいこと、おとびイオン注入中に導入された{111)積層欠陥がマルテンサイト相の形 成核と作用していることが示唆された。

  第4章では、.断面TEM観察によるイオン注入誘起マルテンサイト相分布について解析し た。各イオン注入後の試料に対してFIB加工装置を用いて断面TEM試料を作成した。同試料の 微細組織解析により、FeおよびTiイオン注入試料では試料の表層に多数のマルテンサイト相 が観察された。TRIMコードによる計算とEDS分析により実験的に測定された注入元素濃度プロ ファイルは良く対応することを確認した。さらに、この注入元素濃度分布とマルテンサイト 相の形成位置を検討した結果、マルテンサイト相は注入元素濃度勾配の最も大きい領域で形 成されていることが判明した。一方、Arイオン注入試料においては、マルテンサイト変態が 確認された領域は試料表面から注入領域のさらに深い位置まで広がっていた。これらの結果 から、マルテンサイト変態は注入元素の濃度増加に伴う相不安定性に起因するのではなく、

注入元素濃度勾配の差に起因する局所的な歪にが駆動カとなってマルテンサイト変態が誘起 され、Arイオンにおいては特にその歪み効果が大きく影響することをはじめて明らかにした。

  第5章は、イオン連結型超高圧TEMを用いた「その場」観察に基づく相変態の動的挙動に ついて述べた。lOOkeV Arイオン注入下において生ずる内部微細組織変化とマルテンサイト 核形成・成長過程を室温にて「その場」TEM観察した。イオン注入開始から数分後、マトリク ス中に多数の微細なマルテンサイト相が分散して形成された。その後の注入により、マルテ ンサイト相の成長 と隣接相同士の合体により粗大なマルテンサイト相が形成されることが観 察された。特に、マルテンサイト相の成長・合体過程に先立ち、隣接する相から変態転位が 形成され、この転位を介してマルテンサイト相が成長、あるいは合体することにより粗大化 する過程がその場観察実験から実証された。

  第6章では、本研究内容をまとめて記述した。

  以上、本論文では、イオン加速器を用いたイオン注入実験と透過電子顕微鏡によるミクロ 組織観察から、イオン注入により誘起されるマルテンサイト相は、注入元素種とその濃度分 布に起因する濃度勾配に依存し、また、その核形成にイオン注入で導入される積層欠陥が重 要な役割を担うこと、並びにマルテンサイト相の成長速度は比較的遅いことをその場観察実 験により解明した。

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(3)

学位論文審査の要旨

主 査   教 授   高 橋 平 七 郎 副 査   教 授   大 貫 惣 明 副 査   教 授   工 藤 昌 行 副 査   助 教 授   柴 山 環 樹

     学位論文題名

    Study on Ion Implantation‑Induced     Martensitic Transformation in Austenitic Stainless Steel by rvIeans of TEIVI

    (オーステナイト系ステンレス鋼における

イオン注入マルテンサイト変態に関する透過電子顕微鏡による研究)

  最 近 、薄 膜 材 料の 高 機 能化 あ る いは バル ク材料 表界面の 機械的 、化学的 特性に 優れた材 料 開発 ・ 改 質が 強 く 求め ら れ てい る 。 これ までオ ーステナ イト系 ステンレ ス鋼にお いては 、材 料改 質 法 とし て 、 主に 、 焼 入れ 、 冷 間加 工や水 素注入等 を利用 したマル テンサイ ト相形 成に よる 改 質 が古 くから 研究さ れ、現在 も広く用 いられ ている。 一方、 18‑8ステ ンレス 鋼並びに 316ス テ ン レ ス 鋼 へ のPイ オ ン 注 入 に よっ て 、 オー ス テ ナ イト(Y)相 か ら ぱマ ル テ ンサ イ ト 相が 形 成 され る こ とがJonsonらの 研 究 により 明らかに されて 以来、遷 移金属や 希ガス 元素な ど種 々 の イオ ン を オー ス テ ナイ ト 系 ステ ンレス 鋼に注入 するこ とによる 誘起マル テンサ イト 変態 に 関 する 研 究 が精 力 的 に行 わ れ 、こ れまで ガスイオ ンや金 属イオン 注入によ るマル テン サイ ト 変 態は 、 注 入元 素 の 強制 固 溶 に伴 う結晶 内部にお ける応 力場の形 成に起因 するこ とが X線 回 折 実験 等 か ら示 唆 さ れた 。 し かし 、 こ のイ オ ン 注 入誘 起 マ ルテン サイト変 態過程 にお ける 変 態 相核 形 成 のミ ク ロ サイ ト と 注入 元素分 布との関 係、相 成長過程 、変態駆 動カな どイ オン 注 入 で誘 起 さ れる 変 態 機構 は 未 解決 で あ る。

  本 論 文は 、 イ オン 注 入 によ り 誘 起さ れる マルテ ンサイト 変態過 程をミク ロ構造 観察・解 析 によ り 解 明す る こ とを 目 的 とし て 、301オ ース テ ナ イ トス テ ン レス 鋼を用 い、TiとFeの金属 イオ ン お よびArガス イ オ ンの 注 入 と超 高圧 電子顕 微鏡によ る微細 組織のそ の場観 察実験法 に より 行 っ た。 特 に ,イ オ ン 注入 パ ラ メー ターと して、元 素種、 注入量、 加速エネ ルギー 等の 相変 態 現 象に お よ ばす 効 果 をミ ク ロ 組織 観察に より調べ た。さ らに、変 態挙動に ついて イオ ン加 速 器 連結 型 超 高圧 電 子 顕微 鏡 を 用い た「そ の場」実 験によ る動的観 察からイ オン注 入誘 起 マ ル テ ン サ イ ト 相 核 形 成 お よ び 成 長 機 構 を 検 討 し た も の で あ る 。   先 ず 、lOOkeVか ら300keVの エ ネ ルギ ー で 溶 体化 処 理 した301ス テ ン レス 鋼 にTi、Feお よ びArイ オン を 室 温で 注 入 する こ と によ り誘 起され たマルテ ンサイ ト相の組 織観察 に基づぃ た 変態 挙 動 の解 析 か ら、 各 元 素の イ オ ン注 入過程 で微細な 積層欠 陥転位ル ープ等の 格子欠 陥集 合体 が 多 数形 成 さ れ、 注 入 量の 増 大 に伴 いマル テンサイ ト相が ほば均一 誘起され ること を観 察し た 。 この 誘 起 マル テ ン サイ ト 相 は一 定の晶 癖面を有 する析 出形態で オーステ ナイト (め 相マ ト リ クス 中 に 分散 し て 誘起 さ れ 、そ の数密 度および 誘起析 出相サイ ズはイオ ン注入 量の 増加 に 伴 い増 大 す るこ と を 確認 し た 。特 に、Arイ オンを注 入した 場合に他 の元素 と比較し て マル テ ン サイ ト 変 態が 促 進 され る こ とを 見出し た。さら に、素 地とマル テンサイ ト相と の方

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位関係を解析した結果、Fe並ぴにTiイオン注入した場合には、Kurdjumov―Sach関係の方位関 係にあり、Arイオン注入の場合の方位関係は、Nishiyama−Waassermann関係の変態相であるこ とを同定し、このイオン注入誘起マルテンサイト変態は、注入イオン種によって異なること を示した。

  次に.断面透過電子顕微鏡観察によるイオン注入誘起マルテンサイト相分布を解析した。そ の結果、Ar、FeおよびTiイオン注入試料では表面層に集中してマルテンサイト相が形成され ることを確認した。この変態相の形成した領域における注入元素の濃度分布を実験的に分析 し、変態相の形成位置との関連をステンレス鋼の相安定性におよばす注入量、注入元素の濃 度分布およびイオン種の効果を考慮して検討した結果、観察されたマルテンサイトは、注入 元素によるオーステナイト相不安定化による影響よりも、注入元素の濃度分布状態を反映し 結晶内に導入された局所的な応カに起因して誘起されることを明らかにし、このイオン注入 元素の応力効果は原子半径の大きいイオン種ほど大きいことを見出した。また、この局所内 部がイオン注入過程で導入された格子欠陥である積層欠陥面に作用し、一定応力以上の大き さになるとマルテンサイトがその格子欠陥を核生成サイトとして、誘起されることを示唆し た。特に、Arイオン注入においては、高い内部応カが広範囲に作用するためマルテンサイト 変態相の形成領域は一層深い位置まで広がって形成されることをはじめて明らかにした。

  さらに、イオン連結型超高圧電子顕微鏡を用い、マルテンサイト核形成・成長過程等の内 部微細組織変化を「その場」実験により動的に直接観察した。その結果、イオン注入開始所 期の段階からマトリクス中に多数の微細な格子欠陥クラスターが形成され、注入量の増加に 伴いマルテンサイト相が分散して形成されるニとを確認し、注入量の増加に伴いマルテンサ イト相は緩やかに成長し、それに伴い隣接相同士の合体が起こり、マルテンサイト相が大き く成長する過程を動的に実証した。

  以上、本論文では、イオン加速器を用いたイオン注入実験と透過電子顕微鏡によるミクロ 組織観察から、イオン注入により誘起されるマルテンサイト相は、注入元素種とその濃度分 布に起因する局所的な応力集中に起因し、その核サイトとしてイオン注入で導入される格子 欠陥、特に積層欠陥が重要な役割を担うこと、並びにマルテンサイト相は緩やかな成長と合 体を伴い成長する過程をその場観察実験により解明したものであり、材料工学に貢献すると ころ大なるものがある。よって著者は、北海道大学博士(工学)の学位を授与される資格あ るものと認める。

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