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熱帯産果実非可食部の抗酸化性に関する研究 学位論文内容の要旨

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Academic year: 2021

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博 士 ( 農 学 ) 松 坂 裕 子

学 位 論 文 題 名

熱帯産果実非可食部の抗酸化性に関する研究 学位論文内容の要旨

  近年、果実・野菜の摂取が、生活習慣病をはじめとする多くの疾病あるいは老化の予防に有 効であると示されている。果実や野菜に含まれる抗酸化物質がそれらの予防に関与していると 考えられ、植物性食品の研究が盛んに行われてきている。果実の非可食部の抗酸化性の研究は、

リンゴをはじめ、ブドウ、柑橘類などで多くの報告があるが、熱帯産果実での報告は少ない。

熱帯産性植物は強い紫外線のもとで、自身を守るためにより多くの防御物質を合成していると 推定されており、未知の活性成分が含まれている可能性がある。また、非可食部の大部分は廃 棄されているのが現状である。そこで、廃棄物の有効利用の観点からも、本論文では熱帯産果 実の非可食部に注目して抗酸化成分の探索と利用研究を行った。

1)各種熱帯産果実のポリフェノール含量と抗酸化性の評価

  選択した8種の熱帯産果実(アボカド、マンゴー、カニステル、パッションフルーツ、パパ イア、キワノ、キウイフルーツ、スターフルーツ)の非可食部(種子部および外果皮部)の抗 酸化能とフェノール含量をその可食部.(果実部)と比較し、さらにポリフェノール含量と抗酸 化能との関係にっいても検討した。その結果、分析した全ての果実で、可食部より非可食部の 方がポリフェノール量が高かった。その中で、マンゴー種子部(153 mg/gDW)が最も高く、

次にアボカド種子部およびカニステル種子部であった。マンゴー、スターフルーツおよびアボ カドの外果皮部も高かった。一方、キワノ、パパイヤおよびパッションフルーツの外果皮のポ リフェノール含量は相対的に低い値であった。全果実の可食部のポリフェノール含量は1〜12 mg/gDWの範囲の低い値であった。

  DPPHおよびABTSラジカル 消去活 性もポリ フェノール含量と同様に、可食部に比べて、非 可食部で高いラジカル消去活性がみられた。特に、マンゴーの非可食部で高く、マンゴー種子 部 のDPPHラ ジ カ ル 消 去 活 性 は4188TEACum01と 最 も高 い 値 であ り 、 果皮 部 (1846TEAC umol)もそれに続く高値を示した。また、スターフルーツ果皮部およびアボカドの果皮部、

種子部も比較的高い値を示した。一方、キワノ、パパイアおよぴパッションフルーツの外果皮 の消去活 性は低 い値を示 した。 また、全 果実の可食部も7〜153TEACumolの範囲の低値であ った 。ABTSラ ジカル 消去活性 もDPPHラジ カル消去 活性と 同様の傾 向を示 した。DPPHラ ジ カル消去活性とポリフェノール含量の相関係数は種子部(0.9738)、外果皮部(0.9266)で共に 高い値が得られ、同様の結果がABTS法でも得られた。このように調べた熱帯産果実の非可食 部において、ラジカル消去活性とポリフェノール含量との間に高い正の相関が認められた。一 方、鉄イオンキレート能は、キワノ、パパイアの外果皮で高い値となった。キワノ、パパイア の外果皮 はポリ フェノー ル含量 およびDPPH.ABTSラジカル消去活性は特に低い値であった ので、鉄イオンに結合する他の成分の存在が示唆された。

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2) マ ン ゴ ー 種 子 に 含 ま れ る ラ ジ カ ル 消 去 活 性 物 質 の 単 離 お よ ぴ 食品 加 工 への 応 用   ウ ルシ科 のマンゴ ー種子 のメタノ ール抽出 物の抗酸化性をDPPHラジカル消去活性を指標 に測定したところ、酢酸エチル可溶性画分に高いラジカル消去活性がみられた。酢酸エチル可 溶 性画分 より、活 性物質を 単離し 、各種機 器分析により、既知物質methyl gallateおよび pentagalloylglucoseを同定した。両者はコーヒー酸に匹敵するDPPHラジカル消去活性を示し、

マンゴー種子生重当たりの含量も高いので(methyl gallate1%、pentagalloylglucose2%)、マン ゴー種子の高い抗酸化性に寄与していると考えられる。次に、食品加工への応用として比較的 脂質含量が高く保存期間の長いクッキこにマンゴー種子ポリフェノールを添加し、脂質酸化抑 制についても検討を行った。その結果、50℃、50日間の保存で、マンゴー種子ポリフェノー ル添加クッキーは、無添加クッキーに対して脂質酸化を91%抑制した。マンゴー種子はポリ フェノール含量も多く抗酸化能も高いので、このことが、クッキーの脂質酸化を抑制したと考 えられる。

3) ア ボ カ ド 非可 食 部 (種 子 部 、外 果 皮 部) に 含 ま れる ラ ジ カル 消 去 活性 物 質 の単 離   ク スノキ 科のアボ カド種 子のメタ ノール抽 出物の 抗酸化性をDPPHラジカル消去活性を指 標に測定したところ、酢酸エチル可溶性非酸性画分と酢酸エチル可溶性酸性画分に高いラジカ ル消去活性がみられたので両者を分析した。その結果、酢酸エチル可溶性非酸性画分より、活 性物質を単離し、各種機器分析により、既知物質(+)‑catechinおよび(‑)‑epicatechinを同定し た。さらに、逆相HPLCにより、標準物質との保持時間との比較により(‑)‑epicatechinの三量 体であるprocyanidin Clを推定した。同様に、酢酸エチル可溶性酸性画分より、LCーMS分析に より、procyanidin BlおよびB2を同定した。

  次に、アボカド外果皮のメタノール抽出物の抗酸化性をDPPHラジカル消去活性を指標に測 定したところ、種子と同様に酢酸エチル可溶性非酸性画分と酢酸エチル可溶性酸性画分に高い ラジカル消去活性がみられたので両者を分析した。その結果、酢酸エチル可溶性非酸性画分よ り、TLCおよび逆相HPLCにより、(‑)‑epicatechinを同定した。同様に、酢酸エチル可溶性酸 性 画分よ り、TLCおよぴ逆 相HPLCによ り、procyanidin B2およびClを 同定し た。以上の化 合 物はコ ーヒー酸 よりも高 いDPPHラジカル消去活性を有するので、これらのprocyanidin類 がアボカド非可食部の高いポリフェノール含量および抗酸化性に寄与していると推察される。

4) ド リ ア ン 種 子 に 含 ま れ る ラ ジ カ ル 消 去 活 性 物 質 の 単 離 お よ び 加 熱 で の 変 化   パンヤ 科のド リアン種 子のメ タノール 抽出物 の抗酸化性をDPPHラジカル消去活性を指標 に測定したところ、酢酸エチル可溶性画分に高いラジカル消去活性がみられた。酢酸エチル可 溶性画分より、逆相HPLCにより、活性物質として(―)‐epicatechinを同定し、さらに分取TLC およびESI‑MSにより、procyanidin B2を同定した。両者は既知物質であるが、ドリアン種子 成分としては初めての報告である。ドリアン種子は加熱することで食することができるので、

加熱温度による抗酸化性の変化を調べた。その結果、一般の加熱温度では充分にポリフェノー ル含量とDPPHラジカル消去活性を保持できることが明らかとなった。

  以上のことから、従来大部分が廃棄されている熱帯産果実非可食部には、ラジカル消去活性 の高い物質が多く含まれ、また、今回分析したマンゴー種子およびドリアン種子抽出物は加熱 によっても安定なので食品加工にも利用できることが明らかとなった。廃棄物利用の観点から も抗酸化素材としての有効性が示唆された。

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学位論文審査の要旨

学 位 論 文 題 名

熱帯産果実非可食部の抗酸化性に関する研究

  本 論 文 は 和 文105頁 、 図58、 表1、 ス キ ー ム7、 引 用 文 献54か ら な り 、 参 考 論文1 編が 付さ れて いる 。

  近年、果実・野菜の摂取が、生活習慣病をは じめとする多くの疾病あるいは老化の予 防に有効であると示されている。果実や野菜に 含まれる抗酸化物質がそれらの予防に関 与していると考えられ、植物性食品の研究が盛 んに行われてきている。果実の非可食部 の抗酸化性の研究は、リンゴをはじめ、ブドウ 、柑橘類などで多くの報告があるが、熱 帯産果実での報告は少ない。熱帯産性植物は強 い紫外線のもとで、自身を守るためによ り多くの防御物質を合成していると推定されて おり、未知の活性成分が含まれている可 能性がある。また、非可食部の大部分は廃棄さ れているのが現状である。そこで、廃棄 物の有効利用の観点からも、本論文では熱帯産 果実の非可食部に注目して抗酸化成分の 探索 と利 用研 究を 行っ た。

11各種熱帯産果実のポリフェノール含量と抗酸化性 の評価

  選択した8種の熱帯産 果実(アボカド、マンゴー、カニステル、パッションフルーツ、

パパイア、キワノ、キウイフルーツ、スターフルー ツ)の非可食部(種子部および外果 皮部)の抗酸化能とフェノール含量をその可食部( 果実部)と比較し、さらにポリフェ ノール含量と抗酸化能との関係にっいても検討した。その結果、分析した全ての果実で、

可食部より非可食部の方がポリフェノール量が高か った。その中で、マンゴー種子部が 最も高く、次にアポカド種子部およびカニステル種 子部であった。マンゴー、スターフ ルーツおよびアボカドの外果皮部も高かった。

  DPPHお よ ぴABTSラ ジカ ル消 去活 性 もポ リフ ェノ ール 含量 と同 様に 、可 食部 に比 べ て、非可食部で高いラジカル消去活性がみられた。 特に、マンゴーの非可食部で高く、

スターフルーツ果皮部およびアポカドの果皮部、種 子部も比較的高い値を示した。DPPH ラ ジ カ ル 消 去 活 性と ポリ フェ ノー ル 含量 の相 関係 数は 種子 部(0.9738) 、外 果皮 部 (0.9266)で共 に高 い値 が得 られ た。 一方 、鉄 イ オンキレート能は、キワノ、パパイア の外果皮で高い値となった。

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2) マ ン ゴ ー種 子 に 含ま れ る ラジ カ ル 消去 活 性 物 質の 単 離 およ び 食 品加 工 へ の応 用   マ ン ゴ ー 種 子 の メ タ ノ ー ル 抽 出 物 よ り 活 性 物 質 と し てmethyl gallateお よ び pentagalloylglucoseを同定 した。両 者は高 いDPPHラジカ ル消去 活性を示し、含量も高 いので(methyl gallate1%、pentagalloylglucose2%)、マンゴー種子の高い抗酸化性に寄 与して いると 考えられ る。次 に、食品 加工への応用として比較的脂質含量が高く保存期 間の長 いクッ キーにマ ンゴー 種子ポリ フェノールを添加し、脂質酸化抑制にっいても検 討 を行 っ た。 その結 果、50℃、50日間の 保存で、 マンギ ー種子ポ リフェ ノール添 加ク ッキーは、無添加クッキーに対して脂質酸化を91.%抑制した。

3) アボ カ ド 非可 食 部 (種 子 部 、 外果 皮 部)に含 まれる ラジカル 消去活性 物質の 単離   アポカド種子のメタノール抽出物より活性物質として(+)‑catechin、(.)ーepicatechin、 procyanidin Bl、B2およびClを同定した。同様にアポカド外果皮より(‑)‑epicatechin、 procyanidin B2お よびClを 同定した 。これ らのprocyanidin類がア ポカド非可食部の高 い ポ リ フ ェ ノ ー ル 含 量 お よ び 抗 酸 化 性 に 寄 与 し て い る と 推 察 さ れ た 。

4) ド リ ア ン 種 子 に 含 ま れ る ラ ジ カ ル 消 去 活 性 物 質 の 単 離 お よ ぴ 加 熱 で の 変 化   ド リ ア ン 種 子 の メ タ ノー ル 抽 出物 よ り 活性 物 質 とし て ( −)‑epicatechinお よ び procyanidin B2を 同定し た。ドリ アン種子 は加熱 して食することができるので、加熱温 度に よる抗 酸化性の 変化を調 べた。 その結果 、一般の加熱温度では充分にポリフェノー ル 含 量 と DPPHラ ジ カ ル 消 去 活 性 を 保 持 で き る こ と が 明 ら か と な っ た 。

  以上のこ とから 、熱帯産 果実非 可食部に は、ラ ジカル消去活性の高い物質が多く含ま れ、また 、マン ゴー種子 および ドリアン 種子抽出 物は加熱によっても安定なので食品加 工にも利 用でき ることが 明らか となった 。これは 、新たな抗酸化素材としての熱帯産果 実廃棄物 利用の 有効性を 示唆す る特筆す べき成果 である 。

  よ って審査 員一同 は、松坂 裕子が 博士(農学)の学位を受けるのに十分な資格を有す る ものと認 めた。

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参照

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