発酵リキッド飼料へのチョコレート添加が肥育豚の発育およ
び肉質に及ぼす影響
誌名
日本養豚学会誌 = The Japanese journal of swine science
ISSN
0913882X
著者
芦原, 茜
大森, 英之
小橋, 有里
田島, 清
佐々木, 啓介
本山, 三知代
川島, 知之
巻/号
48巻2号
掲載ページ
p. 47-57
発行年月
2011年6月
農林水産省 農林水産技術会議事務局筑波事務所日豚会誌 48 (2) 47-57 201，1 6月
原 著
発酵リキッド飼料へのチョコレート添加が肥育豚の発育
および肉質に及ぼす影響
芦 原 茜 ・ 大 森 英 之 ・ 小 橋 有 里 ・ 田 島 清 ・
佐々木啓介・本山三知代・]1
1島知之
畜産草地研究所，茨城県つくば市地の台2，305-0901 (2010年 11月 30日受付， 2011年 l月 25日受理) 要 約 チョコレートの肥脊豚用飼料としての有用性を検討するとともに，添加する脂 賓の路肪酸組成の違いが肉質に及ぼす影響を明らかにするため，杷背豚に発￨酵リキッド銅 料を給与する対照区， 12.2% (紐脂肪含量として 5%) のチョコレートを添加するチョコ レート区，そしてチョコレート区の組脂肪含量と伺量の大毘油を添加する大豆油区の3冨 を設けて，体重67kgから 110kgまでの肥育試験を行った。処理区間で，増体や飼料摂取 量および銅料要求率に差は認められなかった。筋肉内脂肪含量と背脂肪内題および筋間脂 肪のヨウ素描は， 大豆油l2Iがチョコレート区および対日夜匿より高い儲 (P<0.05) を示し た。背脂肪内層の脂肪鞍組成は，チョコレート区は対照誌と差がなかった。大豆油i
玄は， 飽和脂肪酸割合および一価不飽和脂肪酸割合が対照毘より低い値 (p<0.05)を示したのに 対し，多価不飽和脂肪酸はその逆の結果であった。また，チョコレート区の背脂肪内層お よび筋間脂肪の L*値は対照区および、大立油区より高かった (p<0.05)。以上から，肥育豚 へのチョコレート給与は，大豆油給与とは異なり，軟脂を誘発させることなく，対照度よ り明るい脂肪の底肉を作出できることから，給与量を制限する必要はあるものの館料資源 として有用であることが示された。 緒 扇 飼料自給率向上のため，食品残さの飼料化が求 められており，その技術開発のために様々な研究 が行われている。食品残さの乾燥処理は，保存性 に優れ，既存の給餌システムをそのまま使える の利点があるO しかし，乾燥のための燃料コスト や粉末化しにくい素材の利用が困難という課題も ある。一方，食品残さに加水し，加熱殺菌後に乳 駿菌を添加することにより発酵調製する発酵1) キッド飼料は，多様な食品残さを原料として利用 でき()11島， 2006)，乾燥法に比べて温室効果ガス の排出が削減できること (OGINOら， 2007) が報 告されている。また，発酵リキッド飼料では有機 Effects of Supplementation of Chocolate to Fermented Liquid Feed on Growth Perfor -mance， Carcass Characteristics and Quality of Pork in Finishing PigsA. ASHIHARA， H.OHMORI， Y. KOBASHI， K.TAJIMA， K. SASAKI， M. MOTOYAMA and T. KAWASHIMA National Institute of Livestock and Grassland Science， Tsukubaもhi，Ibaraki-ken 305-090，1
Japan
2011， 6月 芦係・大森・小橋・関誌・佐々木・本山・)11島 日豚会誌 48巻 2号 駿が生成され， pHが 4.5以下に低下されるため， 大腸菌やサルモネラ菌などの増殖を抑制し，保存 性 を 向 上 さ せ る こ と が で き る (SCHOLTENら， 1999)。さらに，三津本ら (2006)や大森ら (2007) は，食品残さを利用した発酵リキッド飼料を肥育 豚に給与することにより，配合飼料を給与した啄 と遜色ない豚肉生産が可能であることを報告して いる。 一方で，飼料化が進まない食品残さも多く存在 し，その1つにチョコレートカまあるO チョコレー ト残さは，主として欠品を紡ぐための過剰生産に より発生するが，現在は主にセメント熱源や杷料 として利用されている。その理由として，熱に弱 く，粉末化して乾燥飼料に混合することが困難な ためと考ーえられる。また，チョコレートはアルカ ロイドの一種であるテオブロミンを含有してい る。 しかし， ALEXANDERら (2008)は， カカオ ミーノレとして摂取した l日のテオブロミン量が体 1 kgあたり 24mg以下であれば，肥育肱の増 体抑制や軟便のような中毒症状は示さないことを 報告しており，この量を上回らなければ，チョコ レートを豚へ給与をしても問題ないと考えられ る。一方，チョコレートは高指肪のため栄養価は 高く，含有するカカオバターは飽和脂肪酸を多く 含むことが知られている。また，カカオマスに含 まれるポ 1)フェノールによる抗酸化能が期待でき ることから，適正に利用すれば飼料資源として有 用と考えられる。しかし，チョコレート給与によ る筋肉および脂肪の抗酸化や脂肪酸組成に及ぼす 影響について詳細に検討した報告はなく，また， 発酵リキッド飼料にチョコレートを添加して給与 した報告はこれまでにないことから，本実験を実 施した。 給与飼料の指肪量および指肪酸組成は，豚肉中 の脂肪質に影響を及ぼすことが知られている。大 本ら(1981)は，大豆油の添加により粗脂肪含量 を 9.9%および 16.7%とした館料を給与すると， 粗脂肪含量が 3.0%の対照飼料と比較して背脂肪 が厚くなる傾向があることを報告している。また， 組脂肪含量が高く不飽和脂肪酸が多い飼料を肥育 後期豚に給与すると，厚脂で軟路が発生する確率 が高いことが報告されている(大本ら， 1984)。そ こで，飽和脂肪離を豊富に含むチョコレート添加 と，向量の粗脂肪含量で多価不飽和脂肪酸の多い 大豆油添加を比較することにより，添加する脂質 の脂紡酸組成の違いが豚肉中の脂肪質に与える影 響についても検討した。 材 料 お よ び 方 法 本試験は，畜産主主地研究所動物実験指針に従っ て計画し，藷産草地研究所動物実験委員会の審 査，承認を得て行った。 供試動物は， LWD交雑種去勢雄豚 8頭，唯豚 7 頭(平均開始体重:67kg，平均 120日齢)を用い た。発酵リキッド銅料を給与する対照区(去勢雄 3頭，雌 2頭)，発辞リキッド飼料 lこ，外づけで 5 % の 粗 脂 肪 合 最 と な る よ う に 12.2%のチョコ レートを添加したチョコレート区(去勢雄3頭， 離2頭)，発酵リキッド飼料にチョコレートの粗 脂肪と同量 (5%)の大豆油とチョコレートの糖分 と向量 (7.2%) の砂糖を添加する大豆油区(去勢 雄2頭，雄3頭)の3区に5頭ずつ割り按った。 すべての区で用いた発酵リキッド飼料は，米飯， パンなど、の炭水化物原料を約 40%，野菜屑を約 18%，牛乳， ジュースなどの液体原料を約 8% む食品残さに，肥育豚後期の養分要求量が充足す るよう大立粕およびアルフアルファミールを加 え， 800 Cで 3分間加熱、混合し， 400Cまで冷却後に 乳酸麗 (LactobαcillusρlantarumLQ80)を添加 して発酵させた後， ビタミン・ミネラルプレミッ クスを添加して調製した。また，本実験で使用し たチョコレートならびに銅料の水分，組タンパク 質，粗脂肪，酸性デタージェント繊維 (ADF)，中 性デタージェント繊維 (NDF)，粗灰分の分析は 定法(藤田， 2001)に基づき行い，テオブ、ロミン 含量は守安ら (1996)の方法に従って測定した。 チョコレートは速破砕機 KS-H37 (カネコ株式会 社)で 5mm程度に粉砕したものを用い，大豆油， 砂糖ともに，銅料給与時に毎回発酵リキッド飼料 に常温のまま均一になるよう混合して給与した。 試験開始後から体重1l0kg到達時まで自由摂取， 自由飲水とした。飼料摂取量は毎百記録し，乾物 摂取景を算出した。遇l回体重測定を行い， 日増 体量，乾物あたりの銅料要求率を算出した。
201，1 6月 チョコレート添加飼料が豚肉質に及ぼす影響 日豚会誌 48巻 2号 と畜は体重110kgを目安にして4間行い，と 畜直前に体重測定を行ってと畜前体重を求めた。 と畜 l日後に，枝肉性状(枝肉重量，歩留り，背 脂肪厚(肩，背，腰)を測定した。筋肉内脂肪含 肉色および2ーチオパルビツール酸反応物質 (TBARS値)の測定には，第4，第5胸惟間から 第8， 第9胸推間の胸最長筋を採取して用いた。 脂肪酸組成，融解パターンおよび脂肪色の測定に は，第9，第10胸椎聞から第13，第14胸椎間分 の皮下脂肪内題，筋間脂肪を採取して用いた。 指肪酸測定は， FOLCHら(1957)の方法に従っ て背脂肪内属および筋間指肪から脂肪を抽出した 後， NISHIOKA and IRIE (2005)の方法に準じ， GC-17Aガスクロマ卜グラフ装置(島津製作所)を用 いて分析した。脂肪融解パターンは，開始温産 (Onset)， 融解ピーク (Peak)， 融解終了温度1 (Conclusion 1)，融解終了温度2(Conclusion 2) の各点における温度を示差走査熱量測定システム DSC-60 (島津製作所)を用いて，組織のまま融解 測定した (SASAKIら， 2006)。脂肪色および肉色 は，紫外可視分光光度計UV-2400PC(島津製作 所)の試料室に穣分球付属装霞ISR-2200(島津製 作所)を取り付けてサンフ。ルの拡散反射率を測定 し，カラー測定ソフトウェアー (ver.2.7;島津製 作所)により，明度 (L*)，赤色度 (aつ，黄色度 (bつの各色調値を分析した(三津本ら， 2006)。 デヒド (MDA)当量で示した。統計処理は飼料と 性を主効果とする二元配置法とし， SAS (パー ジョン9.2，2008)のGLMプロシジャによって角平 析した。なお，交互作用はいずれの形質も有意で はなかったため，モデルに取り入れなかった。ま た，区間で去勢雄と雌の頭数が異なるため性の影 響を考慮して統計解析を行ったが，本実験では飼 料による差のみの結果を示し考察を行った。
結 果
チョコレートの化学成分を表1に示した。ま た，対関区，チョコレート区および大豆油区の供 試飼料の化学成分を表2に示した。発酵リキッド 飼料，チョコレートおよび大豆油の脂肪酸組成を 表3に示した。 各区における乾物摂取量，乾物摂取カロリヘ 試験開始時体重，試験終了時体重，日増体最，飼 料要求率およびと畜時日齢を表4に示した。乾物 摂取量に処理区間で差は認められなかったが，乾 物摂取カロリーでは，大豆油毘およびチョコレー ト区が対照区より高い儲 (P<O.Ol)を示した。一 方，試験開始時体重，試験終了時体重，日増休量， 飼料要求率，と畜時日齢に関して，処理区間 は認められなかった。 各区における枝肉重量，歩留り，背脂肪厚およ び筋肉内脂肪含量を表5に示した。筋肉内脂肪含 筋肉内脂肪含量は， KATSU札 口Aら(1996)の方法 量は，大豆油区が対照区より高い値 (P<0.05)を に従い， ソックスレー抽出法により算出した。背 脂肪内題および筋間脂肪のヨウ素価はクロロホル ムおよびウィイス液で反応させた後， 10%ヨウ化 カリウム溶液を加え，チオ硫酸ナトリウム溶液を 滴定する WIJS法を用いた (AOAC，2007)。と畜 前日の朝に採血し，血中TBARS値の制定を行っ た(yAGI， 1984)。また， WITTEら(1970)および MITSUMOTOら (1993)の方法に従って， 筋肉中 TBARS値の測定を行った。血中TBARS値の測 定は蛍光分光高度計F-4500(日立)を用いて行 い，励起波長515nm，蛍光波長 500~600nm で測 定した。また，筋肉中TBARS値は紫外可視分光 光度計UV-2450を用いて， 532nmにおける吸光 度を測定した。尚，標準物壁はテトラエトキシプ ロパンを用い，筋肉中TBARS値はマロンジアル 表1. チョコレートの化学成分およびテオフ ロミン含量Table 1. Chemical composition and theo -bromine content of chocolate
Items Moisture
(
%
)
98.9 Crude Protein(
%
)
5.1 Ether extract(
%
)
4l.2 Acid detergent fiber(
%
)
0.7 Neutral detergent fiber(
%
)
l.7 Crude Ash(
%
)
l.1 Th巴obromine(
%
)
0.182011， 6月 芦原・大森・小橋・間島・佐々木・本山・JlI島 日豚会誌 48巻 2号
表 2. 対照区，チョコレート区および大豆油援の供試飼料の化学成分 Table 2. Chemical composition of feed in the Control group，
Choco-late group and Soybean oil group
Items Control Chocolate Soybean oil Moisture (%) 78.7 70.2 70.1 Crude Protein (%DM1) 13.1 13.7 13.1 Ether extract (%DM) 3.4 8.4 8.4 Acid detergent fiber (%DM) 4.5 4.6 4.5 Neutral deterg巴ntfib巴r(%DM) 6.1 6.3 6.1 Crude Ash (%DM) 5.5 5.6 5.5 1 Dry matter. Control， control fermented liquid feed ; Chocolate， the control fermented liquid fe巴dsupplemented with chocolate at a level of 12.2% ; Soybean
oil， the control fermented liquid feed supplemented with soybean oil at a level of 5%. 表 3. 発酵リキッド飼料，チョコレートおよ び大豆油の指肪酸組成(%) Table 3. Fatty acid composition of fer -mented liquid feed (FL)， choco -late and soybean oil (%) FL Chocolate Soybean oi1 C14: 0 0.0 l.5 0.1 C16: 0 2.0 26.7 1l.1 C16・1 0.4 l.1 0.1 C18: 0 35.6 33.2 4.3 C18・1 22.1 34.0 23.2 C18: 2 35.0 3.3 54.4 C18: 3 4.9 0.3 6.9 SFN 37.6 6l.4 15.4 MUFN 22.5 35.0 23.3 PUFA3 39.9 3.6 6l.3 1 Saturated fatty acid. 2 Mono-unsaturated fatty acid 3 Poly-unsaturated fatty acid. 示したが，チョコレート区とは差はなかった。一 方，枝肉重量，歩留りおよび背脂肪摩は，処理区 間で差は認められなかった。 脂肪色および胸最長筋の肉色を表 6に示した。 - 50 チョコレート区の背脂肪内層および筋間脂肪のγ 値(明度)が，対照区および大豆油底よりも高い 値 (P<0.05)を示した。一方で，背指肪内層およ び筋間脂肪のど値およびげ龍，肉色には，処理 区間で差は認められなかった。 背脂肪内層の時肪酸組成を表7に示した。いず れにおいても，チョコレート区は対照区と比較し て差がなかった。一方，大豆油区は，パルミチン 酸， リノール酸 1)ノレン酸，飽和脂肪酸割合お よび一価不飽和脂肪駿割合において対照区より低 い値 (P<0.05)を示した。一方で，多髄不飽和脂 肪酸割合は， 大豆油区が対照医より高い値 (P< 0.01)を示した。 背脂肪内層および筋間脂肪の融点およびヨウ素 価を表 8に示した。背脂肪内層および筋間脂肪の 融点は，処理区間で差が認められなかった。一方， 背路肪内層および筋間脂肪のヨウ素錨は，チョコ レート区は対照区と差がなく，大豆油区は対照区 より高い値 (P<0.001)を示した。 血禁中および筋肉中TBARS備を表 9に示し た。チョコレート区の血禁中TBARS値は対照区 より抵い髄 (p<0.05)を示した。一方で，筋肉中 TBARS髄は処理
I
R
間で差が認められなかった。201，1 6月 チョコレート添加飼料が豚肉質に及ぼす影響 日豚会誌 48巻 2号 表 4. 飼料の違いが発育成績に及ぼす影響
Table 4. Effects of diet on growth performance Items Control Chocolate Soybean oil
(n=5) (n 5) (nニ5)
Feed intake (kgjday)2 3.27 3.32 3.53 Gross energy intake (Mcaljday) 13.1b 15.2a 16.3a
Initial body weight (kg) 66.7 67.3 68.4 Final body weight (kg) 111.5 110.5 111. 7 Daily gain (kgjday) 1.07 1.07 1.17 Feed conversion ratio2 3.1 3.2 3.1 Age at slaughter (days) 175 173 171 1 Standard error of the mean. 2DM basis.
a， b Means with different superscipts in a column differ significantly (P< 0.05).
SEM1 0.13 0.57 1.57 1.16 0.06 0.09 3.2 Control， control fermented liquid feed ; Chocolate， the control fermented liquid feed supplemented with chocolate at a level of 12.2% ; Soybean oil， the control fermented liquid feed supplemented with soybean oi!at a level of 5%
表 5. 飼料の違いが肉質形賞に及ぼす影響 Table 5. Effects of diet on carcass traits Items Control Chocolate Soybean oil SEM1 (n=5) (n=5) (n=5) Carcass weight (kg) 75.7 76.0 77.0 0.91 Dressing ratio 0.68 0.69 0.69 <0.01 Thickness of backfat (cm) Shoulder 4.3 3.9 4.7 0.23 Back 2.6 2.0 2.7 0.17 Loin 4.0 3.6 4.2 0.20 A verage backfat thickness 3.6 3.2 3.9 0.18 Intramuscular fat in Longissimus dorsi (%) 2.2b 2.7b 3.8" 0.27 1 Standard error of the mean
a， b Means with di妊erentsuperscipts in a column di妊ersignificantly (P< 0.05).
Control， control fermented liquid feed ; Chocolate， the control fermented liquid feed supple -mented with chocolate at a level of 12.2% ; Soybean oi，!the control ferm巴ntedliquid feed sup
-plemented with soybean oil at a level of 5%，
考 察
チョコレートを発酵リキッド飼料に外付けで 12.2%添加した場合，発育は対照宮と差がないこ 51 とが明らかとなった。 McNAUGHTONら(1997) は，肥背後期豚にチョコレート製品(粗脂肪含量 18.6%) を1O ~30% 給与した場合(チョコレート 製品中粗指肪含量1.2~4%) ，発育は対照区と差20日， 6月 芦原・大森・小橋・田島・佐々木・本山・ }II島 日豚会誌 48巻 2号
表 6. 飼料の違いが脂肪色および肉色に及ぼす影響 Table 6. Effects of diet on fat and meat colors Items Subcutaneous fat L'歩value a* value b* value Intermuscular fat L持，value a* value b* value Longissim us dorsi m uscle L* value a* value b* value 1 Standard error of the mean. Control
(
n
口5
)
79.8b 2.9 9.5 77 .3b 4.1 11.1 51.9 8.0 10.7 Chocolate (n=5) 83.6a 3.9 11.8 81.4a 3.7 11.9 50.9 8.0 10.5 Soybean oil(
n
ココ5
)
80.0b 2.8 10.1 77 .8b 4.2 12.0 53.4 7.0 11.1 SEM1 0.60 0.32 0.39 0.67 0.21 0.26 0.73 0.38 0.32a， b Means with different superscipts in a column di妊ersignificantly (P< 0.05).
Control， control fermented liquid feed; Chocolate， the control fermented liquid feed supplemented with chocolate at a level of 12.2% ; Soybean oil，
the control fermented liquid feed supplemented with soybean oil at a level of 5%. がなかったことを報告している。本実験ではチョ コレートを紐脂肪含震として5%添加し給与した が， McNAUGHTONら(1997) と向様の結果が得ら れた。 また，チョコレートを肥育豚に給与することに よって，背脂肪内層および筋間脂肪が明るくなる ことが示された。一般的に，脂肪色は，摂取した 飼料の脂肪酸に影響される。特に，黄豚は，たら 肝油，いわし油などの魚油を給与した場合に多価 不飽和脂肪酸である色素が体脂肪に蓄積するため に生じることが報告されている(丹羽， 1994)。一 方で，入江 (2002) は，給与館料中に多価不飽和 脂肪酸が多いと，体脂肪として蓄積した多価不飽 和脂肪酸の脂質過酸化度が増すことにより，黄豚 が発生する可能性が高いことを報告している。本 実験で用いたチョコレートの脂肪主成分はココア バターであり，飽和脂肪酸が60%以上を占める (表 3)。給与する飼料に含まれる脂質の飽和脂肪 - 52 酸が多いことによって生産された豚肉の脂肪色が 明るくなるという報告はこれまでになく，そのメ カニズムは不明ではあるが，チョコレート給与に より，消費者に好まれる脂肪色が明るく白色であ る肱肉の作出が可能になると考えられた。また， 脂肪色以外の肉質に関連する項目で，対照区と チョコレート区に差がなかったことから，チョコ レート給与は対照匿と遜色ない肉質の豚肉が作出 できると考えられた。 チョコレート区と大豆油区では，対照区に外付 けで5%の粗脂肪含量となるようにそれぞれの資 材を添加したが，チョコレート区および大豆油区 の 背 脂 肪 厚 は 対 照 区 と 差 が な か っ た 。 大 本 ら (1981)は，肥育後期誌に粗脂肪含量が 9.9%およ び16.7%となるよう大豆油を添加した飼料を給与 すると，対照区と比較して背脂肪が瞳くなる傾向 があったことを報告している。本実験における大 豆油区は飼料中の粗脂肪含量が8.4%であり，大
201，1 6月 チョコレート添加銅料が豚肉質に及ぼす影響 日目窓会誌 48巻 2号 表7. 飼料の違いが背脂肪内層の脂肪酸組成に及ぼす影響 Table 7. Effects of diet on fatty acid composition of inner subcutan巴ousfat (%) Control Chocolate Soybean oil SEM1 Items (n=5) (n 5) (n=5) C14 : 0 1.4 1.3 1.3 0.04 C16 : 0 25.9a 24.8ab 24.1 b 0.40 C16: 1 1.7 1.4 1.5 0.07 C18 : 0 17.5 17.3 15.4 0.38 C18: 1 46.0a 47.53 42.9b 0.69 C18: 2 6.8b 7.0b 13.6a 0.89 C18: 3 0.7b
o
.6b 1.2a 0.08 SFN 44.9a 43.4a 40.8b 0.67 MUFA3 47.6a 49.0a 44.4b 0.69 PUFA4 7.5b 7.6b 14.8a 0.97 1 Standard error of the mean. 2 Saturated fatty acid. 3 Mono-unsaturated fatty acid. 4 Poly-unsaturated fatty acida、bMeans with different superscipts in a column differ sig
-nificantly (P
<
0.05).Control， control fermented liquid feed ; Chocolate， the con -trol fermented liquid feed supplemented with chocolate at a level of 12.2% ; Soybean oil， the control fermented liquid f巴edsupplemented with soybean oil at a 1εvel of
5%. 本らの報告(1981)における厚脂が生じた館料よ り粗指肪含震が低いため，摩指にならなかった可 能性が示唆された。また，大豆油区の筋肉内脂肪 含量は，対照区よりも高い値を示したが，チョコ レート援は対照区と差がなかった。 McNAUGHTON ら(1997) は，チョコレート量にかかわらず背脂 妨厚は対照宮と差がないことを報告している。さ らに， MAKIら (2009)および WANGら (2010)は 肥満のヒトが緑茶中のポリフェノ- Jレであるカテ キンをそれぞれ1E3625 mg， 468 mgを 12週間摂 取することによって，体脂肪の蓄積が抑制された ことを報告しているO チョコレートにもカカオポ リフェノールが含まれていることから，本実験に おいても，カカオポリフェノールが脂肪蓄積を抑 53 制したために，チョコレート区の背指肪厚および 筋肉内脂肪含量は対照匿と差がなかった可能性が 示唆された。 カカオポリフェノールは，抗酸化能を有してお り，脂質過酸化度を総合的に測定する目的で血中 および筋肉中のTBARS値を測定した。 WANGら (2000)は，チョコレートを 53および 80gf:真取し たヒトから摂取後2および6時間後に血清中の TBARS値および抗酸化能を測定した結果，摂取 前と比較して過酸化脂質の発生が抑制されたこと を示し， これは，ポリフェノールであるカテキン の一種であるフラボノイド〔プロシアニジン)の 影響であることを報告している。本実験において も，チョコレート中のフラボノイドによって血中
201，1 6月 芦原・大森・小矯・田島・佐々木・本山・川島 別手会誌 48巻 2号 表 8. 銅料の違いが背脂肪内層および筋間脂肪の融解パターンおよびヨウ素佑に及ぼ す影響 Table 8. Effects of diet on temperatures of four characteristic points CC) and iodine values in subcutaneous and intermuscular adipose tissues Control Chocolate Soybean oil SEM1 Items (n=5) (n=5) (n=5) Subcutaneous fat Onset 24.3 24.0 24.4 0.12 Peak 3l.7 3l.7 3l.6 0.23 Conclusion 1 42.2 42.4 4l.7 0.36 Conclusion 2 48.2 48.4 49.4 0.46 Intermuscular fat Onset 24.2 24.0 23.9 0.16 Peak 32.4 3l.8 3l.8 0.12 Conclusion 1 39.3 40.3 39.0 0.25 Conclusion 2 46目1 44.4 45.3 0.34 Iodine value of Backfat 57.8" 59.3a 66.7b l.34 Iodine value of Intermuscular fat 58.4a 59.5a 68.5b l.20 1 Standard error of the mean.
a. b Means with different superscipts in a column differ significantly (P
<
0.05).Control， control fermented liquid feed ; Chocolate， the control fermented liquid feed supplemented with chocolat巴ata level of 12.2% ; Soybean oil， the control ferment
-ed liquid feed supplemented with soybean oil at a level of 5%.
表 9. 飼料の違いが血中および筋肉中のTBARS植に及ぼす影響
Table 9. Effects of diet on TBARS of serum and longissimus dorsi muscles Items Control Chocolate Soybean oil SEM1
(n=5) (n=5) (n=5)
Serum (nmol MDA/mI)2 2l.6a 17.3b 18.1b 0.9
Longissimus dorsi muscle (mg MDA/g) 14.1 15.6 1l.4 l.2
1 Standard error of the mean.
2 MDA ; Malondialdehyde.
Control， control fermented liquid feed ; Chocolate， the control fermented liquid f巴edSUp同
plemented with chocolate at a level of 12.2% ; Soybean oil， the control fermented liquid f巴edsupplemented with soybean oil at a level of 5%.
括質過酸化度が抑制された可能性が推察された。 一方，筋肉中TBARS値には差が認められなかっ た。三津本ら (2003)は， 1日2000mgの茶カテキ ン類を8週間豚に給与した場合，冷蔵保存 l臼後 - 54 の筋肉中TBARS値には差がなかったが，保冷 10日後の筋肉中TBARS値が対照区より低くな り，脂質過酸化皮応が抑制されたことを報告して いる。本実験では，冷蔵保存1日 後 の 筋 肉 中
2011， 6月 チョコレート添加餓料が豚肉質に及ぼす影響 臼豚会誌 48巻 2号 TBARS値を測定したのみであったことから，筋 肉中の脂質過酸化反
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が進行していない状態で あったため，チョコレート給与による差がなかっ たものと推察された。 チョコレートは飽和脂肪酸割合が高く，多価不 飽和脂肪駿割合が低いが，大豆油は多{高不飽和脂 肪酸割合が高い(表 3)。大豆油誌の背脂肪内患の 脂肪駿組成は，対照匿に比べ飽和脂肪酸割合が抵 く不飽和脂肪酸割合が高かったが， このことは， 豚の体脂肪は摂取した飼料の脂肪酸組成を反挟す るという入江(1989) の報告と一致するO また， 本実験で対照区として用いた発酵リキッド銅料の 脂肪酸組成は，飽和路肪酸と多価不飽和脂肪酸が ともに約40%であった。一方，チョコレート区 は，対照毘より抱和指肪酸と一価不飽和脂肪酸割 合が高く，大豆油添加区では多価不飽和脂肪酸割 合が高かった。入江(1989) は，飼料中の不飽和 指肪駿は飽和脂肪酸よりも鐙先的に豚の体脂肪に 蓄 積 す る こ と を 報 告 し て い るO このことから， チョコレート区の背脂肪内層における指肪酸組成 は対照区と比較して差がなく，大豆油区は対照区 より多価不鈎和脂肪駿割合が高くなったと考えら れた。同様に， ヨウ素価についても大豆油区が対 照区より高く，多価不飽和時肪酸割合が高かった ことを反映した結果と考えられた。ヨウ素価が高 いと脂肪は軟らかい傾向があることが報告されて いる(入江と大本， 1985)。本実験では脂肪の軟ら かさの測定は行っていないが，チョコレート匿の ヨウ素価は対照援と差がなかったことから，軟脂 になる可能性が低いことが示唆された。 チョコレートは，アルカロイドの一種であるテ オブロミンを含有しており，豚が1日に体重 1kg あたりカカオミールとしてテオブロミンを80mg 摂取すると，中毒症状になることが報告されている(BRAじDE，1943)。しかし， ALEXANDERら(2008)
は，カカオミールとして
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真買交した1Elのテオブロ ミン量が体重1kgあたり 24mg以下であれば中 毒症状は示さないことを報告している。本実験で 用いたチョコレートのテオブロミン含量は0.18% であったことから，体重1kgあたり 6.5mgのテ オブロミン摂取量となり，適正範囲内であったこ とが確認できた。また増体および糞の状態は対照 55 区および大立油i
玄と相違なく，テオブロミン中毒 症状はなかったと判断した。 以上の結果かる，チョコレートを発酵リキッド 飼料に外付けで12.2%添加して給与した場合，発 育は対照区と差がなく，対照区より指肪色の明度 が高い豚肉が作出できることが明らかとなった。 また，大豆油を給与した場合とは異なりヨウ素価 が低いことから，軟脂になる可能性は低いことが 示唆された。テオブロミンが含まれるため添加量 を制限する必要はあるものの，チョコレートは豚 の飼料資源として有用であると考えられた。 謝 辞 本実験を遂行するにあたり，チョコレートを提 供していただいた東京フード株式会社ならびに肥 育豚の鰐養管理やと畜時に御協力頂いた問所業務 第2科職員の皆様，研究を補助して頂いた向所機 能性飼料研究チームの花木千穂氏，山崎恭子氏に 感謝いたします。 文 献ALEXANDER， J.， D. BENFORD， A. COCKBURN， J.P CRA VEDI， E. DOGLIOTTl， A.D. DOMENICO， M.L. FERNANDEZ-CRUZ， P. FURST， J. FINK冊GREMMELS，
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