鳥取大学教育学部研究報告 教育科学 第 37巻 第
2号
(1995) 223
近代 日本における植民地体育政策の研究
(第
5報
)―「 学校体育教授要 目」の公布 と伝達講習会の実施 ―
保健体育教室 入
A Study on the Colonial Policy of Physical Education by the
Pre―
―
War
」
apanese Authorities (I)art 5)
一
The Proclamation of the School Physical Education
Syllabus and the Putting into Effect of lts Training Course
under the lmperial Govern■
lent of Manchukuo―
Katsumi hIE*
は
じ
1ゆ :こ (第4報
)で
は,主
と して執政か ら帝政への移行 にともなう 日満一体,五
族協和 の理念 にもとづ いた植民地教育 な らびに体育の政策過程 を対象に明 らかにす ることに努めたが,こ
こでは1938(昭
和13
康徳5)年
に公布された学校体育教授要 目の性格 とその伝達講習会の実態,さ
らには体育教 師の資質 にかかわ る実情が どのようなものであ ったのかについて報告す る。1.学
校 体 育 教 授 要 目 の 制 定 と そ の 理 念(1)学
校体 育教授要 日の公布1937(康
徳4)年
の「将来 ノ方針」を具体化す る一環 として1988(昭
和13
康徳5)年
1月14日 , 各省長,特
別市長,直
轄学校長宛てに民生部 (大臣 孫其 昌)司 ‖令第10号による「 学校体育教授要 目」(以下,体
育要 日)カ ミ公布 されたが,訓
令はこう述べている。 「 姦 に学校体育教授要 目を制定,公
布す,抑
々国民体育運動が其 の 目的 とす るところは,国
民精神 の作興 と国民体位の向上にあ り,我
国次代国民の中堅たるべき学生 に対 し,堅
実 なる体育運動を奨 励,実
施 し,其
の心身の修練 に努め,忠
良なる国民の養成を期す るは教育上最 も緊要 なることとす, 姦 に於て新学制の教育方針 に基 き,学
校体育教授要 目を制定す 貴省長,新
京特別市長,学
校長は宜 しく所属を督励 し,本
要 目制定の精神 の存す るところを克 く 了解せ しめ,講
習会,研
究会等の施設を通 して速かに本要 目の普及,徹
底 を図 り,指
導に当 りては, 己 克 江224
入江克己 :近代 日本における植民地体育政策の研究 (第5報) 特 に地方の状況を考慮 して之を実施せ しめ,以
て学生の身体の健全 なる発達を期 し,品
性を陶冶す るに於 て高遺漏 なきを期すべ しQ)J そ して, この訓令 と同時に「 新制学校体育教授要 ロノ制定二就テ」が発表され,体
育要 目の制定 に至 る過程,な
らびにその精神が明 らかにされている。少々,長
くなるが引いてお く。 「此度,学
校体育教授要 目が新 に制定 され ま して,新
学年か ら全国一斉 に実施 され ることとなりま したので, これを機会に該要 目が制定され るに至 るまでの経過,並
に要 目の精神,内
容の大要に依 っ て記 したいと存 じます。 学校教育に於ける体育は,一
言に して蓋せば,学
生の身体の修練 を通 しての教育であ り,心
身一 如の立場 において筋肉運動を通 しての実践教育であ りま して,特
に学生の身体 の鍛練 と健康の増進, 並に品性の陶冶とに指導の重点の置かれ るのは, この教科の主 目的とす るところであ ります。尤 も 教育本来の 目的は国家発展の使命を果 し得 る健全 な国民を養成す るにあるのであ りま して, これが 為には国民の一人々々がこの責任を果 し得 るに足 る十分の実力を持つと謂応、ことが大切な要件 となっ て来 るのであ ります。 殊 に我国の如 く新興国家 と して発展途上にある国にとっては,如
何 なる娘苦 にも打克つだけの強 い精神力と体力とを兼ね備へて,国
力の興隆にあずか り得 る強力な国民を培ら、のが国民教育の 目指 す所でな くてはならぬと思応、のであ ります。此度公布 された要 目は如上の意味におきま して,そ
れ が制定は我国現下の学校教育上最 も緊急 を要することに属するものであ りまして, これが制定 に関 しては,予
ねて教育者の間か らは勿論,各
方面か らの要望久 しいものがあ ったのであ ります。 そ して,一
刻 も速 く指導精神を確立 して,学
校体育の進むべき方向を指示 して,思
想上にも,方
法上にも,兎
角去就 に迷 っている学校体育を して体育本来の使命の存す るところに帰一せ しめて, 国家興隆に関 して協力 して行 くべ きであると謂 う意見が合頭 して来たのであ ります。恰 も,よ
し本 年一月一 日を期 して実施 され ま した新学制は,我
国学校教育の根本方針 を樹立 して,教
育百年の大 計の基礎が厳 と して姦 に樹立 され ま した。 この教育方針 こそ,亦
学校体育に於 て求めて罷まなか っ た最高の指導精神を示 して呉れたのであ りま した。 我満州帝国が近代独立国家 と して体制 を整へて生誕 してか ら,秩
序 ある発展過程 を辿 って姦 に七 年,早
くも新学制の実施 と共に,学
校体育に関 しては最高指導標 となるべき要 目の制定を見ま した。 そ して国民学校か ら大学 に到 る各種学校 を一貫 して統一 された指導大系の出来上 った ことに於 ぇと既に驚 くべ き進昼振 りを示 していると謂はねばなりません。それは友邦 日本 に於ける体育史を 緒いて見ても,明
治三年新学制の発布 を見てか ら凡そ半世紀 を経た大正十二年 に始めて学校体操教 授要 ロガ制定され る気運にたち到 った史実を回想 して,洵
に注 目に値す ることと思応、のであ ります。 こ 咎は一に本邦教育体糸の整備に当 って轟痺せ られた当局の努力の賜に他ならぬと思ひます。 奴 て新体育要 目の指導精神は指導要項 の第一条 に示 してある如 く,『学生の身体 を修練す ると共 に品性の陶冶を図 り,以
て心身一如の全人格教育の 目的を達成』 しや うとす るところに全てが帰一 す るわけであ りますが,要
す るに学生各個人の頑健 なる身体を創 ると共に,精
神的には規律正 しく, 純心闊達,機
敏 に して勇気あ り,而
も沈着剛毅 に して堅忍持久,協
同の精神 に富んだ国民的性格 を 創 るので あ りま して,九
そ 国家興 隆 に関 しては,如
何 なる部面 に動員 され て も立派 に役 立 ち 得 るや うな中堅国民たるの素質を培応、ことになるのであ ります。 要 目の内容については,そ
の構成が教練操,基
本操,応
用操,遊
戯及競技操及 団体操 の六操か ら 成 っている所 に本要 目の特異性を認めたいのであ りますが,最
後の団体操 を除いて他 の五操は教練 か ら順次に碁々教授の順序を追 って配列 されてあります し,亦
各操に於ける教材 も易より難へ と碁 々蔦取大学教育学部研究報告 教育科学 第 37巻 第
2号
(1995) 225 教授 の順を追 って配列 されてあ ります為 に,指
導上頗 る便利であ って,例
へ特別に細 日とか,指
導 案 な どを作 らないでも,基
本操 を中心に して授業 は進め得 るとい遮ゝ,謂
はば半教案式 の要 目であ り ます。 而 し午 ら教案式 と云 っても,そ
こに盛 られた各教材は勿論,案
の構成上か らも広範囲の弾力性を, それ 自身の中に包合 され ている点 も特 に注 目すべ きところで,前
者の特徴 と合せて我国学校体育の 指導者,施
設等の現状に適応 したるものであ ります。即 ち比較的素養の低い者か ら,素
養 の高い教 師に到 るまで も,そ
れ相応 に十分に活用 をな し得 ると云応、ところに成案の苦心の跡が窺 はれ るわけ です。 亦要 日全体 は国民学校か ら大学 に到 るまで全十二表 によって編成 され ていますが,原
則 と して六 操か ら成立つ同一表が二学年 に互 って適用 され る様 になってお ります,こ
れがため,一
見 して適用 の範 囲が大変広 いや うに見受けるのであ りますが,先
に申 した様 に頗 る豊富な弾力性 の存す るとこ ろを良 く了解 して活用 した ら,仮
令ニケ年 に亘 って活用 しても,な
ほ余 りあるだけの余裕 を持たせ てあ りますために,将
来一般体育思想の普及,向
上 と相倹 って益 々その活用部面を展開 して行 くこ とが予想 され るのであ ります。 なほ体育施設については徒に外形のみ に促 はれ ることなく,地
方の実状に照 して,夫
々民度 に応 じたものを工夫,考
案 して,所
期の効果を収む るや う特 に強調 したいと思ひます。要す るに新 に公 布 された要 目は我 国学校体育将来への良き指導指針であると共 に,亦
一つの根底 をなす ものであ り ま して,総
て次の時代へ飛躍 しやうとす る一個の飛躍合にも比すべきものであると謂応、点 に特 に注 意 されたいと思ひます。 この踏み合を しっか り固めることが先づ差迫 って必要 なことであ りま して,こ
れが総 て大飛躍 を 為す に耐得 るだけに,が
っちり充実す るまでには前途 なほ何年の年月を之に費 してよいかは,逮
か に断定出来ないのであ りますが,相
当の苦難の路 を辿 らねばならぬ ことを互ひが覚悟 して掛 らねば ならぬと思ひます。e)J(2)学
校体 育教 授要 目の内容 その教授要 目の内容は,次
のようなものであ った。 「学校体育教授要 目 ―
,教
材 内容 体育科の教材は各学校を通 し一様 に教練,基
本操,応
用操,遊
戯及競技操,整
理操,団
体操の 六操 とす 二,指
導要項1,体
育に指導に当 りては身体を修練す ると共 に,品
性の陶冶を図 り,以
て身心一如の全人教育 の 目的を達成せんことに力むべ し2,体
育科の教材は各特徴を有 し,互
に相衛 りて体育の 目的を達成す るなるを以て左に示す各操 の特徴を十分体得 し,学
生の身体及精神の発達の程度 に留意 して適切 なる方法によ り指導 を為 すべ し イ,教
練操 木操は主 と して規律の習慣を養成 し,堅
固なる意志を鍛練す るを以て其の 目的 とす226
入江克己:近代日本における植民地体育政策の研究 (第5報) 口,基
本操 本操は主 と して身体的修練 に依 り身体の生理的発育を期 し,容
儀 を整へ,姿
勢動作を端正 機敏にな らしめ,兼
ねて強度 なる運動 に対す る準備体勢を整応、るを以て 目的とす ハ,応
用操 本操は強度 なる身体修練 に依 り身体 を鍛練 して之れ を強壮 ならしめ,沈
着 。剛毅 なる精神 を涵養す ると共に,巧
緻力を高む るを以て其 の 目的とす 二,遊
戯及競技 本操 は主 と して学生の 自発的活動を向上せ しめ,純
心闊達,機
敏勇気,堅
忍持久の性格 を 養ひ,規
律を守 り,責
任 を重 じ,協
同を尚び,体
育を愛好す るの習慣 を養成す るを以て其 の 目的とす 低学年及女子に対す る唱歌遊戯,歩
法及体育舞踊は身体 の基礎的修練 を達成す ると共 に清 新,優
雅 なる情操 を陶冶す るを以て其の 目的 とす 資料-1
第 1号 表 国民学校・国民学舎(1,2年
) 操 体 団 操 理 整 操 技 競 及 戯 遊 操 用 応 操 本 基 操 練 教 建 国 体 操 下 肢 挙 題 屈 膝 手 腰 上 肢 管 前 上 挙 ︵ 振 ︶ 触 手 巻 整 列 競 争 直 線 接 力 兎 跳 競 争 旗 取 競 争 跳 河 競 争 単 脚 競 争 鬼 遊 投 紅 白 球 紅 白 球 置 対 列 蹴 球 懸 垂 自 由 運 動 低 鉄 棒 攀 登 一 ユ ︵ 吊 ︶ 棒 吊 縄 体 背 上 上 上 下 下 上 下 肢 菅 側 踵 ︵ 振 ︶ 屈 膝 挙 股 肢 挙 踵 屈 膝 肢 督 側 ︵ 前 ︶ ︵ 上 ︶ 挙 ︵ 振 ︶ 肢 営 側 挙 ︵ 振 ︶ 脚 側 ︵ 前 ︶ 出 肢 営 前 上 挙 ︵ 振 ︶ 腹 体 前 後 屈 手 腰 開 脚 側 体 側 転 手 顕 開 脚 腰 勢 立 正 姿 勢 休 憩 集 合 ・ 解 散 報 数 正 歩 行 進 基 本 歩 法 ウ オ ー キ ン グ ス テ ツ プ ラ ン ニ ン グ ス テ ツ プ ス キ ツ プ ン グ ス テ ツ プ ギ ヤ ロ ツ ピ ン グ ス テ ツ プ ホ ツ ピ ン グ ス テ ツ プ 唱 欧 遊 戯 満 州 帝 国 要 傲 好 学 生 胡 蝶 春 風 歌 不 動 ノ 姿 勢 休 憩 集 合 ・ 解 散 番 号 速 歩 行 進 呼 吸 臀 側 ︵斜 上 ︶ 挙 滑 氷 眺 躍 眺 越 腰 卦 ・ 跳 箱 上 体 胸 歩 及 走 各 種 歩 及 走 管 側 伸 手 反 胸 後 反 開 脚 側 体 側 屈 手 顕 開 脚 下 肢 営 側 挙 ︵ 振 ︶ 挙 踵 軽 眺 躍 片 ︵ 両 ︶ 脚 跳 縦 隊 行 進 停 止 踏 脚 右 ︵ 左 ︶ 転 彎 好 学 生 国 旗 植 樹 節 歌 揺 車 好 朋 友 孝 梯 日 の 丸 の 歌 体 育 舞 踊 縫 ふ て ゆ く 私 の ま ね 友 探 し 縦 隊 行 進 停 止 足 踏 伍 伍 右 ︵ 左 ︶ *『満州国体育行政概要 上』 前掲 85∼86ページ鳥取大学教育学部研究報告 教育科学 第 37巻 第
2号
(1995) 227
資料-2
第2号表 国民学校・国民学舎(3.4年
) *『満州国体育行政概要 上』 前掲 87∼88ページ *国民優級学校より団体操 に「 日本建 国体操」が入 る ホ,整
理操 本操は運動時の終 に於 て身体の生理的調整をな し,身
心の安静を興応ゝるを以て其 の 目的と す へ,団
体操 本操は体育運動の習慣的実行の必要性を自覚せ しむ ると共 に,団
体的精神を養成す るを以 て其の 目的とす 以上各操の体育時間に於ける取扱に関 しては完成指導 (団体操を除 く各操 を全部実施)を
原則 と す るも,重
点指導 (各操の中或一操 に重点をお く指導)の
場合 と雖 も完成指導に於 ける流れ,即
ち 準備運動,主
運動,整
理運動 の過程 に従応、べ し1,体
育科時間の開始及終了に当 りては教練操 の教材中より適切 なるものを実施 し,其
の秩序を 保つべ し2,団
体操は朝会,体
育会等体育時間外 に於 て行ふものとす3,体
育科時間に於け る各操の指導は循環漸進の方針 に依 り基礎的修練 を十分 な らしめ,絶
えず 既習教材の練習を行ひつつ漸次其の程度 を進むべ し4,教
材は基本的なるものを配列せ るに付,教
授の実際に当 りては常 に適応す るよう分解的,総
合的 なる指導を行ひ,其
の効果 を収むべ し 操 体 団 腺 理 整 操 技 競 及 戯 遊 操 用 応 繰 本 基 操 練 教 建 図 体 操 体 上 下 側 肢 貸 側 挙 ︵ 振 ︶ 挙 踵 屈 膝 管 体 側 挙 体 側 転 開 脚 闘 鬼 猫 捕 鼠 単 手 鬼 団 陣 鬼 置 換 競 争 鬼 争 位 置 紅 白 球 置 換 争 陣 地 取 帽 子 眺 縄 抜 河 円 形 接 カ 拍 球 接 カ 投 球 懸 垂 懸 垂 横 木 、 低 鉄 棒 懸 垂 眺 上 〃 〃 貸 立 懸 垂 横 木 、 低 鉄 棒 懸 垂 振 眺 低 鉄 神 、 横 木 脚 懸 垂 振 上 低 鉄 棒 屈 膝 逆 上 低 鉄 棒 、 横 木 斜 懸 垂 横 木 、 低 鉄 棒 後 下 ″ 〃 挙 登 吊 縄 ︵ 棒 ︶ 跳 躍 眺 上 下 跳 箱 、 腰 掛 管 側 挙 ︵振 ︶ 挙 睡 屈 膝 頭 前 ︵後 ︶ ︵側 ︶ 屈 、 側 転 、 手 腰 管 側 開 振 管 脚 前 ︵側 ︶ 挙 ︵振 ︶ 管 側 ︵上 ︶ ︵側 上 ︶ 仲 貸 前 挙 ︵振 ︶ 脚 前 出 管 斜 上 脚 側 挙 ︵振 ︶ 跳 掌 反 胸 後 屈 開 脚 、 腰 掛 脚 側 ︵前 ﹀ 挙 手 胸 、 地 床 、 台 上 前 ︿側 ﹀ ︵後 ︶ 歩 臀 前 上 挙 管 側 挙 片 賃 上 挙 体 側 屈 開 脚 体 上 平 胸 軽 上 上 上 上 頭 上 跳 下 下 下 嶺J肢 均 躍 肢 肢 肢 肢 肢 第 一 号 表 之 教 材 立 整 頓 半 面 向 ︵ 左 ︶ 転 向 後 転 基 本 歩 法 ツ ー ス テ ツ プ ボ ル カ ス テ ッ プ ス ラ イ ド ス テ ツ プ ワ ル ツ ス テ ツ プ マ ズ ル カ ス テ ツ プ 基 本 態 勢 唱 歌 遊 戯 燕 幾 点 残 星 端 品 励 学 第 一 号 表 ノ 教 材 整 頓 半 右 ︵ 左 ︶ 向 後 向 吸 営 上 挙 掌 反 胸 後 反 呼 五 十 米 八 十 米 眺 河 競 争 跳 高 競 争 跳 遺 競 争 三 回 跳 単 脚 競 争 門 球 円 形 避 球 足 塁 球 伝 球 足 球 接 カ 滑 氷 前 廻 下 懸 垂 立 挙 脚 臀 立 跳 乗 皆 立 膝 上 脅 立 眺 上 下 管 立 跳 越 前 転 菅 立 挙 脚 管 立 側 転 7 8 9 Ю 倒 立 及 転 廻 討 助 運 動 〃跳 横 〃 箱 木 背 腹 体 前 屈 掌 反 体 後 屈 開 脚 上 下 肢 宵 側 挙 ︵ 振 ︶ 後 屈 挙 股 腹 管 立 脚 屈 仲 台 上 体 側 貸 側 挙 体 側 転 開 脚 軽 跳 躍 菅 側 上 仲 両 脚 跳 営 側 挙 ︵ 振 ︶ 上 方 眺 歩 及 走 正 常 歩 ︵ 走 ︶ 挙 股 歩 ︵ 走 ︶ 大 跨 歩 ︵走 ︶ 急 歩 ︵ 走 ︶ 踏 歩 ︵ 走 ︶ 行 進 関 向 右 ︵ 左 転 ︶ 行 進 問 右 ︵ 左 ︶ 向 行 進 問 向 後 転 行 進 問 後 向 駈 歩 行 進 駈 歩 行 進 向 右 ︵ 左 ︶ 成 四 行 典 選 原 伍 ノ 重 複 分 解 民 族 協 和 歌 上 元 之 夜 兵 隊 さ ん か ぞ へ 歌 氷 す べ り 体 首 舞 踊 シ ー ソ ー ご 挨 拶 ひ き く ら 鬼 ご っ こ228
入江克己 :近代 日本における植民地体育政策の研究 (第5報)5,体
育科の指導に当 りては,土
地の情況,季
節,天
候,設
備等 を考慮 して之を適切 な らしむる を要す6,教
授 に要す る用具及施設 に関 しては本要 目に示されたる標準 に基づ き各教材の 目的を達成す る適切 なるものを設備す るを原則 とす るも,止
むを得 ざる場合は適宜 自然物の利用 に依 り効果 を収 るやう工夫,考
案すべ し 教授の実際に当りては特 に障害予防に留意すべ し7,体
育時に於ける服装は簡易,軽
装 なるを旨と し,特
に教師は運動服を着用すべ し8,女
子体育に関 しては其 の特性 に鑑み指導の方法を適切 ならしむべ し9,課
外体育に関 しては本要 日の教材 を中心 と して周到なる計画の下に実施 し,学
生の 自発的活 動に依 り体育的生活の必要性 を 自覚せ しめんことに力むへ し●)」2.学
校 体 育 衛 生 中 央 講 習 会 の 実 施 と そ の 実 相(1)中
央講 習会 の実施 この「 学校体育衛生講習会」は,既
に指摘 しているように,康
徳2年
6月10日以降に錦州を中心 に実施 されているが,今
回の中央講習会は,教
授要 目の全満的な浸透 を意図す るものであ った。康 徳5年
4月 2日 に公布 された「 講習会開催二関スル訓令」は,そ
の「緒言Jな
らびに「 方針Jの
な かで こう述べている。 「 ―,緒
言 本年一月学校体育教授要 目が制定
,公
布 され,我
国学校体育の指導精神 と之が指導方法 とが確 立 されたるを契機 に本部は該要 目の全国的普及,徹
底を計 る為め,中
央講習会 を開催 し,全
国各 省,特
別市及直轄学校に対 し夫 々代表者の参集を求め,該
要 目を中心 に学校衛生の一般 に関 して, 地方各省に於ける中心的指導者の養成,訓
練 に当ることとせ り, 本講習会は新制学校体育教授要 目の実際について指導講習さる本邦最初の講習会 に して,本
講 習会終了後は引続 き本講習会講習員が中心 となり,別
項地方講習会 日程 に示せ る如 く,各
省主催 の下に省管下にこれが伝達講習会を開催 し,漸
次全国的に普及 し,本
年八月 までには一先づ全国 の教師に指導,伝
達を行応、予定である。即 ち本講習会は本邦学校体育の一大転機 を画すべ き最初 の講習会 に して,そ
の使命は実 に重大 と云応、べきである。本講習会 に参加せ る講習員は合計八五 名に して,特
別参加者を加へ ると総計八七名 となる。而 して十 日間に亘 る講習全学科 目を履修 し, 民生部大臣より講習終了証を授与せ られた る者八三名 なり。 二,方
針
1.講
習員を して本邦学校体育第一線指導者た るの 自覚的精神を涵養,堅
持せ しむ ると共 に, 体育指導者 と して任ず るもの,資
質向上 に関 し,そ
の基根 となるべ き体育的,規
律的訓練 に 重点を置け り。 即 ち講習員遠近 を間はず,講
習及講習員の全員を師道高等学校寄宿舎 に収容 し,午
前六時 よ り午後九時三十分に至 る間,毎
日十時間の講義,演
習を履修す るの他,舎
の清掃 を始め, 生活一切事を 自治的に営 ま しめた。寝室は一室宛七名,十
五室 に全員 を割 当て,各
室 には室 長を置き,更
に十五室を三区隊に別 ちて,各
区隊に区隊長 を置き,そ
の上に講習員代表 を置 きて全員の規律,統
制 を当 らしめた。鳥取大学教育学部研究報告 教育科学 第 37巻 第
2号
(1995)2.講
習学科 目内容頗 る広範囲に亘 り,短
期間に内容の全部 を研究,履
修 し,更
に教材 の個 々 に亘 りて技術的に修練す る時間は到底有せ ざるに依 り,個
々の教材 に対 しては,そ
の教材の 最基本的なるものを指導 し,こ
れ ら教材を通 して本要 目の真精神を理解せ しむ ることに重 き をおいた。 本要 目を して全 くの活用を為 さ しめ,体
育的効果を遺憾 な く挙げ しむ るには,指
導者 に対 して個 々の教材 に亘 りて極めて検究 をな し,ユ
教材の取扱部面を能応、限 り拡大 してお くだけ の用意を持たせ る必要があ り,更
に指導に当 りては学生の心身の状況に適合 した取扱 を為す ことこそ,学
校体育指導の要請である。 然れ共,本
講習会期間中に於 ては,
これ らの条件を満足せ しむ るに十分なる時間は到底有 せず,加
応、るに要 目施行の第一年 目に当 り,尚
且,現
下の一般状勢 よ りしては,差
当 り先づ 本要 目制定の精神を理解せ しむ ることに重点を置 き,個
々の教材 に関す る研究は第二年 目以 降の課題 と した。■)」 そ して講習会の開催 にあた って,民
生部大臣孫其 昌は,次
のように訓示 している。 「 木 日・・・・ 学校体育衛生講習会を開催す るに当 り,全
国各省に於ける代表的指導者の参集を得, ここに親 しく所懐の一端を述ぶ るの機会を得たるは,実
に欣快 とす るところなり,近
時 国際情勢の 愈 々複雑性を帯びるに伴ひ,世
界何れの国家 を間はず,或
は国防上の見地 よ り,或
は産業上の見地 より国家興隆の基礎た る人的資源の強化,拡
充 を東念す ること甚だ切 なるものあ り,即
ち―は国民 精神 を振作 し,確
固た る国家観念を涵養す ると共 に,一
は以て国民体力の増強を図 り,以
て国力増 大の基礎た らしめん とすればなり, 我国亦時勢を洞察 し,学
校体育の重要性 に鑑み るところあ り,次
代国民の中堅たるべ き学生 に対 し,堅
実 なる体育運動を奨励 し,以
て其の心身を修練 し,且
は堅忍持久の精神を涵養 し,以
て忠 良 なる国民の養成 に資せんがため,新
学制の教育方針 に基 きて,本
年一月,学
校体育教授要 目を制定 せ り,而
して本要 日は今後に於ける我国学校体育の確固た る指導精神 と,其
の実践方法を指示 した ものなるを以て,体
育指導者たるの研究,以
て其蘊奥 を極め,之
れが指導,教
授に遺憾 なきを期せ ざるべか らず, 姦 に各省代表者た る各位の参集を得て,各
講師 と共 に本要 目近 に学校衛生一般 に関 し研究す る機 会を得た ることは,邦
家のため実 に慶賀に堪えざるどころな り,各
位はよろ しく本講習会開催の趣 旨を体 し,所
定の学科 を修得 し,夫
々任地 に帰遺の上は,克
く本要 目制定の精神の存す るところを 伝達,了
解せ しめ,我
国体育振興のため一段の蓋力を致 されん ことを期待 して己まざるものあ り, 依 って一言 し,以
て訓示 となす。121J 吉林師道高等学校で開催 された講習会は,体
育関係12名,衛
生関係6名,計
18名の講師 をもって 10日間実施 されているが,ち
なみに体育講義科 目の一部 と担当者は,次
のようである。 新制学校体育教授要 ロノ精神 平野 博,要
ロノ教材配当並教授上 ノ注意 茂木善作,教
練操教化 ノ注意 坂 田徹治,基
本操教材 卜教授上 ノ注意 久保 田完三,応
用操教材 卜教授上 ノ注意 山並兼 武,遊
戯及競技教材 卜教授上 ノ注意 木英一,唱
歌遊戯及体育舞踊教材 卜教授上 ノ注意 趙 士 珍,料
助運動教材 卜教授上 ノ注意 久保 田完三,団
体操教材 卜教授上 ノ注意 茂木善作,課
外体育 及体育施設 卜管理 三浦 巌, また,講
習会 には, 日系27名 (内女子2名
),満
糸54名 (内女子16名),鮮
糸4名
(内女子2名) の計85名が参加 してお り,そ
の実状を「 日誌Jに
追 って見てみ ると,兵
営化 された修養道場 そのも のであ り,か
なリハー ドなスケジュールであ った ことが うかがわれ る。230
入江克己:近代日本における植民地体育政策の研究(第5報) 「 五月 三 日 吉林師道 高等学校 に於 て講習打合会議 を開催 五月 四 日 前 日に引続 き講師打合会議開催 午後六始半講習員,師
道高等学校寄宿舎 に集合,夕
食後,坂
田講師より舎生活,規
律 につき訓話あ り 平野保健体育科長外,全
講師本 国よ り講宵員 と寄居 を共 にすべ く舎生活 に入 る 五月 五 日 午前八時師道高等学校 に於て開会式 を挙行す 一,開
会の辞 二,満
日両国旗 に対 し敬礼 三,満
日両国歌合唱 四,民
生部大 臣 訓示 塞1吉林省民生庁長 平野保健体育科長代読 五,講
師紹介遊代表挨拶 茂木 講師 六,講
習会 に関す る注意 三沢講師 七,講
習員代表宣誓 施 愛 棠 (濱江)
河村泰男(奉
天)
八,閉
式の辞 来賓 吉林省公署 より劉民生庁長,国
民教育科長,久
原視学官, 閉式後,直
ちに 日課に入 る 五月 六 日 全員 出席,
日課を滞 りな く終 る。講冒員 の元気頗 る旺盛 なれ ども,十
時間の訓練 に 補疲労の色窺はる。明 日より昼食後午後一時二十分まで午睡時間を設 く。 五月 七 日 早朝六時の点呼に全員顔 を揃へ,本
日の 日課に入 る。全員の元気益 々旺盛 なれ ども 連 日の訓練 に漸 く疲労度を加応、。腹痛 を訴応ゝる者教名あ り。食事,其
他生活環境 の 変化 のため と思料 さる。吉林河野部隊附陸軍 々医中尉松永努氏,関
東軍の命 によ り 木講冒会状況祝察に来校。 五月 八 日 全員異常 な く日課 を終 る。疲労怠其の度を加応、るも,
日課及舎生活を通 し,極
めて 規律的に訓練 は続行す る。松永中尉視察,奉
天鉄路総局鉄路学院平田勝氏講習会実 施情況見学, 五月 九 日 全員事故 な し,極
めて規律的に 日課 を終 る,池
崎正木 (安東省)公
務のため任地 に 帰還,千
名上諦 (奉天省)徴
兵検査受験のため内地 に帰還,松
永中尉視察のため来 校, 五月 十 日 全員事故 なく日課 を終 る。疲労の度れ ども,漸
く訓練 にg‖れて全員の元気益 々熾 な り。松永中尉視察。 五月十一 日 異常 な く日課を終 る。午後一時 より吉林省女子国民高等学校学生の実地授業参観 の ため全員 同校 に到 り,逍
士珍講師指導 による一年生の授業参観,夜
は講師並講習員 の懇談会 を開催す。 五月十二 日 異常 なく日課終了,松
永中尉来校,満
州体育保健協会齊辰雄氏視察, 五月十三 日 異常 なく日課 を終 る。連 日の猛訓練 にも克 く耐えて来た講習生 も,本
国あた り疲労 度は其 の極 に達 したるものの如 し,然
れ共,最
後の課外た る夜の 日課 にも全員 出席 し,受
講す,特
に夜九時半 よ り入浴 を許す。 五月十四 日 午前中予定の 日課を終 り,午
後は講習員全員の合 同演習を挙行す。十四 日間の司‖練 の成果 を姦 に展示す ること七十五分間に亘 りて猛砂塵 の中にも盛大に予定の種 目を 終 り,全
員の士気益 々熾 なるを表示せ り。引続 き午後三時 より講堂に於 て閉会式 を 挙行す。 一,閉
会之辞 二,満
日両国旗 に対 し敬礼 三,満
日両国歌合唱 四,修
了証書授 与 五,挨
拶 平野保健体育科長 六,講
師代表挨拶 坂 田講師 (興安北省)
神 林鶴蔵 (奉天農大)鳥取大学教育学部研究報告 教育科学 第37巻 第
2号 (1995) 231
来賓,師
道高等学校 より樋 口校長,向
井事務官出席 午後三時半閉式,十
日間に亘 りた る訓練 に一同・・・・ 顔を輝 しなが ら地方に於け る中心的指導者 と しての重責を自覚 しつつ勇躍赴任地への帰途 に就 く。③」 そ して,
この講習会 の「 総括Jと
「 将来 工対 スル参考事項」 と して次のように指摘 している。 「 本講習会の主要 目的は先 に新制公布 された る学校体育教授要 目を中心 に,学
校衛生一般 に関 し指 導,講
習 し,地
方各省 に於 ける中心的指導者を養成す るにあ ったが,特
に体育指導者 と して具備す べき諸条件の中,最
根本的条件た る精神的資質の向上に重点を置いた。 即ち一般的観念よ りすれば,体
育講習会 と しては極めて厳格 と見 られ る舎則を厳守せ しめ,又
規 律的,団
体的訓練 を徹底的に実施 した。即ち講習員の任地の遠近を問わず,全
員を寄宿舎に収容 し, 共同生活を営 なま しめ,生
活 の秩序,規
律等 に関 しては総て講習員各 自の 自覚に倹つ ことと した。 然 るに毎 日十時間の課業 を終へ,就
床時までは殆 ど余暇を有せ ざる程の訓練の為,講
習員の心身 は疲労,其
の極 に達 し,
日常の起居 さえも困難を感ず るに至 りて,尚
且,克
く酷 しき訓練 に耐え, 苦痛 に打克ち,共
同生活の秩序を保 ちて,終
始一貫全員の協カー致 によ り本講習会の好成績裡 に終 了 した ること及秩序あ り,統
制ある生活 によって所定の時間も極めてよ く厳守 されたので,頗
る広 節囲に亘る学科 目内容 も予定の如 く総てを習得 し,地
方指導者 と して 自信を克 ち得 て,夫
々帰任す るを得たることは特筆 に値すべ きこととす る。 尚或は早朝時の 自由時間を利用 し,或
は夜遅 く就床時間を割 きて教材の研鑽 に努めつつありし講 習員を随時散見 したることを附記 して其の志を多 とす る。比較的短時 日の間に開催 さる講習会の如 きは,一
般的には講習員 の構成分子極めて多部面に亘 り,為
に特 に全員の規律,統
制ある団体的活 動の必要 なることを痛感 しなが らも,そ
れが訓練にまで及び得 ざるを常 とす る。然 るに今回の如 き 規律ある団体的生活が如何 に講習会を好成績 に導 く為に重要 なる役割 を果 したるかを,講
習員各 自 が如実 に体験 した ことは極めて希有に属す ることと思料す る。 兎角,体
育運動の指導 に当 りては技術の末補 に走 りて,以
て我意を得た りとす るが如 く,本
来頭 倒せ る指導者の無きに して非 ざる現状に於て,斯
かる貴重 なる体験 を 自ら体験 し,第
一線指導者た るの 自覚的精神を堅持 して帰任せ る講習員が各任地に於 ての今後の活動 に対 しては全幅の信頼 と希 望 とを持 して可 なるべ く,本
邦 国民体育運動の健全 なる普及,発
達 に関 して,若
し学生の人格陶冶 を忘却す るが如 き指導者があ りとすれば,将
に一大警告を発せ るものと云応、べ し。 本講習会が訓練の厳格 さに於 て此種講習会 に於て稀 に見 るものなりしこと,記
述 の通 りなるが, 兎に角終始一貫,最
後の一 日に到 るまで も,規
定の 目的の大半を達せ られた りと云応、も過言ではな い。即 ち,こ
の堅忍不抜の精神 こそ新制学校体育教授要 目の真精神 を具現 したるものに他 ならぬか らである。然 して本講習会を して記述せ る如 き好成績 に導か しめたる動因が奈辺に存在せ るかを一 応検討 して,以
て今後の参考 に資すべき必要があるが,先
事項が其の主 なるものと して指摘 さるべ きである。1.木
講習会に対す る指導精神を確立 し,之
を堅持 して終始変 らさりしこと2,講
師,講
習員が 一丸 となって宿舎生活を営み,比
較的不 自由なる生活環境の中にも,本
来の使命の存す るところを 自覚 し,克
く穀苦 に打克 ちた ること3.師
道高等学校並 に吉林省公署当局の厚意に依 り準備万端 はさることなが ら,講
習帰還中を通 し甚大 なる援助を受けた ること4.講
習会場並 に寄宿舎の位 置が吉林市衛都心よ り遠隔の地 (約二里)に
在 り,加
応ゝるに交通極めて不便 に して,教
育的環境が 甚だ勝れた ること5.可
成 り良く訓練 された る学生 と寄居 を共 に し,互
に啓発 さる点の少か らざ りしこと232
入江克己 :近代 日本における植民地体育政策の研究 (第5報) 将 来 に対 す る参考 事項 尚本講習会の結果 を顧みて,将
来の体育国策上参考 とすべ き事項 を挙 ぐれば,左
の如 し1.本
邦,地
方中心的指導者 と しての一般的素質は現状に於 ては優秀 なるものに非ず,将
来可成 り 急速 に之等指導者の素質を改善 し,向
上せ しむ る方策を講ず る必要あるを痛感す2.訓
練は必ず しも苛酷に過 ぎた りとは思料せず,将
来の本邦国民体育運動の中心的指導者た るの 資質向上を期せんが為には,今
回の訓練程度を以て最低限度 とす3,本
邦学校体育科の内容は生理衛生 をも包括す るため,其
の内容の頗 る広範囲なるに比 し,今
回 講習期間は必ず しも十分 なりとは思料せず,更
に期間を延長実施す るの必要あるを認む4.女
子体育指導者 と して必要欠 くべか らざる女子指導者の数極めて微 々たるものに して,加
之, 一部を除きては一般的に其 の素質極めて低位 な り。将来優 良且多数の女子指導者の養成 を考慮せ ざれば,女
子体育の振興は容易 に期待 し得 ざるものと思料す。6)J(2)学
校体 育衛 生地 方講 習会 の開催 この中央講習会で講習を受けた各省の代表が,帰
任 して教授要 目を伝達,講
習 してい く手法がと られ, この中央講習会の後,各
地方 において伝達講習会 ともいうべき講習会が実施 され ている。 「 学校体育衛生地方講習会は,五
月開催 されたる中央講習会 に引続 き各省,特
別市主催 のもとに全 国各地 に於て開催 された。講師,指
導員は何れ も中央講習会に出席 し,十
日間に互 る厳格 なる訓練 を受けて帰任せ る各地代表者が これ に当 り,本
部か らも体育,衛
生関係講師を各省に派遣 して, こ れが指導,援
助を為 した。 地方講習会開催 に関 しては各省,特
別市 に其の方法を一認す ることと し,各
地実情 に適合せ る方 策に依 て新制学校体育教授要 目の可及的速やかなる普及,伝
達を講ぜ られんことを希望 したが,各
省講習会の方針,内
容に就 ては中央講習会の方針 に基 き,全
国一様 に極めて厳格 なる訓練,統
制下 に実施 されたことは特筆すべ きことである。只管下教職員 に対す る普及,伝
達方法に就 ては,各
省 か ら事情 を異にす るが為 に,種
々なる方法が講 じられたことは極めて自然のことであるが,こ
れ を 分類すれば,大
要左の四種類 に分けることが出来 る。 一,管
下各県 (校)の
代表者を一箇所乃至数箇所 に集め,
これに伝達講習を為 した る後,受
講, 帰任せ る (校)代
表 に依 て各県下 (校内)教
職員に指導,伝
達せ しめたるもの 新京特別市, 奉天,龍
江,吉
林,錦
州,熱
河,牡
丹江,三
江,通
化,間
島,興
安南,興
安東,興
安北,(各
省) 二,右
の方法に依 り帰任せ る各県代表者を講師と して,謙
講習会 を開催,指
導せ しむ るせ しむ る と共 に,更
に省 よりも講師を派遣 して, これが指導の徹底 を期 した るもの 濱江省 三,省
本部指導班を編成 し, これ ら各県下 に派遣 して,県
管下教師の比較的大多数者 に直接指導 伝達せ るもの 安東省 四,省
管下全教職員を一箇所 に集め,伝
達講習会 を開催せ るもの 黒河省 然 し乍 ら右の中 (―)に
該 当す るものの中にも各 々事情を異に して,内
容の細部 に互 りては各省 の特異点を見出 し得 るのであるが,中
でも新京特別市は各校の代表 を数名宛集めて講習 し,奉
天省 では管下師道学校所在地四ケ所で開催 された ことは,夫
れ も各省市の事情か らして極めて適宜の方 法を採 りたるものと考へ られ る。 又 (三)の
場合における安東省の如 きは可成 り徹底せ る指導方法 を採 ったのであるが, これ に就鳥取大学教育学部研究報告 教育科学 第 37巻 第
2号
(1995) ては長時間に互 り省県並に講師の間に少か らぬ努力の払われたることは否 し難い。更 に (四)に
於 ける黒河省の方法は本省の特殊事情か らして,始
めて斯の方法を採れ るものと考へ るが,省
県当事 者の労を多と しなければならない。 以上地方講習会は五月三十 日,龍
江省を先駆 と して,八
月三十一 日,安
東省講習会の終 了に到 る 三ケ月に互 り,全
国的に実施 されたのであるが,こ
れに動員 された教師は講師,講
習員 を合 して三, 五 〇〇名に上 り,尚
姦に示され ないものの他,各
地 に於 て部分的に実施 された各所の講習会を合す れば,可
成 りの数 に上 るのであるが,遺
憾 なが ら確実の数を示 し得 ない。然 し中央,地
方 の講習会 を通 し,斯
の如 き多数の講習員 を動員 し,又
其の範囲が全国凡有地域に互 りたることに於 て,要
目 公布第一年 目と しては実に画期的の成果 を収め得た るものと謂へ る。151J(3)錦
州省学校体 育衛生講 習会 の場合 こう した地方における体育衛生講習会実施状況を錦州省の場合 にみてみたい。錦州省では 7月 4 日か ら同 9日 までの 6日 間にわた って第一国民高等学校で開催 されている。 「 講習第一 日 七月四 日 天候晴 錦州省主催の学校体育衛生地方講習会が今 日か ら五 日間の 日程で第一国民高等学校 を会場 に開 催せ らる。午後六時,九
十余名の講習員は元気に満 ちつつ師道学校の指定宿舎に集合,七
時 よ り 校庭 に入舎式が挙行せ らる。合 田,胡
講習員 より講習心得 につき訓示があ り,つ
いで部隊編成, 小隊長及分隊長の決定があ り,点
呼演習を数回なす。 講習第二 日 七月五 日 天候晴 深夜宿舎に雨の音 を聴 く。明 くれば雨は晴たれ ど,校
庭 の泥渾甚だ しき為,
日本建 国体操 は中 止 となる,前
六時三十分,胡
指導員 に引率せ られ,隊
伍 を整へ て会場 に向応ゝ。・・・・ 八時四十 分よ り礼堂 に於 て開会式が行はる。金祝学官開会の挨拶をな し,国
歌合唱,帝
宮追拝 の後,講
師 先生の紹介がある。次に民生庁長の訓示がある。文教科長の訓示は大要如左 『 教育の第一義は端的に言応、と「 忠良なる臣民を作 ることJで
ある。学校教育にあ りては智育, 体育を併せ施 し,以
て忠良なるところの臣民を養成す るのである。体育は身体を強健 にす ること のみが 目的ではない⑤体育に依 って健全 なる国民精神を鍛練,陶
冶す るのが体育の第一義である。 諸君は五 日間の会期中に充分に精神を鍛練 して戴 きたい,そ
れで帰校の上は大いに体育 を奨励せ られ て,従
来の智育偏重の弊 を矯正せ られ,体
育精神 とその技術 とを地方青少年 に遺憾 な く伝達 して戴 きたいのであ ります。』 次に師道学校長,来
賓を代表 して懇切 なる祝辞を下 さる。・・・・ 十時より愈 々 日課 になる。 二時間に亘 り三沢講師が学校体育の要 旨,新
体育要 目が出来 るまでの経過,学
校教練 の 目的 など について詳細 なる講義を して下 さる。 年後は演習である。昨夜の雨に草木は緑 を増 し,校
庭は適度の湿気あ り,
日は照れ ども暑か ら ず,風
吹け ども砂塵 を見ず,恵
まれたる天候である。中原指導員の教練基本実習 と合 田指導員の 基本実習が各二時間宛行はる。講習員は一名の落伍者 もな く,熱
心に学習す。四時五十 分,今
日 の課業を終 り,師
道学校宿舎に帰る,校
庭 にて胡指導員よ り自衛体操の指導を受 く,九
時半点呼, 自習後十時消灯。 講冒第三 日 七月六 日 ・・・・ 八時,会
場校庭に於 て朝会 を行応、。・・・・ 尚ラ ッパ吹奏の下 に 日満両国旗 の掲揚あ り。 国旗 は級翻 とひ るがへ り,澄
んだ ラ ッパの音色は魂 の奥底 にまで 自ら頭 の下が るを覚 えた234
入江克己:近代 日本 におけ る植 民地体育政策の研究 (第5報) り。・・・・ 第一,第
二限は大塚講師の『 学校衛生』 に関す る講義に して,共
の説明の平易,徹
底せ ること,満
堂 の講習生 を して決 して忘れ さる能 は しむ るが如 し。第三,第
四限は呉講師 の 『 唱歌 と遊戯舞踊』 に関す る概編的説明なりき。『 通訳無 き為め,些
か理解困難 なりしも,塗
板 の文字説明によ り略大概 を察 し得た り』。第五,第
六限ハ呉講師の唱歌,遊
戯の実科 な り。其 の 熱心,懇
切 なる指導は正に男子も遠 く及ばざるの感を抱か しめた り。第七,第
八限は合 田指導員 の基本体操 あ り,炎
天の下皆よく猛訓練 に堪へた り。・・・・ 四時五十分,課
業 を終 りて宿舎 に 帰 る。・・・・ 自習後 十時消灯。 日昼の疲れ の為か,雑
談者の声 を聞かず,皆
安 らかな眠 りに 入 りしが如 し。 講習第四 日 七月七 日 ・・・・ 五時五十分,
日本建国体操第一操,第
二操 を レコー ドに合はせて演習す。・・・ 。今 日ハ七月七 日,
日支事変一週年記念 日に当るので,校
庭 に 日満国旗掲揚式を挙行 し,英
霊に対 し 奉 リー分間の黙蒔 を捧 ぐ。八時よ り十時まで大塚講師の学校衛生講和がある。前 日を継承 して教 授衛生,体
育衛生,学
校環境衛生,学
校救急法 につき懇allなる説話がある。・・・・ 十時か ら中 原指導員の教練解説,方
向変換,隊
形変換があ り,直
ちに,そ
れが演習を行ふ。午後は羽淵,馬
指導員 よ り応用操,競
技 の指導 を受 く,
・・・ ・ 宿舎 に於 て 日本唱歌『 日の丸』,『兵 隊 さん』, 『 数へ歌』の歌詞,歌
曲を練習す。就寝十時。 講習第五 日 七月八 日 ・・・・ 五時五十分,合
田指導員の点呼を受 く。 日本建 国体操は昨 日と同 じく,第
一,第
二操 を レコー ドに合せ て練習 したが,皆
間違はなか った。。・・・ 八時,校
庭 に於て朝会が行はれた。 宮城進拝,
日満両国旗の掲揚等何時 とせ変 りは無か った。今 日も昨 日に変 らず快晴,教
へ る方 も, 教へを受ける方 も全身 に汗び っしょりであ ったが,昨
日に較べて微風であったが,些
か乍 ら疲労 を救 って呉れた。・・・・ 此の度の講習会は僅かに五 日間ではあるが,其
の 日程時間表 よりみれば,普
通の講習会の十 日 間に相 当す ると思応、。・・・・ 額に,手
に,全
身 に汗を流 して活動す る事は愉快である。・・ ― 又運動 中或は就寝前の数刻をお互に通 じに くい言葉 を以て手 まね, 口まねで相手 に自分の意思 を通 じ合応、事は大変面 白い事である。 昨夜 もある満人の講習生が『唱歌,遊
戯』で習 った『 兵隊さん』の顔 を教へて欲 しいと言 って, 紙 と鉛筆 を持 って来たが,其
の教を乞遮ゝ態度は実 に熱心であ り,真
剣である。・・・・ 此の度 の 講習会で只惜 しく思遮ゝ事は予想以外 に 日系の講習生が少か った事である,せ
めて五,六
人で も居 れば,よ
り以上に我々日本人の気持を理解 して呉れる機会が多か ったのではないかと思応、。・・ … 要す るに此の度の講習会は指導者 と して技術乃至教授上,或
は民族協和の点より見ても頗 る有意 義であ り,且
愉快であ った。 講習第六 日 七月九 日 五時四十分,起
床。・・・・ 国旗掲揚式 に文教科長 出席せ られ,訓
示を賜 る。・・・・ 三沢講 師二時間に亘 って体育の理論を講話す,即
如左 ◎基本操,挙,振 ,廻
旋の要領 ◎応用操 懸垂,跳
躍,倒
立及転回,3nt助運動の要領 ◎遊戯 及競技 跳,走 ,投,球
投,障
害競争について ◎ 団体操 ・・・・ 各操の特徴を体得 して指導 す ること・・・・ 教時 に体育を指導す るに当 り大体次の如 く教材を配列す るを要す 準 備 運 動―(1)教
練 操(2)基
本 操主 運 動 ―
(3)応
用 操 は)遊
戯 競 技 操 整理運動―(5)整
理操鳥取大学教育学部研究報告 教育科学 第 37巻 第
2号
(1995) ・・・・ 講義終 りて,正
午 まで昨 日に引続 き団体競技を練習す,
・・・・午後三時四十分,講
堂に於 て講習会修了証書授与式拉に閉会式を挙行す,
・・・・ 四時五十分,無
事終了す。6)J そ して,次
のような「 総括Jが
なされている。 「 今回の講習が従来兎角体育指導者の技術の末補 に走 り,又
遊 山的講習会 に堕す るに対 し,一
大警 告 を発せ るものの如 く,講
習員 に興へた る精神的効果 の大 なるものあ りと信ず,次
回講習会へ参考 の意見を挙 ぐれば左の如 し ―,体
育指導者の一般的素質は尚低位 なるの感を深 くす,之
等素質の改善,向
上の上にも,今
時の 如き講冒会の数多きを望む,二
,本
講習会の内容は頗 る広範囲に して,短
時 日に指導,講
習せ る為, 多少質的不十分なるを感ず,今
後は範囲を縮小 し,反
復練習,実
際的に指導の時間を興 うべきもの と思考す,三,各
操個 々の運動の説明,指
導 と同時に,指
導法理論 の実際を加味 したき事,四 ,学
校衛生,生
理衛生,救
急法の徹底 を期 し度 き事,五,女
子体育指導者 の素質は最 も低位 に して,其
の改善,向
上は急務 なり,従
来講習会は男子の数多 く,女
子の数微 々たる為,女
子講習の徹底を欠 くの嫌 あり,今
後女のみの講習会開催 をも必要 と信ず。(り 」 その他各省の講習会で注 目され るのは,例
えば安東省では,全
体の教師の34%が
参加 しているが, 「 現在の機構 を以てすれば,学
校体育衛生 は勿論,一
般体育の普及,向
上徹底 を期 し難 しJと
して 「 体育指導監督機関の設置並拡充」のほか,「図解入 り指導書作成 (特二基本操,応
用操を至急す)J, 「 農村民に適せ る団体操 の制定」,「体育衛生設備の加急的整備J,「 女子教員の再教育機関の設置J, 「 其他,体
育参考書の出版JG)等を要求 してお り,指
導者の資質 に対す る焦燥感 をのでかせている。 また黒河省では「 本省 に於ては本講習会のみを以て足れ りとせず,あ
らゆる機会 を利用 し,又
各 県当局を管励 し,一
層要 目の徹底に努め,以
て国防省体育の振興 を期せん とす るものである191」 と 述べ,興
安北省では,講
習会終了後,「当省の如 き 日満蒙露等各民族別学校 の実在す る地域 に於 て は,其
の徹底 を期す る点 に於 て各民族別 に講習会 を実施 し,出
来得 る限 り通訳附講習会は避 くる を可とす,白
系露人中よ りも指導者 となる可 き者 を選抜 し,彼
等 に対す る講習をも実施す る必要あ りQ°Jと
の「 参考意見」 をあげている。(4)体
育 師 の資 質 に関 す る実態 ところで当時の満州国における体育教師の現実は,
どのようなものであ ったのか。既 に上述の報 告 にうかがわれ るが, ここに,興
味を引 くある調査がある。それは,康
徳5年
6月 に実施 された体 育教師の素質 に関す る調査 (「中等学校体育教師素質三関スルー般情況J)が
ある。以下の調査は, 機構改革以前の文教部 (改正後は民生部)が
既に康徳2, 3, 4年
の3年
間にわた って行 なってお り,今
回で4度
目の調査 となっている。教師たちの出身は,男
子では大学体育科程度の卒業者が31 名,体
育専門学校程度の卒業者が57名,中
等学校程度の卒業者が38名となっている。 また女子は, 体育専門学校程度の卒業者が15名,中
等学校程度の卒業者が13名である。 「 国力仲張の基礎た るべ き国民資質の向上は洵に刻下の急務 とす るところであるが,中
でも重要 な 役割 を占む る国民体力増進 と国民精神の涵養 とは,一
に健全 なる国民体育運動の普及,徹
底 に倹つ こと大 なるものあ り。地方 に於ける第一線指導者 と して夫 々地方の中心的存在た る中等学校体育教 師の活動如何は直接懸 って国民体育の振興 に少なか らざるものあるに鑑み,姦
に本邦 国民体育の源 動力たる全国中等学校体育教師につき調査 したる一端 を示す。01)」 受験者数は男子126名,女
子28名の合計154名で,年
令 は平均30.7才,40才
以上が6名
,残
り120 名は22才∼30才代である。試験科 目は,体
育理論な らびに実技,身
体検査,建
国精神理論の3科
日236 入江克己 :近代 日本における植民地体育政策の研究 (第5報)
である。総合成績の結果は,60点 以上を優とした場合
,男
子が
25名で
,全
体の
20%,女
子が4名 の
14%となっている。
資料-3
体 育 科 成 績 男 子 女 子 点 数 頻 数 1 2 7 II 3 I I 2 I 5 9 6 I 3 1 最高 82 最低 29 平打 1916 受験者猿 126 最高 66 景低 34 平身 46、 4 受験者段 28 ‡ 晴4tBttfTBl預 上』常掲 215ベージより脇 専門の体育理論 。実際では,男
子の最高得点が32点,最
低が29点で,平
均49.6点 となってお り, 決 して良いとはいえない。女子では最高が66点,最
低34点,平
均が46.4点 となってお り,男
子と同 様,好
ま しいものとはいえない状況であ った (資料-3を
参照)。 資料-4
建 国 精 神 筆 答 成 績 必 子 女 子 点 数 顔 数 5 7 17 4 1 2 2 5 3 5 4 2 3 l 1 最高 65 最低 15 平均 39,9 受験者数 126 曇高 60 曇抵 15 平均 34、 8 受験者猟 281戦
州目僻行政腰 上】苗掲 216ペー ジより脇 また「 本邦教育の根本方針は建 国精神及訪 日宣詔の趣 旨に基 きて樹立 さるるは,既
に嫡か なること に して,如
何 なる学科 日の担任者 と雖 も,教
育者た る以上は精神 を確 と把握 して,
日常教授の根本 精神 に馴かの過誤無か らんことに努め ざるべか らざるは論を倹たず。QかJと
して試験科 目に「 建 国 精神理論Jを
課 しているにもかかわ らず,男
子の最高が65点,最
低15点,平
均39,9点を示 し,女
子 では,そ
れぞれ60点,15点 ,34.8点
となってお り,「男女共 二何 レモ甚 ダ成績芳 カラズ。Q働」 と当 局は嘆いている (資料-4参
照)。 一方,教
師の体格についても,楽
観できる状態ではなか った。 「 体育科指導者 に於 け る体格 の良悪 は直 ちに以 て指導者の実際指導能力 に影響 し,然
も指導者 の 過去 に於ける体育的訓練の程度のほ ども窺ひ知 らるるものと謂込、べ く,亦
体育科指導者の身体は学 生の模範 と して,如
何 なる心身の労作にも耐へ得 るだけの体力を有す ることは必要欠 くべか らざる 条件 と謂ふべ し,体
格 甲なる者,男
子に於 ては六三%を
示 し,女
子に於 ては実 に三九%の
甚 しき低 悪 なる数字を示 し,残
余の中体格丙,丁
に属す るもの男子三%,女
子一一%と
言応、数字を示す こと は,如
上の意味 よりして体育科指導者 と しての身体的条件は如何 に劣悪 なる状態 にあるかが窺ひ知 らる。(10」 その疾病 に至 っては,「内臓疾患 に於 て肺炎を患ひ居 るもの一名を見 出せ る以外は,殆
ど眼疾た る トラホームに して,男
子に於 て十%,女
子に於 て三%疾
患者を発見せ り,眼
疾 は単 なる技術的指鳥取大学教育学部研究報告 教育科学 第37巻 第
2号 (1995) 237
導 には差 した る影響 を及 さざるものの如 くなれ ども,体
育,衛
生二者極めて緊密 なる関係 に於 て常 に之等の直接指導 に当れ る指導者が,
自身既 に学校衛生上最 も重大視せ らるる限疾患 に して,之
を 自か ら放置 して顧み ざるが如 きは,少
くとも保健体育運動の指導者 と して,其
の資格 を具備せ ざる ものと謂遮、。ODJ状
況であ り,悲
惨 というほか ない。 そ して,「体育の理論遊 に実際,身
体検査及建 国精神 との総合成績に於 て体育科教師 と して其 の 資格 を備へた るものを成績優秀者 と した るものに して,現
状 よりして其の指導能力 に於 て補 々満足 に足 ると謂応、程度 のものなり。●OJと
結論せ ざるをえないというのが実態であ った。(5)体
育担 当官 の設置 康徳5年
には体育 (担当)官
が奉天省,吉
林省,濱
江省,龍
江省,熱
河省,錦
州省,安
東省,間
島省,牡
丹江省,通
化省,黒
河省,興
安南省 に設置され,12月
24日に「 体育担当属官事務要領二関 スル件」が通達 されているが,体
育官設置の理 由は,こ
う述べ られている。 「 政府は国民体力の向上,体
育国策の見地か ら予ねて体育行政組織の拡充,強
化 を計 りつつあ った が,康
徳四年機構改革に伴ひ,民
生部保健司に保健体育科 を設け,之
を して国内学校及社会体育の 指導,奨
励 に当 らしむると共 に,既
成体育諸団体の監督,統
制の任 に当 らしむ ることとな った。 本部組織は一応は之を以て補 々整備 された る感あれ共,一
方地方各省に於 ては未だ之 と直接連繋 ある行政機構を有せざるを遺憾とし,康
徳五年度より各省に体育官・・・・ を配置す ることとなり … 。・ た り。尚,本
体育官は民生庁文教科 に所属せ しめて,専
ら管下学校体育の指導,監
督の任 に当 ることとなり,体
育連盟事務局関係,其
他の社会体育諸団体の事務 をも,同
時 に夫 々の事情 に応 し, 管掌 して,以
て学校,社
会両面の緊密なる連繋を保 ち,健
全,円
満 なる国民体育運動 の普及,発
達 に努む ることとせ り。住つJ この体育官の設置が,先
の講習会や試験の結果 に影響 されたものではないとはいいきれ ないだろ う。体育官の具体的な所掌は,12月
の通達 によれば次のようなものであ った。 「 一,体
育の指導奨励に関す る事項 学校体育の正課及課外運動の指導 に関す ること,学
校教職員の体育運動に関す ること,学
校 体育の奨励 に関す る諸施設の指導,助
成 に関す ること,体
育週間に関す ること,建
国体操 日 に関す ること 二,体
育施設 に関す る事項 学校所属の体育設備の指導,監
督に関す ること,各
種体育運動施設の設置並 に指導,助
成 に 関す ること,体
育運動施設及体育団体の調査に関す ること, 三,体
力の測定に関す る事項 学生の体力測定に関す ること,国
民体力の検査に関す ること,体
育の統計に関す ること 四,学
校体育教授要 目に関す る事項 学校体育教授要 日の普及,徹
底 に関す ること,学
校体育教授要 目の指導,監
督 に関す ること 五,体
育諸団体の事務管掌に関す る事項 六,其
の他体育 に関す る事項。O働J238
入江克己 :近代 日本における植民地体育政策の研究 (第5報)あ と が き
ところで,こ
の学校体育教授要 目は,ま
さに昭和11年6月 に改正 された学校体操教授要 日 (以下 教授要 目)の
移植以外の何 もので もなか った。 この教授要 目は,昭
和10年3月 の貴族院 における 「 政教刷新 工関スル決議Jな
らびに「 国体 明徴 二関スル決議J,さ
らには同年 8月 の「 国体 明徴 エ 関スル内閣声明J等
一連の国体明徴理念を背景に設置された教学刷新評議会の方針である「 教学刷 新二関スル答 申Jに
そうものであ った。 同教授要 目は,「生徒児童 ノ健全ナル発達 ヲ期 シ,人
格 ヲ陶冶スルニ於 テ遺憾ナキヲ期 セ ラ レル ベシ」 と述べ るとともに,「教授上 ノ注意Jと
して「 一,身
体及精神ハ之 ヲ調和的工発達 セ シムル 要アル ヲ以テ体操科 ノ教授二際シテハ身体 ノ修練 ヲナス ト共 二,其
ノ精神的効果 ヲ発揮 セ シムル コ トエカムベシJ,「二,体
操科 ノ教材ハ各特徴 ヲ有 シ,互
二相衛 リテ体操科 ノロ的 フ達成 スルモ ノナ ル ヲ以テ其 ノー部 二偏スルガ如キ コ トアルベ カラズ」 と精神主義的な体育 と教材配当の在 り方 を強 調 しているが,こ
れは,ま
さに学校体育教授要 目の指導要頂 の方法原貝Щl)(2)に 対応 してい る。 ま た同教授要 目は,岩
原 拓を委員長 に栗本義彦,森
秀,小
笠原道生,野
口源三郎,大
谷武一,二
官文右衛門等12名の委員 によって編成された。 同要 日は,西
欧的 な体育は「 胸 の体育Jと
い う点で特徴的であ り,そ
れ に対 して 日本 の体育 は 「 腹をね る体育」 に「 日本的性格」 もつ ものであると強調す る一方Q),教
材の 日本語化,
自然化, 興味化,律
動化,さ
らには心身の発達段階や個性 に応 じた方法化 のほか,指
導計画の立案 (目標 の 把握,教
材の調和,発
展的排列,地
域 。設備・ 季節天候,循
環漸進,性
別)と
指導法 (自覚的練習 と運動習慣の形成,態
度の育成,事
故防止)を
強調 し,各
教材では体操では号令を廃 し,「歩及走」, 特 に「 正常歩」を加え,「遊戯及競技」では走・ 跳 。投・ 各種 (追逃・ 運搬・ 押引・ 攀登),ボ
ール 運動のほか唱歌遊戯及行進遊戯 (体育 ダンスを含む)等
教材の運動の形態 と質 によ り分類 の形式 を ととのえ,運
動習慣 の定着,環
境 。施設 に応 じた指導原則,な
かでも川 回英明が唱導 した循環漸進 という学習系統論等大正 自由体育の成果 を取 り込 もうとす る姿勢をうかがわせているが,そ
れは, 同時に見方を変えれば大正 自由体育の自己疎外の何 ものでもなか った。)。 ―,西
暦,和暦,満
暦 を並記 した。 一, カタカナ文を一部 ひ らがな文 と した。 ―,ル
ビの一部 は引用者 とす る。注
1.学
校体育教授要 目の制定 とその理念 民生部『 満州国体育行政概要』1939年 81ページ 同 前 113∼■5ページ 同 前 81∼84ペ ージ 傍点引用者 例 凡£取大学教育学部研究報告 教育科学 第37巻 第