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日本義日肢装具学会誌本義肢装具 Vol. 学 34 会 No. 誌 特 集 Vol. 34 No 小児整形外科疾患と装具 ペルテス病の装具治療 中村直行 1) キーワード ペルテス病, 保存治療, 装具治療, コンテインメント治療, 免荷 抄録ペルテス病治療に関して,

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Vol. 34 No. 3 2018

小児整形外科疾患と装具

ペルテス病の装具治療

中 村 直 行

1) キーワード ペルテス病,保存治療,装具治療,コンテインメント治療,免荷 抄録 ペルテス病治療に関して,近年世界の注目は手術治療に傾倒している.しかし,本来ペルテス病は self-limited な疾患であることを考えれば,今後も装具を利用した保存治療が治療選択肢として大きなも のであることは変わらないであろう.一方で,いかなる治療を行っても,いずれも極端に悪い成績を伴 うこともなく,成績が不良でも生命危機をもたらす疾患でもないため,多くの治療装具がいまだに現存・ 濫立しており収束する気配もない.本稿では,ペルテス病に対する保存装具治療のこれまでの経緯,そ して,現在,本邦で多く利用されている代表的装具の画像供覧,および,使用されている先生方のコメ ントを掲載する.

1910 年,Legg, Calvé そして Perthes によって本疾患が 報告されて以来,その治療法は多くの変遷を経ている.そ して,疾患確立後 100 年を経た 2010 年頃はそのメモリア ルなタイミングに多くの振り返りと今後の展望が世界中の 学術集会で議論された.その頃の学術論文を見てみると, Hefti1)に よ る European Pediatric Orthopedics Society

Member を対象とした治療選択アンケート調査では,年長 児重症例でも保存治療を選択する医師が少なくなく,本邦 のマルチセンタースタディ2)でも LCPD の治療に対して 80%以上の患者が保存治療を行われていた.しかし,いず れの興味深い研究も,その後 10 年を経ていることを考え ると,昨今の日本および世界の実情が知りたい時期が再来 している.そして近年,Journal of Pediatric Orthopedics を代表とする小児整形外科海外誌を閲覧していると,本疾 患に関して accept されているものは,ほぼ手術療法のみ といっても過言ではない.あたかも,欧米の興味は,Triple osteotomy に代表されるような,より侵襲的な手術療法に 傾倒している印象である.積極的な観血介入の結果,より 良好な治療成績が得られるのか,模索を続けていくことは 重要ではあるが,本来,ペルテス病は self-limited な疾患で あるため,今後も保存治療が有力な選択肢であり続けるこ とは疑いなく,そのため,本治療に対する装具治療に関し ての見識を深めることは,とても重要である.さらには,小 児人口の減少よりも,小児整形外科医の減少の方が著しい 昨今3),稀少疾患に対する治療知識の継承は,先人達と同 じ過ちを繰り返さないためにも非常に喫緊の課題である. 歴史的初期の保存治療は,完全免荷と長期関節固定で あった.しかし,これは入院ベッド上安静が基本であり, 長期入院が難しい諸外国では,アレンジがなされていくこ とになる.長期関節固定の是非が問われ,行うとしても牽 引程度で病初期の極短期間が推奨された4).その後,免荷 装具による外来治療の流れに向かい,Evans ら5)は,ベッ ド臥床での牽引治療と Snyder sling 治療で差がないこと を報告した. 保存治療は,亀ヶ谷6)の言うように大きな天秤の上で揺 れていると思われる.有利な点として,非侵襲的,レント ゲン被曝が少なく,外来管理で行う限りにおいては医療コ ストが低く,手術リスクはない.一方,不利な点として, 治療期間が長く,治療期間中の何らかの日常生活制限は患 者や家族のストレスとなり,免荷治療であれ,装具治療で あれ,患者がそれを励行することが基本となり,装具 com-pliance 維持のために家族の協力も必要とする.若年者の 特発性大g骨頭壊死症である本疾患は,成人のそれと異な り,自然経過で回復することが最大の特徴であるが,その 一方で,primarily healing までに約 3.5 年という長期を要 することが最大のネックともいえる. ペルテス病の長い治療歴史の中で,1929 年 Paker によっ て示された Containment Concept は,壊死した大g骨頭を 股関節を外転させて臼蓋に内包化し,臼蓋を鋳型として利 用して丸い骨頭を再生しようという,イメージしやすい治

Brace treatment of Legg-Calvé-Perthes disease

1)神奈川県立こども医療センター整形外科 〒232-8555 神奈川県横浜市南区六ツ川 2-138-4 Department of Pediatric Orthopaedic Surgery, Kanagawa Children Medical Center 2-138-4 Mutsukawa, Minami-ku, Yokohama-shi, Kanagawa, 232-8555 Japan Naoyuki NAKAMURA(医師)

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療方針であるため広く受け入れられた.そして,その概念 は本症に利用される多くの股関節外転装具に利用されてい るが,Casting の有無,荷重,非荷重,症例による適正な外 転角度の問題等,結論が出ていない要素も多い. 国内における最も優れた治療成績報告は,1990 年の Modified A-cast 法を利用したもの7)で,実に 37/40 例が骨 頭球形度の保たれた Stulberg I/II に帰結しているが,その 報告以後,単独保存治療のみで治療成績良好群が 93%を超 えるような学術報告はない.当科も包括的には同じ 93% を達成しているが,年長児重症圧壊例には手術療法を併用 した結果である8-10) Containment Concept を踏襲した歩行型装具の利点6) は,① 新生骨の形成刺激,② 廃用性筋萎縮の予防,③ 関節 軟骨細胞への栄養供給,④ 骨頭成形効果の維持,である. Tachdjian 型装具に代表されるような三変形ソケットを利 用した坐骨免荷型股関節外転歩行装具は,原理的には免荷 と Containment が達成されるはずである.Patrie Cast や Newington 装具は Containment は意識されているが歩行 荷重型装具である.西尾型装具は 25 度の股関節外転と免 荷がなされる設計となっている. 過去の研究では,一般的に Containment 装具の方が, Noncontainment 装具より治療成績はよい.また,Contain-ment 装具の中でも,免荷型と歩行型を比較すると免荷型の 方が成績が良い.Catterall11)や Stulberg12)によるペルテ ス病の natural history 報告によると,成績不良例は 45%前 後とされる.何らかの治療介入をするからには,無治療例 より良好な成績が得られるべきだが,実際に Containment Concept に則った装具は,それよりは良好な成績が報告さ れている. Containment が本症治療において大切であることは確 かだが,その一方で,免荷については議論が多い.Petrie13) や田村の報告7)を見ると,外転荷重型装具で良好な成績を 得ている.これは Containment 得られていれば,荷重は 良好な成績をもたらすことを示しているように思われる. しかし,両者の装具は下肢のポジションをかなり限定的に し,決して歩きやすいものではない.それらが考慮され, より動きやすく軽い Atlanta 装具が開発された.45 度の 外転角に荷重を許容したその装具は,初期に良好な成績が 報告された14)が,その後,他の装具より悪い成績を複数の 研究者により報告され15, 16),混沌としていた.元来,ペル テス病児の気質として,小柄で活発な子が多いことが教科 書的にもよく書かれているが,時としてそれは過剰であり, ADHD like な印象を受けることも少なからずある17).そ のため,脆弱な骨頭への過度の荷重を防ぐ,という点では, 装具の取り外しが簡便であったり,装具をしていても高い 活動性を許容するものは,逆に不満足な治療成績を導く可 能性も否定できない.そのようなおり,2004 年に発表され た Prospective Multicenter Study18)は衝撃的であった.

その中で,そもそも装具のコンプライアンス評価から困難 で,適正使用されているかも不明であり,これまで同様に 科学的に装具治療の有用性を証明することはできないと明 解に記し,Herring は自らの Atlanta 装具すら有用性の証 明は難しいとした.同様の議論は review でもなされてい る6).歩行型装具装着での日常生活における股関節可動域 を重視すると,確実な Containment が失われがちである ことを示した報告もある16) その後,現在に至るまで,誰もが強力な evidence として 治療推奨できるような装具治療の論文は現れておらず,各 医師が思い思いの装具治療を処方しているというのが現状 と考える. ペルテス病は致命的な病気ではなく,また,ある程度自 然に治癒する.予後に影響する最大で不動な因子は,発症 年齢と初期の重症度,この 2 点であることは揺るぎなく, それ以外は,保存治療で使用する装具の違いや手術手技の 違いなどは,正直,あまりインパクトのある差異を生んで いないため,1 つの装具治療や 1 つの手術手技に集約され ることもなく,今日に至り,そして,今後もこの傾向は続 くことが予想される. 以下は,本邦で利用されることの多いいくつかの代表的 な装具を紹介する.紹介にあたって,3 番以下は自身での 使用経験がなかったため,これらの装具の治療成績につい てこれまで学術報告をされている第一線の先生方から画像 の提供とコメントをいただいた.この場を借りて,ご協力 いただきました佐賀整肢学園 桶谷寛先生,京都府立医科 大学 岡佳伸先生,宮城県立こども病院 高橋祐子先生, 四国こどもとおとなの医療センター 横井広道先生に深謝 いたします. ⑴ Batchelor 型装具(外転免荷,非歩行型)(図 1) 外転角度は 40 度で対称性に作成するので,安静により 図 1 Batchelor 装具

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股関節浮腫が軽減し,初期症状の可動域制限が改善した後 に装着する.施設によっては,透視下で骨頭壊死域に対し て臼蓋による完全被覆を達成する角度を厳密に模索し,症 例毎の外転角度を求めている所もある.膝はハムストリン グの緊張を減弱するため 20∼30 度軽度屈曲位.腓骨頭部 は除圧.近位部と遠位部は装用性の改善のためフレア処 理.基本的には完全免荷のため,サイドの肘置きをショー トにカットし,外転装具が収まるように対応したペルテス 専用車いす(ペルテスカー)と併用する.ペルテスカーに は,装具を置くための台の増設や転倒防止仕様が付加され ている. ⑵ Tachdjian 型装具(外転免荷,歩行型)(図 2,図 3) おおよそ,本邦で最も多用されていると思われるペルテ ス用装具.しかし,確実な坐骨支持免荷を達成する三変形 ソケットの作成,および,健側に補高靴利用し患肢免荷と する構造と,その機能を確実に履行する歩行術の体得は簡 単ではなく,我々の見解としては,8 歳以上でないと本装 具は上手く使いこなせないと考えている.時々,他施設で 作成された同装具を着用し患肢の足先をしっかり接地し歩 いてしまっている患児を街で見かける. ⑶ 西尾式装具(外転免荷,歩行型)(画像,コメント:佐 賀整肢学園こども発達医療センター 桶谷寛先生(図 4,図 5,図 6)) 患肢は,股関節外転 30 度,屈曲 20∼25 度,内外旋中間 位に保持している.坐骨支持部の下に支柱があり,動きや すくするため膝関節を屈曲できるようにしてある.仮装具 の段階で装具装着し,立位でレントゲン撮影して,目的の 図 2 Tachdjian 装具 図 3 Tachdjian 装具部分詳細 図 4 西尾式外転装具

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外転角度が得られているか確認する. 西尾式装具の悪い装着例は、骨盤帯のベルトをゆるめて, 図 5 右のように支柱を健側後方に逃がして,患肢をついて 使用するものである. 西尾式外転免荷装具の確認部位は,(A)靴部は,正しい 装着では摩耗しないが,正しくないと靴の先端が摩耗して くる.(B)支柱接地部のゴムも,正しい使用では前後が削 れてくるが,悪い例では患側が摩耗してくる.(C)踵から は靴の中を見えるようにしている. ⑷ New Pogo-Stick 装具(外転免荷,歩行型)(画像,コメ ント:京都府立医科大学 岡佳伸先生(図 7,図 8,図 9)) 本装具の利点.股関節の可動性が良好に保て,外転角度 が調節可能.着脱が簡便で,通院治療で対応できる. 装具作成にあたっての注意点.基本は大gソケットの フィッティングが良好であること,坐骨支持部が大きすぎ ないこと,装具膝 joint の位置は座位姿勢を基本に合わせ ること. 装具使用にあたっての注意点.2∼4 w の入院で階段を 含めた歩行訓練をしてから退院,外来通院となる.歩き方 図 5西尾式外転装具装着例 図 6 西尾式外転装具のチェックポイント 図 7 New Pogo-Stick(NPS)装具

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は遊脚期に外転を意識したややぶんまわし歩行とし,立脚 期に坐骨がしっかり支持部に乗っていることを確認する. 学校では教員側に直接説明して,可能であれば,階段を避 けるように教室を 1 階に変更したり,教室での席周囲にス ペースをつくったりする. ⑸ Toronto 型装具(外転荷重)(画像,コメント:宮城県 立こども病院 高橋祐子先生(図 10)) 約 45°外転位で,股関節が内転や過外転を矯正されてない かどうか大gカフの位置の確認,立位での全体のアライメ ントの確認を行う.また股・膝関節の屈曲は可能であるこ とを確認する.装具装着での股関節 X 線にて Containment が得られているかの確認を行う. 装具装着により股関節外転拘縮をおこさないように,理 学療法で,股関節内転も含めた可動域訓練を行う. 歩行は両松葉使用にて両足接地でぴょんぴょん飛ばない ように,4 点歩行を指導する.立位時の注意点として,両 股関節・膝関節屈曲位のまま両松葉によりかかったまま立 つと股関節への圧を高めるので,立位保持している時間は 図 10 Toronto 型装具 図 8 NPS 装具での階段昇降と座位姿勢 図 9 NPS 装具詳細

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股関節伸展位を保つこと,装具装着で片脚立位をしないよ うにすることを指導する. ⑹ Atlanta 型装具(外転荷重)(画像:国立病院機構四国 こどもとおとなの医療センター 横井広道先生,コメ ント:筆者(図 11)) Xp にて壊死部の十分な内包化が得られていることがわ かる.簡便で自由度が高い装具であるが,その分,患児の 活動性は増すことが容易に予想される. 文 献

1 )Hefti, F. & Clarke, N.M. The management of Legg-Calve-Perthes’ disease : is there a consensus? : A study of clinical practice preferred by the members of the European Paediatric Orthopaedic Society. J. Child. Orthop. 1, 19-25 (2007). doi: 10.1007/s11832-007-0010-z

2 ) Kim, W. C. et al. Multicenter study for Legg-Calve-Perthes disease in Japan. J. Orthop. Sci. 11, 333-341 (2006). doi: 10.1007/s00776-006-1021-1

3 )中村直行.【小児整形外科の過去・現在・未来】(Part 4)臨床〈未来〉小児整形外科の未来に期待すること. Bone Joint Nerve 7, 641-646(2017).

4 )Howorth, M.B. Coxa plana. J. Bone Joint Surg. Am.

30-A, 601-620 (1948).

5 )Evans, D.L. & Lloyd-Roberts, G.C. Treatment in Legg-Calve-Perthes’ disease ; A comparison of in-patient and out-patient methods. J. Bone Joint Surg. Br. 40-B, 182-189 (1958).

6 )Kamegaya, M. Nonsurgical treatment of Legg-Calve-Perthes disease. J. Pediatr. Orthop. 31, S174-177 (2011). doi: 10.1097/BPO.0b013e318223b4a6

7 )田村 清 他.Modified A-cast 法によるペルテス病 の治療.中部日本整形外科災害外科学会雑誌 33,598-600(1990).

8 )Nakamura, N. et al. Rotational open-wedge osteotomy improves treatment outcomes for patients older than eight years with Legg-Calve-Perthes disease in the modi-fied lateral pillar B/C border or C group. Int. Orthop. 39, 1359-1364 (2015). doi: 10.1007/s00264-015-2729-3 9 )中村直行 他.ペルテス病保存治療における在宅と入 所治療成績の比較.日本小児整形外科学会雑誌 16,6-10 (2007). 10)中村直行 他.ペルテス病に対する外転免荷装具療法 の成績.日本小児整形外科学会雑誌 14,57-60(2005). 11)Catterall, A. The natural history of Perthes’ disease. J.

Bone Joint Surg. Br. 53, 37-53 (1971).

12)Stulberg, S.D. et al. The natural history of Legg-Calve-Perthes disease. J. Bone Joint Surg. Am. 63, 1095-1108 (1981).

13)Petrie, J.G. & Bitenc, I. The abduction weight-bearing treatment in Legg-Perthes’ disease. J. Bone Joint Surg. Br. 53, 54-62 (1971).

14)Purvis, J.M. et al. Preliminary experience with the Scot-tish Rite Hospital abduction orthosis for Legg-Perthes disease. Clin.Orthop. Relat. Res. 49-53 (1980).

15)Martinez, A.G. et al. The weight-bearing abduction brace for the treatment of Legg-Perthes disease. J. Bone Joint Surg. Am. 74, 12-21 (1992).

16)Meehan, P.L. et al. The Scottish Rite abduction orthosis for the treatment of Legg-Perthes disease. A radiographic analysis. J. Bone Joint Surg. Am. 74, 2-12 (1992). 17)Hailer, Y.D. & Nilsson, O. Legg-Calve-Perthes disease

and the risk of ADHD, depression, and mortality. Acta. Orthop. 85, 501-505 (2014). doi: 10. 3109/17453674. 2014. 939015

18)Herring, J.A. et al. Legg-Calve-Perthes disease. Part II : Prospective multicenter study of the effect of treatment on outcome. J. Bone Joint Surg. Am. 86-A, 2121-2134 (2004).

図 11 Atlanta 型装具と装着時股関節正面 X 線像

参照

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