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(1)

2型糖尿病の病態と成因解明への新たな展開

ー炎症、歯周病、レジスチンー

愛媛大学大学院医学系研究科 分子遺伝制御内科学(糖尿病内科)( )

大澤春彦

糖尿病・歯周病に関する 医療者向けフォーラム 松山 松山(3/11/2012)

インスリンの作用不足

による

慢性の高血糖状態

主徴とする代謝疾患群

糖尿病とは

主徴とする代謝疾患群

インスリンの効果が弱いために、血糖値が

持続的に高くなっている病気

糖尿病が 強く疑われる人

近年、日本人糖尿病患者数は、急増している

740万人 890万人 糖尿病の可能性が 否定できない人との合計 1,620万人 2,210万人 2002年 2007年 厚労省 「国民健康・栄養調査の概要」 890万人 糖尿病患者数:2000年 17,100万人 2030年 36,600万人 2,210万人 2007年 世界でも急増が予想されている (WHO)

糖尿病は種々の合併症をもたらす

網膜症 腎症 神経症 年間約4,000人の人が失明 年間10,000人以上の人が新たに腎透析 手足のしびれ、痛み・足壊疽・排尿障害 等 動脈硬化症 心筋梗塞、脳梗塞は一般人の3~5倍 寿命は日本人一般に比して短い 死亡時平均年齢: 67.3歳 男性で9.4歳、女性で13.5歳短い

血糖コントロール

: 摂食時 (エネルギー貯蔵)

肝臓 肝臓 インスリン インスリン 膵膵細胞細胞 糖の放出 糖の放出 - - 正常血糖 正常血糖 消化管 ブドウ糖 ブドウ糖 糖の取り込み 糖の取り込み 骨格筋 骨格筋 脂肪 脂肪 + + 絶食時(異化作用)と 摂食時(同化作用)の 切り換えに重要なシグナル

糖尿病の成因

1.インスリン分泌低下 膵β細胞の破壊等によりインスリンの分泌が悪いこと 2.インスリン抵抗性 インスリン標的組織がインスリンに対して鈍い あるいは インスリンがインスリン標的組織において効きにくいこと

(2)

肝臓 肝臓 インスリン分泌低下 インスリン分泌低下 ((原因原因)) インスリン インスリン 膵膵細胞細胞 糖の放出 糖の放出 - - 高血糖 高血糖 インスリン抵抗性 インスリン抵抗性 ((原因原因))

血糖コントロール

血糖コントロール

((糖尿病

糖尿病

))

消化管 ブドウ糖 ブドウ糖 糖の取り込み 糖の取り込み 骨格筋 骨格筋 脂肪 脂肪 + + インスリン抵抗性 インスリン抵抗性 ((原因原因)) インスリン作用低下 インスリン作用低下 ((シグナルの故障シグナルの故障)) 糖排泄閾値 ≦ 尿糖 (結果)

要約

(背景)

1.インスリンは、絶食時と摂食時の代謝パターンの切り換えに 最も重要なシグナルである 糖尿病 分泌低 ある 抵抗性 2. 糖尿病は、インスリン分泌低下あるいはインスリン抵抗性 が原因であり、尿糖は結果である 3. 糖尿病では、インスリン作用が不十分となり、必要な所で 糖の利用や貯蔵がうまくでず、余った糖が血管内に停滞する

I. 2型糖尿病の成因としての炎症

2型糖尿病の病態と成因解明への新たな展開

ー炎症、歯周病、レジスチンー

II. 炎症とインスリン抵抗性の鍵分子

ーレジスチンー

III. 歯周病とレジスチンとの関係

インスリン抵抗性 インスリン抵抗性 インスリン分泌低下インスリン分泌低下 遺伝因子 遺伝因子 2 2型糖尿病はインスリン抵抗性とインスリン分泌低下によって型糖尿病はインスリン抵抗性とインスリン分泌低下によって 特徴づけられる 特徴づけられる (脂肪組織、骨格筋、肝臓) 膵細胞 インスリン標的組織 (日本人糖尿病の95%) 環境因子 環境因子 肥満 運動不足 過食 ストレス 加齢 インスリン作用不足 インスリン作用不足 2 2型糖尿病発症型糖尿病発症

脂肪細胞

脂肪細胞

摂食抑制

インスリン抵抗性

レプチン FFA TNF-α レジスチン

脂肪細胞は生理活性物質

脂肪細胞は生理活性物質((アディポカイン

アディポカイン))を分泌する

を分泌する

悪玉

脂肪細胞

脂肪細胞

血栓症

高血圧

レジスチン PAI-1 アンギオテンシノーゲン アディポネクチン 善玉 悪玉 アディポカイン FFA TNF- レジスチン 主として、正常の小型脂肪細胞は善玉のアディポカインを、 大型の脂肪細胞は悪玉のアディポカインを分泌する 大型 脂肪細胞 小型 脂肪細胞 善玉 アディポカイン アディポネクチン 正常 肥満

(3)

“肥満は脂肪組織の炎症である”

マクロファージが脂肪組織にやってきて(浸潤し)、

悪玉サイトカインがインスリン抵抗性を引き起こす

Wellen, KE, and Hotamisligil, GS. J Clin Invest 12: 1785, 2003

生活習慣 (食生活・運動) 体内細菌叢

生活習慣は体内細菌叢の変化を介してインスリン抵抗性

に影響する可能性がある

(口腔内、腸内) エンドトキシン インスリン抵抗性

マウスにおいて、菌体の内毒素

”エンドトキシン”

投与は、肥満とインスリン抵抗性を起こす

Cani et al. Diabetes 56: 1761, 2007

“Metabolic Endotoxemia”

代謝性エンドトキシン血症

: 正常 x 2-3倍

(細菌性: 正常 x ~100倍)

マウスにおいて、高脂肪食は、腸内細菌叢を変化させる

高脂肪食 Cani et al. Diabetes 56: 1761, 2007 HFD; 4w

マウスにおいて、高脂肪食は、血中エンドトキシンを

増加させる

高脂肪食 エンドトキシン 投与 HFD; 4w LPS s.c. 持続投与 同じ血中 Cani et al. Diabetes 56: 1761, 2007 血中 エンド トキシン 濃度達成

ヒトにおいて、エンドトキシン投与は、

脂肪組織の炎症とインスリン抵抗性を起こす

“Metabolic Endotoxemia”

代謝性エンドトキシン血症

ヒトでの証明

(4)

ヒトにおいて、エンドトキシン投与は、

インスリン抵抗性を起こす

インスリン 抵抗性 LPS bolus i.v. Mehal et al. Diabetes 59: 172, 2010 エンドトキシン 投与後24h エンドトキシン投与前 24h 5min 抵抗性 指数 (HOMA-IR)

糖尿病における歯周治療の血糖コントロールへの効果

Teeuw, WJ et al. Diabetes Care 33: 421, 2010

原著論文 2型糖尿病において歯周治療介入群と非介入群を比較 少なくとも3か月以上の研究期間 5つの研究(合計371名)を対象にメタアナリシス

2型糖尿病において、3か月以上の歯周治療は

HbA1cを0.4%改善する

Teeuw, WJ et al. Diabetes Care 33: 421, 2010

P=0.03 HbA1c -0.4%

要約I

1. 2型糖尿病は、インスリン分泌低下やインスリン抵抗性を規定 する遺伝因子に、肥満、運動不足等の環境因子が作用して 発症する 2. インスリン抵抗性の成因として、正常の小型脂肪細胞が肥満に 伴い大型化し、悪玉アディポカインの分泌が増え、善玉の分泌が 減ることが考えられる 3.インスリン抵抗性の成因として、肥満に伴う脂肪組織における 炎症が考えられる 4. 食事などの生活習慣は、体内細菌叢・血中エンドトキシンの 変化を介してインスリン抵抗性に影響する可能性がある 5. 歯周治療により血糖コントロールが改善する可能性がある

As our understanding of the relationship between diabetes

mellitus and periodontitis deepens,increased patient awareness

of the link between diabetes mellitus and oral health and

歯周病と糖尿病の関連についての理解が深まるにつれ、

医科歯科の専門家の連携がますます重要になる

of the link between diabetes mellitus and oral health and

collaboration among medical and dental professionals for the management of affected individuals become

increasingly important.

Lalla E, and Papapanou PN. Nat Rev Endocrinol 7: 738, 2011.

レジスチン

マウス

脂肪細胞から分泌される インスリン抵抗性を惹起する悪玉サイトカイン

ヒト

主として単球/マクロファージから分泌される 病態生理学的意義は不明であった

(5)

A. 2型糖尿病感受性遺伝子“レジスチンSNP-420”の同定 般住 お る ジ と血中濃度 意義

ヒトのインスリン抵抗性におけるレジスチンの意義

B. 一般住民におけるレジスチンSNP-420と血中濃度の意義 C. 2型糖尿病における血中レジスチンとメタボリックシンドローム 因子・動脈硬化との関係 +1 -420C>G

レジスチンSNP-420は、転写調節領域に存在し、

その遺伝子型としては、G/G、C/G、C/Cの3つがある

レジスチン遺伝子 プロモーター G, マイナーアレル (低頻度, 約30%) C, メイジャーアレル (高頻度, 約70%) G/G, C/G, C/Cの3つの遺伝子型 Exon 1 2 3 4 +1 プロモーター (転写調節領域)

Osawa et al. Diabetes 51:863, 2002 Osawa et al. Am J Hum Genet 75: 678, 2004 Chr. 19 (19p13.2) 1.75 kb 4 exons 108 aa

レジスチンSNP-420 G/G型では、2型糖尿病リスクが高い

2型糖尿病 対照 2 P OR 216 247 8.38 0.004 1.81 CC GGvs CC 2型糖尿病リスク(倍) CC, メイジャーアレルホモ CG, ヘテロ GG, マイナーアレルホモ 546 564 254 269 0.36 0.548 1.08 CG CGvs CC 76 48 8.18 0.004 1.74 GG GG vs CC+CG

Osawa et al. Am J Hum Genet 75: 678, 2004300 400 500 チ ン m RNA)

*

**

単球レジスチンmRNAは、C/C < C/G < G/Gの順に高い

健常ボランティア 23名 0 100 200 C/C C/G G/G 単球レジ ス チ (相対 (n) (9) (11) (3) Osawa et al. BBRC 335: 596, 2005 23名 の単離単球 20 30 チン (ng/ml) ** *

血中レジスチンは、C/C < C/G < G/Gの順に高く、

2型糖尿病で高い

チ ン (ng/ml) 10 15 * 2型糖尿病 (n=93) 0 10 C/C C/G G/G 血中レジス SNP-420 (n) (37) (43) (13)

Osawa et al. Am J Hum Genet 75: 678, 2004

血中レジス チ 対照 2型 0 5 (n) (156) (196) Osawa et al. BBRC 335: 596, 2005 正常型(C) レジスチン遺伝子 C Sp1/3 -420 Sp1/3は-420Gを特異的に認識し、レジスチン転写活性を増強し、 単球mRNA及び血中濃度を上昇させ、2型糖尿病リスクを高める 単球mRNA Sp1/3 変異型(G) + G レジスチン遺伝子 血中レジスチン 420 -420 2型糖尿病

Osawa et al. Am J Hum Genet 75: 678, 2004 Osawa et al. BBRC 335: 596, 2005

インスリン 抵抗性

(6)

20 30 チ ン (ng/ml)

*

***

**

一般住民において、血中レジスチンはC/C < C/G < G/Gの順に高い , P=8.4 x 10 ANOVA, P=1.0x10 Scheffe test

*

n=2,078 -137 -112 28 0 10 C/C C/G G/G SNP-420 血中レジス チ (938) (902) (238) (n) , P=2.0 x 10 , P=1.2 x 10

**

***

Osawa et al. Diabetes Care 30: 1501, 2007 -28 -76 1.5 1.6 1.7 1.8 リ ン抵抗性指数

一般住民において、血中レジスチンが高いほど、

インスリン抵抗性が高い (正に関連する)

*

1.3 1.4 5 1 2 3 4 インス リ 血中レジスチン濃度により4グループに分類. グループ1: 血中レジスチンの低い下1/4. インスリン抵抗性指数(HOMA-IR) Mean±SE. P=0.038(ANOVA). *, P=0.030(グループ1 vs 4、Bonferroni). グループ (n) (507) (505) (503) (502) チ ン (ng/ml) 20 30

*

*

*

血中レジスチンはメタボリックシンドローム因子数が多い

2型糖尿病ほど高い

MetS因子: 肥満 低HDL メタボリックシンドローム因子数 血中レジス チ 0 1 2 3 4 0 10

n=238 Osawa et al. Clin Endocrinol 69: 74, 2008 低HDL 高TG 高血圧 血中レ ジ ス ng/ml 10.3 13.0 10.3 11.3 * *p<0.001 vs. 正常群 8 10 12 14

血中レジスチンは脳梗塞で高い-久山町研究-ス チ ン (3,026) 正常群 (90) 脳梗塞 (43) 出血性脳卒中 (55) 虚血性心疾患 0 2 4 6 (n) 性・年齢調整、久山町男女3,201名、40歳以上、2002年断面調査 Osawa et al. Cardiovasc Diabetol 8: 60, 2009

要約II

1. Sp1/3は-420Gを特異的に認識し、レジスチン転写活性を増強し、 単球mRNA及び血中濃度を上昇させ、2型糖尿病リスクを高めた 2. 一般住民において、血中レジスチンは、SNP-420遺伝子型が、般住民において、血中レジスチンは、 遺伝子型が、 C/C < C/G < G/Gの順に高く、インスリン抵抗性と正に関連した 3. 血中レジスチンは、2型糖尿病におけるMetS因子数、及び、 動脈硬化、特に脳梗塞と正に関連した 単球 血中レジスチン 血中レジスチン濃度は、主としてSNP-420により規定され、 その増加はインスリン抵抗性を引き起こす G/G SNP-420 レジスチンmRNA “ヒト” Sp1/3 動脈硬化 インスリン抵抗性 2型糖尿病 メタボリック シンドローム

(7)

ヒトにおいて、細菌の内毒素“エンドトキシン”(LPS)は、

血中レジスチンを増加する

血中レジスチン Lehrke et al. PLoS Med1: e45, 2004. LPS bolus i.v.

日本人中年女性における歯周病と

血中レジスチンの関係: 久山スタディ

Saito et al. J Dent Res 87: 319, 2008

中年(50-59歳)女性(歯周病34名/対照42名)を対象 血中アディポネクチン、レジスチン、IL-6、TNF-を測定

日本人中年女性において、歯周病で

血中レジスチンは高い

対照 歯周病 度数

Saito et al. J Dent Res 87: 319, 2008

血中レジスチン2.5ng/mLごとの度数を縦軸にプロット 度数

(%)

日本人中年女性において、歯周病があると

高レジスチン血症のリスクが約3倍になる

Saito et al. J Dent Res 87: 319, 2008

日本人高齢者における歯周病と

血中レジスチンとの関連

76歳の日本人158名を対象

Probing pocket depth、attachment level、bleeding on probing

血中アディポネクチン、レジスチン、IL-6、TNF-を測定

Furugen R et al. J Periodont Res 43: 556, 2008

高齢者において血中レジスチンはBOPと正に関連する

(8)

高齢者において、出血を伴う歯周病があると

高レジスチン血症のリスクが約3倍になる

Furugen R et al. J Periodont Res 43: 556, 2008

要約III

1. ヒトにおいて、細菌の内毒素“エンドトキシン”(LPS)は、血中 レジスチンを増加する 2. 日本人中年女性において、歯周病では、血中レジスチンが高い 3. 日本人中年女性において、歯周病があると、高レジスチン血症日本人中年女性において、歯周病があると、高レジスチン血症 のリスクが約3倍高い 4. 日本人高齢者において、血中レジスチンはBOPと正に関連する 5. 日本人高齢者において、出血を伴う歯周病があると、 高レジスチン血症のリスクが約3倍高い

要約(全体)

1. 2型糖尿病は、インスリン分泌低下やインスリン抵抗性を規定 する遺伝因子に、肥満、運動不足等の環境因子が作用して 発症する 2. 食事などの生活習慣は、体内細菌叢・血中エンドトキシンの 変化を介してインスリン抵抗性に影響する可能性がある 3. ヒトにおいて、レジスチンは、主として単球・マクロファージから 分泌され、その血中濃度はSNP-420により強く規定される 4. ヒトにおいて、レジスチンは、おそらくインスリン抵抗性を介して、 2型糖尿病、MetS、動脈硬化のリスクを高める 5. 歯周病があると血中レジスチンが高い可能性がある 生活習慣 (食生活・運動) 体内細菌叢

?

(口腔内、腸内)

生活習慣は体内細菌叢の変化を介して血中エンドトキシン・

レジスチン、インスリン抵抗性に影響する可能性がある

エンドトキシン インスリン抵抗性

?

レジスチン 脂肪組織の炎症 歯周治療

?

参照

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