研 究 論 文
(
原 著)
高齢 大 動脈 弁 置換 術 後 患者
の
心
臓
リ
ハビ リ テ
ー
シ
ョン
進行
と
身体機能
の
検
討
*齊 藤
正和
1)#塩 谷 洋 平
1) 小澤 哲
也 1)河
合佳 奈
1)諸 冨
伸
夫
2) 中嶋 翔 吾
1)安
達 裕一
1)長
山雅 俊
3) 上脇 玲 奈
1)堀
健太郎
1) 岩佐
祐 子 1) 小薗 愛
夏 1>高
山守
正 3) 要 旨【目的】 高 齢 大 動 脈 弁 狭 窄症 (Aortic valve stenosis :以 下
,
AS) 患 者の術 後 心 臓 リハ ビリテー
ショ ン (以下
,
術 後 心 臓リハ ビ リ) 進 行および身 体 機 能につ い て検 討 する。 【方法】2010年4月よ り2012年10月の 間に待 機 的に単 独 大 動 脈 弁 置 換 術を施 行した65歳 以上の高 齢AS 患 者139例 (女 性61
%,
年 齢77
±7
歳 ) を80
歳 未 満の高 齢AVR
群86
例,
80
歳 以 上の超 高 齢AVR
群30
例,
経 皮 的大 動 脈 弁 置 換 術 (以 下,
TAVR
)群23
例の3
群 に 分 類 し た。
身体 機 能の 指 標 と してShort
physical performancebattery
(以 下,
SPPB
),
術後心臓 リハ ビリ進 行 基準と し て,
日本循 環器学 会の ガイ ドラ インに準じ て,
術 後8
日 以内での100m
歩行の 可否を 調査し,3
群 問で 比較検討を行っ た。
【結果】TAVR
群は,
他の2
群 に 比べ て,
術後 在 院 日 数 は 同 等 も,
術 後 心 臓 リハ ビリ 進 行 遅 延率が有意 に高 値であり,
術前お よ び 退 院時の SPPB 得 点が 有 意に低 値であっ た (pくO.
05
)。 【結 語】TAVR
群は,
術 前より身体 機 能が低 下しているうえ.
術 後 心臓 リハ ビ リ進 行が遅 延し,
退 院 時 身 体 機 能 も低 値を示 す 。 キー
ワー
ド 大 動 脈 弁狭 窄症,
高齢 心 臓 リハ ビリ テー
シ ョ ン は じ め に 近 年,
本 邦に おい て は高 齢 者が増 加し,
65歳以上 の 高齢 者が22.
7
%,80
歳 以 上の超 高 齢 者が6.
7
%を 占め て いる 1)。 これ ら,
高 齢 者は,
全 身性の動 脈硬 化 に加 えて,
動 脈 硬 化 性の大 動 脈 弁 狭 窄 症の発 症リス ク が高い こと が 報 告 さ れてお り,
AS 患 者 数 も増 加 傾 向にある2−
4)。 こ れ ら,
重 症AS に対 する唯一
の効 果 的 な 治 療 法は,
現時 点に おい て大 動脈 弁 置 換 術 (以 下tAVR
)の み である 5)。 しか し なが ら,
待 機 的にAVR を 施 行さ れ る重 症AS
症 *In
−
hospita且Phase of PQstoperative Cardiac Rehabilitation inElderly Padents with Aortic Stenosis
1)公財 )日本 心 臓血 圧研 究振 興 会 附属 榊 原 記 念病 院 理学 療 法 科 (〒183
−
00D3 東 京 都府 中市 朝日町3−
16−
1)Masakazu Saitoh
,
PT,
Yohei Shiotani,
PT,
Shogo Nakashima.
PT,
Reina Uewaki.
PT,
Kentaro Hori,
PT,
Tetsuya Ozawa,
PT,
Kana Kawai,
PT,
Yuichi Adachi,
PT,
YukQ Iwasa,
PT,
Aika Kozono,
PT:Department of PhysiDtherapy
,
Sakakibara Heart Institute2)同 心臓 リハビ リ テ
ー
ション 室Nobuo Morotomi
,
MD :Department of cardiac rehabilitation,
Sakakibara且eart Institute 3)同 循環 器 内科
MasatQshi Nagayama
,
MD,
Morimasa Takayama,
MD :Departmentof Cardio且ogy
,
Sakaユdbara Heart Institute# E
−
mail:msaitoh @shi.
heartor.
jp(受付日 2013年11月 15日 /受理 日 2014年3月6日) 例の多 くは
,
手 術の リスク が軽 症〜
中 等 度の症 例 を選 択 し て行わ れ ること が多い 6)。一
方,
AVR
に加え て,
冠 動 脈バ イパ ス術を施 行する症 例,
重 度の左室収縮 障害を 呈 する症 例,
脳 梗 塞 末 梢 動 脈 疾 患,
腎不全や呼吸不 全 な どの複 合 疾 患 を 有 す る 症 例 で は 手 術の リス ク が 高 値 と なる た め AVR ハ イ リス ク症例 と判 断さ れ従 来で は開 心 術に よ るAVR
が 回避さ れ てきた。 近 年,
手 術の リス クが高い重 症AS 症例 に 対 す る AVR に代わ る治 療 法と して TAVR が 開発さ れ,
い くつ かの 臨床 試 験が実 施さ れ て おり,
手 術の リスク が高い症 例 に対し てもTAVR
はAVR
と 同等の 予 後 改 善 効 果 を 認め る ことを報 告してい る 7−
12)。
一
方で,
TAVR 症 例の身 体 機 能に 関する報 告は き わ め て少 ないの が現状である 13’
15)。
Bargur ら は.
TAVR
施行の術 前 身 体 機 能は,
同 年 代の健 常 高 齢 者 と 比較し て,
著 し く低 下 して いるこ とを報 告 している 13)。 こ の ように TAVR 症 例の多 くが虚 弱 高 齢 者で あ り,
TAVR
施 行 前よ り身 体 機 能が著しく低下 しているこ とを考慮 す る と,
低 侵 襲 治 療に よ る短 期 間の入 院加 療に おいても身 体 機 能や 日常生活 動 作が さ らに低 下 し,
自宅 退 院 が 困 難 と なる症例を認め る可 能 性が高い。
そこ で,
本研究ではJapanese Physical Therapy Association
NII-Electronic Library Service Japar ユese Physlcal Therapy Assoclatlon
268 理 学 療 法 学 第41巻 第5号 高 齢
AS
患 者 を 対象にAVR
施 行 例 とTAVR
施行例 を 比較し,
術前な ら び に 退 院 時の身体 機能の推 移の特徴 を 検 討 するこ とを目的と し た。
対 象お よ び方 法 1.
対 象2010
年4
月より2012
年10
月の 間に当 院に て待 機 的 に単 独AVR を 施 行 した65
歳 以上の 高 齢AS 患 者 139 例 を65
歳以上80
歳 未 満の AVR 施 行例 (以 下,
高 齢AVR
群 )86
例 (男 性38
例,
女 性50
例,
年 齢73
±4
歳 〉,
80
歳以上のAVR
施 行 例 (以 下,
超 高齢AVR
群 )30
例 (男 性12
例,
女 性18
例,
年 齢83
±3
歳 ),
TAVR 群23
例 (男 性6
例,
女 性17
例,
年 齢84
± 5歳)の3
群 に分 類し た。 3群 間において患 者 背 景 因 子な ら びに術 前後の 身 体 機 能の推 移お よ び術 後心 臓 リハ ビリ テー
シ ョ ン (以 下,
心 臓リハ ビ リ) 進 行の比較 検 討を行っ た。 なお,
身 体 機 能の指 標と して術 前ならびに退 院 時に SPPB,
退 院 時の み等尺性 膝 伸 展 筋 力を測 定し た。 術 後 心 臓リハ ビリ 進 行 として,
術 後 心 臓リハ ビ リ開始 病囗,
術 後 歩 行 開 始 病 日 お よ び 術 後 連 続100m
歩行 実 施 病 日 を 調査 し た。
さ ら に,
術 後心 臓 リハ ビ リ進 行 基準とし て,
日本循 環 器 学 会の心 血管疾患に お け る リハ ビ リ テー
シ ョ ンに 関する ガ イ ドライン (2007年 改 訂 版 〉 に準じて,
術 後8
日 以 内での 連 続 100m 歩行の ロ∫否 を 調 査 した 16)。
なお,
連 続100m
歩 行の可否は,
歩 行 補 助具の使用の有 無や歩 行 速 度 な ど は 問 わ ず,
連 続100m
歩行 が 可 能 か 否 か を 判 定基準と し た。
本 研 究の実 施 に あ た り,
榊原 記念 病院倫理委員会の承 認 を 得 た。
ま た,
本 研 究へ の参 加 に 対 し て,
事前 に 研 究 の趣 旨 や内容,
さ ら には調査結 果の取 り扱い等に関 し て 説 明し 同意 を得た。
2.Short
Physical
Performance
Battery (SPPB
)
SPPB
はバ ランス テス ト,4m
歩 行,
立 ち座 りテス ト の3
項 目 か ら構 成 さ れている。
各項 目 はO 〜4
点に 配点 さ れ,SPPB
得点 と してO 〜
12点に得 点 化され る17)。SPPB
得 点が高い と移 動 動 作 能 力が高い こ とを示 す。 す べ ての症 例 に おいて,
バ ラン ス テ ス ト,
4m 歩 行テ ス ト および 立ち座 りテス トの順に測 定を行っ た。 バ ラン ステス トは,
開 眼にて閉 脚立位 時 間を測 定し,
10
秒未満の場 合 は0
点,10
秒問保 持可能であれば 1点と な る。
閉脚 立位時 問 が 10秒間 可能であっ た症 例は,
次 にセ ミ タンデムテス トを実 施し,
セ ミ タ ンデムテス トが10
秒 聞 保 持 で き れ ば さ ら に1点加 算さ れ,
次の タ ン デ ム テス ト を施 行 する。
タ ンデム テ ス トは 10秒 間保 持で あ れ ば2
点 加 算,3
秒〜
9.
99
秒であ れ ば1点加 算となる。4m
歩行テス ト は,
杖や歩 行 器な ど を用いて も測 定が 可 能であ り,
通常の 歩 行 速 度で 4m 歩 行 時 間の測 定を2
阿行い,
速い タ イムを採択する。482
秒未 満は4
点,4.
82
〜
6.
20
秒 は3
点,6.
21
秒〜8.
69
秒は2
点,8.
7
秒以 上 は1
点,
不 可能の場 合は0
点 とする。
また,4m
歩 行 時 間 か ら歩行速度 (m /sec )を算出 し た。
立 ち 座 りテ ス ト は,
座面の高さ が40cm
の椅 子を 用 い て,
胸の前で両 腕を組み,
最大努 力下で連続 5回 立 ち 座 りに要 する時 間 を測 定 した。 1分 以上の休 息 を取 り2 回 測 定 し,
速い タイム を解 析 値と して採 択 する。 11.
20 秒 未 満は 4点,
IL20〜
13.
69秒は 3点,
13.
70〜
16,
69 秒は2
点,
16.
7
秒以上は1
点,60
秒以上 もしくは不 可 能の場 合は0
点 とする。3.
等尺 性膝伸展筋 力 等尺性 膝伸展筋 力は,
ハ ン ドヘ ル ド ダ イ ナモメー
タ (アニ マ社 製,
μ一
Tas F−
1)を 用い て測 定 し た,
椅 子 座 位 にて下 腿 遠 位 部 前 面に センサー
パ ッ ド を固 定し,
膝関節 90度 屈 曲位と なる ようにベル トの長 さ を 調整した 18 )19 )。
バ ルサルバ 効 果を 避 ける ように注 意 し な が ら約 5秒 間の 最 大 膝 仲 展 筋 力 を測 定 した。 左 右の脚とも2回 ずつ測 定 し,
最 大 値 を下肢 筋 力と して採 用し,
左 右の平 均 値を体 重で除し た値 (体 重比 :%)を解 析 値と し た。4.
退 院 時 屋内 歩行 機能 退 院時の屋内 歩 行 機 能は,
入 院期間中に病 棟の ト イレ までの歩 行 (約5 〜
10m 程 度 〉 が 自立 して いた か否か で判 別 を行っ た。
また,
非 自立であっ た症 例は,
介 助を すれ ば 可能であっ たか どうかを調 査し,
「歩 行 自立」,
「歩 行 介 助 」,
「歩 行 困 難 」の3
群に分 類 した。 5.
術 後理学療 法プ ロ グ ラ ム 開 心 術による AVR お よ びTAVR 術 後ともに,
術 後 翌 日に は座 位お よび 立位 練 習を開始し,
座位お よ び 立位 練 習で呼 吸 循 環 動 態が著 変なけれ ば,
同日に 15一
30m
程 度の歩 行 練 習,
術 後2 日凵に 100m 歩 行を実 施 する 術 後 心 臓リハ ビ リ プロ グ ラ ムを採 用し た。
な お,
術後心 臓リハ ビリ開始や進行基準に関しては,
日本 循 環 器 学 会 の ガ イ ドラインを遵 守し な が ら実 施し た 16)。
ま た,
自宅 退 院後に 当 院の通院型 回復 期 心 臓リハ ビ リ (phase llCR
)に 参 加 し た か 否 か を 診 療 録 よ り 調査 し.
phase 且CR
参加 率を算出 し た。
6,
統 計 学的解 析 方 法高 齢AVR 群
,
超高齢AVR
群 お よ びTAVR
群の3
群 間の患者 背 景 因子の比 較 に は,一
元 配置分 散 分 析 な らび に 多 重 比 較 検定 (Bonferroni
法 〉およびカ イ ニ乗 検 定を 行っ た。
ま た,
術 後 歩 行 練 習 遅 延 率に関して は,
カ イ乗 検 定な ら び に 残差分析,
術 前お よび退 院時の SPPB 得 点お よ び N工 工一
Electronlc Llbrary歩 行 速度の推 移 に 関 し て は二元 配 置 分散分析な ら び に多 重 比較検定 (
Bonferroni
法)を行っ た。
統 計 学 的 解 析はSPSSI9.
OJ
を使 用し,
測 定値は mean ±SD
で表 示して有 意 確 率は 5%未 満とした。 結 果 表1に術 前 患 者 背 景因 子の比較 を示 す。 TAVR 群お よび超 高 齢AVR
群は,
高 齢AVR
群に比べ て,
年 齢,
貧 血 と 慢 性 腎 臓 病 (以 下,
CKD
) 保 有 率が有 意に高 値 で あ り,
血清ヘ モ グロ ビン (以 下,Hb
)およ び総 蛋 白 (TP
)が有意 に低 値 で あ っ た (p <O.
05
)。
ま た,
TAVR 群は,
高 齢AVR 群に比べ て,
左 室流 入血流 速 度 (E) と僧 帽 弁 輪 速 度 (E’
)の比 (以 下,
E/E’
)が有 意に高 値で あ り
,
Body Inass index (以 下,
BMI ),
左 室 拡 張 末 期 径 (以 下,
LVDd )および大 動 脈 弁 弁口面 積 (以 下,
AVA
) が 有 意に低 値であっ た (p〈0.
05
)。一
方t
表 1 臨 床 的患 者 背 景 因子の比 較 高 齢AVR 群 (n=
86) 超 高齢AVR 群 (n=
30) TAVR 群 (n=
23) 年齢 (歳) 性 別 (男性 / 女性) BMI (kg/m2 ) AS 重症 度 (%〉 moderate severeAVAAVPG (mmHg ) AVMG (mmHg ) LAD (mm ) LVDd (mm ) LVDs (mm > LVEF (%) EfE,
併存疾 患 高 血 圧 症 脂 質異 常 症 糖 尿病 慢 性 腎臓 病 貧 血 心筋梗塞 整形外 科 疾患 呼 吸器 疾 患 脳 血管 疾 患 sCr (nユ9/dD eGFR (m レm 三n /1.
73 m2 ) Hb (g/d1) TP (mg /dl) NT pro BNP (pgfmg) 心不全入 院歴 (%) 在 院 日数 (日) phase H CR 参 加 率 (%〉 73 ± 436 / 50 23.
7 ± 4.
3 12880,
6 ± 0.
2 108 ± 40 60 ± 24 41 ± 13 45 ±830
± 860 ± 10 17.
6 ± 6.
4 57402335275201261 ± L2 63,
6 ± 17.
9 12.
4 ± 1.
5 6,
9 ± O.
5 1.
706 ± 4,
684 2318 ± 1330 83 ± 3† 12 / 18 22 ± 24 01000,
6 ± 0.
1 104 ± 27 59 ± 17 40 ± 541 ±627
± 662 ± 7 219 ± 9.
9 67401357507201031 ± e.
7 55.
2 ± 19.
1 11.
5 ± 1.
4† 6.
7 ± 0.
6† 3,
157 ± 6,
3422 16 ± 717 84 ± 5† 6 / 17 21.
5 ± 2.
7† 01000,
5 ± O.
1† 116 ± 44 68 ± 23 41 ±640
±8
† 27 ± 560 ± 8 23.
6 ± 14.
4† 74353065574171341 ± 0.
5 56.
9 ± 26,
8 11.
1 ± 1.
4† 6,
6 ± 0.
7† 3.
820 ± 5,
300 3926 ± 622 * * * * * †,
pく 0.
05 vs.
高 齢AVR 群 ;*,
カ イ ニ乗 検 定 (p 〈0.
05);* *,
カイニ乗 検 定 (p〈 0.
Ol)Abbreviations:AVR
,
開心術に よ る大 動 脈 弁 置換 術 ;TAVR,
経 皮 的 大 動 脈 弁 置 換 術 ;BMI,
:AVA,
大 動脈弁弁口面 積 ;AVPG
,
最 高大 動 脈 弁 圧 較 差 ;AVMG,
平 均 大 動 脈 弁圧較 差 ;LAD,
左 房径;LVDd
,
左室 拡 張 末 期径 ;LVDs,
左 室 収 縮 末 期 径 ;LVEF,
E/E’
;左 室流 入 血 流 速 度 (E)と僧 帽 弁 輪速度 (E
’
〉の比,
左 室 駆 出 率;sCr,
血 清クレア チニ ン;eGFR,
推定 糸球体濾 過 量 ;Hb,
血清ヘ モグロビン ;Japanese Physical Therapy Association
NII-Electronic Library Service Japar ユese Physlcal Therapy Assoclatlon
270 理 学 療法 学 第41巻 第5号 表2 術 後リハ ビリ進 行と退 院 時 移 動 動 作 能 力の比較 高齢AVR 群 (n
=
86) 超高 齢AVR 群 (n=
30) TAVR 群 (n=
23) ICU 滞在日数 (日) 術 後 心 臓リハ ビリ開 始 病 日 (日) 歩 行 開始 病 日 (日) 100m 歩 行実施病 日 (日) 術後心臓リハ ビ リ進 行 遅 延 率 (%) 退 院 時 屋 内 歩 行 機 能 (%) 歩 行 自立 歩行介助 歩行 困 難 自宅 退 院 (%) 1.
6
± 2,
5 L4 ± 0,
9 1.
6 ± L7 3.
4 ± 2.
73 980297 1.
2 ± 0.
3
1.
2 ± 0.
6 1.
5 ± 0,
7 3.
1 ± 1.
67 933393 1.
2 ± 1.
1 1、
9 ± 1、
8 1.
4 ± 1.
0 5.
5 ± 2.
6† 22 †‡ 924 婆 96 †,
p〈 0.
05 vs.
高 齢AVR 群 ;‡,
p < 0.
05 vs.
超 高 齢AVR 群Abbreviations:AVR
,
開心 術による大 動 脈 弁 置 換 術;TAVR,
経 皮 的大 動 脈弁 置 換 術表
3
術 前お よび退 院 時の身体 機 能の比 較 高 齢AVR 群 (n=
86) 超 高齢AVR 群 (n・
=
30) TAVR 群 (n=
23) 術前 退院時 術 前 退 院時 術前 退 院時 歩 行速度 (m /s) O.
95 ± 0.
19 SPPB (点 ) 11.
2 ± 1.
3 等尺性下肢 筋 力 (%BW ) O.
91 ± 0.
23 11.
2 ± Ll 39.
8 ± 10.
2 0.
79 ± 0.
21 0.
81 ± 024 0.
75 ± 0.
28 0,
74 ± 0.
21 10.
4 :ヒ 2.
4 10.
6 ± 1,
5 8.
5 ± 2.
5 8.
8 ± L5 37.
8 ± 10.
6 30.
1 ± 7.
3 Abbreviations:AVR,
battery開心術に よ る 大 動脈弁置換術 ;TAVR
,
経皮的 大 動脈弁置換術 ;SPPB,
Short physical performance術後 在院 日数や phase 皿 CR 参 加 率には有意 差 を認め な かっ た。 表2に術 後 心 臓リハ ビ リ進 行と退 院 時移 動 動作 能 力の 比較を示 す
。
ICU 在室日数 座位,
立位お よび歩 行 開 始 病 日には3群 問で有 意差 を 認めな かっ た。一
方,
術 後 100m 歩行 病日な ら びに術 後心 臓 リハ ビリ進行遅延 率は TAVR 群 が他の 2群に比べて,
有意に高 値であっ た (p 〈O.
05
)。 また,
退 院 時の屋 内 歩 行 機 能お よ び自宅 退 院 率に は 3群 問で有 意差を認めな かっ た。 表3に術 前お よ び退 院 時の身体 機 能の比較を示 す、
二 元 配置 分 散 分 析の結 果,
歩 行 速 度に関 しては,
群 間の主 効 果 なら びに交互作 用は認めず,
時 期の主効 果を認め (F 値≡
4.
53,
p 〈 0.
05),
術 前に比べ て退 院時の歩 行速 度 が 有 意に低 値を示し た (p<O.
05
) (表4
)。一
方,SPPB
得 点に関しては,
時 期の主効 果な ら びに交互作用 は認め な かっ た が,
群間に主効 果を認め (F値 d1.
38,
p〈 0,
01
),
多 重 比 較の結 果,
TAVR 群は他の 2群に比べ て有 意に 低 値を 示 し た (p〈0,
05
) (表5
)。一
方,
退 院 時の等 尺 性 膝 伸 展 筋 力は 3群 問で有 意 差を認め な かっ た。
考 察 本 論 文は,
近 年 増 加 傾 向にある高 齢大動脈 弁 狭 窄 症 患 者に対 する術後心 臓 リハ ビ リ進行な ら びに身体機 能の特 性につい て,
65一
80nt
,80
歳以 上 とい う年齢 別の比較 ならびに AVR とTAVR とい う術 式によ り比較 検 討し たは じめ て の検 討である。
TAVR の 適 応は.
症 候 性で 大 動 脈 弁 弁口面 積く O.
8cm2 である ことに加 えて,
高齢,
複 合 疾 患 有 病 者 な どの AVR ハ イ リス ク 症 例で あ るこ と が 報 告 さ れて い る20−
22)。
本 研 究に おい て も,
TAVR 群 が 高齢AVR
群 に比べ て,
LVDd,
E/E’
が有意 に高 値で あ り,
BMI,
Hb,
TP,
AVA が有意に低値で あっ たこと は,
これ ら の適応 基準によ る影 響が考え ら れ る。
ま た,一
般に高 齢 者心不 全 患 者では,
貧血 な ら び に腎 機 能 障 害 が 好 発 す ること が 報 告 さ れ てい る が 23),
本 研 究 に おい て も 同様にTAVR
群な らびに超 高 齢AVR
群 が,
高 齢AVR
群に 比べ て,
Hb
が有 意に低 値である こ と に 加 えて,
貧 血 お よびCKD
保 有 率が有 意に高 値 を示 してお り,80
歳以 上の超 高齢大動 脈弁狭窄症 患者で は,
心機 能の みな らず,
多疾患 有病者であ るこ と が わ か る。
特に,
開 心 術 に よ るAVR
が 困 難と判 断 さ れた TAVR 群 は,
従来の術式で あ るAVR
を施 行した患 者 群に比べ て,
高 齢で併 存 疾 患の重 症 度 もより重 度であること が示 さ れ た。一
方で,
TAVR は従 来の AVR に比べ て,
低侵 N工 工一
Electronlc Llbrary表4 歩 行 速 度の推 移 (
2
元 配 置 分 散 分 析)df
SS MS F Sig.
Group (A) Periods (B) Group × Periods(A × B) り自
120.
33090
,
0595,
01070
ユ6550,
05950.
0053 2.
24.
530.
41 n.
s.
pく O.
05 n,
s、
Sig.
術 前〉退 院 時 p<0,
05
Abbreviations:n
.
s.
,
not signi且cant表
5SPPB
得 点の推 移 (2元 配 置 分 散 分析 ) df SS MS F Sig.
Group
(A
) Periods (B) Group× Periods(A × B) 9 α 19自
111
ユ0240
,
03880.
691755.
55120
.
03880,
3459 IL380.
060.
51 P<0,
01
n.
S.
n,
S.
Sig.
TAVR 群く高 齢AVR 群 TAVR 群く超 高 齢AVR 群 超 高 齢AVR 群=
高 齢AVR 群 p< 0,
05p <0.
05 n,
S.
Abbreviations:n
.
s.
,
not significant襲治療である た め
,
術後の呼吸循環動 態の改善が早 く,
術 後 在 院日数 が 短い ことを特 徴とする。 本 研 究において も,
TAVR 群の 自宅 退 院 率は96% と高値を示し,
術 後 在 院日数 も他の 2群と同等で あっ た。 こ れらの観 点か ら は,
重 度の合 併 症を有 する高 齢 AS 患 者で は,
TAVR は き わ めて有 効な治 療 法とい え る4)。
LTAVR 群の身体 機 能お よ び術 後 心 臓リハ ビ リの特 徴 TAVR 群の身 体 機 能や術 後 心 臓リハ ビ リ進 行の結 果 を見て み ると,
退院 時の屋内歩行 機 能は,
3群 と もに 92〜
98% の症 例が屋 内 歩 行 自立レベ ル まで歩 行 機 能の再 獲 得に 至っ てい るもの の,
移 動 動 作 能 力の指 標である SPPB 得点 は,
TAVR 群 が 術前お よ び 退 院 時 と もに他の2
群 に 比べ て,
有 意に低 値で あるこ と が示 さ れ た。Bargur
ら も,6
分 間歩行試 験 お よ び身体的QOL
の指 標である
Duke
activity statusindex
(DASI )をアウ トカムに
TAVR
群の 術前身体機能の検討を行っ てお り,
本 研 究同様にTAVR
群で は,
術 前より身体機能が著しく 低下 し てい る こ と を 報 告 し てい る13)。
こ の ように TAVR 群の特 徴 とし て,
高 齢で併存疾 患の 重 症度が 重 度であるこ と に加 えて,
術 前より身体機能 が著しく低下 し ているこ とが示さ れ た。
この ような身体機 能が低下 し てい るTAVR
群 に おい ても,
本 研 究で は,
開心 術に よ るAVR
と同様の術 後心 臓 リハ ビ リ進 行 基 準 を 使 用 し て実 施し た。
その結果,
TAVR 群は,
座位,
立位お よ び歩行開始 病日 まで の離 床 を 中心とする術 後 心 臓リハ ビ リ は他の 2群と同 等に有 害 事 象 も認めず 実 施で きていた。 しかし なが ら,
術 前か ら の身 体 機 能 低下の影 響 もあ り,
TAVR 群は,
高 齢 AVR 群に比べ て,
100m 歩 行 実 施病 日が有 意に遅 延 し,
他の2
群に 比べ て,
術 後心臓リハ ビ リ進 行 遅 延 率が有 意に高 値を示し た。
これ らの結 果か ら,
TAVR 群は,
屋 内生活 が自立で きる程 度の最 低 限の歩 行機 能の再 獲 得に は至っ ているもの の,
歩 行 速 度,
バ ラン ス機 能t
立ち 座 りなど の包括 的な移 動 動 作 能力は著しく低下し て お り,
移 動 動 作 能 力の予 備 力 が きわ めて少 ない ことが 示 唆 される。 本 研 究では,
3群 間に有 意 差を認めなかっ た通 常 歩 行 速度は,
近年,
老年医学を中心に虚弱の定 義に も用い ら れ るなど関心が高い指 標となっ てお り24−
26 ),
通 常 歩 行 速度が083m
/sec 未 満が 虚弱のカ ッ ト オフ値と して定 義さ れてい る。
本 研 究 結 果で も,
術 前お よ び退 院 時とも に80
歳 以 上の患 者 群で ある,
超 高 齢AVR 群 な らびにTAVR
群の歩行 速 度は0.
83
m /sec を下 回っ て いた。 西 ら は,
本邦地 域在住高齢 者を対 象に虚弱の疫 学 調査を施 行しており,
75一
79ue
では,
男 性14.
5%,
女 性31.
3
% であるのに対して,80
一
84歳で は,
男 性35.
7
%,
女 性 39.
4%,
85歳 以 上で は,
男 性54.
5%,
女 性64.
8% と80 歳を超え る超 高 齢 者で は,
虚 弱 割 合 が 急 激に増 加 するこ と を報 告して いる27)。 これ らの結 果よ り,
80
歳 以 上の 超 高 齢AVR 群 な ら びに TAVR 群の平 均 通 常 歩 行 速 度Japanese Physical Therapy Association
NII-Electronic Library Service Japar ユese Physlcal Therapy Assoclatlon
272 理 学 療 法 学 第41巻 第5 号 が 虚 弱の 定 義 を 下 回 る と と もに
,
特に TAVR 群では,
超高 齢AVR
群 より も術 前お よ び退 院時ともに移 動 動 作 能 力が低 値を示 すこと が特 徴と して示さ れ た。 2.
TAVR 群の身 体 機 能 低 下と予 後 Furalnikら は,
SPPB 得 点と機 能 的予 後の 関 連につ い て報 告しており,
SPPB
8
点 を示す 患 者の30
%程 度が,
移 動 動作 能 力が障 害さ れ る リス ク があることを示 すこと に 加 えて,
SPPB 得 点10〜
12点 の 患 者に 比 べ て,
SPPB 得 点7〜
9点の患 者で は移 動 動 作 能 力が障 害され る リス ク が1,
6
倍,
合 併 症に伴 う移 動 動 作 能 力 低下の リ ス ク が1.
8
倍 と高 値 を示 すこ と を 報 告し てい る28)。
本 研究 で は,TAVR
群のSPPB
得点 は 術前な らび に 退 院 時 と も に9
点 未 満で あ る こ と か ら,
TAVR
群で は,
退 院 時の身体 機能が 低 下 しているのみ な らず,
長 期 的 な機 能 的 予後も不 良と な る 可能性が高い 患者群であ るこ と が 示唆 さ れ る。
さ ら に,
このような 移動 動 作 能力の低下 は,
退 院後の 身体活動量 を低下 さ せ,
閉 じこ も り や歩 行 障 害,
転倒な ど を引き起こすと ともに,
様々 な老 年 症 候群 を集積し,
最 終 的に は介 護 状 態へ 向か わ せ ること が示 唆 されてい る 29)。 さ らに,
TAVR
患 者 を対 象と した 予 後 調 査におい て,
30
日以 内の死亡率 などの短 期 予 後は虚 弱の影 響は認め ない もの の,
1年生存 率で は,
非虚弱 高 齢 者が 7% であ る こ とに対 して,
虚 弱 高 齢 者17% と有 意に不 良である こ と を報 告している 30)。 ま た,
Fairbairnら は,
健 康 関 連QOL
の 指 標で ある SF−
36をア ウ トカ ム に TAVR 施 行 後のQOL
の改 善 率 を調 査 し,
TAVR 群の SF−
36の下 位 尺 度である身 体 機 能 (physical function;以下,
PF) は,
術 前よ り著しく低 値を示 すこ と,
TAVR に よ る治 療 効 果は有 意に示 すことに加 えて,
白宅 退 院 後に通 常の 日常生活を過ご し た TAVR 群の退院30日後の PF 得 点 は,
依 然 と して 著 しく低 値であ る こ と を示 して い る (TAVR 術 前 PF 得 点278 点vs.
TAVR 施 行 後30 日 PF 得 点33、
6点 )31)。 こ のように,
TAVR 群 は,
退 院 時の移 動動 作 能 力が 低 値で あることに加えて,
特に 虚弱なTAVR 群 で は,
機 能 的 予 後や 生命 予 後まで も が不良 で あ る こ と が 示 さ れ て い る。
こ れ らの こ と か ら,
低侵 襲 治療 な が ら も TAVR を 選 択 され た患 者は,
術 前より高い 日常生活レ ベ ルを望んで治 療を受 けら れてい るこ と を考 慮 する と,
術 前と 同等 もし くは低下 した身 体 機 能で 退院さ れる TAVR 群に対 して.
継 続 的 な包 括 的 心 臓リハ ビ リ が 重 要になると考 える。 特に,
術 前か らの心臓リモ デ リング に よ り生 じ た拡 張 不全,
慢 性 腎臓病お よ び貧 血 を高 率で 保 有 する TAVR 群では,
心 不全予 防を 目 的 と し た疾 病 管 理 指 導に加 えて,
回復 期の術 後心 臓 リハ ビリ が重 要で あ る と考 える。 し か し な が ら,
本 研 究結 果 よ り,
phase HCR 参 加率は,
TAVR 群 は 超 高齢 AVR 群 と 同様に 20% 程 度と低 値を示 す。 こ れ は,
TAVR 群や超 高 齢 AVR 群な どの身 体 機 能 低 下 例で は,
公共 交通機 関な ど を利 用して,
ひ とりで phase H CR に通 院する ことが困 難である こ となどが,
phase ICR
参 加 率 低 下の理 由と して推 測 される。
そのた め,
今 後 増 加 する超 高 齢AS 患 者に対 する TAVR 後の術 後 心 臓リハ ビ リで は,
急 性 期 病 院や専門病 院 完 結 型で はな く,
急 性 期 病 院や専 門 病 院 と回復 期リハ ビ リテー
シ ョ ン病 院,
老 人 保 健 施 設,
さ ら に は訪 問リハ ビリ テー
シ ョ ンとの シー
ム レ スな連 携が重 要になる ことが推 測 される。 結 語
TAVR
群は,
高 齢AVR
群な らびに超 高 齢AVR
群に 比べ て,
術 前よ り移 動 動作 能 力が低下 してい るう え,
術 後心 臓 リハ ビリ進 行 が 遅 延 し,
退 院 時の移動 動作 能 力が 低 値 を 示 す。
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274 pa7utta\
ca41gee5?
<Abstract>
In-hospital
Phase
ofPostoperative
Cardiac
Rehal)ilitation
in
ElderlyPatients
with
Aortic
Stenosis
Masakazu
SAITOH,
PT,
Yohei
SHIOTANI,
PT,
Shogo
NAKASHIMA, PT,ReinaUEWAKI, PT,Kentaro
HORI,
PT,
Tetsuya
OZAWA,
PT,
Kana
KAWAL
PT, YuichiADACHI, PT,Yuko
IWASA,
PT,
Aika
KOZONO,
PTDepartment
ofPbysiothercul);
Sakahibara
Hbart
Institute
Nobuo MOROTOMI, MD
Departnzentofcardiac rehabilitation, Sakahibara Heartinstitute
MasatoshiNAGAYAMA, MD, Morimasa TAKAYAMA,
MD
Dqpartnzent
ofCardiolqgyc
Sahakibara
HeartJnstitutePurpose: The aim of thisstudy was to evaluate theprogress of postoperative cardiac rehabilitation and physicalfunctioninelderly patientsafter transcatheteraortic valve replacement
(TAVR).
Methods:
One
hundredthirty-nine
patientsaged over 65 yearswith severe aortic stenosis{54
males and85
females,
aged 77 ± 7years)who underwent elective conventional open heartAVR
orTAVR
were selected and dividedinto3 groups; group A(AVR,
< 80years),group B(AVR
)80
years), groupC
(TAVR).
We evaluated the progress of postoperative cardiac rehabilitation and physicalfunctionat discharge.We assessed the ability of 100-m unassisted walk as a progress criterion of
cardiac rehabilitation, and the short physicalperformance battery
(SPPB)
as anindicator
of physiealfunction
before
cardiac surgery and at discharge.Results:
Preoperative
and postoperativeSPPB score ingroup C were significantlylower
than thatingroups A and B
(p
< O.05).Additionally,achievement of 100-m unassisted walk was significantlydelayed
in
groupC
compared with groups A and B,although postoperativehospita!
stay was not significantiy differentamong 3groups,Conclusion: Physicalfunctionof patientswho underwent