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職業リハビリテーションを取り巻く認知行動療法の実践~就労支援従事者の人材育成を考える~

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Academic year: 2021

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日本認知・行動療法学会 第44回大会 110

-職業リハビリテーションを取り巻く認知行動療法の実践

~就労支援従事者の人材育成を考える~

○(企画・司会者)(話題提供者)池田 浩之1)(話題提供者)谷口 敏淳2)(話題提供者)陶 貴行3)(指 定討論者)井澤 信三4) 1 )兵庫教育大学大学院/NPO大阪精神障害者就労支援ネットワーク、 2 )福山大学、 3 )株式会社LITALICOワークス、 4 )兵 庫教育大学 精神障害・発達障害のある方への職業リハビリテー ション(就労支援含む)への関心は,医療・福祉・産 業領域において関心が高まっている。平成25年度の障 害者雇用統計以来,厚生労働省が発表している新規の 障害者雇用数では精神障害者や精神保健福祉手帳を取 得している発達障害者の数が身体障害者や知的障害者 の雇用件数を上回り続けている。職業リハビリテー ションにおいて従来展開していた支援に,アセスメン トも含めたより専門性の高い心理的支援の技術が求め られている。また昨年度施行された公認心理師法のカ リキュラム案においても産業領域において「障害者雇 用」が学習項目として例示されるなど,心理職が職業 リハビリテーションに今後益々従事していく可能性も 窺える。 一方この職業リハビリテーション(特に就労支援) では,現場が必要に迫られて支援を行ってきた背景も あり,知見が集約されにくいという指摘もみられ (若 林, 2008)専門性に関して体系的に確立されていな い。大阪府(2013)では発達障害のある方の支援に関 わる事業所に対して,事業所のニーズを聞き取るアン ケートを大阪府内全事業所に対して行っている(697 機関回答)。その中で,「支援員の発達障害に関する知 識や経験が不足」(175機関)の回答が最も多く,つい で「支援のニーズの増大に対して,支援員の人出が不 足している」(138機関回答)という回答順となってい た。大阪府内においても各支援機関は発達障害のある 方を受け入れなければならない状況は認識しつつも, 支援技術が伴っていないことも課題としてあげている 様子が窺える。本学会においても過去 3 回自主シンポ ジウムで報告した(池田・千田・佐々木他, 2013;池 田・千田・佐々木他, 2014;池田・谷口・佐々木他; 2017) が,参加者は現場で実践されている方が多く,質 疑応答においても実践に即した質問が多く,現場での 関心の高さや困り感を推察させる内容であった。西村 ら(2011)は,就労支援従事者においては実績を求め られることや,支援以外の業務内容の時間の多さから ストレスを有しやすいと言われており,バーンアウト の可能性も指摘している。実際に中嶌・池田(2016) においても,入職した 1 年目の支援員と 5 年目の支援 員の勤務時間内の職務内容を時間で調べると間接支援 にあたる業務の割合が増えていたという結果も出てお り,その中でいかに効率性の高い支援を提供できるか について,「面談」の重要性という観点から改善を提 案している。このようなことから支援現場が充実して いるとは言い難い状況にある。 こうした状況を踏まえ,現場では新たに入職した職 業リハビリテーション内での支援従事者へ支援に関す る専門性を伝えるために様々な工夫がなされている。 本シンポジウムは,3名の実践報告を行い,職業リハビ リテーション,特に就労支援を行う際の人材育成につ いて概観する。 陶先生からは,就労支援を行う 1 つの組織の中での 実践報告を行っていただく。 陶からは株式会社LITALICO内での調査と実践を報告 し,職業リハビリテーションにおける応用行動分析の 有 用 性 と 人 材 育 成 に つ い て 概 観 す る。 陶・ 恒 吉 (2017)は,就労移行支援事業所スタッフの困り感につ いて予備調査を行い,社内にある困難ケース相談窓口 に寄せられた50件の対応記録をKJ法で分類したとこ ろ,( 1 )有効な介入方法がわからない( 2 )支援の 見通しが立たない( 3 )社会資源が見つからないと いった 3 つの大カテゴリを抽出した。( 1 )について は行動コンサルテーションによる人材育成が有効であ ると考え,嶋崎ら(2012)の作成したペアレントトレー ニングを参考に,就労支援版スタッフトレーニング (以下,『ST』という。)を開発し,実践した. 6 施設43 人のスタッフに向け,STを実施した結果,事前事後で機 能分析に基づいた支援行動や応用行動分析による支援 行動についての課題特異的自己効力感の得点が有意に 上昇し,抑うつや心理的ストレス反応の得点が有意に 減少した。本シンポジウムでは行動コンサルテーショ ンを組織の中で取り入れるうえでの工夫や持続可能な 人材育成としていくための仕組についても触れていき たい。 池田からは,大阪府内という地域の様々な就労支援 を行う機関で行った事業について報告し,メゾネット ワーク内での人材育成について概観する。池田・田中 (2014),池田・田中(2015)では,上述した大阪府内の 現状から,地域の支援機関の支援力向上・支援機関同 士のネットワークの構築ということを目的に,発達障 自主企画シンポジウム11

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日本認知・行動療法学会 第44回大会 111 -がい者支援コーディネーター派遣事業(2013~2015) を大阪府から委託され,府内の44機関,延べ392名に対 して研修を行ったことを報告した。基本的に提供でき る研修メニューを実施者が用意し,各事業所や地域の ネットワークの状況に応じて選択してもらい最大 5 回 ( 1 回90分程度)の構成内容とした。結果として参加 した支援員の自己効力感の有意な得点の上昇が見られ たほか,地域のネットワーク強化促進につながってい るという感想や機関連携(医療機関や企業)の重要性 や技術について学べたという感想を得ることができ た。この事業は現在も自主事業として行っているが, 今後もより実践的な効果の測定を行いながら,内容の 精査を行っていきたいと考えている。本シンポジウム では地域のネットワークで実践する際の難しさや対応 などについても触れていきたい。 谷口先生からは,組織・地域のネットワークでの実 践を踏まえた新たな取り組みについて提言していただ く。 精神障害・発達障害のある方への就労支援や離職予 防において,医療機関や労働支援機関,企業など多機 関の連携が重要である。そして円滑な連携に向け,筆 者は地域の障害者職業センターや労働局と連携しなが ら,精神症状の評価尺度の統一化や,認知行動療法 (CBT)の視点を取り入れたツールの作成を進めてき た。現在,そのツールは地域支援機関で構成された協 議会で承認を得て,障害者職業センターのリワーク事 業にて試行する段階であり,地域支援機関で“統一し た視点やものさし”の構築に挑戦している。これら実 践を通じて,CBTが実施できる人材や普及の必要性を 強く感じてきた。また,労働支援機関や企業に対して は,より踏み込んだ精神科治療の実際や精神症状の理 解が必要だと感じている。本シンポジウムのテーマで ある人材育成という点では不十分ではあるが,本話題 提供ではCBTを中心に,求められる能力やその育成に ついて考察したいと考えている。 自主企画シンポジウム11

参照

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